(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002501
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】1型糖尿病を予防するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221227BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022139995
(22)【出願日】2022-09-02
(62)【分割の表示】P 2021520987の分割
【原出願日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/847,466
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/931,685
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521155829
【氏名又は名称】プロヴェンション・バイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PROVENTION BIO, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】レオン,フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】ヘロルド,ケヴァン・シー.
(72)【発明者】
【氏名】スカイラー・ジェイ・エス.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】臨床1型糖尿病(T1D)の発症を予防するまたは遅延させる方法を提供する。
【解決手段】T1Dのリスクがある非糖尿病対象を準備するステップと、前記非糖尿病対象が、(1)亜鉛トランスポーター8(ZnT8)に対する抗体を実質的に有しないこと、(2)HLA-DR4+であること、および/または(3)HLA-DR3+でないことを決定するステップと、前記非糖尿病対象に予防有効量の抗CD3抗体を投与するステップとを含む方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床1型糖尿病(T1D)の発症を予防するまたは遅延させる方法であって、
T1Dのリスクがある非糖尿病対象を準備するステップと、
前記非糖尿病対象が、(1)亜鉛トランスポーター8(ZnT8)に対する抗体を実質
的に有しないこと、(2)HLA-DR4+であること、および/または(3)HLA-
DR3+でないことを決定するステップと、
前記非糖尿病対象に予防有効量の抗CD3抗体を投与するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記非糖尿病対象が、T1D患者の血縁者である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非糖尿病対象が、膵島細胞抗体(ICA)、インスリン自己抗体(IAA)、およ
びグルタミン酸脱炭素酵素(GAD)、チロシンホスファターゼ(IA-2/ICA51
2)またはZnT8に対する抗体から選択される糖尿病関連自己抗体を2種以上有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非糖尿病対象が、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)における耐糖能の異常を有す
る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記OGTTでの耐糖能の異常が、110~125mg/dLの空腹時グルコースレベ
ル、または140mg/dL以上200mg/dL未満の血漿2時間値、または200m
g/dL超のOGTT中、30分、60分もしくは90分での途中のグルコース値である
、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記非糖尿病対象が、ZnT8に対する抗体を有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記非糖尿病対象が、HLA-DR4+であり、かつHLA-DR3+ではない、請求
項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗CD3抗体が、テプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラルマブから選択さ
れる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記予防有効量が、前記抗CD3抗体を10~1000マイクログラム/平方メートル
(μg/m2)で皮下(SC)注射または静脈内(IV)注入または経口投与する10~
14日間のクール、好ましくは、0~3日目にそれぞれ51μg/m2、103μg/m
2、207μg/m2、および413μg/m2をIV注入し、4~13日目の各日に8
26μg/m2の単一用量をIV注入する14日間のクールを含む、請求項8に記載の方
法。
【請求項10】
前記予防有効量が、T1Dの臨床診断までの時間の中央値を少なくとも50%、少なく
とも80%、もしくは少なくとも90%、または少なくとも12カ月、少なくとも18カ
月、少なくとも24カ月、少なくとも36カ月、少なくとも48カ月、もしくは少なくと
も60カ月遅延させるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記非糖尿病対象の末梢血単核細胞中のTIGIT+KLRG1+CD8+T細胞の頻
度をフローサイトメトリーによって決定するステップをさらに含み、ここで、テプリズマ
ブ投与後の頻度の増加によりテプリズマブに対する応答性が示される、請求項1~10の
いずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
1型糖尿病(T1D)の発症の予防または遅延における抗CD3抗体に対する応答性を
予想する方法であって、
T1Dのリスクがある非糖尿病対象を準備するステップと、
前記非糖尿病対象に予防有効量の抗CD3抗体を投与するステップと、
前記非糖尿病対象の末梢血単核細胞中のTIGIT+KLRG1+CD8+T細胞の頻
度をフローサイトメトリーによって決定するステップと、ここで、前記頻度の増加が前記
抗CD3抗体に対する応答性を示す、
を含む方法。
【請求項13】
前記非糖尿病対象が、T1D患者の血縁者である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記非糖尿病対象が、膵島細胞抗体(ICA)、インスリン自己抗体(IAA)、およ
びグルタミン酸脱炭素酵素(GAD)、チロシンホスファターゼ(IA-2/ICA51
2)またはZnT8に対する抗体から選択される糖尿病関連自己抗体を2種以上有する、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記非糖尿病対象が、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で耐糖能の異常を有する、請
求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記OGTTでの耐糖能の異常が、110~125mg/dLの空腹時グルコースレベ
ル、または140mg/dL以上200mg/dL未満の血漿2時間値、または200m
g/dL超のOGTT中の30分、60分もしくは90分での途中のグルコース値である
、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記非糖尿病対象が、(1)亜鉛トランスポーター8(ZnT8)に対する抗体を実質
的に有しないこと、(2)HLA-DR4+であること、および/または(3)HLA-
DR3+でないことを決定するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記非糖尿病対象が、ZnT8に対する抗体を有しない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記非糖尿病対象が、HLA-DR4+であり、かつHLA-DR3+ではない、請求
項17に記載の方法。
【請求項20】
前記抗CD3抗体が、テプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラルマブから選択さ
れる、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記予防有効量が、前記抗CD3抗体を10~1000マイクログラム/平方メートル
(μg/m2)で皮下(SC)注射または静脈内(IV)注入または経口投与する10~
14日間のクール、好ましくは、テプリズマブを0~3日目にそれぞれ51μg/m2、
103μg/m2、207μg/m2、および413μg/m2でIV注入し、4~13
日目の各日に826μg/m2の単一用量でIV注入する14日間のクールを含む、請求
項20に記載の方法。
【請求項22】
前記予防有効量が、T1Dの臨床診断までの時間の中央値を少なくとも50%、少なく
とも80%、もしくは少なくとも90%、または少なくとも12カ月、少なくとも18カ
月、少なくとも24カ月、少なくとも36カ月、少なくとも48カ月、もしくは少なくと
も60カ月遅延させるものである、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、その開示全体が参照により本明細書の一部をなす、2019年5月14日出
願の米国仮出願第62/847,466号、および2020年5月14日出願の米国実用
特許出願第15/931,685号の優先権および利益を主張するものである。
【0002】
[配列表]
2020年5月14日にEFS-Web経由で提出された、2020年5月14日に作
成されたサイズが6,083バイトの「010701seq.txt」という表題のAS
CIIテキストファイルは、その全体が参照により本明細書の一部をなすものとする。
[発明の分野]
【0003】
本開示は、一般に、臨床1型糖尿病(T1D)の発症リスクがある対象における、臨床
1型糖尿病(T1D)の発症を予防するまたは遅延させる組成物および方法、より詳細に
は、抗CD3抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
1型糖尿病(T1D)は、ランゲルハンス島におけるインスリン産生β細胞の自己免疫
破壊によって引き起こされ、生存のために外因性インスリン注射に依存するに至る。およ
そ160万人の米国人が1型糖尿病を有しており、また、1型糖尿病は、喘息の次に最も
一般的な小児期の疾患の1つのままである1。介護が改善されているにもかかわらず、T
1Dの影響を最も受けている個体は、一貫して、所望の血糖目標値を実現することができ
ない2。1型糖尿病を有する個体に関しては、罹患率および死亡率の両方のリスクが増大
することに関する持続的な懸念が存在している。最近の研究2件により、10歳未満で診
断を受けた小児ついては生存年数が17.7年減少することが認められ、また、成人で診
断されたスコットランド人の男性および女性についてはそれぞれ生存年数が11年および
13年減少した3,4。
【0005】
遺伝的にかかりやすい個体では、T1Dは、顕性高血糖症の前に、まず、自己抗体の出
現(ステージ1)、次いで血糖異常(ステージ2)によって特徴付けられる無症候性ステ
ージを通じて進行する。ステージ2では、グルコース負荷に対する代謝応答が損なわれる
が、他の代謝的指標、例えば、グリコシル化ヘモグロビンは正常であり、インスリン治療
は必要ない5。これらの免疫学的および代謝的特色から、顕性高血糖症を伴う臨床疾患が
発生し、インスリン治療が必要になるリスクが高い個体が同定される(ステージ3)。発
症から間もない臨床T1Dを試験した場合に、いくつかの免疫介入によりβ細胞機能の減
退が遅延することが示されている6。有望な治療法の1つは、FcR非結合性抗CD3モ
ノクローナル抗体テプリズマブであり、短期治療によりβ細胞の機能喪失が耐久的に低減
することがいくつかの試験において示されており、診断および治療後7年もの間、観察可
能な効果が認められた7~11。当該薬物は、β細胞死を引き起こす重要なエフェクター
細胞であると考えられているCD8+Tリンパ球の機能を改変する12,13。
【0006】
現在まで、臨床的なステージ3のT1Dへの増悪を変化させるような臨床診断前(すな
わち、ステージ1または2)に開始された介入はない。したがって、臨床T1Dの発症リ
スクが高い個体において臨床T1Dの発症を予防するまたは遅延させる治療が必要とされ
ている。
【発明の概要】
【0007】
一態様では、臨床1型糖尿病(T1D)の発症を予防するまたは遅延させる方法であっ
て、
T1Dのリスクがある非糖尿病対象を準備するステップと、
非糖尿病対象が、(1)亜鉛トランスポーター8(ZnT8)に対する抗体を実質的に
有しないこと、(2)HLA-DR4+であること、および/または(3)HLA-DR
3+でないことを決定するステップと、
非糖尿病対象に予防有効量の抗CD3抗体を投与するステップと
を含む方法が提供される。
【0008】
一部の実施形態では、非糖尿病対象は、T1D患者の血縁者である。ある特定の実施形
態では、非糖尿病対象は、膵島細胞抗体(ICA)、インスリン自己抗体(IAA)、お
よびグルタミン酸脱炭素酵素(GAD)、チロシンホスファターゼ(IA-2/ICA5
12)またはZnT8に対する抗体から選択される糖尿病関連自己抗体を2種以上有する
。
【0009】
一部の実施形態では、T1Dに関連する自己抗体の検出を、一般集団、またはT1D患
者の血縁者におけるポイントオブケア(POC)スクリーニング法によって行う。これら
のPOC法は、定性的な迅速側方流動試験であり得る。
【0010】
一部の実施形態では、非糖尿病対象は、コクサッキーBウイルス(CVB)および/ま
たは他のβ細胞向性ウイルス(複数でもよい)による感染を有する。一部の実施形態では
、β細胞向性ウイルスに感染しているこの対象は、HLA-DR4を有し、テプリズマブ
に対する反応性が高い。
【0011】
種々の実施形態では、非糖尿病対象は、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で耐糖能の
異常を有する。OGTTでの耐糖能の異常は、110~125mg/dLの空腹時グルコ
ースレベル、または140mg/dL以上200mg/dL未満の血漿2時間値、または
200mg/dL超のOGTT中の30分、60分もしくは90分での途中のグルコース
値と定義される。
【0012】
一部の実施形態では、非糖尿病対象は、ZnT8に対する抗体を有しない。ある特定の
実施形態では、非糖尿病対象は、HLA-DR4+であり、かつHLA-DR3+ではな
い。
【0013】
一実施形態では、抗CD3抗体は、テプリズマブである。
【0014】
種々の実施形態では、予防有効量は、抗CD3抗体、例えばテプリズマブを、抗CD3
/テプリズマブの総用量を6~15ミリグラムとして、10~1000マイクログラム/
平方メートル(μg/m2)で皮下(SC)注射または静脈内に(IV)注入する10~
14日間の毎日のクール、好ましくは、テプリズマブを0~3日目にそれぞれ51μg/
m2、103μg/m2、207μg/m2、および413μg/m2でIV注入し、4
~13日目の各日に826μg/m2の単一用量をIV注入する14日間のクールを含む
。ある特定の実施形態では、予防有効量の抗CD3抗体、例えばテプリズマブは、T1D
の臨床診断までの時間の中央値を少なくとも50%、少なくとも80%、もしくは少なく
とも90%、または少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、少なくとも24カ月、少
なくとも36カ月、少なくとも48カ月、もしくは少なくとも60カ月、またはより長く
遅延させるものである。
【0015】
一部の実施形態では、抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフ
ォラルマブを、SCポンプにより、または緩効性バイオマテリアルに包埋して、または経
口により投与する。他の実施形態では、抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシ
ズマブまたはフォラルマブを、β細胞前駆体もしくはβ細胞が封入されたバイオマテリア
ルに包埋するか、またはβ細胞前駆体もしくはβ細胞と併せて非経口的に提供する。
【0016】
一部の実施形態では、抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフ
ォラルマブを、代謝作用剤、B細胞阻害剤または他の免疫調節剤などの他の薬理学的作用
剤と組み合わせて投与する。
【0017】
一部の実施形態では、抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフ
ォラルマブを、抗原特異的免疫治療法および/またはワクチンと共に投与する。
【0018】
一部の実施形態では、方法は、非糖尿病対象の末梢血単核細胞中のTIGIT+KLR
G1+CD8+T細胞の頻度をフローサイトメトリーによって決定するステップをさらに
含み、ここで、抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラルマ
ブの投与後の頻度の増加により、抗CD3抗体、例えばテプリズマブに対する応答性が示
される。
【0019】
別の態様は、1型糖尿病(T1D)の発症の予防または遅延における抗CD3抗体、例
えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラルマブに対する応答性を予想する方法
であって、
T1Dのリスクがある非糖尿病対象を準備するステップと、
非糖尿病対象に予防有効量のテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラルマブを投
与するステップと、
非糖尿病対象の末梢血単核細胞中のTIGIT+KLRG1+CD8+T細胞の頻度を
フローサイトメトリーによって決定するステップと、ここで、頻度の増加により、抗CD
3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラルマブに対する応答性が示
される、
を含む、方法に関する。
【0020】
一部の実施形態では、上記方法は、非糖尿病対象が、(1)亜鉛トランスポーター8(
ZnT8)に対する抗体を実質的に有しないこと、(2)HLA-DR4+であること、
および/または(3)HLA-DR3+でないことを決定するステップをさらに含み得る
。
【0021】
本明細書に記載の態様および/または実施形態を組み合わせることができることが当業
者には明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】参加者のスクリーニング、登録および追跡調査を示す図である。TrialNetサイト(試験サイト一覧については付録を参照されたい)において合計112名の対象を適格性についてスクリーニングした。対象のうち76名をランダムに薬物アームまたはプラセボアームとした。14カ所のTrialNetサイトのうちの1カ所で対象に試験薬物を注入し、33カ所のサイトのうちの1カ所において試験プロトコールの通りに追跡した。ランダム化した対象全てが解析に含まれる。
【
図2A】T1Dの発生に対するテプリズマブによる治療の効果を示す図である。無糖尿病参加者の割合のカプラン・マイヤー推定値。全体的なハザード比は、0.437(95%CI:0.229、0.832)(p=0.006、片側、コックスモデル)であった。T1Dまでの時間の中央値は、テプリズマブ群については48.4mosであり、プラセボ群については24.4mosであった。挿入は、試験終了時にT1Dを有した対象の総数および無糖尿病対象の総数を示す。
【
図2B】T1Dの発生に対するテプリズマブによる治療の効果を示す図である。治療群ごとの1型糖尿病の発生頻度ならびに試験実施年ごとの累積および区間ハザード比(95%信頼区間)(*年区間中の各治療アームにおけるT1Dが発生した参加者の数が示されている。さらに、累積HRおよび各年区間についてのHRを算出した。†、カイ二乗検定およびハザード比推定の両方について事象までの時間データにマンテル・ヘンゼル法を適用した
34。ユーロ記号、コックスモデルからの尤度比検定およびハザード比推定および95%CI)。
【
図2C】T1Dの発生に対するテプリズマブによる治療の効果を示す図である。試験群におけるリンパ球絶対数(ALC)。
【
図3A】テプリズマブに対する応答の免疫学的影響およびサブグループ解析を示す図である。テプリズマブによる治療を受けた対象およびプラセボによる治療を受けた対象におけるCD8+KLRG1+TIGIT+CD57-T細胞の頻度(*p<0.05、テプリズマブによる治療を受けた参加者対プラセボによる治療を受けた参加者)。平均値±95%CIが示されている。各時点でANCOVAを用いて比較を行い、ベースライン値に対して補正した。さらに、3mos(p=0.009)および6mos(p=0.007)の時点で、テプリズマブによる治療を受けた参加者ではこれらの細胞の頻度が有意に増加したが、プラセボによる治療を受けた参加者ではこれらの細胞の頻度の優位な増加は認められなかった(対応のあるt検定)。
【
図3B】テプリズマブに対する応答の免疫学的影響および亜群解析を示す図である。ラダープロットは、示されているベースライン時の参加者の特色のそれぞれについてのハザード率を示す。抗ZnT8抗体の非存在(p=0.004、HR:陰性について0.031、陽性について0.657)、HLA-DR4の存在(p=0.004、HR:陰性について1.47、陽性について0.201)、およびHLA-DR3の非存在(p=0.01、HR:陰性について0.181、陽性について0.907)はハザード比に有意に影響を及ぼした。
【
図3C-E】テプリズマブに対する応答の免疫学的影響および亜群解析を示す図である。ベースライン時に抗ZnT8抗体を有していた患者もしくは有していなかった患者(
図3C)、またはHLA-DR3(
図3D)もしくはHLA-DR4(
図3E)について陽性であった患者もしくは陰性であった患者における糖尿病の発生が示されている。
【
図4】フローサイトメトリーに使用したモノクローナル抗体を示す表である。
【
図6】TIGIT(Y軸)対KLRG1(X軸)の染色を示すFACS等高線プロットである。生きているCD8+CD57-T細胞に対して電子ゲートを設置した。テプリズマブを用いた治療を受けた対象3名(上の行)およびプラセボを用いた治療を受けた対象3名由来の末梢血液細胞におけるKLRG1およびTIGITの発現が示されている。数字は各四分円内にゲーティングされた総細胞の割合を指す。四分円は染色対照に基づいて設置した。
【
図7A-B】治療群におけるT細胞サブセットの頻度を示すグラフである。試験訪問時のCD4+Treg(
図7A)CD4+CD127
loFoxp3+およびCD8+TIGIT-KLRG1-CD57-T細胞(
図7B)の頻度が示されている。各時点についてANCOVAによって比較し、ベースライン値に対して補正した場合、各治療アームについて、テプリズマブとプラセボの間、およびベースラインから治療後までの両方の細胞サブセットの差異は統計的に有意ではなかった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、一部の実施形態では、抗CD3抗体、例えばテプリズマブによる治療に応答
する非糖尿病対象はZnT8に対する抗体を有しないという驚くべき発見を提供する。あ
る特定の実施形態では、そのような非糖尿病対象は、HLA-DR4+であり、かつHL
A-DR3+ではない。予想外に、抗CD3抗体による治療に応答するそのような非糖尿
病対象では、テプリズマブの投与後(例えば、1カ月後、2カ月後、3カ月後、またはそ
れよりも後もしくはそれよりも前)に、末梢血単核細胞中のTIGIT+KLRG1+C
D8+T細胞の頻度(または相対量)(例えば、フローサイトメトリーによって)の増加
が実証される。
【0024】
一部の実施形態では、臨床1型糖尿病(T1D)の発症を予防するまたは遅延させる方
法であって、T1Dのリスクがある非糖尿病対象を準備するステップと、非糖尿病対象が
、(1)亜鉛トランスポーター8(ZnT8)に対する抗体を実質的に有しないこと、(
2)HLA-DR4+であること、および/または(3)HLA-DR3+でないことを
決定するステップと、非糖尿病対象に予防有効量の抗CD3抗体、例えばテプリズマブを
投与するステップとを含む方法が本明細書で提供される。
【0025】
ある特定の実施形態では、T1Dの発症の予防または遅延における抗CD3抗体、例え
ばテプリズマブに対する応答性を予想する方法が提供される。方法は、T1Dのリスクが
ある非糖尿病対象を準備するステップと、非糖尿病対象に予防有効量の抗CD3抗体、例
えばテプリズマブを投与するステップと、非糖尿病対象の末梢血単核細胞中のTIGIT
+KLRG1+CD8+T細胞の頻度をフローサイトメトリーによって決定するステップ
であって、頻度の増加により、抗CD3抗体、例えばテプリズマブに対する応答性が示さ
れる、ステップとを含み得る。
【0026】
[定義]
特定の用語を本明細書において以下に定義する。追加的な定義が本出願全体を通して提
供される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は
、その冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つよりも多く、例えば、少なくとも1つを指
す。「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語の使用は、「含む(comp
rising)」という用語と併せて使用される場合、本明細書では、「1つ(one)
」を意味し得るが、「1つまたは複数の(one or more)」、「少なくとも1
つの(at least one)」、および「1つまたは1つよりも多く(one o
r more than one)」の意味とも一致する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」は、一般に、測定の性質または精
度を考慮して、測定された数量に関して許容される誤差の程度を意味する。例示的な誤差
の程度は、所与の値の範囲の20パーセント(%)以内、一般には10%以内、より一般
には5%以内である。「実質的に」という用語は、50%超、好ましくは80%超、およ
び最も好ましくは90%または95%超を意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」または「含む(com
prises」という用語は、所与の実施形態に存在する組成物、方法、およびそれらの
それぞれの構成成分(複数でもよい)に関して使用されるが、不特定の要素の包含に対し
て開かれている。
【0030】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essen
tially of)」という用語は、所与の実施形態に必要とされる要素を指す。この
用語は、本開示のその実施形態の基本的なおよび新規のまたは機能的な特徴(複数でもよ
い)に実質的に影響を及ぼさない追加的な要素の存在を許容するものである。
【0031】
「からなる(consisting of)」という用語は、本明細書に記載の組成物
、方法、およびそれらのそれぞれの構成成分を指し、その実施形態の説明に記載されてい
ないいかなる要素も排除される。
【0032】
「抗体」という用語は、本明細書では、最も広範な意味で使用され、これだけに限定さ
れないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特
異性抗体)、および所望の抗原結合活性を示す限りは抗体断片を含めた種々の抗体構造を
包含する。
【0033】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体の一
部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、これだけに限定さ
れないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ(
diabody);直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片か
ら形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「予防剤」という用語は、T1Dの1つまたは複数の症状
の予防、治療、管理または好転に使用することができる、テプリズマブなどのCD3結合
性分子を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、1型糖尿病に関連した疾患の「発症」という用語は、患者
が、米国糖尿病学会により1型糖尿病の診断のために確立された基準を満たすことを指す
(Mayfield et al.,2006,Am.Fam.Physician 5
8:1355-1362を参照されたい)。
【0036】
本明細書で使用される場合、「予防する(prevent)」、「予防すること(pr
eventing)」および「予防(prevention)」という用語は、予防剤ま
たは治療剤の投与に起因する、対象におけるT1Dの1つまたは複数の症状の発症の予防
を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「プロトコール」は、投薬スケジュールおよび投薬レジメ
ンを含む。本明細書におけるプロトコールは使用方法であり、予防プロトコールおよび治
療プロトコールを含む。「投薬レジメン」または「治療のクール」は、治療剤または予防
剤をいくつかの用量で1~20日間にわたって投与することを含み得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、互換的に使用され
る。本明細書で使用される場合、「対象(subject)」および「対象(subje
cts)」という用語は、動物、好ましくは、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネ
コ、イヌ、ラット、およびマウス)ならびに霊長類(例えば、サルまたはヒト)を含めた
哺乳動物、より好ましくは、ヒトを指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「予防有効量」という用語は、T1Dの1つまたは複数の
症状の発生、再発または発症の遅延または予防をもたらすために十分なテプリズマブの量
を指す。一部の実施形態では、予防有効量は、対象のT1Dの発症を少なくとも20%、
少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくと
も45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%
、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なく
とも90%、少なくとも95%遅延させるテプリズマブの量を指すことが好ましい。
【0040】
本開示の種々の態様を以下にさらに詳細に記載する。追加的な定義は本明細書全体を通
して詳述する。
【0041】
<抗CD3抗体および医薬組成物>
「抗CD3抗体」および「CD3に結合する抗体」という用語は、表面抗原分類3(C
D3)に十分な親和性で結合することができる抗体または抗体断片を指し、したがって、
当該抗体は、CD3の標的化において予防剤、診断剤および/または治療剤として有用で
ある。一実施形態では、抗CD3抗体の、CD3ではない無関係なタンパク質への結合の
程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定して、当該抗体のCD3
への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、CD3に結合する抗体の解離
定数(Kd)は、<1μΜ、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0
.01nM、または<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8Mか
ら10-13Mまで、例えば、10-9M~10-13Mまで)である。ある特定の実施
形態では、抗CD3抗体は、異なる種由来のCD3の間で保存されているCD3のエピト
ープに結合する。
【0042】
一実施形態では、抗CD3抗体は、ChAglyCD3(オテリキシズマブ)であり得
る。オテリキシズマブは、ヒト化Fc非結合性抗CD3であり、Belgian Dia
betes Registry(BDR)による第2相試験において最初に評価され、次
いでTolerxによって開発され、次いで、TolerxがGSKと組んで、第3相D
EFEND新規発症T1D試験(NCT00678886、NCT01123083、N
CT00763451)が実施された。オテリキシズマブを8日間にわたる注入でIV投
与する。例えば、全て参照により本明細書の一部をなす,Wiczling et al
.,J.Clin.Pharmacol.50(5)(May 2010)494-50
6;Keymeulen et al.,N Engl J Med.2005;352
:2598-608;Keymeulen et al.,Diabetologia.
2010;53:614-23;Hagopian et al.,Diabetes.
2013;62:3901-8;Aronson et al.,Diabetes C
are.2014;37:2746-54;Ambery et al.,Diabet
Med.2014;31:399-402;Bolt et al.,Eur.J.I
mmunol.lYY3.23: 403-411;Vlasakakis et al
.,Br J Clin Pharmacol(2019)85 704-714;Gu
glielmi et al,Expert Opinion on Biologic
al Therapy,16:6,841-846;Keymeulen et al.
,N Engl J Med 2005;352:2598-608;Keymeule
n et al.,BLOOD 2010,VOL 115,No.6;Sprange
rs et al.,Immunotherapy(2011)3(11),1303-
1316;Daifotis et al.,Clinical Immunology
(2013)149,268-278を参照されたい。
【0043】
別の実施形態では、抗CD3抗体は、ビシリズマブ(HuM291;Nuvionとも
称される)であり得る。ビシリズマブは、突然変異型IgG2アイソタイプ、Fcγ受容
体への結合性の欠如、および活性化T細胞において選択的にアポトーシスを誘導する能力
を特徴とするヒト化抗CD3モノクローナル抗体である。ビシリズマブは、移植片対宿主
病(NCT00720629;NCT00032279)ならびに潰瘍性大腸炎(NCT
00267306)およびクローン病(NCT00267709)に関して患者において
評価されている。例えば、参照により本明細書の一部をなすSandborn et a
l.,Gut 59(11)(Nov 2010)1485-1492を参照されたい。
【0044】
別の実施形態では、抗CD3抗体は、Tiziana Life Sciences、
PLCによりNASHおよびT2Dに関して開発されている(NCT03291249)
完全ヒト抗CD3モノクローナル抗体であるフォラルマブであり得る。例えば、全て参照
により本明細書の一部をなすOgura et al.,Clin Immunol.2
017;183:240-246;Ishikawa et al.,Diabetes
.2007;56(8):2103-9;Wu et al.,J Immunol.2
010;185(6):3401-7を参照されたい。
【0045】
別の実施形態では、抗CD3抗体は、テプリズマブであり得る。テプリズマブは、hO
KT3yl(Ala-Ala)(234位および235位にアラニンを含有する)として
も公知であり、膵臓の島のインスリン産生β細胞の破壊を媒介するTリンパ球の機能が変
更されるように工学的に作製された抗CD3抗体である。テプリズマブは、成熟T細胞上
に発現されるCD3s鎖のエピトープに結合し、それにより、それらの機能を変化させる
。テプリズマブの配列および組成は、それぞれの全体が参照により本明細書の一部をなす
米国特許第6,491,916号;同第8,663,634号;および同第9,056,
906号に開示されている。軽鎖および重鎖の完全な配列を以下に記載する。太字部分は
相補性決定領域である。
テプリズマブ軽鎖(配列番号1):
テプリズマブ重鎖(配列番号2):
【0046】
一部の実施形態では、医薬組成物が本明細書で提供される。そのような組成物は、予防
有効量の抗CD3抗体、および薬学的に許容される担体を含む。特定の実施形態では、「
薬学的に許容される」という用語は、動物、より詳細にはヒトにおける使用に関して連邦
または州政府の規制当局により承認されている、または米国薬局方もしくは他の一般に認
識されている薬局方に列挙されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬が
共に投与される、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全および
不完全))、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、水、および、石油
、動物、野菜または合成起源のものを含めた油、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油
、ゴマ油などの滅菌された液体であり得る。水は、医薬組成物を静脈内に投与する場合に
好ましい担体である。生理食塩水溶液ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶
液も、液体担体として、特に注射液として使用することができる。適切な医薬賦形剤とし
ては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、イネ、穀粉
、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タ
ルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタ
ノールなどが挙げられる(例えば、Handbook of Pharmaceutic
al Excipients,Arthur H.Kibbe(ed.,2000、その
全体が参照により本明細書の一部をなすものとする)、Am.Pharmaceutic
al Association,Washington,D.Cを参照されたい。
【0047】
所望であれば、組成物は、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有して
よい。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、エマルション、錠剤、ピル、カプセル剤、散剤
、徐放製剤などの形態をとってよい。経口製剤は、例えば、医薬品グレードのマンニトー
ル、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロ
ース、炭酸マグネシウムなどの標準の担体を含み得る。適切な医薬担体の例は、E.W.
Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sci
ences」に記載されている。そのような組成物は、予防有効量または治療有効量の予
防剤または治療剤を、好ましくは精製された形態で、患者への適当な投与のための形態を
もたらすために適量の担体と一緒に含有する。製剤は、投与形式に合うものであるべきで
ある。好ましい実施形態では、医薬組成物は、滅菌されており、対象、好ましくは動物対
象、より好ましくは哺乳動物対象、最も好ましくはヒト対象への投与に適する形態である
。
【0048】
特定の実施形態では、医薬組成物を、治療を必要とする領域に局所的に投与することが
望ましい場合があり、これは、例えば、これに限定するものではなく、注射による局所注
入によって、またはインプラントを用いて実現することができ、前記インプラントは、シ
ラスティック膜などの膜、または線維を含めた多孔質材料、非多孔質材料、もしくはゼラ
チン質材料である。好ましくは、抗CD3抗体を投与する場合には、抗CD3抗体が吸収
されない材料を使用するように注意しなければならない。
【0049】
別の実施形態では、組成物を小胞、特にリポソームとして送達することができる(La
nger,Science 249:1527-1533(1990);Treat e
t al.,in Liposomes in the Therapy of Inf
ectious Disease and Cancer,Lopez-Bereste
in and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353
-365(1989);Lopez-Berestein,ibid.,pp.317-
327;一般に同書を参照されたい)。
【0050】
さらに別の実施形態では、組成物を制御放出性または徐放性のシステムで送達すること
ができる。一実施形態では、ポンプを使用して、制御放出または持続放出を実現すること
ができる(Langer,supra;Sefton,(1987),CRC Crit
.Ref.Biomed.Eng.14:20;Buchwald et al.,19
80,Surgery 88:507;Saudek et al.,1989,N.E
ngl.J.Med.321:574を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材
料を使用して、本発明の抗体またはその断片の制御放出または持続放出を実現することが
できる(例えば、Medical Applications of Controll
ed Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pre
s.,Boca Raton,Fla.(1974);Controlled Drug
Bioavailability,Drug Product Design and
Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley
,New York(1984);Ranger and Peppas,(1983)
,J.,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61
を参照されたい;また、 Levy et al.,1985,Science 228
:190;During et al.,1989,Ann.Neurol.25:35
1;Howard et al.,1989,J.Neurosurg.71:105)
;米国特許第5,679,377号;米国特許第5,916,597号;米国特許第5,
912,015号;米国特許第5,989,463号;米国特許第5,128,326号
;PCT公開第WO99/15154号;およびPCT公開第WO99/20253号を
参照されたい)。徐放製剤に使用されるポリマーの例としては、これだけに限定されない
が、ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(
アクリル酸)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリ
コリド(PLG)、ポリ酸無水物、ポリ(N-ビニル ピロリドン)、ポリ(ビニルアル
コール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ乳酸(PLA)、ポ
リ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、およびポリオルトエステルが挙げられ
る。好ましい実施形態では、徐放製剤に使用されるポリマーは、不活性であり、浸出する
可能性がある不純物を含まず、保管中安定であり、無菌であり、生分解性である。さらに
別の実施形態では、制御放出または持続放出系を治療標的、すなわち、肺の近傍に置くこ
とができ、したがって、全身用量のほんの一部しか必要ない(例えば、Goodson,
in Medical Applications of Controlled Re
lease,supra,vol.2,pp.115-138(1984)を参照された
い)。
【0051】
制御放出システムは、Langerによる総説(1990,Science 249:
1527-1533)において考察されている。当業者に公知の任意の技法を使用して、
本発明の1つまたは複数の抗体またはその断片を含む徐放製剤を作製することができる。
例えば、そのそれぞれの全体が参照により本明細書の一部をなす、米国特許第4,526
,938号;PCT公開第WO91/05548号;PCT公開第WO96/20698
号;Ning et al.,1996,Radiotherapy & Oncolo
gy 39:179-189;Song et al.,1995,PDA Journ
al of Pharmaceutical Science & Technolog
y 50:372-397;Cleek et al.,1997,Pro.Int’l
.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.24:853-85
4;およびLam et al.,1997,Proc.Int’l.Symp.Con
trol Rel.Bioact.Mater.24:759-760を参照されたい。
【0052】
医薬組成物を、その意図された投与経路に適合するように製剤化することができる。投
与経路の例としては、これだけに限定されないが、非経口投与、例えば、静脈内投与、皮
内投与、皮下投与、経口投与、鼻腔内投与(例えば、吸入)、経皮(局部)投与、経粘膜
投与、および直腸内投与が挙げられる。特定の実施形態では、組成物を常套的な手順に従
って、ヒトへの静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、経口投与、鼻腔内投与または局部投
与に適合させた医薬組成物として製剤化する。好ましい実施形態では、医薬組成物を常套
的な手順に従って、ヒトへの皮下投与用に製剤化する。一般には、静脈内投与用の組成物
は、滅菌等張性水性緩衝剤中の溶液である。必要であれば、組成物は、可溶化剤および注
射部位の疼痛を和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔薬も含んでよい。
【0053】
組成物は、注射による、例えば、ボーラス注射または持続注入による非経口投与用に製
剤化することができる。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、アンプル中または複数用量
容器中に入れ、保存剤を添加して提供することができる。組成物は、懸濁液、溶液または
油性もしくは水性ビヒクル中のエマルションの形態を取り得、また、懸濁剤、安定化剤お
よび/または分散剤などの製剤化用薬剤(formulatory agent)を含有
し得る。あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフ
リー水を用いて構成するための粉末形態であり得る。
【0054】
特定の実施形態では、本開示は、抗CD3抗体を数時間または数日間の期間にわたって
、例えば、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、1
6時間、20時間、24時間、30時間、36時間、4日間、5日間、7日間、10日間
または14日間の期間にわたって連続的に投与することを可能にする剤形(例えば、ポン
プまたはそのような送達のための他のデバイスに関連する)を提供する。他の特定の実施
形態では、本発明は、用量を連続的に増加させて、例えば、51μg/m2/日から82
6μg/m2/日まで増加させて、24時間、30時間、36時間、4日間、5日間、7
日間、10日間または14日間の期間にわたって投与することを可能にする剤形を提供す
る。
【0055】
組成物を中性または塩の形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩と
しては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの、陰イオンを
用いて形成される塩、および、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸
化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒス
チジン、プロカインなどに由来するものなどの、陽イオンを用いて形成される塩が挙げら
れる。
【0056】
一般に、本明細書に開示される組成物の成分は、別々に、または混合して単位剤形とし
てのいずれかで、例えば、乾燥した凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、活性
薬剤の数量を示すアンプルまたはサシェなどの密封容器中に入れて供給される。組成物を
注入によって投与する場合、滅菌医薬品グレード水または生理食塩水を含有する注入ビン
を用いて分配することができる。組成物を注射によって投与する場合、成分を投与前に混
合することができるように注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することがで
きる。
【0057】
特に、本開示は、薬剤の数量を示すアンプルまたはサシェなどの密封容器中に包装する
ことができる抗CD3抗体またはその医薬組成物を提供する。一実施形態では、抗CD3
抗体またはその医薬組成物を、密封容器中の乾燥した滅菌凍結乾燥粉末または水を含まな
い濃縮物として供給し、これを、例えば水または生理食塩水を用いて対象への投与に適し
た濃度に再構成することができる。抗CD3抗体またはその医薬組成物を、密封容器中の
乾燥した滅菌凍結乾燥粉末として、少なくとも5mg、より好ましくは少なくとも10m
g、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45m
g、少なくとも50mg、少なくとも75mg、または少なくとも100mgの単位投与
量で供給することが好ましい。本明細書の凍結乾燥した予防剤、または医薬組成物は、そ
の元の容器中で2℃から8℃の間で保管すべきであり、また、本発明の予防剤もしくは治
療剤、または医薬組成物は、再構成後1週間以内に、好ましくは5日以内に、72時間以
内に、48時間以内に、24時間以内に、12時間以内に、6時間以内に、5時間以内に
、3時間以内に、または1時間以内に投与すべきである。代替の実施形態では、医薬組成
物を、薬剤の数量および濃度を示す密封容器中の液体形態で供給する。投与される組成物
の液体形態は、密封容器中、少なくとも0.25mg/ml、より好ましくは少なくとも
0.5mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも
5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15m
g/kg、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg
/mlまたは少なくとも100mg/mlで供給されることが好ましい。液体形態は、そ
の元の容器中、2℃から8℃の間で保管すべきである。
【0058】
特定の実施形態では、本開示は、抗CD3抗体の数量を示すアンプルまたはサシェなど
の密封容器中に包装される本発明の組成物を提供する。
【0059】
組成物は、所望であれば、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得る
パックまたはディスペンサーデバイスに入れて提供することができる。パックは、例えば
、金属またはプラスチックホイル、例えば、ブリスターパックなどを含む。
【0060】
T1Dに付随する1つまたは複数の症状の予防または好転に有効な本発明の組成物の量
は、標準の臨床技法によって決定することができる。製剤に使用される正確な用量は、投
与経路、および状態の重篤度にも依存し、実践者の判断および各患者の状況に従って決定
すべきである。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から導き出された用量反
応曲線から推定することができる。
【0061】
<方法および使用>
ある特定の実施形態では、本開示は、1型糖尿病が発生する素因を有するまたは前臨床
ステージの1型糖尿病を有するが、米国糖尿病学会またはImmunology of
Diabetes Societyによって確立された診断基準を満たさない個体に、1
型糖尿病の発症を予防するもしくは遅延させるために、かつ/またはそのような患者への
インスリンの投与の必要性を予防するもしくは遅延させるために、テプリズマブなどの抗
ヒトCD3抗体を投与することを包含する。ある特定の実施形態では、素因を有する対象
を同定するための高リスク因子としては、1型糖尿病と診断された第一度近親者もしくは
第二度近親者を有すること、空腹時グルコースレベルの異常(例えば、絶食(8時間食事
なし)後のグルコースレベルが100~125mg/dlであることの少なくとも1回の
判定)、75g OGTTに応答した耐糖能障害(例えば、75g OGTTに応答した
2時間後のグルコースレベルが140~199mg/dlであることの少なくとも1回の
判定)、コーカサス人ではHLA型がDR3、DR4もしくはDR7であること、アフリ
カ系人ではHLA型がDR3もしくはDR4であること、日系人ではHLA型がDR3、
DR4もしくはDR9であること、ウイルス(例えば、コクサッキーBウイルス、エンテ
ロウイルス、アデノウイルス、風疹、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイル
ス)への曝露、技術分野で認められている基準に従った少なくとも1つの他の自己免疫障
害(例えば、甲状腺疾患、小児脂肪便症)の陽性診断、ならびに/または、血清もしくは
他の組織における自己抗体、特にICAおよび1型糖尿病関連自己抗体の検出が挙げられ
る。ある特定の実施形態では、1型糖尿病が発生する素因を有すると同定された対象は、
本明細書に記載されており、かつ/または当技術分野で公知のリスク因子の少なくとも1
つを有する。本開示は、1型糖尿病が発生する素因を有する対象の同定も包含し、ここで
、前記対象は、本明細書に開示されるまたは当技術分野で公知のリスク因子の2つ以上、
3つ以上、4つ以上、または5つよりも多くの組合せを示す。
【0062】
1型糖尿病または1型糖尿病が発生する素因に関連する血清中自己抗体は、膵島細胞自
己抗体(例えば、抗ICA512自己抗体)、グルタミン酸デカルバミラーゼ自己抗体(
例えば、抗GAD65自己抗体)、IA2抗体、ZnT8抗体および/または抗インスリ
ン自己抗体である。したがって、この実施形態に従った特定の例では、本発明は、個体を
、1型糖尿病が発生する素因に関連するか、初期1型糖尿病に関連する検出可能な自己抗
体(例えば、抗IA2、抗ICA512、抗GADもしくは抗インスリン自己抗体)を用
いて治療することを包含し、ここで、前記個体は、1型糖尿病と診断されておらず、かつ
/または、1型糖尿病患者の第一度近親者もしくは第二度近親者である。ある特定の実施
形態では、自己抗体の存在を、ELISA、電気化学発光(ECL)、ラジオアッセイ(
例えば、Yu et al.,1996,J.Clin.Endocrinol.Met
ab.81:4264-4267を参照されたい)、凝集PCR(Tsai et al
,ACS Central Science 2016 2(3),139-147)に
よって、または本明細書に記載されているもしくは当業者に公知の、抗体を免疫特異的に
検出するための任意の他の方法によって検出する。
【0063】
治療の前、その間、およびその後のβ細胞機能を、本明細書に記載の方法によって、ま
たは当業者に公知の任意の方法によって評価することができる。例えば、Diabete
s Control and Complications Trial(DCCT)研
究グループにより、血中グルコース制御を評価するための標準としてパーセンテージグリ
コシル化ヘモグロビン(HA1およびHA1c)をモニタリングすることが確立された(
DCCT,(1993),N.Engl.J.Med.329:977-986)。ある
いは、1日のインスリン必要量、Cペプチドレベル/応答、低血中グルコースエピソード
、および/またはFPIRの特徴付けをβ細胞機能のマーカーとして、または治療指数を
確立するために使用することができる(それぞれKeymeulen et al.,2
005,N.Engl.J.Med.352:2598-2608;Herold et
al.,2005,Diabetes 54:1763-1769;米国特許出願公開
第2004/0038867号A1;およびGreenbaum et al.,200
1,Diabetes 50:470-476を参照されたい)。例えば、FPIRは、
Islet Cell Antibody Register User’s Stud
yプロトコールに従って実施されるIGTTの1分後および3分後のインスリン値の合計
として算出される(例えば、Bingley et al.,1996,Diabete
s 45:1720-1728およびMcCulloch et al.,1993,D
iabetes Care 16:911-915を参照されたい)。
【0064】
一部の実施形態では、T1Dが発生する素因を有する個体は、T1D患者の血縁者であ
る非糖尿病対象であり得る。ある特定の実施形態では、非糖尿病対象は、膵島細胞抗体(
ICA)、インスリン自己抗体(IAA)、およびグルタミン酸脱炭素酵素(GAD)、
チロシンホスファターゼ(IA-2/ICA512)またはZnT8に対する抗体から選
択される糖尿病関連自己抗体を2種以上有する。
【0065】
種々の実施形態では、非糖尿病対象は、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で耐糖能の
異常を有する。OGTTでの耐糖能の異常は、110~125mg/dLの空腹時グルコ
ースレベル、または140mg/dL以上200mg/dL未満の血漿2時間値、または
200mg/dL超のOGTT中の30分、60分もしくは90分での途中のグルコース
値と定義される。
【0066】
一部の実施形態では、抗CD3抗体、例えばテプリズマブに応答する非糖尿病対象は、
ZnT8に対する抗体を有しない。ある特定の実施形態では、そのような非糖尿病対象は
、HLA-DR4+であり、かつHLA-DR3+ではない。一部の実施形態では、その
ような抗CD3抗体、例えばテプリズマブに応答する非糖尿病対象では、投与後(例えば
、1カ月後、2カ月後、3カ月後、またはそれよりも後もしくはそれよりも前)に、末梢
血単核細胞中のTIGIT+KLRG1+CD8+T細胞の頻度(または相対量)の増加
が(例えば、フローサイトメトリーによって)実証される。
【0067】
種々の実施形態では、予防有効量は、抗CD3抗体、例えばテプリズマブを10~10
00マイクログラム/平方メートル(μg/m2)で皮下(SC)注射または静脈内(I
V)注入する10~14日間のクールを含む。一実施例では、予防有効量は、抗CD3抗
体、例えばテプリズマブを、0~3日目にそれぞれ51μg/m2、103μg/m2、
207μg/m2、および413μg/m2でIV注入し、4~13日目の各日に826
μg/m2の単一用量をIV注入する14日間のクールを含む。ある特定の実施形態では
、予防有効量は、T1Dの臨床診断までの時間の中央値を少なくとも50%、少なくとも
80%、もしくは少なくとも90%、または少なくとも12カ月、少なくとも18カ月、
少なくとも24カ月、少なくとも36カ月、少なくとも48カ月、もしくは少なくとも6
0カ月、またはそれよりも長く遅延させるものである。
【0068】
ある特定の実施形態では、抗CD3抗体、例えばテプリズマブを用いた投薬のクールを
、2カ月、4カ月、6カ月、8カ月、9カ月、10カ月、12カ月、15カ月、18カ月
、24カ月、30カ月、または36カ月の間隔を空けて繰り返すことができる。特定の実
施形態では、抗CD3抗体、例えばテプリズマブを用いた治療の有効性を、前の治療の2
カ月後、4カ月後、6カ月後、9カ月後、12カ月後、15カ月後、18カ月後、24カ
月後、30カ月後、または36カ月後に本明細書に記載の通りまたは当技術分野で公知の
通り決定する。
【0069】
別の実施形態では、対象に、T1Dの1つまたは複数の症状を予防する、治療する、ま
たは好転させるために、およそ0.5~50μg/kg、およそ0.5~40μg/kg
、およそ0.5~30μg/kg、およそ0.5~20μg/kg、およそ0.5~15
μg/kg、およそ0.5~10μg/kg、およそ0.5~5μg/kg、およそ1~
5μg/kg、およそ1~10μg/kg、およそ20~40μg/kg、およそ20~
30μg/kg、およそ22~28μg/kgまたはおよそ25~26μg/kgの抗C
D3抗体、例えばテプリズマブである1つまたは複数の単位用量を投与する。別の実施形
態では、対象に、T1Dの1つまたは複数の症状を予防する、治療する、または好転させ
るために、約200μg/kg、178μg/kg、180μg/kg、128μg/k
g、100μg/kg、95μg/kg、90μg/kg、85μg/kg、80μg/
kg、75μg/kg、70μg/kg、65μg/kg、60μg/kg、55μg/
kg、50μg/kg、45μg/kg、40μg/kg、35μg/kg、30μg/
kg、26μg/kg、25μg/kg、20μg/kg、15μg/kg、13μg/
kg、10μg/kg、6.5μg/kg、5μg/kg、3.2μg/kg、3μg/
kg、2.5μg/kg、2μg/kg、1.6μg/kg、1.5μg/kg、1μg
/kg、0.5μg/kg、0.25μg/kg、0.1μg/kg、または0.05μ
g/kgの抗CD3抗体、例えばテプリズマブである1つまたは複数の単位用量を投与す
る。
【0070】
特定の実施形態では、対象に、約5~1200μg/m2、好ましくは、51~826
μg/m2の抗CD3抗体、例えばテプリズマブである1つまたは複数の用量を投与する
。別の実施形態では、対象に、T1Dの1つまたは複数の症状を予防する、治療する、そ
の増悪を緩徐にする、その発症を遅延させる、またはそれを好転させるために、1200
μg/m2、1150μg/m2、1100μg/m2、1050μg/m2、1000
μg/m2、950μg/m2、900μg/m2、850μg/m2、800μg/m
2、750μg/m2、700μg/m2、650μg/m2、600μg/m2、55
0μg/m2、500μg/m2、450μg/m2、400μg/m2、350μg/
m2、300μg/m2、250μg/m2、200μg/m2、150μg/m2、1
00μg/m2、50μg/m2、40μg/m2、30μg/m2、20μg/m2、
15μg/m2、10μg/m2、または5μg/m2の抗CD3抗体、例えばテプリズ
マブである1つまたは複数の単位用量を投与する。
【0071】
別の実施形態では、対象に、抗CD3抗体、例えばテプリズマブの予防有効量の1つま
たは複数の用量を含む治療レジメンを投与し、ここで、治療のクールを、2日間、3日間
、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、
13日間または14日間にわたって投与する。一実施形態では、治療レジメンは、予防有
効量の用量を毎日、1日おきに、2日おきに、3日おきに、または4日おきに投与するこ
とを含む。ある特定の実施形態では、治療レジメンは、予防有効量の用量を、14用量、
13用量、13用量、12用量、11用量、10用量、9用量、または8用量が投与され
るまで、所与の週の月曜日、火曜日、水曜日、木曜日に投与し、同じ週の金曜日、土曜日
、および日曜日には予防有効量の用量を投与しないことを含む。ある特定の実施形態では
、投与される用量は、レジメンの各日で同じである。
【0072】
ある特定の実施形態では、対象に、抗CD3抗体、例えばテプリズマブの予防有効量の
1つまたは複数の用量を含む治療レジメンを投与し、ここで、予防有効量は、200μg
/kg/日、175μg/kg/日、150μg/kg/日、125μg/kg/日、1
00μg/kg/日、95μg/kg/日、90μg/kg/日、85μg/kg/日、
80μg/kg/日、75μg/kg/日、70μg/kg/日、65μg/kg/日、
60μg/kg/日、55μg/kg/日、50μg/kg/日、45μg/kg/日、
40μg/kg/日、35μg/kg/日、30μg/kg/日、26μg/kg/日、
25μg/kg/日、20μg/kg/日、15μg/kg/日、13μg/kg/日、
10μg/kg/日、6.5μg/kg/日、5μg/kg/日、3.2μg/kg/日
、3μg/kg/日、2.5μg/kg/日、2μg/kg/日、1.6μg/kg/日
、1.5μg/kg/日、1μg/kg/日、0.5μg/kg/日、0.25μg/k
g/日、0.1μg/kg/日、もしくは0.05μg/kg/日である;および/また
は、予防有効量は、1200μg/m2/日、1150μg/m2/日、1100μg/
m2/日、1050μg/m2/日、1000μg/m2/日、950μg/m2/日、
900μg/m2/日、850μg/m2/日、800μg/m2/日、750μg/m
2/日、700μg/m2/日、650μg/m2/日、600μg/m2/日、550
μg/m2/日、500μg/m2/日、450μg/m2/日、400μg/m2/日
、350μg/m2/日、300μg/m2/日、250μg/m2/日、200μg/
m2/日、150μg/m2/日、100μg/m2/日、50μg/m2/日、40μ
g/m2/日、30μg/m2/日、20μg/m2/日、15μg/m2/日、10μ
g/m2/日、もしくは5μg/m2/日である。
【0073】
別の実施形態では、1型糖尿病の1つまたは複数の症状を予防する、治療する、または
好転させるために、1200μg/m2以下、1150μg/m2以下、1100μg/
m2以下、1050μg/m2以下、1000μg/m2以下、950μg/m2以下、
900μg/m2以下、850μg/m2以下、800μg/m2以下、750μg/m
2以下、700μg/m2以下、650μg/m2以下、600μg/m2以下、550
μg/m2以下、500μg/m2以下、450μg/m2以下、400μg/m2以下
、350μg/m2以下、300μg/m2以下、250μg/m2以下、200μg/
m2以下、150μg/m2以下、100μg/m2以下、50μg/m2以下、40μ
g/m2以下、30μg/m2以下、20μg/m2以下、15μg/m2以下、10μ
g/m2以下、または5μg/m2以下の抗CD3抗体、例えばテプリズマブである静脈
内用量を約24時間、約22時間、約20時間、約18時間、約16時間、約14時間、
約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1.5時間、約
1時間、約50分、約40分、約30分、約20分、約10分、約5分、約2分、約1分
、約30秒間または約10秒間にわたって投与する。レジメンの持続時間にわたる総投与
量は、合計で9000μg/m2未満、8000μg/m2未満、7000μg/m2未
満、6000μg/m2未満であることが好ましく、5000μg/m2未満、4000
μg/m2未満、3000μg/m2未満、2000μg/m2未満、または1000μ
g/m2未満であり得る。特定の実施形態では、レジメンで投与される総投与量は、10
0μg/m2~200μg/m2、100μg/m2~500μg/m2、100μg/
m2~1000μg/m2、または500μg/m2~1000μg/m2である。
【0074】
好ましい実施形態では、治療レジメンの用量の最初の4分の1、最初の半分または最初
の2/3にわたって(例えば、1日当たり1用量の10日間、12日間、14日間、16
日間、18日間または20日間のレジメンの最初の2日間、3日間、4日間、5日間、ま
たは6日間にわたって)、抗CD3抗体、例えばテプリズマブの1日の予防有効量が達成
されるまで用量を漸増させる。ある特定の実施形態では、対象に、抗CD3抗体、例えば
テプリズマブの予防有効量の1つまたは複数の用量を含む治療レジメンを投与し、ここで
、予防有効量を、例えば、治療が進行するにしたがい、毎日0.01μg/kgずつ、0
.02μg/kgずつ、0.04μg/kgずつ、0.05μg/kgずつ、0.06μ
g/kgずつ、0.08μg/kgずつ、0.1μg/kgずつ、0.2μg/kgずつ
、0.25μg/kgずつ、0.5μg/kgずつ、0.75μg/kgずつ、1μg/
kgずつ、1.5μg/kgずつ、2μg/kgずつ、4μg/kgずつ、5μg/kg
ずつ、10μg/kgずつ、15μg/kgずつ、20μg/kgずつ、25μg/kg
ずつ、30μg/kgずつ、35μg/kgずつ、40μg/kgずつ、45μg/kg
ずつ、50μg/kgずつ、55μg/kgずつ、60μg/kgずつ、65μg/kg
ずつ、70μg/kgずつ、75μg/kgずつ、80μg/kgずつ、85μg/kg
ずつ、90μg/kgずつ、95μg/kgずつ、100μg/kgずつ、もしくは12
5μg/kgずつ増加させる;または、例えば、毎日1μg/m2ずつ、5μg/m2ず
つ、10μg/m2ずつ、15μg/m2ずつ、20μg/m2ずつ、30μg/m2ず
つ、40μg/m2ずつ、50μg/m2ずつ、60μg/m2ずつ、70μg/m2ず
つ、80μg/m2ずつ、90μg/m2ずつ、100μg/m2ずつ、150μg/m
2ずつ、200μg/m2ずつ、250μg/m2ずつ、300μg/m2ずつ、350
μg/m2ずつ、400μg/m2ずつ、450μg/m2ずつ、500μg/m2ずつ
、550μg/m2ずつ、600μg/m2ずつ、もしくは650μg/m2ずつ増加さ
せる。ある特定の実施形態では、対象に、抗CD3抗体、例えばテプリズマブの予防有効
量の1つまたは複数の用量を含む治療レジメンを投与し、ここで、予防有効量を、抗CD
3抗体、例えばテプリズマブの1日の予防有効量が達成されるまで1.25倍、1.5倍
、2倍、2.25倍、2.5倍、または5倍に増加させる。
【0075】
特定の実施形態では、対象に、T1Dの1つまたは複数の症状を予防する、治療する、
または好転させるために、200μg/kg以下、好ましくは175μg/kg以下、1
50μg/kg以下、125μg/kg以下、100μg/kg以下、95μg/kg以
下、90μg/kg以下、85μg/kg以下、80μg/kg以下、75μg/kg以
下、70μg/kg以下、65μg/kg以下、60μg/kg以下、55μg/kg以
下、50μg/kg以下、45μg/kg以下、40μg/kg以下、35μg/kg以
下、30μg/kg以下、25μg/kg以下、20μg/kg以下、15μg/kg以
下、10μg/kg以下、5μg/kg以下、2.5μg/kg以下、2μg/kg以下
、1.5μg/kg以下、1μg/kg以下、0.5μg/kg以下、または0.5μg
/kg以下の抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラルマブ
である1つまたは複数の用量を筋肉内投与する。
【0076】
別の実施形態では、対象に、T1Dの1つまたは複数の症状を予防する、治療する、ま
たは好転させるために、200μg/kg以下、好ましくは175μg/kg以下、15
0μg/kg以下、125μg/kg以下、100μg/kg以下、95μg/kg以下
、90μg/kg以下、85μg/kg以下、80μg/kg以下、75μg/kg以下
、70μg/kg以下、65μg/kg以下、60μg/kg以下、55μg/kg以下
、50μg/kg以下、45μg/kg以下、40μg/kg以下、35μg/kg以下
、30μg/kg以下、25μg/kg以下、20μg/kg以下、15μg/kg以下
、10μg/kg以下、5μg/kg以下、2.5μg/kg以下、2μg/kg以下、
1.5μg/kg以下、1μg/kg以下、0.5μg/kg以下、または0.5μg/
kg以下の抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラルマブで
ある1つまたは複数の用量を皮下投与する。
【0077】
別の実施形態では、対象に、T1Dの1つまたは複数の症状を予防する、治療する、ま
たは好転させるために、100μg/kg以下、好ましくは95μg/kg以下、90μ
g/kg以下、85μg/kg以下、80μg/kg以下、75μg/kg以下、70μ
g/kg以下、65μg/kg以下、60μg/kg以下、55μg/kg以下、50μ
g/kg以下、45μg/kg以下、40μg/kg以下、35μg/kg以下、30μ
g/kg以下、25μg/kg以下、20μg/kg以下、15μg/kg以下、10μ
g/kg以下、5μg/kg以下、2.5μg/kg以下、2μg/kg以下、1.5μ
g/kg以下、1μg/kg以下、0.5μg/kg以下、または0.5μg/kg以下
の抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラルマブである1つ
または複数の用量を静脈内投与する。別の実施形態では、T1Dの1つまたは複数の症状
を予防する、治療する、または好転させるために、100μg/kg以下、95μg/k
g以下、90μg/kg以下、85μg/kg以下、80μg/kg以下、75μg/k
g以下、70μg/kg以下、65μg/kg以下、60μg/kg以下、55μg/k
g以下、50μg/kg以下、45μg/kg以下、40μg/kg以下、35μg/k
g以下、30μg/kg以下、25μg/kg以下、20μg/kg以下、15μg/k
g以下、10μg/kg以下、5μg/kg以下、2.5μg/kg以下、2μg/kg
以下、1.5μg/kg以下、1μg/kg以下、0.5μg/kg以下、または0.5
μg/kg以下の抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラル
マブである静脈内用量を、約6時間、約4時間、約2時間、約1.5時間、約1時間、約
50分、約40分、約30分、約20分、約10分、約5分、約2分、約1分、約30秒
間または約10秒間にわたって投与する。
【0078】
別の実施形態では、対象に、T1Dの1つまたは複数の症状を予防する、治療する、ま
たは好転させるために、100μg/kg以下、好ましくは95μg/kg以下、90μ
g/kg以下、85μg/kg以下、80μg/kg以下、75μg/kg以下、70μ
g/kg以下、65μg/kg以下、60μg/kg以下、55μg/kg以下、50μ
g/kg以下、45μg/kg以下、40μg/kg以下、35μg/kg以下、30μ
g/kg以下、25μg/kg以下、20μg/kg以下、15μg/kg以下、10μ
g/kg以下、5μg/kg以下、2.5μg/kg以下、2μg/kg以下、1.5μ
g/kg以下、1μg/kg以下、0.5μg/kg以下、または0.5μg/kg以下
の抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラルマブである1つ
または複数の用量を経口投与する。別の実施形態では、T1Dの1つまたは複数の症状を
予防する、治療する、または好転させるために、100μg/kg以下、95μg/kg
以下、90μg/kg以下、85μg/kg以下、80μg/kg以下、75μg/kg
以下、70μg/kg以下、65μg/kg以下、60μg/kg以下、55μg/kg
以下、50μg/kg以下、45μg/kg以下、40μg/kg以下、35μg/kg
以下、30μg/kg以下、25μg/kg以下、20μg/kg以下、15μg/kg
以下、10μg/kg以下、5μg/kg以下、2.5μg/kg以下、2μg/kg以
下、1.5μg/kg以下、1μg/kg以下、0.5μg/kg以下、または0.5μ
g/kg以下の抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラルマ
ブである経口用量を、約6時間、約4時間、約2時間、約1.5時間、約1時間、約50
分、約40分、約30分、約20分、約10分、約5分、約2分、約1分、約30秒間ま
たは約10秒間にわたって投与する。
【0079】
投薬レジメンの最初の数日間にわたって漸増用量を投与する特定の実施形態では、レジ
メンの1日目の用量は、5~100μg/m2/日、好ましくは51μg/m2/日であ
り、3日目、4日目、5日目、6日目または7日目までに、直上に記載されている1日用
量まで漸増させる。例えば、対象に、1日目におよそ51μg/m2/日の用量を投与し
、2日目におよそ103μg/m2/日を投与し、3日目におよそ207μg/m2/日
を投与し、4日目におよそ413μg/m2/日を投与し、レジメンのその後の数日間(
例えば、5~14日目)に826μg/m2/日を投与する。別の実施形態では、対象に
、1日目におよそ227μg/m2/日の用量を投与し、2日目におよそ459μg/m
2/日を投与し、3日目およびその後の数日間はおよそ919μg/m2/日を投与する
。別の実施形態では、対象に、1日目におよそ284μg/m2/日の用量を投与し、2
日目におよそ574μg/m2/日を投与し、3日目およびその後の数日間はおよそ11
48μg/m2/日を投与する。
【0080】
他の実施形態では、初用量は、レジメンの最後の1日用量の1/4、その1/2、それ
と同量であるが、6時間、8時間、10時間または12時間の間隔を空けて小分けして投
与する。例えば、13μg/kg/日の用量を、抗体の投与によって引き起こされるサイ
トカイン放出のレベルを低下させるために3~4μg/kgの4用量で6時間の間隔を空
けて投与する。特定の実施形態では、サイトカイン放出および他の有害作用の可能性を低
減するために、レジメンの最初の1用量、2用量、3用量、または4用量または全ての用
量を静脈内投与によってより緩徐に投与する。例えば、51μg/m2/日の用量を、約
5分、約15分、約30分、約45分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8
時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、お
よび約22時間にわたって投与することができる。ある特定の実施形態では、用量を、緩
徐注入により、例えば、20~24時間の期間にわたって投与する。特定の実施形態では
、用量をポンプで、好ましくは注入が進行するにしたがって投与する抗体の濃度を上昇さ
せて注入する。
【0081】
他の実施形態では、上記の51μg/m2/日~826μg/m2/日レジメンに対す
る用量の指定の画分を漸増用量で投与する。ある特定の実施形態では、画分は、上記のレ
ジメンの1日用量の1/10、1/4、1/3、1/2、2/3または3/4である。し
たがって、画分が1/10である場合、1日用量は、1日目が5.1μg/m2、2日目
が10.3μg/m2、3日目が20.7μg/m2、4日目が41.3μg/m2、お
よび5~14日目が82.6μg/m2になる。画分が1/4である場合、用量は、1日
目が12.75μg/m2、2日目が25.25μg/m2、3日目が51μg/m2、
4日目が103μg/m2、および5~14日目が207μg/m2になる。画分が1/
3である場合、用量は、1日目が17μg/m2、2日目が34.3μg/m2、3日目
が69μg/m2、4日目が137.6μg/m2、および5~14日目が275.3μ
g/m2になる。画分が1/2である場合、用量は、1日目が25.5μg/m2、2日
目が51μg/m2、3日目が103μg/m2、4日目が207μg/m2、および5
~14日目が413μg/m2になる。画分が2/3の場合、用量は、1日目が34μg
/m2、2日目が69μg/m2、3日目が137.6μg/m2、4日目が275.3
μg/m2、および5~14日目が550.1μg/m2になる。画分が3/4の場合、
用量は、1日目が38.3μg/m2、2日目が77.3μg/m2、3日目が155.
3μg/m2、4日目が309.8μg/m2、および5~14日目が620μg/m2
になる。他の実施形態では、レジメンは、上記のレジメンのうちの1つと同一であるが、
1~4日目、1~5日目、または1~6日目のみにわたる。例えば、特定の実施形態では
、用量は、1日目が17μg/m2、2日目が34.3μg/m2、3日目が69μg/
m2、4日目が137.6μg/m2、ならびに5日目および6日目が275.3μg/
m2になる。
【0082】
特定の実施形態では、抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフ
ォラルマブを、何日にもわたって1日用量で投与するのではなく、4時間、6時間、8時
間、10時間、12時間、15時間、18時間、20時間、24時間、30時間または3
6時間にわたる連続様式での注入によって投与する。注入は一定であってもよく、例えば
、注入の最初の1時間、2時間、3時間、5時間、6時間、または8時間は低投与量で開
始し、その後、より高い投与量に増加することもできる。注入のクールにわたって、患者
は、上記の5~20日間のレジメンで投与される量と等しい用量を受ける。例えば、およ
そ150μg/m2、200μg/m2、250μg/m2、500μg/m2、750
μg/m2、1000μg/m2、1500μg/m2、2000μg/m2、3000
μg/m2、4000μg/m2、5000μg/m2、6000μg/m2、7000
μg/m2、8000μg/m2、または9000μg/m2の用量。特に、注入のスピ
ードおよび持続時間を、投与後の対象における遊離の抗CD3抗体、例えばテプリズマブ
、オテリキシズマブまたはフォラルマブのレベルが最小限になるようにデザインする。あ
る特定の実施形態では、遊離の抗CD3抗体、例えばテプリズマブのレベルは、遊離抗体
1ml当たり200ngを超えるべきではない。さらに、注入を、少なくとも50%、6
0%、70%、80%、90%、95%または100%のT細胞受容体コーティングと調
節の組合せが実現されるようにデザインされる。
【0083】
他の実施形態では、1型糖尿病の1つまたは複数の症状を治療する、予防する、または
その発症もしくは増悪を緩徐にするもしくは遅延させる、またはそれを好転させるために
、抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブまたはフォラルマブを長期にわ
たって投与する。例えば、ある特定の実施形態では、抗CD3抗体、例えばテプリズマブ
を、低用量で、上記の6~14日間の投与量レジメンの代替としてか、またはそのような
レジメン後にその効果を増強もしくは維持するために、1カ月に1回、1カ月に2回、1
カ月に3回、週に1回またはさらに頻繁に投与する。そのような低用量は、1μg/m2
から100μg/m2までの任意の用量、例えば、およそ5μg/m2、10μg/m2
、15μg/m2、20μg/m2、25μg/m2、30μg/m2、35μg/m2
、40μg/m2、45μg/m2、または50μg/m2などであり得る。
【0084】
他の実施形態では、対象に、抗CD3抗体、例えばテプリズマブ、オテリキシズマブま
たはフォラルマブの投薬レジメンの施行後のいつかに、例えば、1つまたは複数の生理的
パラメータに基づいて再投薬を行うこともでき、当然のこととして再投薬を行うこともで
きる。そのような再投薬の施行および/またはそのような再投薬の必要性の評価は、投薬
レジメンの施行の2カ月後、4カ月後、6カ月後、8カ月後、9カ月後、1年後、15カ
月後、18カ月後、2年後、30カ月後または3年後に行うことができ、また、6カ月ご
と、9カ月ごと、1年ごと、15カ月ごと、18カ月ごと、2年ごと、30カ月ごとまた
は3年ごとに無制限に治療のクールを施行することを含み得る。
【実施例0085】
[要約]
背景:インスリン産生β細胞の破壊および生存のための外因性インスリンへの依存に至
る1型糖尿病(T1D)は、慢性自己免疫疾患である。臨床疾患を有する患者におけるイ
ンスリン産生の喪失を減弱させることに関していくつかの介入の成功が示されているが、
当該疾患が発生するリスクが高い個体における疾患の増悪に影響を及ぼすことができた介
入は現在まで存在していない。
【0086】
方法:臨床疾患のリスクが高いT1D患者の非糖尿病血縁者に対してテプリズマブ(F
cR非結合性抗CD3mAb)のランダム化プラセボ対照二重盲検試験を行った。患者を
、薬物またはプラセボの単回の14日間のクールにランダム化し、およそ6カ月の間隔で
疾患増悪について経口ブドウ糖負荷試験を使用して追跡調査した。
【0087】
結果:合計76名の対象について、44名をテプリズマブアームに、32名をプラセボ
アームにランダムに割り当てた。参加者の72パーセントが小児であった。テプリズマブ
による治療により、T1Dの臨床診断までの時間の中央値が24.4カ月から48.4カ
月まで遅延し(コックス比例ハザード、p=0.006)、1年当たりの糖尿病の発生率
が9.8%から4.1%までになった。薬物治療により、TIGIT+KLRG1+CD
8+T細胞の割合が増大した。ZnT8に対する抗体を有しない参加者(p=0.01)
、HLA-DR4+である参加者(p=0.006)、およびHLA-DR3+ではない
参加者(p=0.05)がテプリズマブに応答する可能性が最も高かった。
【0088】
結論:テプリズマブにより、リスクが高い個体におけるT1Dの診断を遅延させること
ができる。個体の亜群が治療法および効果に応答する可能性がより高い可能性がある。
【0089】
[方法]
<試験参加者>
参加者をTrialNet Natural History Study14を通じ
て同定した。この試験は、2011年7月から2018年11月の間に米国、カナダおよ
びドイツ内のサイトで行われた。各参加サイトにおいて治験審査委員会(IRB)の認可
を得た。患者、患者の親、または両者から試験に入る前に書面のインフォームドコンセン
トを得た。
【0090】
適格参加者は、1型糖尿病を有する患者の非糖尿病血縁者であり、ランダム化時に8歳
を超えており、臨床糖尿病が発生するリスクが高い参加者であった。適格参加者は、ラン
ダム化前6カ月以内の2つの試料収集物に関して糖尿病関連自己抗体を2種以上有した。
さらに、適格参加者は、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)に関して、登録後52日以内
に2度、110~125mg/dLの空腹時グルコースレベル、または140mg/dL
超200mg/dL未満の血漿2時間値、または200mg/dL超のOGTT中の30
分後、60分後、もしくは90分後での途中のグルコース値と定義される耐糖能の異常を
有した。2014年にプロトコールを修正して、単回のOGTT異常を有する18歳未満
の参加者の登録を認めた。これは、この年齢群では確証OGTTを伴う場合と伴わない場
合とでT1D増悪の速度が同様であったことが理由である。これらの対象8名(5名がテ
プリズマブアームおよび3名がプラセボアーム)では、第2の治療前OGTTを試験薬物
投与の1日目に行った。他の重要な病歴、臨床化学検査値または血球数の異常を有する個
体は除外した。
【0091】
<患者の同定>
対象をTrialNet Pathway to Prevention(PTP)試
験において同定した。
図5を参照されたい。PTP試験には、1~45歳のT1D患者の
第一度近親者、および20歳までの第二度近親者または第三度近親者を登録し、微小イン
スリンに対する糖尿病自己抗体(mIAA)、グルタミン酸脱炭素酵素-65(GAD)
、およびインスリノーマ関連抗原-2(IA-2、またはICA512)について評価し
た。検査した他の抗体の少なくとも1種が陽性であった場合、膵島細胞(ICA)および
亜鉛トランスポーター8(ZnT8)自己抗体を測定した。
【0092】
<試験デザインおよび介入>
テプリズマブまたはプラセボのいずれかを受けるように参加者をランダム化し、各群へ
の割り当ては同等にした。ランダム化を各TrialNet試験サイトにおいて年齢(1
8歳超または18歳未満)、および事前ランダム化OGTT状態の間のグルコースによっ
て層別化した。治療への割り当てを二重マスク化した。
【0093】
参加者は、臨床研究センターにおいて、外来患者として、以前に記載されている薬物投
薬レジメン9,10を使用してテプリズマブまたはプラセボを投与する14日間のクール
を受けた。具体的には、活性試験薬物を受けるように割り当てられた参加者は、テプリズ
マブを、テプリズマブの1日のIV注入を、試験0~3日目にそれぞれ51マイクログラ
ム/平方メートル(μg/m2)、103μg/m2、207μg/m2、および413
μg/m2、ならびに試験4~13日目の各日に826μg/m2の単一用量の1日のス
ケジュールに従って受けた。プラセボアームにランダム化された参加者は、対応するIV
生理食塩水の14日間のクールを受けた。参加者は、最初の5日間は注入前にイブプロフ
ェンおよびジフェンヒドラミンを受け、その後、症候を軽減するために必要に応じてイブ
プロフェン、ジフェンヒドラミンおよび/またはアセトアミノフェンのさらなる投薬を受
けた。プロトコールに定義された試験薬物注入の中止基準に従った。
【0094】
試験全体の間、対象全員が試験担当者と有害事象および糖尿病の症状に関する形式的な
問診のために一時的に接触した。
【0095】
<エンドポイントおよび評価>
主要転帰は、米国糖尿病学会によって定義された基準15を使用した、ランダム化から
糖尿病の診断までの経過時間であった。
【0096】
予定したOGTT試験を注入の3カ月後および6カ月後、ならびに、その後6カ月ごと
に行った。ランダムグルコースのスクリーニングを3カ月おきに実施し、ランダムグルコ
ースが200mg/dl超であり、糖尿病の症状が伴った場合にはOGTT試験を実施し
た。糖尿病OGTT試験を逐次的に確認することが必要であり、診断日を第2の診断検査
時として同定した。治療の割り当てを知らない状態で転帰の検討を行った。
【0097】
血液試料を、TrialNetコア研究室を中心として、実験方法に記載の方法を用い
て分析した。フローサイトメトリーを使用して、末梢血中のCD8+T細胞サブセットを
分析した(
図4)。
【0098】
<実験方法>
Cペプチドを、凍結した血漿から、2つのサイトでの酵素免疫測定アッセイ(Toso
h Bioscience、South San Francisco、CA)によって
測定した。HbA1cを、イオン交換高速液体クロマトグラフィー(Variant I
I、Bio-Rad Diagnostics、Hercules、CA)を使用して測
定した。各アッセイについて、分割した2連の試料からの信頼度係数は0.99を上回っ
た。mIAA、GAD-65Ab、ICA-512Ab、ZnT8AをBarbara
Davis Diabetes Center、Anschultz COにおいて放射
免疫結合アッセイを使用して測定し、ICAをUniversity of Flori
da at Gainesvilleにおいて間接免疫蛍光法を使用して測定した。Cペ
プチド、グルコースおよびHbA1cをNorthwest Research Lab
oratory、Seattle、WAにおいて測定した。Cペプチドを凍結した血漿か
ら2つのサイトでの酵素免疫測定アッセイ(Tosoh Bioscience,Sou
th San Francisco,CA)によって測定し、HbA1cをイオン交換高
速液体クロマトグラフィー(Variant II、Bio-Rad Diagnost
ics、Hercules、CA)を使用して測定した。各アッセイについて、分割した
2連の試料からの信頼度係数は0.99を上回った。全血中のEBVおよびCMVウイル
ス負荷量をUniversity of Coloradoにおいて以前に記載された方
法1を使用して測定した。
【0099】
<フローサイトメトリー>
末梢血単核細胞(PBMC)を処理し、NIDDKレポジトリにおいて保管した。PB
MCの凍結バイアルを、
図4に示されている抗体パネルを用いたフローサイトメトリーに
よる分析のためにBenaroya Research Instituteに送付した
。PBMCに対してT細胞表現型決定をLSR-Fortessa(BD Biosci
ences)でFACS Divaソフトウェアを用いて以前に記載されている通り実施
し、FlowJoソフトウェアバージョン9.5(Tree Star、Ashland
、OR)を用いて解析した。TIGIT+KLRG+CD57-、TIGIT-KLRG
1-CD57-、またはCD4+CD127
loFoxp3+(CD4+Treg)であ
るCD8+T細胞の頻度を以前に記載されている通り決定した
2。四分円を染色対照に基
づいて設置した。
【0100】
<試験監督>
本試験は、国立衛生研究所(National Institutes of Hea
lth)および青少年糖尿病研究財団(Juvenile Diabetes Rese
arch Foundation)による資金援助を受けてType 1 Diabet
es TrialNetによって開発され、実施された。
【0101】
CBCおよび白血球分画ならびに常套的な化学検査を注入実施サイトで分析した以外は
、試験のコーディネート、臨床検査、およびデータ管理は中心的に行った。独立したメデ
ィカルモニター(治療の割り当てに関してはマスク化された)が得られた安全性データ全
てを精査した。
【0102】
<統計解析>
各群内のランダム化からの経時的な糖尿病発症の累積的な発生率を「無糖尿病(dia
betes-free)」生存関数のカプラン・マイヤー推定値から推定した16。6カ
月の間隔の累積的な発生率関数の治療群間の差異をハザード比(HR)および尤度比検定
を使用した仮説検定によって推定した;どちらもコックス比例ハザード(PH)モデルに
基づいた17。一次仮説についての検定統計量の臨界値を群逐次手順によって決定した。
【0103】
期待された登録速度よりも遅かったので、元のプロトコール(n=144の対象)を、
アルファレベル0.025で80%の検出力でハザード率の60%(以前は50%)低下
(HR=0.4)が検出されるように改訂した(片側)。このプロトコールでは、試験の
目標を、少なくとも71名の対象を登録し、当該対象を40名の対象がT1Dと診断され
るまで追跡することに設定した18。
【0104】
安全性および有効性に関するデータが年に2回、独立したデータ安全性監視委員会(D
SMB)によって評価された。T1D症例の予測数の50%が観察された時に暫定解析を
行い、その時点で形式的な比較をDSMBに提出し、Lan DeMets中止規則を使
用した19。治療企図原理に従ってデータを解析した。本明細書において報告されている
有意性の検定は、デザインに従って有意性0.025の閾値を使用した片側検定であった
が、治療交互作用検定については両側検定であった。指示がなければ、95%信頼区間が
報告される。フローサイトメトリーデータを反復測定ANOVAによって解析した。統計
解析はTIBCO Spotfire S+8.2 WorkbechまたはSAS 9
.4のいずれかを使用して実施した。
【0105】
[結果]
患者:適格性についてスクリーニングした112名の対象のうち、76名を登録した:
44名をテプリズマブに、32名をプラセボにランダムに割り当てた(
図1)。ランダム
化プロセスの結果、試験群に不均等な割合が生じ、これは、おそらく、登録された対象が
少数(<3)である試験サイトにおけるランダム化の結果、アーム間の不均等な分布が生
じたことによって説明される。参加者全員が少なくとも2種を超える自己抗体を有してお
り、参加者の71%が3種以上を有していた。治療アームは一般に十分に平衡した(表1
)。大多数の対象(55、72%)が小児であり、約半分がT1D患者の同胞であった。
18歳未満の対象のうち、47名について、ランダム化前に血糖代謝異常OGTTが確認
された。単回血糖代謝異常OGTT後にランダム化された対象のうち、2名が「糖尿病」
OGTTを有し、6名が正常な治療前OGTTを有した:これらの8個体は登録前の血糖
異常OGTTに基づいて登録した。
【0106】
テプリズマブ群およびプラセボ群にランダム化された対象のそれぞれ93パーセント(
41/44)および87.5%(28/32)が14日間の薬物治療法を完了した。投与
されたテプリズマブの総用量は9(IQR:9.01~9.37)μg/m2であった1
4。薬物による治療を受けた対象3名およびプラセボによる治療を受けた対象4名は、検
査値異常(laboratory abnormality)(n=4)、静脈路確保を
確立できないこと(n=2)、または皮疹(n=1)が原因で治療を完了しなかった。追
跡調査の中央値は745日間(74~2683日間の範囲)であった。追跡調査の持続時
間は対象の75%で3年を超えた。T1Dは参加者の42名(55%)で診断された。
【0107】
有効性:単一クールのテプリズマブを用いた治療により、T1Dまでの時間が遅延した
(
図2A、p=0.006):T1Dまでの時間の中央値は、プラセボ群では24.4m
osであり、テプリズマブ群では48.4mosであった(ハザード比=0.437(I
QR:0.229、0.832)。T1D発生の年率はプラセボ群およびテプリズマブ群
についてそれぞれ9.8%および4.1%であった。テプリズマブ群の対象25名(57
%)およびプラセボ群の対象9名(28%)が試験終了時に無T1Dであった(カイ二乗
分布、p=0.012)。ハザード比は、年齢、ランダム化前のOGTT中のグルコース
、または抗GAD65抗体という予め指定された共変量について調整した場合にも統計学
的に異なるままであった。
【0108】
T1Dへの全体的な増悪率は、試験に入った最初の年が、2年目(n=10、24%)
、3年目(n=6、14%)、または4年目(n=5、12%)と比較して最大であった
(n=17、41%)。テプリズマブによる治療の効果も試験に入った最初の年が最大で
あった(
図1B)。ハザード比は、試験登録後最初の36カ月が最低であり、その後は比
較的一定かつ統計的に有意なままであった(p<0.01)。
【0109】
治療の投与および安全性:一般に、テプリズマブによる治療は、忍容性が良好であった
。試験薬物に関連するかもしれない、おそらく関連する、または明確に関連するものとし
て指定された有害事象を表2に示す。5日目に72.3%(IQR82.1、68.4%
)(p<0.0001)でリンパ球数が最下点まで減少したが、その後迅速に回復した。
テプリズマブ群のグレード3事象のうち15例(34.1%)は試験薬物投与後最初の3
0日の間のリンパ球減少症を伴った。いずれの治療アームでも30日目よりも後にはリン
パ球減少症の症例はなかった(
図1C)。上記の通り、自然に消散する皮疹が、薬物によ
る治療を受けた対象の36%に生じた
11。感染率は2つの治療アームで同様であった。
【0110】
参加時に、30名の対象(39%)(テプリズマブによる治療16名およびプラセボに
よる治療14名)がEBVウイルスに対する抗体を有していた。試験薬物による治療後、
第3週~第6週に、全てテプリズマブ群の参加者7名において数量化できるEBVウイル
ス負荷量が存在した。検出可能なウイルス負荷量を有した参加者のうち、1名が38日目
に咽頭炎、鼻漏、および咳の症状を有した。EBVウイルス負荷量は43日目から134
日目の間(平均74日)に数量化のレベルを下回るまで減少した。参加時に、17名の参
加者(テプリズマブ10名およびプラセボ7名)がCMVウイルスに対する抗体を有した
。CMV血清陽性であったテプリズマブの対象1名が、20日目に検出可能なレベルのC
MVウイルスを有し、これは42日目までに検出不可能になった。
【0111】
応答バイオマーカー:テプリズマブによる治療後の応答性の低下に関連するマーカーT
IGIT、KLRG1、およびその他の発現などのCD8+T細胞の変化について、本発
明者らは以前に記載した
12,13。臨床転帰がこれらのCD8+T細胞の変化に関連付
けられるかどうかを決定するために、2つの治療アームにおけるCD8+KLRG1+T
IGIT+CD57-T細胞の頻度を比較した。テプリズマブによる治療により、これら
のT細胞の頻度が3カ月および6カ月の時点でベースラインと比較して増大し(それぞれ
p=0.009、0.007)、3mosおよび6mosにおけるレベルはテプリズマブ
による治療を受けた参加者においてプラセボによる治療を受けた参加者よりも高かった(
それぞれp=0.02、0.04)。(
図3A、
図6)。プラセボによる治療を受けた対
象においてこれらの細胞の変化は同定されなかった。T細胞サブセットの全てがテプリズ
マブの影響を受けたとは限らなかった:いずれの群でもCD4+TregまたはCD8+
KLRG1-TIGIT-CD57-細胞に有意な変化はなかった
8,20(
図7A、7
B)。
【0112】
参加者の人口統計的特性が臨床応答に関連したかどうかを決定するために、予め指定さ
れた解析において、年齢、HLA型、前治療CペプチドおよびOGTT中のグルコース、
および自己抗体に基づく参加者の亜群におけるテプリズマブの効果を解析した(
図3B)
。抗ZnT8抗体を有しない参加者では抗ZnT8抗体を有する参加者と比較してより大
きなテプリズマブに対する応答が示された(p=0.004)(
図3C)。他の自己抗体
の存在または非存在は臨床応答には関連しなかった。テプリズマブ対象の49%および6
5%がそれぞれHLA-DR3およびHLA-DR4であった。HLA-DR4の存在お
よびHLA-DR3の非存在がテプリズマブに対するより頑強な応答に関連した(それぞ
れp=0.004および0.01、両側検定)(
図3D、E)。
【0113】
[考察]
この第II相試験において、単一クールのテプリズマブにより、試験参加時にOGTT
中の耐糖能の異常を有する非糖尿病血縁者のT1Dへの増悪が有意に緩徐になることが見
いだされた。糖尿病の診断の遅延の中央値は2年であった。また、試験終了時に、無糖尿
病個体の頻度は薬物による治療を受けた対象(57%)ではプラセボによる治療を受けた
対象(28%)の2倍であった。小児および成人における安全性知見は良好であり、予測
される有害事象は皮疹および一過性リンパ球減少症であった。本発明者らの知見によると
、これは、T1Dの発症を遅延させたまたは予防した最初の治療法である。日々の管理と
いう課題を伴う臨床T1Dの発症の遅延は臨床的に重要である。さらに、診断時の年齢が
若いほど転帰が悪い2,4。大規模かつ十分にデザインされたものでありながら予防に失
敗した以前の試験では免疫細胞に対する免疫治療法を利用しておらず、本発明者らの発見
は、T1Dが慢性T細胞媒介性疾患であるという見解を裏付けるものである21,22。
さらに、この治療法が、診断前の疾患増悪、および診断後のβ細胞機能の喪失に影響を及
ぼすという知見から、自己免疫プロセスの連続が存在することが示唆され、臨床疾患の発
症前に免疫調節を使用する試みが確証される9~11,23~25。
【0114】
薬物の効果は、投与後最初の3年間で最大であった。糖尿病が発生した個体の41パー
セントが、ランダム化後最初の年に発生し、テプリズマブに曝露された個体ではその時に
HRが最低であった。プラセボ群における糖尿病への増悪速度が比較的迅速であったこと
は、これらの個体のリスクが非常に高かったことを反映する5。実際に、臨床疾患を有し
ないこれらの対象を登録するという本発明者らの決定は、2種を超える自己抗体および血
糖異常が見いだされる場合の増悪の必然性を反映するものであり、これは、これらの個体
におけるβ細胞死の率が高いという本発明者らの報告と一致する26。さらに、臨床T1
Dの迅速な発生は、増悪の速度が迅速な参加者中に小児参加者が多くなること(72.4
%)を反映し得る27,28。
【0115】
試験登録時の対象の特徴に基づき、テプリズマブに対する応答に差異が見られた。T1
D関連MHC対立遺伝子の1つであるHLA-DR3は存在しないが別のT1D関連MH
C対立遺伝子であるHLA-DR4が存在し、抗ZnT8抗体が存在しないことにより、
応答する可能性が最も高い個体が同定される。MHCは、T細胞レパートリーに対する影
響を通じて、おそらく、T細胞活性化の状態および薬物による影響の受けやすさを変更す
ることを通じて、テプリズマブに対する応答性を調節し得る。抗ZnT8抗体がより劇症
性の免疫応答、またはT細胞がテプリズマブの影響を受けやすいものになる他の特色を有
する個体に関するマーカーである可能性もある。疾患がより早い段階にある個体において
治療が有効であるかどうかは確信できない。さらなる免疫学的および代謝的試験により、
この治療が有益である可能性が最も高い個体を定義する特色が同定される可能性がある。
【0116】
薬物治療のリンパ球数に対する一過性の影響は、細胞枯渇ではなく末梢血からの放出を
反映する可能性が最も高い29,30。本発明者らのフローサイトメトリー試験から、C
D8+T細胞の表現型の変化が臨床応答のマーカーであることが示唆される。これらの影
響は、非応答性または「消耗した」表現型に関連するが、ウイルス負荷量が増加していた
個体においてEBVおよびCMVに対する活発な応答が見られたことから、CD8+T細
胞を不活性にするものではない31,32。テプリズマブのT細胞に対する機能的影響は
、T細胞の抗原に対する結合活性の影響を受ける可能性があり、結合活性が高いT細胞、
例えばウイルス抗原反応性細胞は影響を受けない可能性があるが、結合活性が低いT細胞
、例えば自己反応性T細胞は不活性になる可能性がある。この仮説に対応するには抗原反
応性T細胞を用いたさらなる試験が必要になる。
【0117】
この臨床試験を考慮するにはわずかな限定がある。コホートが比較的小さく、また、プ
ラセボ群におけるT1Dへの増悪の速度が迅速であった。試験対象はT1D患者の血縁者
であり、したがって、これらの所見がT1Dのリスクがあることが見いだされた非血縁者
に一般に適用可能であるかどうかはわからない。最近の報告から、遺伝学的にリスクが高
い個体では、糖尿病の率が非血縁者と血縁者で同様であることが示唆される33。さらに
、既知の疾患発生率を反映すると同時に、集団は圧倒的に非ヒスパニックコーカサス人で
あった。疾患発症の遅延の中央値が増大することが理想的である。この試験では、薬物を
1クールしか与えておらず、また、HRに関する本発明者らの解析から、活動性疾患を有
する個体をより多く捕捉するため、および治療効果を延長するためには反復投薬が必要で
あり得ることが示唆される9,25。治療の標的集団の同定および薬物クールの数を探究
する必要がある。
【0118】
要約すると、これは、T1Dの遅延または予防を示す最初の試験である。発症時の年齢
および糖尿病の持続時間が代謝的管理および合併症の重要な決定因子であるので、また、
日々の管理負担から、糖尿病ではない時はいつでも臨床的意義を有する。応答する可能性
が最も高い個体、反復投薬、またはテプリズマブと相補的な作用機構を有する他の薬剤の
組合せの選択により、臨床疾患を長期にわたって予防することが可能になり得る。
【0119】
【0120】
【0121】
本開示に記載の方法および組成物の改変および変形が本開示の範囲および主旨から逸脱
することなく当業者には明らかになるであろう。本開示は特定の実施形態に関連して記載
されているが、特許請求される本開示はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべ
きではないことが理解されるべきである。実際に、本開示を実行するための記載の方式の
種々の改変は、以下の特許請求の範囲によって表される本開示の範囲内に入ることが意図
されており、本開示が属する関連分野の当業者に理解される。
【0122】
[参照による組込み]
本明細書において言及される特許および刊行物は全て、それぞれ独立した特許および刊
行物が具体的にかつ個別に参照により組み込まれることが示されたものと同じく参照によ
り本明細書の一部をなすものとする。
【0123】
[参考文献]
1. Menke A, Orchard TJ, Imperatore G, Bullard KM, Mayer-Davis E, Cowie CC. T
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