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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025023
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】再生燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20230214BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20230214BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20230214BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/02
H01M8/10
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022179796
(22)【出願日】2022-11-09
(62)【分割の表示】P 2018549635の分割
【原出願日】2016-12-13
(31)【優先権主張番号】1522003.1
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】505167543
【氏名又は名称】アイピー2アイピーオー イノベ-ションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン,ナイジェル
(72)【発明者】
【氏名】ユフィット,ブラディミール
(72)【発明者】
【氏名】クチェルナク,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ルビオ-ガルシア,ジャビエ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】システムコスト、効率およびエネルギ密度に優れる再生燃料電池を提供する。
【解決手段】アノード4およびカソード2での電気化学的に活性な種の反応によって電力を発生させる電力供給モード、および電気化学的に活性な種を生成するために電力を消費するエネルギ貯蔵モードで動作することができる再生燃料電池であって、アノード室8における可逆性水素ガスアノードと、カソード室9における可逆性カソードと、アノード室8とカソード室9とを分離する膜3とを備え、カソード室9は、Ti(IV)、Al(III)、界面活性剤、キレート剤、ポリマー、およびデンドリマーのうちの1つを含む添加剤を含む、再生燃料電池とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードおよびカソードでの電気化学的に活性な種の反応によって電力を発生させる電力供給モード、および、前記電気化学的に活性な種を生成するために電力を消費するエネルギ貯蔵モードで動作することができる再生燃料電池であって、
アノード室における可逆性水素ガスアノードと、
カソード室における可逆性カソードと、
前記アノード室と前記カソード室とを分離する膜とを備え、前記膜は、プロトンを選択的に通過させることができ、前記電池はさらに、
前記電力供給モードでは電気化学的に活性な種を前記アノードおよび前記カソードに供給し、前記エネルギ貯蔵モードでは生成された電気化学的に活性な種を前記アノードおよび前記カソードから運び出すように構成された導管を備え、
前記アノードにおけるレドックス反応は、以下の通りであり、
【数1】
前記カソードにおけるレドックス反応は、以下から選択され、
【数2】
前記カソード室は、
(i)Ti(IV)、
(ii)Al(III)、
(iii)界面活性剤、
(iv)キレート剤、
(v)ポリマー、および
(vi)デンドリマー、のうちの1つを含む添加剤を含む、再生燃料電池。
【請求項2】
前記カソードにおけるレドックス反応は、
【数3】
である、請求項1に記載の再生燃料電池。
【請求項3】
前記カソード室は、Ti(IV)を含む添加剤を含む、前述の請求項に記載の再生燃料電池。
【請求項4】
前記カソード室は、Ti(SOを含む、前述の請求項に記載の再生燃料電池。
【請求項5】
前記カソード室は、TiO2+イオンを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の再生燃料電池。
【請求項6】
前記カソードの電気化学的に活性な種を含む液体陰極液を収容するように構成された少なくとも1つの容器を含み、前記電力供給モードでは、前記電気化学的に活性な種を含む液体陰極液を陰極液室に供給するために第1の容器が前記陰極液室に接続される、前述の請求項に記載の再生燃料電池。
【請求項7】
前記エネルギ貯蔵モードでは、前記少なくとも1つの容器は、生成された電気化学的に活性な種を含む陰極液を前記陰極液室から受け取るために前記陰極液室に接続される、請求項6に記載の再生燃料電池。
【請求項8】
使用済みの電気化学的に活性な種を含む前記液体陰極液を収容するように構成された少なくとも1つの容器を含み、前記電力供給モードでは、使用済みの電気化学的に活性な種を含む前記陰極液を前記陰極液室から受け取るために第2の容器が導管に接続される、前述の請求項に記載の再生燃料電池。
【請求項9】
前記エネルギ貯蔵モードでは、前記少なくとも1つの容器は、使用済みの電気化学的に活性な種を含む前記陰極液を前記陰極液室に供給するために導管に接続される、請求項8に記載の再生燃料電池。
【請求項10】
水素を収容するように構成された加圧ガス源容器を含み、前記ガス源は、前記電力供給モードでは前記アノードに接続可能である、前述の請求項に記載の再生燃料電池。
【請求項11】
前記加圧ガス源容器は、前記エネルギ貯蔵モードでは、前記エネルギ貯蔵モードで発生した水素を受け取るために前記アノードに接続可能である、請求項10に記載の再生燃料電池。
【請求項12】
前記エネルギ貯蔵モードにおいて前記アノードで発生して前記加圧ガス源容器に貯蔵される水素を加圧するように構成された少なくとも1つの圧縮器を含み、任意に、圧縮ガスの膨張の結果として電気を供給する水素膨張発生器も含む、請求項11に記載の再生燃料電池。
【請求項13】
前記膜は、プロトン交換膜である、前述の請求項に記載の再生燃料電池。
【請求項14】
前記膜は、水素イオンおよび溶媒和水素イオンに対して浸透性がある、前述の請求項に記載の再生燃料電池。
【請求項15】
a)アノードおよびカソードでの電気化学的に活性な種の反応によって電力を発生させる電力供給モード、および、b)前記電気化学的に活性な種を生成するために電力を消費するエネルギ貯蔵モードで再生燃料電池を動作させる方法であって、前記電池は、
アノード室における可逆性水素ガスアノードと、
カソード室における可逆性カソードと、
前記アノード室と前記カソード室とを分離する膜とを備え、前記膜は、プロトンを選択的に通過させることができ、
前記方法は、前記電力供給モードでは電気化学的に活性な種を前記アノードおよび前記カソードに運び、エネルギ貯蔵モードでは生成された電気化学的に活性な種を前記アノードおよび前記カソードから運び出すことを備え、
前記アノードにおけるレドックス反応は、以下の通りであり、
【数4】
前記カソードにおけるレドックス反応は、以下から選択され、
【数5】
前記カソード室は、
(i)Ti(IV)、
(ii)Al(III)、
(iii)界面活性剤、
(iv)キレート剤、
(v)ポリマー、および
(vi)デンドリマー、のうちの1つを含む添加剤を含む、方法。
【請求項16】
前記カソードにおけるレドックス反応は、
【数6】
である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カソード室は、Ti(IV)を含む添加剤を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記再生燃料電池は、請求項1から14のいずれか1項に記載の再生燃料電池である、請求項15から17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般に、再生燃料電池(regenerative fuel cell:RFC)技術の分野に関する。より具体的には、本発明は、RFC技術における添加剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
再生燃料電池および再生燃料電池が電気を貯蔵して供給する方法は、長年にわたって公知である。それらは、エネルギ貯蔵および電力供給のための電気化学装置である。電力供給局面では、電気化学的に活性な種が電極に供給され、電極において電気化学的に反応して、電気化学的パワーを発生させる。貯蔵局面では、電力を使用して、電気化学的に活性な種を再生して貯蔵する。
【0003】
電気化学的に活性な種は、電極室とは別に貯蔵され、必要なときに供給可能であるので、この機器の発電能力は、相当大きくかつスケーラブルであり得る。
【0004】
電気化学反応は、イオン輸送システム(膜など)の両側で起こり、電荷キャリアは、当該膜によって輸送または交換される。
【0005】
これらの再生燃料電池(RFC)システムにおける基本的な電気化学プロセスは、単純なレドックス式によって表わすことができ、当該作用は、当該システムのエネルギ貯蔵モード時は一方向に進み、当該システムの電力供給モード中は反対方向に進み、「レドックス」という用語は、還元および補完的な酸化が一緒に起こる反応を定義する。
【0006】
しかし、実際の用途でのこれらのシステムの実施は、単純な電気化学プロセスであるように思われるにもかかわらず、多くの制約に直面してきた。現実的問題としては、危険な材料の使用、効率の悪さ、システムサイズ、電解液の流れの閉塞および詰まり、種のクロスオーバ、ガスの発生、ならびに特に材料のコストおよび機器のコストがあった。これらは、RFCを産業界で幅広く利用することを妨げてきた。
【0007】
エネルギ貯蔵技術には幅広い潜在的な応用先がある。大半の再生可能エネルギ技術は、変動する需要に見合うように電力出力を容易に調整することができないため、低炭素/再生可能エネルギ源を実際に実現できるようにする上でエネルギ貯蔵は重要である。また、エネルギ貯蔵技術は、一定の電力供給および質を確実にするためのリモート電源として使用されてもよく、電気が安価であるときにエネルギを貯蔵して貯蔵されたエネルギをピーク時に分配することによって電気のコストを削減するために使用されてもよい。
【0008】
金属レドックス対を有する全ての再生燃料電池が直面する不利点のうちの1つは、金属イオンが電気化学的に還元されたときに水素および/または酸素共進化が起こり得るというものである。
【0009】
水素ガスおよび液体臭素電解質を利用する液体/気体燃料電池がリフシッツ等によって研究されてきた(エレクトロケミストリー・コミュニケーションズ、2006、第8巻(8)、1358-62)。後に、エンストレージ・フロー・システムズによって水素-臭素燃料電池が改変されてRFCになった。このシステムは高い放電出力パワーを示したが、動作中の触媒安定性および臭素ガスの発生が低いこのシステムを使用することには複数の欠点がある。さらに最近では、WO2011/089518において、水素-臭素再生
燃料電池が提案され、水素-鉄レドックスシステムを使用することについても言及されている。しかし、鉄II/IIIレドックス対の標準電気化学電位が低いために(0.77V対SHE)、放電時のこのような水素-鉄システムの平均動作電圧はさらに低くなり(実際、公知の再生燃料電池の間で最も低い)、これは実際のレドックス電池適用例にとっては非常に不利である。研究されてきた別の液体/気体RFCは、バナジウム/空気RFC(ホセイニー,S.S等、エレクトロケミストリー・コミュニケーションズ、2011、第13巻、751~754)であるが、このシステムは、効率が低く、パワー密度が低く、再充電性が低い。
【0010】
再生燃料電池が標準的な燃料電池とは異なっているということを認識することが重要である。標準的な燃料電池は、燃料を消費して、通常は電力供給モードでのみ動作することができ、(電力が貯蔵される)エネルギ貯蔵モードでは動作することができないか、または動作できたとしても非常に非効率な態様でしか動作することができない。さらに、燃料電池において電気化学反応を逆転させることは、触媒への永久的な損傷を生じさせる可能性がある。標準的な燃料電池は、エネルギ生成モードでの動作に対してのみ最適化される一方、再生燃料電池は、電力供給モードとエネルギ貯蔵モードとの組み合わせに対して最適化される。したがって、再生燃料電池では、可逆性の強い電気化学反応のみを使用することができる一方、特定の燃料電池(ダイレクトアルコールまたはダイレクトホウ化水素燃料電池または水素/酸素燃料電池など)では、反応は可逆的でなくてもよく、実際に通常は可逆的でない。これらの問題点のために、再生燃料電池は、通常、標準的な燃料電池と比較して、少なくとも1つの異なる電気化学反応を使用するが、可逆性の強いレドックス反応を両方ともが使用する半電池、たとえば「ダイレクト水素レドックス燃料における進歩(Advancements in the Direct Hydrogen Redox Fuel)」(電気化学およびソリッドステートレター、11(2)B11~B15(2008))に開示されている水素-Iシステム、を燃料電池が明らかに使用する場合には、このようなシステムは燃料電池でも再生燃料電池でも使用することができる。
【0011】
また、放電中の平均動作電圧が重要である。低電圧システムは、電圧を上昇させるために電気的に直列のより多くの電池を必要とするか、または低電圧-高電流システムに対処するために特注のパワーコンバータの設計を必要とし、これはシステムの複雑さおよびコストを増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、再生燃料電池で使用するための2つのレドックス対であって、可逆的であり、実際の濃度(約1Mまたはそれ以上)で溶けやすく、対の標準電極電位(E/V)間の好適な電位差を有し、先行技術における問題を克服する2つのレドックス対を見つけることは、難しい課題である。
【0013】
WO2013104664(A1)は、水素ガス/溶解金属イオン再生燃料電池を提供することによって上記の問題を克服し、金属は、バナジウム、セリウム、マンガン、または安定性がありかつ電気化学的に可逆性のそれらの水性錯体から選択される。バナジウム、セリウムおよびマンガンは、比較的高い電気化学レドックス電位を有する。
【0014】
【表1】
【0015】
特に好ましい実施形態において、WO2013104664(A1)では、水素ガス/溶解バナジウムイオン再生燃料電池が提供されている。この発明の再生燃料電池、特に水素/バナジウムイオンシステムは、必要とされる高価なバナジウムの量を半分にすることによってコストを大幅に減少させるという点において、現在使用されている全バナジウムRFC(VRB)の問題を少なくとも部分的に克服する。さらに、大型の液体電解質貯蔵タンクを水素用の圧縮ガス貯蔵容器と置換することによって、再生燃料電池が占める空間の量を大幅に減少させ、コストをさらに減少させる。他の利点としては、水素酸化反応の過電位が低いことによる当該システムの出力パワーの増加が挙げられる。好ましい水素/バナジウムRFCは、既存のバナジウム/バナジウムRFCシステムがバナジウムアノードを水素アノードと交換するように容易に適用可能であることにより、システム全体を取り付ける必要がないようにすることによって本発明の再生燃料電池を取り付ける資本コストを減少させるという点においてさらなる利点を提供する。したがって、この後付けの局面は、すでに既存の技術に相当の資本を投資してきた人々が新たなシステムを使用することの実質的な欠点を克服することになり、本発明の重要な局面である。
【0016】
問題はWO2013104664 A1に開示されているRFCによって克服されるが、効率の悪さ、システムサイズ、電解液の流れの閉塞および詰まり、イオン交換膜汚染および高い資本コストの問題は残っており、RFCが産業界で広く利用されることを妨げる。
【0017】
たとえば、Mnは、レドックス電位が高い(E0-Mn(III)/Mn(II)=1.51V)、豊富で安価な金属であり、エネルギ貯蔵用途にとっては興味深い。しかし、再生燃料電池でのMnベースの電解液の実施は、望ましくない沈殿反応により今日に至るまで実現が難しかった。電池充電中、Mn(III)が生成され、以下の式2に示されるように、このイオンは、MnOの沈殿につながる不均化を自発的に起こし、その結果、電池容量が低下する。
【0018】
【数1】
【0019】
液相における金属溶解度が高くなることにより、電池エネルギ密度が高くなり、電解液の流れの閉塞および詰まりの頻度が減少し、イオン交換膜汚染が減少する。この文脈において、本発明は、性能の向上につながる水素(アノード)/液体電解質(カソード)再生燃料電池における有機および/または無機添加剤を含む液体電解質に関する。これは、今日に至るまで報告されてこなかった電池のシステムのコスト、効率およびエネルギ密度に著しく良い影響を及ぼす。
【0020】
再生燃料電池は、一般に、それらの「配管」によって燃料電池と区別することができる。再生燃料電池は、電力供給局面で燃料を電極に供給するための導管と、使用済み燃料を
再生可能であるように貯蔵所に導くための導管とを有する。多くの場合、燃料は、電力供給局面後に使い尽くされる電解液の形態をとり、この場合、導管は、使い尽くされた(または使用済みの)電解液を貯蔵所に導いて、それをたとえば適切なポンプを使用してエネルギ貯蔵モード中に半電池に戻すようにも配置される。それにひきかえ、燃料電池は、使い尽くされた電解液を電気化学的に補充するようにエネルギ貯蔵モードで動作するように構成されてはいない。ガス電極を含む半電池を有する再生燃料電池の場合、エネルギ貯蔵モード中に発生するガスを圧縮して、将来的な電力供給局面のために当該ガスを圧縮ガス貯蔵タンクに収集できるようにするために、一般に圧縮器が設けられる(酸素は大気から自由に入手可能であるので、電極が酸素電極である場合には圧縮器も貯蔵タンクも必要ない)。それにひきかえ、燃料電池は概してこのような圧縮器を有していない。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の開示
本発明は、添付の特許請求の範囲に定義されている。
【0022】
本発明は、再生燃料電池(RFC)、すなわち電気化学装置に関し、当該再生燃料電池は、エネルギ貯蔵および電力供給の両方のために構成され、膜によって分離される陽極液室と陰極液室とを有し、当該膜は、プロトンを選択的に通過させることができ、すなわち当該膜は、たとえばプロトンに対して選択的に透過性があることによってプロトンを移動させることができ、またはプロトン交換膜である。具体的には、本発明は、システムを向上させるための電解液調合物での添加剤の使用に関する。
【0023】
再生燃料電池の分野における標準的な用語法によれば、「アノード」および「カソード」という用語は、電力供給モードでの電極の機能によって定義される。混乱を避けるために、RFCの2つの動作モード(電力供給およびエネルギ貯蔵)を通して同一の用語は同一の電極を表わすものとする。「陽極液」および「陰極液」という用語は、「アノード」および「カソード」と接触する電解液を表わすために使用される。
【0024】
電力供給モードでは、電気化学的に活性な種は、アノードにおいて酸化され、電気化学的に活性な種は、カソードにおいて還元されて反応済みの(または「使用済みの」)種を形成する。エネルギ貯蔵モードでは、電気化学システムは逆になって、「使用済みの」カソード種は、カソードにおいて電気化学的に酸化されて、対応する電気化学的に活性な種を再生する。電気化学的に活性な種(水素ガス)が、電解液に溶解されるプロトンに変換されるので、水素ガスアノードにおけるレドックス反応は、電力供給モードでいかなる「使用済みの」種も発生させない、ということが理解されるであろう。プロトンは、アノード室とカソード室とを分離する膜によって、膜のアノード側から膜のカソード側に選択的に通過させられる。電力供給モード中のアノードでの水素ガスの酸化中に生成された電子は、集電器によって収集される。しかし、未反応の水素ガスはいずれも、1つ以上の導管によってアノード室から移されて、加圧ガス源容器に戻され得る。エネルギ貯蔵モードでは、プロトンは、アノード室とカソード室とを分離する膜によって、膜のカソード側から膜のアノード側に選択的に通過させられ、プロトンは、アノードにおいて還元されて水素ガスを再生し、アノードの電気化学的に活性な種を形成する。
【0025】
したがって、本開示の局面に従って、アノードでの電気化学的に活性な種の反応およびカソードでの異なる電気化学的に活性な種の反応によって電力を発生させる電力供給モードで動作することができ、上記電気化学的に活性な種を生成するために電力を消費するエネルギ貯蔵モードでも動作することができる再生燃料電池が提供され、当該電池は、
アノード室における可逆性水素ガスアノードと、
カソード室における可逆性カソードと、
アノード室とカソード室とを分離する膜とを備え、当該膜は、プロトンを選択的に通過
させることができ、当該電池はさらに、
上記電力供給モードでは電気化学的に活性な種をアノードおよびカソードに供給し、上記エネルギ貯蔵モードでは生成された電気化学的に活性な種をアノードおよびカソードから運び出すように構成された導管を備え、
アノードにおけるレドックス反応は、以下の通りであり、
【0026】
【数2】
【0027】
カソードにおけるレドックス反応は、以下から選択され、
【0028】
【数3】
【0029】
当該電池はさらに、
添加剤として存在する、Al3+、TiO2+、Ti4+などの金属イオン、または、界面活性剤、キレート剤、ポリマーもしくはデンドリマーなどの有機材料を備える。
【0030】
再生燃料電池のカソード側では、電気化学的に活性な種は、陰極液電極室に供給される液体陰極液内に存在する。アノードに関しては、電気化学的に活性な種は水素であり、陽極液電極はガス透過性電極である。
【0031】
陰極液内に存在する電気化学的に活性な種は、第1の容器に貯蔵され、電力供給モードでカソード室に移動する準備ができている状態であってもよい。アノードでは、電気化学的に活性な種は、水素ガスであり、一般に加圧ガス源の形態である。
【0032】
電力供給モード中、使用済みの陰極液は、容器に収集され、当該容器は、第1の容器または別の第2の容器であってもよい。エネルギ貯蔵モード中、使用済みの電解液は、容器からカソード室に供給され得て、カソード室において電気化学的に活性な種が再生される。第1および第2の容器(設けられる場合)は、単一の容器の異なる室であってもよい。
【0033】
再生燃料電池は、液体陰極液を導管を介して貯蔵容器とカソード室との間で循環させることを可能にするポンプをさらに含み得る。上記のように、再生燃料電池は、電気化学電池の外側の供給源容器に水素ガスをある圧力で貯蔵することを可能にする圧縮器を含み得る。また、再生燃料電池は、供給源容器に貯蔵する前に水素ガスを乾燥させる乾燥器も含み得る。再生燃料電池は、圧縮ガスの膨張の結果として電気を供給するために水素膨張発生器も備え得る。
【0034】
電気化学反応は、個別のアノードおよびカソードで起きてもよく、または特にガスアノードの場合には、電気化学反応は、一般にガス分離膜/触媒多孔性ガス電極界面で起きるため、個別のアノードおよびカソードを識別することは必ずしも容易ではなく、アノードおよびカソードが主に顕在化したものは、単にアノードおよびカソード集電器であり得て、これらは、外部回路から電極への電子の供給および電極から外部回路への電子の除去を容易にする(電力供給モードでは、アノード集電器は、アノードから外部回路に電子を移動させ、カソード集電器は、外部回路からカソードに電子を供給する。エネルギ貯蔵モー
ドでは、これが逆になる。)
アノードは多孔性ガス電極であり、カソードは多孔性電極であってもよく、または非多孔性電極であってもよいが、多孔性電極が好ましい。好適な電極の例は、当該技術分野において周知である。本発明では、触媒多孔性炭素電極、たとえば触媒カーボン紙、布地、フェルトまたは複合物、が特に好ましい。炭素は、黒鉛状であってもよく、非晶質であってもよく、またはガラス状構造を有していてもよい。本発明の特に好ましい実施形態では、アノードは触媒電極であり、カソードは非触媒電極である。カソードにおけるレドックス反応は通常は触媒作用を必要としないので、1つの電極だけが触媒作用を受ける再生燃料電池を有することにより、再生燃料電池の生産コストを大幅に削減することが可能になり得る。何らかの非貴金属触媒を使用することが可能であるが不可欠ではなく、これによっても、貴金属触媒の使用と比較してコストを抑えられるであろう。アノードにおいて使用される触媒は、たとえば白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、オスミウム、もしくは合金、たとえば白金/ルテニウム合金を含むそれらの組み合わせなどの貴金属からなっていてもよく、またはPtCo、PtNi、PtMoなどの二成分触媒であってもよく、またはPtRuMo、PtRuSn、PtRuWなどの三成分触媒であってもよく、またはRuSe、Pt-MoOなどのカルコゲン化物/酸化物であってもよい。いくつかの二成分/三成分またはそれ以外の純貴金属触媒は、陰極液種クロスオーバの結果として起こり得る触媒中毒に対して耐性があるだろう。貴金属の量は、通常の触媒燃料電池ガス電極と比較して大幅に減少させることができる。なぜなら、RFCは、従来の燃料電池と同じ高出力モードで動作する必要がないからである。
【0035】
アノード半電池内に存在する電気化学的に活性な種は、水素ガスである。したがって、アノードで起きるレドックス反応は、以下の通りである。
【0036】
【数4】
【0037】
水素ガスは、加圧ガス源容器であってもよい容器におけるアノード室の外部に貯蔵される。水素ガスは、電力供給モードでは1つ以上の導管によってアノード室に供給され得て、エネルギ貯蔵モードでは1つ以上の導管によってアノード室から運び出され得る。
【0038】
カソード半電池内に存在する電気化学的に活性な種は、V5+、Ce4+またはMn3+のうちの1つであり得て、それぞれの「使用済みの」種は、V4+、Ce3+またはMn2+である。したがって、カソードで起きるレドックス反応は、以下から選択される。
【0039】
【数5】
【0040】
好ましい実施形態では、カソードで起きるレドックス反応は、以下の通りである。
【0041】
【数6】
【0042】
また、陰極液は、望ましくない沈殿反応を防止することに役立つ添加剤を含む。添加剤
は、無機添加剤であってもよく、または有機添加剤であってもよい。添加剤は、有機である場合には、界面活性剤であってもよく、ポリマーであってもよく、またはデンドリマーであってもよい。添加剤は、無機である場合には、金属イオンの供給源であってもよい。具体的には、添加剤は、Al3+、TiO2+またはTi4+の供給源であってもよい。
【0043】
本発明の再生燃料電池は、上記の利点を提供し/上記の問題を克服する。中でも注目すべきは、(a)必要とされる高価な金属イオン、特にバナジウムの量を半分にすることによって、現在使用されている全バナジウムRFC(VRB)と比較してコストが削減されること、(b)VRBにおける大型の液体電解質貯蔵タンクを水素のための圧縮ガス貯蔵容器と置換することに起因して、再生燃料電池が占める空間の量を減少させること、(c)水素酸化反応の過電位が低いことによりシステムの出力パワーが増加すること、(d)好ましい水素/バナジウムRFCの場合、既存のVRBに後付することができ、VRBを交換するのに必要な設備投資を減少させること、および(e)電気活性種の沈殿速度が遅くなることにより、液相での金属溶解度が高くなり、電池エネルギ密度を高くすることができ、電解液の流れの閉塞および詰まりの頻度を減少させ、イオン交換膜汚染を減少させることである。
【0044】
カソード半電池内に存在する電気化学的に活性な種は、遊離カチオン、たとえばMn+と呼ばれるが、任意の安定性があるプラスに帯電した錯体、たとえばVO およびVO2+などのオキサイド錯体、または界面活性剤、ポリマーもしくはデンドリマー添加剤により形成される錯体として陰極液溶液内に存在してもよい。プラスに帯電した錯体の性質は、陰極液溶液の生成に使用される材料次第である。たとえば、カソード半電池内に存在する電気化学的に活性な種がバナジウムである場合、液体陰極液は、四価酸化バナジウム(VO)、硫酸バナジル(VOSO)または五価酸化バナジウム(V)、CeIII (SO/CeIV(SOまたは三価炭酸セリウムCeIII (COを用いて調製されてもよい。カソード半電池内に存在する電気化学的に活性な種がマンガンである場合、液体陰極液は、二価マンガン(MnSO)または二価炭酸マンガン(MnCO)を用いて調製されてもよい。電解液は、一般に水性である。
【0045】
カソード半電池における電気化学的に活性な種は、液体電解質に存在する。酸性電解液は当該技術分野において周知であり、いかなる標準的な酸性電解液も本発明に従って使用してもよい。好ましい電解液としては、濃硫酸の水溶液であってもよい硫酸、メタンスルホン酸(MSA)もしくはトリフルオロメタンスルホン酸(TFSA)、またはそれらの混合物であってもよく、最も好ましくは硫酸である。CeおよびMnなどのレドックス対の電気化学ポテンシャルが高いことにより、エネルギ貯蔵モード(充電)中の酸素の発生を最小限に抑えるためには有機酸電解液の使用が好ましい。その他の強酸の使用は、当該酸が可溶性金属カチオンを形成し得るが陰極液を還元または酸化させない場合には、禁止されるものではない。陰極液における電気化学的に活性な種の濃度は、再生燃料電池のパワー密度およびエネルギ密度を決定する。したがって、陰極液における電気化学的に活性な種の濃度は、好ましくは少なくとも0.2Mであり、より好ましくは0.5Mよりも高く、たとえば1Mよりも高いかまたは1.5Mよりも高い。電気化学的に活性な種の実際の最大濃度は、一般に電解液へのその溶解度によって左右される。なぜなら、濃度が高くなると、電解液からの沈殿の問題が深刻化するからである。電池内に沈殿材料が存在することは、電解液の流れおよび対象の再生燃料電池の機能を妨げるので、回避されることが好ましい。
【0046】
アノード室とカソード室とを分離する膜は、プロトン(水素イオン)を選択的に通過させることができる膜であり、当該膜がプロトン交換膜またはプロトンに対して透過性がある膜であってもよいことを意味する。好ましくは、膜は、プロトン交換膜である。プロトン交換膜は、当該技術分野において周知であり、たとえばデュポン社によって製造される
ナフィオン(商標)イオン交換膜である。ナフィオン(商標)膜は、優れたプロトン伝導性および優れた化学安定性を有しているが、バナジウムカチオンに対する透過性が高く、コストが高いといった複数の不利点を有している。したがって、他の好ましい実施形態では、膜は、金属カチオン、たとえばバナジウムカチオン、セリウムカチオンおよびマンガンカチオンに対して実質的に不透過性である。
【0047】
添加剤は、リン酸アンモニウム、リン酸カリウム、炭酸アンモニウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリマレイン酸、アラニン、グリシン、ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、ポリスチレンS.酸、Teric PE61、ICI、Teric BL8、ICI、Flocon-100、Calgon EL-5600、Briquest 3010-25、pHreedom、SHMP、K2SO4、K3PO4、KHSO4、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、およびCL-4000のうちの1つ以上を含み得る。これらの添加剤は、カソードにおけるレドックス反応が以下の通りである特定の用途を見つけることができる。
【0048】
【数7】
【0049】
実際には、さらなる局面にしたがって、アノードおよびカソードでの電気化学的に活性な種の反応によって電力を発生させる電力供給モード、および、上記電気化学的に活性な種を生成するために電力を消費するエネルギ貯蔵モードで動作することができる再生燃料電池が提供され、当該電池は、
アノード室における可逆性水素ガスアノードと、
カソード室における可逆性カソードと、
アノード室とカソード室とを分離する膜とを備え、当該膜は、プロトンを選択的に通過させることができ、当該電池はさらに、
上記電力供給モードでは電気化学的に活性な種をアノードおよびカソードに供給し、上記エネルギ貯蔵モードでは生成された電気化学的に活性な種をアノードおよびカソードから運び出すように構成された導管を備え、
アノードにおけるレドックス反応は、以下の通りであり、
【0050】
【数8】
【0051】
カソードにおけるレドックス反応は、以下から選択され、
【0052】
【数9】
【0053】
カソード室は、添加剤を備える。添加剤は、塩化水素、リン酸アンモニウム、リン酸カリウム、別のリン酸塩種、炭酸アンモニウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリマレイン酸、アラニン、グリシン、ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、ポリスチレンS.酸、Teric PE61、ICI、Teric BL8、ICI、Flocon-100、Calgon EL-5600、Briquest 3010-25、pHreedom、SHMP、K2SO4、K3PO4、KHSO4、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、お
よびCL-4000のうちの1つ以上を含み得る。対応する方法も提供され得る。当業者が認識するであろうように、1つの局面に適用される好ましいまたは任意の特徴が、別の局面にも適用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の液体/気体再生燃料電池の概略断面図である(「液体」および「気体」という用語は、2つの電極に供給される電気化学的に活性な材料の相を示す)。
図2】0.23Mバナジウムを使用したバナジウム/水素再生燃料電池の充電/放電曲線である。
図3A】可変電流密度での0.23Mバナジウムを使用したバナジウム/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
図3B】可変流量での0.23Mバナジウムを使用したバナジウム/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
図4A】50ml/分の流量での0.23Mバナジウムを使用したバナジウム/水素再生燃料電池のパワー密度曲線を示す。
図4B】100ml/分の流量での0.23Mバナジウムを使用したバナジウム/水素再生燃料電池のパワー密度曲線を示す。
図5】100ml/分の流量での1.0Mバナジウムを使用したバナジウム/水素再生燃料電池のパワー密度曲線を示し、当該グラフは、結合I-V曲線(左側)およびパワー曲線(右側)を示す。
図6】4つのサイクルにわたる50ml/分の流量および20mA/cmの電流密度での5M HSOにおける0.2M MnSOを使用したマンガン/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
図7】50ml/分の流量および可変電流密度での5M HSOにおける0.2M MnSOを使用したマンガン/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
図8】20mA/cmの電流密度および可変流量での5M HSOにおける0.2M MnSOを使用したマンガン/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
図9】さまざまな充電状態における50ml/分の流量および0.001A/秒、20秒/pでの5M HSOにおける0.2M MnSOを使用したマンガン/水素再生燃料電池のパワー密度曲線を示す。
図10】4サイクルにわたる50ml/分の流量での5M HSOにおける0.2M Ti(SOを有する0.2M MnSOを使用したマンガン/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
図11】50ml/分の流量および可変電流密度での5M HSOにおける0.2M Ti(SOを有する0.2M MnSOを使用したマンガン/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
図12】50ml/分の流量および20mA/cmの電流密度および可変マンガン濃度での5M HSOにおける0.2M Ti(SOを使用したマンガン/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
図13】20秒/点での0.001A/秒の走査速度および50ml/分の流量での、さまざまなマンガン濃度での5M HSOにおける0.2M Ti(SOを使用したマンガン/水素再生燃料電池のパワー密度曲線を示す。
図14】20秒/点での0.001A/秒の走査速度および50ml/分の流量での0.2M MnSOおよび0.2M Ti(SOを使用したさまざまな酸濃度でのマンガン/水素再生燃料電池のパワー密度曲線を示す。
図15】さまざまな充電状態における20秒/点での0.001A/秒の走査速度および50ml/分の流量での5M HSOにおける0.2M MnSOおよび0.2M Ti(SOを使用したマンガン/水素再生燃料電池のパワー密度曲線を示す。
図16】Ti(IV)が存在する状態およびTi(IV)が存在しない状態でのマンガン/水素再生燃料電池の容量保持の比較を示す。
図17】3M HSOにおける0.2M MnSOを使用した20mA/cmの電流密度でのマンガン/水素再生燃料電池の充電および放電曲線を示す。
図18】3M HSOにおける0.2M MnSOおよび0.2M Ti(SOを使用した20mA/cmの電流密度でのマンガン/水素再生燃料電池の充電および放電曲線を示す。
図19A】支持電解液としてHClを使用するH-V RFBの50mA cm-2、75mA cm-2および100mA cm-2での定電流充電および放電を示す。
図19B】75mA cm-2、6M HClにおける2.5M VOSOの電解液、50mL 分-1の液体流量、100mL 分-1のガス流量での定電流充電および放電時のクーロン効率、電圧効率、エネルギ効率および比容量を示す。
図20】添加剤として0.2M NHPOを使用し、電解液が3M HSOにおける3M VOSOであり、液体流量が50mL 分-1であり、ガス流量が100mL 分-1であるH-V RFBの50mA cm-2での定電流充電および放電を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
実施形態および実施例の説明
図1は、電力を発生させるために用いられる電気化学的に活性な材料が(a)水素ガス(アノードに供給される)および(b)液体陰極液における溶解金属イオン(カソードに供給される)である再生燃料電池の概略図を示す。
【0056】
電力供給モードでは、電気化学的に活性な種Mn+1を含む液体陰極液が、ポンプ(11)によって陰極液貯蔵容器(12A)の室から導管(12B)を介して陰極液室(9)に注入され、以下の半反応に従ってカソード(2)で還元される。
【0057】
【数10】
【0058】
次いで、使用済みの電解液種Mを含む陰極液は、陰極液室から第2の導管(1)を介して陰極液貯蔵容器(12A)に運ばれ、未使用陰極液室とは別の室に貯蔵される。陰極液は、添加剤をさらに含む。
【0059】
アノードおよび陽極液室(8)の少なくとも一部は、多孔性ガスフロー電極によって形成され、水素は、加圧ガス源容器(7)から導管(13)を介してアノード/アノード室(8)に供給され、以下の半反応に従ってプロトン(H)に酸化される。
【0060】
【数11】
【0061】
集電器(4)によって電流が収集される。プロトン交換膜(3)は、陽極液室(8)と陰極液室(9)とを分離し、膜(3)の陽極液側から陰極液側にプロトンを選択的に通過させて充電を平衡させ、それによって電気回路を完了させる。いかなる未反応の水素も第2の導管(5)によって陽極液室(8)から運ばれ、加圧ガス源容器(7)に戻される。
【0062】
エネルギ貯蔵モードでは、当該システムは逆にされるため、電気化学的に活性な種Mは、陰極液貯蔵容器(12A)から導管(1)を介して陰極液室(9)に注入され、使用
済みの電解液種Mは、カソードで酸化されて、電気化学的に活性な種Mn+1を形成する。結果として生じる再生電解液は、ポンプ(11)によって陰極液容器(9)から第2の導管(12B)を介して陰極液貯蔵容器(12A)に伝達される。その間、プロトン交換膜(3)の陽極液側のプロトンは、多孔性ガスアノード(4)で水素ガスに触媒還元される。水素は、多孔性アノード(4)から導管(5)を介して伝達され、任意に、加圧ガス源容器(7)に貯蔵される前に圧縮器(6)によって圧縮される。
【0063】
種Mn+1/Mは、V5+/V4+、Ce4+/Ce3+、Mn3+/Mn2+のうちのいずれかであってもよく、好ましくはMn3+/Mn2+であってもよいということが理解されるであろう。
【実施例0064】
実施例1:バナジウム電池
25cm活性面積再生バナジウム燃料電池(RVFC)を後述のように生成して試験した。上記の電池で使用される特定の構成要素の詳細について以下に記載する。燃料電池バイポーラプレート用途のために意図的に製造された高導電性ポリマー複合体エレクトロフェン(Bac2社)からサーペンタインフローチャネルプレートをCNC機械加工した。PTFEシートからプラスチックエンドプレートを切断し、当該プラスチックエンドプレートをアルミニウムプレート同士の間に挟んで、電池全体にわたって均一な圧力分布を保証した。触媒活性面積が25cmである市販のHiSPEC(商標)M-200クラスMEA(ジョンソン・マッセイ・フュエル・セルズ社)を全ての実験で使用した[Johnson Matthey http://www.jmfuelcells.com/products/meas]。iR損失を最小限に抑えて優れた電気伝導性を提供するために、エンドプレートとフローチャネルプレートとの間に金めっき銅集電器を挿入した。最後に、異なる電池構成要素間にバイトンゴムガスケットを設置して、動作中にシステムを適切に封止できるようにした。
【0065】
硫酸バナジウム溶液の調製
対応する量の硫酸バナジル(シグマ・アルドリッチ社)を5M濃硫酸に溶かすことによって、0.23Mおよび1Mのバナジウム陰極液溶液を調製した。マスターフレックス・イージーロード・ペリスタルティック・ポンプおよびマスターフレックス・ケムデュランス管を使用して、バナジウム陰極液を電池に送り込んだ。
【0066】
一般に、VRBでは、1.5M~2.0M程度のバナジウム濃度が使用される。しかし、0.23M溶液が、電池性能の初期の目安になるのに十分であるという理由で選択された。より低い濃度を使用すると、低電流密度での充電および放電時間が短くなる。別段の指示がない限り、この溶液を全ての実験で使用した。
【0067】
充電および放電サイクル
標準的なサイクル
以下の手順は、充電/放電サイクルを実行する際にとられる標準的なステップを詳述している。手順全体を通して、陰極液流量および水素流量は一定のままであった。
【0068】
1.サイクルが実行される電流密度を使用して、システムを0.45Vという目標電圧に放電した。システムの充電状態(SOC)がこの目標値未満である場合には、目標SOCを上回る程度までシステムを充電してから、0.45Vに放電した。
【0069】
2.システムの開回路電圧(open circuit voltage:OCV)を5分間にわたって測定した。
【0070】
3.電圧カットオフ上限に達するまで所望の電流密度でシステムを充電した。
4.システムのOCVを5分間にわたって測定した。
【0071】
5.電圧カットオフ下限に達するまで所望の電流密度でシステムを放電した。
6.システムのOCVを5分間にわたって測定した。
【0072】
設定容量間のサイクル
1.サイクルが実行される電流密度を使用して、システムを0.45Vという目標電圧に放電した。システムのSOCがこの目標値未満である場合には、目標SOCを上回る程度までシステムを充電してから、0.45Vに放電した。
【0073】
2.特定の電流について所望の容量に達するのに必要な時間t(単位:秒)を式2を用いて計算する。
【0074】
【数12】
【0075】
式中、nは電子の数であり、Fはファラデー数であり、Cは種の濃度[モル/L]であり、Vは溶液全体積[L]であり、Iは電流[A]であり、Qは容量[mAh]である。
【0076】
3.システムのOCVを5分間にわたって測定した。
4.ステップ2で計算した時間にわたって、または電圧カットオフ上限に達するまで、所望の電流密度でシステムを充電した。
【0077】
5.システムのOCVを5分間にわたって測定した。
6.ステップ2で計算した時間にわたって、または電圧カットオフ下限に達するまで、所望の電流密度でシステムを放電した。
【0078】
7.システムのOCVを5分間にわたって測定した。
1.9Vを上回る電圧でのカーボン紙の腐食(ヨリセン等、ジャーナル・オブ・パワー・サイエンシズ、2004、第127巻(1-2)、98-104)および水の酸化による過剰な酸素の発生のリスクのために、1.7Vという電圧カットオフ上限を選択した。0.35Vを下回る電圧でのV(III)イオンへのV(IV)イオンの還元(pH0でのプールベダイアグラム)のために、0.45Vという電圧カットオフ下限を選択した。
【0079】
システム試験
0.23M V(V)/V(IV)における充電/放電サイクル
複数の充電/放電サイクルを実行して、RVFCの挙動を分析した。
【0080】
図2は、8mA/cmの電流密度での充電放電挙動を示す。システムは、滑らかな充電/放電曲線を示す。バナジウム/水素システムの開回路電位(OCV)は、ネルンストの式(式3)から計算することができる。
【0081】
【数13】
【0082】
電力供給モードでの反応は、以下の通りである:
アノード:H(g)→2H+2e
カソード:2VO +4H+2e→2VO2++2H
合計:H(g)+2VO +2H→2VO2++2HO。
【0083】
図2におけるサイクルの充電状態におけるOCVは、1.099Vである。ネルンストの式を用いて、V(IV)種に対するV(V)種の割合は、99%であると計算された。充電状態ではV(V)種の濃度が高くなることが予想され、OCVが高いことは、SOCが非常に高いことを意味するであろう。放電後のOCVは0.9213Vであり、これはV(V)の濃度が7%であることに対応する。溶液が放電されるにつれてV(V)濃度が下がることが予想され、濃度が低いことは、放電が深いことを意味するであろう。
【0084】
さまざまな電流密度での0.23M V(V)/V(IV)における充電/放電サイクル
740mAhという最大理論容量のうちの36%を利用したことを示したので、264mAhという目標容量にシステムを充電した。水素流量およびバナジウム流量は、各サイクル全体を通して50mL/分に維持された(図3A)。これらの結果から、電流密度が増加するにつれて充電および放電の両方のステップについて過電位が増加することが観察された。過電位は、オーム抵抗、電荷移動および質量輸送現象に関連付けられた損失に起因する。各充電/放電ステップの開始時には、当該損失は電荷移動プロセスによって最も支配されるが、終了時には、過電位に寄与するのは主に質量輸送制約である。
【0085】
さまざまな流量での0.23M V(V)/V(IV)における充電/放電サイクル
レドックス種の利用に影響を及ぼすシステムパラメータは、電流密度、電圧窓および電解液流量である。電流密度が増加するにつれて電解液の利用が減少することが観察された。また、電流密度は、システムの動作パワーも決定する。電解液の利用率とパワー出力との間にはトレードオフがある。14mA/cmの電流密度での容量利用率に対するバナジウム流量の影響を調査した(図3B)。75%のSOCでの最大パワーポイントが、システムにとって優れた代表ポイントであると考えられるので選択された。
【0086】
バナジウム流量が50mL/分であるとき、システムは、16.2%の容量利用率を有していた(表1を参照)。
【0087】
流量を30mL/分に減少させることにより、容量利用率が9.5%に減少した。しかし、流量を70mL/分に増加させることにより、容量利用率が31.6%に増加した。流量の40%の減少は、利用率の41%の減少を引き起こしたが、40%の増加は、利用率の95%の増加を引き起こした。これは、質量輸送および濃度分極損失がシステムにとって重要であることを示している。さらに流量を100mL/分に増加させることにより、容量利用率が32.7%にわずかに増加し、より高い効率が達成された。
【0088】
【表2】
【0089】
50ml/分の流量での0.23M V(V)/V(IV)のパワー密度
50mL/分のバナジウム流量および3つの充電状態(SOC)でシステムのパワー曲線を測定した(図4A)。75%のSOCでは、システムは、14mA/cmの電流密度で7.7mW/cmの最大パワーポイントに達した。
【0090】
100ml/分の流量での0.23M V(V)/V(IV)のパワー密度
100mL/分の流量および3つの異なるSOCについてパワー曲線を測定した(図4B)。100%のSOCでは、24mA/cmの電流密度で13.3mW/cmの最大パワーポイントに達した。75%のSOCでは、達した最大パワーは、21mA/cmの電流密度で10.7mW/cmであった。これは、50mL/分の流量で達したパワーと比較して最大パワーが39%増加したことを示している。より高いバナジウム流量で動作させると、質量輸送制約を減少させて容量利用率を増加させることによってシステム性能が向上する。
【0091】
100ml/分の流量での1.0M V(V)/V(IV)のパワー密度
バナジウム濃度を上昇させることの効果および大規模システムでの重要事項を調査するために、バナジウムの濃度を0.23Mから1.0Mに上昇させた。典型的な大規模VRBシステムは、バナジウム濃度が1.5~2.0Mであるだろう。2.0Mを上回る濃度では、V5+の溶解度および沈殿が問題になる。1.0M溶液が、元のシステムからの濃度の大幅な上昇であり、大規模で使用されるであろう1.5Mの濃度に近づくので、選択された。
【0092】
100mL/分のバナジウム流量および100%、75%および50%のSOCで1.0Mシステムのパワー曲線を測定した(図5)。100%のSOCで達した最大パワーは、84mA/cmの電流密度で54.3mW/cmであった。また、75%のSOCでの最大パワーポイントは、84mA/cmの電流密度で48.4mW/cmの比パワーであった。0.23Mシステムについて75%のSOCで決定される最大パワーポイントが線形に1.0Mに増加する場合、91mA/cmの電流密度で46.5mW/cmのパワーが達成されるであろう。これは、最大パワーとバナジウム濃度との間の著しく線形の関係を示す。この研究では、我々の非最適化RVFCが現行の市販のVRB技術と比較して驚くほどに高いパワー密度を示したことが分かった。たとえば、2Mバナジウム溶液を有し、平均動作電圧が1.3Vである一般的なVRBシステムの放電パワー密度は、約65mW/cmである(リフチク・M.およびスカイラス-カザコス・M.、ジャーナル・オブ・パワー・ソーシーズ、1988、第22巻、56-67)か、または1Mバナジウム溶液では32mW/cmであり、これは我々の非最適化RVFCよりも40%小さい。この結果はさらに、現行の従来技術の全バナジウムシステムと比較したパワー出力の観点での最適化RVFCシステムの可能性を補強するものである。
【0093】
(最大パワーポイントを少し下回る)72mA/cmの電流密度および100mL/
分のバナジウム流量で動作させたとき、1.0Mシステムでは30.9%のエネルギ効率が達成された。これは、同様の条件下での0.23Mシステムの33.5%のエネルギ効率に匹敵する(表2)。1.0M溶液は、主にその電圧効率が低いために、全体エネルギ効率が低いが、高いクーロン効率を達成する。
【0094】
【表3】
【0095】
実施例2:マンガン電池
特に明記しない限り、上記の実験構成をマンガンRFCの実験に使用した。
【0096】
充電および放電サイクルならびにパワー曲線測定などのマンガンRFCを特徴付けるための方法も同じであった。放電カットオフ電圧は0.5Vであったが、充電は1.8Vで停止させた。
【0097】
硫酸マンガン溶液の調製
対応する量の炭酸マンガン(シグマ・アルドリッチ社)を濃硫酸に溶かすことによって、0.2Mおよび0.5Mのマンガン陰極液溶液を調製した。炭酸マンガンを添加すると、COが放出されて金属溶解度を促進させる。硫酸濃度は、3Mまたは5Mの濃度に達するように調整される。マスターフレックス・イージーロード・ペリスタルティック・ポンプおよびマスターフレックス・ケムデュランス管を使用して、バナジウム陰極液を電池に送り込んだ。
【0098】
放電中の電気化学反応
【0099】
【数14】
【0100】
システム試験
標準的なMn電解液(添加剤なし):サイクル効率
図6は、4サイクルにわたる50ml/分の流量および20mA/cmの電流密度での5M HSOにおける0.2M MnSOを使用したマンガン/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
【0101】
各サイクルについてのクーロン効率、電圧効率およびエネルギ効率を以下の表3にまと
める。
【0102】
【表4】
【0103】
標準的なMn電解液(添加剤なし):電流密度
図7は、50ml/分の流量および可変電流密度での5M HSOにおける0.2M MnSOを使用したマンガン/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
【0104】
さまざまな電流密度におけるクーロン効率、電圧効率およびエネルギ効率を以下の表4にまとめる。
【0105】
【表5】
【0106】
標準的なMn電解液(添加剤なし):流量
図8は、20mA/cmの電流密度および可変流量での5M HSOにおける0.2M MnSOを使用したマンガン/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
【0107】
【表6】
【0108】
標準的なMn電解液(添加剤なし):パワー曲線
図9は、さまざまな充電状態における20秒/点での0.001A/秒の走査速度および50ml/分の流量での5M HSOにおける0.2M MnSOを使用したマンガン/水素再生燃料電池のパワー密度曲線を示す。
【0109】
実施例3:添加剤を有するマンガン電池
添加剤を有する再生マンガン燃料電池を特徴付けるために、上記と同様の実験構成および一連の実験を行った。
【0110】
特に明記しない限り、上記の実験構成を付加的な実験を有するマンガンRFCに使用した。
【0111】
充電および放電サイクルならびにパワー曲線測定などのマンガンRFCを特徴付けるための方法も同じであった。放電カットオフ電圧は0.5Vであったが、充電は1.8Vで停止させた。
【0112】
硫酸マンガン/硫酸チタン溶液の調製
好適な前駆体を濃硫酸に溶かすことによって、0.2M~1.5Mの付加的な溶液を調製した。対応する量の炭酸マンガン(シグマ・アルドリッチ社)を濃硫酸に溶かすことによって、0.2Mおよび0.5Mのマンガン陰極液溶液を調製した。炭酸マンガンを添加すると、COが放出されて金属溶解度を促進させる。硫酸濃度は、3Mまたは5Mの濃度に達するように調整される。マスターフレックス・イージーロード・ペリスタルティック・ポンプおよびマスターフレックス・ケムデュランス管を使用して、バナジウム陰極液を電池に送り込んだ。
【0113】
システム試験
(Ti(IV)添加剤を有する)最適化Mn電解液:サイクル効率
図10は、4サイクルにわたる50ml/分の流量での5M HSOにおける0.2M Ti(SOを有する0.2M MnSOを使用したマンガン/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
【0114】
【表7】
【0115】
(Ti(IV)添加剤を有する)最適化Mn電解液:電流密度
図11は、50ml/分の流量および可変電流密度での5M HSOにおける0.2M Ti(SOを有する0.2M MnSOを使用したマンガン/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
【0116】
【表8】
【0117】
(Ti(IV)添加剤を有する)最適化Mn電解液:マンガン濃度
図12は、50ml/分の流量および20mA/cmの電流密度および可変マンガン濃度での5M HSOにおける0.2M Ti(SOを使用したマンガン/水素再生燃料電池の充電/放電曲線を示す。
【0118】
【表9】
【0119】
図13は、20秒/点での0.001A/秒の走査速度および50ml/分の流量での5M HSOを使用したさまざまなマンガン濃度でのマンガン/水素再生燃料電池のパワー密度曲線を示す。
【0120】
(Ti(IV)添加剤を有する)最適化Mn電解液:酸濃度
図14は、20秒/点での0.001A/秒の走査速度および50ml/分の流量での0.2M Mnを使用したさまざまな酸濃度でのマンガン/水素再生燃料電池のパワー密度曲線を示す。
【0121】
(Ti(IV)添加剤を有する)最適化Mn電解液:充電状態
図15は、さまざまな充電状態における20秒/点での0.001A/秒の走査速度および50ml/分の流量での5M HSOにおける0.2M Mnを使用したマンガン/水素再生燃料電池のパワー密度曲線を示す。
【0122】
容量損失およびMnO の沈殿に対するTi 4+ の影響
図17は、3M HSOにおける0.2M MnSOを使用した20mA/cmの電流密度でのマンガン水素再生燃料電池の充電および放電曲線を示す。完全に充電されると、放電が開始する前に10分の一時停止があった。第1のサイクルと第2のサイクルとの間には容量の大幅な減少があったことが分かる。MnOの沈殿が明白であり、容量の損失の主な原因であると考えられた。
【0123】
図18は、3M HSOにおける0.2M MnSOおよび0.2M Ti(SOを使用した20mA/cmの電流密度でのマンガン/水素再生燃料電池の充電および放電曲線を示す。完全に充電されると、放電が開始する前に10分の一時停止があった。明らかに、サイクル間で容量の損失がほとんどまたは全くない。液体を12時間にわたって完全に充電されたままにしても、固体の沈殿の形跡はなかった。明らかに、Ti4+の存在によって溶液は安定化し、サイクル間で容量が保持される。
【0124】
図16は、4サイクルにわたって5M HSOにおける0.2M MnSOを有するマンガン/水素再生燃料電池、0.2M Ti(SOを有するマンガン/水素再生燃料電池、0.2M Ti(SOを持たないマンガン/水素再生燃料電池の容量保持の比較を示す。やはり、チタンが存在する場合の容量保持の大幅な向上が明らかである。これは、溶液の安定性の向上(すなわち、MnOの沈殿の減少)に起因する。
【0125】
さらなる考察
バナジウム-(V)状態は、pHおよびバナジウム濃度に依存する金属錯体構造を有する豊かな水溶性の化学的性質を示す。バナジウムRFCまたはレドックスフロー電池(RFB)では、電池充電中に正極でVO が生成される。この種は、その濃度が1.5Mを上回っている場合に重合してVとして沈殿する傾向がある。この挙動は、温度が上昇して40Cを上回ると高まる。固体沈殿物の形成は、容量低下およびセル詰まりの結果としてのRFC/RFBの不可逆的劣化につながる。それに加えて、それらのバナジウム溶解度制約は、エネルギ密度が中程度から低い(10~15Wh/L-1)のRFC/RFBにつながる。
【0126】
最近になって、高いV(V)濃度および安定性を達成するための戦略として支持電解液としてClリガンドおよびHClを利用することが報告されてきた。このような陰極液調合物は、全バナジウムRFB(液体-液体構成)において成功裏に実現されたが、H2-バナジウムシステムについての報告は、文献の中で入手できない。さらに、水素発生および酸化触媒(通常はPt)の腐食を引き起こすガス側へのハロゲン化合物のクロスオーバのために、支持電解液としてHClを実施することが推奨される。この効果については、H2-Brシステムおよび塩素アルカリ業界で広く報告されてきた。意外にも、白金黒-カーボン紙電極アノード(Fuel Cell Store、0.5mgPt cm-2ローディング)、ナフィオン117膜およびSGLジグラセットグラファイトフェルトカソードを使用してH2-バナジウムシステムにおいて正の電解液として6M HClに
おける2.5M VOSO4から成る電解液を利用することにより、優れた性能がもたらされた。図19Aは、さまざまな電流密度、すなわち50mA cm-2、75mA cm-2、100mA cm-2をそれぞれ使用して、システムの定電流充電および放電を示す。長期間にわたる充電および放電性能が75mA cm-2で10サイクルにわたって調査され、発生するガスの量を考慮することなく、平均して90%を上回るエネルギ効率および約49Wh L-1の比容量をもたらした(図19B)。
【0127】
独立して報告される別の正の電解液調合物は、添加剤としてのNHPOのインサイチュ形成または添加である。この部分は、高濃度(3M)で長期間にわたってV(V)を安定させる能力を示した。このような電解液調合物は、H-バナジウム濃度では調査されてこなかった。図20は、白金黒-カーボン紙電極アノード(Fuel Cell
Store、0.5mgPt cm-2ローディング)、ナフィオン117膜およびSGLジグラセットグラファイトフェルトカソードを使用した50mA cm-2の電流密度でのこのようなシステムの第1の成功した定電流充電および放電を示す。電解液調合物は、0.2MのNHPOを含む3M HSOにおける3M VOSOであった。図20は、特に、添加剤として0.2M NHPOを使用し、電解液が3M HSOにおける3M VOSOであり、液体流量が50mL 分-1であり、ガス流量が100mL 分-1であるH-V RFBの50mA cm-2での定電流充電および放電を示す。
【0128】
特にバナジウム電解液の文脈において有益であると考えられる代替的な添加剤としては、とりわけリン酸カリウムおよびヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)などの他のリン酸塩種が挙げられる。添加剤は、とりわけ、炭酸アンモニウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリマレイン酸、アラニン、グリシン、ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、ポリスチレンS.酸、Teric PE61、ICI、Teric BL8、ICI、Flocon-100、Calgon EL-5600、Briquest 3010-25、pHreedom、SHMP、K2SO4、K3PO4、KHSO4、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、およびCL-4000のうちの1つ以上を含み得る。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
【手続補正書】
【提出日】2022-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードおよびカソードでの電気化学的に活性な種の反応によって電力を発生させる電力供給モード、および、前記電気化学的に活性な種を生成するために電力を消費するエネルギ貯蔵モードで動作することができる再生燃料電池であって、
アノード室における可逆性水素ガスアノードと、
カソード室における可逆性カソードと、
前記アノード室と前記カソード室とを分離する膜とを備え、前記膜は、プロトンを選択的に通過させることができ、前記電池はさらに、
前記電力供給モードでは電気化学的に活性な種を前記アノードおよび前記カソードに供給し、前記エネルギ貯蔵モードでは生成された電気化学的に活性な種を前記アノードおよび前記カソードから運び出すように構成された導管を備え、
前記アノードにおけるレドックス反応は、以下の通りであり、
【数1】

前記カソードにおけるレドックス反応は
【数2】

であり、
前記カソード室は、Ti(IV)を含む添加剤を含み、
前記添加剤の濃度は0.2Mである、再生燃料電池。
【請求項2】
前記カソード室は、Ti(SOを含む、請求項1に記載の再生燃料電池。
【請求項3】
前記カソード室は、TiO2+イオンを含む、請求項1又は2に記載の再生燃料電池。
【請求項4】
前記カソードの電気化学的に活性な種を含む液体陰極液を収容するように構成された少なくとも1つの容器を含み、前記電力供給モードでは、前記電気化学的に活性な種を含む液体陰極液を前記カソード室に供給するために第1の容器が前記カソード室に接続される、請求項1から3のいずれか1項に記載の再生燃料電池。
【請求項5】
前記エネルギ貯蔵モードでは、前記少なくとも1つの容器は、生成された電気化学的に活性な種を含む陰極液を前記カソード室から受け取るために前記カソード室に接続される、請求項に記載の再生燃料電池。
【請求項6】
使用済みの電気化学的に活性な種を含む液体陰極液を収容するように構成された少なくとも1つの容器を含み、前記電力供給モードでは、前記使用済みの電気化学的に活性な種を含む陰極液を前記カソード室から受け取るために第2の容器が導管に接続される、請求項1から3のいずれか1項に記載の再生燃料電池。
【請求項7】
前記エネルギ貯蔵モードでは、前記少なくとも1つの容器は、前記使用済みの電気化学的に活性な種を含む陰極液を前記カソード室に供給するために導管に接続される、請求項に記載の再生燃料電池。
【請求項8】
水素を収容するように構成された加圧ガス源容器を含み、前記加圧ガス源容器は、前記電力供給モードでは前記アノードに接続可能である、請求項1から7のいずれか1項に記載の再生燃料電池。
【請求項9】
前記加圧ガス源容器は、前記エネルギ貯蔵モードでは、前記エネルギ貯蔵モードで発生した水素を受け取るために前記アノードに接続可能である、請求項に記載の再生燃料電池。
【請求項10】
前記エネルギ貯蔵モードにおいて前記アノードで発生して前記加圧ガス源容器に貯蔵される水素を加圧するように構成された少なくとも1つの圧縮器を含み、任意に、圧縮ガスの膨張の結果として電気を供給する水素膨張発生器も含む、請求項に記載の再生燃料電池。
【請求項11】
前記膜は、プロトン交換膜である、請求項1から10のいずれか1項に記載の再生燃料電池。
【請求項12】
前記膜は、水素イオンおよび溶媒和水素イオンに対して浸透性がある、請求項1から11のいずれか1項に記載の再生燃料電池。
【請求項13】
a)アノードおよびカソードでの電気化学的に活性な種の反応によって電力を発生させる電力供給モード、および、b)前記電気化学的に活性な種を生成するために電力を消費するエネルギ貯蔵モードで再生燃料電池を動作させる方法であって、前記電池は、
アノード室における可逆性水素ガスアノードと、
カソード室における可逆性カソードと、
前記アノード室と前記カソード室とを分離する膜とを備え、前記膜は、プロトンを選択的に通過させることができ、
前記方法は、前記電力供給モードでは電気化学的に活性な種を前記アノードおよび前記カソードに運び、エネルギ貯蔵モードでは生成された電気化学的に活性な種を前記アノードおよび前記カソードから運び出すことを備え、
前記アノードにおけるレドックス反応は、以下の通りであり、
【数3】

前記カソードにおけるレドックス反応は
【数4】

前記カソード室は、Ti(IV)を含む添加剤を含み、
前記添加剤の濃度は0.2Mである、方法。
【請求項14】
前記再生燃料電池は、請求項1から12のいずれか1項に記載の再生燃料電池である、請求項13に記載の方法。
【外国語明細書】