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特開2023-25035DIPEA塩基の存在下でのアリールピロール化合物の製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025035
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】DIPEA塩基の存在下でのアリールピロール化合物の製造
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/34 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
C07D207/34
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022181032
(22)【出願日】2022-11-11
(62)【分割の表示】P 2019549579の分割
【原出願日】2018-03-05
(31)【優先権主張番号】17160466.3
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515012583
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ アグロ ベー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルテス,デビッド エー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,ライアン マイケル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】殺虫剤クロルフェナピル及びトラロピリルの高効率な製造方法を提供する。
【解決手段】式(II)の化合物をDIPEAの存在下で2,3-ジハロプロピオニトリル又は2-ハロアクリロニトリルと反応させるステップAを含む式(I)の化合物の製造方法を提供する。また、式(III)の化合物をDIPEAの存在下でジ(C~C-アルコキシ)メタン並びにPOClかPOCl及びDMFを含む混合物のいずれか一方と反応させるステップCを含む式(IV)の化合物の製造方法にも関する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
(式中、可変部分は、以下の意味を有する。
は、非置換の、又は1個以上の同一の若しくは異なるR11で置換されたフェニルであり;
11は、F、Cl、Br、I、CN、NO、OH、C~C-アルキル、C~C-ハロアルキル、C~C-アルコキシ、C~C-ハロアルコキシ、C~C-アルキル-C(O)O、C~C-ハロアルキル-C(O)Oであるか;あるいは、隣接するフェニル環原子上に位置する2個の置換基R11は、一緒になって-OCHO-基、-OCFO基、又は-CH=CH-CH=CH-基であり、2個の置換基R11が結合している炭素原子とともに、5又は6員環を形成し、
nは、1、2、又は3である。)
の化合物の製造方法Aであって、
式II
【化2】
(式中、可変部分は、式Iの化合物について定義されたのと同じ意味を有する。)
の化合物を、ジイソプロピルエチルアミンの存在下で、2,3-ジハロプロピオニトリル又は2-ハロアクリロニトリルと反応させるステップAを含む、方法。
【請求項2】
ステップAを、極性非プロトン性溶媒を含む溶媒、特にアセトニトリルを含む溶媒中で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式Iの化合物を、式IIの化合物と2,3-ジクロロプロピオニトリルとの反応により製造する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式III
【化3】
(式中、可変部分は、式Iの化合物について定義されたのと同じ意味を有する。)
の化合物の製造方法Bであって、
式Iの化合物を、ジイソプロピルエチルアミンの存在下でBrと反応させるステップBを含む、方法。
【請求項5】
ステップBを、極性非プロトン性溶媒を含む溶媒、特にアセトニトリルを含む溶媒中で行う、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式Iの化合物を請求項1~3のいずれか一項に記載の方法にしたがって製造する、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
ステップA及びステップBをワンポットプロセスとして行う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
が、パラ-クロロフェニルであり、nが1である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式IV
【化4】
(式中、R及びnは、式Iの化合物について定義された通りであり、
は、C~C-アルコキシメチルである。)
の化合物の製造方法Cであって、
式IIIの化合物を、ジイソプロピルエチルアミンの存在下で、ジ(C~C-アルコキシ)メタン、並びにPOClかPOCl及びDMFを含む混合物(ビルスマイヤー試薬)のいずれか一方と反応させるステップCを含む、方法。
【請求項10】
が、p-クロロフェニルであり、nが1であり、また、RがCHCHOCHである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップCを、脂肪族C~C16-炭化水素、芳香族C~C10-炭化水素、ハロゲン化脂肪族C~C-アルカン、ハロゲン化芳香族C~C10-炭化水素、C~C-ニトリル、DMF、又はこれらの混合物を含む溶媒中で行う、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
式IIIの化合物を、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法により製造する、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式IIの化合物を、ステップDにおいて、式V
【化5】
(式中、Rは、式Iの化合物について定義されたのと同じ意味を有する。)
の化合物とC2n+1C(O)Cl及びPClとの反応により製造する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップD及びステップAをワンポットプロセスで行う、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式Iの化合物、式IIIの化合物、又は式IVの化合物の製造における、ジイソプロピルエチルアミンの塩基としての使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、式I
【化1】
(式中、可変部分は、以下の意味を有する。
は、非置換の、又は1個以上の同一の若しくは異なるR11で置換されたフェニルであり;
11は、F、Cl、Br、I、CN、NO、OH、C~C-アルキル、C~C-ハロアルキル、C~C-アルコキシ、C~C-ハロアルコキシ、C~C-アルキル-C(O)O、C~C-ハロアルキル-C(O)Oであるか;あるいは、隣接するフェニル環原子上に位置する2個の置換基R11が一緒になって-OCHO-基、-OCFO基、又は-CH=CH-CH=CH-基であり、2個の置換基R11が結合している炭素原子とともに、5又は6員環を形成し;
nは、1、2、又は3である。)
の化合物の製造方法Aであって、
式II
【化2】
(式中、可変部分は、式Iの化合物について定義されたのと同じ意味を有する。)
の化合物を、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下で、2,3-ジハロプロピオニトリル(DHPN)又は2-ハロアクリロニトリル(HACN)と反応させるステップAを含む、方法に関する。
【0002】
本発明は、式III
【化3】
(式中、可変部分は、式Iの化合物について定義されたのと同じ意味を有する。)
の化合物の製造方法Bであって、
式Iの化合物を、DIPEAの存在下でBr(臭素)と反応させるステップBを含む、方法にも関する。
【0003】
本発明は、式IV
【化4】
(式中、R及びnは、式Iの化合物について定義された通りであり、Rは、C~C-アルコキシメチルである。)
の化合物の製造方法Cであって、
式IIIの化合物を、DIPEAの存在下で、ジ(C~C-アルコキシ)メタン、並びにPOClかPOCl及びDMFを含む混合物(ビルスマイヤー試薬)のいずれか一方と反応させるステップCを含む、方法にも関する。
【0004】
本発明は、式Iの化合物、式IIIの化合物、又は式IVの化合物の製造におけるDIPEAの塩基としての使用、ステップAにおけるDIPEAの塩基としての使用、ステップBにおけるDIPEAの塩基としての使用、及びステップCにおけるDIPEAの塩基としての使用にも関する。実施形態の他の実施形態との組み合わせは、それぞれの好ましさのレベルにかかわらず、本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】TEA又はDIPEAを塩基として使用するステップA反応における反応容器の写真である。
図2】TEA又はDIPEAを塩基として使用するステップA反応における反応セットアップの写真である。
図3】TEA又はDIPEAを塩基として使用するステップB反応における反応セットアップの写真である。
図4】TEAを塩基として使用するステップC反応における反応混合物の写真である。
図5】DIPEAを塩基として使用するステップC反応における反応混合物の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
式III及びIVの殺有害生物化合物及びそれらの製造方法は、US5359090、US5144041、EP0821876A1、US5453508、US5118816、US5446170、及びUS5030735から既知である。経済的に重要な殺虫剤であるクロルフェナピル及びトラロピリルは、それぞれ式III及びIVの化合物の定義に該当する。これらの化合物の工業上及び農業上の重要性のために、より収率が高く、コストが低く、ステップが少なく、廃棄物の少ない、改良された式III及び/又はIVの化合物の製造方法、並びに式Iの中間体化合物の製造方法が望ましい。
【0007】
式III及び/又はIVの化合物の製造は、以下の反応シーケンスにより達成し得る:
【化5】
【0008】
従来技術は、式III及び/又はIVの化合物の製造方法においてトリエチルアミン(TEA)を塩基として使用することを教示している。今回、驚くべきことに、ステップA、B、及び/又はCにおいてDIPEAを塩基として使用することで、式I、III及び/又はIVの化合物のより高い収率がもたらされることが見出された。ステップA、B、及びCにおいて、反応器設備の濃縮器における狭窄を時間の経過とともに引き起こす煙霧の生成がより少ないため、製造方法が単純化される。反応混合物はスラリーではなく溶液であり、それにより後処理(work-up)プロセスが容易になる。全ての沈澱を回収するために反応器を水でフラッシュする必要はなく、それにより腐食性のプロセスが避けられるとともにコストが節減される。特に、ガラス反応器をステップB又はCの後に水でフラッシュすることはガラスの腐食を引き起こすが、これは本発明の方法により回避できる。別の利点は、式I、III又はIVの化合物の後処理の後、塩基であるDIPEAを容易に回収できることである。塩基は、少ないステップで、低い残留水分含量且つ高収率で回収することができる。
【0009】
式Iの化合物は、DIPEAの存在下で式IIの化合物をDHPN又はHACNと反応させるステップAを含む方法Aにおいて製造される。
【化6】
(式中、可変部分は、式Iの化合物について定義されたのと同じ意味を有する。)
【0010】
ステップAは、通常、10℃~70℃、好ましくは15℃~60℃の温度で、不活性溶媒中で行う。典型的には、ステップAは、DIPEAが唯一の塩基として存在し、その他の追加の塩基が存在しない状態で、特にトリエチルアミンの不存在下で行う。好ましくは、ステップAにおけるDIPEAとその他の塩基の比は、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、特に少なくとも100:1である。
【0011】
一実施形態において、方法Aは、式IIの化合物をDHPNと反応させるステップを含む。別の実施形態において、方法Aは、式IIの化合物をHACNと反応させるステップを含む。
【0012】
適した不活性溶媒は、脂肪族炭化水素、好ましくは脂肪族C~C16-炭化水素、より好ましくはC~C16-アルカン、又はC~C16-シクロアルカン、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、又は石油エーテル(petrol ether);芳香族炭化水素、好ましくは芳香族C~C10-炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、o-、m-、及びp-キシレン;ハロゲン化炭化水素、好ましくはハロゲン化脂肪族C~C-アルカン、又はハロゲン化芳香族C~C10-炭化水素、例えばCHCl、CHCl、CCl、CHClCHCl、CClCH、CHClCHCl、CClCCl、又はクロロベンゼン;エーテル、好ましくはC~C-シクロアルキルエーテル、C~C-アルキル-C~C-アルキルエーテル、C~C-アルキル-C~C-シクロアルキルエーテル、C~C-ポリオール-C~C-アルキルエーテル、及びC~C-アルキル-C~C10-アリールエーテル、例えばCHCHOCHCH、(CHCHOCH(CH、CHOC(CH(MTBE)、CHOCH(DME)、CHOCHCHOCH、CHOC(CHCHCH、ジオキサン、アニソール、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン(THF)、及びジエチレングリコール;エステル、好ましくは脂肪族C~C-アルコールと脂肪族C~C-カルボン酸のエステル、芳香族C~C10-アルコールと芳香族C~C10-カルボン酸のエステル、ω-ヒドロキシ-C~C-カルボン酸の環式エステル、例えばCHC(O)OCHCH、CHC(O)OCH、CHC(O)OCHCHCHCH、CHC(O)OCH(CH)CHCH、CHC(O)OC(CH)、CHCHCHC(O)OCHCH、CHCH(OH)C(O)OCHCH、CHCH(OH)C(O)OCH、CHC(O)OCHCH(CH、CHC(O)OCH(CH、CHCHC(O)OCH、安息香酸ベンジル、及びγ-ブチロラクトン;炭酸エステル、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、CHCHOC(O)OCHCH、及びCHOC(O)OCH;ニトリル、好ましくはC~C-ニトリル、例えばアセトニトリル(ACN)、及びCHCHCN;ケトン、好ましくはC~C-アルキル-C~C-アルキルケトン、例えばCHC(O)CH、CHC(O)CHCH、CHCHC(O)CHCH、及びCHC(O)C(CH(MTBK);アミド及び尿素誘導体、好ましくはジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、ヘキサメチルホスホアミド(HMPA);さらにジメチルスルホキシド(DMSO)、及びスルホランである。上記溶媒の混合物もまた可能である。
【0013】
一実施形態において、不活性溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ニトリル、アミド、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、脂肪族C~C16-炭化水素、芳香族C~C10-炭化水素、C~C-ニトリル、アミド、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、芳香族C~C10-炭化水素、C~C-ニトリル、DMF、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ACN、DMF、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、トルエン、ACN、及びDMFの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、ACNを含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、トルエンとACNの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、トルエンとDMFの混合物を含む。
【0014】
適した不活性溶媒は、通常、極性非プロトン性溶媒を含む。一実施形態において、不活性溶媒は、1種の極性非プロトン性溶媒と1種の非極性溶媒の混合物である。別の実施形態において、不活性溶媒は、非極性溶媒のみからなる。
【0015】
極性非プロトン性溶媒の例として、エステル、ケトン、ニトリル、アミド及び尿素誘導体、DMSO、並びにスルホランが挙げられる。非極性溶媒の例として、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びエーテルが挙げられる。
【0016】
溶媒が極性非プロトン性溶媒を含む場合、溶媒の総量に対する全ての極性非プロトン性溶媒の合計の濃度は、少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも30wt%、より好ましくは少なくとも40wt%、最も好ましくは少なくとも60wt%、特に少なくとも70wt%である。溶媒の総量に対する全ての極性非プロトン性溶媒の合計は、10~99wt%、好ましくは20~95wt%、より好ましくは25~90wt%、最も好ましくは50~80wt%であってよい。一実施形態において、溶媒は、溶媒の総量に対して、少なくとも40wt%、好ましくは少なくとも50wt%のACNを含む。
【0017】
DIPEAと式IIの化合物のモル比は、通常、10:1~1:1、好ましくは5:1~1:1、より好ましくは4:1~1:1、最も好ましくは3.5:1~2:1である。DIPEAと式IIの化合物のモル比は、少なくとも1.5:1、より好ましくは少なくとも3:1であってよい。式IIの化合物とDHPNかHACNのいずれか一方のモル比は、1:1~1:5、最も好ましくは1:1~1:3、特に1:1~1:2であってよい。
【0018】
溶媒の総量に対する反応開始時の式IIの化合物の濃度は、1~90wt%、好ましくは10~80wt%、より好ましくは10~60wt%、最も好ましくは10~50wt%、特に15~20wt%であってよい。
【0019】
式IIの化合物とDHPNかHACNのいずれか一方を、典型的にはDIPEAを加える前に混合する。DIPEAの添加は、通常、5分~120分の時間にわたって、好ましくは10分~60分の時間にわたって行う。DIPEAの添加を開始した後、反応には通常、15分~300分、好ましくは50分~150分かかる。
【0020】
典型的には、2,3-ジハロプロピオニトリル(DHPN)は2,3-ジクロロプロピオニトリルを指し;2-ハロアクリルニトリル(HACN)は2-クロロアクリルニトリルを指す。DHPN及びHACN化合物は市販されている。あるいはDHPN及びHACNは、EP0771787又はYokota et al.,Journal of Polymer Science,Polymer Chemistry Edition,1980,vol.18(5),pp.1609-10に記載されているように調製してもよい。好ましくは、DHPNは2,3-ジブロモプロピオニトリルを指す。好ましくは、HACNは2-ブロモアクリルニトリルを指す。
【0021】
式IIIの化合物は、DIPEAの存在下における式Iの化合物とBr(臭素)との反応を含む方法Bにおいて製造される。
【化7】
(式中、可変部分は、式Iの化合物について定義されたのと同じ意味を有する。)
【0022】
ステップBは通常、20℃~60℃、好ましくは25℃~45℃の温度で、不活性溶媒中で、場合により触媒の存在下で行う。典型的には、ステップBは、DIPEAが唯一の塩基として存在し、その他の追加の塩基が存在しない状態で、特にトリエチルアミンの不存在下で行う。好ましくは、ステップBにおけるDIPEAとその他の塩基の比は、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、特に少なくとも100:1である。
【0023】
適した不活性溶媒は、脂肪族炭化水素、好ましくは脂肪族C~C16-炭化水素、より好ましくはC~C16-アルカン、又はC~C16-シクロアルカン、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、又は石油エーテル;芳香族炭化水素、好ましくは芳香族C~C10-炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、o-、m-、及びp-キシレン;ハロゲン化炭化水素、好ましくはハロゲン化脂肪族C~C-アルカン、又はハロゲン化芳香族C~C10-炭化水素、例えばCHCl、CHCl、CCl、CHClCHCl、CClCH、CHClCHCl、CClCCl、又はクロロベンゼン;エーテル、好ましくはC~C-シクロアルキルエーテル、C~C-アルキル-C~C-アルキルエーテル、C~C-アルキル-C~C-シクロアルキルエーテル、C~C-ポリオール-C~C-アルキルエーテル、及びC~C-アルキル-C~C10-アリールエーテル、例えばCHCHOCHCH、(CHCHOCH(CH、CHOC(CH(MTBE)、CHOCH(DME)、CHOCHCHOCH、CHOC(CHCHCH、ジオキサン、及びジエチレングリコール;エステル、好ましくは脂肪族C~C-アルコールと脂肪族C~C-カルボン酸のエステル、芳香族C~C10-アルコールと芳香族C~C10-カルボン酸のエステル、ω-ヒドロキシ-C~C-カルボン酸の環式エステル、例えばCHC(O)OCHCH、CHC(O)OCH、CHC(O)OCHCHCHCH、CHC(O)OCH(CH)CHCH、CHC(O)OC(CH)、CHCHCHC(O)OCHCH、CHCH(OH)C(O)OCHCH、CHCH(OH)C(O)OCH、CHC(O)OCHCH(CH、CHC(O)OCH(CH、CHCHC(O)OCH、安息香酸ベンジル、及びγ-ブチロラクトン;炭酸エステル、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、CHCHOC(O)OCHCH、及びCHOC(O)OCH;ニトリル、好ましくはC~C-ニトリル、例えばACN、及びCHCHCN;アルコール、好ましくはC~C-アルコール及びC~C-アルカンジオール、例えばCHOH、CHCHOH、CHCHCHOH、CHCH(OH)CH、CH(CHOH、及びC(CHOH、CH(OH)CH(OH)、CHCH(OH)CHOH;アミド及び尿素誘導体、好ましくはDMF、NMP、DMA、DMI、DMPU、HMPA;さらにDMSO、及びスルホランである。上記溶媒の混合物もまた可能である。
【0024】
一実施形態において、不活性溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ニトリル、アミド、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、脂肪族C~C16-炭化水素、芳香族C~C10-炭化水素、C~C-ニトリル、アミド、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、芳香族C~C10-炭化水素、C~C-ニトリル、DMF、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ACN、DMF、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、トルエン、ACN、及びDMFの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、ACNを含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、トルエンとACNの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒はトルエンとDMFの混合物を含む。
【0025】
溶媒が極性非プロトン性溶媒を含む場合、溶媒の総量に対する全ての極性非プロトン性溶媒の合計の濃度は、少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも30wt%、より好ましくは少なくとも40wt%、最も好ましくは少なくとも60wt%、特に少なくとも70wt%である。溶媒の総量に対する全ての極性非プロトン性溶媒の合計は、10~99wt%、好ましくは20~95wt%、より好ましくは25~90wt%、最も好ましくは50~80wt%であってよい。一実施形態において、溶媒は、溶媒の総量に対して、少なくとも40wt%、好ましくは少なくとも50wt%のACNを含む。
【0026】
式Iの化合物とBrのモル比は、5:1~1:5、好ましくは1:1~1:5、より好ましくは1:1~1:2、最も好ましくは1:1~1:1.5、とりわけ好ましくは1:1~1:1.4、特に1:1~1:1.3であってよい。
【0027】
溶媒の総量に対する反応開始時の式Iの化合物の濃度は、1~90wt%、好ましくは10~80wt%、より好ましくは10~50wt%、特に15~20wt%であってよい。
【0028】
DIPEAと式Iの化合物のモル比は、通常、10:1~1:2、好ましくは5:1~1:1、より好ましくは3:1~1:1、最も好ましくは2:1~1:1である。DIPEAと式IIの化合物のモル比は、少なくとも1:1、より好ましくは少なくとも1.5:1であってよい。
【0029】
ステップA及びBは、ワンポットプロセスとして行ってよい。用語「ワンポットプロセス」は、第一反応ステップの生成物、例えばステップAにおける式Iの化合物を、中間体精製ステップ無しに、第二反応ステップ、例えばステップBにおいて、直接使用する方法を指す。したがって、第一プロセスの生成物は、母液中に残ってよく、そのまま第二プロセスにおいて適用される。第一及び第二反応ステップは、同じ反応器中又は異なる反応器中で行ってよい。好ましくは第一及び第二反応ステップは一つの反応器中で行う。
【0030】
ステップA及びBをワンポットプロセスとして行う場合、両プロセスのための溶媒は同じであるとともに組成物中でほぼ変わらないままであり、また、DIPEAの全量(そうでない場合はステップA及びステップBの間で分配される)をステップAの開始時に直接加える。したがって、ステップAにおけるDIPEAと式IIの化合物のモル比は10:1~2:1、より好ましくは6:1~3:1、最も好ましくは5:1~3:1であってよい。通常、ステップAにおけるDIPEAと式IIの化合物のモル比は、ステップA及びステップBをワンポットプロセスとして行う場合、少なくとも2:1、好ましくは少なくとも3:1、最も好ましくは少なくとも4:1である。
【0031】
適した触媒を、ステップBにおいて、式Iの化合物に対する準化学量論比で加えてよい。触媒と式Iの化合物のモル比は1:10~1:10、好ましくは1:10~1:100、より好ましくは1:1000~1:100であってよい。一実施形態において、触媒はDMFである。
【0032】
ステップA及びステップBの後の反応混合物を、慣用的な方法で、例えば、水と混合し、相を分離し、適切な場合は粗生成物をクロマトグラフィ精製することにより、後処理してもよい。通常、全ての非プロトン性極性溶媒、特に全てのACNを、ステップBの後、反応混合物から蒸留により除去し、ステップCに適した溶媒に置き換える。続いて、水を加え、二相組成物を50℃~80℃、好ましくは60℃~70℃に加熱してよい。次いで、水層を取り除き、式IIIの化合物を含む有機層を、例えば吸湿性材料を加えることにより、乾燥させる。式IIIの化合物を、有機層からの結晶化(晶析)により、又は有機溶媒の除去により、得てもよい。
【0033】
式IVの化合物は、DIPEAの存在下における、式IIIの化合物と、ジ(C~C-アルコキシ)メタン、並びにPOCl又はPOCl及びDMF(ビルスマイヤー試薬)との反応を含む方法Cにおいて製造される。
【化8】
(式中、Rは、C~C-アルコキシメチルであり;その他の可変部分は、式Iの化合物について定義されたのと同じ意味を有する。)典型的には、ステップCは、DIPEAが唯一の塩基として存在し、その他の追加の塩基が存在しない状態で、特にトリエチルアミンの不存在下で行う。好ましくは、ステップCにおけるDIPEAとその他の塩基の比は、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、特に少なくとも100:1である。
【0034】
ステップCは通常、30℃~80℃、好ましくは40℃~70℃の温度で、不活性溶媒中で行う。ジ(C~C-アルコキシ)メタンは、典型的にはジエトキシメタンであり、この場合RはCHCHOCHである。ジ(C~C-アルコキシ)メタン化合物は、市販されている。あるいは、Pathak D.,Gerald J.,Synthetic Communications,2003,vol.33(9),pp.1557-1561に記載されるように調製することができる。
【0035】
適した不活性溶媒は、脂肪族炭化水素、好ましくは脂肪族C~C16-炭化水素、より好ましくはC~C16-アルカン、又はC~C16-シクロアルカン、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、又は石油エーテル;芳香族炭化水素、好ましくは芳香族C~C10-炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、o-、m-、及びp-キシレン;ハロゲン化炭化水素、好ましくはハロゲン化脂肪族C~C-アルカン、又はハロゲン化芳香族C~C10-炭化水素、例えばCHCl、CHCl、CCl、CHClCHCl、CClCH、CHClCHCl、CClCCl、又はクロロベンゼン;ニトリル、好ましくはC~C-ニトリル、例えばACN、及びCHCHCN;アミド及び尿素誘導体、好ましくはDMF、NMP、DMA、DMI、DMPU、HMPA;さらにDMSO、及びスルホランである。上記溶媒の混合物もまた可能である。
【0036】
一実施形態において、不活性溶媒は、脂肪族C~C16-炭化水素、芳香族C~C10-炭化水素、ハロゲン化脂肪族C~C-アルカン、ハロゲン化芳香族C~C10-炭化水素、C~C-ニトリル、アミド、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、脂肪族C~C16-炭化水素、芳香族C~C10-炭化水素、C~C-ニトリル、DMF、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、芳香族C~C10-炭化水素、ACN、DMF、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ACN、DMF、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、トルエン、ACN、DMF、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、トルエンを含む。
【0037】
式IIIの化合物とジ(C~C-アルコキシ)メタンのモル比は、5:1~1:5、好ましくは1:1~1:5、最も好ましくは1:1~1:2であってよい。モル比は、通常、最大1:1まで、より好ましくは最大1:1.5までである。
【0038】
DIPEAと式IIIの化合物のモル比は、通常、10:1~1:2、好ましくは5:1~1:1、より好ましくは3:1~1:1、最も好ましくは2:1~1:1である。DIPEAと式IIIの化合物のモル比は、少なくとも1:1、より好ましくは少なくとも1.5:1であってよい。
【0039】
一実施形態において、式IIIの化合物をPOClと反応させる。この場合、POClと式IIIの化合物のモル比は、1:2~10:1、好ましくは1:1~5:1、より好ましくは1:1~3:1、特に1:1~2:1であってよい。
【0040】
別の実施形態において、式IIIの化合物を、ビルスマイヤー試薬、すなわちDMFとPOClの混合物と反応させる。DMFとPOClのモル比は、0.1:5~5:1、好ましくは0.1:3~3:1、最も好ましくは0.1:2~1:1であってよい。ビルスマイヤー試薬中のPOClと式IIIの化合物のモル比は、1:2~10:1、好ましくは1:1~5:1、より好ましくは1:1~3:1、特に1:1~2:1であってよい。
【0041】
式IIの化合物は、ステップDにおいて、式Vの化合物とC2n+1C(O)Cl及びPClとの反応により製造してよい。
【化9】
(式中、可変部分は、式Iの化合物について定義されたのと同じ意味を有する。)式Vの化合物は、市販のフェニルグリシンから誘導できる。パラ-クロロフェニルグリシンは同様に市販されている。C2n+1C(O)Clは、通常CFC(O)Clを指し、この場合、式II及びVにおける可変部分nは1である。
【0042】
ステップDは通常、20℃~80℃、好ましくは30℃~70℃の温度で、不活性溶媒中で、場合により触媒の存在下で行う。典型的には、ステップDにおいて塩基は加えない。
【0043】
適した不活性溶媒は、脂肪族炭化水素、好ましくは脂肪族C~C16-炭化水素、より好ましくはC~C16-アルカン、又はC~C16-シクロアルカン、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、又は石油エーテル;芳香族炭化水素、好ましくは芳香族C~C10-炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、o-、m-、及びp-キシレン;ハロゲン化炭化水素、好ましくはハロゲン化脂肪族C~C-アルカン、又はハロゲン化芳香族C~C10-炭化水素、例えばCHCl、CHCl、CCl、CHClCHCl、CClCH、CHClCHCl、CClCCl、又はクロロベンゼン;エーテル、好ましくはC~C-シクロアルキルエーテル、C~C-アルキル-C~C-アルキルエーテル、C~C-アルキル-C~C-シクロアルキルエーテル、C~C-ポリオール-C~C-アルキルエーテル、及びC~C-アルキル-C~C10-アリールエーテル、例えばCHCHOCHCH、(CHCHOCH(CH、CHOC(CH(MTBE)、CHOCH(DME)、CHOCHCHOCH、CHOC(CHCHCH、ジオキサン、アニソール、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン(THF)、及びジエチレングリコール;エステル、好ましくは脂肪族C~C-アルコールと脂肪族C~C-カルボン酸のエステル、芳香族C~C10-アルコールと芳香族C~C10-カルボン酸のエステル、ω-ヒドロキシ-C~C-カルボン酸の環式エステル、例えばCHC(O)OCHCH、CHC(O)OCH、CHC(O)OCHCHCHCH、CHC(O)OCH(CH)CHCH、CHC(O)OC(CH)、CHCHCHC(O)OCHCH、CHCH(OH)C(O)OCHCH、CHCH(OH)C(O)OCH、CHC(O)OCHCH(CH、CHC(O)OCH(CH、CHCHC(O)OCH、安息香酸ベンジル、及びγ-ブチロラクトン;炭酸エステル、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、CHCHOC(O)OCHCH、及びCHOC(O)OCH;ニトリル、好ましくはC~C-ニトリル、例えばACN、及びCHCHCN;ケトン、好ましくはC~C-アルキル-C~C-アルキルケトン、例えばCHC(O)CH、CHC(O)CHCH、CHCHC(O)CHCH、及びCHC(O)C(CH(MTBK);アミド及び尿素誘導体、好ましくはDMF、NMP、DMA、DMI、DMPU、HMPA;さらにDMSO、及びスルホランである。上記溶媒の混合物もまた可能である。
【0044】
一実施形態において、不活性溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ニトリル、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、脂肪族C~C16-炭化水素、芳香族C~C10-炭化水素、C~C-ニトリル、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、芳香族C~C10-炭化水素、C~C-ニトリル、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ACN、又はこれらの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、トルエンとACNの混合物を含む。別の実施形態において、不活性溶媒は、ACNを含む。
【0045】
適した不活性溶媒は、通常、極性非プロトン性溶媒を含む。一実施形態において、不活性溶媒は、極性非プロトン性溶媒と非極性溶媒の混合物である。別の実施形態において、不活性溶媒は、非極性溶媒のみからなる。極性非プロトン性溶媒の例として、エステル、ケトン、ニトリル、アミド及び尿素誘導体、DMSO、及びスルホランが挙げられる。非極性溶媒の例として、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びエーテルが挙げられる。
【0046】
溶媒が1種の極性非プロトン性溶媒を含む場合、溶媒の総量に対する全ての極性非プロトン性溶媒の合計の濃度は、少なくとも20wt%、好ましくは少なくとも30wt%、より好ましくは少なくとも40wt%、最も好ましくは少なくとも60wt%、特に少なくとも70wt%である。溶媒の総量に対する全ての極性非プロトン性溶媒の合計は、10~99wt%、好ましくは20~95wt%、より好ましくは25~90wt%、最も好ましくは50~80wt%であってよい。一実施形態において、溶媒は、溶媒の総量に対して、少なくとも40wt%、好ましくは少なくとも50wt%のACNを含む。
【0047】
適した触媒を、ステップDにおいて、式Vの化合物に対する準化学量論比で加えてよい。触媒と式Vの化合物のモル比は1:10~1:10、好ましくは1:10~1:100、より好ましくは1:1000~1:100であってよい。一実施形態において、触媒はDMFである。
【0048】
式Vの化合物とC2n+1C(O)Clのモル比は、1:2~5:1、好ましくは1:1~3:1、より好ましくは1:1~2:1であってよい。PClと式Vの化合物のモル比は、1:10~1:1、好ましくは1:5~1:1、より好ましくは1:3~1:2であってよい。
【0049】
式Vの化合物の濃度は、溶媒の総重量に対して10~80wt%、好ましくは10~50wt%、より好ましくは20~40wt%であってよい。
【0050】
典型的には、C2n+1C(O)Clを加える前に、PClを式Vの化合物に5分~60分の時間にわたって加える。C2n+1C(O)Clは通常、30分~120分の時間にわたって加える。C2n+1C(O)Clの25℃における物理的状態に応じて、該化合物を気体として反応混合物の表面下に加えてもよいし、又は液体として加えてもよい。
【0051】
ステップA及びDは、ワンポットプロセスとして行ってよい。すなわち、ステップDにおける式IIの化合物を、中間体精製ステップ無しに、ステップAにおいて直接使用する。したがって、ステップDにおいて製造される式IIの化合物は、母液中に残ってよく、そのままステップAにおいて適用される。ステップA及びDは、同じ反応器中又は異なる反応器中で行ってよい。好ましくはステップA及びDは一つの反応器中で行う。ステップA及びDをワンポットプロセスとして行う場合、DIPEAの全量をステップAの間に加える。
【0052】
以下の可変部分の定義は、可変部分が現れる全ての式についての意味及び好ましい意味である。
【0053】
は通常、非置換の、又は1個以上の同一の若しくは異なるR11で置換されたフェニルである。好ましくは、Rは、1個のR11で置換されたフェニル、より好ましくは1個のR11でパラ位において置換されたフェニル、すなわち、4-R11-フェニル置換基である。
【0054】
11は通常、F、Cl、Br、I、CN、NO、OH、C~C-アルキル、C~C-ハロアルキル、C~C-アルコキシ、C~C-ハロアルコキシ、C~C-アルキル-C(O)O、C~C-ハロアルキル-C(O)Oであるか;あるいは、隣接するフェニル環原子上に位置する2個の置換基R11が、一緒になって-OCHO-基、-OCFO基、又は-CH=CH-CH=CH-基であり、2個の置換基R11が結合している炭素原子とともに、5又は6員環を形成する。
【0055】
一実施形態において、R11は、F、Cl、Br、I、CN、NO、OH、C~C-アルキル、C~C-ハロアルキル、C~C-アルコキシ、又はC~C-ハロアルコキシである。別の実施形態において、隣接するフェニル環原子上に位置するR11は、一緒になって-OCHO-基、-OCFO基、又は-CH=CH-CH=CH-基であり、R11が結合している炭素原子とともに、5又は6員環を形成する。別の実施形態において、R11は、F、Cl、Br、I、CN、NO、又はOHである。別の実施形態において、R11は、F、Cl、Br、又はIである。別の実施形態において、R11はClである。
【0056】
可変部分nは、1、2、又は3、好ましくは1である。
【0057】
は、C~C-アルコキシメチル、好ましくはCHCHOCHである。
【0058】
好ましくは、式Iの化合物は、式Iの化合物の定義に該当する式Iaの化合物に関する。
【化10】
【0059】
好ましくは、式IIの化合物は、式IIの化合物の定義に該当する式IIaの化合物に関する。
【化11】
【0060】
好ましくは、式IIIの化合物は、化合物IIIaに対応するとともに式IIIの化合物の定義に該当する、トラロピリルに関する。
【化12】
【0061】
好ましくは、式IVの化合物は、化合物IVaに対応するとともに式IVの化合物の定義に該当する、クロルフェナピルに関する。
【化13】
【0062】
好ましくは、式Vの化合物は、式Vの化合物の定義に該当する式Vaの化合物に関する。
【化14】
【0063】
本明細書において可変部分の定義に関して記載される(用語「ハロゲン」のような)有機部分は、個々の基員の個別のリストの総称である。接頭辞C~Cは、いずれの場合も基中の炭素原子の可能な数を示す。用語「ハロゲン」は、いずれの場合も、F、Br、Cl、又はI、とりわけF、Cl、又はBr、特にClを意味する。本明細書で使用される用語「アルキル」は、いずれの場合も、通常は1~10個の炭素原子、多くの場合1~6個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子、より好ましくは1~3個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基を意味する。アルキル基の例として、CH、CHCH、CHCHCH、(CHCH、CHCHCHCH、CHCHCH(CH)、(CHCHCH、(CHC、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、及び1-エチル-2-メチルプロピルが挙げられる。本明細書において並びにハロアルコキシ及びハロアルコキシアルキルのハロアルキル部分において使用される用語「ハロアルキル」は、いずれの場合も、通常は1~10個の炭素原子、多くの場合1~6個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基であって、この基の水素原子がハロゲン原子で部分的に又は完全に置換されている基を意味する。好ましいハロアルキル部分は、C~C-ハロアルキルから、より好ましくはC~C-ハロアルキル又はC~C-ハロアルキルから、特にC~C-フルオロアルキル、例えばCHF、CHF、CF、CHFCH、CHCHF、CHCHF、CHCF、CFCF等から選択される。本明細書中で使用される用語「アルコキシ」は、いずれの場合も、酸素原子を介して結合されているとともに、通常は1~10個の炭素原子、多くの場合1~6個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐アルキル基を意味する。アルコキシ基の例としてCHO、CHCHO、CHCHCHO、(CHCHO、CHCHCHCHO、CHCHC(CH)O、(CHCHCHO、(CHC等が挙げられる。本明細書中で使用される用語「アルコキシアルキル」は、通常は1~10個、多くの場合1~4個、好ましくは1~2個の炭素原子を含むアルキルであって、1個の炭素原子が、上記で定義したように通常は1~4個、好ましくは1又は2個の炭素原子を含むアルコキシ基を有するアルキルを指す。例としてCHOCH、COCH、CHOCHCH、及びCHCHOCHCHが挙げられる。本明細書中で使用される用語「ハロアルコキシ」は、いずれの場合も、1~10個の炭素原子、多くの場合1~6個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルコキシ基であって、この基の水素原子がハロゲン原子(特にF原子)で部分的に又は完全に置換されている基を意味する。好ましいハロアルコキシ部分としては、C~C-ハロアルコキシ、特にC~C-フルオロアルコキシ、例えばCHFO、CHFO、CFO、CHCHFO、CHFCHO、CHFCHO、CFCHO、CHClFCHO、CClFCHO、CClFCHO、CClCHO、CFCFO等が挙げられる。本明細書において並びにシクロアルコキシ及びシクロアルキルチオのシクロアルキル部分において使用される用語「シクロアルキル」は、いずれの場合も、通常は3~10個又は3~6個の炭素原子を有する単環式脂環式基、例えばシクロプロピル(cC)、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシル又はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを意味する。用語「置換」は、いずれの場合も、1個以上の同一の又は異なる置換基による置換を指す。用語「ハロゲン化」は、部分的な又は完全なハロゲンでの置換を指す。
【0064】
用語「溶媒は~を含む」は、通常、溶媒の総量に対して、それぞれの化合物が少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも80wt%、特に100wt%の濃度であることと関係する。式I、II、III、及びIVの化合物は、それらの塩、互変異性体、及び立体異性体の形態で存在してよい。このような塩は、典型的に、化合物が塩基性官能基(例えばアミン)を有する場合は化合物を酸と反応させることにより、化合物が酸性官能基を有する場合は化合物を塩基と反応させることにより、得られるだろう。塩基に由来し、本発明の化合物と反応させるカチオンは、例えばアルカリ金属カチオンM 、アルカリ土類金属カチオンMea 2+、又はアンモニウムカチオンNR であり、ここで、アルカリ金属は、好ましくはナトリウム、カリウム又はリチウムであり、アルカリ土類金属カチオンは、好ましくはマグネシウム又はカルシウムであり、アンモニウムカチオンNR の置換基Rは、好ましくはH、C~C10-アルキル、フェニル及びフェニル-C~C-アルキルから独立して選択される。適したカチオンは、特にアルカリ金属、好ましくはリチウム、ナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属、好ましくはカルシウム、マグネシウム及びバリウム、並びに遷移金属、好ましくはマンガン、銅、亜鉛及び鉄のイオンと、アンモニウム(NH )及び1~4個の水素原子がC~C-アルキル、C~C-ヒドロキシアルキル、C~C-アルコキシ、C~C-アルコキシ-C~C-アルキル、ヒドロキシ-C~C-アルコキシ-C~C-アルキル、フェニル又はベンジルによって置換された置換アンモニウムである。置換アンモニウムイオンの例として、メチルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウム、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルアンモニウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム及びベンジル-トリエチルアンモニウムが挙げられ、さらに、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、好ましくはトリ(C-C-アルキル)スルホニウム、及びスルホキソニウムイオン、好ましくはトリ(C~C-アルキル)スルホキソニウムが挙げられる。酸に由来し、本発明の化合物と反応させたアニオンは、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、重炭酸イオン、炭酸イオン、ヘキサフルオロケイ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、安息香酸イオン、並びにC~C-アルカン酸のアニオン、好ましくはギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン及び酪酸イオンである。本発明の化合物の互変異性体は、ケト-エノール互変異性体、イミン-エナミン互変異性体、アミド-イミド酸互変異性体等を含む。本発明の化合物は、あらゆる可能性のある互変異性体を包含する。用語「立体異性体」は、光学異性体、例えばエナンチオマー又はジアステレオマー(後者は分子中の2個以上のキラル中心に起因して存在する)と、幾何異性体(シス/トランス異性体)の両方を包含する。置換パターンに応じて、本発明の化合物は、1個以上のキラル中心を有してよく、この場合、本発明の化合物は、エナンチオマー又はジアステレオマーの混合物として存在してよい。式Iの化合物、式IIの化合物、式IIIの化合物、及び式IVの化合物という用語は、各化合物の純粋なエナンチオマー又はジアステレオマーと、それらの混合物の両方を含む。用語「極性非プロトン性溶媒」は、一般的に、双極子モーメントが少なくとも4×10-30Cm、好ましくは少なくとも5×10-30Cm、より好ましくは少なくとも5.5×10-30Cmであることを特徴とする溶媒を指す。したがって、用語「非極性溶媒」は、一般的に、双極子モーメントが4×10-30Cm(クーロン-メートル)未満、好ましくは最大3×10-30Cmまで、より好ましくは最大1×10-30Cmまで、特に0.5×10-30Cm未満であることを特徴とする溶媒を指す。用語「POCl」は、塩化ホスホリルを指す。用語「反応ステップ」は、一般的に、上記で定義したように、ステップA、ステップB、ステップC、又はステップDを指す。用語「p-クロロフェニル」又は「パラ-クロロフェニル」は、4-クロロフェニルを指す。用語「ビルスマイヤー」は、DMFとPOClの混合物に関係し、DMFとPOClのモル比が1:10~10:1、好ましくは1:3~3:1、特に1:1であってよい。用語「DIPEA」は、ジイソプロピルエチルアミンを指し、この用語は、用語「EDIPA」、「((CHCH)CHCHN」、及び「ヒューニッヒ塩基」と同義語である。したがって、DIPEAは、式VIの化合物に関係する。
【化15】
【0065】
DIPEAは、市販の塩基である。用語「塩基」は、本願で使用する場合、式I、II、III、IV、又はVの化合物には関係しない。用語「式Xの化合物」(Xは特定の式に割り当てられた変数)は、それらの立体異性体、塩、互変異性体又はN-オキシドを含む。当然ながら、構造が互変異性体、例えば、ケト-エノール互変異性体、イミン-エナミン互変異性体、アミド-イミド酸互変異性体等を可能にする場合にのみ、互変異性体が存在することができることが理解されるべきである。そうでない場合は、用語「式Xの化合物」は、互変異性体を包含しない。さらに、分子中に少なくとも一個のキラル中心がある場合、又は幾何異性体(シス/トランス異性体)が形成され得る場合にのみ、立体異性体が可能であることが理解されるべきである。化合物は非晶質であってもよく、あるいは、異なる巨視的特性、例えば安定性を有し得るか、又は、異なる生物学的特性、例えば活性を示し得る、1種以上の異なる結晶状態(多形)で存在してもよい。発明は、非晶質及び結晶性化合物、異なる結晶状態のそれぞれの化合物の混合物、並びにそれらの非晶質又は結晶性の塩を特徴とする方法に関する。化合物の塩は、好ましくは農業上許容可能な塩である。化合物の塩は慣用的な方法にて、例えば、化合物が塩基性官能基を有する場合は、化合物を該アニオンの酸と反応させることにより、形成することができる。農業上有用な化合物の塩は、とりわけ、これらの酸の酸付加塩であって、そのカチオン及びアニオンがそれぞれ化合物の作用機序に対して悪影響を有しない酸付加塩を包含する。有用な酸付加塩のアニオンは、主に塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、重炭酸イオン、炭酸イオン、ヘキサフルオロケイ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、安息香酸イオン、C~C-アルカン酸のアニオン、好ましくはギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン及び酪酸イオンである。有用な酸付加塩は、化合物を、対応するアニオンの酸、好ましくは塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸又は硝酸と反応させることにより、形成することができる。用語「N-オキシド」は、酸化してN-オキシド部分となる少なくとも一個の第三級窒素原子を有する任意の化合物を含む。当然ながら、N-オキシドは、窒素原子が化合物中に存在する場合にのみ形成できる。
【0066】
方法AはステップAを含む。一実施形態において、方法Aは、ステップD、その次にステップAを含む。方法BはステップBを含む。一実施形態において、方法Bは、ステップA、その次にステップBを含む。別の実施形態において、方法Bは、ステップD、その次にステップA、さらに次にステップBを含む。方法CはステップCを含む。一実施形態において、方法Cは、ステップB、その次にステップCを含む。別の実施形態において、方法Cは、ステップA、その次にステップB、さらに次にステップCを含む。さらに別の実施形態において、方法Cは、ステップD、その次にステップA、その次にステップB、さらに次にステップCを含む。
【0067】
本発明は、式Iの化合物の製造における、特にステップAにおける、DIPEAの塩基としての使用にも関する。本発明は、式IIIの化合物の製造における、特にステップBにおける、DIPEAの塩基としての使用にも関する。本発明は、式IVの化合物の製造における、特にステップCにおける、DIPEAの塩基としての使用にも関する。
【0068】
一般に、方法A、B、及びCにおいて行う反応ステップは、このような反応に慣用される反応容器において行い、反応は連続式、半連続式又はバッチ式の方法で行う。一般に、特定の反応は、大気圧力下で行われるだろう。しかし、反応は、減圧下で行ってもよい。反応の温度及び持続時間は、広範囲で変動し得るが、当業者は、類似の反応からこのことを理解している。温度は、多くの場合、溶媒の還流温度に依存する。その他の反応は、好ましくは、室温で、すなわち約25℃で、又は氷冷下で、すなわち約0℃で実施する。反応の終了は、当業者にとって既知の方法、例えば薄層クロマトグラフィ又はHPLCによってモニターすることができる。別段の指示がない場合、反応物は、いかなる所望のシーケンスにおいても原則的に互いに接触させることができる。当業者は、反応物又は試薬が感湿性である場合、反応を保護ガス下で、例えば窒素雰囲気下で行うべきであること、及び乾燥した溶媒を用いるべきであることを理解している。当業者は、反応終了後の反応混合物の最良の後処理も理解している。
【実施例0069】
以下の実施例は、本発明の例示である。
【0070】
特性評価
特性評価は、結合した高速液体クロマトグラフィとUV-VIS検出器により、波長220nmにおいて、全ての化合物及び中間体について既知の且つ分析的に検証された規格を用いて行うことができる。グラジエントは、45vol%ACN/55vol%pH2.1リン酸緩衝水溶液を移動相Aとして、100%ACNを移動相Bとして用いた。使用したカラムには逆相C-18材料が入っていた。
【0071】
使用する略語は以下の通りである:hは時間、minは分、eqは当量、hPaはヘクトパスカル。NaOHaqはNaOHの水溶液である。TFA-Clはトリフルオロアセチルクロリドである。PCPGは4-パラクロロフェニルグリシンである。
【0072】
実施例1:DIPEAを塩基として用いた、トラロピリル及びクロルフェナピルの調製 ステップA1:4-(4-クロロフェニル)-2-(トリフルオロメチル)-2H-オキサゾール-5-オンの調製
機械撹拌器、濃縮器、熱電対、及び滴下漏斗を備える予め秤量された(pre-weighed)反応器に、PCPG(41.3g、純度97.7%)をアルゴンガス雰囲気下で加えた。ACN(86.8g)及びトルエン(37.2g)、並びにDMF(0.13g)からなる溶液を、反応器に加えた。得られた混合物をスラリーとして撹拌した。反応温度を30℃~35℃に維持しながら、PCl(13.55g)を30minにわたって漏斗を介してスラリーにチャージした。PClの添加が完了した直後に、TFA-Clガス(31.6g)を反応器に1hの間にわたって表面下に加え、温度を40℃~60℃に保った。TFA-Clの添加が完了した後、得られた黄色スラリーをさらに8h、45℃に保った。HPLCによるスラリーの分析の結果、4-(4-クロロフェニル)-2-(トリフルオロメチル)-2H-オキサゾール-5-オンの収率は99.9%であった。次いで、反応温度を68℃~82℃に上げ、90min間保った。次いで、スラリーを25℃に冷却した。
【0073】
ステップA2:2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリルの調製
ステップA1の4-(4-クロロフェニル)-2-(トリフルオロメチル)-2H-オキサゾール-5-オンのスラリーの入った反応器に、DMF(21.34g)中の2,3-ジクロロプロピオニトリル(28.51g)の溶液を加えた。続いて、反応温度を20℃~55℃に保ちながら、DIPEA(102.8g)を反応器に38minにわたって加えた。すると、反応器には暗色溶液が入っており、該溶液上には多少の白色蒸気があり、濃縮器に引き入れられていた。溶液を35℃に60min間保った。HPLCによる溶液の解析の結果、2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリルの収率は、ステップA1におけるPCPGの量に対して89.8%であった。
【0074】
ステップA3:トラロピリルの調製
ステップA2の2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリルの溶液の入った反応器に、反応温度を30℃~40℃に保ちながら、Br(39.9g)を20minにわたって加えた。反応混合物により白色煙霧が生成され、反応混合物は暗色溶液になった。Brを完全に添加した後、反応温度を35℃に40min間保った。トルエン(144g)を溶液に加え、その後、80℃、393hPa~407hPaの圧力で蒸留して、ACNを反応混合物から除去した。次いで、蒸留によって除去された量と同じ量のトルエン、及び脱イオンHO(100g)を、反応混合物に加え、80℃で15min間撹拌し、予熱した分液漏斗中で水層Iと有機層に分けた。HPLCによる有機層の分析の結果、トラロピリルの収率は、ステップA1におけるPCPGの量に対して88.2%であった。有機層中の残留水を、減圧中、65℃で留去した。ここで、除去される溶媒体積は、同等の体積のトルエンを加えることでバランスを取った。次いで、トルエン中のトラロピリルの溶液を25℃に冷却した。
【0075】
ステップA4:クロルフェナピルの調製
ステップA3のトルエン中のトラロピリルの溶液を反応器に加え、次いで(CHCHO)CH(28.9g)を加えた。次いで、反応温度を45℃~55℃に維持しながら、P(O)Cl(31.9g)を反応器に24minにわたって加えた。添加が完了した後、反応温度を45℃~65℃に60min間維持した。続いて、反応温度を40℃~50℃に維持しながら、DIPEA(40.8g)を10minにわたってチャージした。続いて、反応混合物を45℃に1h保った。それまでに、反応混合物が暗色溶液に変化した。脱ミネラルHO(38.9g)及びNaOHaq(50wt%、17.4g)を加え、得られた二相混合物を75℃に加熱した。その温度を10min間維持した後、混合物を予熱した分液漏斗中で水層IIと有機層に分けた。HPLCによる有機層の分析の結果、クロルフェナピルの収率はステップA1におけるPCPGの量に対して87.8%であった。
【0076】
ステップA5:DIPEAの回収
ステップA3からの水層Iに、NaOHaq(50wt%、85.1g)及びHO(39.1g)を加えた。得られた組成物を70℃で撹拌し、ここで下層を捨てた。上層は、純度92%(GCにて測定)で、およそ8wt%のトルエンと0.2wt%未満のHOを含有する、88gのDIPEAを与えた。ステップA4からの水層IIに、NaOHaq(50wt%、60.6g)及びHO(19.5g)を加えた。得られた組成物を70℃で30min間撹拌し、ここで下層を捨てた。上層は、純度95%(GCにて測定)で、およそ5wt%のトルエンと0.2wt%未満のHOを含有する、57gのDIPEAを与えた。DIPEAの全回収率は95%であった。こうして回収したDIPEAは低含水量であったため、蒸留の必要はなかった。
【0077】
比較例2:TEAを塩基として用いた、トラロピリル及びクロルフェナピルの調製
ステップB1:4-(4-クロロフェニル)-2-(トリフルオロメチル)-2H-オキサゾール-5-オンの調製
機械撹拌器、濃縮器、熱電対、及び滴下漏斗を備える予め秤量された反応器に、PCPG(38.0g、純度98.6%)をアルゴンガス雰囲気下で加えた。ACN(80.5g)及びトルエン(34.5g)、並びにDMF(0.13g)からなる溶液を反応器に加えた。得られた混合物をスラリーとして撹拌した。反応温度を30℃~35℃に維持しながら、PCl(12.6g)を30minにわたって漏斗を介してスラリーにチャージした。PClの添加が完了した直後に、TFA-Clガス(28.4g)を反応器に1hの間にわたって表面下に加え、反応温度を40℃~60℃に保った。TFA-Clの添加が完了した後、得られた黄色スラリーをさらに8h、45℃に保った。HPLCによるスラリーの分析の結果、4-(4-クロロフェニル)-2-(トリフルオロメチル)-2H-オキサゾール-5-オンの収率は99.9%であった。次いで、反応温度を68℃~82℃に上げ、90min間保った。次いで、スラリーを25℃に冷却した。
【0078】
ステップB2:2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリルの調製
ステップB1の4-(4-クロロフェニル)-2-(トリフルオロメチル)-2H-オキサゾール-5-オンのスラリーの入った反応器に、DMF(22.96g)中の2,3-ジクロロプロピオニトリル(22.51g)の溶液を加えた。続いて、反応温度を20℃~55℃に保ちながら、TEA(75.0g)を反応器に38minにわたって加えた。すると、反応器には黄色スラリーと該スラリー上の白色蒸気が入っており、白色蒸気は濃縮器に引き入れられていた。スラリーを35℃に60min間保った。HPLCによるスラリーの分析の結果、2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリルの収率は、ステップB1におけるPCPGの量に対して79.7%であった。
【0079】
ステップB3:トラロピリルの調製
ステップB2の2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリルのスラリーの入った反応器に、反応温度を30℃~40℃に保ちながら、Br(37.1g)を20minにわたって加えた。反応混合物により白色煙霧が生成され、反応混合物は暗色濃厚スラリーになった。Brを完全に添加した後、反応温度を35℃に40min間保った。トルエン(144g)をスラリーに加え、その後、80℃、393hPa~407hPaの圧力で蒸留して、ACNを反応混合物から除去した。次いで、蒸留によって除去された量のトルエン、及び脱イオンHO(109g)を、反応混合物に加え、80℃で15min間撹拌し、予熱した分液漏斗中で水層IIIと有機層に分けた。HPLCによる有機層の分析の結果、トラロピリルの収率は、ステップB1におけるPCPGの量に対して75.3%であった。有機層中の残留水を、減圧中、65℃で留去した。ここで、除去される溶媒体積は、同等の体積のトルエンを加えることでバランスを取った。次いで、トルエン中のトラロピリルの溶液を25℃に冷却した。
【0080】
ステップB4:クロルフェナピルの調製
ステップB3のトルエン中のトラロピリルの溶液を反応器に加え、次いで(CHCHO)CH(26.9g)を加えた。次いで、反応温度を45℃~55℃に維持しながら、P(O)Cl(29.7g)を反応器に24minにわたって加えた。次いで、反応温度を45℃~65℃に60min間維持した。続いて、反応温度を40℃~50℃に維持しながら、TEA(29.8g)を10minにわたってチャージした。次いで、反応混合物を45℃に1h保った。それまでに、反応混合物が暗色スラリーに変化した。次いで、脱ミネラルHO(80g)及びNaOHaq(50wt%、16.2g)を加え、得られた二相混合物を75℃に加熱した。その温度を10min間維持した後、混合物を予熱した分液漏斗中で水層IVと有機層に分けた。HPLCによる有機層の分析の結果、クロルフェナピルの収率は、ステップB1におけるPCPGの量に対して75.1%であった。
【0081】
ステップB5:TEAの回収
ステップB3からの水層IIIに、NaOHaq(50wt%、79.2g)及びHO(36.4g)を加えた。得られた組成物を70℃で撹拌し、ここで下層を捨てた。上層は、純度94%(GCにて測定)で、およそ3.5wt%のトルエンと2.2wt%のHOを含有する、68gのTEAを与えた。ステップB4からの水層IVに、NaOHaq(50wt%、65.4g)及びHO(18.2g)を加えた。得られた組成物を70℃で30min間撹拌し、ここで下層を捨てた。上層は、純度94%(GCにて測定)で、およそ2.4wt%のトルエンと3.0%のHOを含有する、25.6gのTEAを与えた。こうして回収したTEAは高含水量であったため、合わせた粗TEAを雰囲気圧力にて72℃~92℃の温度で蒸留した。最初の15gの蒸留物は、高含水量のため捨てた。残りの蒸留物は、純度95%(GCにて測定)で0.2wt%未満を含有する74.4gのTEAを含有していた。TEAの全回収率は67.4%であった。
【0082】
実施例3:ステップAにおける塩基の比較
ピリジン、1,2-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、及びトリプロピルアミンをステップAにおける塩基として用いた。実験は実施例1のステップA2と同様に行った。したがって、塩基と4-(4-クロロフェニル)-2-(トリフルオロメチル)-2H-オキサゾール-5-オンの比はおよそ3.65であった。以下の2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリルの収率が得られた。収率はステップA1において加えたPCPGの量に対して計算した:
【表1】
【0083】
実施例4:ステップAの視覚的評価
実施例1のステップA2及び比較例2のステップB2の反応混合物を視覚的に評価した。ステップA2の場合、透明で扱い易い溶液と少量の煙霧の生成が観察された。ステップB2の場合、濃厚スラリー及び多量の煙霧が見られ、濃縮器を完全に満たしていた。図1及び2は、それぞれの反応器を撮影した写真を示している。
【0084】
実施例5:ステップBの視覚的評価
実施例1のステップA3及び比較例2のステップB3の反応混合物を視覚的に評価した。ステップA3の場合、少量の煙霧の生成が観察された。ステップB3の場合、多量の煙霧が見られ、濃縮器を完全に満たしていた。図3は、それぞれの反応器を反応中に撮影した写真を示している。
【0085】
実施例6:ステップCの視覚的評価
実施例1のステップA4及び比較例2のステップB4の反応混合物を視覚的に評価した。ステップA4の場合、透明で扱い易い溶液が観察された。ステップB4の場合、濃厚スラリーが生成された。図4及び5は、それぞれの反応器を反応中に撮影した写真を示している。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
実施例6:ステップCの視覚的評価
実施例1のステップA4及び比較例2のステップB4の反応混合物を視覚的に評価した。ステップA4の場合、透明で扱い易い溶液が観察された。ステップB4の場合、濃厚スラリーが生成された。図4及び5は、それぞれの反応器を反応中に撮影した写真を示している。
本発明の態様として、例えば以下の項の態様を挙げることができる。
[1]
式I
【化16】
(式中、可変部分は、以下の意味を有する。
は、非置換の、又は1個以上の同一の若しくは異なるR 11 で置換されたフェニルであり;
11 は、F、Cl、Br、I、CN、NO 、OH、C ~C -アルキル、C ~C -ハロアルキル、C ~C -アルコキシ、C ~C -ハロアルコキシ、C ~C -アルキル-C(O)O、C ~C -ハロアルキル-C(O)Oであるか;あるいは、隣接するフェニル環原子上に位置する2個の置換基R 11 は、一緒になって-OCH O-基、-OCF O基、又は-CH=CH-CH=CH-基であり、2個の置換基R 11 が結合している炭素原子とともに、5又は6員環を形成し、
nは、1、2、又は3である。)
の化合物の製造方法Aであって、
式II
【化17】
(式中、可変部分は、式Iの化合物について定義されたのと同じ意味を有する。)
の化合物を、ジイソプロピルエチルアミンの存在下で、2,3-ジハロプロピオニトリル又は2-ハロアクリロニトリルと反応させるステップAを含む、方法。
[2]
ステップAを、極性非プロトン性溶媒を含む溶媒、特にアセトニトリルを含む溶媒中で行う、項1に記載の方法。
[3]
式Iの化合物を、式IIの化合物と2,3-ジクロロプロピオニトリルとの反応により製造する、項1又は2に記載の方法。
[4]
式III
【化18】
(式中、可変部分は、式Iの化合物について定義されたのと同じ意味を有する。)
の化合物の製造方法Bであって、
式Iの化合物を、ジイソプロピルエチルアミンの存在下でBr と反応させるステップBを含む、方法。
[5]
ステップBを、極性非プロトン性溶媒を含む溶媒、特にアセトニトリルを含む溶媒中で行う、項4に記載の方法。
[6]
式Iの化合物を項1~3のいずれか一項に記載の方法にしたがって製造する、項4又は5に記載の方法。
[7]
ステップA及びステップBをワンポットプロセスとして行う、項6に記載の方法。
[8]
が、パラ-クロロフェニルであり、nが1である、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
[9]
式IV
【化19】
(式中、R 及びnは、式Iの化合物について定義された通りであり、
は、C ~C -アルコキシメチルである。)
の化合物の製造方法Cであって、
式IIIの化合物を、ジイソプロピルエチルアミンの存在下で、ジ(C ~C -アルコキシ)メタン、並びにPOCl かPOCl 及びDMFを含む混合物(ビルスマイヤー試薬)のいずれか一方と反応させるステップCを含む、方法。
[10]
が、p-クロロフェニルであり、nが1であり、また、R がCH CH OCH である、項9に記載の方法。
[11]
ステップCを、脂肪族C ~C 16 -炭化水素、芳香族C ~C 10 -炭化水素、ハロゲン化脂肪族C ~C -アルカン、ハロゲン化芳香族C ~C 10 -炭化水素、C ~C -ニトリル、DMF、又はこれらの混合物を含む溶媒中で行う、項9又は10に記載の方法。
[12]
式IIIの化合物を、項4~8のいずれか一項に記載の方法により製造する、項9~11のいずれか一項に記載の方法。
[13]
式IIの化合物を、ステップDにおいて、式V
【化20】
(式中、R は、式Iの化合物について定義されたのと同じ意味を有する。)
の化合物とC 2n+1 C(O)Cl及びPCl との反応により製造する、項1~12のいずれか一項に記載の方法。
[14]
ステップD及びステップAをワンポットプロセスで行う、項13に記載の方法。
[15]
式Iの化合物、式IIIの化合物、又は式IVの化合物の製造における、ジイソプロピルエチルアミンの塩基としての使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】