(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025125
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】水晶素子及び水晶デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
H03H9/19 D
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190179
(22)【出願日】2022-11-29
(62)【分割の表示】P 2021522909の分割
【原出願日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2019101757
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】松井 良司
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発振周波数が高くなることによって振動部が薄くなっても、水晶素子の機械的強度を維持でき、安定した電気的特性を確保する水晶素子及び水晶デバイスを提供する。
【解決手段】水晶素子10は、第一面及び第二面を有する振動部11と、第一面及び第二面を有し、振動部11の厚みよりも大きい厚みを有し、平面視して振動部11の外縁に位置する平板部12と、第一面及び第二面を有し、平板部12の厚みよりも大きい厚みを有し、平面視して平板部12の外縁に位置する固定部13と、振動部11の第一面及び第二面に位置する励振電極141、・・・と、固定部13の第一面及び第二面の少なくとも一方に位置する搭載電極と、励振電極と搭載電極とを電気的に接続する配線電極161、・・・を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏関係にある二面のうち表側を第一面とし裏側を第二面とし、前記第一面及び前記第二面を垂直に貫く方向の寸法を厚みとしたとき、
第一面及び第二面を有する振動部と、
第一面及び第二面を有し、前記振動部の厚みよりも大きい厚みを有し、平面視して前記振動部の外縁に位置する平板部と、
第一面及び第二面を有し、前記平板部の厚みよりも大きい厚みを有し、平面視して前記平板部の外縁に位置する固定部と、
前記振動部の前記第一面及び前記第二面に位置する励振電極と、
前記固定部の前記第一面及び前記第二面の少なくとも一方に位置する搭載電極と、
前記励振電極と前記搭載電極とを電気的に接続する配線電極と、
を備え、
前記搭載電極と前記振動部との間には、厚み方向に貫く貫通孔を有する
水晶素子。
【請求項2】
前記平板部の前記第一面と前記固定部の前記第一面とが異なる平面上にある、及び、
前記平板部の前記第二面と前記固定部の前記第二面とが異なる平面上にある、
請求項1記載の水晶素子。
【請求項3】
前記平板部の前記第一面と前記固定部の前記第一面とが同じ平面上にある、又は、
前記平板部の前記第二面と前記固定部の前記第二面とが同じ平面上にある、
請求項1記載の水晶素子。
【請求項4】
前記振動部の前記第一面と前記平板部の前記第一面とが異なる平面上にある、及び、
前記振動部の前記第二面と前記平板部の前記第二面とが異なる平面上にある、
請求項2又は3記載の水晶素子。
【請求項5】
前記振動部の前記第一面と前記平板部の前記第一面とが同じ平面上にある、又は、
前記振動部の前記第二面と前記平板部の前記第二面とが同じ平面上にある、
請求項2又は3記載の水晶素子。
【請求項6】
平面視して、前記振動部、前記平板部及び前記固定部が略矩形状であり、
前記振動部の前記矩形の全辺を囲むように前記平板部が位置し、
前記平板部の前記矩形の一辺のみに前記固定部が位置する、
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の水晶素子。
【請求項7】
前記平板部の前記第一面及び前記第二面の少なくとも一方は、前記固定部から離れるにつれて厚みが薄くなる傾斜面を有する、
請求項6記載の水晶素子。
【請求項8】
平面視して、前記平板部の中心から前記固定部までの距離よりも前記振動部の中心から前記固定部までの距離が大きい、
請求項6又は7記載の水晶素子。
【請求項9】
平面視して、前記固定部が位置する前記平板部の前記一辺に垂直な方向を長さ方向としたとき、
前記平板部における前記固定部から前記振動部までの距離は、前記振動部の長さ方向の寸法の半分以上かつ二倍以下である、
請求項6乃至8のいずれか一つに記載の水晶素子。
【請求項10】
平面視して、前記固定部が位置する前記平板部の前記一辺に平行な方向を幅方向としたとき、
前記平板部の幅方向において前記平板部の外縁から前記振動部までの距離は、前記振動部の幅方向の寸法よりも大きい、
請求項6乃至9のいずれか一つに記載の水晶素子。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載の水晶素子と、
前記水晶素子が位置する基体と、
前記水晶素子を前記基体とともに気密封止する蓋体と、
を備えた水晶デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、厚みすべり振動モードの水晶素子、及び、この水晶素子を備えた水晶デバイスに関する。水晶デバイスとしては、例えば水晶振動子又は水晶発振器などが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
厚みすべり振動モードの水晶素子は、ATカットの水晶板の両主面に、金属膜パターンからなる励振電極を形成したものである(例えば特開2016-34061号公報参照)。この水晶素子の発振周波数は、水晶板の厚みに反比例する。つまり、発振周波数が高いほど、水晶板は薄くなる。
【0003】
水晶デバイスは、水晶素子の圧電効果及び逆圧電効果を利用して、特定の発振周波数を発生させる。一般的な水晶デバイスは、パッケージ内に水晶素子を収容し、これを蓋体によって気密封止した構造である。
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る水晶素子は、
表裏関係にある二面のうち表側を第一面とし裏側を第二面とし、前記第一面及び前記第二面を垂直に貫く方向の寸法を厚みとしたとき、
第一面及び第二面を有する振動部と、
第一面及び第二面を有し、前記振動部の厚みよりも大きい厚みを有し、平面視して前記振動部の外縁に位置する平板部と、
第一面及び第二面を有し、前記平板部の厚みよりも大きい厚みを有し、平面視して前記平板部の外縁に位置する固定部と、
前記振動部の前記第一面及び前記第二面に位置する励振電極と、
前記固定部の前記第一面及び前記第二面の少なくとも一方に位置する搭載電極と、
前記励振電極と前記搭載電極とを電気的に接続する配線電極と、
を備え、
前記搭載電極と前記振動部との間には、厚み方向に貫く貫通孔を有する
ものである。
【0005】
本開示に係る水晶デバイスは、
本開示に係る水晶素子と、
前記水晶素子が位置する基体と、
前記水晶素子を前記基体とともに気密封止する蓋体と、
を備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】
図1の水晶素子における裏側を透視して見た平面図である。
【
図4】実施形態1における水晶板を示す平面図である。
【
図5】
図4におけるIIb-IIb線断面図である。
【
図6】
図4の水晶板の寸法例を説明するための平面図である。
【
図12】実施形態2の水晶デバイスを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
近年、水晶素子の発振周波数が高くなるにつれて、水晶板が薄くなることにより、水晶板の機械的強度が低下しつつある。例えば、発振周波数が150MHzでは、水晶板の厚みは11μm程度となる。この場合、水晶板があまりに薄いため、応力により水晶板に歪が生じやすくなる。水晶板に歪が生じると、振動部分の振動バランスが低下することにより、水晶素子の電気的特性が低下する。この電気的特性の低下には、例えば等価直列抵抗値の増大、周波数温度特性の低下(ディップの発生等)などがある。特に発振周波数が150MHz以上の水晶素子では、水晶板がかなり薄いので、この問題が顕著である。
【0008】
本開示に係る水晶素子によれば、振動部と、振動部よりも厚く振動部の外縁に位置する平板部と、平板部よりも厚く平板部の外縁に位置する固定部とを備えたことにより、薄い振動部の外縁を厚い平板部が支え、平板部の外縁をより厚い固定部が支える構造を実現できる。その結果、発振周波数が高くなることによって振動部が薄くなっても、水晶素子の機械的強度を維持でき、これにより安定した電気的特性を確保できる。
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については同一の符号を用いることにより適宜説明を省略する。図面に描かれた形状は、当業者が理解しやすいように描かれているため、実際の寸法及び比率とは必ずしも一致していない。
【0010】
<実施形態1>
図1は水晶素子10を示す平面図、
図2は水晶素子10における裏側を透視して見た平面図、
図3は
図1におけるIc-Ic線断面図である。
図4は水晶板21を示す平面図、
図5は
図4におけるIIb-IIb線断面図、
図6は水晶板21の寸法例を説明するための平面図である。以下、これらの図面に基づき説明する。
【0011】
表裏関係にある二面のうち表側を「第一面」とし裏側を「第二面」とし、第一面及び第二面を垂直に貫く方向の寸法を「厚み」とする。本実施形態1の水晶素子10は、第一面111及び第二面112を有する振動部11と、第一面121及び第二面122を有し、振動部11の厚みよりも大きい厚みを有し、平面視して振動部11の外縁に位置する平板部12と、第一面131及び第二面132を有し、平板部12の厚みよりも大きい厚みを有し、平面視して平板部12の外縁に位置する固定部13と、振動部11の第一面111及び第二面112に位置する励振電極141,142と、固定部13の第一面131及び第二面132の少なくとも一方に位置する搭載電極151,152と、励振電極141,142と搭載電極151,152とを電気的に接続する配線電極161,162と、を備えている。
【0012】
第一面111,121,131及び第二面112,122,132は、次のように構成してもよい。平板部12の第一面121と固定部13の第一面131とは、異なる平面上にある。平板部12の第二面122と固定部13の第二面132とは、異なる平面上にある。振動部11の第一面111と平板部12の第一面121とは、異なる平面上にある。振動部11の第二面112と平板部12の第二面122とは、異なる平面上にある。つまり、振動部11、平板部12及び固定部13は、それぞれの第一面111,121,131が階段状に並び、それぞれの第二面112,122,132も階段状に並んでいる。
【0013】
平面視して、振動部11、平板部12及び固定部13が略矩形状であり、振動部11の矩形の全辺を囲むように平板部12が位置し、平板部12の矩形の一辺120のみに固定部13が位置する、としてもよい。振動部11の全辺を囲むように平板部12が位置すると、振動部11は平板部12の中央に設けられた凹部のようになる。ここで「略矩形」には、正方形、又は、四隅が丸みを帯びた矩形なども含まれる。また、平板部12は、振動部11の全辺ではなく、三辺又は二辺を囲むようにしてもよい。その場合、平板部12は振動部11を含んで略矩形状となる。固定部13は、平板部12の一辺120ではなく、二辺、三辺又は全辺を囲むように位置してもよい。その場合、固定部13は平板部12を含んで略矩形状となる。
【0014】
平板部12の第一面121及び第二面122は、それぞれ、固定部13から離れるにつれて厚みが薄くなる傾斜面121a,122aを有する、としてもよい。傾斜面121a,122aは、どちらか一方としてもよい。また、傾斜面121a,122aは、水晶板の結晶軸を図示するように設定すれば、ウェットエッチングによって形成される。
【0015】
水晶素子10は、搭載電極151,152と振動部11との間に厚み方向に貫く貫通孔17を更に備える、としてもよい。本実施形態1では、貫通孔17が傾斜面121a,122aに形成されている。
【0016】
図4及び
図6において、平面視して、平板部12の中心123から固定部13までの距離124よりも、振動部11の中心113から固定部13までの距離114が大きい、としてもよい。
【0017】
図4及び
図6において、平面視して、固定部13が位置する平板部12の一辺120に垂直な方向を長さ方向としたとき、平板部12における固定部13から振動部11までの距離125は、振動部11の長さ方向の寸法(長さ115)の半分以上かつ二倍以下である、としてもよい。
【0018】
図4及び
図6において、平面視して、固定部13が位置する平板部12の一辺120に平行な方向を幅方向としたとき、平板部12の幅方向において平板部12の外縁から振動部11までの距離126は、振動部11の幅方向の寸法(幅116)よりも大きい、としてもよい。
【0019】
次に、水晶素子10について更に詳しく説明する。
【0020】
水晶素子10は、厚みすべり振動モードで動作し、発振周波数(基本波)が例えば150MHz以上である。振動部11、平板部12及び固定部13は、一個の水晶板21からなる。励振電極141,142、搭載電極151,152及び配線電極161,162は、同じ材料の金属パターンからなる。
【0021】
水晶板21は、ATカット水晶板である。すなわち、水晶において、X軸(電気軸)、Y軸(機械軸)及びZ軸(光軸)からなる直交座標系XYZを、X軸回りに30°以上かつ50°以下(一例として、35°15′)回転させて直交座標系XY’Z’を定義したとき、XZ’平面に平行に切り出されたウェハが水晶板21の原材料となる。そして、水晶板21の長手方向がX軸に平行、短手方向がZ’軸に平行、厚み方向がY’軸に平行である。
【0022】
図6において、寸法の一例を示せば、次のようになる。水晶板21は、長さ211が700~1000μm、幅212が400μmである。振動部11は、長さ115及び幅116ともに100μmである。平板部12の外縁から振動部11までの距離126は、150μmである。固定部13の長さ133は、50~200μmである。
【0023】
一対の励振電極141,142は、平面視して略楕円形であり、振動部11の第一面111及び第二面112のそれぞれ略中央に設けられている。励振電極141,142からは、励振に寄与しない接続用としての配線電極161,162が、搭載電極151,152まで延びている。つまり、励振電極141は配線電極161を経て搭載電極151に導通し、励振電極142は配線電極162を経て搭載電極152に導通している。なお、励振電極141,142は、略楕円形に限らず、例えば略円形又は略矩形などであってもよい。
【0024】
搭載電極151,152は、両方とも固定部13の第二面132に位置しているが、少なくとも一方が固定部13の第一面131に位置するようにしてもよい。この場合、搭載電極151,152は、ワイヤによってパッケージ等に電気的に接続するようにしてもよい。
【0025】
励振電極141,142等を構成する金属パターンは、例えば、クロム(Cr)からなる下地層と、金(Au)からなる導体層と、の積層体を成している。つまり、水晶板21上に下地層が位置し、下地層上に導体層が位置している。下地層は、主に水晶板21との密着力を得る役割を果たす。導体層は、主に電気的導通を得る役割を果たす。
【0026】
金属パターンの製造工程としては、金属膜を設けることを成膜というと、水晶板21に成膜後にフォトレジストパターンを形成してエッチングする方法、水晶板にフォトレジストパターンを形成後に成膜してリフトオフする方法、又は、水晶板をメタルマスクで覆い成膜する方法などが挙げられる。成膜には、スパッタ又は蒸着などが用いられる。
【0027】
水晶素子10は、例えば、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて次のように製造することができる。
【0028】
まず、ATカットの水晶ウェハ全面に耐食膜を設け、その上にフォトレジストを設ける。続いて、そのフォトレジストの上に水晶板21の外形(貫通孔17を含む。)及び平板部12のパターンが描かれたマスクを重ね、露光及び現像をすることにより一部の耐食膜を露出させ、この状態で耐食膜に対するウェットエッチングをする。その後、残った耐食膜をマスクにして、水晶ウェハに対してウェットエッチングをすることにより、水晶板21の外形(途中まで)及び平板部12を形成する(平板部加工工程)。続いて、同様にして、水晶板21の外形(途中まで)及び振動部11を形成する(振動部加工工程)。続いて、同様にして、水晶板21の外形(貫通するまで)を形成する(外形加工工程)。なお、水晶板21の第一面及び第二面を同時にエッチングすることを「両面エッチング」、水晶板21の第一面及び第二面のどちらか一方をエッチングすることを「片面エッチング」という。上記各工程では、両面エッチングを用いている。
【0029】
その後、残った耐食膜を水晶ウェハから除去し、励振電極141,142等となる金属膜を水晶ウェハ全面に設ける。続いて、励振電極141,142等のパターンからなるフォトレジストマスクを金属膜上に形成し、不要な金属膜をエッチングによって除去することにより、励振電極141,142等を形成する。その後、不要なフォトレジストを除去することにより、水晶ウェハに複数の水晶素子10を形成する。最後に、この水晶ウェハから各水晶素子10に個片化することで、単体の水晶素子10が得られる。
【0030】
水晶素子10の動作は次のとおりである。励振電極141,142を介して、水晶板21に交番電圧を印加する。すると、水晶板21は、第一面111及び第二面112が互いにずれるように厚みすべり振動を起こし、特定の発振周波数を発生させる。このように、水晶素子10は、水晶板21の圧電効果及び逆圧電効果を利用して、一定の発振周波数の信号を出力するように動作する。このとき、励振電極141,141間の水晶板21(すなわち振動部11)の板厚が薄いほど、高い発振周波数となる。
【0031】
次に、水晶素子10の作用及び効果について説明する。
【0032】
(1)本実施形態1の水晶素子10は、前述したように、第一面111及び第二面112を有する振動部11と、第一面121及び第二面122を有し、振動部11の厚みよりも大きい厚みを有し、平面視して振動部11の外縁に位置する平板部12と、第一面131及び第二面132を有し、平板部12の厚みよりも大きい厚みを有し、平面視して平板部12の外縁に位置する固定部13と、第一面111及び第二面112に位置する励振電極141,142と、第一面131及び第二面132の少なくとも一方に位置する搭載電極151,152と、励振電極141,142と搭載電極151,152とを電気的に接続する配線電極161,162と、を備えている。
【0033】
本実施形態1の水晶素子10によれば、振動部11と、振動部11よりも厚く振動部11の外縁に位置する平板部12と、平板部12よりも厚く平板部12の外縁に位置する固定部13とを備えたことにより、薄い振動部11の外縁を厚い平板部12が支え、厚い平板部12の外縁をより厚い固定部13が支える構造を実現できる。その結果、発振周波数が高くなることによって振動部11が薄くなっても、水晶素子10の機械的強度を維持でき、これにより安定した電気的特性を確保できる。
【0034】
ここで、水晶素子10の効果の一例を具体的に説明する。平板部が無く、振動部と固定部とからなる水晶素子を比較例とする。この比較例では、薄い振動部と分厚い固定部との境界に応力が集中して、薄い振動部に歪みが生じやすい。そのため、高周波数化に伴い振動部が更に薄くなることにより、振動部がますます歪みやすくなる。これに対し、水晶素子10では、振動部11と固定部13との間に生じた応力が平板部12で分散又は吸収されるので、振動部11が薄くなっても振動部11が歪にくい。なお、応力源としては、重力又は金属パターンの張力などがある。
【0035】
また、発振周波数が特に150MHz以上の水晶素子10では、振動部11がかなり薄いので、実装時の破損等に注意を要する。水晶素子10によれば、平板部12よりも厚い固定部13によってパッケージに実装することにより、取り扱い性を向上できる。
【0036】
(2)第一面111,121,131が階段状に並び、第二面112,122,132も階段状に並ぶ。この場合は、水晶板21の表側と裏側とで同じような構造になる。よって、例えば表側の金属パターンの張力と裏側の金属パターンの張力とが打ち消し合うことにより、振動部11の歪みをより一層抑制できる。また、平板部12及び振動部11を両面エッチングで形成できるので、一工程あたりのエッチング時間を片面エッチングの約半分に短縮できる。
【0037】
また、水晶板21の表側と裏側とで上下対称構造にすれば、これらの効果がより大きくなる。これに加え、水晶板21の重心に対して上下が対称となることにより、水晶板21の上半分と下半分とで振動の状態が同じになるので、振動バランスを向上でき、CI(クリスタルインピーダンス)値を低減できる。
【0038】
(3)振動部11、平板部12及び固定部13が略矩形状であり、振動部11の矩形の全辺を囲むように平板部12が位置し、平板部12の矩形の一辺120のみに固定部13が位置する。振動部11が略矩形状である場合は、振動部11が略円形状又は楕円形状である場合に比べて、ウェットエッチングで振動部11を形成したときのエッチング残渣を管理しやすい。振動部11が略矩形状であれば、振動部11の外縁に露出する結晶面が単純になるので、エッチング残差の形状も単純になるからである。その結果、振動部11の外縁における配線電極161,162の断線を低減できる。また、振動部11の全辺を囲むように平板部12が位置する場合は、薄い振動部11の全辺を厚い平板部12で支持できるので、振動部11に生じる歪みをより低減できる。
【0039】
(4)平板部12の第一面121は固定部13から離れるにつれて厚みが薄くなる傾斜面121aを有する、又は、平板部12の第二面122は固定部13から離れるにつれて厚みが薄くなる傾斜面122aを有する。この場合は次の効果を奏する。固定部13近傍の平板部12(傾斜面121a,122a)における厚みが、固定部13へ向かって徐々に大きくなる。そのため、固定部13側から振動部11側へ伝わる応力が、傾斜面121a,122a(緩やかな段差)によって吸収又は分散されるので、振動部11の歪みをより抑制できる。また、振動部11で発生した振動は固定部13へ向かうにつれて徐々に減衰するので、固定部13で反射する振動による振動部11への影響が軽減される。よって、固定部13近傍の平板部12の断面形状により、振動部11の振動に対する固定部13の影響を抑えられるので、CI値を低減できる。傾斜面121a,122aは、どちらか一方としてもよいが、両方とすることにより、更に効果が増す。
【0040】
(5)搭載電極151,152と振動部11との間に、厚み方向に貫く貫通孔17を更に備える。この場合、固定部13側から振動部11側へ伝わる応力が、貫通孔17によって吸収又は分散されるので、振動部11の歪みをより抑制できる。換言すると、固定部13をパッケージに固定したときに、平板部12に生じる歪みを低減でき、ひいては振動部11に生じる歪みも低減できる。また、貫通孔17が振動部11の振動エネルギを閉じ込めることにより、CI値を低減できる。更に、貫通孔17を傾斜面121a,122aに形成することにより、傾斜面121a,122aの作用と相俟って、これらの効果が大きくなる。
【0041】
(6)平板部12の中心123から固定部13までの距離124よりも、振動部11の中心113から固定部13までの距離114が大きい。この場合、振動部11は、固定部13から離れているので、固定部13をパッケージに固定したときの応力の影響を低減できる。
【0042】
(7)平板部12における固定部13から振動部11までの距離125は、振動部11の長さ115の半分以上かつ二倍以下である。距離125が振動部11の長さ115の半分未満になると、固定部13からの応力の影響を受けやすくなる。距離125が振動部11の長さ115の二倍を越えると、平板部12が歪みやすくなるので、振動部11も歪みやすくなる。
【0043】
(8)平板部12の幅方向において平板部12の外縁から振動部11までの距離126は、振動部11の幅116よりも大きい。この場合は、振動部11の幅方向を十分な平板部12で支持できるので、振動部11に生じる歪みをより低減できる。
【0044】
<他の実施例>
図7~
図11は、それぞれ実施例1~5の水晶板21~25を示す断面図である。以下、これらの図面に基づき説明する。
【0045】
実施形態1における平板部及び振動部を、両面エッチングで形成するか、片面エッチングで形成するかによって、様々な断面形状の水晶板が得られる。これらの水晶板を実施形態1の実施例1~5として説明する。
【0046】
図7に示す実施例1の水晶板21は、
図3及び
図5に示すものと同じである。以下、水晶板22~25において、水晶板21の構成要素に対応する部分は、水晶板21と同じ符号を用いる。
【0047】
平板部12を両面エッチングで形成したときは、平板部12の第一面121と固定部13の第一面131とが異なる平面になり、かつ、平板部12の第二面122と固定部13の第二面132とが異なる平面になる。
【0048】
平板部12を片面エッチングで形成したときは、平板部12の第一面121と固定部13の第一面131とが同じ平面になり、かつ、平板部12の第二面122と固定部13の第二面132とが異なる平面になる。又は、平板部12の第二面122と固定部13の第二面132とが同じ平面になり、かつ、平板部12の第一面121と固定部13の第一面131とが異なる平面になる。
【0049】
振動部11を両面エッチングで形成したときは、振動部11の第一面111と平板部12の第一面121とが異なる平面になり、かつ、振動部11の第二面112と平板部12の第二面122とが異なる平面になる。
【0050】
振動部11を片面エッチングで形成したときは、振動部11の第一面111と平板部12の第一面121とが同じ平面になり、かつ、振動部11の第二面112と平板部12の第二面122とが異なる平面になる。又は、振動部11の第二面112と平板部12の第二面122とが同じ平面になり、かつ、振動部11の第一面111と平板部12の第一面121とが異なる平面になる。
【0051】
図7に示す実施例1の水晶板21は、平板部12及び振動部11の両方とも、両面エッチングで形成したものである。実施形態1で説明したように、(平板部12の両面エッチング+外形の両面エッチング)→(振動部11の両面エッチング+外形の両面エッチング)→外形の両面エッチング、の三回のエッチングが必要となる。
【0052】
図8に示す実施例2の水晶板22は、平板部12を両面エッチングで形成し、振動部11を片面エッチングで形成したものである。この場合は、(平板部12の両面エッチング+外形の両面エッチング)→(振動部11の片面エッチング+外形の両面エッチング)、の二回のエッチングでよい。本実施例2では振動部11を平板部12の第一面121に形成しているが、振動部11を平板部12の第二面122に形成してもよい。その場合でも、水晶板を反転すれば本実施例2の断面形状と同じになる。
【0053】
図9に示す実施例3の水晶板23は、平板部12を片面エッチングで形成し、振動部11を両面エッチングで形成したものである。この場合は、(平板部12の片面エッチング+外形の両面エッチング)→(振動部11の両面エッチング+外形の両面エッチング)、の二回のエッチングでよい。本実施例3では平板部12を固定部13の第二面132側に形成しているが、平板部12を固定部13の第一面131側に形成してもよい。その場合でも、水晶板を反転すれば本実施例3の断面形状と同じになる(実施例4、5についても同様)。
【0054】
図10に示す実施例4の水晶板24は、平板部12及び振動部11の両方とも、片面エッチングで形成したものである。この場合は、(平板部12の片面エッチング+外形の片面エッチング)→(振動部11の片面エッチング+外形の両面エッチング)、の二回のエッチングでよい。
【0055】
図11に示す実施例5の水晶板25は、実施例4の水晶板24と同様に、平板部12及び振動部11の両方とも、片面エッチングで形成したものである。ただし、実施例4では振動部11が平板部12の第一面121に形成されているのに対し、本実施例5では振動部11が平板部12の第二面122に形成されている。この場合も、(平板部12の片面エッチング+外形の片面エッチング)→(振動部11の片面エッチング+外形の両面エッチング)、の二回のエッチングでよい。
【0056】
各実施例の水晶板21~25を備えた水晶素子の構成、作用及び効果は、実施形態1の水晶素子のそれらと同様である。
【0057】
<実施形態2>
図12は水晶デバイス60を示す斜視図であり、
図13は
図12におけるIVb-IVb線断面図である。以下、実施形態1の水晶素子を備えた水晶デバイスを、実施形態2の水晶デバイス60として、これらの図に基づき説明する。
【0058】
図12及び
図13に示すように、本実施形態2の水晶デバイス60は、実施形態1の水晶素子10と、水晶素子10が位置する基体61と、基体61とともに水晶素子10を気密封止する蓋体62と、を備えている。基体61は、パッケージとも呼ばれ、基板61aと枠体61bとからなる。基板61aの上面と枠体61bの内側面と蓋体62の下面とによって囲まれた空間が、水晶素子10の収容部63となる。水晶素子10は、例えば、電子機器等で使用する基準信号を出力する。
【0059】
換言すると、水晶デバイス60は、上面に一対の電極パッド61d及び下面に四つの外部端子61cを有する基板61aと、基板61aの上面の外周縁に沿って位置する枠体61bと、一対の電極パッド61dに導電性接着剤61eを介して実装される水晶素子10と、水晶素子10を枠体61bとともに気密封止する蓋体62と、を備えている。
【0060】
基板61a及び枠体61bは、例えばアルミナセラミックス又はガラスセラミックス等のセラミック材料からなり、一体的に形成されて基体61となる。基体61及び蓋体62は、平面視して概ね略矩形状である。外部端子61cと電極パッド61d及び蓋体62とは、基体61の内部又は側面に形成された導体を介して電気的に接続される。詳しく言えば、基板61aの下面の四隅に外部端子61cがそれぞれ位置する。それらのうちの二つの外部端子61cが水晶素子10に電気的に接続され、残りの二つの外部端子61cが蓋体62に電気的に接続される。外部端子61cは、電子機器等のプリント配線板などに実装するために用いられる。
【0061】
水晶素子10は、前述したように、水晶板21と、水晶板21の上面に形成された励振電極141と、水晶板21の下面に形成された励振電極142とを有する。そして、水晶素子10は、導電性接着剤61eを介して電極パッド61d上に接合され、安定した機械振動と圧電効果により、電子機器等の基準信号を発振する役割を果たす。
【0062】
電極パッド61dは、基体61に水晶素子10を実装するためのものであり、基板61aの一辺に沿うように隣接して一対が位置する。そして、一対の電極パッド61dは、それぞれ搭載電極151,152を接続して水晶素子10の一端を固定端とし、水晶素子10の他端を基板61aの上面から離間した自由端とすることにより、片持ち支持構造にて水晶素子10を基板61a上に固定する。
【0063】
導電性接着剤61eは、例えば、シリコーン樹脂等のバインダの中に、導電フィラとして導電性粉末が含有されたものである。蓋体62は、例えば、鉄、ニッケル又はコバルトの少なくともいずれかを含む合金からなり、シーム溶接などによって枠体61bと接合することにより、真空状態にある又は窒素ガスなどが充填された収容部63を気密的に封止する。
【0064】
水晶デバイス60によれば、水晶素子10を備えたことにより、安定した電気特性を発揮できる。なお、水晶デバイス60は、はんだ付け、金(Au)バンプ又は導電性接着剤などによってプリント基板に外部端子61cの底面が固定されることによって、電子機器を構成するプリント基板の表面に実装される。そして、水晶デバイス60は、例えば、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、時計、ゲーム機、通信機、又はカーナビゲーションシステム等の車載機器などの種々の電子機器で発振源として用いられる。
【0065】
<その他>
以上、上記実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示はこれらに限定されるものではない。本開示の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。例えば、振動部の形状は、略矩形として説明しているが、他のパターン(円形、楕円形、多角形など)であってもよい。
【0066】
この出願は2019年5月30日に出願された日本出願特願2019-101757を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。