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特開2023-25168極紫外線リソグラフィー用工程液組成物、及びこれを用いるパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025168
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】極紫外線リソグラフィー用工程液組成物、及びこれを用いるパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/32 20060101AFI20230214BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20230214BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
G03F7/32 501
H01L21/30 570
G03F7/20 521
G03F7/20 503
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193083
(22)【出願日】2022-12-01
(62)【分割の表示】P 2020563995の分割
【原出願日】2019-05-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0068034
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】516210942
【氏名又は名称】ヨンチャン ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YOUNG CHANG CHEMICAL CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】イ スジン
(72)【発明者】
【氏名】イ スンフン
(72)【発明者】
【氏名】イ スンヒョン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】極紫外線を用いる微細パターン工程でフォトレジスト現像中に発生するパターン崩壊の改善方法と工程液組成物、工程液組成物を用いた高品質のフォトレジストパターンを形成する方法を提供する。
【解決手段】HLB値9~16の非イオン性界面活性剤0.0001~1重量%;テトラエチルアンモニウムヒドロキシド0.0001~1重量%;及び水98~99.9998重量%;を含む工程液組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極紫外線露光源によって限定されたポリヒドロキシスチレン(polyhydxoystyrene)含有フォトレジストパターンの崩壊を減少させるための工程液組成物であって、
HLB値9~16の非イオン性界面活性剤0.0001~1重量%;
テトラエチルアンモニウムヒドロキシド0.0001~1重量%;及び
水98~99.9998重量%;を含む、工程液組成物。
【請求項2】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、またはこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の工程液組成物。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルであることを特徴とする、請求項2に記載の工程液組成物。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤のHLB値が9~13から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の工程液組成物。
【請求項5】
(a)半導体基板にフォトレジストを塗布して膜を形成するステップと、
(b)前記フォトレジスト膜を露光した後、現像してパターンを形成するステップと、
(c)前記フォトレジストパターンを請求項1~4のいずれか一項に記載のフォトリソグラフィー用工程液組成物で洗浄するステップと、を含むことを特徴とする、フォトレジストパターン形成方法。
【請求項6】
前記露光源が極紫外線であることを特徴とする、請求項5に記載のフォトレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程中に極紫外線露光に使用されるポリヒドロキシスチレン(polyhydroxystyrene)含有フォトレジストパターンの崩壊を減少させるための工程液組成物、及びその組成物を用いるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を製造する工程において、より微細なパターンを形成するために、さらに小さな波長帯の光源を必要としている。現在、極紫外線(EUV、extreme ultra violet、13.5nmの波長)光源を用いたリソグラフィー技術が盛んに用いられており、これを用いてより微細なパターンを実現することができるようになった。ところが、極紫外線フォトレジストのエッチング(etching)耐性が依然として改善されていないので、アスペクトの大きいフォトレジストパターンが継続的に必要とされており、これにより現像中にパターン崩壊が起こりやすいため、製造工程で工程マージンが大きく減少する問題が発生している。
【0003】
このため、微細パターン形成中に発生する崩壊を改善するための技術開発が求められている。パターン崩壊レベルを改善するために、フォトレジストの性能向上が最善であり得るが、すべての性能を満足させるフォトレジストの新規開発が困難な現実を無視することができない状況である。
優れたフォトレジストの新規開発の必要性はともなくしても、他の方法でパターン崩壊レベルを改善するための努力が続けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、極紫外線を用いる微細パターン工程でフォトレジスト現像中に発生するパターン崩壊を改善するための方法と工程液組成物を開発することにある。
本発明の他の目的は、このような工程液組成物を用いた高品質のフォトレジストパターンを形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、極紫外線露光源によって限定されたポリヒドロキシスチレン(polyhydxoystyrene)含有フォトレジストパターンの崩壊を減少させるための工程液組成物であって、非イオン性界面活性剤の種類、含有量及びHLB値に着目し、アルカリ物質の種類及び含有量に着目し、純水の含有量に着目して研究と実験を継続した結果、課題を解決することになった。
現像工程中に使用する水系タイプの洗浄液には様々な界面活性剤が使われているが、本発明では、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance、親水性親油性バランス)値に着目して様々な研究を行った結果、HLB値9~16の非イオン性界面活性剤を用いて効果的な洗浄液を製造するに至った。
非イオン性界面活性剤間の特性を区分するための代表的な方法として、HLB値がある。HLB値の範囲は0~20に区分されるが、HLB値が0に近いほど非イオン性界面活性剤の疎水性(親油性)の特性が強く、HLB値が20に近いほど非イオン性界面活性剤の親水性の特性が強い。
【0006】
超純水を主に使用する水系タイプの洗浄液に、疎水性に近い非イオン性界面活性剤を使用する場合、フォトレジスト壁面の疎水化を誘導してパターンのメルティング(melting)及び崩壊減少を誘導することができるが、非イオン性界面活性剤同士が凝集する傾向が強いため、洗浄液の物性が均一でなくなることにより、使用中にむしろ、凝集した非イオン性界面活性剤によって欠陥(defect)が誘発されるおそれがある。
本発明では、非イオン界面活性剤のHLB値が小さいほどパターン崩壊改善効果に優れることを確認したが、非イオン界面活性剤をあまり多く使用するか、或いはHLB値が8以下である場合に、超純水を主に使用する水系タイプの洗浄液で界面活性剤同士が凝集する結果を確認した。
逆に、親水性に近い非イオン界面活性剤を使用する場合、超純水を主に使用する水系タイプの洗浄液に凝集なしで均等に分散されて均一な物性の洗浄液を製造することができ、露光及び現像後に一部親水化されたフォトレジストの壁面への界面活性剤の吸着により毛細管力を減少させてパターン崩壊を改善させることができるが、親水性が強すぎる界面活性剤の場合は、フォトレジストパターンのメルティングを誘発させるおそれがあり、結果としてパターン崩壊を引き起こすおそれがある。
【0007】
本発明では、さまざまな研究及び実験を行った結果、非イオン性界面活性剤のHLB値が17以上の場合にパターン崩壊減少能力が足りない結果を確認することができた。
現在、ほとんどのフォトリソグラフィー現像工程に使用する代表的な現像液として、純水を基本にしてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを一定の濃度で希釈して使用しているが、ほとんどの工程では、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38重量%を水97.62重量%と混合して使用しており、極紫外線リソグラフィー工程でも、現在、純水にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを希釈して現像液として使用している状況である。
本発明では、極紫外線リソグラフィー工程中における現像後に連続的に純水単独で洗浄する場合、パターン崩壊を確認した。
【0008】
また、極紫外線リソグラフィー工程中における現像後、連続的に純水にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが含まれている洗浄液を適用するか、或いは、純水単独で洗浄した後、連続的に純水にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが含まれている洗浄液を適用する場合にも、パターン崩壊を確認した。
このような結果によって、純水にテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが含まれている洗浄液の場合、極紫外線で露光された微細パターンを弱化させ、毛細管力が大きいか不均一であってパターンを崩壊させるものと推定することができる。
本発明では、極紫外線で露光されたパターンの崩壊を改善し、さらに極紫外線工程で要求されるフォトレジストパターンのLWR(Line Width Roughness)及び欠陥の改善のためには、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドよりも相対的に露光されたパターンに及ぼす力が弱いアルカリ物質を探索する必要性を認識し、これについての研究及び実験が継続的に行われた。
【0009】
本発明では、アルカリ物質のうち、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを除くテトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを用いる場合、パターン崩壊なしにLWRまたは欠陥が改善されることを確認した。
そこで、本発明は、好適な第1実施形態として、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドまたはこれらの混合物よりなる群から選択されるアルカリ物質0.0001~1重量%;HLB値9~16の非イオン性界面活性剤0.0001~1重量%;及び水98~99.9998重量%;を含む、フォトレジスト現像中に発生するパターン崩壊レベルを減少させるためのリンス液を提供する。
【0010】
前記実施形態による界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であってもよい。
前記実施形態による非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、またはこれらの混合物よりなる群から選択されるものであってもよい。
前記実施形態によるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテルのHLB値が9~16であってもよい。
また、本発明は、(a)半導体基板にフォトレジストを塗布して膜を形成するステップと、(b)前記フォトレジスト膜を露光した後、現像してパターンを形成するステップと、(c)前記フォトレジストパターンを前記フォトリソグラフィー用工程液組成物で洗浄するステップと、を含むことを特徴とする、フォトレジストパターン形成方法を提供する。
【0011】
パターン崩壊の原因として、現象後に純水でパターンを洗浄する際にパターンの間に発生する毛細管力が考えられているが、毛細管力を減少させるだけではパターン崩壊を完全に改善させることができないことを確認することができた。
毛細管力を減少させるためにリンス液の表面張力を下げる目的で、不適切な界面活性剤を過量使用する場合にパターンのメルティングを誘導してむしろパターン崩壊をさらに誘発させるおそれがある。
パターン崩壊を改善させるためには、洗浄液の表面張力を減少させるとともに、フォトレジストパターンのメルティングを防止する界面活性剤の選択が重要である。
本発明の洗浄液は、極紫外線光源を用いるフォトレジストに優れた効果を発揮し、特にフォトレジストの主な成分である樹脂(resin)がポリヒドロキシスチレン(polyhydroxystyrene)であるフォトレジストの現像中に発生するパターン崩壊レベルを特に減少させるという効果がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフォトリソグラフィー用工程液組成物は、極紫外線露光源によって限定されたポリヒドロキシスチレン含有フォトレジストパターンの形成に役立つことができ、特に、簡単な工程の追加によって、フォトレジスト単独では達成することが困難なパターン崩壊減少効果を示すことにより、生産コストを節減することができるのである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドまたはこれらの混合物よりなる群から選択されるアルカリ物質0.0001~1重量%;HLB(Hydrophilic-Lipohilic Balance)値9~16の非イオン性界面活性剤0.0001~1重量%;及び水98~99.9998重量%;を含む、フォトレジスト現像中に発生するパターン崩壊レベルを減少させるための工程液に関する。
以下、本発明の好適な実施例及び比較例を説明する。しかし、下記実施例は、本発明の好適な一実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0014】
[実施例]
実施例及び比較例
[実施例1]
HLB値9のポリオキシエチレンアルキルエーテル0.01重量%、及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシド0.01重量%が含まれている、フォトレジストパターンの崩壊レベルを減少するための工程液を、次の方法で製造した。
HLB値9のポリオキシエチレンアルキルエーテル0.01重量%及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシド0.01重量%を蒸留水99.98重量%に投入して5時間攪拌した後、微細固形分不純物を除去するために0.01μmのフィルターに通過させることにより、フォトレジストパターンの崩壊レベルを減少させるための工程液を製造した。

[実施例2~実施例20]
表1乃至表5に記載されている組成に従って、実施例1と同一のフォトレジストパターンの崩壊レベルを減少させるための工程液を製造した。
【0015】
[比較例1]
一般に、半導体素子製造工程における現像工程の最終工程液として使用される純水(蒸留水)を準備した。

[比較例2~比較例9]
表1乃至表5に記載されている組成に従って、実施例と比較するために実施例1と同様の方法で工程液を製造した。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】
【0016】
実験例及び比較実験例
半導体基板にフォトレジストを塗布して膜を形成するステップ、及び前記フォトレジスト膜を露光した後、現像してパターンを形成するステップによって形成されたパターンを、実施例1~実施例20及び比較例1~比較例9で製造された工程液組成物を用いて洗浄した後、パターンが形成されたシリコンウエハーに対してパターン崩壊レベル及び欠陥数の減少比を測定し、その結果を表6に実験例1~実験例20及び比較実験例1~比較実験例9で表した。
【0017】
(1)パターン崩壊防止の確認
露光エネルギーとフォーカスをスプリットした後、クリティカルディメンション-走査電子顕微鏡(CD-SEM、日立製作所)を用いて全ブロック数89個のうち、パターンが崩れないブロック(block)の数を測定した。
(2)欠陥数の割合
表面欠陥観察装置[KLA Tencor社製]を用いて、それぞれのリンス液試料によってリンス処理したフォトレジストパターンに対して、欠陥数(A)を計測し、純水のみでリンス処理した場合の欠陥数(B)に対する百分率(%)、すなわち(A/B)×100で表した。
純水のみで処理した後の欠陥数を100%にして基準とし、純水のみで処理した欠陥数100%よりも減少または増加する程度を百分率で表示したものが、欠陥数の割合(減少比または増加比)であり、この数値が低いほど優れるものである。
(3)透明度
製造された洗浄液の透明度を肉眼で確認して透明または不透明と表示した。

【表6】
【0018】
実験例1~8を比較実験例1~3と対比した結果、界面活性剤のHLB値が9~16である場合に、パターン崩壊のないブロックの数が増加し、欠陥数が減少し、すべて透明であることが確認された。特にHLB値が9~13である場合、さらに優れた効果を示すことが確認された。
実験例2、9~12を比較実験例4、5と対比した結果、界面活性剤の含有量が0.0001~1重量%である場合に、パターン崩壊のないブロックの数が増加し、欠陥数が減少し、すべて透明であることが確認された。
実験例2、13~16を比較実験例6、7と対比した結果、アルカリ物質の含有量が0.0001~1重量%である場合に、パターン崩壊のないブロックの数が増加し、欠陥数が減少し、すべて透明であることが確認された。
【0019】
実験例2、17、18を比較実験例1と対比した結果、界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテルである場合に、パターン崩壊のないブロックの数が増加し、欠陥数が減少し、すべて透明であることが確認された。特に界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルである場合、さらに優れた効果を示すことが確認された。
実験例2、19、20を比較実験例8、9と対比した結果、アルカリ物質は、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドである場合に、パターン崩壊のないブロックの数が増加し、欠陥数が減少し、すべて透明であることが確認された。特にアルカリ性物質がテトラブチルアンモニウムヒドロキシドである場合、さらに優れた効果を示すことが確認された。
一方、実施例2のパターン崩壊評価結果、パターン崩壊が起こらない区間(ブロック)の数が77個であって非常に優れた効果を示すことが確認された。
これに対し、比較例1のパターン崩壊評価結果、パターン崩壊が起こらない区間(ブロック)の数が46個であって不良な効果を示すことが確認された。
【0020】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好適な実施形態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものではない点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求の範囲とそれらの等価物によって定義されるというべきである。