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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025176
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/304 647Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193448
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2021065606の分割
【原出願日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2020072771
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021004935
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】出村 健介
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】神谷 将也
(72)【発明者】
【氏名】中村 美波
(57)【要約】      (修正有)
【課題】静電気の発生を抑制し、且つ、汚染物の除去率を向上させる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置1は、基板100を回転可能な載置台2aと、載置台と基板との間の空間に、冷却ガス3a1を供給可能な冷却部3と、基板の載置台側とは反対の表面100bに第1の液体101を供給可能な第1液体供給部4と、基板の表面に、第1の液体よりも導電率が高い第2の液体102を供給可能な第2液体供給部5と、制御部9と、を備えている。制御部は、冷却ガスの供給、第1の液体の供給及び第2の液体の供給を制御することで、基板の表面に第2の液体を供給し、載置台と基板との間の空間に冷却ガスを供給する予備工程と、基板の表面に向けて第1の液体を供給して液膜を形成する液膜の形成工程と、基板の表面にある液膜を過冷却状態にする過冷却工程と、基板の表面にある液膜の少なくとも一部を凍結させる凍結工程と、を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転可能な載置台と、
前記載置台と、前記基板と、の間の空間に、冷却ガスを供給可能な冷却部と、
前記基板の、前記載置台側とは反対の面に第1の液体を供給可能な第1液体供給部と、
前記基板の前記面に、前記第1の液体よりも導電率が高い第2の液体を供給可能な第2液体供給部と、
前記基板の回転、前記冷却ガスの供給、前記第1の液体の供給、および、前記第2の液体の供給を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記冷却ガスの供給、前記第1の液体の供給、および、前記第2の液体の供給を制御することで、
前記基板の前記面に前記第2の液体を供給し、前記載置台と前記基板との間の空間に前記冷却ガスを供給する予備工程と、
前記予備工程の後、前記基板の前記面に向けて前記第1の液体を供給して液膜を形成する液膜の形成工程と、
前記基板の前記面にある前記液膜を過冷却状態にする過冷却工程と、
前記基板の前記面にある前記液膜の少なくとも一部を凍結させる凍結工程と、
を実行する基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記液膜の形成工程において、前記基板を回転させて前記基板の前記面に供給された前記第2の液体の少なくとも一部を排出させ、前記第2の液体が排出された前記基板の前記面に向けて前記第1の液体を供給させる請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記液膜の形成工程において、前記第2の液体を排出する際に一部を残留させ、前記残留させた前記第2の液体の上に、前記第1の液体を供給する請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記基板の前記面にある凍結した前記液膜に、前記第2の液体を供給して、凍結した前記液膜を解凍する解凍工程と、
をさらに実行する請求項1~3のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第2の液体は、溶解した際にイオン化するガスが溶存している液体である請求項1~4のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記液膜の形成工程において、前記基板を回転させて前記基板の前記面に供給された前記第2の液体の少なくとも一部を排出後、前記予備工程の回転数よりも遅い第1の回転数とした後、前記基板の前記面に向けて前記第1の液体を供給する、請求項1~4のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント用テンプレート、フォトリソグラフィ用マスク、半導体ウェーハなどの基板の表面に付着したパーティクルなどの汚染物を除去する方法として、凍結洗浄法が提案されている。
【0003】
凍結洗浄法においては、例えば、洗浄に用いる液体として純水を用いる場合、まず、回転させた基板の表面に純水と冷却ガスを供給する。次に、純水の供給を止め、供給した純水の一部を排出して基板の表面に水膜を形成する。水膜は、基板に供給された冷却ガスによって凍結される。水膜が凍結して氷膜が形成される際に、パーティクルなどの汚染物が氷膜に取り込まれることで基板の表面から分離される。次に、氷膜に純水を供給して氷膜を溶融し、純水とともに汚染物を基板の表面から除去する。これにより、汚染物の除去率を向上させている。
【0004】
ここで、純水は導電率が低い。そのため、回転させた基板の表面に純水を供給した際に静電気が発生しやすくなる。一方、基板の表面には、導電性を有するパターンや、導電性を有するパターンを絶縁する要素などが形成されている場合がある。そのため、発生した静電気により絶縁破壊などが生じる場合がある。また、静電気に起因する化学反応により、基板の表面やパターンにダメージが発生するおそれもある。
【0005】
そこで、静電気の発生を抑制することができ、且つ、汚染物の除去率を向上させることができる基板処理装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-026436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、静電気の発生を抑制することができ、且つ、汚染物の除去率を向上させることができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る基板処理装置は、基板を回転可能な載置台と、前記載置台と、前記基板と、の間の空間に、冷却ガスを供給可能な冷却部と、前記基板の、前記載置台側とは反対の面に第1の液体を供給可能な第1液体供給部と、前記基板の前記面に、前記第1の液体よりも導電率が高い第2の液体を供給可能な第2液体供給部と、前記基板の回転、前記冷却ガスの供給、前記第1の液体の供給、および、前記第2の液体の供給を制御する制御部と、を備えている。前記制御部は、前記冷却ガスの供給、前記第1の液体の供給、および、前記第2の液体の供給を制御することで、前記基板の前記面に前記第2の液体を供給し、前記載置台と前記基板との間の空間に前記冷却ガスを供給する予備工程と、前記予備工程の後、前記基板の前記面に向けて前記第1の液体を供給して液膜を形成する液膜の形成工程と、前記基板の前記面にある前記液膜を過冷却状態にする過冷却工程と、前記基板の前記面にある前記液膜の少なくとも一部を凍結させる凍結工程と、を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、静電気の発生を抑制することができ、且つ、汚染物の除去率を向上させることができる基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る基板処理装置を例示するための模式図である。
図2】本実施の形態に係る基板処理装置の制御部を例示するための模式図である。
図3】基板処理装置の作用を例示するためのタイミングチャートである。
図4】凍結洗浄工程における、基板に供給された液体の温度変化を例示するためのグラフである。
図5】凍結洗浄工程を複数回実施する場合のフローチャートである。
図6】凍結洗浄工程を複数回実施する場合の、制御部の動作を説明したフローチャートである。
図7】他の実施形態に係る基板処理装置を例示するための模式図である。
図8】他の実施形態に係る基板処理装置の作用を例示するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下に例示をする基板100は、例えば、半導体ウェーハ、インプリント用テンプレート、フォトリソグラフィ用マスク、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に用いられる板状体などとすることができる。
なお、基板100の表面には、パターンである凹凸部が形成されていてもよいし、凹凸部が形成される前の基板(例えば、いわゆるバルク基板)であってもよい。ただし、基板処理装置1の用途は、例示をした基板100に限定されるわけではない。
【0012】
また、以下においては、一例として、基板100が、フォトリソグラフィ用マスクである場合を説明する。基板100が、フォトリソグラフィ用マスクである場合には、基板100の平面形状は、略四角形とすることができる。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置1を例示するための模式図である。
図2は、本実施の形態に係る基板処理装置1の制御部9を例示するための模式図である。
図1に示すように、基板処理装置1には、載置部2、冷却部3、第1液体供給部4、第2液体供給部5、筐体6、送風部7、制御部9、および排気部11が設けられている。また、図2に示すように、制御部9には、機構制御部9a、設定部9b、記憶部9c、が設けられている。
【0014】
載置部2は、載置台2a、回転軸2b、および駆動部2cを有する。
載置台2aは、筐体6の内部に回転可能に設けられている。載置台2aは、板状を呈している。載置台2aの一方の主面には、基板100を支持する複数の支持部2a1が設けられている。基板100を複数の支持部2a1に支持させる際には、基板100の表面100b(凹凸部が形成された側の面)が、載置台2a側とは反対の方を向くようにする。
【0015】
複数の支持部2a1には、基板100の裏面100aの縁(エッジ)が接触する。支持部2a1の、基板100の裏面100aの縁と接触する部分は、テーパ面または傾斜面とすることができる。
【0016】
また、載置台2aの中央部分には、載置台2aの厚み方向を貫通する孔2aaが設けられている。
【0017】
回転軸2bの一方の端部は、載置台2aの孔2aaに嵌合されている。回転軸2bの他方の端部は、筐体6の外部に設けられている。回転軸2bは、筐体6の外部において駆動部2cと接続されている。
【0018】
回転軸2bは、筒状を呈している。回転軸2bの載置台2a側の端部には、吹き出し部2b1が設けられている。吹き出し部2b1は、載置台2aの、複数の支持部2a1が設けられる面に開口している。吹き出し部2b1の開口側の端部は、孔2aaの内壁に接続されている。吹き出し部2b1の開口は、載置台2aに載置された基板100の裏面100aに対向している。
【0019】
吹き出し部2b1は、載置台2a側(開口側)になるに従い断面積が大きくなる形状を有している。そのため、吹き出し部2b1の内部の孔は、載置台2a側(開口側)になるに従い断面積が大きくなる。なお、回転軸2bの先端に吹き出し部2b1を設ける場合を例示したが、吹き出し部2b1は、後述の冷却ノズル3dの先端に設けることもできる。また、載置台2aの孔2aaを吹き出し部2b1とすることもできる。
【0020】
吹き出し部2b1を設ければ、放出された冷却ガス3a1を、基板100の裏面100aのより広い領域に供給することができる。また、冷却ガス3a1の放出速度を低下させることができる。そのため、基板100が部分的に冷却されたり、基板100の冷却速度が速くなりすぎたりするのを抑制することができる。その結果、後述する液体101(第1の液体の一例に相当する)の過冷却状態を生じさせることが容易となる。
【0021】
回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部には、冷却ノズル3dが取り付けられている。回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部と、冷却ノズル3dとの間には、図示しない回転軸シールが設けられている。そのため、回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部は、気密となるように封止されている。
【0022】
駆動部2cは、筐体6の外部に設けられている。駆動部2cは、回転軸2bと接続されている。駆動部2cは、モータなどの回転機器を有することができる。駆動部2cの回転力は、回転軸2bを介して載置台2aに伝達される。そのため、駆動部2cにより載置台2a、ひいては載置台2aに載置された基板100を回転させることができる。
【0023】
また、駆動部2cは、回転の開始と回転の停止のみならず、回転数(回転速度)を変化させることができる。駆動部2cは、例えば、サーボモータなどの制御モータを備えたものとすることができる。
【0024】
冷却部3は、載置台2aと、基板100の裏面100aと、の間の空間に、冷却ガス3a1を供給する。冷却部3は、冷却液部3a、フィルタ3b、流量制御部3c、および冷却ノズル3dを有する。冷却液部3a、フィルタ3b、および流量制御部3cは、筐体6の外部に設けられている。
【0025】
冷却液部3aは、冷却液の収納、および冷却ガス3a1の生成を行う。冷却液は、冷却ガス3a1を液化したものである。冷却ガス3a1は、基板100の材料と反応し難いガスであれば特に限定はない。冷却ガス3a1は、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスとすることができる。
【0026】
冷却液部3aは、冷却液を収納するタンクと、タンクに収納された冷却液を気化させる気化部とを有する。タンクには、冷却液の温度を維持するための冷却装置が設けられている。気化部は、冷却液の温度を上昇させて、冷却液から冷却ガス3a1を生成する。気化部は、例えば、外気温度を利用したり、熱媒体による加熱を用いたりすることができる。冷却ガス3a1の温度は、液体101の凝固点以下の温度であればよく、例えば、-170℃とすることができる。
【0027】
なお、冷却液部3aが、タンクに収納された冷却液を気化させることで冷却ガス3a1 を生成する場合を例示したが、窒素ガス等をチラーなどで冷却し、冷却ガス3a1とすることもできる。この様にすれば、冷却液部を簡素化できる。
【0028】
フィルタ3bは、配管を介して、冷却液部3aに接続されている。フィルタ3bは、冷却液に含まれていたパーティクルなどの汚染物が、基板100側に流出するのを抑制する。
【0029】
流量制御部3cは、配管を介して、フィルタ3bに接続されている。流量制御部3cは、冷却ガス3a1の流量を制御する。流量制御部3cは、例えば、MFC(Mass Flow Controller)などとすることができる。また、流量制御部3cは、冷却ガス3a1の供給圧力を制御することで冷却ガス3a1の流量を間接的に制御するものであってもよい。この場合、流量制御部3cは、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
【0030】
冷却液部3aにおいて冷却液から生成された冷却ガス3a1の温度は、ほぼ所定の温度となっている。そのため、流量制御部3cにより、冷却ガス3a1の流量を制御することで基板100の温度、ひいては基板100の表面100bにある液体101の温度を制御することができる。この場合、流量制御部3cにより、冷却ガス3a1の流量を制御することで、後述する過冷却工程において液体101の過冷却状態を生じさせることができる。
【0031】
冷却ノズル3dは、筒状を呈している。冷却ノズル3dの一方の端部は、流量制御部3cに接続されている。冷却ノズル3dの他方の端部は、回転軸2bの内部に設けられている。冷却ノズル3dの他方の端部は、吹き出し部2b1の、載置台2a側(開口側)とは反対の端部の近傍に位置している。
【0032】
冷却ノズル3dは、流量制御部3cにより流量が制御された冷却ガス3a1を基板100に供給する。冷却ノズル3dから放出された冷却ガス3a1は、吹き出し部2b1を介して、基板100の裏面100aに直接供給される。
【0033】
第1液体供給部4は、基板100の表面100bに液体101を供給する。後述するように、液体101は、基板100の材料と反応し難く、且つ、凍結した際に体積が増える液体とすることが好ましい。液体101は、例えば、水(例えば、純水や超純水など)や、水を主成分とする液体などとすることが好ましい。
【0034】
水を主成分とする液体は、例えば、水とアルコールの混合液、水と酸性溶液の混合液、水とアルカリ溶液の混合液などとすることができる。
水とアルコールの混合液とすれば表面張力を低下させることができるので、基板100の表面100bに形成された微細な凹凸部の内部に液体101を供給するのが容易となる。
【0035】
水と酸性溶液の混合液とすれば、基板100の表面に付着したパーティクルやレジスト残渣などの汚染物を溶解することができる。例えば、水と硫酸などの混合液とすれば、レジストや金属からなる汚染物を溶解することができる。
水とアルカリ溶液の混合液とすれば、ゼータ電位を低下させることができるので、基板100の表面100bから分離させた汚染物が基板100の表面100bに再付着するのを抑制することができる。
【0036】
ただし、水以外の成分が余り多くなると、体積増加に伴う物理力を利用することが難しくなるので、汚染物の除去率が低下するおそれがある。そのため、水以外の成分の濃度は、5wt%以上、30wt%以下とすることが好ましい。
【0037】
第1液体供給部4は、液体収納部4a、供給部4b、流量制御部4c、および液体ノズル4dを有する。液体収納部4a、供給部4b、および流量制御部4cは、筐体6の外部に設けられている。
【0038】
液体収納部4aは、前述した液体101を収納する。液体101は、凝固点よりも高い温度で液体収納部4aに収納される。液体101は、例えば、常温(20℃)で収納される。
供給部4bは、配管を介して、液体収納部4aに接続されている。供給部4bは、液体収納部4aに収納されている液体101を液体ノズル4dに向けて供給する。供給部4bは、例えば、液体101に対する耐性を有するポンプなどとすることができる。なお、供給部4bがポンプである場合を例示したが、供給部4bはポンプに限定されるわけではない。例えば、供給部4bは、液体収納部4aの内部にガスを供給し、液体収納部4aに収納されている液体101を圧送するものとしてもよい。
【0039】
流量制御部4cは、配管を介して、供給部4bに接続されている。流量制御部4cは、供給部4bにより供給された液体101の流量を制御する。流量制御部4cは、例えば、流量制御弁とすることができる。また、流量制御部4cは、液体101の供給の開始と供給の停止をも行うことができる。
【0040】
液体ノズル4dは、筐体6の内部に設けられている。液体ノズル4dは、筒状を呈している。液体ノズル4dの一方の端部は、配管を介して、流量制御部4cに接続されている。液体ノズル4dの他方の端部は、載置台2aに載置された基板100の表面100bに対向している。そのため、液体ノズル4dから吐出した液体101は、基板100の表面100bに供給される。
【0041】
また、液体ノズル4dの他方の端部(液体101の吐出口)は、基板100の表面100bの略中央に位置している。液体ノズル4dから吐出した液体101は、基板100の表面100bの略中央から拡がり、基板100の表面100bで略一定の厚みを有する液膜が形成される。なお、以下においては、基板100の表面100bに形成された液体101の膜を液膜と称する。
【0042】
第2液体供給部5は、基板100の表面100bに液体102(第2の液体の一例に相当する)を供給する。第2液体供給部5は、液体収納部5a、供給部5b、流量制御部5c、および液体ノズル4dを有する。
【0043】
液体102は、後述する予備工程および解凍工程において用いることができる。そのため、液体102は、基板100の材料と反応し難く、且つ、後述する乾燥工程において基板100の表面100bに残留し難いものであれば特に限定は無い。
【0044】
また、後述するように、液体102は、液体101よりも導電率が高い液体とすることが好ましい。液体102は、例えば、溶解した際にイオン化するガスが溶存している液体とすることができる。溶解した際にイオン化するガスが溶存している液体は、例えば、炭酸ガスやアンモニアガスが溶存している液体とすることができる。また、液体102は、例えば、純水などで希釈した、濃度の低いSC-1(Standard Clean 1)、コリン(CHOLINE)水溶液、TMAH(Tetramethyl ammonium hydroxide)水溶液などとしてもよい。
また、液体102は、前述した液体と、前述した液体よりも表面張力の小さい液体103との混合液としてもよい。液体103は、例えば、界面活性剤を含む液体、およびイソプロピルアルコール(IPA)などである。
【0045】
第2液体供給部5の構成は、例えば、第1液体供給部4の構成と同様とすることができる。例えば、液体収納部5aは、前述した液体収納部4aと同様とすることができる。供給部5bは、前述した供給部4bと同様とすることができる。流量制御部5cは、前述した流量制御部4cと同様とすることができる。
【0046】
また、液体102は予備工程および解凍工程で用いられるため、液体102の温度は、液体101の凝固点よりも高い温度とすることができる。また、液体102の温度は、凍結した液体101を解凍できる温度とすることもできる。液体102の温度は、例えば、常温(20℃)程度とすることができる。
【0047】
筐体6は、箱状を呈している。筐体6の内部にはカバー6aが設けられている。カバー6aは、基板100に供給され、基板100が回転することで基板100の外部に排出された液体101、102を受け止める。カバー6aは、筒状を呈している。カバー6aの、載置台2a側とは反対側の端部の近傍(カバー6aの上端近傍)は、カバー6aの中心に向けて屈曲している。そのため、基板100の上方に飛び散る液体101、102の捕捉を容易とすることができる。
【0048】
また、筐体6の内部には仕切り板6bが設けられている。仕切り板6bは、カバー6aの外面と、筐体6の内面との間に設けられている。
【0049】
筐体6の底面側の側面には複数の排出口6cが設けられている。図1に例示をした筐体6の場合には、排出口6cが2つ設けられている。使用済みの冷却ガス3a1、空気7a、液体101、および液体102は、排出口6cから筐体6の外部に排出される。排出口6cには排気管6c1が接続され、排気管6c1には使用済みの冷却ガス3a1、空気7aを排気する排気部(ポンプ)11が接続されている。また、排出口6cには液体101、102を排出する排出管6c2が接続されている。
【0050】
排出口6cは基板100よりも下方に設けられている。そのため、冷却ガス3a1が排出口6cから排気されることでダウンフローの流れが作りだされる。その結果、パーティクルの舞い上がりを防ぐことができる。
【0051】
平面視において、複数の排出口6cは、筐体6の中心に対して対称となるように設けられている。この様にすれば、筐体6の中心に対して、冷却ガス3a1の排気方向が対称となる。冷却ガス3a1の排気方向が対称となれば、冷却ガス3a1の排気が円滑となる。
【0052】
送風部7は、筐体6の天井面に設けられている。なお、送風部7は、天井側であれば、筐体6の側面に設けることもできる。送風部7は、ファンなどの送風機とフィルタを備えることができる。フィルタは、例えば、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)などとすることができる。
【0053】
制御部9は、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。図2に、制御部9の構成の一例を例示する。制御部9は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算素子と、半導体メモリなどの記憶部9cを有するコンピュータとすることができる。例えば、図2に例示した機構制御部9aおよび設定部9bを演算素子、記憶部9cを記憶素子とすることができる。記憶素子には、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムなどを格納することができる。演算素子は、記憶素子に格納されている制御プログラム、入出力画面(装置)8を介して操作者により入力されたデータなどを用いて、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
【0054】
制御プログラムおよび操作者により入力されたデータは、設定部9bにより記憶部9c(記憶素子)に記憶されるのに最適な状態に設定された後、記憶素子に記憶される。また、設定部9bは、操作者により出力を求められたデータを入出力画面に表示させるのに最適な状態へと再変換し、入出力画面(装置)8に表示させる。
【0055】
例えば、制御部9は、記憶部9cに記憶された制御プログラムに基づき、機構制御部9aから基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御することで、基板100の回転、冷却ガス3a1の供給、液体101の供給、および、液体102の供給を制御する。
【0056】
例えば、制御部9は、冷却ガス3a1の供給、液体101の供給、および、液体102の供給を制御することで、回転する基板100の表面100bに液体102を供給し、載置台2aと基板100との間の空間に冷却ガス3a1を供給する予備工程を実行する。
【0057】
例えば、制御部9は、基板100を回転させて基板100の表面100bに供給された液体102の少なくとも一部を排出した後、回転数を変更し、液体102が排出された基板100の表面100bに向けて液体101を供給して液膜を形成する液膜の形成工程を実行する。
【0058】
例えば、制御部9は、基板100の表面100bにある液膜を過冷却状態にする過冷却工程を実行する。
例えば、制御部9は、基板100の表面100bにある液膜の少なくとも一部を凍結させる凍結工程を実行する。
【0059】
例えば、制御部9は、液膜の形成工程において、液体102を排出する際に一部を残留させ、残留させた液体102の上に、液体101を供給する。
【0060】
例えば、制御部9は、凍結した液膜に、液体102を供給して、凍結した液体101を解凍する解凍工程を実行する。
なお、各工程における内容の詳細は後述する。
【0061】
次に、基板処理装置1の作用について例示をする。
図3は、基板処理装置1の作用を例示するためのタイミングチャートである。
図4は、凍結洗浄工程における、基板100に供給された液体101の温度変化を例示するためのグラフである。
【0062】
なお、図3および図4は、基板100が6025クオーツ(Qz)基板(152mm×152mm×6.35mm)、液体101が純水、液体102が炭酸ガスが溶存している液体(炭酸水)の場合である。
【0063】
まず、筐体6の図示しない搬入搬出口を介して、基板100が筐体6の内部に搬入される。搬入された基板100は、載置台2aの複数の支持部2a1の上に載置、支持される。
【0064】
基板100が載置台2aに支持された後に、図3および図4に示すように予備工程、液膜の形成工程、冷却工程(過冷却工程+凍結工程)、解凍工程、乾燥工程を含む凍結洗浄工程が行われる。
【0065】
まず、図3および図4に示すように予備工程が実行される。予備工程においては、制御部9が、供給部5bおよび流量制御部5cを制御して、基板100の表面100bに、所定の流量の液体102を供給する。また、制御部9が、流量制御部3cを制御して、基板100の裏面100aに、所定の流量の冷却ガス3a1を供給する。また、制御部9が、駆動部2cを制御して、基板100を第2の回転数で回転させる。
【0066】
ここで、冷却部3による冷却ガス3a1の供給により筐体6内の雰囲気が冷やされると、雰囲気中のダストを含んだ霜が基板100に付着し、汚染の原因となる可能性がある。予備工程においては、基板100の表面100bに液体102を供給し続けているので、基板100を均一に冷却しつつ、基板100の表面100bへの霜の付着を防止することができる。
【0067】
例えば、図3に例示したものの場合には、基板100の回転数は、第2の回転数として、例えば50rpm~500rpm程度とできる。また、液体102の流量を0.1L/min~1.0L/min程度とできる。また、冷却ガス3a1の流量を40NL/min~200NL/min程度とできる。また、予備工程の工程時間を1800秒程度とすることができる。なお、予備工程の工程時間は、基板100の面内温度が略均一となる時間であればよく、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。
【0068】
予備工程における液膜の温度は、液体102がかけ流し状態であるため、供給される液体102の温度とほぼ同じとなる。例えば、供給される液体102の温度が常温(20℃)程度である場合、液膜の温度は常温(20℃)程度となる。
【0069】
次に、図3および図4に示すように液膜の形成工程が実行される。液膜の形成工程においては、予備工程において供給されていた液体102の供給を停止する。すると、基板100の回転が維持されているので、基板100の表面100bにある液体102が排出される。そして、基板100の回転数を第2の回転数より遅い第1の回転数まで減速させる。第1の回転数は、遠心力により液膜の厚みがばらつくのを抑制することができる回転数であればよく、例えば、0~50rpmの範囲とすればよい。基板100の回転数を第1の回転数とした後に、所定の量の液体101を基板100に供給して液膜を形成する。このとき、液体102は、液体101に置換される。なお、冷却ガス3a1の流量は維持されている。
【0070】
液膜の形成工程において形成される液膜の厚み(過冷却工程を行う際の液膜の厚み)は、200μm~1300μm程度とすることができる。例えば、制御部9は、液体101の供給量を制御して、基板100の表面100bの上にある液膜の厚みを200μm~1300μm程度にする。
【0071】
次に、図3および図4に示すように冷却工程(過冷却工程+凍結工程)が実行される。なお、本実施の形態では、冷却工程のうち、液体101からなる液膜が過冷却状態となってから凍結が始まる前までの間を「過冷却工程」、過冷却状態の液膜の凍結が開始し、凍結が完全に完了する前までの間を「凍結工程」と呼称する。
【0072】
まず、過冷却工程では、基板100の裏面100aに供給され続けている冷却ガス3a1により、基板100上の液膜の温度が、液膜の形成工程における液膜の温度よりもさらに下がり、過冷却状態となる。
【0073】
ここで、液体101の冷却速度が余り速くなると液体101が過冷却状態とならず、すぐに凍結してしまう。そのため、制御部9は、基板100の回転数、および冷却ガス3a1の流量の少なくともいずれかを制御することで、基板100の表面100bの液体101が過冷却状態となるようにする。
【0074】
液体101が過冷却状態となる制御条件は、基板100の大きさ、液体101の粘度、冷却ガス3a1の比熱などの影響を受ける。そのため、液体101が過冷却状態となる制御条件は、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することが好ましい。
【0075】
過冷却状態においては、例えば、液膜の温度、パーティクルなどの汚染物や気泡の存在、振動などにより、液膜の凍結が開始する。例えば、パーティクルなどの汚染物が存在する場合、液膜の温度Tが、-35℃以上、-20℃以下になると液膜の凍結が開始する。また、基板100の回転を変動させるなどして液膜に振動を加えることで、液膜の凍結を開始させることもできる。
【0076】
過冷却状態の液膜の凍結が開始すると、過冷却工程から凍結工程に移行する。凍結工程においては、基板100の表面100bの液膜の少なくとも一部を凍結させる。本実施の凍結洗浄工程では、液膜が完全に凍結し凍結膜101aとなる場合を説明する。
【0077】
次に、図3および図4に示すように解凍工程が実行される。
解凍工程においては、制御部9が、供給部5bおよび流量制御部5cを制御して、基板100の表面100bに、所定の流量の液体102を供給する。また、制御部9が、流量制御部3cを制御して、冷却ガス3a1の供給を停止させる。これにより凍結膜101aの解凍が始まり、凍結膜101aは徐々に液体101となってゆく。また、制御部9が、駆動部2cを制御して、基板100の回転数を第2の回転数よりも速い第3の回転数へと増加させる。基板100の回転が速くなれば、液体101、102を遠心力で振り切ることができる。そのため、液体101、102を基板100の表面100bから排出することが容易となる。この際、基板100の表面100bから分離された汚染物も液体101、102とともに排出される。
【0078】
なお、液体102の供給量は、解凍ができるのであれば特に限定はない。また、基板100の第3の回転数は、液体101、液体101が凍結したもの、液体102および汚染物が排出できるのであれば特に限定はない。
【0079】
次に、図3および図4に示すように乾燥工程が実行される。乾燥工程においては、制御部9が、供給部5bおよび流量制御部5cを制御して、液体102の供給を停止させる。また、制御部9が、駆動部2cを制御して、基板100の回転数をさらに増加させ、第3の回転数よりも速い第4の回転数に増加させる。基板100の回転が速くなれば、基板100の乾燥を迅速に行うことができる。なお、基板100の第4の回転数は、乾燥ができるのであれば特に限定はない。
凍結洗浄が終了した基板100は、筐体6の図示しない搬入搬出口を介して、筐体6の 外部に搬出される。
以上の様にすることで、1回の凍結洗浄工程を行うことができる。
【0080】
ところで、前述したように、回転させた基板100の表面100bに、導電率が低い液体(例えば、液体101)が供給されると静電気が発生しやすくなる。また、基板100の表面100bには、導電性を有するパターンや、導電性を有するパターンを絶縁する要素などが形成されている場合がある。そのため、発生した静電気により絶縁破壊などが生じる場合がある。また、静電気に起因する化学反応によりパターンにダメージが発生するおそれもある。パターンを設ける前の基板(例えば、バルク基板)の場合にも、静電気に起因する化学反応により、基板100の表面100bにダメージが発生するおそれがある。
【0081】
このような静電気に対して、基板の表面をスピン洗浄する際に、二酸化炭素を純水に溶解した導電率の高い洗浄液を用いる技術が知られている。二酸化炭素を純水に溶解した洗浄液を用いれば、回転させた基板の表面に洗浄液を供給したとしても静電気の発生を抑制することができる。
【0082】
そこで、本発明者は、炭酸水である液体102で前述の凍結洗浄工程の冷却工程を試みたところ、純水で凍結洗浄工程の冷却工程を行った場合と比べて除去率が低下することが判明した。
【0083】
導電性を有する液体である液体102で凍結洗浄工程を実施すると、なぜ純水で凍結洗浄工程を行った場合と比べて除去率が低下するのか、そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下の様に考えることができる。
【0084】
液体101の凍結は、パーティクルなどの汚染物を基点として生じると考えられる。汚染物を基点として液体101を凍結させれば、汚染物を凍結した液体101に取り込むことができる。そして、液体101は、凍結時に体積変化する。これにより、凍結の起点となった汚染物に基板100の表面から引き離す力が生じるので、汚染物を基板100の表面100bから分離することができる。
【0085】
また、液体101が固体に変化すると体積が変化するので圧力波が生じる。この圧力波により、基板100の表面100bに付着している汚染物が分離されると考えられる。
なお、過冷却状態の液体101は、液膜の温度不均一による密度変化、パーティクルなどの汚染物や気泡の存在、振動などが凍結開始の起点となる性質も有する。つまり、凍結開始の起点は、汚染物だけとは限らない。
【0086】
ところで、液体102の中には、液体102に溶解する際にイオン化するガスが溶存している。そのため、液体102の中にガスの気泡が含まれていたり、液体102の中に気泡が発生したりする場合がある。また、SC-1は、アンモニア水と過酸化水素水の混合液であるため、液体102の中にガスの気泡が含まれていたり、液体102の中に気泡が発生したりする場合がある。前述のように、気泡も凍結の起点となり得る。したがって、液体102の中に気泡があると、気泡を基点として液体102が凍結し、汚染物を基点とした凍結が行われにくくなっていると考えられる。
【0087】
本発明者は、過冷却状態を経て液体を凍結させる凍結洗浄(本実施の凍結洗浄工程)においては、凍結させる液体は、気泡が発生しにくい液体とすることが好ましいことを突き止めた。
【0088】
しかし、単に気泡が発生しにくい液体、例えば純水で凍結洗浄工程を実施したのでは、前述の静電気の問題が発生する恐れがある。そこで、本発明者は、低い導電率の液体による静電気の発生メカニズムについて鋭意検討した。その結果、静電気の発生は、低い導電率の液体の流動に起因し、流動させない状態であれば静電気の発生を抑制できることを見出した。
【0089】
本実施形態の凍結洗浄工程においては、液体を流動させる工程と、液体を流動させないあるいはほとんど流動しない工程がある。液体を流動させる工程では導電率の高い液体とすることで静電気の発生を抑制し、液体を流動させないあるいはほとんど流動しない工程においては、静電気が発生しにくいから、液体の導電率が低くても、パターン破損や基板ダメージ等にはつながらず、例えば導電率の低い純水であっても問題にならない。したがって、純水のような気泡を多く含まない液体を使用して液膜を形成したとしても、静電気の発生を抑制しつつ、汚染物の高い除去率を維持することができる。
【0090】
本実施の凍結洗浄工程において、予備工程においては、導電性を有する液体102を基板100の表面100bに供給し、液膜の形成工程においては、基板100の表面100bにある液体102を排出し、その後、基板100を第1の回転数で回転させながら液体101を供給して液膜を形成することとした。
【0091】
予備工程において、液体102を用いることで、基板100の表面100bに静電気が発生するのを抑制しつつ、基板100の面内温度を略均一とすることができる。
また、液体102の温度を液体101の凝固点よりも高い温度とすることで、液膜の形成工程において、液体101を供給して液膜を形成する際に、液体101が過冷却状態を経ることなく凍結してしまうことを防止することができる。
【0092】
また、液膜の形成工程において、基板100の表面100bに液体101を供給して液膜を形成することで、汚染物の除去率を維持することができる。液体101は、気泡が発生しにくい液体であるため、気泡を基点として凍結が生じるのを抑制することができる。 そのため、汚染物を基点とした凍結を生じさせるのが容易となるので、液体102を凍結させる場合と比べると、汚染物の除去率を向上させることができる。
【0093】
また、液膜の形成工程において、基板100の回転数を第1の回転数以下とすれば、液体101を基板100の表面100bに供給した際に、液体101と基板100の表面100bとの間の摩擦を抑制することができる。このため、静電気が発生するのを抑制することができる。また、回転による遠心力の影響も抑制できるので、供給された液体101が、基板100の表面100bで拡り、均一な厚みの液膜が形成され易くなる。さらに、基板100の回転を停止させれば、静電気の発生と、遠心力による液膜の厚みのばらつきをより抑制することができる。
【0094】
また、液膜の形成工程において、基板100の表面100bにある液体102を完全に排出させてもよいが、基板100の表面100bを覆う程度に液体102を残留させるようにしてもよい。基板100の表面100bに導電性を有する液体102が残留していれば、導電性を有する液体102の上に液体101を供給することができる。このようにすることで、液体101を基板100の表面100bに供給する際に、静電気が発生するのをより抑制することができる。
【0095】
また、液膜の形成工程において、冷却ガス3a1の供給は、維持されている。そのため、基板100の表面100bに導電性を有する液体102が残留していれば、基板100の表面に霜が発生するのを防ぐことができ、予備工程で基板100の面内温度を略均一とした状態を維持することもできる。
【0096】
ただし、液体102の残留量が余り多くなると、形成された液膜の中に気泡が発生するおそれがある。そのため、残留した液体102の膜の厚みは、液膜の形成工程において形成する液膜の厚みの10%以下とすることが好ましい。残留した液体102の膜の厚みが、形成された液膜の厚みの10%以下であれば、気泡が発生したとしても、汚染物の除去率に及ぼす影響を非常に小さくすることができる。
【0097】
また、汚染物の形状がフィルム状であるため、基板100の表面100bに汚染物が吸着している場合、基板100の表面100bまたは汚染物が超撥水性である場合、あるいは、基板100の表面100bおよび汚染物が超撥水性である場合においては、液膜の形成工程において、基板100と汚染物との間に液体101が侵入できず、基板100の表面100bから汚染物を引き離すことができないおそれがある。
【0098】
このような場合、予備工程において、表面張力の小さい液体103を含む液体102を用いれば、基板100と汚染物との間に、液体103を含む液体102を侵入させることができる。基板100と汚染物との間に液体103を含む液体102があれば、液膜の形成工程において、基板100の表面100bに液体101を供給した際に、基板100と汚染物との間に液体101が侵入できるようになる。したがって、基板100の表面100bに汚染物が吸着している場合、基板100の表面100bまたは汚染物が超撥水性である場合、あるいは、基板100の表面100bおよび汚染物が超撥水性である場合であっても、基板100の表面100bから汚染物を引き離すことができる。つまり、前述の場合であっても、基板100の表面100bに静電気が発生するのを抑制しつつ、汚染物の除去率を向上させることができる。
【0099】
また、解凍工程において、基板100の表面100bに液体102を供給するようにしている。前述したように、液体102は導電性を有しているので、回転数を増加させた基板100に、液体102を供給しても静電気が発生するのを抑制することができる。
【0100】
なお、凍結洗浄工程は複数回行われる場合がある。
図5は、凍結洗浄工程を複数回実施する場合のフローチャートである。
図5に示すように、次の凍結洗浄工程が実施されるのであれば、解凍工程を実施した後、液膜の形成工程に戻るようにすればよい。
【0101】
この場合における制御部9の動作について、図6を用いて説明する。
図6は、凍結洗浄工程を複数回実施する場合の、制御部9の動作を説明したフローチャートである。
なお、凍結洗浄工程の繰り返し数は、予め、操作者により記憶部9cに記憶されている。
【0102】
図6に示すように、まず、予備工程を実施後に液膜の形成工程(S001~S004)を実施する。
次に、制御部9は、冷却工程を実施する。冷却工程において、不図示の検出部からの検出データを取得し、液膜が凍結したか判断する(S005)。検出データは、液膜の温度でもよいし、液膜の厚みや液膜の白濁状態を検知してもよい。なお、所定時間経過しても、液膜が凍結していないと判断した場合、警告を出力し装置を停止させる。
【0103】
制御部9は、液膜が凍結したと判断したら、予め決められた凍結洗浄工程の繰り返し数に達したかを判断する(S006)。次の凍結洗浄工程が実施されるのであれば、解凍工程においても冷却ガス3a1の供給を維持しながら第2液体供給部5を制御して、基板100の表面100bに液体102を供給させる(S006a)。こうすることで、予備工程と同じ状態を発生させることができる。このため、図5に示すように、次の凍結洗浄工程における予備工程および乾燥工程を省くことができる。
【0104】
このため、複数回繰り返して凍結洗浄工程を行う場合、凍結洗浄工程は、基板100の表面101bに所定の厚みを有する液膜を形成する液膜の形成工程と、基板100の表面101bの上にある液膜を過冷却状態にする過冷却工程と、液膜の少なくとも一部を凍結させる凍結工程と、基板100の表面100bの凍結膜101aに導電性の液体102を供給して凍結した液膜の解凍を行う解凍工程と、を少なくとも含んでいればよい。
【0105】
このようにすることで、予備工程を兼ねた解凍工程において、導電性の液体102を用いることで、繰り返し凍結洗浄工程を実施したとしても、静電気の発生を抑制することができる。また、気泡を含まない液体101を過冷却状態から凍結させているので、汚染物の除去率を維持することができる。結果的に、凍結洗浄工程の繰り返し数を少なくすることができるので、基板処理装置1の稼働率を向上させることができる。
【0106】
図7は、他の実施形態に係る基板処理装置1aを例示するための模式図である。
図7に示すように、基板処理装置1aは、第3液体供給部15をさらに有する。第3液体供給部15は、基板100の表面100bに表面張力の小さい液体103を供給する。液体103は、例えば、界面活性剤を含む液体、およびイソプロピルアルコール(IPA)などである。
【0107】
前述した基板処理装置1の場合には、第2液体供給部5により、表面張力の小さい液体103を含む液体102(混合液)を基板100の表面100bに供給した。これに対し、基板処理装置1aの場合には、第2液体供給部5により、液体102を基板100の表面100bに供給し、第3液体供給部15により、液体103を基板100の表面100bに供給して、基板100の表面100bにおいて、液体103を含む液体102(混合液)を生成する。
【0108】
第3液体供給部15は、液体収納部15a、供給部15b、流量制御部15c、および液体ノズル15dを有する。
第3液体供給部15の構成は、例えば、第2液体供給部5の構成と同様とすることができるので、説明は省略する。
【0109】
図8は、他の実施形態に係る基板処理装置1aの作用を例示するためのタイミングチャートである。
基板処理装置1aは、予備工程において、異なる2種類の液体102、103を用いる。例えば、予備工程の開始時において、制御部9は、供給部5bおよび流量制御部5cを制御して、基板100の表面100bに液体ノズル4dから、例えば、炭酸水(液体102)を供給する。冷却ガス3a1の制御および基板の回転数の制御は、基板処理装置1と同様である。この場合、液体ノズル15dは、不図示の駆動部により基板100の外周付近に移動させる。
【0110】
炭酸水を所定の時間供給後、制御部9は、供給部5bおよび流量制御部5cを制御して炭酸水の供給を停止させ、供給部15bおよび流量制御部15cを制御して、液体ノズル15dから炭酸水よりも表面張力の小さい液体103を供給する。この場合、制御部9は、不図示の駆動部を制御して、液体ノズル4dを基板100の外周付近に移動させ、液体ノズル15を基板100の表面100bの略中央と対向する位置に移動させる。
【0111】
液体ノズル15dから基板100の表面100bに供給された液体103は、基板100の表面100bにある液体102との混合液となる。例えば、炭酸ガスやアンモニアガスが溶存している液体、SC-1(Standard Clean 1)、コリン(CHOLINE)、TMAH(Tetramethyl ammonium hydroxide)水溶液の少なくともいずれかと、界面活性剤の混合液、およびイソプロピルアルコール(IPA)の少なくともいずれかと、の混合液となる。
【0112】
前述したように、予備工程において、液体103を含む液体102を用いれば、基板100の表面100bに汚染物が吸着している場合、基板100の表面100bまたは汚染物が超撥水性である場合、あるいは、基板100の表面100bおよび汚染物が超撥水性である場合であっても、凍結させる液体101が基板100と汚染物との間に侵入するのが容易となる。
【0113】
液体103を含む液体102は、液体103の混合割合が大きくなると、導電率が低下する。そこで、予備工程において、炭酸水(液体102)を供給した後、表面張力の小さい液体103を供給することで、表面張力の小さい液体103の供給時間を短くすることができる。この場合、基板100の表面100bに炭酸水を供給する時間は、液体103を供給する時間よりも長くすることが好ましい。例えば、炭酸水を供給する時間を300秒~1500秒とし、液体103を供給する時間を30秒~180秒とする。このようにすることで、前述の実施形態の作用効果に加えて、基板100の表面100bに静電気が発生するのをより抑制することができる。
【0114】
予備工程後、制御部9は、不図示の駆動部を制御し、液体ノズル15dを基板100の外周付近に移動させ、液体ノズル4dを基板100の表面100bの略中央と対向する位置に移動させる。そして、液膜の形成工程が実行される。
液膜の形成工程は、基板処理装置1と同様である。なお、液体ノズル4d内および配管内には、予備工程において用いた炭酸水が残留している。そのため、液体103が液体ノズル15dから基板100の表面100bに供給されている間に、液体ノズル4d内および配管内に残留した炭酸水を排出し、液体101に置換しておくことが好ましい。
【0115】
解凍工程においては、制御部9が、供給部5bおよび流量制御部5cを制御して、基板100の表面100bに、所定の流量の炭酸水(液体102)を供給する。冷却ガスの制御および基板の回転数の制御は、基板処理装置1と同様である。また、乾燥工程も基板処理装置1と同様である。
【0116】
なお、第2液体供給部5から、導電性の液体であって、基板100と反応しない液体102aを基板100の表面100bに供給し、第3液体供給部15から、導電性の液体であって、表面張力の小さい液体102bを基板100の表面100bに供給するようにしてもよい。
【0117】
液体102aは、例えば、炭酸水あるいは、炭酸水と液体103との混合液である。
液体102bは、例えば、濃度の低いSC-1(Standard Clean 1)、コリン(CHOLINE)水溶液、TMAH(Tetramethyl ammonium hydroxide)水溶液、あるいは、これらの溶液と液体103の混合液である。
【0118】
液体102bは、導電性の液体であって、表面張力も小さい液体である。そのため、液体102bを使用することで、基板100の表面100bに静電気が発生するの抑制し、かつ、基板100と汚染物との間に液体101が侵入し易くする効果が得られる。しかし、液体102bは、基板100の表面100bをエッチングしてしまうおそれがある。
【0119】
そこで、予備工程において、炭酸水(液体102a)を供給した後、液体102bを供給することで、基板100の表面100bをエッチングしてしまうおそれのある液体102bの供給時間を短くすることができる。この場合、基板100の表面100bに炭酸水を供給する時間は、液体102bを供給する時間よりも長くすることが好ましい。例えば、炭酸水を供給する時間を300秒~1500秒とし、液体102bを供給する時間を30秒~180秒とする。
【0120】
このようにすることで、前述の実施形態の作用効果に加えて以下の作用効果を享受することができる。すなわち、基板100の表面100bに汚染物が吸着している場合、基板100の表面100bまたは汚染物が超撥水性である場合、あるいは、基板100の表面100bおよび汚染物が超撥水性である場合あっても、基板100の表面100bがエッチングされることを抑制しつつ、汚染物の除去率をさらに向上させることができる。
【0121】
この場合、液膜の形成工程、解凍工程、および乾燥工程は、基板処理装置1と同様である。なお、解凍工程において、液体102aを用いてもよいし、液体102bを用いてもよい。
【0122】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述した実施形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0123】
例えば、基板処理装置1が備える各要素の形状、寸法、数、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
例えば、予備工程において、基板は、常に第2の回転数で回転させる必要はなく、第1の回転数以下としてもよい。この場合、液膜の形成工程に移る直前に、回転数を第2の回転数として、液体102の少なくとも一部を排出するようにすればよい。
また、解凍工程において、解凍の開始は、必ずしも凍結膜101aに対して行う必要はなく、例えば、液体101が過冷却状態から一部が凍結した状態(固液相の状態)で解凍を開始するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 基板処理装置、1a 基板処理装置、2 載置部、3 冷却部、3a1 冷却ガス、4 第1液体供給部、5 第2液体供給部、6 筐体、8 検出部、9 制御部、10 ガス供給部、10d ガス、100 基板、100a 裏面、100b 表面、101 液体、101a 凍結膜、102 液体、103 液体
図1
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