(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025246
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】植物の栽培方法及び植物の栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20230214BHJP
A01G 27/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
A01G31/00 601A
A01G27/00 504B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197791
(22)【出願日】2022-12-12
(62)【分割の表示】P 2020567295の分割
【原出願日】2019-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】518195173
【氏名又は名称】原 正憲
(71)【出願人】
【識別番号】518194497
【氏名又は名称】白川 正月
(71)【出願人】
【識別番号】518194501
【氏名又は名称】日洋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】原 正憲
(72)【発明者】
【氏名】白川 正月
(57)【要約】
【課題】植物の栽培にかかる費用を低減する。
【解決手段】植物の栽培方法は、植物の栽培装置1を構成する容器(ガター2)の内側に培地3を敷き詰め、前記培地3に植物(トマト10)を根付かせ、液肥4をサンゴ砂礫13に浸し、前記サンゴ砂礫13に浸した後の液肥4を前記培地3に給液するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内側に培地を敷き詰め、前記培地に植物を根付かせ、液肥を雑菌が繁殖しづらい特性の物質に浸し、前記物質に浸した後の前記液肥を前記培地に給液する植物の栽培方法。
【請求項2】
容器の内側に培地を敷き詰め、前記培地に植物を根付かせ、液肥をサンゴ砂礫に浸し、前記サンゴ砂礫に浸した後の前記液肥を前記培地に給液する植物の栽培方法。
【請求項3】
水平に置かれた帯状のガターに培地を敷き詰め、前記培地に植物を一定間隔で根付かせ、前記培地の上部に潅水チューブを配置し、サンゴ砂礫に浸して養液循環槽に蓄えられた液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液し、当該給液により余剰となった液肥を、前記ガターに内貼りされた濾過布を通して前記ガターに形成された排液溝に流し、当該排液溝に流れる液肥を前記ガターから前記養液循環槽に返送する植物の栽培方法。
【請求項4】
前記培地に設置した水分計が示す水分量の低下、もしくはタイマによる指示で、前記養液循環槽に返送された液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液することで再利用する
請求項3に記載の植物の栽培方法。
【請求項5】
水平に置かれた帯状のガターに培地を敷き詰め、前記培地に植物を一定間隔で根付かせ、前記培地の上部に潅水チューブを配置し、サンゴ砂礫に浸して養液循環槽に蓄えられた液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液し、当該給液により余剰となった液肥を、前記ガターに内貼りされた濾過布を通して前記ガターに形成された排液溝に流し、当該排液溝に流れる液肥を前記ガターの端部から前記養液循環槽に返送する植物の栽培装置であって、
前記養液循環槽と、サンゴ砂礫槽と、液肥調整槽と、第1の原料液を蓄える第1の原料液槽と、第2の原料液を蓄える第2の原料液槽と、液肥混合ポンプと、液肥移送ポンプと、潅水ポンプと、前記養液循環槽内の液肥のレベルを検出するレベルセンサとで構成された養液装置を備え、
前記サンゴ砂礫槽は、前記サンゴ砂礫が詰め込まれた状態で、前記養液循環槽と共に液肥を循環させることで、前記液肥を前記サンゴ砂礫に浸し、
前記養液装置は、前記養液循環槽内の液肥が一定量消費されたら、前記レベルセンサの指示により、前記液肥調整槽から前記液肥移送ポンプにて、前記サンゴ砂礫槽に肥液を適正量供給し、前記液肥調整槽の水位が低下したら、前記液肥調整槽に水を所定位置まで供給し、前記液肥調整槽の液肥を適正EC濃度にするため、前記液肥混合ポンプを用いて前記第1の原料液と前記第2の原料液を混合して、前記液肥調整槽に蓄えられた液肥が適正EC濃度になるまで供給する養液制御を行う植物の栽培装置。
【請求項6】
前記潅水チューブに流れる液肥の流量を検出する流量センサを更に備え、前記養液装置に設置された制御装置にて、前記養液制御を行い、前記養液循環槽から前記培地に給液される液肥の供給量を前記流量センサの検出結果に基づいて表示する
請求項5に記載の植物の栽培装置。
【請求項7】
適正EC濃度の液肥に加えてアルカリ性を有する溶液を給液する、
又は、
アルカリ性になった適正EC濃度の液肥を給液する
植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト等の植物の栽培する植物の栽培方法及び植物の栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トマトの栽培方法には、温床に苗を仕立ててこれを露地に植え付ける土耕から、植物工場的な生産が可能な水耕まであり、例えば水耕として養液栽培方法が提案されている。
【0003】
この養液栽培方法として、特許文献1には、水平断面形状が略D字形に形成される溝を長手方向に2列に配列してなる栽培用トレイの前記各溝に、250ml前後の培地(土、ヤシガラ、ロックウール他)を入れ、トマトの苗を植付けた各培地に潅水養液を供給する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の技術において、従来の培地(土、ヤシガラ、ロックウール他)は、比較的保水性がよいため、潅水養液を植物が必要な潅水量より10~20%多めに潅水して、余剰液は雑菌が繁殖しやすいので廃液として処分するのが一般的であった。また弱酸性土壌の方が植物の生育にはよいとされているため潅水養液は弱酸性のPH調整を行っていた
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、潅水養液の余剰液は雑菌が繁殖しやすいので廃液として処分することになり、植物の栽培にかかる費用を低減することが困難であった。
【0007】
本発明は、植物の栽培にかかる費用を低減することができる植物の栽培方法及び植物の栽培装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点における植物の栽培方法は、容器の内側に培地を敷き詰め、前記培地に植物を根付かせ、液肥を雑菌が繁殖しづらい特性の物質に浸し、前記物質に浸した後の前記液肥を前記培地に給液するものである。
好適には、請求項1に記載の植物の栽培方法は、植物としてトマトを用いる。
【0009】
請求項2に記載の発明の植物の栽培方法は、容器の内側に培地を敷き詰め、前記培地に植物を根付かせ、液肥を雑菌が繁殖しづらい特性の物質に浸し、前記物質に浸した後の前記液肥を前記培地に給液するものである。
【0010】
請求項3に記載の発明の植物の栽培方法は、水平に置かれた帯状のガターに培地を敷き詰め、前記培地に植物を一定間隔で根付かせ、前記培地の上部に潅水チューブを配置し、サンゴ砂礫に浸して養液循環槽に蓄えられた液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液し、当該給液により余剰となった液肥を、前記ガターに内貼りされた濾過布を通して前記ガターに形成された排液溝に流し、当該排液溝に流れる液肥を前記ガターから前記養液循環槽に返送するものである。
【0011】
請求項4に記載の発明の植物の栽培方法は、請求項3に記載の植物の栽培方法において
、前記培地に設置した水分計が示す水分量の低下、もしくはタイマによる指示で、前記養液循環槽に返送された液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液することで再利用するものである。
【0012】
請求項5に記載の発明の植物の栽培装置は、水平に置かれた帯状のガターに培地を敷き詰め、前記培地に植物を一定間隔で根付かせ、前記培地の上部に潅水チューブを配置し、サンゴ砂礫に浸して養液循環槽に蓄えられた液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液し、当該給液により余剰となった液肥を、前記ガターに内貼りされた濾過布を通して前記ガターに形成された排液溝に流し、当該排液溝に流れる液肥を前記ガターの端部から前記養液循環槽に返送する植物の栽培装置であって、前記養液循環槽と、サンゴ砂礫槽と、液肥調整槽と、第1の原料液を蓄える第1の原料液槽と、第2の原料液を蓄える第2の原料液槽と、液肥混合ポンプと、液肥移送ポンプと、潅水ポンプと、前記養液循環槽内の液肥のレベルを検出するレベルセンサとで構成された養液装置を備え、前記サンゴ砂礫槽は、前記サンゴ砂礫が詰め込まれた状態で、前記養液循環槽と共に液肥を循環させることで、前記液肥を前記サンゴ砂礫に浸し、前記養液装置は、前記養液循環槽内の液肥が一定量消費されたら、前記レベルセンサの指示により、前記液肥調整槽から前記液肥移送ポンプにて、前記サンゴ砂礫槽に肥液を適正量供給し、前記液肥調整槽の水位が低下したら、前記液肥調整槽に水を所定位置まで供給し、前記液肥調整槽の液肥を適正EC濃度にするため、前記液肥混合ポンプを用いて前記第1の原料液と前記第2の原料液を混合して、前記液肥調整槽に蓄えられた液肥が適正EC濃度になるまで供給する養液制御を行うものである。
【0013】
請求項6に記載の発明の植物の栽培装置は、請求項5に記載の植物の栽培装置において、前記潅水チューブに流れる液肥の流量を検出する流量センサを更に備え、前記養液装置に設置された制御装置にて、前記養液制御を行い、前記養液循環槽から前記培地に給液される液肥の供給量を前記流量センサの検出結果に基づいて表示するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明における植物の栽培方法及び植物の栽培装置によって植物の栽培にかかる費用を低減することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る植物の栽培方法の概要を示す説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る植物の栽培方法に用いられるガター及び濾過布を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置を用いた施設全体を示す説明図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置のブロック図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置の栽培ベッド及び設置台を示す第1の断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置の栽培ベッド及び設置台を示す第2の断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係る植物の栽培装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
以下、
図1及び
図2を用いて本発明の第1の実施形態について説明する。
【0017】
<第1の実施形態の構成>
図1及び
図2は本発明の第2の実施形態に係り、
図1は、植物の栽培方法の概要を示す
説明図、
図2は、ガター及び濾過布を示す斜視図である。
【0018】
図1において、本発明の第1の実施形態に係る植物の栽培方法は、植物の栽培装置1を構成する容器(ガター2)の内側に培地3を敷き詰め、前記培地3に植物(トマト10)を根付かせ、液肥4をサンゴ砂礫13に浸し、前記サンゴ砂礫13に浸した後の液肥4を前記培地3に給液するものである。
【0019】
さらに詳しく説明すると、
図1に示す植物の栽培方法は、水平に置かれた帯状のガター2にロックウール等で形成された培地3を敷き詰め、培地3にトマト10を一定間隔で根付かせ、培地3の上部に潅水チューブ5を配置し、サンゴ砂礫13に浸して養液循環槽6に蓄えられた液肥4を、潅水チューブ5を介して培地3に給液し、当該給液により余剰となった液肥4を、ガター2に内貼りされた濾過布7を通して前記ガター2に形成された排液溝8に流し、当該排液溝8に流れる液肥4を前記ガター2の端部から排液パイプ9を介して排液する。
【0020】
以下、植物の栽培装置1について詳細に説明する。
植物の栽培装置1は、ガター2、培地3、液肥4、潅水チューブ5、養液循環槽6、濾過布7、排液パイプ9、液肥調整槽11、サンゴ砂礫槽12、サンゴ砂礫13、液路14、前記液肥移送ポンプ15、16、潅水ポンプ17、タイマ18、19、20、及びパイプ21、22を備えている。
【0021】
液肥調整槽11は、A液槽からのA液(第1の原料液)と、B液槽(第2の原料液槽)からのB液とが注入され、混合された液肥4aを蓄えるようになっている。
【0022】
サンゴ砂礫槽12の槽内には、サンゴ砂礫13が底から八割程度の高さまで詰め込まれている。
【0023】
液肥移送ポンプ15は、タイマ18による指示で、液肥調整槽11に蓄えられた液肥4aを、パイプ21を介してサンゴ砂礫槽12に移送する。
【0024】
養液循環槽6は、液路14を介してサンゴ砂礫槽12と液体の流通が可能になっており、サンゴ砂礫槽12からの溶液4bが流入するようになっている。また、液路14にはフィルタが設けられているので、サンゴ砂礫槽12のサンゴ砂礫13が養液循環槽6に移動することはない。
【0025】
液肥移送ポンプ16は、タイマ19による指示で、養液循環槽6に蓄えられた液肥4を、パイプ22を介してサンゴ砂礫槽12に循環させる。
【0026】
潅水ポンプ17は、タイマ20による指示で、養液循環槽6に蓄えられた液肥4(液路14から養液循環槽6に返送された液肥4bを含む)を、前記潅水チューブ5を介して前記培地3に給液する。
【0027】
また、前記培地3及び潅水チューブ5の上側は、トマト10の茎を通過する孔が形成された遮光シート(
図5の遮光シート76)によって覆われている。
【0028】
以下、
図2を用いて、ガター2と濾過布7を詳細に説明する。
図2において、ガター2は、発泡スチロールを金型によって上面が開放した帯状の容器の形状に形成したものである。
【0029】
ガター2に内貼りされた濾過布7は、下から順に、水耕用黒ポリプラスチックシート2
3、不織布24、プラスチックネット25及び不織布26を重ね合わせたものである。水耕用黒ポリプラスチックシート23、不織布24及び不織布26は、ガター2の上側全体を覆うように形成されている。プラスチックネット25は、ガター2の内側底面と同じサイズに形成されている。
【0030】
本発明に係る第1の実施形態を纏めて説明すると、植物の栽培方法は、容器(ガター2)の内側に培地3を敷き詰め、前記培地に植物(トマト10)を根付かせ、液肥を雑菌が繁殖しづらい特性の物質(サンゴ砂礫13)に浸し、前記物質に浸した後の前記液肥4を前記培地3に給液する。
【0031】
<第1の実施形態の作用及び効果>
ここで、従来の培地として一般的に用いられるロックウールと液肥の組み合わせでは、毎年培地の交換が必要になり、産業廃棄物として費用を要します。
【0032】
近年の培地として普及してきたヤシガラ培地と液肥の組み合わせでは、ヤシガラ培地が有機質で雑菌が繁殖により経年変化を生じるため、1~2年で培地の交換が必要になります。
【0033】
従来の高糖度トマト栽培では、液肥(水)を極力少なくして、果実が吸収する水分を少なくして糖度を上げるため、果実の生産量が少なくなります。
【0034】
本発明の第1の実施形態で用いられるサンゴ砂礫13では、経年変化しないアルカリ性で雑菌が繁殖しづらい特性を有しているので、交換の必要がありません。
【0035】
また、サンゴ砂礫13に浸した後の液肥4では、雑菌が繁殖しづらい特性により、高糖度トマト栽培において、培地の使用年限を延長することができます。また、サンゴ砂礫13に浸した後の液肥4では、極端な潅水制限を行う必要がないため、生産性を向上することができます。
【0036】
また、第1の実施形態に係る植物の栽培方法では、液肥4は循環させていないので、雑菌の繁殖は抑えることが可能である。
もっとも、循環させることを排除する趣旨でなく、循環させることも可能である。
そのばあいであっても、雑菌が繁殖しづらい特性により、排液用の殺菌を行う設備を必要としません。
【0037】
また、本発明の第1の実施形態で用いられるサンゴ砂礫13に浸した後の液肥4では、カルシウムやマグネシウム等の多種類(70種類)の必須ミネラルを豊富に含有しているため、生育時に微量要素としてトマトに吸収されて、非常に糖度が高いトマト(糖度8~12度)が生産されるため、市場でニーズの高い高糖度トマトを高能率で生産できます。
【0038】
また、培地としてロックウール等の従来のものを使用しながら、上述の効果が得られます。
【0039】
また、使用するサンゴ砂礫13もサンゴ砂礫槽12に詰め込む分だけでよいので、サンゴ砂礫の使用によるコストの増大を十分抑制できます。
【0040】
従って、本発明の第1の実施形態に係る植物の栽培方法によれば、植物(トマト)の栽培にかかる費用を低減することが可能になります。
【0041】
[第2の実施形態]
以下、
図3乃至
図6を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。
【0042】
<第2の実施形態の構成>
図3乃至
図6は本発明の第2の実施形態に係り、
図3は植物の栽培装置を用いた施設全体を示す説明図、
図4は植物の栽培装置のブロック図、
図5は植物の栽培装置のタガー及び周辺部を示す第1の断面図、
図6は植物の栽培装置のタガー及び周辺部を示す第2の断面図である。
【0043】
図3において、トマトの栽培施設(プラント)30では、三列に並べられた第1乃至第3の栽培棟31、32、33を有している。
【0044】
第1の栽培棟31は、一つの植物の栽培装置34から構成されている。植物の栽培装置34は、一つの養液装置41と、
図1に示した複数のガター2、潅水チューブ5、濾過布7及び排液パイプ9と、複数種類の培地3a、3b、3c、3d(
図4参照)から構成されている。
なお、この例では、多様性のある例を記載しているが、複数種類ではなく、1種類の培地を複数用いることが普通である。
【0045】
図3において、第2の栽培棟32は、一つの植物の栽培装置35と、集出荷室36とから構成されている。植物の栽培装置35は、一つの養液装置41と、
図1に示した複数のガター2、潅水チューブ5、濾過布7及び排液パイプ9と、複数種類の培地3a、3b、3c、3d(
図4参照)から構成されている。
【0046】
図3において、第3の栽培棟33は、一つの植物の栽培装置37から構成されている。植物の栽培装置37は、
図1に示した複数のガター2、潅水チューブ5、濾過布7及び排液パイプ9と、複数種類の培地3a、3b、3c、3d(
図4参照)から構成されている。
【0047】
図3において、植物の栽培装置34、35、37は、水平に置かれた帯状のガター2に培地(
図4に示す培地3aまたは培地3bまたは培地3cまたは培地3d)を敷き詰め、前記培地に植物を一定間隔で根付かせ、前記培地の上部に潅水チューブ5(
図4参照)を配置し、養液循環槽51(
図4参照)に蓄えられた液肥4(
図4参照)を、前記潅水チューブ5を介して前記培地に給液し、当該給液により余剰となった液肥4を、前記ガター2に内貼りされた濾過布7(
図5参照)を通して前記ガター2に形成された排液溝8(
図5参照)に流し、当該排液溝8に流れる液肥4を前記ガター2の端部から排液パイプを介して排液する。
【0048】
以下、植物の栽培装置34について詳細に説明する。
図4において、植物の栽培装置34の栽培ベッド42、43、44、45は、
図1に示したガター2及び濾過布7を組み合わせたものである。
【0049】
栽培ベッド42には、栽培する植物(トマト10a)の品種に合わせて、ロックウールによる培地3aが敷き詰められている。栽培ベッド43には、栽培する植物(トマト10b)の品種に合わせて、ヤシガラによる培地3bが敷き詰められている。栽培ベッド44には、栽培する植物(トマト10c)の品種に合わせて、無機物の砂、礫による培地3cが敷き詰められている。栽培ベッド45には、栽培する植物(トマト10d)の品種に合わせて、ロックウール、ヤシガラ等の混合による培地3dが敷き詰められている。
【0050】
図4において、養液装置41は、養液循環槽51と、A液(第1の原料液)を蓄えるA液槽(第1の原料液槽)52と、B液(第2の原料液)を蓄えるB液槽(第2の原料液槽
)53と、液肥調整槽54と、サンゴ砂礫槽55と、液肥混合ポンプ56と、液肥移送ポンプ57、58と、潅水ポンプ59と、制御バルブ60と、液肥調整槽54内の液肥4のレベルを検出するレベルセンサ61と、ECセンサ(肥料濃度センサ)62と、養液循環槽51内の液肥4のレベルを検出するレベルセンサ63と、前記潅水チューブ5に流れる液肥4の流量を検出する流量センサ64、65、66、67と、前記流量センサ64、65、66、67の検出結果をそれぞれ表示する表示装置68、69、70、71と、制御盤100とで構成されている。
【0051】
ここで、第2の実施形態が第1の実施形態と異なるのは、
図4に示すように、液肥調整槽54にECセンサ62を設けて、液肥調整槽54の液肥4aを適正EC濃度にするように液肥混合ポンプ56の制御を行い、液肥調整槽54内の液肥4aのレベルを検出するレベルセンサ61を設け、液肥移送ポンプ57の制御を行うとともに、養液循環槽51内の液肥4のレベルを検出するレベルセンサ63を設け、潅水ポンプ59の制御を行うようにしたことである。
【0052】
サンゴ砂礫槽55の槽内には、サンゴ砂礫13が底から九割程度の高さまで詰め込まれている。
【0053】
養液循環槽51は、液路64を介してサンゴ砂礫槽55と液体の流通が可能になっており、サンゴ砂礫槽55からの溶液4bが流入するようになっている。また、液路64にはフィルタが設けられているので、サンゴ砂礫槽55のサンゴ砂礫13が養液循環槽51に移動することはない。
【0054】
養液装置41は、前記養液循環槽51内の液肥4が一定量消費されたら、前記レベルセンサ63の指示と制御盤100の制御により、前記液肥調整槽54から前記液肥移送ポンプ57にて、サンゴ砂礫槽55に肥液4aを適正量供給する。サンゴ砂礫槽55に供給された肥液4aは、サンゴ砂礫13に浸され、肥液4bとして液路64を介して養液循環槽51に流入する。これにより、前記養液循環槽51内の液肥4が適切な量に保たれる。
【0055】
また、前記養液装置41の制御盤100は、前記液肥調整槽54の水位が低下したら、前記レベルセンサ61の指示と制御盤100による制御バルブ60の制御により、前記液肥調整槽54に清水を所定位置まで供給し、前記液肥調整槽54の液肥4を適正EC濃度にするため、前記ECセンサ62の指示と制御盤100の制御により、前記液肥混合ポンプ56を用いて前記A液(第1の原料液)と前記B液(第2の原料液)を混合して、前記液肥調整槽54に蓄えられた液肥4aが適正EC濃度になるまで供給する。
【0056】
液肥移送ポンプ58は、制御盤100による指示で、養液循環槽51に蓄えられた液肥4を、所定時間毎にパイプを介してサンゴ砂礫槽55に循環させる。
【0057】
潅水ポンプ59は、制御盤100による指示で、養液循環槽51の液肥4を、潅水チューブ5を介して栽培ベッド42、43、44、45の前記培地3a、3b、3c、3dに給液する。
【0058】
植物の栽培装置34は、前記養液装置41に設置された制御装置(制御盤100)にて、前記養液制御を行い、前記養液循環槽51から前記培地3a、3b、3c、3dに給液される液肥4の供給量をそれぞれ前記流量センサ64、65、66、67の検出結果に基づいて、それぞれ表示装置68、69、70、71に表示する。
【0059】
図5に示すように、植物の栽培装置34の栽培ベッド42は、設置台80に載置されている。
設置台80は、板状の天板81と、天板81を支える複数の脚部82、83から構成されている。
【0060】
脚部82、83は伸縮可能になっている。
図5に示す脚部82、83を最も短くした状態(下限ベット高)では、天板81、複数の脚部82、83及び地面84で囲まれる領域Sの高さ及び横幅が温風ダクト90の直径より少し長い状態になり、天板81及び栽培ベッド42が最も低い状態になる。
【0061】
図6に示すように、脚部82、83を最も長くした状態(上限ベット高)では、天板81、脚部82、83及び地面で囲まれる領域Sの横幅が温風ダクト90の直径より少し長い状態を保ち、領域Sの高さが温風ダクト90の直径の約1.5倍となり、領域Sの横幅が温風ダクト90の直径より少し長い状態を保ち、天板81及び栽培ベッド42が最も高い状態になる。
【0062】
このような領域Sの調整を行うことで、栽培ベッド42の温度の最適化を図ることができる。
【0063】
ここで、
図4に示す栽培ベッド43、44、45は、前記培地の種類が異なるだけで、栽培ベッド42と同じ構造になっている。
【0064】
第2の栽培棟32の栽培装置35は、全体のサイズが第1の栽培棟31の栽培装置34と異なるだけで、残り構成は栽培装置34と同様になっている。
第3の栽培棟33の栽培装置37は、栽培棟31の栽培装置34と同様になっている。
【0065】
<第2の実施形態の作用及び効果>
本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置34、35、37によれば、サンゴ砂礫13に浸した後の液肥4を前記培地3a、3b、3c、3dに給液することで、第1の実施形態と同様の効果が得られ、植物(トマト)の栽培にかかる費用を低減することが可能になります。
【0066】
[第3の実施形態]
以下、
図7を用いて本発明の第3の実施形態について説明する。
【0067】
<第3の実施形態の構成>
図7は本発明の第3の実施形態に係る植物の栽培装置のブロック図である。
【0068】
第3の実施形態の植物の栽培装置134は、水平に置かれた帯状のガター46の排液溝8(
図1参照)に流れる液肥4を前記ガター46の端部から溶液装置141の養液循環槽51に返送する。栽培装置134の培地3cには、無機物の砂、礫のみを用いている。
【0069】
また、栽培装置134は、前記培地3cに設置した水分計72が示す水分量の低下、もしくはタイマによる指示で、前記養液循環槽51に返送された液肥4を、潅水チューブ5を介して培地3cに給液することで再利用する。これら以外の構成は、第2の実施形態と同様になっている。
【0070】
このような構成を纏めて説明すると、第3の実施形態の植物の栽培方法は、水平に置かれた帯状のガター46に培地3cを敷き詰め、前記培地3cに植物を一定間隔で根付かせ、前記培地3cの上部に潅水チューブ5を配置し、前記サンゴ砂礫13に浸して養液循環槽51に蓄えられた液肥を、潅水チューブ5を介して前記培地3cに給液し、当該給液により余剰となった液肥を、前記ガター46に内貼りされた濾過布7(
図2参照)を通して
前記ガター46に形成された排液溝8(
図2参照)に流し、当該排液溝8に流れる液肥4を前記ガター46の端部から前記養液循環槽51に返送する。
【0071】
<第3の実施形態の作用及び効果>
本発明の第3の実施形態に係る植物の栽培装置134によれば、第2の実施形態と同様の効果が得られるとともに、ガター46の排液溝8に流れる液肥4を養液循環槽51に返送することで、液肥4のリサイクルが可能になり、清水、A液、B液の使用量を抑制することが可能になり、植物の栽培コストを低減することが可能になる。
【0072】
本発明の、構造、システム、プログラム、材料、各部材の連結、科学物質、などは、本発明の要旨を変更しない範囲で、様々に変更可能である。
【0073】
材質も、金属、プラスチック、FRP、木材、コンクリート等を自由に選択することが可能である。
【0074】
例えば、2つ以上の部材を1つにすることも可能であるし、逆に、1つの部材を2つ以上の別の部材から構成して接続することも可能である。
【0075】
また、上記第1乃至第3の実施形態は、あくまでも、現在のところの最良またはそれに近い形態の3つにすぎない。
【0076】
また、制御などは、より上位の制御部分によって制御されても良いし、より末端の制御部分によって制御されても良い。
【0077】
また、制御の順序なども、所定の効果を有するのであれば、適宜変更可能である。
また、第1乃至第3の実施形態では、液肥4を雑菌が繁殖しづらい特性にするために浸す物質として、サンゴ砂礫を用いたが、このような液肥を浸す物質としては、ホタテ貝の貝殻を砕いたもの、カキの貝殻を砕いたもの、石灰岩を砕いた礫等、各種適用可能でする。
さらに、人工的に作った、少なくともアルカリ性を有し、より好ましくはミネラルの豊富な溶液であってもよい。このような人工的に作ったものであっても同様の効果を発揮できると思われるからである。
本発明のアルカリ性は、現在のところPH8~9程度が適切である。また、ミネラル成分はあった方が好適であるが、必須ではないと考えている。
【0078】
培地は、さらに場合によっては以下のようなバージョンも可能である。
例えば、主としてサンゴが用いられている培地にすることもあり得る。主としてとは、本発明においては、他の構成成分において、もっとも多い割合であれば足りる。もっとも、サンゴが多い方が好適ではあると現在のところ考えている。
他の成分としては、砂、軽石、れき等があり得る。
この他の成分は、アルカリ性質のものがより好適である。
その他の成分としては、貝殻(ホタテ等)であってもよい。場合によっては、貝殻のみであってもよい。さらにいうと、液肥4を化学的にアルカリ性にすることも可能であると考えている。
同様に、サンゴ砂礫層55も、主としてサンゴが用いられていればよい。主としてとは、本発明においては、他の構成成分において、もっとも多い割合であれば足りる。もっとも、サンゴが多い方が好適ではあると現在のところ考えている。
他の成分としては、砂、軽石、れき等があり得る。
この他の成分は、アルカリ性質のものがより好適である。
その他の成分としては、貝殻(ホタテ等)であってもよい。場合によっては、貝殻のみ
であってもよい。さらにいうと、液肥4を化学的にアルカリ性にすることも可能であると考えている。
【0079】
ガター2を流れる液肥4はガター2の端部から抜く実施形態を記載していたが、途中から順次排出する排出口を設けて排出することも可能である。その場合、傾斜をつけない、傾斜が緩くてもいいという利点がある。特に、ガター2が長くなる場合には、効果的である。
また、潅水ポンプ59の流量を観測して、どの程度使用量があるか計測すると好適である。
同様に、液肥移送ポンプ57、58の流量を観測すると好適である。
【0080】
<定義等>
本発明における栽培する植物としては、トマト以外にも、マンゴー、バナナ、メロン、パプリカ、ナス、キュウリ、イチゴ等、各種の野菜・果物に適用可能である。また、トマトの品種として、ミニトマト以外にも、フルーツルビー、シシリアンルージュ、桃太郎等に適用可能である。また、野菜、果物以外にも、穀物等の糖度が高い方がよい植物に適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…植物の栽培装置
2…ガター
3…培地
4…液肥
5…潅水チューブ
6…養液循環槽
7…濾過布
10…トマト
13…サンゴ砂礫
55…サンゴ砂礫槽
【手続補正書】
【提出日】2022-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内側に培地を敷き詰め、
前記培地に植物を根付かせ、
液肥を雑菌が繁殖しづらい特性であるアルカリ性にした後の前記液肥を前記培地に給液する植物の栽培方法。