(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002526
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】皮膚疾患における治療標的としてのFABP4
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20221227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221227BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221227BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20221227BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20221227BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20221227BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P43/00 111
A61P17/00
C07K16/18
C12N15/113 Z
C12N15/12
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022150416
(22)【出願日】2022-09-21
(62)【分割の表示】P 2019520695の分割
【原出願日】2017-10-25
(31)【優先権主張番号】62/412,487
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519134360
【氏名又は名称】ティキュア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TiCure Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ガリン-シュコルニク,タリ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】過剰増殖性ケラチノサイト又は炎症性皮膚疾患を特徴とする病状を治療する医薬組成物を提供する。
【解決手段】皮膚疾患の治療又は予防に使用する少なくとも1つのFABP4阻害剤を含むことを特徴とする医薬組成物による。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚疾患の治療又は予防に使用する少なくとも1つのFABP4阻害剤を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのFABP4阻害剤が、ペプチド、抗体、抗体断片、低分子、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのFABP4阻害剤が、最大約1000Da乃至500Daの分子量を有する低分子であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項4】
前記低分子が、カルバゾールブタン酸、アリールスルホンアミド、スルホニルチオフェン 又はスルホニルチオフェン誘導体、4-ヒドロキシピリミジン、2-ヒドロキシピリミジン、カルバゾール又はカルバゾール誘導体、テトラヒドロカルバゾール又はテトラヒドロカルバゾール誘導体、2,3-ジメチルインドール又は2,3-ジメチルインドール誘導体、ベンゾイルベンゼン、ビフェニルアルカン酸又はビフェニルアルカン酸誘導体、2-オキサゾールアルカン酸又は2-オキサゾールアルカン酸誘導体、テトラヒドロピリミジン又はテトラヒドロピリミジン誘導体、ピリジン又はピリジン誘導体、ピラジン又はピラジノン誘導体、キノロン又はキノロン誘導体、アリールカルボン酸又はアリールカルボン酸誘導体、テトラゾール、トリアゾロピリミジン又はトリアゾロピリミジン誘導体、インドール又はインドール誘導体、フラボノイド(フラバノール、フラバノン、イソフラボン、ピラゾール又はピラゾール誘導体など)、(2-(2’-(5-エチル-3,4-ジフェニル-1H-ピラゾール-1-イル)(1,1’-ビフェニル)-3-イル)オキシ)-酢酸(BMS309403)及び4-{[2-メトキシカルボニル)-5-(2-チエニル)-3-チエニル]アミノ}-4-オキソ-2-ブタン酸(BMS480404)、ならびにこれらの塩、立体異性体、水和物及び混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのFABP4阻害剤が、FABP4に特異的に結合してその活性を阻害する抗体であることを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記FABP4阻害剤が、配列番号2乃至9の核酸配列を含むsiRNAであることを特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記FABP4阻害剤がFABP5阻害剤でもあることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記皮膚疾患が乾癬、皮膚炎(アトピー性、脂漏性、接触性)、湿疹、類乾癬、扁平苔癬、扁平毛孔性苔癬、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、慢性苔癬状粃糠疹、毛孔性紅色批糠疹、ジベルばら色粃糠疹、移植片対宿主病、組織球増殖症、薬剤誘発性発疹、自己免疫結合組織の疾患(例えば、狼瘡)、酒さ、毛嚢炎、にきび、いぼ、魚鱗癬、白斑、瘢痕性脱毛症、CTCL、光線性角化症、扁平上皮癌、基底細胞癌、母斑、慢性単純性苔癬、乾癬、角化症、角膜皮膚炎、そう痒症、やけど、瘢痕、カルス、及びケロイドから成る群から選択されることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記皮膚疾患がCTCLであることを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記皮膚疾患が炎症性皮膚疾患であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記炎症性皮膚疾患が、乾癬、皮膚炎(アトピー性、脂漏性、接触性)、湿疹、類乾癬、扁平苔癬、扁平毛孔性苔癬、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、慢性苔癬状粃糠疹、毛孔性紅色批糠疹、ジベルばら色粃糠疹、移植片対宿主病、組織球増殖症、薬剤誘発性発疹、自己免疫結合組織の疾患(例えば、狼瘡)、酒さ、毛嚢炎、にきび、いぼ、魚鱗癬、白斑、瘢痕性脱毛症、及びCTCLから成る群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記炎症性皮膚疾患が、乾癬であることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
薬学的に許容される担体をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至12いずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つのFABP阻害剤を、局所的に、経口的に、吸入により、経鼻的に、経皮的に、眼球内に、又は非経口的に対象の循環系に送達するように適合させたことを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つのFABP4阻害剤を経皮投与するように適合させたことを特徴とする、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つのFABP4阻害剤を皮膚層にわたって局所投与するように適合させたことを特徴とする、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つのFABP4阻害剤を角質層にわたって送達するように適合させたことを特徴とする、請求項15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つのFABP4阻害剤を注射による投与に適合させたことを特徴とする、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つのFABP4阻害剤を経口投与に適合させたことを特徴とする、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
PPARγアゴニストと共に使用するように適合させたことを特徴とする、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
PPARγアゴニストをさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記PPARγアゴニストが、チアゾリジンジオン、ピオグリタゾン(アクトス)、ロシグリタゾン(アバンディア)、ロベグリタゾン(商品名Duvie)、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、ネトグリタゾン、リボグリタゾン、トログリタゾン(商品名Rezulin)、及びローダミンから選択されることを特徴とする請求項20又は21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
少なくとも1つのFABP4阻害剤の経皮送達用の局所製剤において、前記組成物が少なくとも1つのFABP4阻害剤及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、局所製剤。
【請求項24】
少なくとも1つのPPARγアゴニストをさらに含むことを特徴とする、請求項23に記載の局所製剤。
【請求項25】
必要とする対象に治療有効量の少なくとも1つのFABP4阻害剤又はそれを含む医薬組成物を投与するステップを具えることを特徴とする、対象の皮膚疾患を治療又は予防する方法。
【請求項26】
PPARγアゴニストを前記対象に投与するステップをさらに具えることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記PPARγアゴニストが、前記少なくとも1つのFABP4阻害剤と同時に投与されることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記FABP阻害剤及び前記PPARγアゴニストが逐次的に投与されることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つのFABP4阻害剤が、ペプチド、抗体、低分子、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項25から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つのFABP4阻害剤が、最大約1000Da乃至500Daの分子量を有する低分子であることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記低分子が、カルバゾールブタン酸、アリールスルホンアミド、スルホニルチオフェン又はスルホニルチオフェン誘導体、4-ヒドロキシピリミジン、2-ヒドロキシピリミジン、カルバゾール又はカルバゾール誘導体、テトラヒドロカルバゾール又はテトラヒドロカルバゾール誘導体、2,3-ジメチルインドール又は2,3-ジメチルインドール誘導体、ベンゾイルベンゼン、ビフェニルアルカン酸又はビフェニルアルカン酸誘導体、2-オキサゾールアルカン酸又は2-オキサゾールアルカン酸誘導体、テトラヒドロピリミジン又はテトラヒドロピリミジン誘導体、ピリジン又はピリジン誘導体、ピラジン又はピラジノン誘導体、キノロン又はキノロン誘導体、アリールカルボン酸又はアリールカルボン酸誘導体、テトラゾール、トリアゾロピリミジン又はトリアゾロピリミジン誘導体、インドール又はインドール誘導体、フラボノイド(フラバノール、フラバノン、イソフラボン、ピラゾール又はピラゾール誘導体など)、(2-(2’-(5-エチル-3,4-ジフェニル-1H-ピラゾール-1-イル)(1,1’-ビフェニル)-3-イル)オキシ)-酢酸(BMS309403)及び4-{[2-メトキシカルボニル)-5-(2-チエニル)-3-チエニル]アミノ}-4-オキソ-2-ブタン酸(BMS480404)、ならびにこれらの塩、立体異性体、水和物及び混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つのFABP4阻害剤が、FABP4に特異的に結合してその活性を阻害する抗体であることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記FABP4阻害剤が、配列番号2乃至9の核酸配列を含むsiRNAであることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記FABP4阻害剤がFABP5阻害剤でもあることを特徴とする、請求項25乃至33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記皮膚疾患が乾癬、皮膚炎(アトピー性、脂漏性、接触性)、湿疹、類乾癬、扁平苔癬、扁平毛孔性苔癬、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、慢性苔癬状粃糠疹、毛孔性紅色批糠疹、ジベルばら色粃糠疹、移植片対宿主病、組織球増殖症、薬剤誘発性発疹、自己免疫結合組織の疾患(例えば、狼瘡)、酒さ、毛嚢炎、にきび、いぼ、魚鱗癬、白斑、瘢痕性脱毛症、CTCL、光線性角化症、扁平上皮癌、基底細胞癌、母斑、慢性単純性苔癬、乾癬、角化症、角膜皮膚炎、そう痒症、やけど、瘢痕、カルス、及びケロイドから成る群から選択されることを特徴とする、請求項25乃至34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記皮膚疾患がCTCLであることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記皮膚疾患が炎症性皮膚疾患であることを特徴とする、請求項25乃至34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記炎症性皮膚疾患が、乾癬、皮膚炎(アトピー性、脂漏性、接触性)、湿疹、類乾癬、扁平苔癬、扁平毛孔性苔癬、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、慢性苔癬状粃糠疹、毛孔性紅色批糠疹、ジベルばら色粃糠疹、移植片対宿主病、組織球増殖症、薬剤誘発性発疹、自己免疫結合組織の疾患(例えば、狼瘡)、酒さ、毛嚢炎、にきび、いぼ、魚鱗癬、白斑、瘢痕性脱毛症、及びCTCL地衣類から成る群から選択されることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記炎症性皮膚疾患が、乾癬であることを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
対象の乾癬を治療又は予防する方法において、必要とする対象に治療有効量の少なくとも1つのFABP4阻害剤又はそれを含む医薬組成物を投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項41】
対象のCTCLを治療又は予防する方法において、必要とする対象に治療有効量の少なくとも1つのFABP4阻害剤又はそれを含む医薬組成物を投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項42】
皮膚疾患又は状態を発症している対象における素因を検出する方法において:
前記対象由来のケラチノサイト又は炎症性細胞を含む試料中のFABP4の発現を検出するステップであって、所定の塩基レベルを超える前記試料中のFABP4の存在が、皮膚疾患又は状態を発症する素因を表す、ステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項43】
前記試料が皮膚試料であることを特徴とする、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記所定の塩基レベルが、正常な皮膚サンプル中のFABP4のレベルであることを特徴とする、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記検出するステップが、FABP4核酸の発現の検出を具えることを特徴とする、請求項42乃至44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記検出するステップが、FABP4タンパク質又はその断片の発現を検出するステップを具えることを特徴とする、請求項42乃至45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記皮膚疾患が乾癬、皮膚炎(アトピー性、脂漏性、接触性)、湿疹、類乾癬、扁平苔癬、扁平毛孔性苔癬、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、慢性苔癬状粃糠疹、毛孔性紅色批糠疹、ジベルばら色粃糠疹、移植片対宿主病、組織球増殖症、薬剤誘発性発疹、自己免疫結合組織の疾患(例えば、狼瘡)、酒さ、毛嚢炎、にきび、いぼ、魚鱗癬、白斑、瘢痕性脱毛症、CTCL、光線性角化症、扁平上皮癌、基底細胞癌、母斑、慢性単純性苔癬、乾癬、角化症、角膜皮膚炎、そう痒症、やけど、瘢痕、カルス、及びケロイドから成る群から選択されることを特徴とする、請求項42乃至46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記皮膚疾患がCTCLであることを特徴とする、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記皮膚疾患が炎症性皮膚疾患であることを特徴とする、請求項42乃至46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記炎症性皮膚疾患が、乾癬、皮膚炎(アトピー性、脂漏性、接触性)、湿疹、類乾癬、扁平苔癬、扁平毛孔性苔癬、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、慢性苔癬状粃糠疹、毛孔性紅色批糠疹、ジベルばら色粃糠疹、移植片対宿主病、組織球増殖症、薬剤誘発性発疹、自己免疫結合組織の疾患(例えば、狼瘡)、酒さ、毛嚢炎、にきび、いぼ、魚鱗癬、白斑、瘢痕性脱毛症、及びCTCLから成る群から選択されることを特徴とする、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記炎症性皮膚疾患が乾癬であることを特徴とする、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
対象からのケラチノサイト又は炎症性細胞を含む試料中のFABP4の発現を検出するステップと、当該FABP4の発現が所定の塩基レベルより上又は下であるかどうかを決定するステップと、前記試料中のFABP4発現が前記所定の塩基レベルを上回る場合、被験体に、治療有効量の少なくとも1つのFABP4阻害剤又はそれを含む医薬組成物を投与するステップを具えることを特徴とする、対象における皮膚疾患の治療又は予防方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチノサイト及び免疫細胞の増殖及び/又は分化を調節する方法、より具体的には過剰増殖性ケラチノサイト又は炎症性皮膚疾患を特徴とする病状を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここに開示されている主題の背景として関連があると考えられる参考文献を以下に列挙する。
[1]Furuhashi et al.,Nat Rev Drug Discov 2008,7(6),489-503
[2]Coe et al.,Biochim Biophys Acta 1998,1391(3),287-306
[3]Hotamisligil et al.,Science 1996,274(5291),1377-1379
[4]Maeda et al.,Cell Metab 2005,1(2),107-119
[5]Furuhashi et al.,Nature 2007,447(7147),959-965
[6]Tuncman et al.,PNAS 2006,103(18),6970-6975
[7]Garin-Shkolnik et al.,Diabetes 2014,63(3),900-911
[8]Bolognia et al.,Dermatology 2012,Sounders,3rd ed.
[9]Krueger et al.,Annals of the Rheumatic Diseases 2005(64),30-36
[10]Siegenthaler et al.,Biochem Biophys Res Commun 1990,3,190,482-487
[II]Floresta et al.,Eur J Med Chem 2017,138,854-873
[12]Cao et al.,Cell Metab 2013,17,768-778
[13]Burak et a.,Sci Transl Med 2015,7,319ra205
[14]Miao et al.,Mol Cell Endocrinol 2015,403,1-9
[15]Won et al.,Nat Mater 2014,13,1157-1164
[16]Madsen et al.,J Invest Dermatol 1992,99(3),299-305
[17]Guttman-Yassky et al.,J Allergy Immunol 2011,127(5),1110-1118
[18]Yuspa et al.,J Cell Biol 1989,109,1207-1217
[19]Wu et al.,Australasian Journal of Dermatology 2004,45(1),47-50
[20]Van der Fits et al.,The Journal of Immunology 2009,182(9),5836-5845
【0003】
本明細書における上記の参考文献の承認は、これらが現在開示されている主題の特許性に何らかの形で関連することを意味すると解釈されるべきではない。
【0004】
脂肪酸結合タンパク質(FABP)は、疎水性分子、特に長鎖脂肪酸とレチノイン酸のキャリアとして機能する小さな細胞質シャペロンである[1、2]。FABPファミリーメンバーのいくつかは、様々な代謝機能の重要な調節因子として同定されており、インスリン抵抗性、異常な脂質代謝、及びアテローム性動脈硬化症の発症に関連している。FABPは、細胞内脂肪酸及びその他の疎水性リガンドを、酵素、膜、及び核などの細胞目的地へ運ぶ。 FABPは細胞内脂質代謝の調節及び遺伝子発現の調節にも関与している。
【0005】
細胞内の脂肪酸シャペロンのファミリーメンバーは、組織特異的に発現されている。A-FABP又はaP2とも呼ばれるFABP4は、脂肪細胞及びマクロファージにおける主要な脂肪酸結合タンパク質である。最近の研究は、FABP4が肥満とインスリン抵抗性を結びつける経路の中心であり、全身のグルコース代謝と脂質代謝に重要な役割を果たすことを示している[3,4]。FABP4はマクロファージにおいて炎症誘発性を有する。FABP4の経口活性低分子阻害剤は、マウスモデルにおける重度のアテローム性動脈硬化症及び2型糖尿病に対する有効な治療薬であることがわかった[5]。さらに、転写活性の低下をもたらす、FABP4プロモーターのT87C多型を保有する個体は、ホモ接合型WT対立遺伝子を保有する対象と比較して、血清トリグリセリドが低く、アテローム性動脈硬化症及び2型糖尿病のリスクが有意に低い[6]。
【0006】
転写因子ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)は、脂肪生成、インスリン応答及び免疫機能に関連する遺伝子の主な調節因子であり、その活性化後に好ましい結果が得られる。PPARγは心血管細胞、特に内皮細胞の炎症反応を減少させることが示唆されている。FABP4はPPARγの発現を調節することが観察されており、それによってFABP4の阻害はマクロファージと脂肪細胞中のPPARγのレベルを増加させ、FABP4の過剰発現はPPARγを減少させる[7]。また、FABP4は、そのユビキチン化及び続くプロテアソーム分解を引き起こすことによってPPARγを減少させることも示された。インビボで、FABP4ヌルマウス前脂肪細胞は、PPARγの高い発現を示し、WTマウスと比較して脂肪生成が著しく増強され、FABP4が分化工程を調節することを示している。肥満、主に内臓肥満は、インスリン抵抗性、糖尿病、及びアテローム性動脈硬化症を促進することによって罹患率と死亡率を高める。皮下脂肪におけるレベルと比較して、マウス及びヒトにおける内臓脂肪においてFABP4が増加し、PPARγが減少したこともわかった。
【0007】
皮膚は外界に対する機械的な障壁として機能するが、保護のために免疫システムも使用する。しかし、皮膚の免疫反応は必ずしも防御的ではないが、本質的に有害であり、病気を引き起こすことがある[8]。多くの皮膚疾患がTリンパ球によって引き起こされ、したがって免疫学的に媒介される。その結果、多くの皮膚病は、全身に又は局所的に投与された免疫抑制療法に有利に反応する。皮膚病の多くは慢性的な経過をたどり、したがって治療が困難である。
【0008】
乾癬は、世界人口のおよそ2乃至4%が罹患している慢性炎症性皮膚疾患である。その病因には表皮の欠陥及び免疫学的な機能欠陥の両方がある。乾癬の顕著な特徴は、ケラチノサイトの異常な分化と過剰増殖である。乾癬では、炎症細胞の浸潤とTリンパ球の活性化がサイトカインの放出を引き起こし、その結果、ケラチノサイトの増殖と異常な分化が生じる[9]。
【0009】
FABP5は、表皮及び乾癬に関連するFABPのファミリーメンバーであり、乾癬性皮膚病変において増加することが以前に発見された[10]。しかしながら、一般的に皮膚科の濃度、特に乾癬における代謝調節因子FABP4の役割はまだ観察されていない。
【発明の概要】
【0010】
本発明の発明者らは、FABP4が皮膚疾患、例えば乾癬のような炎症性皮膚疾患の発症に関するケラチノサイトと免疫細胞における必須の調整剤であることを発見した。これは、皮膚疾患の発症を抑制するのに有用であり得る医薬及び組成物の開発を可能にするとともに、これらの疾患が発症した後にその疾患の処置に使用することができる。
【0011】
したがって、本開示の第1の態様では、FABP4が関与する皮膚疾患又は症状の治療又は予防に使用する少なくとも1つのFABP4阻害剤を含む医薬組成物が提供されている。
【0012】
FABP4阻害剤は、FABP4タンパク質の作用、機能又は発現を減少させる、制限する、又は遮断することのいずれかによってFABP4活性に影響する活性剤を意味する。FABP4タンパク質活性の阻害は、FABP4阻害剤が正常なタンパク質活性(例えば、阻害されていない、又は対照の)に対して有し得る阻害効果の範囲を含めて、広い意味で理解されるべきである。タンパク質活性の阻害は、必ずしもそうである必要はないが、タンパク質の活性の指標のレベル又は活性の増加をもたらす(例えば、これは、目的のタンパク質が下流の指標の阻害剤又は抑制遺伝子として作用している場合に起こり得る)。したがって、FABP4タンパク質活性は、同じ指標の対照測定値と比較して、タンパク質の活性の任意の直接的又は間接的な指標のレベル又は活性が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも100%、又は少なくとも250%、又はそれ以上変化する(例えば、増加又は減少する)場合に阻害され得る。タンパク質活性の阻害はまた、例えば、タンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害することによって、あるいはタンパク質をコードするmRNAの半減期を減少させることによっても影響を受けることがある。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、FABP4阻害剤は、ペプチド、抗体、抗体断片、低分子、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、及びそれらの混合物から選択される。
【0014】
低分子という用語は、最大で約500Da、時には最大約1000Da(ダルトン)の 分子量を有する分子を意味する。
【0015】
低分子は、その主な構造的特徴として環を有する化合物である。この環は、通常、飽和又は不飽和(すなわち、シクロアルキル又はアリール)の3乃至10員環(より典型的には5乃至6員環)であり、完全に炭素質であるか、1又はそれ以上のヘテロ原子を含む。すなわち、主環は、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリールであり、ここで、ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄のうちの1又はそれ以上である。代替的に、低分子は、2又はそれ以上の縮合環の系又はスピロ結合を有する系で、それぞれがシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール又はヘテロアリールであり、各環が3乃至10個の環原子を有する(より典型的には、各々が5又は6個の環原子を有する)系であってもよい。
【0016】
換言すると、本明細書で使用する場合、シクロアルキルは飽和単環式又は多環式系を意味し、ある実施形態では3乃至10個の炭素原子、他の実施形態では3乃至6個の炭素原子、さらなる実施形態では5又は6個の炭素原子を有し;シクロアルケニル及びシクロアルキニルは、少なくとも1の二重結合及び少なくとも1の三重結合を含む単環式又は多環式系を意味する。
【0017】
シクロアルキル、シクロアルケニル及びシクロアルキニル基の環系は、縮合、架橋又はスピロ結合の態様で互いに結合される1個の環又は2個以上の環から構成される。シクロアルキル(ケニル)(キニル)は、少なくとも1つの二重結合及び少なくとも1つの三重結合を含むシクロアルキル基を意味する。ヘテロシクリルは、単環式又は多環式の非芳香族環系を意味し、一実施形態では3乃至10員、別の実施形態では4乃至7員、さらに別の実施形態では5乃至6員である。ここで、一又はそれ以上の所定の実施形態においては、環系中の原子のうち1乃至4個はヘテロ原子、すなわち、炭素、窒素、酸素又は硫黄を含むがこれらに限定されない炭素以外の元素である。ヘテロ原子(複数可)が窒素である実施形態では、窒素は選択的に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アシル、グアニジン、又は窒素で置換されてもよく、四級化されてアンモニウム基を形成し、各々がさらに置換されていてもよい。
【0018】
本明細書中で使用される場合、アリールは、5乃至10個の炭素原子を含有する芳香族の単環式又は多環式基を意味する。アリール基としては、非置換又は置換フルオレニル、非置換又は置換フェニル、及び非置換又は置換ナフチルなどの基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
ヘテロアリールは、所定の実施形態において、5乃至18員の単環式又は多環式芳香環系を意味し、一又はそれ以上の実施形態では、環系中の原子の1乃至4個がヘテロ原子である、すなわち、窒素、酸素又は硫黄を含むがこれらに限定されない炭素以外の原子である。ヘテロアリール基は、選択的に芳香環又は非芳香環に縮合していてもよい。ヘテロアリール基は、フリル、イミダゾリル、ピリミジニル、テトラゾリル、チエニル、ピリジル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、キノリニル及び ソキノリニルを含むがこれらに限定されない。
【0020】
主環構造(単環を含むか又は縮合多環式系であるかのいずれか)は、その可能な各置換位置において、種々の置換基、例えばアルコキシ又はアルキルチオ基(RO-又はRS-基)、ハロゲン化物(又はハロゲン原子、すなわちI、Br、Cl及びF)、擬ハロゲン化物(例えばシアン化物、シアネート、チオシアネート、セレノシアン酸塩、トリフルオロメトキシ、アジド)、ハロアルキル、ハロアルコキシ、エステル(-COOR基)、エーテル(?R’OR基)、アルカン酸(-ROOH)、アミノ、スルフィニル(-S(O)-)、スルホニル(-S(O)2-)、スルホ(-S(O)2O-)、モノ-又はジアルキルアミノカルボニル(-C(O)NHR又は-C(O)NRR’)、カルボキサミド(-NR’COR)、アミド(-C(O)NH-)、チオアミド(-C(S)NH-)、オキシアミド(-OC(O)NH-)、チアアミド(-SC(O)NH-)、ジチアミド(-SC(S)NH-)、ウレイド(-HNC(O)NH-)、チオウレイド(-HNC(S)NH-)、ホルムアミド(-NH-C(O)-H)、その他などで置換されていてもよい。ここで、R及びR’は、各々、C1-C8直鎖又は分岐アルキル、アルキレン、アリール又はヘテロアリール基である。
【0021】
本明細書で使用されているアミノは、一級、二級又は三級アミンに及び、結合点がC1 乃至C6直鎖状又は分岐状アルキルで置換されている窒素原子を介している。三級アミンの場合、置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、低分子は、カルバゾールアルカン酸又はカルバゾールアルカン酸誘導体、アリールスルホンアミド又はアリールスルホンアミド誘導体、スルホニルチオフェン又はスルホニルチオフェン誘導体、ヒドロキシピリミジン、カルバゾール又はカルバゾール誘導体、インドール又はインドール誘導体、カルバゾール又はカルバゾール誘導体、ベンゾイルベンゼン又はベンゾイルベンゼン誘導体、ビフェニル-アルカン酸又はビフェニル-アルカン酸誘導体、オキサゾール-アルカン酸又はオキサゾール-アルカン酸誘導体、ピリミジン又はピリミジン誘導体、ピリミドン又はピリミドン誘導体、ピリジン又はピリジン誘導体、ピラジン又はピラジン誘導体、ピラジノン又はピラジノン誘導体、テトラゾール又はテトラゾール誘導体、トリアゾロピリミジン又はトリアゾロピリミジン誘導体、トリアゾロピリミジノン又はトリアゾロピリミジノン誘導体、ピラゾール又はピラゾール誘導体、(2-(2’-(5-エチル-3,4-ジフェニル-1H-ピラゾール-1-イル)(1,1’-ビフェニル)-3-イル)オキシ)-酢酸(BMS309403)及び4-{[2-メトキシカルボキシナイル)-5-(2-チエニル)-3-チエニル]アミノ}-4-オキソ-2-ブタン酸(BMS480404)、ならびにそれらの塩、立体異性体、水和物及び混合物、から選択される[11]。
【0023】
誘導体という用語は、本明細書に記載の親化合物から誘導される化学修飾化合物を意味し、親化合物とは置換基及び/又は官能基が異なり、本明細書で定義されているように、誘導体が親化合物と同じ又は同様の生物学的特性/活性を有する。例えば、ピラゾール誘導体は、(2-(2’-(5-エチル-3,4-ジフェニル-1H-ピラゾール-1-イル)(1,1’-ビフェニル)-3-イル)オキシ)-酢酸(BMS309403)である。
【0024】
アルカン酸という用語は、1(又は2)乃至18個の炭素を含む飽和又は不飽和炭素鎖の酸を指し、直鎖又は分岐鎖であり、例えばカルボン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸などである。
【0025】
その他の実施形態において、低分子は、カルバゾールブタン酸、アリールスルホンアミド、スルホンブルチオフェン又はスルホンブルチオフェン誘導体、4-ヒドロキシピリミジン、2-ヒドロキシピリミジン、カルバゾール又はカルバゾール誘導体、テトラヒドロカルバゾール又はテトラヒドロカルバゾール誘導体、2,3-ジメチルインドール又は2,3-ジメチルインドール誘導体、ベンゾイルベンゼン、ビフェニルアルカン酸又はビフェニルアルカン酸誘導体、2-オキサゾールアルカン酸又は2-オキサゾール-アルカン酸誘導体、テトラヒドロピリミジン又はテトラヒドロピリミジン誘導体、ピリジン又はピリジン誘導体、ピラジン又はピラジノン誘導体、キノロン又はキノロン誘導体、アリールカルボン酸又はアリールカルボン酸誘導体、テトラゾール、トリアゾロピリミジン又はトリアゾロピリミジン誘導体、インドール又はインドール誘導体、フラボノイド(フラバノール、フラバノン、イソフラボン、ピラゾール又はピラゾール誘導体など)、(2-(2’-(5-エチル-3,4-ジフェニル-1H-ピラゾール-1-イル)(1,1’-ビフェニル)-3-イル)オキシ)-酢酸(BMS309403)及び4-{[2-メトキシカルボニル)-5-(2-チエニル)-3-チエニル]アミノ}-4-オキソ-2-ブタン酸(BMS480404)、及びこれらの塩、立体異性体、水和物及び混合物、から選択される。
【0026】
【0027】
いくつかの実施形態では、低分子は表1に詳述されているものから選択することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、低分子は表1に詳述されたものから選択した少なくとも1つである。
【0029】
いくつかの他の実施形態において、低分子は、ピラゾール又はピラゾール誘導体、(2-(2’-(5-エチル-3,4-ジフェニル-1H-ピラゾール-1-イル)(1,1’-ビフェニル)-3-イル)オキシ)-酢酸(BMS309403)、及び4-{[2-メトキシカルボニル)-5-(2-チエニル)-3-チエニル]アミノ}-4-オキソ-2-ブタン酸(BMS480404)、ならびにこれらの塩、立体異性体、水和物及び混合物、から選択される。
【0030】
さらなる実施形態では、低分子が、(2-(2’-(5-エチル-3,4-ジフェニルLH-ピラゾール-1-イル)(1,1‘-ビフェニル)-3-イル)オキシ)- 酢酸(BMS309403)であってもよい。いくつかの他の実施形態では、低分子は、4-{[2-メトキシカルボニル)-5-(2-チエニル)-3-チエニル]アミノ}-4-オキソ-2-ブタン酸(BMS480404)であってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、FABP4阻害剤は、FABP4に特異的に結合してその活性を阻害する抗体である。この抗体は、抗原のエピトープ、すなわちFABP4タンパク質又はその断片を特異的に認識して結合する、少なくとも軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンドである。この用語は、Fab’フラグメント、F(ab)’2フラグメント、単鎖Fvタンパク質(「scFv」)、及びジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)などの、当技術分野において公知の無傷の免疫グロブリン及びその変異体及び部分を意味する。この用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化ネズミ抗体)、及び異種結合抗体(例えば、二重特異性抗体)などの組換え形態も含む。また、Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.;Kuby,Immunology 第3版 WH Freeman&Co.,ニューヨーク 1997も参照されたい。
【0032】
抗体はモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Bリンパ球の単一クローン又は単一抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって産生され、ヒト化モノクローナル抗体を含む。ポリクローナル抗体は、体内の様々なB細胞系統によって分泌される抗体である。
【0033】
抗体はFABP4タンパク質又はそのフラグメントに特異的に結合すると言われている。すなわち、抗体は、FABP4タンパク質及びその断片が混合されているその他の分子/巨大分子の実体との結合を超えて、FABP4タンパク質及びそれらのフラグメントと選択的及び好ましい態様で関連付けることができる。FABP4に対して阻害効果(又は中和効果)を有する抗体は、FABP4の少なくとも1つの活性又はFABP4に関連する少なくとも1つの活性を、例えば、FAPB4が通常結合するリガンドへのFAPB4の結合をブロックすることによって、その他のタンパク質とのFABP4のタンパク質-タンパク質相互作用を破壊するか、あるいは妨害することによって、阻害又は抑制する抗体である。
【0034】
いくつかの実施形態では、抗体は抗FABP4抗体である。例示的な抗FABP4抗体は当該分野で記載されており、とりわけ、Ab抗FABP4[12]、AbCA33[13]、Ab2E4[14]、などを含んでいてもよい。
【0035】
FABP4阻害剤は、いくつかの実施形態では、アンチセンス又はセンス阻害剤である。アンチセンス及びセンス阻害剤は生体高分子であり、特定の遺伝子、例えばFABP4をコード化する遺伝子によって産生されるメッセンジャーRNA(mRNA)と結合(又はハイブリダイズ)し、それらの発現を不活性化又は調節する。アンチセンス阻害剤は、通常はオリゴマー化合物であり、ハイブリダイズする特定の標的核酸分子の領域に対して少なくとも部分的に相補的であり、RNA干渉(RNAi)を引き起こす。したがって、RNAiは、配列特異的な一致を介してmRNAの標的化を通じて作用し、標的mRNAの分解又は翻訳阻害をもたらし、例えばFABP4の発現の抑制といったタンパク質発現の変化又は喪失をもたらす。アンチセンス化合物の非限定的な例には、プライマー、プローブ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、shRNA及びリボザイムが含まれる。アンチセンス又はセンス阻害剤のいずれも、dsDNAの一部を標的にするのに使用できる。これらはdsDNAのその部分の発現を妨げるためである。アンチセンス分子はプラス鎖に結合することができ、センス分子はマイナス鎖に結合することができる。これらの化合物は、一本鎖、二本鎖、環状、分岐又はヘアピン化合物として導入することができ、内部又は末端のバルジ又はループなどの構造要素を含むことができる。二本鎖アンチセンス化合物は、二本鎖化合物、又は完全なあるいは部分多岐な二本鎖化合物の混成と形成ができる十分な自己相補性を有する一本鎖であってもよい。
【0036】
FABP4阻害剤は、低分子干渉RNA(siRNA)であってもよく、これは2つのオーバーハングしたヌクレオチドを有し、リン酸化5’末端及びヒドロキシル化3’末端を有する19乃至25bpの小さいdsRNA分子である。細胞型特異的キャリア分子に対する脂肪組織への特異的干渉RNA送達の例は、[15]に記載されている(参照により本明細書に組み入れられる)。いくつかの実施形態では、FABP4阻害剤は、配列番号2乃至9の核酸配列を含むsiRNAである。
センス3’ guagguaccuggaaacuuguu(配列番号2)
アンチセンス5’ caaguuuccagguaccuacuu(配列番号3)
センス3’ gaaaugggauggaaaaucauu(配列番号4)
アンチセンス5’ ugauuuuccaucccauuucuu(配列番号5)
センス3’ gaugugaucaccauuaaauuu(配列番号6)
アンチセンス5’ auuuaauggugaucacaucuu(配列番号7)
センス3’ gaaagucaagagcaccauauu(配列番号8)
アンチセンス5’ uauggugcucuugacuuucuu(配列番号9)
【0037】
適切なFABP4阻害剤の選択は、公知の適切な方法自体で行うことができる(例えば、Hughes et al,Br J Pharmacol.2011,162(6)1239)。例えば、活性化合物は、FABP4に対する選択性と、その結果としてのFABP4阻害に対する有効性に基づいて、ライブラリーから選択して、スクリーニングすることができる。
【0038】
さらに上述したように、マクロファージ及び脂肪細胞中のPPARγの発現がFABP4によって負に調節され、内臓脂肪 などの炎症部位ではFABP4が増加し、PPARγが減少したことが本発明者らによって以前に観察されている[7]。本発明者らは、FABP4が皮膚、Tリンパ球及びケラチノサイトにおいて過剰発現すること、及び、例えば炎症を伴う皮膚においてもFABP4の発現とPPARγの発現との間に負の相関があることを見出した。したがって、理論に縛られることを望むものではないが、PPARγの活性化と同時に起こるFABP4の阻害は、様々な皮膚疾患の治療に相乗効果がある可能性がある。
【0039】
したがって、本開示の医薬組成物は、少なくとも1つのPPARγアゴニストを含むか、又は少なくとも1つPPARγアゴニストと併用できる。PPARγアゴニストは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体に結合する活性剤であり、この受容体を活性化する。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は少なくとも1つのPPARγアゴニストを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのPPARγアゴニストはチアゾリジンジオン誘導体である。他の実施形態では、PPARγアゴニストは、ピオグリタゾン(Actos)、ロシグリタゾン(Avandia)、ロベグリタゾン(Duvie)、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、ネトグリタゾン、リボグリタゾン、トログリタゾン(Rezulin)、ローダニン、及びその他のチアゾリジンジオン誘導体から選択できる。当業者は理解するように、その他のPPARγアゴニストは、インドール誘導体又は種々の非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェン)、ならびにその他のPPARγアゴニストといった、本開示の範囲に包含される。
【0041】
本開示の医薬組成物は薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。薬学的に許容される担体は、例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、又は希釈剤であり、当業者には周知であって一般に容易に入手可能である。例えば、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Science,Mack Publishing Co ペンシルベニア州イーストン 第15版(1975)を参照されたい。薬学的に許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であるもの、及び使用条件下で有害な副作用又は毒性を有さないものであることが好ましい。担体の選択は、特定の部分的な活性剤によって、また組成物の投与に使用する特定の方法によって決まる。したがって、多種多様な適切な製剤の医薬組成物が本開示に包含される。
【0042】
薬学的に許容される担体は、FABP4阻害剤の局所投与、経口投与、直腸投与、膣投与、経皮投与、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、眼内投与、及び鼻腔内投与に適している。医薬組成物は製薬業界で周知の方法で調製される。本開示の医薬組成物を製造する際に、その成分は通常賦形剤と混合するか、賦形剤で希釈するか、又は所望の形態に操作できるそのような担体内に封入する。特定の投与方法に基づいて、医薬組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、サシェ剤、顆粒剤、散剤、チューインガム、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤、ローション剤、油剤、石鹸、スプレー剤、クリーム剤、軟膏剤、フィルム、マイクロカプセル、マイクロスフェア、リポソーム、ベシクル、マイクロエマルジョン、リポスフェア、パッチ、及びエトソームに製剤できる。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、この医薬組成物は少なくとも1つのFABP4阻害剤を局所的に、経口的に、吸入によって、経鼻的に、経皮的に、眼球内に、又は非経口的に対象の循環系に送達するように適合できる。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、この医薬組成物は注射によって少なくとも1つのFABP4阻害剤を投与するように適合できる。
【0045】
その他の実施形態によれば、この医薬組成物は前記少なくとも1つのFABP4阻害剤を経口投与するように適合できる。
【0046】
経口投与に適した製剤は、(a)水、食塩水又はジュース(例えばオレンジジュース)などの希釈剤に溶解させた有効量の化合物又はそれを含む組成物といった液体溶液;(b)固形剤又は顆粒剤としてそれぞれ所定量の有効成分を含むカプセル剤、サシェ剤、錠剤、ロゼンジ剤及びトローチ剤;(c)粉末;(d)適切な液体中の懸濁液;(e)適切な乳剤;からなる。液体製剤は、水や、例えばエタノール、ベンジルアルコール、及びポリエチレンアルコールといったアルコールなどの希釈剤を含んでいてもよく、薬学的に許容される界面活性剤、懸濁剤、又は乳化剤を添加してもしなくともよい。カプセル形態は、通常の硬質又は軟質ゼラチン型のものであり、例えば、界面活性剤、潤滑剤、及び不活性充填剤、例えばラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、及びコーンスターチを含んでいてもよい。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸、微結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸の一又はそれ以上、及び、その他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、保存剤、香味剤、及び薬理学的に適合する担体、を含んでいてもよい。ロゼンジ形態は、通常スクロース及びアカシア又はトラガカント、といった香味剤中に活性成分を含んでいてもよく、また、トローチは、例えばゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア、乳濁液、ゲルといった不活性基材に活性成分を含んでいてもよく、この活性成分に加えて当技術分野において公知のキャリアを含んでいてもよい。
【0047】
本開示の医薬組成物は、炎症性皮膚疾患の治療又は予防に使用するものであり、全身的又は非全身的効果を誘発するように適合させることができる。すなわち、この組成物は活性剤であるFABP4阻害剤を対象の循環系に送達するように、又は活性剤を標的部位(例えば、皮膚の特定の層)に送達するように適合させることができる。
【0048】
知られているように、ヒトの皮膚は多数の層でできており、皮膚の外側表面に位置する角質層、表皮、及び真皮の3つの主要なグループ層に分けられる。角質層は細胞外の脂質に富んだマトリックス中のケラチンで満たされた細胞層であるが、実際は皮膚への薬物送達に対する主な障壁であり、表皮層と真皮層は生活組織である。表皮は血管を含んでいないが、真皮は毛細管ループを含んでおり、経上皮全身分布のために治療薬を導くことができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、前記少なくとも1つのFABP4阻害剤を経皮投与するように適合している。他の実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つのFABP4阻害剤は皮膚層にわたって局所投与するように適合している。その他のいくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つのFABP阻害剤を角質層にわたって局所送達するように適合している。
【0050】
医薬組成物は、ゲル、ローション、オイル、石鹸、スプレー、エマルジョン、クリーム、軟膏、溶液、懸濁液、フィルム、マイクロカプセル、ミクロスフェア、リポソーム、ベシクル、マイクロエマルジョン、リポスフェア、及びパッチなど、皮膚投与又は局所投与に適した任意の形態に製剤化することができる。
【0051】
本開示の医薬組成物は、FABP4が過剰発現している皮膚疾患又は症状の治療又は予防に使用される。いくつかの実施形態では、皮膚疾患又は状態を、乾癬、皮膚炎(アトピー性、脂漏性、接触)、湿疹、類乾癬、扁平苔癬、毛包扁平苔癬、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、慢性苔癬状粃糠疹、紅斑性疹、黄斑症、移植片対宿主病、組織球症、薬に起因する発疹、自己免疫性結合組織病(例、ループス)、酒さ、毛包炎、にきび、いぼ、魚鱗癬、瘢痕性脱毛症、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、光線性角化症、扁平上皮癌、基底細胞癌、母斑、単純扁平苔癬、乾癬、角化症、角膜皮膚炎、そう痒症、やけど、瘢痕、皮膚硬結、ケロイから成る群から選択することができる。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、皮膚疾患がリンパ腫(CTCL)である。
【0053】
その他の実施形態では、本開示の医薬組成物は、炎症性皮膚疾患又は状態の治療又は予防に使用される。すなわち、この組成物は、FABP4が過剰発現している炎症性成分を含む皮膚疾患又は症状に対して少なくとも1つの治療効果を引き起こす。
【0054】
いくつかの実施形態では、炎症性皮膚疾患また状態状は、乾癬、皮膚炎(アトピー性、脂漏性、接触)、湿疹、類乾癬、扁平苔癬、扁平苔癬、毛包扁平苔癬、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、慢性苔癬状粃糠疹、紅斑性疹、黄斑症、移植片対宿主病、組織球症、薬物誘発性発疹、自己免疫性結合組織病(例、ループス)、酒さ、毛嚢炎、ニキビ、いぼ、魚鱗癬、白斑、瘢痕性脱毛症、及びCTCLから成る群から選択することができる。
【0055】
そのような実施形態によれば、炎症性皮膚疾患がは乾癬である。その他の実施形態によれば、炎症性皮膚疾患が皮膚炎(アトピー性、脂漏性、接触)である。
【0056】
別の態様によれば、少なくとも1つのFABP4阻害剤の経皮送達用の局所製剤が提供されており、この組成物は少なくとも1つのFABP4阻害剤と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む。いくつかの実施形態において、この局所製剤は少なくとも1つのPPARγアゴニストをさらに含んでいてもよい。
【0057】
本開示のさらなる態様は、対象の皮膚疾患(例えば炎症性皮膚状態)を治療又は予防する方法を提供しており、必要とする対象に治療有効量の少なくとも1つのFABP4阻害剤又はこの阻害剤を含む医薬組成物を投与するステップを具える。この治療方法に使用するFABP4-阻害剤は、本明細書に詳述したものから選択することができる。
【0058】
さらなる態様では、対象の乾癬を治療又は予防する方法を提供しており、必要とする対象に治療有効量の少なくとも1つのFABP4阻害剤又はこの阻害剤を含む医薬組成物を投与するステップを具える。
【0059】
別の態様は、対象のCTCLを治療又は予防する方法を提供しており、必要とする対象に治療有効量の少なくとも1つのFABP4阻害剤又はこの阻害剤を含む医薬組成物を投与するステップを具える。
【0060】
本開示の医薬組成物は、任意の病状又は症状を治療、予防又は診断用に選択できる。本明細書で使用される場合、治療という用語又はその言語的変形は、治療量のFABP4-阻害剤の投与を意味する。これは、疾患に関連する望ましくない症状を改善し、発症前にそのような症状の出現を防止し、疾患の進行を遅らせ、症状の悪化を遅らせ、緩解期の開始を促進し、疾患の進行性慢性期に生じた不可逆的な損傷を軽減し、進行期の開始を遅らせ、重症度を軽減するか又は疾患を治癒させ、生存率又はより急速な回復を改善し、症状又は上記の2又はそれ以上の組み合わせが生じることを防止するのに有効である。
【0061】
知られているように、本明細書の目的の有効量は、当技術分野において知られている考えによって決定される。その量は、とりわけ治療する疾患の種類及び重症度ならびに治療計画に応じて、所望の治療効果を達成するのに有効でなければならない。有効量は通常、適切に設計された臨床試験(用量範囲試験)で決定され、当業者は有効量を決定するこのような試験を適切に実施する方法を知っている。一般的に知られているように、有効量は、受容体に対するリガンドの親和性、体内でのその分布プロフィール、体内での半減期などの様々な薬理学的パラメータを含む様々な要因や、あれば望まない副作用、年齢や性別、その他の要素に依存している。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、この治療方法は、対象にPPARγアゴニストを投与するステップをさらに具える。PPARγアゴニストは、前記少なくとも1つのFABP4阻害剤と同時に投与してもよく、あるいはFABP4阻害剤に連続して投与することができる。
【0063】
本明細書で使用されているように、同時に又はその言語的変形は、組成物の成分が同時に投与されること、例えば一方が他方と一緒に投与されることを意味して、使用される。同時投与は、組み合わせにおける最初の投与成分の循環半減期濃度が、その後に投与される別の成分と治療上有効な量で同時に存在するのであれば、別の成分の投与後一定期間内(例えば5分、10分又は数時間でさえ)であれば、投与すべき組み合わせのうちの1つの成分を投与することができる。これらの成分の投与間の時間遅延は、成分の正確な性質及び成分を含有する製剤、個々の成分間の相互作用、成分のそれぞれの半減期、及び熟練者によって容易に認識さえるその他の要因に応じて異なる。
【0064】
シーケンシャルに(又は、個別に)又はこれらの言語的変形は、本明細書では、ある成分と他の成分とを投与する間の期間が有意である、すなわち治療上有効量で最初に投与された成分が、第2の(次の)成分が投与されたときには、血流中にもはや存在しない(又は無症状量で存在する)ことを意味する。
【0065】
上述したように、本発明者らは、FABP4は、炎症性皮膚疾患を有する患者由来からの皮膚組織生検におけるケラチノサイト又は炎症性細胞(マクロファージ及びリンパ球など)においては過剰発現するが、非関与皮膚組織においては有意に発現しないことを見出した。したがって、FABP4過剰発現の同定は、対象の早期発症型炎症性皮膚疾患の検出に、又は炎症性皮膚疾患を発症している対象の素因の検出に利用することができる。
【0066】
したがって、本開示の別の態様は、炎症性皮膚疾患又は状態を発症している対象における素因を検出する(又は炎症性皮膚疾患又は状態の早期発症を検出する)方法を提供し、この方法は、患者のケラチノサイト又は炎症細胞(マクロファージや、リンパ球)を含むサンプル中のFABP4の発現を検出する方法を具える。ここで、サンプル中の所定の塩基レベルを上回るFABP4の存在は、炎症性皮膚疾患又は状態を発症する素因を示す。炎症性皮膚疾患又は状態は、本明細書に記載の疾患及び状態のいずれでもあってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、所定の塩基レベルが、正常な皮膚サンプル中のFABP4のレベルである。
【0068】
素因という用語は、本明細書では、対象を炎症性皮膚疾患などの状態、疾患、又は障害に罹りやすくさせる1つ又は複数の要因の効果を指す。いくつかの実施形態では、ここに開示された方法は、状態、疾患、又は障害を発症する素因のある被験体の同定に使用でき得る。
【0069】
検出は定性的又は定量的であり、公知の適切な方法により実施できると理解されるべきである。このような方法の非限定的な例には、免疫組織化学、PCR技術(RT-PCT及びqRT-PCRを含む)、ウエスタン分析、インサイチューハイブリダイゼーションなどがある。
【0070】
生物学的サンプルは、被験体から直接又は間接的に得ることができ;全血、血漿、血清、涙、粘液、唾液、尿、胸水、組織、細胞(線維芽細胞、末梢血単核球、又は皮膚細胞など)、臓器及び/又は組織の抽出物を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、生物学的サンプルが皮膚サンプルである。
【0072】
試料中のFABP4の検出は、FABP4核酸の発現、FABP4タンパク質フラグメントの発現、及び/又はFABP4タンパク質の発現、を検出することを意味するとを理解すべきである。
【0073】
対照レベル又は塩基レベルとは、健常対象における、又は対象の非関与サンプル由来の、塩基濃度又はFABP4の発現を示す既知の値などの参照標準を指す。特定の例では、対照試料は、乾癬などの疾患又は状態を有さないことがわかっている対象から採取される。その他の例では、診断を受けた対象からであるが、疾患の発症前、又は疾患治療の前又はそれより早い時点のいずれかの時点で得られる。
【0074】
試験試料と対照との差は、FABP4タンパク質、断片又は核酸の発現の増加又は逆に減少である。この差は、定性的差あるいは統計的に有意な差といった定量的差であり得る。いくつかの例では、差が、対照に対して、少なくとも約10%、例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%の増加又は減少である。少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約250%、少なくとも約50%約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、又は500%超の増加又は減少である。
【0075】
さらに別の態様では、本開示は、対象において炎症性皮膚疾患を治療又は予防する方法を提供しており;
被験体由来のケラチノサイト又は炎症性細胞を含有する試料中のFABP4の発現を検出するステップと、
FABP4発現が所定の塩基レベルを上回るか下回るかを決定するステップと;
試料中のFABP4発現が所定の塩基レベルを上回る場合、治療有効量の少なくとも1つのFABP4阻害剤又はそれを含む医薬組成物を対象に投与するステップと;
を具える。
【0076】
治療又は診断を受ける対象は、ヒト及び非ヒト哺乳動物の両方(すなわち、ヒト及び、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、及びウシといった獣医の対象)を指す。
【0077】
本明細書で使用されているように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の言及を含む。
【0078】
本明細書で使用されるように、約という用語は、濃度、分子量などのパラメータの具体的に言及された値から±10%の偏差を包含することを意味する。
【0079】
数値範囲が本明細書に示されている場合は、示された範囲内の任意の引用数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指示番号と第2の指示番号との間の「範囲/範囲」及び「第1の指示番号」から「第2の指示番号までの範囲/範囲」は本明細書では互換的に使用され、第1及び第2の指示番号と、その間のすべての小数及び整数の数字を含むことを意味する。
【0080】
[配列の簡単な説明]
本明細書と共に提供される核酸配列(以下の表2)は、37C.F.R1.822に規定されるヌクレオチド塩基の標準的な略語を用いて示されている。各核酸配列の一方の鎖のみが示されているが、相補鎖は表示されている鎖への言及によって含まれると理解される。
【0081】
【図面の簡単な説明】
【0082】
本明細書に開示されている主題をよりよく理解し、それが実際にどのように実行され得るかを例示するために、添付の図面を参照して非限定的な例として実施形態を説明する。
【
図1】
図1A乃至1Fは、ヒト皮膚の免疫組織化学染色におけるFABP4及びPPARγタンパク質の発現を示す:健康対照皮膚(
図1A及び1B)、乾癬を発症している皮膚(
図1C及び1D)、及び皮膚炎を発症している皮膚(
図1E及び1F)。組織切片を抗FABP4(
図1A、1C、1E)、又は抗PPARγ(
図1B、1D、1F)抗体で染色した。原寸×100。
【
図2】
図2A乃至2Cは、ヒト皮膚の免疫組織化学染色におけるFABP4タンパク質の発現を示す:正常ヒト皮膚(
図2A)、乾癬を発症している皮膚の表皮(
図2B)、及び乾癬を発症している皮膚の真皮(
図2C)。組織切片を抗FABP4抗体で染色した。原寸×200。
【
図3】
図3A及び3Bは、ヒト皮膚の免疫組織化学染色におけるPPARγタンパク質の発現を示す:正常ヒト皮膚(
図3A)、及び乾癬を発症している皮膚(
図3B)。組織切片を抗PPARγ抗体で染色した。原寸×200。
【
図4】
図4A及び4Bは、ヒト皮膚のFABP4タンパク質の免疫組織化学染色である:正常皮膚(
図4A)、及びヒト皮膚のT細胞リンパ腫(CTCL)皮膚病変(
図4B)。組織切片を抗FABP4抗体で染色した。原寸×200。
【
図5】
図5は、FABP4を過剰発現している一時マウスのケラチノサイトにおけるケラチノサイト分化マーカーK1及びK5のレベルを示す免疫ブロット(ウエスタンブロット)である。ケラチノサイトを、GFPでタグ付けされたFABP4を発現しているレンチウイルスベクター(FABP4-GFP)、GFPを発現しているレンチウイルスベクター(GFP)で感染させた、あるいは、処置をしていない(感染させていない)。
【
図6】
図6は、様々な時点におけるインビボ実験からの動物の乾癬面積重症度指数(PASI)スコアを示す。*p<0.05;ビヒクル群と比較して***p<0.001(二元配置分散分析、続いてボンフェローニ事後検定を使用)。
【
図7】
図7は、様々な時点におけるインビボ実験からの動物の紅斑重症度スコアを示す。ビヒクル群と比較して***p<0.001(二元配置分散分析、続いてボンフェローニ事後検定を使用)。
【
図8】
図8は、様々な時点におけるインビボ実験からの動物の皮膚厚重症度スコアを示す。**p<0.01;ビヒクル群と比較して*** p<0.001(二元配置分散分析、続いてボンフェローニ事後検定を使用)。
【
図9】
図9は、様々な時点におけるインビボ実験からの動物のスケーリング重症度スコアを示す。*p<0.05、**p<0.01;ビヒクル群と比較して***p<0.001(二元配置分散分析、続いてボンフェローニ事後検定を使用)。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下の実施例は、特定の特徴及び/又は実施形態の説明に提供される。これらの実施例は、開示を記載された特定の特徴又は実施形態に限定すると解釈されるべきではない。
【0084】
実施例1:ヒト乾癬性皮膚病変におけるFABP4、FABP5、及びPPARγの組織発現分析
乾癬を発症している患者の皮膚からパンチ生検(直径4mm)を得た(n=10)。さらに慢性皮膚炎を発症している患者の皮膚から生検を得た(n=5)。余分な皮膚を外科的に取り除いた後、患者から正常な皮膚を得た(n=10)。組織をホルマリンで固定し、パラフィンに包埋した。光学顕微鏡による組織病理学的検査用に、切片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、そして診断を確認した病理学者が観察した。さらに、免疫組織化学的分析用に、切片を以下の抗体で染色した:FABP4(ウサギポリクローナル抗FABP4抗体、PAB 12276、Abnova社製)、FABP5(ウサギポリクローナル抗FABP5の抗体、SC-50379、Santa Crus社製)とPPARγ(マウスモノクローナル抗PPARvγ抗体、E-8、Santa Crus社制)、すべて1:50に希釈した。ラフィン包埋組織及び凍結保存組織を標準的なプロトコルに従って処理した。
【0085】
図1Cは、表皮及び真皮の両方において、正常な皮膚と比較した乾癬性皮膚病変で検出された高い発現レベルのFABP4を示す(
図1A)。この所見は、試験を行った乾癬を発症しているすべての生検で観察された(有病率100%)。本発明者らの知る限りでは、乾癬病変におけるケラチノサイト及び真皮細胞におけるFABP4の発現が報告されたのはこれが初めてである。理論に縛られることを望むものではないが、この所見は、FABP4の過剰発現が、表皮角化細胞の調節異常と、乾癬の分化の調節異常に関連していることを示唆している。さらに、この所見は、乾癬のもう一つの重要な特徴である、真皮免疫細胞における炎症を促進するFABP4の役割を支持する。
【0086】
乾癬よりは少ないが、
図1Eに示すように、真皮中のケラチノサイト及び炎症性細胞の両方におけるFABP4レベルの増加も、慢性皮膚炎患者からの皮膚生検において観察された(
図1C)。
【0087】
更に、FABP4とPPARγの発現間の負の相関は、ケラチノサイト及び免疫細胞で観察された:一方、正常な皮膚のPPARγは、
図1Bに示すように、表皮全体と真皮中の少数の細胞に検出されたが、乾癬の病変ではPPARγの発現が有意に減少し、表皮の最上層にのみ表示され、真皮細胞では検出されなかった(
図1D)。
図1Fに示すように、PPARγの発現は皮膚炎を発症した皮膚の生検においても減少した。以前に報告されているように([16]、図示せず)、FABP5は乾癬皮膚由来のケラチノサイトにおいてのみ発現した。
【0088】
乾癬性皮膚は、多層のケラチノサイトからなる過剰増殖性表皮を特徴とし、その結果皮膚の厚さが厚くなる。より高い倍率では、FABP4は乾癬病変における過形成表皮全体にわたって示され、
図2Bに示すように、染色は基底層においてはほとんどが細胞質であり、上部層においては細胞核であった。真皮におけるFABP4発現は、
図2Cに示すように、細胞質パターンで、マクロファージ、リンパ球及び内皮細胞において主に観察された。乾癬皮膚におけるPPARγ発現は、表皮において著しく減少し、最上層においてのみ出現し、正常皮膚と比較すると真皮においては検出されなかった(
図3B対3Aを参照)。
【0089】
これは、炎症性成分を有する皮膚疾患を発症する傾向が、真皮及び表皮の皮膚サンプルにおけるFABP、特にFABP4の発現を評価することによって検出できることを示唆している。また、FABP4の過剰発現とPPARγの下方制御が、乾癬の病因に関連していることを示唆している。
【0090】
実施例2:ヒト皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)皮膚病変におけるFABP4の組織発現分析
CTCLは皮膚ホーミングT細胞の一群の新生物である。菌状息肉腫(MF)はCTCLの最も一般的なタイプを表し、全原発性皮膚リンパ腫の約50%を占めている。本来悪性ではあるが、MFは炎症性の皮膚炎様症状を呈する長期の臨床経過をたどっている[8]。
【0091】
MF患者におけるFABP4の発現を、病変皮膚の免疫組織化学的分析を行うことによって調べた。MFの5人の患者からの試料を試験し、正常なヒトの皮膚と比較した。パンチ生検(直径6mm)は、MFの患者の疾患のある皮膚から得た。余分な皮膚を外科的に縮小した後、患者から正常な皮膚を得た。実施例1に記載したように、組織切片を処理し、抗FABP4抗体で染色した。
【0092】
図4B及び4Aにそれぞれ示すように、試験した全ての患者について、正常な皮膚と比較して、MF病変において高い発現レベルでFABP4が観察された。FABP4の発現は、表皮及び真皮における浸潤性Tリンパ球に限定されていた。MFの特徴である強い細胞質染色が、真皮浸潤細胞にならびに下部表皮を貫通した悪性細胞で観察された。
【0093】
したがって、悪性CTCL Tリンパ球においてFABP4タンパク質が高く発現するため、過剰発現の検出を用いて、CTCLの発症に対する患者の傾向を決定することができ、あるいは、早期発見が可能になる。
【0094】
多くの皮膚疾患(乾癬、皮膚炎、CTCLを含む)はリンパ球、主にリンパ球によって媒介されている[17]。FABP4の発現は、マクロファージ、脂肪細胞及び内皮細胞においてのみの、限定された細胞型のレパートリーで報告されている。本発明者によって行われた免疫組織化学分析では、FABP4は真皮の炎症細胞に、マクロファージ及びリンパ球の両方において発現すことがわかった。リンパ球におけるFABP4の発現はこれまでになく、真皮細胞における発現も一般的にはないので、これらの知見は皮膚疾患に高い関連性がある。
【0095】
実施例3:一次マウスケラチノサイトにおけるFABP4の過剰発現
乾癬に見られるように、ケラチノサイトへのFABP4の導入が、分化が損なわれた過剰増殖状態を作り出すことが示唆された。2つのケラチノサイト分化マーカーK1及びK5の発現を測定することによって分化を評価した。K5は、レベルがケラチノサイト分化の間に変化せず、したがってローディングコントロールとして働くケラチンであり、一方K1は通常のケラチノサイト分化の間に誘発される。
【0096】
マウスの一次ケラチノサイトにおけるFABP4過剰発現の効果を評価するために、細胞にFABP4遺伝子を含むレンチウイルスベクター構築物を感染させた。FABP4-T2A-EGFPと名付けられたFABP4レンチウイルスベクターは、CMVプロモーター下でABP4遺伝子を用いて構築され、発現レポーターとして緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を含んでいる。FABP4タンパク質のN末端にT2A残基が存在すると、それらの結合の妨害により、市販の抗FABP4抗体によるFABP4検出が不可能になる。したがって、感染とFABP4過剰発現の検証に、抗GFP抗体を代用した。
【0097】
FABP4発現の有無にかかわらず、一次マウスケラチノサイトにおけるK1及びK5分化マーカーの発現を評価するために、上記に記載したように一次ケラチノサイトを新生児マウスから調製し[18]、FABP4-T2A-EGFPベクターを感染させた。2つの内部対照を使用した:レンチウイルスに感染していない細胞と、FABP4遺伝子を欠くEGFPベクターに感染した細胞である。この細胞を3つの異なる濃度のカルシウム含む分化培地中で増殖させた。低濃度(0.05mM)から中濃度(0.12mM)又は高濃度(1mM)への細胞外カルシウムの上昇が、ケラチノサイトの分化を誘導した。
【0098】
トランスフェクト細胞及び非トランスフェクト細胞におけるケラチノサイト分化マーカーK1及びK5の発現を
図5に示す:FABP4-T2A-EGFPを発現するレンチウイルスによる感染は、非感染細胞やGFP感染細胞と比較して、中及び高カルシウム条件の両方でK1レベルを低下させた。予想通り、K5のレベルは、感染がないケラチノサイト分化の間には変化しなかった。FABP4過剰発現がK1を低下させるという観察結果は、FABP4がケラチノサイトの正常な分化プロセスに干渉し、乾癬に似た過剰増殖状態を促進することを示唆している。
【0099】
実施例4:マウスのイミキモド誘発型乾癬モデルにおけるインビボでのFABP4の阻害
上述したように、乾癬は慢性炎症性皮膚疾患である。免疫系が皮膚細胞を病原体と間違えて、皮膚細胞の増殖を加速させる誤ったシグナルを送り出すときに起こる。イミキモド(IMQ)は、局所投与すると乾癬を誘発し、悪化させる強力な免疫活性化剤である。マウスの背部の皮膚にIMQを毎日塗布すると、プラーク型乾癬に似た炎症性のうろこ状の皮膚病変が誘発される[19、20]。マウスにおけるIMQ誘発乾癬は、ヒト乾癬のモデルとして長い間使用されている。
【0100】
マウスのIMQ誘発モデルにおける乾癬を治療するFABP4阻害剤の経口投与の有効性を試験した。
【0101】
BMS309403(2-[2’-(5-エチル-3,4-ジフェニル-1H-ピラゾール-1-イル)[1,1’-ビフェニル]-3-イル]オキシ]-酢酸、式I)を、FABP4阻害剤として使用した:
【0102】
試験はBalb/cマウス(Envigo RMS(イスラエル)Ltd)を用いて行い、試験開始時の平均(±SD)体重は18.2±0.81gであった。動物には、市販のげっ歯類用飼料(Teklad Certified Global 18%Protein Diet、Harlanカタログ番号2018SC)を自由に摂取させた。動物は滅菌して酸性化した飲料水(pH2.5-3.5)に自由にアクセスさせた。
【0103】
試験は、以下の6つの群で行い、1群あたり3-10匹のマウスを含んでいた;
- ナイーブマウスのグループ(IMQなし)
- 1のビヒクル対照群。ビヒクル配合物は注射用水(WFI)中の10%の1-メチル-2-ピロリドンと、5%のクレモフォールELである。
-陽性対照として酢酸コルチゾンを投与した1処置群-1の錠剤(各25mg、Rekah Pharm)を乳鉢で粉砕した。粉末を2.5mlのWFIに溶解させて10mg/mlを得た。化合物を、IMQ適用の初日(1日目)から6日間、1日1回、12.5mg/kg体重(体重)マウスで、経口投与した。
- 5、15及び30mg/kgの3つの投与量で、BMS(すなわち試験項目)を受けた3つの治療群。BMS粉末(Cayman Chemical)をエタノールに溶解させて30mg/mlの溶液を作った。この原液をビヒクルで希釈して、0.5、1.5及び3mg/mlの3つの異なる濃度とした。新しい水溶液を毎日調製した。IMQを適用した初日(1日目)から6日間、1日1回BMSを経口投与した。
【0104】
IMQ誘発:62.5mgの毎日の局所投与量の市販のIMQクリーム(5%)(Aldara;3M Pharmaceuticals)を、6日間連続して、ナイーブ群を除く全ての群からの剃毛した動物に塗布した。これは、1日の投与量3.125mgの活性化合物に換算される。
【0105】
実験条件:ナイーブ群を除く全ての剃毛した動物に、1日目から6日間連続して毎日IMQクリーム(Aldara(商標)5%クリーム、#3 Pharmaceuticals)を塗布した(約60mg/マウス)。試験項目、ビヒクル及び酢酸コルチゾンを、毎日6日間経口投与した。試験中に、罹患率及び死亡率、体重(BW)、臨床徴候、ならびに乾癬面積及び重症度指数(PASI)の採点を行い、代表的な写真を撮った。動物を9日目に屠殺した。
【0106】
採点は訓練された観察者によって「盲検的」な方法で、すなわち治療に気付かないようにして行われた。背部皮膚の炎症の重症度をスコア付けするために、臨床PASIスコアを採用した。紅斑、鱗屑化、及び肥厚は、0から4の尺度で独立して採点した。0、なし;1、わずか;2、中程度;3、著しい;4、非常に著しい。累積スコア(紅斑+スケーリング+肥厚)である、PASIスコアは、炎症の重症度尺度として使えた(スケール0から12)。
【0107】
死亡率及び罹患率:両方の実験の間、動物は死亡せず、又は病的状態でも発見されなかった。試験中、いずれの動物にも異常な臨床徴候は観察されなかった。体重に関する治療の効果は検出されなかった。
【0108】
皮膚の炎症の重症度のスコア付け:背中の皮膚の炎症の重症度、すなわちPASIの平均スコアを
図6に示す。各パラメータ、すなわち紅斑の重症度、皮膚の厚さ、及び鱗屑を個々に測定した(それぞれ、
図7乃至9)。PASIスコアによれば、すべてのIMQ処置群は、特に試験の5日目及び7日目に、ナイーブ群と比較してかなりの皮膚反応を示した。7日目に、BMS処置による皮膚炎症の有意な改善が観察された。中用量のBMS(15mg/kg)が炎症の重症度に最も影響を及ぼしているようであった。この用量が、試験を行ったパラメータ-紅斑、皮膚の厚さ、及び鱗屑について最良の結果を示した。7日目に撮影された代表的な写真を、
図10A乃至10Fに示す。
【0109】
要約すると、すべてのIMQ処置群は、特に試験の5日目及び7日目に、ナイーブ群と比較してかなりの皮膚反応を示した。7日目に、全ての試験パラメータ、すなわち炎症の重症度、紅斑、皮膚の厚さ及び鱗屑化について、BMS処置群において有意な効果の改善が観察された。実験は3回繰り返され、同様の結果が得られた。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚疾患の治療又は予防に使用する少なくとも1つのFABP4阻害剤を含むことを特徴とする医薬組成物。
【外国語明細書】