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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025263
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】散布装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20230214BHJP
   A01M 9/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
A01C15/00 G
A01M9/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199337
(22)【出願日】2022-12-14
(62)【分割の表示】P 2018174744の分割
【原出願日】2018-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】000132828
【氏名又は名称】株式会社タイショー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻沼 礼
(57)【要約】
【課題】圃場に散布物を均一に散布できる散布装置を提供することを課題とする。
【解決手段】散布対象の粉粒剤を収容するホッパー部と、該ホッパー部の下方に設置され粉粒剤を前記ホッパー部から下方に繰り出す繰り出し部を備え、前記ホッパー部は、内部に粉粒剤の流れを規制する振動板が振動自在に設けられ、前記振動板の背面に対向した前記ホッパー部の側面に通気孔を設けたことを特徴とする散布装置。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布対象の粉粒剤を収容するホッパー部と、該ホッパー部の下方に設置され粉粒剤を前記ホッパー部から下方に繰り出す繰り出し部を備え、
前記ホッパー部は、内部に粉粒剤の流れを規制する振動板が振動自在に設けられ、前記振動板の背面に対向した前記ホッパー部の側面に通気孔を設けたことを特徴とする散布装置。
【請求項2】
前記通気孔を塞ぐシャッター構造を設けたことを特徴とする請求項1記載の散布装置。
【請求項3】
散布対象の粉粒剤を収容するホッパー部と、該ホッパー部の下方に設置され粉粒剤を前記ホッパー部から下方に繰り出す繰り出し部を備え、
前記繰り出し部は、
散布穴を有する底板と、
前記底板に対してスライド自在に設けられ、前記散布穴との重なり開口面積が調整自在となるシャッター穴を有するシャッター板と、
前記シャッター板の下方に前記散布穴を開閉するようにスライド自在に設けられる開閉シャッターとを備え、
前記開閉シャッターを前記シャッター板のスライド方向に対して交差する方向にスライド自在に設けたことを特徴とする散布装置。
【請求項4】
前記散布穴と前記シャッター穴の重なり開口を通過した粉粒剤を圃場上に導く散布ホースを備え、前記開閉シャッターは前記散布ホース上に設けられたことを特徴とする請求項3記載の散布装置。
【請求項5】
前記ホッパー部は、内部に粉粒剤の流れを規制する振動板が振動自在に設けられ、前記振動板の背面に対向した前記ホッパー部の側面に通気孔を設けたことを特徴とする請求項3又は4記載の散布装置。
【請求項6】
前記通気孔を塞ぐシャッター構造を設けたことを特徴とする請求項5記載の散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤などの微粒剤と肥料などの粉剤の両方を適正に散布することができる散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
散布装置は、肥料,土壌改良剤,薬剤などの粉粒剤を圃場に散布する作業機であり、一般にはトラクタに直装されるか、或いはトラクタに直装される耕耘作業機(例えば、ロータリ耕耘作業機)に装着され、トラクタの後方又は前方から圃場上に粉粒剤を散布するものである。このような散布装置は、粉粒剤が収容されるホッパー部と、ホッパー部の下方に設置され粉粒剤をホッパー部から繰り出す繰り出し部と、繰り出し部によって繰り出された粉粒剤を圃場上に導く散布ホースを備えている。
【0003】
このような散布装置において、特に、薬剤などの微粒剤の散布に適した散布装置が開発されている(例えば、下記特許文献1参照)。微粒剤の散布には、サラサラした流動性の高い微粒剤の特性に対応することが求められており、薬剤などが無用に圃場に漏れ出ないように、気密性の高いホッパー部の構造などが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-125231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような散布装置は、ユーザの設備投資コストを考えた場合には、特性の異なる各種粉粒剤を一つの散布装置で精度良く散布することが求められている。しかしながら、粉剤と微粒剤を一つの散布装置で散布する場合には、粉剤に対しては塊(ブリッジ)になるのを避けるための構造などが必要になり、微粒剤に対しては、漏れを防ぐための構造が必要になるので、特性が著しく異なる粉粒剤に対しては、一つの散布装置で散布することが構造上困難になる問題があった。
【0006】
この点を具体的に説明すると、散布装置の散布量の調整は、繰り出し部下方に設けられるシャッターの横スライドで散布穴とシャッター穴の重なり率を調整し、散布穴とシャッター穴の重なり開口の面積を変えることで行っている。この際、流動性が高く散布量の微調整が必要な微粒剤は、開口の面積をゼロから徐々に大きくして行く必要性があるが、塊になり易い粉剤の場合には、開口の面積がある程度以上大きくないと粉剤が開口を通過しないので、開口の面積はゼロから即座に所定面積以上になりその後面積が徐々に大きくなるような調整が必要になる。
【0007】
また、粉剤を散布する場合には、ホッパー部内に振動板などを設けて塊(ブリッジ)を崩すことが必要になるが、流動性の高い微粒剤を散布する場合には、漏れを防ぐためにホッパー部の気密性を高めることが必要になる。この際、微粒剤を散布するために必要な気密性の高いホッパー部内に、粉剤を散布するために必要な振動板などを設けると、振動板などの動きでホッパー部内の圧力が変化して振動板などが円滑に動作しなくなると共に、ホッパー部内での粉粒剤の流れが不安定になり、精度の高い散布量の調整が困難になる。
【0008】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものであり、特性が異なる粉剤と微粒剤の両方を円滑且つ精度良く散布することができる散布装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明の散布装置は、以下の構成を具備するものである。
散布対象の粉粒剤を収容するホッパー部と、該ホッパー部の下方に設置され粉粒剤を前記ホッパー部から下方に繰り出す繰り出し部を備え、前記繰り出し部は、散布穴を有する底板と、前記底板に対してスライド自在に設けられ、前記散布穴との重なり開口面積が調整自在となるシャッター穴を有するシャッター板とを備え、前記散布穴と前記シャッター穴は、粉剤散布用の穴と微粒剤散布用の穴がそれぞれ設けられており、粉剤散布用の前記散布穴と前記シャッター穴が重なり状態の時には、微粒剤散布用の前記散布穴と前記シャッター穴は重なり状態にはならず、微粒剤散布用の前記散布穴と前記シャッター穴が重なり状態の時には、粉剤散布用の前記散布穴と前記シャッター穴は重なり状態にならないことを特徴とする散布装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明の散布装置は、粉剤を散布する場合には、粉剤散布用の散布穴とシャッター穴の重なりで設定される開口面積で散布を行うことができ、微粒剤を散布する場合には、微粒剤散布用の散布穴とシャッター穴の重なりで設定される開口面積で散布を行うことができるので、開口面積を調整する散布穴とシャッター穴を粉剤散布用に適する形状と微粒剤散布用に適する形状にそれぞれ規定して、粉剤と微粒剤の両方で精度の高い散布量の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る散布装置の全体構成を示した説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る散布装置の繰り出し部を示した断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る散布装置の繰り出し部を説明する説明図((a)が底板の散布穴を示し、(b)がシャッター板のシャッター穴を示し、(c)が開閉シャッターの開閉穴を示している)である。
図4】本発明の実施形態に係る散布装置の開口面積の調整を示した説明図である((a)が微粒剤用の開口面積調整を示し、(b)が微粒剤用と粉剤用の散布穴が共に閉の状態を示し、(c)が粉剤用の開口面積調整を示している)。
図5】本発明の実施形態に係る散布装置の開口面積調整レバーを示した説明図である。
図6】本発明の実施形態に係る散布装置のホッパー部の内部構造を示した説明図である((a)が全体構成、(b)が通気孔形成部を示している)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1に示すように、散布装置1は、ホッパー部1Aと繰り出し部1Bを備えており、繰り出し部1Bの下方には散布ホース2が接続されている。ホッパー部1Aは、散布対象の粉粒剤を収容するホッパー3を備えている。繰り出し部1Bは、図2に示すような繰り出しロータ20を駆動する駆動部4を備え、下方に設けた複数の受け口5にそれぞれ散布ホース2が接続されている。受け口5には、開閉シャッター12がそれぞれ設けられている。
【0014】
図2に示すように、繰り出し部1Bは、ホッパ3の下方に設けられる底板10と、底板10の下方に設けられるシャッター板11と、シャッター板11の下方に設けられる開閉シャッター12を備えている。底板10には、受け口5に対応する位置に散布穴10Aが設けられ、また、シャッター板11にはシャッター穴11Aが設けられ、開閉シャッター12には開閉穴12Aが設けられている。
【0015】
シャッター板11は、底板10に対してスライド自在に設けられ、底板10の散布穴10Aとシャッター板11のシャッター穴11Aとの重なり開口が、ホッパー3内の粉粒剤を受け口5に送り出す開口になっている。そして、散布量を調整するために、シャッター板11のスライドによって散布穴10Aとシャッター穴11Aが重なる開口面積が可変に調整できるようになっている。
【0016】
開閉シャッター12は、シャッター板11のスライド方向とは交差する方向(直交する方向)にスライド自在に設けられており、開閉穴12Aが散布穴10Aの全体を収める位置が開状態になり、開閉穴12Aが散布穴10Aから外れた位置が閉状態になる。開閉シャッター12は、シャッター板11の下方に設けられる開閉シャッターガイド13によってスライド自在に支持されている。開閉シャッターガイド13は、散布穴10A全体を収め且つ受け口5に連通する開口13Aを備えている。
【0017】
そして、図3に示すように、底板10に設けられる散布穴10Aは、粉剤散布用の散布穴10A1と微粒剤散布用の散布穴10A2がそれぞれ別に設けられており、シャッター板11に設けられるシャッター穴11Aは、粉剤散布用のシャッター穴11A1と微粒剤散布用のシャッター穴11A2がそれぞれ別に設けられている。また、底板10に対してシャッター板11をスライドさせると、粉剤散布用の散布穴10A1と粉剤散布用のシャッター穴11A1が互いに重なり合い、微粒剤散布用の散布穴10A2と微粒剤散布用のシャッター穴11A2が互いに重なり合うように配備されている。なお、図3の矢印は、シャッター板11のスライド方向と開閉シャッター12のスライド方向を示している。
【0018】
図4は、底板10に対してシャッター板11をスライドさせた際の散布穴10A(10A1,10A2)とシャッター穴11A(11A1,11A2)の重なり状態を示している。先ず、図4(a)に示すような第1段階のシャッター板11のスライドでは、微粒剤散布用の散布穴10A2とシャッター穴11A2が重なり状態になり、その時には、粉剤散布用の散布穴10A1とシャッター穴11A1は重なり状態にならない。この状態では、斜線で示した開口面積がシャッター板11のスライドに応じて変化して、散布穴10A2とシャッター穴11A2の重なり度合いで開口面積が可変調整される。
【0019】
更にシャッター板11をスライドさせると、図4(b)に示すように、全ての散布穴10A(10A1,10A2)と全てのシャッター穴11A(11A1,11A2)が重ならない状態になる。そして、更にシャッター板11をスライドさせると、粉剤散布用の散布穴10A1とシャッター穴11A1が重なり状態になり、その時には、微粒剤散布用の散布穴10A2とシャッター穴11A2は重なり状態にならなくなる。
【0020】
ここで、散布穴10Aとシャッター穴11Aは、粉剤散布用と微粒剤散布用で異なる形状になっている。例えば、微粒剤散布用のシャッター穴11A2は、シャッター板11のスライド方向に対して傾斜した辺を有する形状になっている。これによって、図4(a)に示した微粒剤散布用の開口面積調整では、初期段階では開口面積ゼロから微小面積を開口して徐々に面積が大きくなるように調整できるようになっている。これに対して、粉剤散布用のシャッター穴11A1は、シャッター板11のスライド方向に対して平行な辺と直交する辺を有する形状になっている。これによって、図4(c)に示した粉剤散布用の開口面積調整では、初期段階から僅かなスライドで比較的大きい開口面積が確保できるようになっており、塊が生じ易い粉剤が調整初期段階から確実に開口を通過できるようになっている。
【0021】
シャッター板11のスライドは、図5に示したスライド調整レバー6を用いて調整することができる。これによると、シャッター板11のスライド範囲の前半と後半の一方で粉剤散布用の調整範囲(図示では「粉」と示した調整範囲)が設定されており、ここで、図4(c)に示した散布穴10A1とシャッター穴11A1が重なり状態になる調整を行っている。また、シャッター板11のスライド範囲の前半と後半の他方で、微粒剤散布用の調整範囲(図示では「微粒」と示した調整範囲)が設定され、図4(a)に示した散布穴10A2とシャッター穴11A2が重なり状態になる調整を行っている。このようなスライド調整レバー6を用いると、一つの調整部材で、粉剤散布用の調整と粒剤散布用の調整を切り換えることができるので、煩雑な切り換え操作が不要になる。
【0022】
図6は、散布装置の他の実施形態を示している。図6(a)に示した散布装置1は、粉粒剤と微粒剤を共に適正に散布するために、前述した特徴に加えて他の構成を備えている。この例では、ホッパー部1Aは、ホッパー3の内部に粉粒剤の流れを規制する振動板7を備えている。振動板7は、これを図示省略した駆動源で振動自在に設けることで、ホッパー3内に収容した粉剤の塊(ブリッジ)の崩す機能を有しており、これによって、繰り出しロータ20に供給される粉剤の流れを円滑にしている。
【0023】
このような振動板7を備えた散布装置1は、微粒剤を漏れなく散布するためにホッパー部1Aの気密性を高める構造を採用すると、振動板7の動きでホッパー3内の圧力が変動して、粉剤の流れが不安定になる問題が生じる。これに対して、この散布装置1は、振動板7の背面に対向したホッパー部1A(ホッパー3)の側面3Pに通気孔形成部Sを設けている。通気孔形成部Sは、図6(b)に示すように、複数の通気孔8を設けることで、ホッパー3内への空気の流入・流出を確保している。
【0024】
通気孔形成部Sが設けられるホッパー3の側面3Pは、その内側が振動板7の背面に対面していることで、粉剤や微粒剤の流動経路から隔離された領域になっている。このため、この側面3Pに設けた通気孔8からは粉剤や微粒剤が漏れ出にくい構造になっている。なお、微粒剤の漏れを確実に抑止したい場合には、微粒剤の散布時に通気孔8を塞ぐシャッター構造を別途設けるようにしても良い。
【0025】
このような散布装置1によると、粉剤を散布する際には、振動板7を振動させて塊(ブリッジ)を崩すことで、粉剤の流れを円滑にすることができ、その際、通気孔8から空気の出入りが生じることで、ホッパー8内の圧力変動が生じ難くなり、粉剤の流れを安定化することができる。また、微粒剤を散布する場合には、振動板7の振動は不要になるので、その振動を止めて散布することで、漏れの少ない安定した散布を行うことが可能になる。
【0026】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る散布装置1は、粉剤を散布する場合には、粉剤散布用の散布穴10A1とシャッター穴11A1の重なりで設定される開口面積で散布を行うことができ、微粒剤を散布する場合には、微粒剤散布用の散布穴10A2とシャッター穴11A2の重なりで設定される開口面積で散布を行うことができるので、開口面積を調整する散布穴10Aとシャッター穴11Aを粉剤散布用に適する形状と微粒剤散布用に適する形状にそれぞれ規定して、粉剤と微粒剤の両方で精度の高い散布量の調整を行うことができる。
【0027】
また、振動板7を設置した実施形態では、振動板7の背面に対面したホッパー3の側面3Pに通気孔8を設けているので、振動板7の振動によってホッパー3内の圧力が変動するのを抑止することができ、粉剤と微粒剤の両方を円滑且つ安定して散布させることができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1:散布装置,1A:ホッパー部,1B:繰り出し部,2:散布ホース,
3:ホッパー,3P:側面,
4:駆動部,5:受け口,6:スライド調整レバー,7:振動板,
8:通気孔,S:通気孔形成部,
10:底板,11:シャッター板,
12:開閉シャッター,12A:開閉穴,
10A,10A1,10A2:散布穴,
11A,11A1,11A2:シャッター穴,
13:開閉シャッターガイド,13A:開口,
20:繰り出しロータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6