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特開2023-25272アクティブマトリクスバックプレーンと併用するための高誘電定数を有する層状構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025272
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】アクティブマトリクスバックプレーンと併用するための高誘電定数を有する層状構造
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/16756 20190101AFI20230214BHJP
   G02F 1/167 20190101ALI20230214BHJP
   G02F 1/16766 20190101ALI20230214BHJP
   G02F 1/17 20190101ALI20230214BHJP
   G02F 1/19 20190101ALI20230214BHJP
   G02F 1/1681 20190101ALI20230214BHJP
   G02F 1/16757 20190101ALI20230214BHJP
【FI】
G02F1/16756
G02F1/167
G02F1/16766
G02F1/17
G02F1/19
G02F1/1681
G02F1/16757
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022200140
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2021564787の分割
【原出願日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】62/843,082
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ ヴィサーニ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジェイ. テルファー
(72)【発明者】
【氏名】コスタ ラダバック
(72)【発明者】
【氏名】ケネス アール. クラウンス
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ジェイ. オマリー
(72)【発明者】
【氏名】テック ピン シム
(57)【要約】
【課題】アクティブマトリクスバックプレーンと併用するための高誘電定数を有する層状構造の提供。
【解決手段】特に、電気泳動およびエレクトロウェッティング用途に関連するようなマイクロ電子デバイス内の誘電強度を制御することにおける使用のための層状誘電材料。具体的には、第1の原子層堆積(ALD)ステップ、スパッタリングステップ、および第2のALDステップの組み合わせが、化学的に堅牢でありほぼピンホールのない層をもたらす。誘電層は、電気泳動ディスプレイの透明共通電極上に配置されるか、もしくはピクセル化されたバックプレーン電極を被覆するか、または両方であり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願は、2019年5月3日に出願された米国仮出願第62/843,082号の優先権を主張する。本明細書において参照される全ての特許および特許出願は、参照することによってその全体として援用される。
【0002】
電気泳動ディスプレイは、通常、電気泳動材料の層と、電気泳動材料の対向する側に配置される少なくとも2つの他の層(これらの2つの層のうちの1つは、電極層である)とを備える。大部分のそのようなディスプレイでは、層は両方とも、電極層であり、電極層の一方または両方が、ディスプレイのピクセルを画定するようにパターン化される。典型的には、一方の電極層は、単一の連続電極の形態を有し、他方の電極層は、ピクセル電極のマトリクスにパターン化され、ピクセル電極の各々が、ディスプレイの1つのピクセルを画定する。ある例では、電気泳動媒体は、マイクロカプセル内にカプセル化され、マイクロカプセルは、酸化インジウムスズ(ITO)を備える可撓性基板上にコーティングされた結合剤、またはプラスチックフィルム(剥離性)上の同様の伝導性コーティング(最終的なディスプレイの1つの電極として作用する)中に分散され、カプセル/結合剤コーティングは、乾燥され、基板にしっかりと接着された電気泳動媒体のコヒーレント層を形成する。別個に、ピクセル電極のアレイと、ピクセル電極を駆動回路網に接続するための導体の適切な配列とを含有するバックプレーンが、調製される。最終的なディスプレイを形成するために、カプセル/結合剤層を上に有する基板は、積層接着剤を使用してバックプレーンに積層される。
【0003】
積層接着剤(単数または複数)および結合剤は、電気泳動粒子が予測可能に挙動するような特定の伝導性を有するように画策される。例えば、白黒電気泳動ディスプレイでは、ディスプレイが特定のグレー状態を達成するようにアドレス指定されるとき、グレー状態は、測定される反射率が経時的にドリフトすべきではない。しかしながら、実際には、層状スタックは、コンデンサとして作用し、光学状態は、貯蔵された電気エネルギーがディスプレイスタックから放電するにつれて、若干ドリフトする。そのような変動は、多くの場合、白黒電子リーダでは、知覚可能ではないが、ディザリングされた色を使用するフルカラー電気泳動ディスプレイ等の高度な用途では、知覚される画像は、容量放電に起因して著しく変動し得る。着色顔料が容量減衰に伴って偏移するにつれて、例えば薄橙色調は、緑色色相を帯び得、これは、多くの視認者にとって直ちに顕著となる。そのような限界を回避するために、電気泳動材料のスタック内の誘電静電容量を制御するためのより良好なツールを有することが有益であり得る。さらなる利点は、ピクセル電極等の伝導性材料と、加工中に接着性層または電気泳動媒体の中に導入され得る塩等の微量材料との間の電気化学反応を低減させることであり得る。
【0004】
電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体によって被られる電場は、駆動波形と、(a)ディスプレイを構成する種々の層の静電容量、および、より重要なこととして、(b)これらの層間の界面の静電容量とに依存する。ディスプレイが、駆動された後に接地されると、これらのコンデンサ内に貯蔵された電荷は、帰還電流が流動する静電容量および抵抗に依存する時間定数で消耗される。この時間定数が短すぎる場合、過度に高速な放電が、荷電顔料の運動をそれらが元々駆動された方向と反対方向に引き起こし得る。この現象は、「光学キックバック」と称される。この時間定数を制御することが可能であるように、ディスプレイ内の種々の層および界面、特に、ディスプレイのイオン伝導性層と駆動電極のうちの少なくとも1つとの間の界面の静電容量を画策することが好ましいであろう。
【0005】
光学的キックバックを克服するための1つの解決策は、いわゆる「DC平衡」波形を用いて電気泳動流体を駆動することである。米国特許第6,531,997号および第6,504,524号に議論されるように、ディスプレイを駆動するために使用される方法が、電気光学媒体を横断して、ゼロまたはほぼゼロの正味時間平均印加電場をもたらさない場合、問題に遭遇し、ディスプレイの作業寿命が低減させられ得る。電気光学媒体を横断してゼロ正味時間平均印加電場をもたらす駆動方法は、便宜的に、「直流平衡」または「DC平衡」と称される。DC平衡されない駆動波形は、典型的には、「DC非平衡」と称される。大部分の電気泳動ディスプレイは、動作寿命、およびキックバック等の光学効果についての懸念のため、DC平衡波形を用いて動作するように設計される。
【0006】
電気泳動ディスプレイに加え、誘電静電容量の制御もまた、エレクトロウェッティングディスプレイ、およびデジタルマイクロ流体工学等のエレクトロウェッティング用途において重要である(代替として、エレクトロウェッティングオン誘電体または「EWoD」と称される)。EWoD技法は、サンプル調製、アッセイ、および合成化学作用が、微量のサンプルおよび試薬の両方を用いて実施されることを可能にする。(エレクトロウェッティング技術の2012年版概説が、「Digital Microfluidics」、Annu. Rev. Anal. Chem.2012、5:413-40においてWheelerによって提供されており、これは、参照することによってその全体として本明細書に援用される)。そのようなEWoDデバイスは、区画化された電極を用いて構築され得、それによって、10~20個の電極が、直接、電圧コントローラを用いて駆動される。代替として、EWoDデバイスは、数千、数十万、またはさらに数百万個のアドレス指定可能電極を含むアクティブマトリクスデバイス(AM-EWoDとして知られるアクティブマトリクスEWoDとして知られる)を組み込み得る。アクティブマトリクスでは、電極は、典型的には、薄膜トランジスタ(TFT)によって制御され、液滴運動は、複数の液滴を制御し、同時分析プロセスを実行するためのかなりの自由度を可能にする汎用目的デバイスとしてAM-EWoDアレイが使用され得るように、コンピュータプログラム可能である。いくつかの事例では、EWoDシステムの電極は、窒化ケイ素等の高誘電定数材料でコーティングされ、ピクセルにおける局所的場強度を増加させ、したがって、より優れた液滴制御を促進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,531,997号明細書
【特許文献2】米国特許第6,504,524号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Wheeler,Digital Microfluidics,Annu. Rev. Anal. Chem.,2012,5:413-40
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は、半導体電子機器、電気光学ディスプレイ、およびデジタルマイクロ流体デバイスを含むいくつかの用途のために使用され得る好ましい誘電層構造体を開示する。説明される誘電層は、良好な表面平滑性を有し、ピンホールが殆どなく、かつ化学反応性が低減させられた高誘電定数を達成する。
【0010】
1つの事例では、本発明は、第1の層(障壁層として知られる)と、第2の層(厚い層として知られる)と、第3の層(キャッピング層として知られる)とを備える層状誘電体を含み、第2の層は、第1の層と第3の層との間に配置される。第1の層は、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムを含み、9nm~80nmの厚さを有する。第2の層は、酸化タンタルまたは酸化ハフニウムを含み、40nm~250nmの厚さを有する。第3の層は、酸化タンタルまたは酸化ハフニウムを含み、5nm~60nmの厚さを有する。ある実施形態では、第1の層は、Alを備え、第2の層は、HfOを備え、第3の層は、Taを備える。別の実施形態では、第1の層は、Alを備え、第2の層は、Taを備え、第3の層は、HfOを備える。典型的には、第1の層は、20~40nmの厚さであり、および/または第2の層は、100~150nmの厚さであり、および/または第3の層は、10~35nmの厚さである。いくつかの実施形態では、層状誘電体の誘電強度は、6MV/cmを上回る。
【0011】
本発明の誘電層は、基板、例えば、基板と層状誘電体との間に配置される複数の電極を含む基板上に堆積させられることができる。いくつかの実施形態では、電極は、アレイ内に配置され、各電極は、薄膜トランジスタ(TFT)と関連付けられる。いくつかの実施形態では、疎水性層が、第3の層上、すなわち、誘電スタックの上部に堆積させられる。いくつかの実施形態では、疎水性層は、フルオロポリマーであり、これは、10~50nmの厚さであり、スピンコーティングまたは別のコーティング方法を用いて堆積させられることができる。
【0012】
また、本明細書に説明されるものは、上記に説明されるタイプの層状誘電体を作成するための方法である。方法は、基板を提供することと、原子層堆積(ALD)を使用して第1の層を堆積させることと、スパッタリングを使用して第2の層を堆積させることと、ALDを使用して第3の層を堆積させることとを含む。(第1の層は、基板上に堆積させられ、第2の層は、第1の層上に堆積させられ、第3の層は、第2の層上に堆積させられる)。第1のALD層は、典型的には、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムを含み、9nm~80nmの厚さを有する。第2のスパッタリングされた層は、典型的には、酸化タンタルまたは酸化ハフニウムを含み、40nm~250nmの厚さを有する。第3のALD層は、典型的には、酸化タンタルまたは酸化ハフニウムを含み、5nm~60nmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、原子層堆積は、プラズマ支援原子層堆積を含む。いくつかの実施形態では、スパッタリングは、高周波マグネトロンスパッタリングを含む。いくつかの実施形態では、原子層堆積プロセスは、Al(CH、Ta[(N(CHNC(CH]、またはHf(N(CHの導入と、酸素プラズマの生成とを含む。いくつかの実施形態では、ALDプロセスは、1大気未満の圧力で完了される。いくつかの実施形態では、方法はさらに、疎水性材料を第3の層上にスピンコーティングすることを含む。
【0013】
本明細書に説明される誘電層は、例えば、接着剤成分、結合剤、プライマ、または電気泳動媒体と、駆動電極、例えば、アクティブマトリクスバックプレーンまたは上部電極、例えば、PET-ITOの層との間の電気化学反応を低減させることによって、ディスプレイの寿命を改良するために、電気泳動ディスプレイにおいて使用され得る。誘電層を電気泳動ディスプレイ内に意図的に含むことは、典型的には、減少させられた光学性能を引き起こすが、DC非平衡波形を用いて駆動されるディスプレイでは、容認可能光学性能が、更新間の電極の規則的能動接地を用いて達成され得ることが見出されている。画像内のピクセルに関する全体的更新時間は、(a)DC平衡パルスに費やされる時間が、要求されず、(b)DC平衡パルスが、意図される色と反対方向にディスプレイの光学状態をバイアスし、克服するための付加的波形時間を要求し得るため、減少させられることができる。DC非平衡波形は、残留電圧の蓄積につながるが、これは、駆動後接地の間に消耗されることができる。
【0014】
そのような誘電層は、電気泳動ディスプレイ、例えば、光透過性電極と、誘電層と、電気泳動層と、背面電極とを含む電気泳動ディスプレイの中に組み込まれることができる。典型的には、電気泳動層は、第1の光散乱粒子のセットと、第1の光散乱粒子のセットと異なる光学特性を有する粒子の2つの付加的セットとを含む。いくつかの実施形態では、誘電層は、10nmの厚さ~100nmの厚さ、すなわち、25nmの厚さ~75nmの厚さである。誘電層は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、または窒化ケイ素を備え得、誘電層は、原子層堆積とスパッタリングとの両方の組み合わせによって形成され得る。いくつかの実施形態では、電気泳動ディスプレイはまた、接着性層を備える。いくつかの実施形態では、電気泳動層は、4つのセットの荷電顔料粒子を含む。4つのセットの荷電顔料粒子は、非極性溶媒中に分散され得る。4つのセットの荷電顔料粒子は、白色、シアン色、マゼンタ色、および黄色の色、または白色、黒色、赤色、および黄色の色、または白色、青色、赤色、および黄色の色であり得る。いくつかの実施形態では、粒子のセットのうちの2つは、正に荷電させられ、粒子のセットのうちの2つは、負に荷電させられる。
【0015】
本発明は、加えて、DC非平衡波形を用いて電気泳動ディスプレイを駆動する方法を含む。方法は、電気泳動ディスプレイを提供することと、電圧源を提供することと、駆動部分および接地部分の両方を含むDC非平衡波形を用いて、電気泳動層を駆動することとを含む。電気泳動ディスプレイは、光透過性電極と、誘電層と、電気泳動層と、背面電極とを含む。いくつかの実施形態では、駆動部分は、第1の期間の間に行われ、接地部分は、第2の期間の間に行われ、第2の期間は、第1の期間と同じ長さまたはより長い。いくつかの実施形態では、誘電層は、10nmの厚さ~100nmの厚さ、すなわち、25nmの厚さ~75nmの厚さである。誘電層は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、または窒化ケイ素を含み得る。いくつかの実施形態では、誘電層は、原子層堆積とスパッタリングの両方を使用して形成される。いくつかの実施形態では、電気泳動ディスプレイは、加えて、接着性層を含む。いくつかの実施形態では、電気泳動層は、非極性溶媒中に分散される少なくとも2つの荷電顔料粒子を含み、例えば、電気泳動層は、4つの荷電顔料粒子を含み得る。4つの荷電顔料粒子を伴う実施形態では、粒子は、白色、シアン色、マゼンタ色、および黄色、または白色、黒色、赤色、および黄色、または白色、青色、赤色、および黄色であり得る。
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
層状誘電体であって、
酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムを含む第1の層であって、9nm~80nmの厚さを有する、第1の層と、
酸化タンタルまたは酸化ハフニウムを含む第2の層であって、40nm~250nmの厚さを有する、第2の層と、
酸化タンタルまたは酸化ハフニウムを含む第3の層であって、5nm~60nmの厚さを有する、第3の層と
を備え、前記第2の層は、前記第1の層と前記第3の層との間に配置される、層状誘電体。
(項目2)
前記第1の層は、Alを備え、前記第2の層は、HfOを備え、前記第3の層は、Taを備える、項目1に記載の層状誘電体。
(項目3)
前記第1の層は、Alを備え、前記第2の層は、Taを備え、前記第3の層は、HfOを備える、項目1に記載の層状誘電体。
(項目4)
前記第1の層は、20~40nmの厚さである、項目1に記載の層状誘電体。
(項目5)
前記第2の層は、100~150nmの厚さである、項目1に記載の層状誘電体。
(項目6)
前記第3の層は、10~35nmの厚さである、項目1に記載の層状誘電体。
(項目7)
項目1に記載の層状誘電体を含む、基板。
(項目8)
前記基板と項目1に記載の層状誘電体との間に配置される複数の電極をさらに備える、項目7に記載の基板。
(項目9)
前記電極は、アレイ内に配置され、各電極は、薄膜トランジスタ(TFT)と関連付けられる、項目8に記載の基板。
(項目10)
前記第3の層上に堆積させられた疎水性層をさらに備える、項目9に記載の基板。
(項目11)
前記疎水性層は、10~50nmの厚さである、項目10に記載の基板。
(項目12)
前記層状誘電体の誘電強度は、6MV/cmを上回る、項目1に記載の層状誘電体。
(項目13)
層状誘電体を作成する方法であって、
基板を提供することと、
原子層堆積を使用して、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムを含む第1の層を堆積させることであって、前記第1の層は、9nm~80nmの厚さを有する、ことと、
スパッタリングを使用して、酸化タンタルまたは酸化ハフニウムを含む第2の層を堆積させることであって、前記第2の層は、40nm~250nmの厚さを有する、ことと、
原子層堆積を使用して、酸化タンタルまたは酸化ハフニウムを含む第3の層を堆積させることであって、前記第3の層は、5nm~60nmの厚さを有する、ことと
を含む、方法。
(項目14)
電気泳動ディスプレイであって、
光透過性電極と、
誘電層と、
第1の光散乱粒子のセットと、粒子の2つの付加的なセットとを備え、前記粒子の2つの付加的なセットは、相互に、かつ前記第1の光散乱粒子のセットとも異なる光学特性を有する、電気泳動層と、
背面電極と、
を含む、電気泳動ディスプレイ。
(項目15)
前記誘電層は、10nmの厚さ~100nmの厚さである、項目14に記載の電気泳動ディスプレイ。
(項目16)
前記誘電層は、25nmの厚さ~75nmの厚さである、項目14に記載の電気泳動ディスプレイ。
(項目17)
前記誘電層は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、または窒化ケイ素を備える、項目14に記載の電気泳動ディスプレイ。
(項目18)
前記電気泳動層は、荷電顔料粒子の4つのセットを含む、項目14に記載の電気泳動ディスプレイ。
(項目19)
DC非平衡波形を用いて電気泳動ディスプレイを駆動する方法であって、
電気泳動ディスプレイを提供することであって、前記電気泳動ディスプレイは、
光透過性電極と、
誘電層と、
電気泳動層と、
背面電極と
を含む、ことと、
電圧源を提供することと、
駆動部分および接地部分の両方を含む、DC非平衡波形を用いて、前記電気泳動層を駆動することと
を含む、方法。
(項目20)
前記駆動部分は、第1の期間の間行われ、前記接地部分は、第2の期間の間行われ、前記第2の期間は、前記第1の期間と同じ長さまたはより長い、項目19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは、カプセル化された電気泳動媒体を有する誘電層の使用を図示する。
【0017】
図1B図1Bは、マイクロセル内に含有される電気泳動媒体を有する誘電層の使用を図示する。
【0018】
図1C図1Cは、カプセル化された電気泳動媒体を有する誘電層の使用を図示する。
【0019】
図1D図1Dは、マイクロセル内に含有される電気泳動媒体を有する誘電層の使用を図示する。
【0020】
図1E図1Eは、カプセル化された電気泳動媒体を有する誘電層の使用を図示する。
【0021】
図1F図1Fは、マイクロセル内に含有される電気泳動媒体を有する誘電層の使用を図示する。
【0022】
図2図2は、異なる電荷状態を隣接する電極上に提供することによる、隣接する電極間での水相液滴の移動を描写する。典型的には、誘電層および疎水性層は、ピクセル電極と液滴との間に配置される。
【0023】
図3図3は、EWoDデバイスがディスプレイのためのピクセル電極のアクティブマトリクスと同様に駆動されることができる方法を示す簡略化された回路図である。
【0024】
図4図4は、基板上の誘電層の実施形態を図示する。
【0025】
図5図5は、ピクセル電極を含む基板上の誘電層の実施形態を図示する。
【0026】
図6図6は、誘電層を作成するためのステップを図示する。
【0027】
図7図7は、本発明の誘電スタック内の3つの層の各々の原子間力顕微鏡検査画像を示す。
【0028】
図8図8は、図7のAFM画像を横断した点線における線形位置の関数としての例示的高さ測定を示す。
【0029】
図9A図9Aは、電気泳動ディスプレイ内の残留電圧応答に関するベースラインを計算するために使用されることができる第1のモデル回路を図示する。
【0030】
図9B図9Bは、1つ以上の誘電層を電気泳動ディスプレイに追加する利点を計算するために使用されることができる第2のモデル回路を図示する。
【0031】
図10A図10Aは、スタックが波形「スタック」を用いて駆動されるときの、図9Aのモデル回路の各構成要素C1-C4に関する計算された電圧応答である。
【0032】
図10B図10Bは、スタックが波形「スタック」を用いて駆動されるときの、図9Bのモデル回路の各構成要素C1-C5に関する計算された電圧応答である。
【0033】
図11A図11Aは、100%駆動/接地デューティサイクルを用いて駆動されるときの、種々のSiNi誘電層厚を有する試験セル上で測定された残留電圧を示す。
【0034】
図11B図11Bは、50%駆動/接地デューティサイクルを用いて駆動されるときの、種々のSiNi誘電層厚を有する試験セル上で測定された残留電圧を示す。
【0035】
図11C図11Cは、25%駆動/接地デューティサイクルを用いて駆動されるときの、種々のSiNi誘電層厚を有する試験セル上で測定された残留電圧を示す。
【0036】
図12図12は、誘電層を有する場合(遮断)または誘電層を有しない場合(非遮断)の正面電極を有する電気泳動ディスプレイ内の駆動電圧の関数として、測定された抵抗電流密度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本願は、高(k=5を上回る)誘電定数を有する層状誘電材料を作成するための構造体および方法を詳述する。本明細書に説明される層状誘電体は、例えば、電気泳動媒体と上部および底部電極との間の電場相互作用を修正するための優れた材料である。さらに、層状誘電体は、非常に少ないピンホールを有するため、結果として生じるデバイス内には、より少ない電流漏出およびより少ない不要な電気化学的性質が存在する。
【0038】
高k誘電材料の利点は、材料科学および電気工学の分野において評価されている。誘電定数kは、概して、電気エネルギーを電場内に貯蔵するための材料の能力を説明する。概して、材料の誘電定数が増加するにつれて、その材料を通過する電場の量は、減少する。したがって、高誘電定数材料は、電場を一定にし、集中させられた電場勾配を防止するために使用され、集中させられた電場勾配は、例えば、トランジスタ等の電気素子の不要な電気的切替を引き起こし得る。誘電層の連続性は、厚さまたは組成物の変動が、短絡回路および絶縁破壊のための経路を作成し得るため、非常に重要である。
【0039】
電気泳動ディスプレイと併用されるとき、誘電層は、電気泳動ディスプレイの透明共通電極を被覆するか、またはピクセル化されたバックプレーン電極を被覆するか、またはその両方であるように提供される。誘電層は、2つの機能を実施する。第1に、イオンおよび電子輸送に対する障壁として作用する。イオンおよび電子輸送を低減させることは、電極界面における低減させられた電気化学的性質をもたらし、それによって、ディスプレイが駆動されるときの電極材料の劣化を緩和する。第2に、誘電層は、ディスプレイ電極および伝導性ディスプレイ層を分離するため、ディスプレイ内における残留電圧の蓄積および放電を制御するために使用され得る容量素子を提供する。これらの2つの特徴は、特に、DC非平衡波形を用いて駆動されるディスプレイにおいて重要である。
【0040】
長年にわたって集中的研究および開発の対象である1つのタイプの電気光学ディスプレイは、複数の荷電粒子が電場の影響下で流体を通って移動する粒子ベースの電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較して、良好な明るさおよびコントラスト、広い視認角度、状態双安定性、および低電力消費の属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期画質に関する問題が、それらの広範な使用を妨げている。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降する傾向にあり、これらのディスプレイにとって不適正な有効寿命をもたらす。
【0041】
電気泳動ディスプレイは、通常、電気泳動材料の層と、電気泳動材料の対向する側に配置される少なくとも2つの他の層(これらの2つの層のうちの1つは、電極層である)とを備える。大部分のそのようなディスプレイでは、層は両方とも電極層であり、電極層の一方または両方は、ディスプレイのピクセルを画定するようにパターン化される。例えば、一方の電極層は、細長行電極にパターン化され、他方は、行電極に対して直角に延設される細長列電極にパターン化され得、ピクセルは、行電極および列電極の交点によって画定される。代替として、より一般には、一方の電極層は、単一の連続電極の形態を有し、他方の電極層は、ピクセル電極のマトリクスにパターン化され、ピクセル電極の各々が、ディスプレイの1つのピクセルを画定する。ディスプレイと別個であるスタイラス、印刷ヘッド、または同様の可動電極と併用するために意図される別のタイプの電気泳動ディスプレイでは、電気泳動層に隣接する層のうちの1つのみが、電極を備え、電気泳動層の反対側の層は、典型的には、可動電極が電気泳動層を損傷させることを防止するように意図される保護層である。
【0042】
本明細書で使用される電気泳動媒体は、色、反射性質もしくは吸収性質、電荷密度、および電場内の移動度(ゼータ電位として測定される)が変動する荷電粒子を含む。広帯域内または選択された波長のいずれかにおける光を吸収、散乱、または反射させる粒子は、本明細書では、着色粒子または顔料粒子と称される。色素または光結晶等の光を吸収または反射させる(不溶性着色材料を意味するこの用語の厳密な意味での)顔料以外の種々の材料も、本発明の電気泳動媒体およびディスプレイにおいて使用され得る。例えば、電気泳動媒体は、流体と、流体中に分散される複数の第1の粒子および複数の第2の粒子であって、第1の粒子および第2の粒子は、反対極性の電荷を担持し、第1の粒子は、光散乱粒子であり、第2の粒子は、減法三原色のうちの1つを有する、複数の第1の粒子および複数の第2の粒子と、流体中に分散される複数の第3の粒子および複数の第4の粒子であって、第3の粒子および第4の粒子は、反対極性の電荷を担持し、第3の粒子および第4の粒子は各々、相互におよび第2の粒子からも異なる減法三原色を有し、第3の粒子および第4の粒子によって形成される凝集体を分離するために要求される電場は、任意の他の2つのタイプの粒子から形成される凝集体を分離するために要求されるものを上回る、複数の第3および複数の第4の粒子とを含み得る。
【0043】
本発明の電気泳動媒体は、例えば、上記に述べられたE INKおよびMITの特許および出願に説明されるような先行技術電気泳動媒体において使用される添加剤のいずれかを含有し得る。したがって、例えば、本発明の電気泳動媒体は、典型的には、種々の粒子上の電荷を制御するための少なくとも1つの電荷制御剤を備え、流体は、その中に約20,000超の平均分子量を有し、ディスプレイの双安定性を改良するために本質的に粒子上で非吸収性であるポリマーを溶解または分散させ得、これは、前述の米国特許第7,170,670号に説明される。
【0044】
一実施形態では、本発明は、典型的に白色である光散乱粒子と、3つの実質的に非光散乱粒子とを使用する。当然ながら、完全光散乱粒子または完全非光散乱粒子のようなものは存在せず、光散乱粒子の最小光散乱度、および本発明の電気泳動において使用される実質的に非光散乱粒子中で許容可能な最大許容可能光散乱度は、使用される正確な顔料、それらの色、および理想的に所望される色からのある程度の逸脱を許容するユーザの能力または用途等の要因に応じて、幾分か変動し得る。顔料の散乱特性および吸収特性は、白色および暗い背景に対する適切なマトリクスまたは液体中に分散される顔料のサンプルの拡散反射率の測定によって査定され得る。そのような測定からの結果は、当技術分野において周知のいくつかのモデル、例えば、1次元Kubelka-Munk処理に従って解釈され得る。本発明では、顔料と1.55未満の屈折率の液体とを備える厚さ1μmの層内に体積比15%でほぼ等方的に顔料が分散される場合、少なくとも5%の黒色背景にわたって測定されると、白色顔料が550nmにおいて拡散反射率を呈することが好ましい。黄色顔料、マゼンタ色顔料、およびシアン色顔料は、好ましくは、同一条件下で2.5%未満の黒色背景にわたって測定されると、それぞれ、650nm、650nm、および450nmにおいて拡散反射率を呈する。(黄色顔料、マゼンタ色顔料、およびシアン色顔料の測定のために上記で選定された波長は、これらの顔料による最小限の吸収のスペクトル領域に対応する。)これらの基準を満たす着色顔料は、本明細書中で以降、「非散乱」または「実質的に非光散乱」と称される。好適な粒子の具体例は、米国特許第9,921,451号に開示され、これは、参照することによって本明細書に援用される。
【0045】
4つのセットの反射性粒子、または3つもしくは4つのセットの異なる反射性粒子(すなわち、米国特許第9,922,603号および第10,032,419号(参照することによって本明細書に援用される)に説明されるもの等)を伴う1つの吸収性粒子を含む代替粒子セットもまた、使用され得る。例えば、白色粒子は、TiO、ZrO、ZnO、Al、Sb、BaSO、PbSO、または同等物等の無機顔料から形成され得る一方、黒色粒子は、CI pigment black26もしくは28または同等物(例えば、マンガンフェライト黒色スピネルまたは銅クロマイトブラックスピネル)またはカーボンブラックから形成され得る。第3の/第4の/第5のタイプの粒子は、赤色、緑色、青色、マゼンタ色、シアン色、または黄色等の色であり得る。このタイプの粒子のための顔料は、限定ではないが、CI pigment PR254、PR122、PR149、PG36、PG58、PG7、PB28、PB15:3、PY138、PY150、PY155、またはPY20を含み得る。具体的例は、Clariant Hostaperm Red D3G70-EDS、Hostaperm Pink E-EDS、PV Fast Red D3G、Hostaperm Red D3G70、Hostaperm Blue B2G-EDS、Hostaperm Yellow H4G-EDS、Hostaperm Green GNX、BASF Irgazine Red L3630、Cinquasia Red L4100HD、およびIrgazin Red L3660HD、Sun Chemical Phthalocyanine Blue、Phthalocyanine Green、Diarylide Yellow、またはDiarylide AAOT Yellowを含む。
【0046】
典型的電気泳動ディスプレイは、例えば、米国特許第7,119,772号に説明されるように、インパルス平衡波形(DC平衡波形として知られる)を用いて駆動される。インパルス平衡の目的は、残留電圧の蓄積を限定し、ディスプレイ電極を電気化学損傷から保護することである。しかしながら、DC平衡を提供することは、特に、例えば米国特許第10,276,109号に開示されるもの等のカラーディスプレイの場合、波形を著しく損なわせ得る。図1に関して、米国特許第10,276,109号に議論されるように、カラーディスプレイ波形は、典型的には、DC平衡を全体的更新波形に提供する第1相を含む。すなわち、第1相は、画像更新のために必要とされる色遷移を達成するために使用される波形の残りの組み合わせられた正味インパルスと等しくかつ反対である正味インパルスを送達する。しかしながら、波形の色レンダリング部分は、加えて、第1相の位相によって誘発される顔料の状態を克服しなければならない。結果として、顔料は、中立状態から色更新を開始するのではなく、むしろ、最初に、それらの所望の最終位置からほぼ反対方向に駆動している。結果として、総波形は、非常に長くなり得る(約数秒)。
【0047】
多粒子システム、すなわち、本明細書に説明されるようなものを駆動するために、駆動方法は、典型的には、電圧をカラー電気泳動ディスプレイの第1の電極および第2の電極に印加することを含み、第1の電極は、ディスプレイの視認表面を形成し、ディスプレイは、+VH、+VL、0、-VL、および-VHの電圧差を、それぞれ、第1の電極と第2の電極との間に印加することが可能な電圧制御手段を有し、その場合、以下となる。
+V>+V>0>-V>-V
駆動方法は、(a)電極間に、+Vまたは-Vのいずれかであり第4の粒子を第1の電極に向かって駆動する極性の一連の第1のパルスを印加することによって、視認表面において、第4の粒子の色と、第4の粒子および第2の粒子の混合物の色とを交互に表示することであって、該一連の第1のパルスは、+Vまたは-Vであり第1のパルスと反対極性であるがより長い持続時間である第2のパルスと交互させる、ことと、(b)電極間に、+Vまたは-Vのいずれかであり第3の粒子を第1の電極に向かって駆動する極性の一連の第3のパルスを印加することによって、視認表面において、第3の粒子の色と、第3の粒子および第2の粒子の混合物の色とを交互に表示することであって、該一連の第3のパルスは、+Vまたは-Vであり第3のパルスと反対極性であるがより長い持続時間の第4のパルスと交互する、こととを含み得る。
【0048】
誘電層が作製される材料は、有機物または無機物であり得る。好ましくは、材料は、イオンおよび電子に対して不透過性であり、高誘電強度(少なくとも約10V/μm)を有するべきである。誘電層の厚さは、下記にさらに詳細に議論されるように、その誘電定数に依存する。誘電層が作製され得る材料の例は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化ハフニウム、および同等物等)、および、有機材料(パリレンまたは他のポリマー化合物等)である。1つを上回る材料の組み合わせが、使用され得、誘電層は、異なる材料であり得る1つを上回る下位層を備え得る。
【0049】
上記に議論されるように、誘電層は、ディスプレイを通る電気化学電流の遮断通路に加え、また、ディスプレイが駆動されるときの残留電圧の蓄積を限定することができるコンデンサとしても作用する。さらに、正しい駆動/接地領域と結合されると、電気泳動ディスプレイは、全体的色域における限界損失のみを伴って、色波形のためのはるかに高速の更新を達成することができる。
【0050】
特定の誘電層が、図1A図1Fに示されるように、電気泳動媒体に対して種々の場所において電気泳動ディスプレイの中に組み込まれ得る。電気泳動ディスプレイ(101、102、103、104、105、106)は、典型的には、上部透明電極110と、電気泳動媒体120と、多くの場合薄膜トランジスタ(TFT)を用いて制御されるピクセルのアクティブマトリクスのピクセル電極である底部電極130とを含む。電気泳動媒体120は、少なくとも1つの電気泳動粒子121を含有するが、しかしながら、第2の電気泳動粒子122もしくは第3の電気泳動粒子123またはより多くのものが、実行可能である。電気泳動媒体120は、典型的には、マイクロカプセル126またはマイクロセル127の壁によって、そのように区画化される。誘電層140は、層のいずれかに隣接して配置されることができるが、しかしながら、典型的には、電極層(110または130)に隣接する。1つ以上の誘電層140が、所与の電気泳動ディスプレイ(105、106)内に存在し得るが、しかしながら、1つのみの層が、より一般的である。誘電層140は、下記に説明されるタイプであり得る。ディスプレイスタック全体が、典型的には、基板150上に配置され、これは、剛性または可撓性であり得る。ディスプレイ(101、102、103、104、105、106)はまた、典型的には、保護層160を含み、これは、単に、上部電極110を損傷から保護し得るか、またはディスプレイ(101、102)全体を包囲し、水等の浸入を防止し得る。電気泳動ディスプレイ(101、102、103、104、105、106)はまた、必要に応じて、接着性層170と、シール層180とを含み得る。いくつかの実施形態では、誘電層140は、図1Cおよび図1Dに示されるディスプレイにおけるように、電極層(110、130)と接着性層170との間に配置される。いくつかの実施形態では、誘電層140は、図1Eおよび図1Fに示されるように、電気泳動媒体120の上方および下方に配置される。接着性層170は、随意に、誘電層140と電気泳動媒体との間に配置され得る。いくつかの実施形態(104、106)では、接着性層170は、電極層110への接着力を改良するために、プライマ成分を含むこともあるし、または別個のプライマ層(図1A図1Fに示されない)が、使用されることもある。(電気泳動ディスプレイおよび構成要素部品の構造、顔料、接着剤、電極材料等は、米国特許第6,922,276号、第7,002,728号、第7,072,095号、第7,116,318号、第7,715,088号、および第7,839,564号(全て、参照することによってその全体として本明細書に援用される)等のE Ink Corporationによって公開された多くの特許および特許出願に説明される。
【0051】
本発明の誘電層はまた、エレクトロウェッティングディスプレイまたは「ラボオンチップ」マイクロ流体デバイスのために使用されるようなエレクトロウェッティングオン誘電体(EWoD)デバイスの中に組み込まれ得る。EWoDデバイスの基本動作は、図2の断面図に図示される。EWoD200は、油202と、少なくとも1つの水性液滴204とで充填されたセルを含む。セル間隙は、典型的には、50~200μmの範囲内であるが、間隙は、より大きいこともできる。基本構成では、図2に示されるように、複数の推進電極230が、1つの基板上に配置され、単一の上部電極210が、反対表面上に配置される。セルは、加えて、油層に接触する表面上の疎水性コーティング207、および、推進電極230と疎水性コーティング207との間の誘電層240を含む。(上側基板もまた、誘電層を含み得るが、図2には示されない)。疎水性層は、液滴が表面を湿潤させることを防止する。電圧差が隣接する電極間に印加されないとき、液滴は、楕円体形状を維持し、疎水性表面(油および疎水性層)との接触を最小限にする。液滴は、表面を湿潤させないため、それらは表面を汚染させる可能性、または、他の液滴と相互作用する可能性が、より低い(その挙動が所望されるときを除く)。
【0052】
誘電機能および疎水性機能の両方のために単一層を有することが可能であるが、そのような層は、典型的には、(ピンホールを防止するために)厚い無機層を要求し、厚い向き層は、結果として生じる低誘電定数を有し、それによって、液滴移動のために、100V超を要求する。低電圧作動を達成するために、高静電容量のための薄い誘電層を有し、ピンホールがなく、薄い有機疎水性層によって冠着されることがより好ましい。この組み合わせを用いることで、従来のTFTアレイによって供給され得る範囲内である+/-10~+/-50Vの範囲内の電圧を伴うエレクトロウェッティング動作を有することが可能である。いくつかの実施形態では、疎水性層は、フルオロポリマー、例えば、ペルフルオロポリマー、例えば、TEFLON-PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、TEFLON-AF(非晶質ポリテトラフルオロエチレンコポリマー)、CYTOP(ポリ(ペルフルオロブテニルビニルエーテル)、またはFULUOROPEL(ペルフルオロアルキルコポリマー)を備える。米国特許第9,714,463号等に説明されるような他のより新しい疎水性コーティングもまた使用され得る。典型的には、疎水性層は、スピンコーティングによって誘電層上にコーティングされるが、しかしながら、スロットコーティングもしくはダイコーティング、またはスプレーコーティング等の他の堆積方法もまた、使用され得る。
【0053】
電圧差が隣接する電極間に印加されると、1つの電極上の電圧は、誘電/液滴界面における液滴中の反対電荷を誘引し、液滴は、図2に図示されるように、この電極に向かって移動する。容認可能液滴推進のために必要とされる電圧は、誘電総および疎水性層の性質に依存する。AC駆動が、種々の電気化学物質による液滴、誘電体、および電極の劣化を低減させるために使用される。EWoDのための動作周波数は、100Hz~1MHzの範囲内であることができるが、1kHzまたはそれを下回るより低い周波数も、限定された動作速度を有するTFTと併用するために好ましい。
【0054】
図2に示されるように、上部電極210は、単一伝導性層であり、単一導電性層は、電極上で電圧を切り替えるために使用されるTFTからの容量キックバックに起因する推進電極230上のオフセット電圧を考慮するために、通常、ゼロボルトまたは共通電圧値(VCOM)に設定される(図3参照)。上部電極はまた、液体を横断して電圧を増加させるために印加される方形波を有することができる。そのような配列は、上部プレート電圧210がTFTによって供給される電圧に対して付加的であるため、より低い推進電圧がTFT接続推進電極230のために使用されることを可能にする。
【0055】
図3に示されるように、推進電極のアクティブマトリクスは、電気泳動ディスプレイまたは液晶ディスプレイ内のアクティブマトリクスと同様に、データラインおよびゲート(選択)ラインを用いて駆動されるように配列されることができる。ゲート(選択)ラインは、1度に1ラインずつのアドレス指定のために走査される一方、データラインは、エレクトロウェッティング動作のために推進電極に輸送されるべき電圧を搬送する。移動が必要とされない場合、または液滴が推進電極から離れるように移動するように意図される場合、0Vが、その(非標的)推進電極に印加される。液滴が推進電極に向かって移動するように意図される場合、AC電圧が、その(標的)推進電極に印加される。
【0056】
本発明の誘電層440のある実施形態が、図4に示され、基板450上に配置される。誘電層は、第1の[障壁]層441と、第2の[厚い]層442と、第3の[キャッピング]層443とを含む。第1の層441は、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムを含み、9nm~80nmの厚さを有する。第2の層442は、酸化タンタルまたは酸化ハフニウムを含み、40nm~250nmの厚さを有する。第3の層443は、酸化タンタルまたは酸化ハフニウムを含み、5nm~60nmの厚さを有する。典型的には、第2の層および第3の層は、異なる材料を備え、例えば、第2の層は、主に、酸化ハフニウムを備え得る一方、第3の層は、主に、酸化タンタルを備える。代替として、第2の層は、主に、酸化タンタルを備え得る一方、第3の層は、主に、酸化ハフニウムを備える。好ましい実施形態では、第1の層は、酸化アルミニウムである。好ましい実施形態では、第1の層は、20~40nmの厚さである一方、第2の層は、100~150nmの厚さであり、第3の層は、10~35nmの厚さである。種々の層の厚さは、限定ではないが、走査電子顕微鏡検査、イオンビーム後方散乱、X線散乱、透過型電子顕微鏡検査、および偏光解析法を含む種々の技法を用いて測定されることができる。結果として生じる誘電層440は、平坦であり、ピンホールがなく、化学的耐性を有する。
【0057】
図4に示されるような誘電層440は、第1の層441および第1の層を堆積させるために要求される条件(下記に議論される)と互換性がある任意のタイプの基板上に直接コーティングされることができる。誘電層440は、例えば、図5に示されるように、アクティブマトリクスのピクセル電極430上にコーティングされ得る。誘電層440は、印刷回路基板または他の微小加工された構造上にコーティングされ得る。加えて、第3の層443は、図2に関して上記に議論されるように、エレクトロウェッティング用途における使用のための疎水性層407でコーティングされ得る。誘電層440と疎水性層407とのそのような組み合わせは、合理的に薄い、すなわち、600nm未満の厚さ、例えば、400nm未満の厚さ、例えば、300nm未満の厚さであることが好ましい。疎水性コーティングを伴う3層誘電スタックの下界は、60nmを上回る厚さ、例えば、100nmを上回る厚さ、例えば、150nmを上回る厚さである。
【0058】
本発明の誘電層を作製するための方法が、図6に関して説明される。初期ステップ610では、基板が提供され、その上に誘電スタックがコーティングされる。基板は、典型的には、コーティングに先立って、例えば、エタノールまたはイソプロピルアルコールで清浄される。基板は、下記に説明される原子層堆積(ALD)およびスパッタリングステップの間材料が安定することを前提として、任意の材料であり得る。例えば、基板は、印刷回路基板、コーティングされたガラス、例えば、ITOコーティングされたガラス、またはガラスもしくは他の基材材料上に微小加工されたアクティブマトリクスTFTバックプレーンであり得る。次のステップ620は、原子層堆積、典型的には、プラズマ支援ALDまたは(熱)水蒸気支援ALDを使用して、第1の層を基板上に堆積させることである。例えば、酸化アルミニウムの第1の層が、約180℃の基板温度および低圧(100mbar未満)において、酸素プラズマと併せて、トリメチルアルミニウム(Al(CH)またはTa[(N(CHNC(CH]を使用して加工され得る。代替として、酸化アルミニウムの層は、トリメチルアルミニウム-水プロセスを使用して堆積させられ得る。原子層堆積は、0.1nm/分を上回る率、例えば、0.2nm/分またはそれを上回る率で行われ得る。酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムの最終的な厚さは、典型的には、9nm~80nmの厚さである。これらのALDプロセスの詳細は、Bentおよび共同研究者によって、「A brief review of atomic layer deposition:from fundamentals to applications」, Materials Today,(2014),
vol.17,No.5,p.236-46(参照することによってその全体として本明細書に援用される)において説明されている。
【0059】
第1のALD層が基板に付与されると、結果として生じるコーティングされた基板は、マグネトロンスパッタリング等のスパッタリングでコーティングされ、第2のより厚い層を第3のステップ630において生成する。典型的には、第2のより厚い層は、主に、酸化タンタルまたは酸化ハフニウムである。スパッタリングプロセスは、混合された酸素-アルゴン大気中で、室温で行われ、スパッタリング標的は、タンタルもしくはハフニウムの化学量論的酸化物、または金属タンタルまたは金属ハフニウムの標的である。結果として生じるスパッタリングされた酸化タンタルまたは酸化ハフニウムの層は、40nm~250nmの厚さを有する。マグネトロンスパッタリングが好ましいが、イオンスパッタリングまたはプラズマスパッタリング等の他の形態のスパッタリングもまた、使用され得る。スパッタリングは、0.5nm/分を上回る率、例えば、1nm/分またはそれを上回る率、例えば、2nm/分またはそれを上回る率で行われ得る。これらのプロセスの詳細は、KellyおよびArnellによる「Magnetron sputtering: a review of recent developments and applications」,Vacuum 56(2000)159-172(参照することによってその全体として本明細書に援用される)において詳述されている。スパッタリングプロセスは、典型的には、別個のスパッタリングチャンバ内で実施されるが、本発明の方法はまた、原子層堆積およびスパッタリング堆積の両方が可能な単一反応器内でも達成され得る。
【0060】
スパッタリングステップ630が完了された後、ALD層およびスパッタリングされた層を伴う結果として生じる基板は、第2の原子層堆積ステップ640を受ける。典型的には、この第2のALDステップは、プラズマ支援ALDを用いて、Ta[(N(CHNC(CH]またはHf(N(CHを使用して行われ、5nm~60nmの厚さの酸化タンタルまたは酸化ハフニウムの層を生成する。第1のALDステップ620のように、第2のALDステップ640もまた、150~190℃の基板温度および低圧(100mbar未満)で行われる。この第2のALDステップ640の完了後、高kスタックを伴う基板(650)が、生成される。最終的な高kコーティングは、典型的には、100~700nmの総厚であり、6MV/cmまたはそれを上回る組み合わせられた誘電強度を伴う。高kスタックはまた、以下の例に示されるように、著しく平滑であり、ほぼピンホールがない。
【0061】
図6に明示的に示されないが、最終的な高kスタックは、例えば、上記に説明されるように、スピンコーティングを使用して、疎水性層でコーティングされ得る。疎水性コーティングを伴うそのような組み合わせられた高kスタックは、特に、エレクトロウェッティングディスプレイおよびマイクロ流体用途のため等、エレクトロウェッティング用途のために有用である。
【実施例0062】
Al/Ta/Alスタックの加工および評価
高k誘電スタックが、図6に関して上記に説明される技法を使用して加工された。ITOコーティングされたガラス(Sigma-Aldrich)の初期基板が、約115分の総堆積時間および180℃の基板温度を伴って、Veeco/CNT Fiji F200を使用する酸素プラズマALDを使用して、25nmのAlでコーティングされた。堆積させられたAlを伴う基板が、反応器から除去され、Bruker Dimension Icon原子間力顕微鏡検査ツールを使用して撮像された。AFM器具によって捕捉された画像が、図7の右下に示される。AFM画像を横断した点線における例示的表面粗度測定は、図8の下のグラフに示される。予期されるように、第1のALDステップは、高さ変動性を殆ど伴わない表面を達成する。
【0063】
25nmのAlの堆積およびAFMを用いた撮像に続いて、基板は、マグネトロンスパッタリングチャンバKurt Lesker LAB Line Sputter
Deposition Tool内に設置され、70nmのTaが、約30分にわたって、酸素-アルゴン環境内で金属タンタルスパッタリング標的を使用して堆積させられた。スパッタリングが完了された後、結果として生じるコーティングされた基板は、再び、図7の右中央の画像および図8の中央のグラフに示されるように、AFMを用いて撮像された。着目すべきこととして、表面変動は、スパッタリング後、はるかに大きく、隆起が、コーティングされた表面を横断して出現し始めた。しかしながら、スパッタリングを使用して、誘電層は、前のALDステップの時間の半分未満でほぼ3倍厚く作製された。
【0064】
最後に、スパッタリングステップ後、基板は、ALD機械に戻され、それに応じて、Alプロセスが繰り返され(但し、約70分のみの間)、図7に示されるように、Al/Ta/Alスタック(すなわち、25nmの基部層と、70nmの中央層と、15nmのキャッピング層とを有する)をもたらした。結果として生じる3層スタックは、次いで、AFMを用いて撮像され、図7の右上に示される画像を生成した。再び、例示的線プロファイル(破線)が、図8における上のグラフとして示される。着目すべきこととして、スパッタリングプロセスからのある量の表面粗度は、第2のALD層の適用で平滑化されたが、しかしながら、スパッタリングプロセスによって生成される隆起のうちのいくつかは、依然として、存在する。撮像後、結果として生じるAl/Ta/Alスタックは、硫酸銅溶液を用いて銅を誘電層上に電鍍することによって、ピンホールに関して評価された。スタックは、電鍍後、非常にわずかのみ漏れ電流を示し、ピンホールが誘電層内に非常にわずかしか存在しないことを示唆し、これは、加えて、光顕微鏡検査(図示せず)によって検証された。
【0065】
本明細書に説明されるような誘電層を伴わない場合(図9A)と伴う場合(図9B)との両方の電気泳動ディスプレイの応答をモデル化することが可能である。図9Aおよび図9Bに示されるように、図1Bにおけるように、電気泳動媒体と上部電極との間に誘電層を含む、電気泳動ディスプレイの「スタック」は、一連のVoigt要素としてモデル化されることができ、すなわち、並列配列である抵抗(R)および静電容量(C)の両方を有し、それによって、スタックがある波形(図10Aおよび図10Bにおける「スタック」)によって駆動されるときの、各構成要素の電圧応答の計算を可能にする。単純線形モデルが、実際の電気泳動ディスプレイの電気挙動の極度の単純化であることは自明であるが、それらは、特に、ディスプレイがインパルス平衡されない波形を用いて駆動されるとき、誘電層を電気泳動ディスプレイ中に組み込む利点を実証するために有益である。
【0066】
ここで図9Aおよび図9Bを参照すると、低誘電定数(約2)を伴う溶媒を備える典型的電気泳動流体(以降、「内相」)は、10~25ミクロンの範囲内の厚さの区画の中に組み込まれるとき、0.02~5nF/cmの範囲内のバルク静電容量「C1」と、約1~10MΩ・cmの抵抗「R1」とを有する。電気泳動流体とディスプレイを構成する他の層(集合的に、「外相」と称される)との間の界面における静電容量は、推定することがより困難であるが、2つのコンデンサを直列に組み合わせることによって近似され得、各々の誘電体の厚さは、各媒体(すなわち、内部および外相)内のデバイ長によって近似される。これは、約10~100nF/cmのC2に関する推定値を与える。境界を横断したイオンの通過に対応する界面の抵抗R2もまた、推定することが困難である。この抵抗が、高すぎる場合、ディスプレイは、完全な電気(およびおそらくは、光学)キックバック(更新が完了した後、ピクセルが前の状態に半分戻る現象)を示す。典型的ディスプレイを駆動するときの電流測定値との最良の合致を与えるR2の値は、外相の抵抗とほぼ同一であり、すなわち、1~10MΩ・cmの範囲内である。外相のバルク静電容量C3は、可動イオンを含有する誘電定数約10のポリマー材料を備えると仮定すると、約0.1~10nF/cmであると推定される。外相の抵抗R3は、1~10MΩ・cmの範囲内である。最後に、電極境界における界面静電容量C4は、ドープされたポリマー外相内のデバイ長から推定される。その伝導性は、内相のものとほぼ同一であるが、ポリマーの粘度が電気泳動溶媒のものより数桁高いので、電荷担体の移動度は、はるかに低い。結果として、イオンの濃度は、内相内より外相内においてはるかに高く、その結果、デバイ長は、はるかに短くなければならない。界面の静電容量は、2~20μF/cmの範囲内、すなわち、システム内の任意の他の静電容量よりはるかに大きいと推定される。この界面における電気化学反応は、図9AにおいてR4として図式的に例証される「抵抗」経路を生成し得ることが可能性として考えられるが、これは、単純抵抗器ではない。この経路は、上記に説明されるように電極の最終的劣化につながり得るので、望ましくない。電気泳動ディスプレイ内の電気化学電流を緩和するための方法は、例えば、米国特許第9,726,957号(参照することによってその全体として本明細書に援用される)に詳細に議論される。
【0067】
画像を生成するために要求される時間(更新時間として知られる)は、コンデンサC2を充電するためのRC時間定数に関連し、これは、典型的には、1秒未満である。しかしながら、C4を充電するためのRC時間定数は、これよりはるかに長く、典型的には、100秒の桁であり、したがって、C4は、C2が完全に充電される時間において、部分的にのみ充電される。したがって、このモデルでは、C4を横断した電圧は、ディスプレイ内に貯蔵された「残留電圧」の近似値となる。DC平衡波形では、この残留電圧は、更新の過程の間、大部分が減少させられる。しかしながら、非DC平衡波形では、残留電圧は、減少させられず、システム上に蓄積することができる。C4を充電および放電させるためのRC時間は、非常に長いため、ディスプレイを接地することによってC4コンデンサを完全に放電させることは、実践的ではない。さらに悪いことに、図9AにおけるR4として示される電気化学反応によるC4の放電の可能性が存在する場合、更新後に残留電圧によって引き起こされる非駆動ディスプレイ内の電極の低速電気化学劣化も存在し得る。そのような電気化学的性質は、不可逆的であり、性能の劣化、最終的には、ディスプレイの故障につながる。
【0068】
図9Bは、本発明による静電容量C5を提供する追加された誘電層を収容するようにモデルが調節され得る方法を示す。抵抗要素R4は、電極界面の表現から逸失されていることが分かる。誘電層は、電極を外相から分離するので、ここでは、電子輸送の可能性が存在しない。コンデンサC4およびC5は、直列であり、したがって、残留電圧の蓄積に関するRC定数は、コンデンサC5を欠いている図9Aに示される場合より低い。残留電圧の蓄積および放電に関するRC時間定数は、C5が含まれるときにはより短いので、残留電圧を合理的時間内で直接放電させるためにより実践的となる。そのような放電は、例えば、米国特許第10,475,396号(参照することによってその全体として本明細書に援用される)に説明される方法および回路を用いて遂行されることができる。
【0069】
図10Aおよび図10Bは、典型的色形成波形を使用して、図9Aおよび図9Bのモデル回路内で種々のVoigt要素を横断して計算された電圧を示す。波形「スタック」を用いた駆動後の各構成要素における平衡残留電圧が示される。(V1は、R1およびC1を有する構成要素1に対応する等)図10Aおよび図10Bの曲線を比較すると、モデルは、誘電層を含むモデルシステムでは、はるかに短い放電時間、すなわち、モデル回路2(図9B)に関する3.5秒の放電およびモデル回路1(図9A)の8秒の放電を用いて、同一の長期残留電圧が概ね取得されることができることを予測する。
【実施例0070】
誘電層に起因した色の色域の変化
モデル回路に図示されるように、誘電層への静電容量C5の追加は、若干、ディスプレイの結像層内の電圧を変化させ、達成され得る色の数に影響を及ぼすことが予期され得る。この電圧降下に起因して喪失される色の量は、ディスプレイの背面電極にわたって異なる厚さの窒化ケイ素層を含む4つの顔料(CMYW)試験セルを使用して、実験的に検証された。試験セルの詳細は、米国特許第9,921,451号(参照することによってその全体として本明細書に援用される)に見出されることができる。結果は、下記の表1に示される。
表1.試験セル内の4粒子(CMYW)電気泳動媒体の色域への窒化ケイ素誘電体の影響。
【表1】
【0071】
表1は、測定された厚さに基づく誘電体の推定された静電容量と、一連の試験波形を印加し、較正された色センサを用いて測定することによって測定されるようなディスプレイの色域とを示す。色域は、誘電体がない場合に最大であったが、窒化ケイ素が10~50nmの範囲内であるとき、大部分の目的のために好適であった。
【0072】
望ましくない電気化学的性質およびキックバックの尤度を査定するために、残留電圧蓄積が、表1の試験ディスプレイ内で測定された。残留電圧蓄積を査定するために、各ディスプレイは、一連のインパルスを用いてアドレス指定され、それによって、正の電圧パルスが、時間T_Vにわたって、試験ディスプレイに印加され、その後、デバイスは、時間T_groundにわたって接地された。インパルス時間および接地時間の相対的量が、デューティサイクルとして表され得る。接地期間後、各試験ディスプレイは、時間T_floatにわたって浮動状態にされた。T_floatの間、ディスプレイ電極を横断した電圧が、測定された。このパターンは、複数回繰り返され、電子試験機器を用いて、試験ディスプレイ毎に記録された。
【0073】
図11A図11Cは、印加された試験電圧が1VでありT_Vが1秒であった種々の接地時間に関する結果を示す。図11Aでは、接地時間は、ゼロ、すなわち、100%デューティサイクルであった。図11Bでは、接地時間は、1秒、すなわち、50%デューティサイクルであった。図11Cでは、接地時間は、3秒、すなわち、25%デューティサイクルであった。波形毎に、測定された残留電圧が、グラフ上に曲線として提示される。念のため、より急峻な曲線は、SiNi誘電層に対応する一方、より緩慢な曲線は、SiNi誘電層を有しない試験ディスプレイに対応する。さらに、図11Bおよび図11Cを見ると、最薄SiNi層が最高残留電圧をもたらし、最厚SiNi層が最低残留電圧をもたらしたという点で、測定された残留電圧レベルは、SiNi層の厚さに概ね対応した。着目すべきこととして、25%デューティサイクル(駆動/接地)に関して、50nmSiNi層および75nmSiNi層は両方とも、100秒以内に非遮断層を下回る残留電圧を達成した。さらに、残留電圧の放電が印加される電圧パルス間の接地によって可能にされると、最終平衡残留電圧は、最厚誘電層(すなわち、図9Bの最小静電容量C5)を有するモジュール内で最低となる。この結果は、正しい駆動/接地デューティサイクルが正しい誘電層と結合されると、電気泳動応答時間および全体的残留電圧の両方が同時に減少させられることができることを示唆するので、驚くべきことである。
【実施例0074】
電気泳動試験セル内の電気化学劣化の低減
電気泳動媒体(上記)の応答を改良することに加え、試験ディスプレイの寿命への追加される誘電層の影響もまた、評価された。約8”対角線の2つの試験ディスプレイが、実施例2のCMYW4粒子電気泳動媒体を使用して調製された。制御は、商業用電子リーダに見出されるような標準的アクティブマトリクスTFTバックプレーンを使用した。他の試験ディスプレイでは、ピクセル電極は、30nmの酸化タンタルでコーティングされた。酸化タンタル層の連続性は、図12のグラフに示されるように、完璧ではなかった。酸化タンタルが、ピンホールまたは瑕疵がない場合、酸化タンタル「遮断」バックプレーンに関して、著しく少ない抵抗電流密度が存在し得ることが予期され得る。ディスプレイは、(a)3秒にわたって30V、その後、(b)20msにわたって接地され、次いで、(c)6秒にわたって浮動するシーケンスを使用する高度なDC非平衡の方法で駆動された。この試験サイクルは、数回繰り返された。酸化タンタルコーティングの欠点にもかかわらず、4時間の駆動後、ディスプレイが横並びで比較されたとき、試験パターンにおける白色状態の「黄化」に顕著な差異があった。黄化の量における差異は、さらに4時間の駆動後、より顕著であった。したがって、高度なDC非平衡の波形の存在下では、酸化タンタルコーティングされたバックプレーンを有するディスプレイは、より少ない電気化学的性質を受ける証拠を示した。
【0075】
したがって、堅牢かつ非反応性の高k誘電層が、形成されることができる。多数の変更および修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、上記に説明される本発明の具体的に詳述される実施形態において行われ得ることが、当業者に明白となるであろう。故に、前述の説明の全体は、限定的意味ではなく、例証的意味で解釈されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12
【外国語明細書】