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  • 特開-空調システム 図1
  • 特開-空調システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025275
(43)【公開日】2023-02-21
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20230214BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20230214BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20230214BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20230214BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20230214BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
F24F5/00 K
F24F11/74
F24F11/46
F24F7/08 101Z
F24F7/10 A
F24F7/10 101Z
F24F13/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200297
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2018095091の分割
【原出願日】2018-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井守 紀昭
(72)【発明者】
【氏名】名倉 宏明
(72)【発明者】
【氏名】牧野 雅一
(72)【発明者】
【氏名】三谷 勝章
(57)【要約】
【課題】室内の温度勾配を緩和させる。
【解決手段】空調システム50は、上側スラブ26と天井パネル27との間に形成された天井裏空間28の屋内空気を吸い込み、外気を吸い込み、吸い込んだ屋内空気と外気の間で熱交換し、天井裏空間28から吸い込んだ屋内空気を屋外に排出し、天井パネル27と床パネル22との間の室31に外気を排出する供給する換気装置61と、天井裏空間28の空気を吸い込んで送風する送風機71と、送風機71から、床パネル22と下側スラブ21との間に形成された床下空間23までダクティングされ、送風機71によって送風される空気を床下空間23まで送るサプライダクト73と、を備える。室31と天井裏空間28を連通する通気口42が天井パネル27に設けられている。室31と床下空間23を連通する吹出口45が床パネル22に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側スラブとその下方に設置された天井パネルとの間に形成された天井裏空間内の屋内空気を吸い込み、屋外の外気を吸い込み、前記屋内空気と前記外気の間で熱交換し、前記屋内空気を前記屋外に排出し、前記天井パネルとその下方に敷設された床パネルとの間に形成された室に前記外気を供給する換気装置と、
前記天井裏空間内の屋内空気を吸い込んで送風する送風機と、
前記送風機から、前記床パネルとその下方に設けられた下側スラブとの間に形成された床下空間までダクティングされ、前記送風機によって送風される空気を前記床下空間まで送るサプライダクトと、
前記室内の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出温度に基づいて前記送風機を制御する制御装置と、
を備え、
前記室と前記天井裏空間を連通する通気口が前記天井パネルに設けられ、
前記室と前記床下空間を連通する吹出口が前記床パネルに設けられている
空調システム。
【請求項2】
前記吹出口に設けられ、前記吹出口から吹き出される気流の向きを調整する気流制御器を更に備える請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記通気口が、前記天井パネルに設けられた照明器具に近接して設けられている
請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記送風機が前記天井裏空間内に設置され、
前記サプライダクトが前記天井裏空間から前記室の柱に沿って前記床下空間までダクティングされている
請求項1から3の何れか一項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井パネルとその下方の床パネルとの間の室を空調する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、床下吹き出し空調システムが開示されている。具体的には、天井裏の空気が空調機に吸い込まれ、吸い込まれた空気が空調機によって調和され、調和された空気が空調機から床下空間まで送られて、床の吹出口から室内に吹き出される。天井には通気口が設けられ、室内の空気が通気口を通って天井裏に流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-213777号公報
【特許文献2】特開2000-266364号公報
【特許文献3】特開2011-80739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、室内では、温かい空気が上昇し、冷たい空気が下降する。そのため、室内には温度勾配が生じて、室の温度は上から下に向かって次第に低下する。従って、床近傍の温度が低く、室内にいる者は足下で寒く感じる。
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は室内の温度勾配を緩和させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、空調システムは、上側スラブとその下方に設置された天井パネルとの間に形成された天井裏空間内の屋内空気を吸い込み、屋外の外気を吸い込み、吸い込んだ屋内空気と外気の間で熱交換し、前記屋内空気を前記屋外に排出し、前記天井パネルとその下方に敷設された床パネルとの間に形成された室に前記外気を供給する換気装置と、前記天井裏空間内の屋内空気を吸い込んで送風する送風機と、前記送風機から、前記床パネルとその下方に設けられた下側スラブとの間に形成された床下空間までダクティングされ、前記送風機によって送風される空気を前記床下空間まで送るサプライダクトと、を備え、前記室と前記天井裏空間を連通する通気口が前記天井パネルに設けられ、前記室と前記床下空間を連通する吹出口が前記床パネルに設けられている。
【0007】
以上によれば、天井裏空間内の空気が送風機及びサプライダクトによって床パネルの吹出口へ送風されて、吹出口から室に吹き出される。そのため、冷気が床パネル近傍に滞留しにくい。
また、室内の空気が通気口を通って天井裏空間に流れ込む。それゆえ、空気が天井裏空間から床下空間、室の順に床下空間及び室を経由して、天井裏空間へ流れるように循環する。そのため、室内の温度勾配が緩和される。
外気が換気装置によって室内に供給され、天井裏空間内の空気が換気装置によって吸い込まれると、天井裏空間と室との間で気圧差が生じる。そのため、天井パネル近傍の温かい空気が天井裏空間に流れ込み、その空気が送風機によって吹出口から室へ吹き出される。それゆえ、空気の循環が生じやすく、室内の温度勾配がより緩和される。
【0008】
好ましくは、前記空調システムが、前記吹出口に設けられ、前記吹出口から吹き出される気流の向きを調整する気流制御器を更に備える。
【0009】
以上によれば、室内の温度環境に応じて気流の向きを調整することができる。
【0010】
好ましくは、前記通気口が前記天井パネルに設けられた照明器具に近接して設けられている。
【0011】
以上によれば、通気口が目立たず、室のデザイン性が向上する。
【0012】
好ましくは、前記送風機が前記天井裏空間に設置され、前記サプライダクトが前記天井裏空間から前記室の柱に沿って前記床下空間までダクティングされている。
【0013】
以上によれば、サプライダクトが障害物とならない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、室内の温度勾配が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】建物の所定の階の断面図である。
図2】前記所定の階の天井裏の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、建物10の断面図である。図2は、階11の天井裏空間28を図1の矢印Aの方向に見て示した平面図である。本実施形態では、建物10は多層建物であるものとして、図1には或る階11の断面を示す。この階11は下側のスラブ21と上側のスラブ26との間に設けられており、階11と下階12が下側スラブ21によって仕切られ、階11と上階13が上側スラブ26によって仕切られている。下側スラブ21の上方には床パネル22が敷設されており、下側スラブ21と床パネル22との間に床下空間23が形成されている。上側スラブ26の下方には天井パネル27が設置されており、上側スラブ26と天井パネル27との間には天井裏空間28が形成されている。床パネル22上には壁パネル39が立設されており、床パネル22と天井パネル27との間の空間が壁パネル39によって室31と機械室32と廊下と便所等に区画されている。
【0017】
室31内の天井パネル27には、複数の照明器具41及び複数の吹出口43が設けられている。照明器具41は天井パネル27に沿って格子状又は千鳥格子状に配列されている。吹出口43は天井パネル27に沿って格子状又は千鳥格子状に配列されている。室31内の天井パネル27には、特に各照明器具41の近傍には、室31と天井裏空間28を連通する通気口42が設けられている。通気口42が照明器具41の近傍に設けられていることで、通気口42が目立たないため、高いデザイン性の室31を提供することができる。
【0018】
室31内の床パネル22には、室31と床下空間23を連通する複数の吹出口45が設けられている。これら吹出口45は床パネル22に沿って格子状又は千鳥格子状に配列されている。各吹出口45には手動調整型の気流制御器45aが設けられ、吹出口45から吹き出される気流の向きを気流制御器45aによって調整できる。例えば、気流を上昇気流に調整したり、放射状気流に調整したりできる。放射状気流とは、吹出口45を中心として放射状に水平方向に広がる気流をいう。上昇気流とは、吹出口45から上方に流れる気流をいう。なお、床パネル22は、室31内の者の好みに応じて吹出口45の位置を変更できるように設けられていてもよい。また、吹出口45は個別に開閉できるように設けられていてもよい。
【0019】
この階11には、空調システム50が設置されている。空調システム50は、上述の気流制御器45aに加えて、複数の空調機51、換気装置61、ダクト62~65、送風機71、リターンダクト72及びサプライダクト73を備える。
【0020】
空調機51は天井埋込カセット型の空調機である。つまり、空調機51は、天井パネル27の開口から天井裏空間28に埋め込まれた状態で天井パネル27に取り付けられているとともに、上側スラブ26から吊り下げられている。これら空調機51は天井パネル27に沿って格子状又は千鳥格子状に配列されている。
空調機51は、空調した空気、つまり冷房空気又は暖房空気を室31に吹き出す。空調機51によって室31内が冷房又は暖房される。なお例えば空調機51の設定温度は、冷房時に26℃であり、暖房時に22℃であるが、これに限るものではない。
【0021】
空調機51の冷房運転、暖房運転及び停止に関わらず、室31及び天井裏空間28には温度勾配が生じる。つまり、室31内及び天井裏空間28内の温度は下から上に向かって次第に高くなる。また、天井裏空間28内の温度は室31内の温度よりも高く、天井裏空間28と室31の温度差は例えば2℃程度ある。また、空調機51が運転中に発熱するので、天井裏空間28内の温度は室31内の床パネル22付近の気温よりも一層高くなる。
【0022】
なお、空調機51は天井埋込カセット型に限るものではなく、例えば天井吊型空調機又はビルトイン型空調機に変更してもよい。天井吊型空調機とは、天井パネル27に吊り下げられた空調機をいう。ビルトイン型空調機とは、吹出口及び吸込口が天井パネル27に設けられ、空調機本体が別の箇所(例えば天井裏空間28内)に設置され、ダクトが空調機本体から天井裏空間28を通じて吹出口及び吸込口までダクティングされているものをいう。天井吊型空調機又はビルトイン型空調機であっても、天井裏空間28内の温度は室31内の温度よりも高い。
【0023】
換気装置61は機械室32に設置されている。
換気装置61の外気取入口61aにダクト62の一端が接続され、ダクト62が換気装置61から屋外までダクティングされて、他端が屋外にて開口する。
換気装置61の新鮮空気吐出口61bにダクト63の一端が接続されている。ダクト63は、換気装置61から天井裏空間28を経由して、天井裏空間28にて分岐し、天井パネル27の吹出口43までダクティングされている。
換気装置61の屋内空気取入口61cにダクト64の一端が接続され、そのダクト64が換気装置61から天井裏空間28までダクティングされて、他端が天井裏空間28にて開口する。
換気装置61の屋内空気吐出口61dにダクト65の一端が接続され、そのダクト65が換気装置61から屋外までダクティングされて、他端が屋外にて開口する。
【0024】
換気装置61は、ダクト62を通じて屋外の新鮮空気を吸い込むとともに、ダクト64を通じて天井裏空間28内の空気(以下、屋内空気という。)を吸い込む。換気装置61は、吸い込んだ新鮮空気と屋内空気との間で熱交換を行うとともに、吸い込んだ新鮮空気を濾過する。換気装置61は、ダクト63及び吹出口43を通じて熱交換済みの新鮮空気を室31に供給するとともに、ダクト65を通じて熱交換済みの屋内空気を屋外に排出する。換気装置61によって新鮮空気と屋内空気との間の熱交換が行われるため、つまり冷房時には新鮮な外気が冷やされて室31内に供給されるため、また暖房時には新鮮な外気が温められて室31内に供給されるため、空調機51の消費電力を抑えることができる。
【0025】
新鮮空気が換気装置61によって室31に供給され、天井裏空間28内の空気が換気装置61によって吸い込まれると、天井裏空間28が室31よりも低圧となる。そのため、室31内の空気が通気口42を通じて天井裏空間28に流れ込む。このような気流が生じるため、季節に関わらず、更に空調機51の運転・停止に関わらず、天井裏空間28が室31よりも高温となるような温度勾配が生じる。
【0026】
送風機71は例えばシロッコファンであるが、他の種類のファンであってもよい。送風機71は、上側スラブ26から吊り下げられた状態で天井裏空間28に設置されている。図2に示すように、これら送風機71は、建物10の1スパンの間隔に等しいピッチで配列されている。建物10の1スパンとは、建物10の隣り合う柱14の間隔のことをいう。隣り合う柱14の間隔は例えば7.2mであるので、送風機71が7.2mのピッチで配列されている。
【0027】
送風機71の風量は特に限定するものではないが、全ての送風機71の風量が等しくてもよいし、送風機71は個別に風量が設定されてもよい。また、送風機71は季節・時間に関わらず一定風量で運転される。例えば建物10のスパンが7.2 mである場合には、送風機71の風量は500 m3/hである。なお、室31内の温度、特に床パネル22近傍の温度が温度センサによって検出され、送風機71が検出温度に基づいて制御機器によってフィードバック制御されてもよい。
【0028】
天井裏空間28にはリターンダクト72が設置されており、リターンダクト72の一端が天井裏空間28にて開放され、リターンダクト72の他端が送風機71に接続されている。リターンダクト72の一端には、金網等のフィルタ72aが設けられている。
送風機71にはサプライダクト73の一端が接続されている。サプライダクト73は、隣り合う2本の柱14に向けて2方向に分岐し(図2に示す符号73a,73b参照)、天井裏空間28から柱14に沿って床下空間23までダクティングされている。床下空間23では、サプライダクト73の他端が吹出ユニット74に接続されている。1本の柱14につき、1台の送風機71からダクティングされたサプライダクト73の分岐した部分73aと、その隣りの送風機71からダクティングされたサプライダクト73の分岐した部分73bが設置される。
【0029】
送風機71は、リターンダクト72を通じて天井裏空間28内の空気を吸い込むとともに、吸い込んだ空気をサプライダクト73へ送風する。その空気がサプライダクト73によって送風機71から吹出ユニット74まで送られて、吹出ユニット74から床下空間23に吹き出される。吹出ユニット74から吹き出された空気は比較的温度の高い天井裏空間28内の空気であるため、その空気によって床下空間23が温められる。更に、吹出ユニット74から吹き出された空気は、床下空間23中で流動して、床下空間23から吹出口45を通って室31内に吹き出される。
【0030】
送風機71の運転によって空気が天井裏空間28から床下空間23、室31の順に床下空間23及び室31を経由して、天井裏空間28へ流れるように循環する。
【0031】
ここで、床パネル22近傍を効率的に昇温させる場合には、気流制御器45aを手動で操作して、吹出口45から吹き出された気流を放射状気流に調整する。一方、室31内の空気を拡散させる場合には、吹出口45から吹き出された気流を上昇気流に調整する。
【0032】
以上の実施の形態は、以下のような有利な効果をもたらす。
送風機71による空気の循環が生じることによって、室31内の温度勾配が緩和されるとともに、冷気が床パネル22近傍に滞留しにくい。そのため、夏季の冷房時及び冬季の暖房時の何れであっても、冷房や寒さの苦手な者でも快適に感じるとともに、足下の冷えを感じにくい。
【0033】
吹出口45から吹き出された空気によって吹出口45近傍が温められる。そのため、冷房や寒さの苦手な者が吹出口45の近くに居ると、その者が寒さを感じにくい。
【0034】
冷房や寒さの苦手な者が寒さを感じにくい一方で、暑さの苦手な者が吹出口45からの気流を直接浴びると、快適な涼しさを感じる。これは、吹出口45から吹き出された空気と室31内の空気の温度差が例えば2℃程度であることから、吹出口45から吹き出された空気とそれを直接浴びた者との間で対流熱伝達が生じるためである。
【0035】
換気装置61の運転によって天井裏空間28と室31の間で気圧差が生じ、天井パネル27近傍の温かい空気が通気口42を介して天井裏空間28に流れ込み、その空気が送風機71によって吹出口45から吹き出される。それゆえ、空気の循環が生じやすく、室31内の温度勾配がより緩和される。
【0036】
サプライダクト73が柱14に沿ってダクティングされているので、サプライダクト73が障害物とならない。
【符号の説明】
【0037】
21…下側スラブ
22…床パネル
23…床下空間
26…上側スラブ
27…天井パネル
28…天井裏空間
31…室
41…照明器具
42…通気口
45…吹出口
45a…気流制御器
50…空調システム
61…換気装置
71…送風機
73…サプライダクト
図1
図2