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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025345
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】メカノフォア及びその製造法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/40 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
C08F4/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130499
(22)【出願日】2021-08-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「動的共有結合化学に基づく力学多機能高分子材料の創出」「力学多機能高分子材料に関する理論研究と最適化」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】巳上 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】杉田 一
(72)【発明者】
【氏名】ルー イー
(72)【発明者】
【氏名】青木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大塚 英幸
【テーマコード(参考)】
4J015
【Fターム(参考)】
4J015CA00
4J015CA15
(57)【要約】
【課題】本発明は、力学機能後にも着色しない新しいメカノフォア及び該メカノフォアからなる高分子を提供する。
【解決手段】一般式(1)

で表される重合開始剤。該開始剤に係る高分子は力学機能材料として機能する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるメカノフォア含有重合開始剤。
【化1】

(式中、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から4のアルコキシ基、炭素数1から4のペルフルオロアルキル基、1つ以上の炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1から4のアルコキシカルボニル基、炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基又は炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアシル基を表す。nは1から16の整数を表す。Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)又はNHを表す。Xは下記一般式(2)で表されるアシル基である。
【化2】

(式中、Yはハロゲン原子を表す。R及びRは炭素数1から4のアルキル基を表す。)
【請求項2】
及びRが水素原子又は炭素数1から4のアルキル基であり、Rが水素原子、メチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基であり、Yが酸素原子であり、R及びRがメチル基であり、Yが臭素原子であり、nが2である請求項1に記載のメカノフォア含有重合開始剤。
【請求項3】
一般式(3)で表されるメカノフォア含有重合開始剤中間体。
【化3】

(式中、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から4のアルコキシ基、炭素数1から4のペルフルオロアルキル基、1つ以上の炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1から4のアルコキシカルボニル基、炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基又は炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアシル基を表す。nは1から16の整数を表す。Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)又はNHを表す。)
【請求項4】
及びRが、水素原子又は炭素数1から4のアルキル基であり、Rが水素原子、メチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基であり、Yが酸素原子あり、nが2である請求項3に記載のメカノフォア含有重合開始剤中間体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のメカノフォア含有重合開始剤とビニルモノマーを含んでなる組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物を用いて製造することを特徴とする高分子の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカノフォアを含む開始剤、中間体及び高分子の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
物質に作用するマイクロスケールの力学刺激が起源となって機能を発揮する材料を力学機能材料と呼び、接着、剥離、自己修復、破断、低摩擦などの応用を中心に実用化が始まっている(非特許文献1)。力学刺激によって単結合が均等開裂してラジカル分子を二分子発生する分子、すなわちメカノフォア(力学応答性の分子骨格)を組み込んだ力学機能材料は自己修復性や自己強靭化などを示す材料として注目されている。
しかしながら、更なる用途範囲の拡大にはメカノフォアの性能向上が必須であり、例えば耐熱特性及び発光特性などの性能の改善が求められている。
ジアリールビベンゾフラノン(DABBF)骨格がメカノフォアとして有用であることを開示している(非特許文献2)。DABBFは力学機能後に青色の着色を示すため、力学機能が発現したことを示すプローブとして有用であるが、高分子材料の着色はUXの低下を招くことがあり、着色を示さないメカノフォアの開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Chemical Society Reviews,50巻,4100-4140ページ,2021年.
【非特許文献2】Angewandte Chemie International Edition,54巻,6168-6172ページ,2015年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、力学機能後にも着色しない新しいメカノフォア及び該メカノフォアからなる高分子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ジシアノアリールアセテート化合物が、無着色メカノフォアとして有用であることを見出した。本発明のジシアノアリールアセテート骨格からなるメカノフォア及びその中間体はこれまでに報告例はなく、該メカノフォアを含む高分子の力学機能特性も合わせて見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は以下の要旨から構成される。
[要旨1]
一般式(1)で表されるメカノフォア含有重合開始剤。
【化1】

(式中、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から4のアルコキシ基、炭素数1から4のペルフルオロアルキル基、1つ以上の炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1から4のアルコキシカルボニル基、炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基又は炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアシル基を表す。nは1から16の整数を表す。Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)又はNHを表す。Xは下記一般式(2)で表されるアシル基である。
【化2】

(式中、Yはハロゲン原子を表す。R及びRは炭素数1から4のアルキル基を表す。)
[要旨2]
一般式(3)で表されるメカノフォア含有重合開始剤中間体。
【化3】

(式中、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から4のアルコキシ基、炭素数1から4のペルフルオロアルキル基、1つ以上の炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1から4のアルコキシカルボニル基、炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基又は炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアシル基を表す。nは1から16の整数を表す。Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)又はNHを表す。)
[要旨3]
要旨1又は2に記載のメカノフォア含有重合開始剤とビニルモノマーを含んでなる組成物。
[要旨4]
要旨3に記載の組成物を用いて製造することを特徴とする高分子の製造法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のメカノフォア含有重合開始剤はビニルモノマーとの重合により力学機能特性を有した本発明に係る高分子を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
、R、R、R、及びRで表される炭素数1から4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルプロピル基、tert-ブチル基等の分岐アルキル基、シクロプロピル基又はシクロブチル基等の環状アルキル基を例示することができる。
、及びRで表されるアルキル基としては、本発明のメカノフォア含有重合開始剤中間体(「以下、本発明の中間体ともいう。」)の耐熱性が高い点で、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基が好ましく、メチル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基がより好ましく、メチル基又はtert-ブチル基がさらに好ましく、tert-ブチル基がことさら好ましい。
で表されるアルキル基としては、本発明の中間体の耐熱性が高い点で、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基が好ましく、水素原子、メチル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基がより好ましく、水素原子、メチル基又はtert-ブチル基がさらに好ましく、水素原子又はメチル基がことさら好ましい。
、及びRで表される炭素数1から4のアルキル基としては、本発明の高分子の製造効率が高い点で、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基又はイソプロピル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、メチル基がことさら好ましい。
、R、及びRで表される炭素数1から4のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の直鎖アルコキシ基、イソプロポキシ基、1-(2-メチルプロピル)オキシ基、2-ブチルオキシ基、tert-ブトキシ基等の分岐アルコキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基等の環状アルコキシ基を例示することができる。本発明の中間体の耐熱性が高い点で、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基又はブトキシ基がより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が更に好ましく、メトキシ基がことさら好ましい。
、R、及びRで表される炭素数1から4のペルフルオロアルキル基としてはペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基などを例示することができる。
、R、及びRで表される1つ以上の炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基としては、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-ジプロピルアミノ基、N,N-ジブチルアミノ基などを例示することができる。本発明の中間体の耐熱性が高い点で、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、又はN,N-ジブチルアミノ基が好ましく、N,N-ジメチルアミノ基、又はN,N-ジエチルアミノ基がより好ましく、N,N-ジメチルアミノ基がさらに好ましい。
、R、及びRで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を例示することができる。
、R、Rで表される炭素数1から4のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブトキシカルボニル基等を例示することができる。
、R、及びRで表される炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいカルバモイル基としては、N-メチルカルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、N-プロピルカルバモイル基、N-ブチルカルバモイル基、N、N-ジメチルカルバモイル基、N、N-ジエチルカルバモイル基等を例示することができる。
、R、及びRで表される炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアシル基としてはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基等を例示することができる。
本発明のメカノフォア重合開始剤の重合開始効率が高い点でR、及びRで表される基として、水素原子、炭素数1から4のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、tert-ブチル基がより好ましく、水素原子、tert-ブチル基がさらに好ましい。
で表される基として、本発明の中間体の耐熱性が高い点で、水素原子、炭素数1から4のアルキル基、炭素数1から4のアルコキシ基、炭素数1から4のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、シアノ基、又は炭素数1から4のアルコキシカルボニル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、メトキシ基、又はニトロ基がより好ましく、水素原子、メチル基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、メトキシ基、又はニトロ基がさらに好ましく、水素原子、メチル基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、又はメトキシ基がことさら好ましい。
nは1から16の整数を表す。本発明に係る高分子の製造効率が高い点で、1から10の整数が好ましく、2から6の整数がより好ましく、2から4の整数がさら好ましく、2であることがことさら好ましい。
は酸素原子(O)、硫黄原子(S)又はNHを表す。本発明に係る高分子の製造効率が高い点で、O、NHが好ましく、Oがより好ましい。
としては下記式(2-1)から(2-16)などを例示することができる。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

本発明に係る高分子の製造効率が高い点で、式(2-1)、又は式(2-5)から式(2-16)が好ましく、式(2-9)から式(2-16)がより好ましく、式(2-9)、又は式(2-13)がさらに好ましく、式(2-9)がことさら好ましい。
一般式(1)で表される本発明のメカノフォア含有重合開始剤としては、下記式(1-1)から(1-17)などを例示することができる。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

一般式(1)として、本発明に係る高分子の製造効率が高い点で、式(1-1)から式(1-17)が好ましく、式(1-1)から式(1-6)、式(1-11)、式(1-12)、又は式(1-15)から式(1-17)がより好ましく、式(1-1)から式(1-3)、式(1-6)、式(1-11)、又は式(1-17)がさらに好ましく、式(1-1)から式(1-3)、式(1-6)、又は式(1-11)がことさら好ましい。
一般式(3)で表される本発明の中間体としては、下記式(3-1)から(3-17)などを例示することができる。
【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

一般式(3)として、本発明に係る高分子の製造効率が高い点で、式(3-1)から式(3-17)が好ましく、式(3-1)から式(3-6)、式(3-11)、式(3-12)、又は式(3-15)から式(3-17)がより好ましく、式(3-1)から式(3-3)、式(3-6)、式(3-11)、又は式(3-17)がさらに好ましく、式(3-1)から式(3-3)、式(3-6)、又は式(3-11)がことさら好ましい。
次に本発明のメカノフォア含有重合開始剤及び中間体の製造方法に関して説明する。本発明の重合開始剤及びその中間体は、以下に示す製造工程(A)から(F)を経て製造できる。
製造工程(A)
【0009】
【化26】

(式中、Yは前記と同じ意味を表す。)
製造工程(A)は酸存在下でシアノ酢酸に一般式(100-2)で表されるアルコールを作用させることで一般式(100-3)で表されるアルコール化合物を製造する工程である。
製造工程(B)
【0010】
【化27】

(式中、Yは前記と同じ意味を表す。)
製造工程(B)は酸存在下で一般式(100-3)で表されるアルコール化合物にジヒドロピランを作用させることで一般式(100-4)で表されるシアノ化合物を製造する工程である。
製造工程(C)
【0011】
【化28】

(式中、Y、R、R、及びRは前記と同じ意味を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
製造工程(C)はパラジウム触媒存在下で一般式(100-4)で表されるシアノ化合物に一般式(100-6)で表されるハロゲン化アリールを作用させることで一般式(pre-1-THP)で表されるシアノ化合物を製造する工程である。
製造工程(D)
【0012】
【化29】

(式中、Y、R、R、及びRは前記と同じ意味を表す。)
製造工程(D)は一般式(pre-1-THP)で表されるシアノ化合物にフェリシアン化カリウムを作用させることで一般式(3-THP)で表されるシアノ化合物を製造する工程である。
製造工程(E)
【0013】
【化30】

(式中、Y、R、R、及びRは前記と同じ意味を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
製造工程(E)は一般式(3-THP)で表されるシアノ化合物に酸を作用させることで一般式(3)で表される本発明の中間体を製造する工程である。
製造工程(F)
【0014】
【化31】

(式中、Y、R、R、R、及びXは前記と同じ意味を表す。)
製造工程(F)は、一般式(3)で表される本発明の中間体に一般式(100-7)で表される酸ハライドを作用させることで一般式(1)で表される本発明のメカノフォア含有重合開始剤を製造する工程である。
本発明の製造方法で使用するシアノ酢酸、一般式(100-2)で表されるアルコール、一般式(100-6)で表されるハロゲン化アリール化、及び一般式(100-7)で表される酸ハライドは、その入手方法に限定はなく、市販品を用いてもよい。
次に本発明の高分子について説明する。
本発明の組成物は、本発明の開始剤とビニルモノマーを含む主剤とから構成される。
本発明の組成物の主剤に用いることができるビニルモノマーは特に制限なく使用することができる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエトキシ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H-ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸、アクリロイルモルホリン、ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イロプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のモノ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクロイルオキシプロピルメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、等のジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、等のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、オリゴマー型の(メタ)アクリレート、各種ウレタンアクリレート、各種マクロモノマー、これらは単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
本発明に係る高分子の製造効率が高い点で、モノ(メタ)アクリレート、ジアクリレートが好ましく、モノ(メタ)アクリレートがより好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、メチル(メタ)アクリレートがことさら好ましい。
本発明の組成物は溶媒を含んでいてもよい。用いることのできる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限は無く、ヘキサン、ヘプタン、デカン、トリデカン等の脂肪族炭化水素溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル溶媒、ジメチルスルホキシド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド溶媒、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド溶媒、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン溶媒、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)=N,N-ジイソプロピルホスホロアミダート(PF-37)、リン酸=トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)(TFEP)等のフッ素溶媒、ニトロメタン、水等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。
これらのうち、収率が良い点で脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、スルホキシド溶媒、フッ素溶媒が好ましく、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン溶媒、エーテル溶媒がより好ましく、テトラリン、トルエン、モノクロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、THFさらに好ましく、トルエンがことさら好ましい。
用いる溶媒の量に制限はないが、製造効率がよい点で、本発明の開始剤に対して1~100g/Lが好ましく、5~50g/Lの範囲にあることがより好ましく、1~15g/Lの範囲にあることがさらに好ましい。
次に本発明の製造法について説明する。
本発明の組成物を含んでなる高分子の製造法(以下、本発明の高分子の製造法)は、本発明の組成物を用いて作成することができる。
本発明の高分子の製造法は銅触媒存在下で実施することができ、例えばヨウ化銅、臭化銅、又は塩化銅などを例示することができる。本発明の高分子の製造法の製造効率が良い点で、ヨウ化銅、又は臭化銅が好ましく、臭化銅がより好ましい。
用いる銅触媒の量に制限はないが、製造効率がよい点で、本発明の開始剤に対して0.1~10当量が好ましく、1~5当量の範囲にあることがより好ましく、1~3当量の範囲にあることがさらに好ましい。
本発明の高分子の製造法はアミン触媒存在下で実施することができ、例えば該アミン触媒としては2,2’-ビピリジル、シクラム、2-ジメチルアミノ-2’-(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジノニル-2,2’-ビピリジル、ジフェニル(2-ピリジル)ホスフィン、1,1,4,7,10,10-ヘキサトリメチルトリエチレンテトラミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス(2-ピリジルメチル)アミンなどを例示することができる。本発明の製造法の製造効率が良い点で、2,2’-ビピリジル、シクラム、2-ジメチルアミノ-2’-(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジノニル-2,2’-ビピリジル、1,1,4,7,10,10-ヘキサトリメチルトリエチレンテトラミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス(2-ピリジルメチル)アミンが好ましく、2,2’-ビピリジル、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジノニル-2,2’-ビピリジル、1,1,4,7,10,10-ヘキサトリメチルトリエチレンテトラミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ピリジルメチル)エチレンジアミン、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス(2-ピリジルメチル)アミンがより好ましく、2,2’-ビピリジル、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジノニル-2,2’-ビピリジル、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス(2-ピリジルメチル)アミンがさらに好ましく、4,4’-ジノニル-2,2’-ビピリジルがことさら好ましい。
用いるアミン触媒の量に制限はないが、製造効率がよい点で、本発明のメカノフォア含有重合開始剤に対して0.1~10当量が好ましく、1~5当量の範囲にあることがより好ましく、1~3当量の範囲にあることがさらに好ましい。
本発明の製造方法は、アルゴンガスまたは窒素ガスといった不活性ガス雰囲気下、若しくは真空下で行うことが好ましい。
本発明の高分子の製造法を実施する反応温度に制限はないが、収率が良い点で20℃~100℃の範囲で実施することが好ましく、40℃~80℃がさらに好ましい。
反応時間は(1)の種類、溶媒、及び反応温度により異なるが、0.1~100時間が好ましく、1~24時間がより好ましく、1~10時間がさらに好ましく、1~6時間がことさら好ましい。
本発明の高分子の製造法にて製造できる高分子は、製造工程の終了後に通常の処理をすることで得られる。必要に応じて、洗浄、沈殿、ろ過、透析、カラムクロマトグラフィー、分取HPLC、ソックスレー抽出等の当業者が高分子の精製に用いる汎用的な手段を適宜用いて精製してもよい。
本発明の高分子の製造法にて製造できる高分子の力学機能性を向上させる目的で、反応中又は反応後にラジカル開始剤や有機スズ化合物を添加することで本発明の高分子の製造法にて製造できる高分子の末端に水素原子が導入された高分子を製造することもできる。
【実施例0015】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0016】
実施例で得られたモノマーは、H-NMR測定により構造解析を行った。実施例で得られた高分子の分子量と分子量分布はGel Permeation Chromatography(GPC)測定、耐熱性はEloctron Paramagnetic Resonance(EPR)測定により見積もった。試薬類は市販品を用いた。
<NMR測定条件>
測定装置:Bruker ASCENDTM ADVANCE III HD(400MHz)
測定溶媒:重クロロホルム(CDCl)、又は重アセトン(Acetone-d
内部標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
<GPC測定条件>
測定装置:東ソー株式会社 高速GPC装置 HLC-8320GPC EcoSEC
カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ-H、TSKgel SuperHZ2000
測定溶媒:THF
測定温度:25℃
校正曲線:ポリスチレンスタンダード
<ESR測定条件>
測定装置:JEOL JES-X320 X-band ESR
[合成参考例1]
【0017】
【化32】

シアノ酢酸(5.0g,59mmol)、エチレングリコール(7.3g,6.6mL,120mmol)、およびp-トルエンスルホン酸一水和物(0.3g,1.6mmol)を、20mLのトルエン中で室温で混合した。この混合物を、Dean-Stark装置を備えた丸底フラスコで一晩かけて130℃まで加熱した。その混合物を室温まで冷却した。減圧下での蒸留により、2-ヒドロキシエチル-2-シアノアセテート(3.0g,24mmol,40%)を無色の油状液体として得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ4.27(t,J=4.62Hz,2H),3.81(t,J=4.62Hz,2H),3.48(s,2H),2.27(s,1H).
[合成参考例2]
【0018】
【化33】

2-ヒドロキシエチル-2-シアノアセテート(1.1g,8.3mmol)とトルエンスルホン酸一水和物(16mg,0.08mmol,1mol%)を0℃で20mLのCHClに溶解した。この溶液に、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(910mg,11mmol)を滴下して加えた。この混合物を室温で一晩反応させた。NaHCOを加えて反応を停止し、得られた混合物を分離漏斗に移した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水MgSO上で乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン=1/2)で精製して、無色の油状液体HECA-THP(0.98g,4.6mmol,57%)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ4.57(t,J=6.85Hz,1H),4.32(m,2H),3.84-3.93(m,1H),3.75-3.83(m,1H),3.56-3.67(m,1H),3.45(m,1H),3.43(s,2H),1.39-1.86(m,6H).
[合成参考例3]
【0019】
【化34】

HECA-THP(980mg,4.6mmol)、1-ブロモ-3,5-ジ-tert-ブチルベンゼン(1.2g,4.6mmol)、およびリン酸三ナトリウム(2.3g,14mmol)を30mLのトルエン中で混合した。この混合物を、室温で30分間、Nでバブリングした。この混合物に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(42mg、0.046mmol)およびトリ-tert-ブチルホスホニウム=テトラフルオロボレート(53mg、0.18mmol)を加えた。この混合物をさらに30分間Nでバブリングした後、一晩かけて80℃まで加熱した。室温まで冷却した後、混合物を分離漏斗に移した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水MgSO上で乾燥させ、真空中で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン=1/10)で精製して、無色の油状液体PCA-THP(1.3g、3.2mmol、72%)を得た。
H-NMR(400MHz,Acetone-d):δ7.55(t,J=1.72Hz,1H),7.39(s,2H),5.28(s,1H),4.55(s,1H),4.36(m,2H),3.84(m,1H),3.72(m,1H),3.62(m,1H),3.41(m,1H),1.71(m,1H),1.38-1.62(m,5H),1.34(s,18H).
[合成参考例4]
【0020】
【化35】

PCA-THP(550mg,1.4mmol)、K[Fe(CN)](580mg,1.8mmol)をN雰囲気下、室温でTHF/HO(12mL/3mL)混合溶媒中で混合した。この混合物にジアザビシクロウンデセン(DBU)(830mg,810μL,5.4mmol)を滴下して加え、混合物を室温で30分間撹拌した。次いで、混合物を分離漏斗に移した。有機層をEtOAcで希釈し、飽和食塩水で洗浄し、濃縮し、無水MgSO上で乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン=1/4)で精製して、2つの異性体を含む白色固体のDPCA-THP(350mg、1.7mmol、65%)を得た。
Isomer1:
H-NMR(400MHz,Acetone-d):δ7.51(s,2H),7.28(s,4H),4.56(s,2H),4.48(s,4H),3.78-3.90(m,2H),3.56-3.72(m,4H),3.19-3.38(m,2H),1.30-1.78(m,12H),1.25(s,36H).
Isomer2:
H-NMR(400MHz,Acetone-d):δ7.54(t,J=1.56Hz,2H),7.09(s,4H),4.48-4.68(m,6H),3.80-3.96(m,2H),3.61-3.79(m,4H),3.21-3.44(m,2H),1.30-1.82(m,12H),1.23(s,36H).
[実施例1]
【0021】
【化36】

DPCA-THP(160mg,0.20mmol)を10mLのTHFに室温で溶解した。この溶液に10mLの1M-HCl水溶液を加えた。この混合物を室温で一晩攪拌した。酸をNaHCOでクエンチした後、有機層をEtOAcで抽出して回収し、無水MgSO上で乾燥させて濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン=1/1)で精製して、白色固体のDPCA-ジオール(3-6)(120mg,0.19mmol,92%)を得た。
Isomer1:
H-NMR(400MHz,Acetone-d):δ7.48(t,J=1.52Hz,2H),7.21(s,4H),4.29-4.55(m,4H),3.99(t,J=5.54Hz,2H)3.78(q,J=5.18Hz,4H),1.23(s,36H).
[合成参考例5]
【0022】
【化37】

HECA-THP(1.5g,7.0mmol)、4-ブロモトルエン(1.2g,7.0mmol)、およびリン酸三ナトリウム(3.5g,21mmol)を30mLのトルエン中で混合した。この混合物を、室温で30分間、Nでバブリングした。この混合物に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(65mg,0.070mmol)およびトリ-tert-ブチルホスホニウム=テトラフルオロボレート(82mg,0.28mmol)を加えた。この混合物をさらに30分間Nでバブリングした後、一晩かけて80℃まで加熱した。室温まで冷却した後、混合物を分離漏斗に移した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、回収し、無水MgSO上で乾燥させ、真空中で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン=1/10)で精製して、無色の油状液体TCA-THP(500mg、1.7mmol、24%)を得た。
H-NMR(400MHz,Acetone-d):δ7.41(d,J=8.06Hz,2H),7.28(d,J=7.93Hz,2H),5.27(s,1H),4.54(t,J=3.02Hz,1H),4.35(t,J=4.71Hz,2H),3.79-3.88(m,1H),3.65-3.73(m,1H),3.55-3.64(m,1H),3.35-3.42(m,1H),2.35(s,3H),1.36-1.78(m,6H).
[合成参考例6]
【0023】
【化38】

TCA-THP(480mg,1.6mmol),K[Fe(CN)](680mg,2.1mmol)をTHF/HO(20mL/5mL)混合溶媒に入れ、N雰囲気下、室温で混合した。この混合物にDBU(960mg,940μL,6.3mmol)を滴下して加え、結果物を室温で30分間撹拌した。次いで、混合物を分離漏斗に移した。有機層をEtOAcで希釈し、飽和食塩水で洗浄し、無水MgSO上で乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン=1/4)で精製して、白色固体のDTCA-THP(160mg、0.26mmol、33%)を得た。
H-NMR(400MHz,Acetone-d):δ7.23(d,J=8.04z,4H),7.01(dd,J=8.48,J=2.40Hz,4H),4.49-4.64(m,6H),3.86-3.96(m,2H),3.59-3.76(m,4H),3.31-3.42(m,2H),2.37(s,6H),1.25-1.72(m,12H).
[実施例2]
【0024】
【化39】

DTCA-THP(140mg,0.23mmol)を20mLのTHFに室温で溶解した。この溶液に20mLの1MHCl水溶液を加えた。この混合物を室温で一晩攪拌した。NaHCOでクエンチした後、有機層をEtOAcで抽出して回収し、無水MgSO上で乾燥させて濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン=1/1)で精製して、白色固体の(3―1)(90mg,0.20mmol,87%)を得た。
H-NMR(400MHz,Acetone-d):δ7.22(d,J=8.02Hz,4H),7.00(d,J=8.40Hz,4H),4.43-4.52(m,4H),4.00(t,J=5.55Hz,2H),3.81(t,J=5.15Hz,4H),2.37(s,6H).
式(3-1)をアニソールに溶解し、温度可変ESR測定を行った。その結果、25℃では全くシグナルが観測されなかった。100℃ではシグナルがわずかに観測され、それから見積もったメカノフォアの乖離率は0.00284%であった。これは該メカノフォアが極めて高い耐熱性を有していることを示している。また、乖離後も着色を示さなかったことから、無着色力学機能材料として有用であることが示されている。
[合成参考例7]
【0025】
【化40】

HECA-THP(2.0g,9.4mmol)、4-ブロモアニリン(1.9g,9.4mmol)、およびリン酸ナトリウム(4.6g,28mmol)を30mLのトルエン中で混合した。この混合物にNを室温で30分間バブリングした。この混合物に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(86mg、0.094mmol)およびトリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(110mg、0.38mmol)を加えた。この混合物をさらに30分間Nでバブリングした後、一晩かけて80℃まで加熱しました。室温まで冷却した後、混合物を分離漏斗に移した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、回収し、無水MgSO上で乾燥させ、真空中で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン=1/10)で精製して、黄色油状の液体のACA-THP(600mg、1.8mmol、19%)を得た。
H-NMR(400MHz,Acetone-d):δ7.31(d,J=8.29Hz,2H),6.78(d,J=8.91Hz,2H),5.11(s,1H),4.54(q,J=3.43Hz,1H),4.33(t,J=4.72Hz,2H),3.77-3.89(m,1H),3.66-3.75(m,1H),3.54-3.64(m,1H),3.35-3.42(m,1H),2.96(s,6H),1.36-1.80(m,6H).
[合成参考例8]
【0026】
【化41】

ACA-THP(600mg,1.8mmol)、K[Fe(CN)](770mg,2.4mmol)をTHF/HO(24mL/6mL)混合溶媒に入れ、N雰囲気下で室温で混合した。この混合物にDBU(820mg,810μL,5.4mmol)を滴下して加え、結果物を室温で30分間撹拌した。次いで、混合物を分離漏斗に移した。有機層をEtOAcで希釈し、飽和食塩水で洗浄し、無水MgSO上で乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン=1/3)で精製して、褐色固体のDACA-THP(460mg、1.4mmol、76%)を得た。
H-NMR(500MHz,Acetone-d):δ6.95(dd,J=8.38Hz,J=2.98Hz,4H),6.68(dd,J=9.13Hz,J=2.78Hz,4H),4.61(m,2H),4.53(t,J=9.60Hz,4H),3.86-3.94(m,2H),3.65-3.80(m,4H),3.33-3.41(m,2H),2.98(s,12H),1.32-1.86(m,12H).
[実施例3]
【0027】
【化42】

DACA-THP(320mg,0.48mmol)を40mLのTHFに室温で溶解した。この溶液に40mLの1MHCl水溶液を加えた。この混合物を室温で一晩攪拌した。酸をNaHCOでクエンチした後、有機層をEtOAcで抽出し、回収し、MgSO上で乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン=1/1)で精製して、白色固体の(3-3)(200mg、0.41mmol、85%)を得た。
H-NMR(500MHz,Acetone-d):δ6.94(d,J=9.06Hz,4H),6.67(d,J=9.08Hz,4H),4.42(t,J=5.55Hz,4H),3.98(t,J=5.64Hz,2H),3.81(q,J=4.89Hz,4H),2.99(s,12H).
式(3-3)をアニソールに溶解し、温度可変EPR測定を行った。その結果、25℃ではほとんどシグナルが観測されなかった。100℃ではシグナルがわずかに観測され、それから見積もったメカノフォアの乖離率は0.175%であった。また、乖離後も着色を示さなかったことから、無着色力学機能材料として有用であることが示されている。
[実施例4]
【0028】
【化43】

(3-6)(130mg,0.20mmol)および2-ブロモイソブチリルブロマイド(190mg,0.82mmol)をジクロロメタン10mLに溶解した。この混合物を0℃まで冷却した。その混合物にトリエチルアミン(120mg、170μL、1.2mmol)を滴下して加えた。混合物を室温まで温め、一晩反応させた。混合物を分離漏斗に移し、有機層をEtOAcで抽出し、飽和塩化食塩水で洗浄し、無水MgSO上で乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc/ヘキサン=1/8)で精製して、黄色固体の(1-6)(160mg,0.17mmol,84%)を得た。
H-NMR(400MHz,Acetone-d):δ7.53(s,2H),7.06(s,4H),4.32-4.49(m,4H),4.50-4.74(m,4H),1.79(s,12H),1.22(s,36H).
[実施例5]
【0029】
式(1-6)(52mg,0.056mmol)とメタクリル酸メチル(4.5g,4.8mL,45mmol)を5mLのトルエン中、室温で混合した。この混合物にNを30分間バブリングした。この混合物に、臭化銅(I)(16mg,0.11mmol)および4,4′-ジノニル-2,2′-ビピリジル(46mg,0.11mmol)を加えた。この混合物にNをさらに30分間バブリングした。混合物を60℃に3時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、CHClを加えて混合物を活性アルミナ(中性)カラムに通すことにより、銅錯体を除去した。得られた残渣を濃縮し、メタノールに注ぎ込んだ。固体をろ過して回収し、白色固体(990mg、Mn=40.6kDa、PDI=1.1、44%)を得た。得られた白色固体のうち400mg(0.010mmol)を8mLのトルエンに室温で溶解した。この溶液にNを30分間バブリングした。この溶液に、AIBN(0.80mg,0.005mmol)およびトリブチルスズヒドリド(8.7mg,0.030mmol)を加えた。この混合物にNをさらに30分間バブリングした。混合物を60℃3時間加熱した。室温まで冷却した後、混合物を濃縮し、メタノールで沈殿させた。その固体をろ過で回収し、本発明に係る高分子(250mg,0.0062mmol,62%)を得た。得られた高分子をボールミル(Retsch Mixer Mill MM 400、30Hz)を用いて粉砕し、EPR測定を行った結果、粉砕時間に応じてラジカルの発生率が増加した。粉砕時間10分で22%、25分で、30%のメカノフォアが開裂しラジカルが発生することがわかった。また、乖離後も着色を示さなかったことは、本発明に係る高分子が無着色力学機能性を有していることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の開始剤、及び高分子は自己力学機能性材料として有用である。