(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002535
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】墨出しロボット、墨出しロボットシステム、及び、計測ロボット
(51)【国際特許分類】
E04G 21/18 20060101AFI20221227BHJP
E04F 21/00 20060101ALI20221227BHJP
G01C 15/02 20060101ALI20221227BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20221227BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
E04G21/18 Z
E04F21/00 A
G01C15/02
G01C15/00 103C
B25J5/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152197
(22)【出願日】2022-09-26
(62)【分割の表示】P 2019127333の分割
【原出願日】2019-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】595145050
【氏名又は名称】株式会社日立プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪倉 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】鹿 篤司
(72)【発明者】
【氏名】屋代 裕一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 耕二
(57)【要約】
【課題】墨出し位置における床面の凹凸レベルの計測作業を自動化する。
【解決手段】墨出しロボット10は、走行手段(走行アクチュエータ17ac)と、印字ヘッドを有する印字手段(プリンタ16)と、床面を検知する検知センサSN2と、三次元計測手段(追尾型トータルステーション20)によって位置が計測される計測ターゲット(指向性プリズム15)と、印字ヘッド
と計測ターゲットを移動可能に支持する移動手段(プリンタアクチュエータ16ac)と、制御手段(PC14)と、を備えている。制御手段は、走行手段に任意の所望位置へ走行させ、所望位置において、移動手段に検知センサによって床面が検知さ
れてから、三次元計測手段によって計測された計測ターゲットの位置に基づいて床面の凹凸レベルを計測し、印字手段に凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を床面に印字させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面の上を走行する走行手段と、
前記床面に印字するための印字ヘッドを有する印字手段と、
前記床面を検知する検知センサと、
三次元計測手段によって位置が計測される計測ターゲットと、
前記印字ヘッドと前記計測ターゲットを移動可能に支持する移動手段と、
前記走行手段と前記印字手段の動作を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記走行手段に任意の所望位置へ走行させ、当該所望位置において、前記移動手段に前記検知センサによって前記床面が検知されてから、前記三次元計測手段によって計測された前記計測ターゲットの位置に基づいて前記床面の凹凸レベルを計測し、前記印字手段に当該凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を前記床面に印字させる
ことを特徴とする墨出しロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の墨出しロボットにおいて、
前記検知センサは、接触端子が前記床面に向けて配置されたタッチセンサで構成されており、
前記移動手段は、前記印字ヘッドと前記検知センサと前記計測ターゲットとを上下方向に移動可能に支持する上下方向移動手段を有する
ことを特徴とする墨出しロボット。
【請求項3】
請求項2に記載の墨出しロボットにおいて、
前記接触端子は、上面視で、前記印字ヘッドの周囲を囲むように形成されたリング形状を呈している
ことを特徴とする墨出しロボット。
【請求項4】
請求項1に記載の墨出しロボットにおいて、
前記検知センサは、下方向に光を照射する光学式センサで構成されている
ことを特徴とする墨出しロボット。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の墨出しロボットにおいて、
前記制御手段は、前記走行手段に複数箇所の任意の所望位置を順次走行させながら、各所望位置において、前記床面の凹凸レベルを計測するとともに、前記印字手段に前記凹凸レベル情報を前記床面に印字させる
ことを特徴とする墨出しロボット。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の墨出しロボットにおいて、
前記制御手段は、前記走行手段に複数箇所の任意の所望位置を順次走行させながら、各所望位置において、前記床面の凹凸レベルを計測した後、再度、前記走行手段に前記複数箇所の任意の所望位置を順次走行させながら、各所望位置において、前記印字手段に前記凹凸レベル情報を前記床面に印字させる
ことを特徴とする墨出しロボット。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の墨出しロボットにおいて、
前記制御手段は、前記印字手段に前記凹凸レベル情報を前記床面に印字させる際に、所望位置を表す位置情報と所望位置に据え付けされる機器を表す機器情報も印字させる
ことを特徴とする墨出しロボット。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の墨出しロボットにおいて、
各種の情報及び動作指示を手動で入力するための手動入力手段を有する
ことを特徴とする墨出しロボット。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の墨出しロボットにおいて、
前記計測ターゲットを任意の方向に移動させ、前記計測ターゲットの移動量に対する前記計測ターゲットの上下方向変動量に基づいて当該墨出しロボットの傾き角度を算出する
ことを特徴とする墨出しロボット。
【請求項10】
請求項9に記載の墨出しロボットにおいて、
前記計測ターゲットの設置高さと前記墨出しロボットの傾き角度に基づいて前記床面における印字面の高さを算出する
ことを特徴とする墨出しロボット。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の墨出しロボットにおいて、
前記制御手段は、前記床面に印字せずに、前記床面の凹凸レベルを計測する計測ロボットモードを実行可能である
ことを特徴とする墨出しロボット。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の墨出しロボットと、
前記墨出しロボットに搭載された計測ターゲットを追尾して前記計測ターゲットの現在位置を計測する三次元計測手段と、
前記墨出しロボットとの間で情報を送受信する外部装置と、を備える
ことを特徴とする墨出しロボットシステム。
【請求項13】
請求項12に記載の墨出しロボットシステムにおいて、
前記墨出しロボットの制御手段は、前記三次元計測手段から前記墨出しロボットの現在位置として前記計測ターゲットの現在位置を表す現在位置情報を取得し、
前記外部装置は、前記墨出しロボット又は前記三次元計測手段から前記現在位置情報を取得するとともに、前記墨出しロボットから任意の所望位置における床面の凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を取得して、前記床面の各位置における凹凸レベルを表す床面情報を作成する
ことを特徴とする墨出しロボットシステム。
【請求項14】
床面の上を走行する走行手段と、
前記床面を検知する検知センサと、
三次元計測手段によって位置が計測される計測ターゲットと、
前記計測ターゲットを移動可能に支持する移動手段と、
前記走行手段の動作を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記走行手段に任意の所望位置へ走行させ、当該所望位置において、前記移動手段に前記検知センサによって前記床面が検知されてから、前記三次元計測手段によって計測された前記計測ターゲットの位置に基づいて前記床面の凹凸レベルを計測する
ことを特徴とする計測ロボット。
【請求項15】
請求項14に記載の計測ロボットにおいて、
前記制御手段は、前記走行手段に複数箇所の任意の所望位置を順次走行させながら、各所望位置において、前記移動手段に前記検知センサによって前記床面が検知されるまで前記計測ターゲットを下方向に移動させてから、前記三次元計測手段によって計測された前記計測ターゲットの位置に基づいて前記床面の凹凸レベルを計測し、当該凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を記憶手段に記憶する
ことを特徴とする計測ロボット。
【請求項16】
請求項14又は請求項15に記載の計測ロボットにおいて、
前記制御手段は、前記走行手段に複数箇所の任意の所望位置を順次走行させながら、各所望位置において、前記移動手段に前記検知センサによって前記床面が検知されるまで前記計測ターゲットを下方向に移動させてから、前記三次元計測手段によって計測された前記計測ターゲットの位置に基づいて前記床面の凹凸レベルを計測し、当該凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を外部装置に出力する
ことを特徴とする計測ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墨出しロボット、墨出しロボットシステム、及び、計測ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
設備工事では、墨出し作業が行われる。「墨出し」とは、設置する機器のアンカ位置や、天吊り機器のアンカ位置、付帯機器の架台位置等の、工事の基準となる墨出し線を建築物の床面や壁面等に印すことをいう。設備工事では、作業者が墨出し線に沿って様々な機器を設置するため、墨出し線を正確に印すことは重要である。従来の墨出し作業は、作業者が墨つぼから墨を含んだ糸を引き出し、墨出しを行うべき位置(墨出し位置)の近傍に糸を張り、糸を弾いて床面や壁面等に墨出し線を付けることで行われていた。その際に、作業者は、基準となる複数個所同士を結ぶように糸を張ることで、墨出し位置を決定していた。このような従来の墨出し作業では、作業者は正確な墨出し位置に墨出しするための熟練を要し、更に手作業に伴う人為的なミスが発生する可能性があった。
【0003】
そこで、墨出しするに際して、作業者は、光学式の計測器を用いて正確な墨出し位置を測定し、その墨出し位置に墨出しするようになっている。これにより、作業者が墨出しに熟練していなくても、所定の精度が担保されるようになった。しかしながら、このような墨出し作業であっても作業者が手作業で墨出しすることには変わりないため、所定の工数が発生し、かつ、依然として人為的なミスが発生する可能性があった。
【0004】
そこで、近年では、自律的に走行して墨出し作業を行う墨出しロボットの使用が試みられつつある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された墨出しロボットによれば、設備工事の墨出し作業を省力化することができ、墨出しに伴う人為的なミスの発生を抑止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された従来の墨出しロボットは、以下に説明するように、墨出し位置における床面の凹凸レベルの計測作業を自動化することが望まれていた。
【0007】
例えば、仮に凹凸や勾配がある床面に複数の設備機器が据え付けされる場合に、各設備機器を水平に据え付けることができないため、据付不良が発生して、手戻り作業(後戻り作業)の要因になる。また、製品を製造する工場プラントでは、設備機器の据付不良が発生した場合に、生産プロセスに異常が発生する可能性がある。そこで、手戻り作業(後戻り作業)が発生しないように、作業者は、床面の凹凸レベルに対応してアンカボルトやスペーサを用いて設備機器の高さ調整を行う。
【0008】
このような設備機器の高さ調整では、墨出し位置における床面の凹凸レベルを予め計測する必要がある。この点について、特許文献1に記載された従来の墨出しロボットは、床面の凹凸レベルを計測する機能を有していなかった。そのため、従来の墨出しロボットでは、設備機器の高さ調整を行う場合に、作業者が手動で墨出し位置における床面の凹凸レベルを計測する必要があった。床面の凹凸レベルの計測作業は、作業者の熟練した技術と、手間とを要するものである。このような床面の凹凸レベルの計測作業は、非熟練者が作業を行った場合に、作業ミスが発生し易いため、作業ミスの発生によって手戻り作業(後戻り作業)が発生したり作業工程の遅延が発生したりすることがあった。そのため、従来の墨出しロボットは、墨出し位置における床面の凹凸レベルの計測作業を自動化することが望まれていた。
【0009】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、墨出し位置における床面の凹凸レベルの計測作業を自動化する墨出しロボット、墨出しロボットシステム、及び、計測ロボットを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、墨出しロボットであって、床面の上を走行する走行手段と、前記床面に印字するための印字ヘッドを有する印字手段と、前記床面を検知する検知センサと、三次元計測手段によって位置が計測される計測ターゲットと、前記印字ヘッドと前記計測ターゲットを移動可能に支持する移動手段と、前記走行手段と前記印字手段の動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記走行手段に任意の所望位置へ走行させ、当該所望位置において、前記移動手段に前記検知センサによって前記床面が検知されてから、前記三次元計測手段によって計測された前記計測ターゲットの位置に基づいて前記床面の凹凸レベルを計測し、前記印字手段に当該凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を前記床面に印字させる構成とする。
【0011】
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、墨出し位置における床面の凹凸レベルの計測作業を自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る墨出しロボットシステムの概観図である。
【
図2】墨出しロボットシステムのブロック図である。
【
図7】建築物の床面の上に据え付けされた設備機器の概観図である。
【
図8】床面の凹凸レベルに対応するアンカボルトを用いた設備機器の高さ調整例の説明図である。
【
図9】床面の凹凸レベルに対応するスペーサを用いた設備機器の高さ調整例の説明図である。
【
図10】墨出しロボットによって床面に印字された印字情報の説明図である。
【
図11A】墨出しロボットの姿勢が水平な状態になっている場合の凹凸レベル計測の説明図(1)である。
【
図11B】墨出しロボットの姿勢が水平な状態になっている場合の凹凸レベル計測の説明図(2)である。
【
図12A】墨出しロボットの姿勢が傾いた状態になっている場合の傾き角度算出の説明図(1)である。
【
図12B】墨出しロボットの姿勢が傾いた状態になっている場合の傾き角度算出の説明図(2)である。
【
図13A】墨出しロボットの姿勢が傾いた状態になっている場合の印字面の高さ算出の説明図(1)である。
【
図13B】墨出しロボットの姿勢が傾いた状態になっている場合の印字面の高さ算出の説明図(2)である。
【
図14】墨出しロボットの動作を示すフローチャート(1)である。
【
図15】墨出しロボットの動作を示すフローチャート(2)である。
【
図16】墨出しロボットの動作を示すフローチャート(3)である。
【
図17】墨出しロボットの動作を示すフローチャート(4)である。
【
図18】墨出しロボットの動作を示すフローチャート(5)である。
【
図19】墨出しロボットの動作を示すフローチャート(6)である。
【
図20】墨出しロボットの動作を示すフローチャート(7)である。
【
図21】墨出しロボットの動作を示すフローチャート(8)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0015】
[実施形態]
<墨出しロボットシステムの構成>
以下、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る墨出しロボットシステムSの構成について説明する。墨出しロボットシステムSは、設備工事の墨出し作業を省力化するためのシステムである。
図1は、本実施形態に係る墨出しロボットシステムSの概観図である。
図2は、墨出しロボットシステムSのブロック図である。
【0016】
図1に示すように、墨出しロボットシステムSは、墨出しロボット10と、追尾型トータルステーション20と、外部装置30とを備えている。なお、以下の説明において、「左右方向」、「前後方向」、及び「上下方向」は、墨出しロボット10から見た方向であるものとする。
【0017】
墨出しロボット10は、自律的に走行して墨出し作業を行うロボットである。墨出しロボット10は、自律的に走行する機能と、所定の精度をもって墨出しする機能とを有する。
【0018】
追尾型トータルステーション20は、墨出しロボット10に設けられた指向性プリズム15をレーザ等で追尾して、三次元空間における指向性プリズム15の位置を計測する三次元計測手段である。指向性プリズム15は、追尾型トータルステーション20によって位置が計測される計測ターゲットである。なお、指向性プリズム15の位置を計測することは、墨出しロボット10の位置を計測することでもある。
【0019】
外部装置30は、墨出しロボット10との間及び追尾型トータルステーション20との間で情報を送受信する装置である。本実施形態では、外部装置30が、携帯型のパーソナルコンピュータ(PC)や、タブレット端末装置、スマートフォン等の、作業者によって操作される携帯端末であるものとして説明する。
【0020】
墨出しロボット10と追尾型トータルステーション20と外部装置30は、例えばWi-Fi(登録商標)等の無線LANを介して、相互に通信することができる。
【0021】
墨出し作業を行う場合において、設備工事の作業者は、例えば、外部装置30を操作して、各墨出し位置(墨出し線を印す位置)を墨出しロボット10に入力し、墨出しの開始を指示する。又は、作業者は、例えば、墨出しロボット10に設けられたタッチパネルディスプレイ13を操作して、各墨出し位置を墨出しロボット10に入力し、墨出しの開始を指示する。すると、墨出しロボット10は、墨出し作業を開始する。
【0022】
追尾型トータルステーション20は、墨出しロボット10に設けられた指向性プリズム15を追尾して、三次元空間における指向性プリズム15の位置を計測する。墨出しロボット10は、追尾型トータルステーション20から指向性プリズム15の位置情報を取得する。これにより、墨出しロボット10は、自身の現在位置情報を取得する。墨出しロボット10は、自身の現在位置情報の取得動作と、旋回動作、直進動作、後退動作等の移動動作とを適宜繰り返し行って、墨出し位置まで進む。更に墨出しロボット10は、所定の精度を確保するために、墨出し位置の近傍でXYステージ範囲内の位置計測を行うことで、墨出し線の高精度な位置決めを行い、本体内に設けられたプリンタ16で墨出し線と所望の情報とを印字する。墨出しロボット10は、各墨出し位置で、これらの処理を繰り返す。
【0023】
なお、墨出し線は、直線、十字線等の任意の長さで描画された線であり、任意の所望位置を表す位置情報として用いられる。本実施形態では、墨出しロボット10は、墨出し線を床面に印字(描画)する際に、床面の凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を墨出し線の近傍に印字する。また、墨出しロボット10は、墨出し線を床面に印字(描画)する際に、墨出し線の属性情報を墨出し線の近傍に印字する。例えば、墨出しロボット10は、墨出し線の属性情報として、所望位置に据え付けされる機器を表す機器情報を印字する。機器情報は、据え付ける機器の名称や型番を表す、文字、図形、記号等である。
【0024】
図1に示すように、墨出しロボット10は、フレーム11、収納ケース12、タッチパネルディスプレイ13、PC(Personal Computer)14、指向性プリズム15、プリズムアクチュエータ15ac、プリンタ16、プリンタアクチュエータ16ac、駆動輪17、走行アクチュエータ17ac、無線LAN親機18、表示灯191~193、測域センサSN1、検知センサSN2を備える。更に
図2に示すように、墨出しロボット10は、モーションコントローラMCを備える。モーションコントローラMCは、PC14に接続されて、プリズムアクチュエータ15ac、プリンタアクチュエータ16ac、走行アクチュエータ17ac等を駆動するコントローラである。
【0025】
フレーム11は、収納ケース12と、プリンタアクチュエータ16acとを支持する部材である。フレーム11は、上面視で矩形の形状を呈している。フレーム11の後部の上には、収納ケース12が配置されている。
【0026】
収納ケース12の内部には、PC14が収納されている。PC14は、墨出しロボット10を統括して制御する制御手段である。PC14は、走行アクチュエータ17acにより走行した際に、プリズムアクチュエータ15acにより指向性プリズム15が追尾型トータルステーション20の方向に向くように、指向性プリズム15を回転させる。
【0027】
収納ケース12の上には、タッチパネルディスプレイ13と、表示灯191~193が配置されている。タッチパネルディスプレイ13は、作業者が各種の情報及び動作指示を手動で入力するための手動入力手段である。タッチパネルディスプレイ13は、墨出しロボット10の動作を設定だけでなく、各種の情報を表示したり入力したりするために使用することもできる。タッチパネルディスプレイ13は、好ましくは、操作性を向上させることができるように、配置角度を変更したり(つまり、任意の角度に傾けて配置したり)、取り外したりすることが可能な構成であるとよい。表示灯191~193は、墨出しロボット10の状態を外部に報知するための報知手段である。
【0028】
収納ケース12の前方には、無線LAN親機18が配置されている。無線LAN親機18は、PC14に接続されて、追尾型トータルステーション20や外部装置30と無線通信する通信手段である。
【0029】
フレーム11の前方には、測域センサSN1が配置されている。測域センサSN1は、墨出しロボット10の前方に障害物が存在するか否かを検知するセンサである。
【0030】
フレーム11の下部には、走行アクチュエータ17acが配置されている。走行アクチュエータ17acは、床面の上を走行する走行手段である。本実施形態では、4つの走行アクチュエータ17acが、フレーム11の下部の四隅に配置されており、それぞれに対応して設けられた駆動輪17を回転駆動する構造になっているものとして説明する。駆動輪17は、車輪として機能する回転体である。墨出しロボット10は、4つの走行アクチュエータ17acが独立して4つの駆動輪17を回転駆動させることで、超信地旋回等の旋回動作と前進動作と後退動作とを行うことができる。例えば、墨出しロボット10は、左右の駆動輪17を逆方向に回転させることで、旋回動作を行うことができる。また、墨出しロボット10は、左右の駆動輪17を同方向に回転させることで、前進動作又は後退動作を行うことができる。ただし、駆動輪17の数は、4つに限らず、4つ以上にすることができる。また、墨出しロボット10は、チェーンリンク機構等を介して1つの走行アクチュエータ17acで複数の駆動輪17を回転駆動する構成にすることができる。また、墨出しロボット10は、無限軌道(すなわち、複数の駆動輪17に履帯(クローラー)を張架させた走行手段)を有する構成にすることができる。
【0031】
フレーム11の収納ケース12よりも前方の場所には、上面視で矩形状の開口部11opが形成されている。開口部11opの内部は、プリンタ16と検知センサSN2とが移動可能な空間となっている。
【0032】
フレーム11の上には、プリンタアクチュエータ16acが配置されている。プリンタアクチュエータ16acは、プリンタ16を支持するとともに、左右方向(X軸方向)、前後方向(Y軸方向)、上下方向(Z軸方向)にプリンタ16を摺動移動させる機構である。なお、プリンタアクチュエータ16acは、プリンタ16だけでなく、指向性プリズム15と検知センサSN2とを支持しており、プリンタ16と一緒に同じ方向に指向性プリズム15と検知センサSN2とを移動させる。
【0033】
プリンタ16は、床面に印字する印字手段である。本実施形態では、プリンタ16がインクジェット式の印字手段であるものとして説明する。ただし、プリンタ16は例えばプロッタのようなペン型印字ヘッドを用いる印字手段であってもよい。
【0034】
指向性プリズム15は、追尾型トータルステーション20のレーザポインタが照射される箇所である。指向性プリズム15は、墨出しロボット10の位置を計測するための計測ターゲットであり、光を反射する特性を有する。指向性プリズム15は、追尾型トータルステーション20から照射された光を反射することによって光学的に三次元状の位置が計測される。指向性プリズム15は、その中心位置がプリンタ16の位置と一定になるように配設されている。これにより、墨出しロボット10は、プリンタ16の位置を正確に測定可能である。更に指向性プリズム15は、プリズムアクチュエータ15acによって、任意の方向に回転する。これにより、指向性プリズム15は、墨出しロボット10の移動後であっても追尾型トータルステーション20に正対することができる。
【0035】
検知センサSN2は、床面を検知するセンサである。本実施形態では、検知センサSN2は、接触式のタッチセンサで構成されているものとして説明する。タッチセンサで構成された検知センサSN2は、接触端子が床面に向けて配置されている。Z軸アクチュエータ16zは、プリンタ16とともに検知センサSN2をZ軸方向(上下方向)に移動可能に支持している。
【0036】
プリンタアクチュエータ16acは、X軸アクチュエータ16xと、Y軸アクチュエータ16yと、Z軸アクチュエータ16zとを含んでいる。X軸アクチュエータ16xは、左右方向(X軸方向)にプリンタ16を摺動移動させる左右方向移動手段である。Y軸アクチュエータ16yは、前後方向(Y軸方向)にプリンタ16を摺動移動させる前後方向移動手段である。Z軸アクチュエータ16zは、上下方向(Z軸方向)にプリンタ16を摺動移動させる上下方向移動手段である。本実施形態では、X軸アクチュエータ16xとY軸アクチュエータ16yとZ軸アクチュエータ16zとして、それぞれ、電動式の直動アクチュエータが採用されているものとして説明する。
【0037】
本実施形態では、Y軸アクチュエータ16yは、3本の長尺な四角柱状のバー部材y1,y2,y3を有している。Y軸アクチュエータ16yの3つのバー部材y1,y2,y3は、フレーム11の上に固定設置されている。3本のバー部材y1,y2,y3は、フレーム11に形成された開口部11opを囲むように、コ字形状に配置されている。つまり、3本のバー部材y1,y2,y3のうち、2本のバー部材y1,y2が前後方向に延在するように配置されている。また、残りのバー部材y3が、左右方向に延在するように配置されるとともにバー部材y1,y2の後端部に連結されている。
【0038】
X軸アクチュエータ16xは、1本の長尺な四角柱状のバー部材x1を有している。X軸アクチュエータ16xのバー部材x1は、左右方向に延在するように(つまり、Y軸アクチュエータ16yのバー部材y1,y2に対して直交するように)、Y軸アクチュエータ16yのバー部材y1,y2の上に配置されている。X軸アクチュエータ16xのバー部材x1は、Y軸アクチュエータ16yのバー部材y1,y2の延在方向に沿って、移動する。つまり、Y軸アクチュエータ16yは、バー部材y1,y2の延在方向に沿って、X軸アクチュエータ16xのバー部材x1を移動可能に支持している。X軸アクチュエータ16xのバー部材x1とY軸アクチュエータ16yの3つのバー部材y1,y2,y3は、プリンタ16と検知センサSN2とを移動可能に支持する枠体を構成している。
【0039】
X軸アクチュエータ16xのバー部材x1には、Z軸アクチュエータ16zの支持部zaが取り付けられている。Z軸アクチュエータ16zの支持部zaは、バー状のボールねじ部zbを介して指向性プリズム15とプリンタ16と検知センサSN2とを支持する構成要素である。Z軸アクチュエータ16zの支持部zaは、X軸アクチュエータ16xのバー部材x1の延在方向に沿って、移動する。つまり、X軸アクチュエータ16xは、バー部材x1の延在方向に沿って、Z軸アクチュエータ16zの支持部zaを移動可能に支持している。
【0040】
<検知センサの構成>
以下、
図3A及び
図3Bを参照して、検知センサSN2の構成について説明する。
図3Aは、プリンタ16と検知センサSN2の概観図である。
図3Bは、検知センサSN2の側断面図である。
【0041】
図3Aに示すように、本実施形態では、薄い矩形状の平坦な取付板60の一方の面にプリンタ16が取り付けられ、他方の面に検知センサSN2が取り付けられている。プリンタ16は、インクを吐出する印字ヘッド61と、インクを収納するインク収納部62(インクカートリッジ)と、インクの吐出動作を制御する作動機構63とを有している。印字ヘッド61は、プリンタ16の底面部に、床面に対向するように配置されている。
【0042】
なお、本実施形態では、プリンタ16は、印字ヘッド61とインク収納部62と作動機構63とを一体化した構成になっている。しかしながら、プリンタ16は、例えば印字ヘッド61とインク収納部62との間をチューブ(図示せず)で接続することで、印字ヘッド61をインク収納部62と作動機構63とから分離配置した構成にすることができる。
【0043】
検知センサSN2は、ケース76の内部に配置されており、プッシャ71が床面に向けて配置された構成になっている。
【0044】
図3Bに示すように、検知センサSN2は、接触端子であるプッシャ71と、プッシャ71に連結されたシャフト74と、シャフト74の周囲の隙間を埋めるブッシュ72と、シャフト74を下方に付勢する圧縮バネ73と、プッシャ71と床面との接触を検知する検知部75とを備えている。
【0045】
係る構成において、検知センサSN2は、プリンタアクチュエータ16acのZ軸アクチュエータ16zによってプリンタ16と一緒に上下動される。プッシャ71が床面から離間している場合に、シャフト74が圧縮バネ73によって下方に付勢されているため、シャフト74の上端部と検知部75の下端部とが所望の隙間分だけ離間した状態になっている。これに対し、プッシャ71が床面に接触した場合に、プッシャ71を介して床面から加わる応力によりシャフト74が上方に移動するため、シャフト74の上端部と検知部75の下端部とが接触した状態になる。検知センサSN2は、シャフト74の上端部と検知部75の下端部とが接触した状態になることで、プッシャ71と床面との接触を検知する。
【0046】
墨出しロボット10は、例えば、
図3Aに示す検知センサSN2を
図4に示す検知センサSN2aに変更することができる。
図4は、検知センサSN2の変形例である検知センサSN2aの概観図である。
図4に示すように、変形例の検知センサSN2aは、
図3Aに示す検知センサSN2と比較すると、プッシャ71の代わりに、プッシャ71aを有する点で相違している。プッシャ71aは、プッシャ71と同様に床面に接触する接触端子である。プッシャ71aは、床面に片当たりしないように、プッシャ71よりも大径で、かつ、印字ヘッド61に対向する部位が開口されたリング状の形状に形成されている。
【0047】
墨出しロボット10は、例えば、
図3Aに示す検知センサSN2を
図5に示す検知センサSN2bに変更することができる。
図5は、検知センサSN2の変形例である検知センサSN2bの概観図である。
図5に示すように、変形例の検知センサSN2bは、レーザ変位計等の光学式センサで構成されており、底面に設けられたレーザ照射口77から下方向にレーザ光78を照射する構成になっている。
【0048】
墨出しロボット10は、例えば、
図3Aに示すプリンタ16を
図6に示すプリンタ16aに変更することができる。
図6は、プリンタ16の変形例であるプリンタ16aの概観図である。
図6に示すように、変形例のプリンタ16aは、プロッタのようなペン型印字ヘッド66とそのペン型印字ヘッド66を把持する把持部67とを有する構成になっている。ペン型印字ヘッド66のペン先は、プッシャ71の底面よりも少し上の位置に配置されている。
【0049】
<据付作業に係る設備機器及び設備機器の高さ調整例>
図7は、建築物の床面Flの上に据え付けされた設備機器の概観図である。
図7は、天井面81tの高さが揃うように、設備機器の一例としての複数の制御盤81が床面Flの上に据え付けされた状態を示している。
【0050】
仮に凹凸や勾配がある床面Flに複数の設備機器が据え付けされる場合に、各設備機器を水平に据え付けることができないため、据付不良が発生して、手戻り作業(後戻り作業)の要因になる。また、製品を製造する工場プラントでは、設備機器の据付不良が発生した場合に、生産プロセスに異常が発生する可能性がある。
【0051】
そこで、手戻り作業(後戻り作業)が発生しないように、作業者は、床面Flの凹凸レベル(勾配レベルを含む)に対応してアンカボルト91(
図8参照)やスペーサ96(
図9参照)を用いて設備機器の高さ調整を行う。
図8は、床面Flの凹凸レベルに対応するアンカボルト91を用いた設備機器の高さ調整例の説明図である。
図9は、床面Flの凹凸レベルに対応するスペーサ96を用いた設備機器の高さ調整例の説明図である。
【0052】
図8に示す例では、複数のアンカボルト91が床面Flに埋め込まれている。各アンカボルト91には、受けナット92aと締結ナット92bが取り付けられており、受けナット92aと締結ナット92bとの間には、設備機器(支柱81p)のベース部81bが配置されている。ベース部81bには、各アンカボルト91を通すための複数の貫通孔が形成されている。締結ナット92bは、ベース部81bの上側からアンカボルト91に取り付けられている。係る構成において、作業者は、設備機器(支柱81p)の据付作業時に、設備機器のベース部81bが水平になるように、床面Flの凹凸レベルに応じて、受けナット92aの取付位置(高さ位置)を調整する。そして、作業者は、受けナット92aの上に設備機器のベース部81bを配置し、ベース部81bの上側から締結ナット92bをアンカボルト91に取り付けて、締結ナット92bを締め付ける。これにより、作業者は、受けナット92aと締結ナット92bとで設備機器のベース部81bを固定する。
【0053】
図9に示す例では、アンカボルト91が床面Flに埋め込まれている。アンカボルト91の周囲の床面Fl上には、スペーサ96が配置されている。
図9に示す例では1つの貫通孔しか示していないが、設備機器のベース部81bには、各アンカボルト91を通すための複数の貫通孔が形成されている。設備機器のベース部81bは、アンカボルト91を貫通孔に通すことで、スペーサ96の上に配置される。係る構成において、作業者は、設備機器の据付作業時に、設備機器のベース部81bが水平になるように、床面Flの凹凸レベルに応じて、所望の厚さのスペーサ96を床面Fl上に配置する。そして、作業者は、スペーサ96の上に設備機器のベース部81bを配置し、図示せぬ締結ナットをアンカボルト91に取り付けて、締結ナットを締め付ける。これにより、作業者は、スペーサ96と締結ナットとで設備機器のベース部81bを固定する。
【0054】
このように、作業者は、設備機器の据付作業時に、床面Flの凹凸レベルに対応してアンカボルト91(
図8参照)やスペーサ96(
図9参照)を用いて設備機器の高さ調整を行う。これにより、作業者は、設備機器の据付不良の発生を抑制して、各設備機器を水平に据え付けることができる。その結果、作業者は、各制御盤81の天井面81tの高さを均一な面に揃え、更に、隣接する制御盤81同士の間に隙間が生じないように、隣接する制御盤81同士を密着させた状態にすることができる。
【0055】
このような設備機器の高さ調整では、墨出し位置における床面Flの凹凸レベルを予め計測する必要がある。この点について、特許文献1に記載された従来の墨出しロボットは、床面Flの凹凸レベルを計測する機能を有していなかった。そのため、従来の墨出しロボットでは、設備機器の高さ調整を行う場合に、作業者が手動で墨出し位置における床面Flの凹凸レベル(勾配レベルを含む)を計測する必要があった。床面Flの凹凸レベルの計測作業は、作業者の熟練した技術と、手間とを要するものである。このような床面Flの凹凸レベルの計測作業は、非熟練者が作業を行った場合に、作業ミスが発生し易いため、作業ミスの発生によって手戻り作業(後戻り作業)が発生したり作業工程の遅延が発生したりすることがあった。そのため、従来の墨出しロボットは、墨出し位置における床面の凹凸レベルの計測作業を自動化することが望まれていた。
【0056】
そこで、本実施形態では、墨出しロボット10が墨出し位置における床面Flの凹凸レベル(勾配レベルを含む)の計測作業を自動的に行う構成になっている。そして、墨出しロボット10は、計測された床面Flの凹凸レベル(勾配レベルを含む)を表す凹凸レベル情報(
図10参照)を床面Flに自動的に印字する。
図10は、墨出しロボット10によって床面Flに印字された印字情報の説明図である。
【0057】
図10は、床面Flに印字された印字情報の一例として、所望位置(墨出し位置)を表す位置情報D1と、所望位置(墨出し位置)に据え付けられる機器を表す機器情報D2と、所望位置(墨出し位置)の凹凸レベルを表す凹凸レベル情報D3とを示している。
【0058】
図10に示す例では、位置情報D1として、任意の長さの十字状の墨出し線が床面Flに印字(描画)されている。十字状の墨出し線は、床面Flに直線状の通り芯として描画された2本の基準芯Stに対して平行になるように印字(描画)されている。ここでは、2本の基準芯StがX軸方向(左右方向)とY軸方向(前後方向)に沿って設定されているものとして説明する。ただし、位置情報D1は、十字状の墨出し線に限らず、円や多角形等の図形、文字、記号等で表すことができる。
【0059】
図10に示す例では、機器情報D2として、据え付ける設備機器の属性を表す「盤1」という文字が床面Flに印字されている。ここでは、「盤1」は、据え付ける設備機器が1台目の制御盤であることを表しているものとする。機器情報D2は、据え付ける設備機器の名称、型番、用途等を表すものであってもよい。機器情報D2は、図形、文字、記号等で表すことができる。
【0060】
図10に示す例では、凹凸レベル情報D3として、設備機器の高さ調整量を表す「0mm」、「1mm」、「2mm」という数字と単位とが床面Flに印字されている。凹凸レベル情報D3は、各所望位置(墨出し位置)で計測された床面Flの凹凸レベルの値である。ここでは、「0mm」が印字された位置は、設備機器の高さ調整が不要な位置であることを表しているものとする。そして、「1mm」が印字された位置は、「0mm」が印字された位置よりも高さが1mm低いため、1mm分だけ設備機器を上昇させる高さ調整を行う位置であることを表しているものとする。同様に、「2mm」が印字された位置は、2mm分だけ設備機器を上昇させる高さ調整を行う位置であることを表しているものとする。
【0061】
<墨出しロボットの姿勢が水平な状態になっている場合の凹凸レベル計測>
墨出しロボットシステムSは、墨出しロボット10の姿勢が水平な状態になっている場合に、
図11A及び
図11Bに示す動作を行うことで、床面Flの凹凸レベルを計測する。
図11A及び
図11Bは、それぞれ、墨出しロボット10の姿勢が水平な状態になっている場合の凹凸レベル計測の説明図である。
【0062】
図11A及び
図11Bに示す例では、凹部Flaが床面Flに形成された場所の上に墨出しロボット10が停止している。凹部Flaの周囲は、水平で平坦なゼロレベルの高さZ0の場所になっている。凹部Flaは、
図10に示す印字情報が印字される印字面である。墨出しロボット10の右側の駆動輪17aと左側の駆動輪17bは、ともに、ゼロレベルの高さZ0の場所に位置している。そして、墨出しロボット10の姿勢は、水平な状態になっている。
【0063】
図11A及び
図11Bに示すように、指向性プリズム15と検知センサSN2は、Z軸アクチュエータ16zのボールねじ部zbの下端部に取り付けられたケースCaの中に収納されている。ボールねじ部zbの上端部には、指向性プリズム15が取り付けられている。ボールねじ部zbは、Z軸アクチュエータ16zの支持部zaによってZ軸方向(上下方向)に移動可能に支持されている。支持部zaは、X軸アクチュエータ16xのバー部材x1に取り付けられている。X軸アクチュエータ16xは、Z軸アクチュエータ16zの支持部zaをバー部材x1の延在方向であるX軸方向(左右方向)に移動可能に支持している。
【0064】
墨出しロボットシステムSは、墨出しロボット10の姿勢が水平な状態になっている場合で、かつ、床面Flの凹凸レベルを計測するときに、墨出しロボット10が
図11Aに示す状態から
図11Bに示す状態に変化する。その際に、追尾型トータルステーション20が三次元空間における指向性プリズム15の位置を計測して、指向性プリズム15の位置情報を墨出しロボット10に出力する。墨出しロボット10のPC14は、指向性プリズム15の位置情報に基づいて指向性プリズム15の上下方向の移動量を計測することで、床面Flの凹凸レベルを計測する。
【0065】
図11Aは、指向性プリズム15を最も高い位置に上昇させたときの墨出しロボット10の状態を示している。
図11Aに示す状態において、追尾型トータルステーション20は、三次元空間における指向性プリズム15の位置を計測して、指向性プリズム15の位置情報を墨出しロボット10に出力する。
【0066】
なお、
図11Aに示す指向性プリズム15の最上昇時の高さPは、指向性プリズム15の高さ位置からプッシャ71(接触端子)の高さ位置までの距離を表している。指向性プリズム15の最上昇時の高さPは、各墨出しロボット10に固有の計測ターゲットの設置高さであり、固定値になっている。指向性プリズム15の最上昇時の高さPは、例えば、墨出しロボット10の設計図に基づいて事前に算出しておくことができる。
【0067】
図11Bは、指向性プリズム15と検知センサSN2を下降させて、検知センサSN2のプッシャ71(接触端子)を床面Flの凹部Flaに接触(接地)させたときの墨出しロボット10の状態を示している。墨出しロボット10は、指向性プリズム15と検知センサSN2の下降動作中において、検知センサSN2のプッシャ71(接触端子)が接地したときに下降動作を停止する(以下、同様。)。
【0068】
図11Bに示す状態において、追尾型トータルステーション20は、三次元空間における指向性プリズム15の位置を計測して、指向性プリズム15の位置情報を墨出しロボット10に出力する。このとき計測される指向性プリズム15の位置のZ方向成分は、指向性プリズム15の下降時の高さP1を表している。指向性プリズム15の下降時の高さP1は、指向性プリズム15の高さ位置からゼロレベルの高さZ0の高さ位置までの距離を表す実測値である。
【0069】
係る構成において、墨出しロボット10のPC14は、以下の式(1)によって印字面の高さZを算出することができる。
Z=P-P1 …(1)
ここで、「Z」は印字面の高さを表し、「P」は指向性プリズム15の最上昇時の高さを表し、「P1」は指向性プリズム15の下降時の高さ(検知センサSN2の接地時の高さ)を表している。
【0070】
墨出しロボット10は、印字面の高さZに基づいて床面Flの凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を作成して、床面Flに印字する。
【0071】
<墨出しロボットの姿勢が傾いた状態になっている場合の凹凸レベル計測>
墨出しロボットシステムSは、墨出しロボット10の姿勢が傾いた状態になっている場合に、
図12A乃至
図13Bに示す動作を行うことで、床面Flの凹凸レベル(勾配レベル)を計測する。
図12A及び
図12Bは、それぞれ、墨出しロボット10の姿勢が傾いた状態になっている場合の傾き角度算出の説明図である。
図13A及び
図13Bは、それぞれ、墨出しロボット10が傾いた状態になっている場合の印字面の高さ算出の説明図である。
【0072】
なお、
図12A乃至
図13Bは、一例として、墨出しロボット10の姿勢がX軸方向(左右方向)に傾いている状態を示している。そして、以下の説明では、X軸方向(左右方向)における凹凸レベルの計測方法について記載する。しかしながら、墨出しロボット10の姿勢は、X軸方向(左右方向)だけでなくY軸方向(前後方向)にも傾く場合が多い。そのため、凹凸レベルの計測は、X軸方向(左右方向)と同様の方法で、Y軸方向(前後方向)に対しても行うものとする。
【0073】
図12A及び
図13Aに示す例では、勾配が床面Flに形成された場所の上に墨出しロボット10が停止している。床面Flは、勾配面Fl2を間にして、低い側に低地面Fl1が形成され、高い側に高地面Fl3が形成された構成になっている。低地面Fl1は、水平で平坦なゼロレベルの高さZ0の場所になっている。勾配面Fl2は、低地面Fl1から高地面Fl3に向けて高さが高くなるように傾斜した場所になっている。高地面Fl3は、水平で平坦な場所になっている。勾配面Fl2は、
図10に示す印字情報が印字される印字面である。墨出しロボット10の左側の駆動輪17bは、低地面Fl1に位置し、墨出しロボット10の右側の駆動輪17aは、高地面Fl3に位置している。そして、墨出しロボット10の姿勢は、傾いた状態になっている。
【0074】
墨出しロボットシステムSは、墨出しロボット10の姿勢が傾いた状態になっている場合で、かつ、床面Flの凹凸レベルを計測するときに、墨出しロボット10が
図12Aに示す動作と
図13Aに示す動作とを行う。その際に、追尾型トータルステーション20が三次元空間における指向性プリズム15の位置を計測して、指向性プリズム15の位置情報を墨出しロボット10に出力する。墨出しロボット10のPC14は、指向性プリズム15の位置情報に基づいて指向性プリズム15の上下方向の移動量を計測することで、床面Flの凹凸レベルを計測する。
【0075】
図12Aは、指向性プリズム15を最も高い位置に上昇させたときの墨出しロボット10の状態を示している。
図12Aに示す状態において、墨出しロボット10のPC14は、以下のようにして墨出しロボット10の傾き角度θを算出する。すなわち、
図12Aに示す状態において、墨出しロボット10は、X軸アクチュエータ16xがZ軸アクチュエータ16zの支持部zaをバー部材x1の延在方向であるX軸方向(左右方向)に移動させる。
図12Aに示す例では、X軸アクチュエータ16xが高さZ1の第1計測点から高さZ2の第2計測点まで移動量L分だけZ軸アクチュエータ16zの支持部zaをX軸方向(左右方向)に移動させている。追尾型トータルステーション20は、第1計測点と第2計測点での三次元空間における指向性プリズム15の位置を計測して、指向性プリズム15の位置情報を墨出しロボット10に出力する。このとき計測される指向性プリズム15の位置のZ方向成分は、第1計測点の高さZ1と第2計測点の高さZ2とを表している。
【0076】
墨出しロボット10のPC14は、以下の式(2)によって指向性プリズム15の上下方向変動量ΔZを算出することができる。
ΔZ=Z1-Z2 …(2)
ここで、「ΔZ」は指向性プリズム15の上下方向変動量を表し、「Z1」は第1計測点の高さを表し、「Z2」は第2計測点の高さを表している。
【0077】
墨出しロボット10の傾き角度θは、指向性プリズム15の移動量Lと指向性プリズム15の上下方向変動量ΔZとに対して、
図12Bに示す関係を有する。そのため、墨出しロボット10のPC14は、以下の式(3)によって墨出しロボット10の傾き角度θを算出することができる。
θ=sin
-1(ΔZ/L) …(3)
ここで、「θ」は墨出しロボット10の傾き角度を表し、「L」は指向性プリズム15の移動量を表し、「ΔZ」は指向性プリズム15の上下方向変動量を表している。
【0078】
図13Aは、指向性プリズム15と検知センサSN2を下降させて、検知センサSN2のプッシャ71(接触端子)を床面Flの勾配面Fl2に接触させたときの墨出しロボット10の状態を示している。
【0079】
図13Aに示す状態において、追尾型トータルステーション20は、三次元空間における指向性プリズム15の位置を計測して、指向性プリズム15の位置情報を墨出しロボット10に出力する。このとき計測される指向性プリズム15の位置のZ方向成分は、指向性プリズム15の下降時の高さZ3を表している。指向性プリズム15の下降時の高さZ3は、指向性プリズム15の高さ位置から低地面Fl1の高さ位置までの距離を表す実測値である。なお、低地面Fl1の高さは、ゼロレベルの高さZ0となっている。
【0080】
係る構成において、墨出しロボット10のPC14は、以下の式(4)によって印字面の高さZを算出することができる。
Z=Z3-h …(4)
ここで、「Z」は印字面の高さを表し、「Z3」は指向性プリズム15の高さ位置から低地面Fl1の高さ位置までの距離を表し、「h」は指向性プリズム15の高さ位置から検知センサSN2のプッシャ71(接触端子)と接触している勾配面Fl2の高さ位置までの距離を表している。
【0081】
墨出しロボット10の傾き角度θは、指向性プリズム15の最上昇時の高さPと前記した距離hとに対して、
図13Bに示す関係を有する。そのため、墨出しロボット10のPC14は、以下の式(5)によって墨出しロボット10の傾き角度θを算出することができる。
cosθ=P/h …(5)
ここで、「θ」は墨出しロボット10の傾き角度を表し、「P」は指向性プリズム15の最上昇時の高さを表し、「h」は指向性プリズム15の高さ位置から検知センサSN2のプッシャ71(接触端子)と接触している勾配面Fl2の高さ位置までの距離を表している。
【0082】
墨出しロボット10のPC14は、前記した式(4)と前記した式(5)の関係から以下の式(6)によって印字面の高さZを算出することができる。
Z=Z3-h=Z3-(P/cosθ) …(6)
ここで、「Z」は印字面の高さを表し、「Z3」は指向性プリズム15の高さ位置から低地面Fl1の高さ位置までの距離を表し、「h」は指向性プリズム15の高さ位置から検知センサSN2のプッシャ71(接触端子)と接触している勾配面Fl2の高さ位置までの距離を表している。また、「θ」は墨出しロボット10の傾き角度を表し、「P」は指向性プリズム15の最上昇時の高さを表し、「h」は指向性プリズム15の高さ位置から検知センサSN2のプッシャ71(接触端子)と接触している勾配面Fl2の高さ位置までの距離を表している。
【0083】
墨出しロボット10は、印字面の高さZに基づいて床面Flの凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を作成して、床面Flに印字する。
【0084】
<墨出しロボットの動作>
以下、
図14乃至
図21を参照して、墨出しロボット10の動作について説明する。
図14乃至
図21は、それぞれ、墨出しロボット10の動作を示すフローチャートである。
図14乃至
図21に示す各処理は、主にPC14とモーションコントローラMCとによって実行される。
【0085】
(第1動作例)
図14は墨出しロボット10の第1動作例を示している。第1動作例では、墨出しロボット10は、複数箇所の任意の所望位置を順次走行しながら、各所望位置において、床面Flの凹凸レベルを計測するとともに、プリンタ16で凹凸レベル情報を床面Flに印字する。
【0086】
なお、本実施形態では、「床面Flの凹凸レベルを計測する」動作は、プッシャ71(接触端子)が接地するまで検知センサSN2を下降させてから、追尾型トータルステーション20から下降停止時の指向性プリズム15の位置情報を取得することによって実現される(以下、同様。)。
【0087】
具体的には、
図14に示すように、墨出しロボット10は、所望位置へ走行する(ステップS110)。
【0088】
追尾型トータルステーション20は、三次元空間における指向性プリズム15の位置を計測して、指向性プリズム15の位置情報を墨出しロボット10に出力する。墨出しロボット10のPC14は、指向性プリズム15の位置情報に基づいて指向性プリズム15の上下方向の移動量を計測することで、床面Flの凹凸レベルを計測し(ステップS120)、凹凸レベル情報を記憶する(ステップS130)。
【0089】
次に、墨出しロボット10は、プリンタ16で各種情報を床面Flに印字する(ステップS140)。
【0090】
次に、墨出しロボット10は、計測すべき残りの箇所があるか否かを判定する(ステップS150)。ステップS150の判定で、残りありと判定された場合(“Yes”の場合)に、処理はステップS110に戻る。ステップS150の判定で、残りなしと判定された場合(“No”の場合)に、一連のルーチンの処理を終了する。
【0091】
(第2動作例)
図15は墨出しロボット10の第2動作例を示している。第2動作例では、墨出しロボット10は、複数箇所の任意の所望位置を順次走行しながら、各所望位置において、床面Flの凹凸レベルを計測する。その後、墨出しロボット10は、再度、複数箇所の任意の所望位置を順次走行しながら、各所望位置において、プリンタ16で凹凸レベル情報を床面Flに印字する。
【0092】
具体的には、
図15に示すように、墨出しロボット10は、所望位置へ走行する(ステップS110)。
【0093】
追尾型トータルステーション20は、三次元空間における指向性プリズム15の位置を計測して、指向性プリズム15の位置情報を墨出しロボット10に出力する。墨出しロボット10のPC14は、指向性プリズム15の位置情報に基づいて指向性プリズム15の上下方向の移動量を計測することで、床面Flの凹凸レベルを計測し(ステップS120)、凹凸レベル情報を記憶する(ステップS130)。
【0094】
次に、墨出しロボット10は、計測すべき残りの箇所があるか否かを判定する(ステップS132)。ステップS132の判定で、残りありと判定された場合(“Yes”の場合)に、処理はステップS110に戻る。ステップS132の判定で、残りなしと判定された場合(“No”の場合)に、所望位置へ走行する(ステップS134)。
【0095】
次に、墨出しロボット10は、プリンタ16で各種情報を床面Flに印字する(ステップS140)。
【0096】
次に、墨出しロボット10は、計測すべき残りの箇所があるか否かを判定する(ステップS152)。ステップS152の判定で、残りありと判定された場合(“Yes”の場合)に、処理はステップS134に戻る。ステップS152の判定で、残りなしと判定された場合(“No”の場合)に、一連のルーチンの処理を終了する。
【0097】
(第3動作例及び第4動作例)
墨出しロボット10は、床面Flの画像を読み取る画像読取手段(図示せず)を有する構成であってもよい。この場合は、例えば、作業者が墨出し線等の位置情報を床面Flに予め印しておき、その位置情報が印された箇所の凹凸レベルを墨出しロボット10が検知するように構成することができる。この場合に、墨出しロボット10は、例えば、
図14に示す第1動作例の代わりに、
図16に示す第3動作例を実行することができる。また、墨出しロボット10は、例えば、
図15に示す第2動作例の代わりに、
図17に示す第4動作例を実行することができる。
【0098】
図16に示す第3動作例は、
図14に示す第1動作例と比較すると、ステップS110の代わりに、ステップS105a,S105bの処理を行う点で相違する。すなわち、第3動作例では、ステップS105a,S105bにおいて、墨出しロボット10は、走行しながら、画像読取手段(図示せず)で床面Flに予め印された墨出し線等の位置情報を読み取る。
【0099】
図17に示す第4動作例は、
図15に示す第2動作例と比較すると、ステップS110及びステップS134の代わりに、ステップS105a,S105bの処理、及び、ステップS135a,S135bの処理を行う点で相違する。すなわち、第4動作例では、ステップS105a,S105bにおいて、墨出しロボット10は、走行しながら、画像読取手段(図示せず)で床面Flに予め印された墨出し線等の位置情報を読み取る。同様に、墨出しロボット10は、ステップS135a,S135bにおいて、走行しながら、画像読取手段(図示せず)で床面Flに予め印された墨出し線等の位置情報を読み取る。
【0100】
(墨出しロボットの姿勢が水平な状態になっている場合の凹凸レベルの計測動作)
図18は、
図14乃至
図17に示すステップS120の処理において、
図11A及び
図11Bに示すように、墨出しロボット10の姿勢が水平な状態になっている場合の凹凸レベルの計測動作を示している。
【0101】
図18に示すように、
図14乃至
図17に示すステップS120の処理において、まず、墨出しロボット10は、印字ヘッド61を印字位置に移動する(ステップS205)。
【0102】
次に、墨出しロボット10は、検知センサSN2のプッシャ71(接触端子)が接地するまで、印字ヘッド61を下降する(ステップS210)。
【0103】
墨出しロボット10は、検知センサSN2のプッシャ71(接触端子)が接地したときに、検知センサSN2の作動を検知する(ステップS215)。墨出しロボット10は、検知センサSN2の作動を検知すると、印字ヘッド61の下降動作を停止する。
【0104】
次に、墨出しロボット10は、追尾型トータルステーション20から下降停止時の指向性プリズム15の位置情報を取得し、下降停止時の指向性プリズム15の位置情報に基づいて指向性プリズム15の下降時の高さP1を計測する(ステップS220)。
【0105】
次に、墨出しロボット10は、
図11Bに示すように、指向性プリズム15の下降時の高さP1に基づいて印字面の高さZを算出する(ステップS225)。そして、墨出しロボット10は、印字面の高さZに基づいて床面Flの凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を作成する。これにより、凹凸レベルの計測動作が終了する。
【0106】
(墨出しロボットの姿勢が傾いた状態になっている場合の凹凸レベルの計測動作)
図19は、
図14乃至
図17に示すステップS120の処理において、
図12A乃至
図13Bに示すように、墨出しロボット10の姿勢が傾いた状態になっている場合の凹凸レベルの計測動作を示している。
【0107】
なお、ここでは、
図12A乃至
図13Bに示すように、墨出しロボット10の姿勢がX軸方向(左右方向)に傾いている場合を想定して、凹凸レベルの計測動作について説明する。しかしながら、墨出しロボット10の姿勢は、X軸方向(左右方向)だけでなくY軸方向(前後方向)にも傾く場合が多い。そのため、凹凸レベルの計測動作は、X軸方向(左右方向)と同様の方法で、Y軸方向(前後方向)に対しても行うものとする。
【0108】
図19に示すように、
図14乃至
図17に示すステップS120の処理において、まず、墨出しロボット10は、
図12Aに示すように、印字ヘッド61を左右に任意の移動量L分だけ移動して第1計測点の高さZ1と第2計測点の高さZ2とを計測する(ステップS305)。このときの計測は、墨出しロボット10が追尾型トータルステーション20から第1計測点と第2計測点での指向性プリズム15の位置情報を取得し、指向性プリズム15の位置情報に基づいて行う。
【0109】
次に、墨出しロボット10は、
図12Aに示すように、移動量Lに対する上下方向変動量ΔZを算出し(ステップS310)、更に、
図12Bに示すように、傾き角度θを算出する(ステップS315)。
【0110】
次に、墨出しロボット10は、印字ヘッド61を印字位置に移動し(ステップS320)、
図13Aに示すように、検知センサSN2のプッシャ71(接触端子)が接地するまで、印字ヘッド61を下降する(ステップS320)。
【0111】
墨出しロボット10は、検知センサSN2のプッシャ71(接触端子)が接地したときに、印字ヘッド61の下降動作を停止する(ステップS325)。
【0112】
次に、墨出しロボット10は、追尾型トータルステーション20から下降停止時の指向性プリズム15の位置情報を取得し、
図13Aに示すように、下降停止時の指向性プリズム15の位置情報に基づいて指向性プリズム15の下降時の高さZ3を計測する(ステップS330)。
【0113】
次に、墨出しロボット10は、指向性プリズム15の高さ位置から検知センサSN2のプッシャ71(接触端子)と接触している勾配面Fl2の高さ位置までの距離hを算出する(ステップS335)。
【0114】
次に、墨出しロボット10は、
図13Aに示すように、指向性プリズム15の下降時の高さZ3と距離hとに基づいて印字面の高さZを算出する(ステップS340)。そして、墨出しロボット10は、印字面の高さZに基づいて床面Flの凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を作成する。これにより、凹凸レベルの計測動作が終了する。
【0115】
(印字動作)
図20は、
図14乃至
図17に示すステップS140の処理の詳細を示している。
図20に示すように、墨出しロボット10は、印字ギャップの高さまで印字ヘッド61を上昇する(ステップS405)。印字ギャップは、印字を行う際に、印字ヘッド61が移動しても印字面に衝突しないようにするために予め定められた隙間である。
【0116】
次に、墨出しロボット10は、例えば
図10に示すように、墨出し線等の位置情報D1、機器情報D2、凹凸レベル情報D3等を床面Flに印字する(ステップS410)。
【0117】
次に、墨出しロボット10は、印字ヘッド61を最上位置の高さまで上昇する(ステップS415)。これにより、印字動作が終了する。
【0118】
(計測ロボットモード)
墨出しロボット10は、床面Flに印字せずに、床面Flの凹凸レベルを計測する計測ロボットモードを実行することができる。
図21は、計測ロボットモードを実行する場合の動作を示している。
【0119】
具体的には、
図21に示すように、墨出しロボット10は、所望位置へ走行する(ステップS110)。
【0120】
追尾型トータルステーション20は、三次元空間における指向性プリズム15の位置を計測して、指向性プリズム15の位置情報を墨出しロボット10に出力する。墨出しロボット10のPC14は、指向性プリズム15の位置情報に基づいて指向性プリズム15の上下方向の移動量を計測することで、床面Flの凹凸レベルを計測し(ステップS120)、凹凸レベル情報を記憶する(ステップS130)。
【0121】
次に、墨出しロボット10は、ロボットの現在位置情報や床面Flの凹凸レベル情報を外部装置30に出力する(ステップS160)。
【0122】
次に、墨出しロボット10は、計測すべき残りの箇所があるか否かを判定する(ステップS170)。ステップS170の判定で、残りありと判定された場合(“Yes”の場合)に、処理はステップS110に戻る。ステップS170の判定で、残りなしと判定された場合(“No”の場合)に、外部装置30は、床面Flの各位置における凹凸レベルを表す床面情報を作成する(ステップS180)。これにより、一連のルーチンの処理を終了する。
【0123】
図21に示すフローでは、外部装置30は、墨出しロボット10からロボットの現在位置情報を取得するとともに、任意の所望位置における床面Flの凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を取得して、床面Flの各位置における凹凸レベルを表す床面情報を作成する。なお、外部装置30は、追尾型トータルステーション20(三次元計測手段)からロボットの現在位置情報を取得するようにしてもよい。
【0124】
本実施形態によれば、自律的に走行する墨出しロボット10が機械的に墨出しするため、設備工事における墨出し作業を省力化できる。その際に、墨出しロボット10は、床面の凹凸レベルを計測し、床面の凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を床面に印字する。このような墨出しロボット10は、墨出し位置における床面の凹凸レベルの計測作業を自動化することができる。
【0125】
以上の通り、本実施形態に係る墨出しロボット10によれば、墨出し位置における床面の凹凸レベルの計測作業を自動化することができる。
【0126】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。また、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0127】
例えば、
図1に示す墨出しロボット10は、プリンタ16を削除することで、計測ロボットとして構成することができる。この計測ロボットは、例えば
図21に示すフローの処理を専ら実行するために用いられる。
【0128】
この計測ロボットは、床面の上を走行する走行手段(走行アクチュエータ17ac)と、床面を検知する検知センサSN2と、三次元計測手段(追尾型トータルステーション20)によって位置が計測される計測ターゲット(指向性プリズム15)と、走行手段の動作を制御する制御手段(PC14)と、を備える構成となる。そして、制御手段は、走行手段に任意の所望位置へ走行させ、所望位置において、移動手段に検知センサによって床面が検知されるまで計測ターゲットを下方向に移動させてから、三次元計測手段によって計測された計測ターゲットの位置に基づいて床面の凹凸レベルを計測する構成となる。
【0129】
この計測ロボットは、凹凸レベル情報を記憶手段に記憶しておき、タッチパネルディスプレイ13を操作することで凹凸レベル情報をタッチパネルディスプレイ13に表示したり外部装置30に出力したりすることができる。
【0130】
この計測ロボットの制御手段は、走行手段に複数箇所の任意の所望位置を順次走行させながら、各所望位置において、移動手段に検知センサによって床面が検知されるまで計測ターゲットを下方向に移動させてから、三次元計測手段によって計測された計測ターゲットの位置に基づいて床面の凹凸レベルを計測し、凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を記憶手段に記憶する構成であってもよい。
【0131】
また、この計測ロボットの制御手段は、走行手段に複数箇所の任意の所望位置を順次走行させながら、各所望位置において、移動手段に検知センサによって床面が検知されるまで計測ターゲットを下方向に移動させてから、三次元計測手段によって計測された計測ターゲットの位置に基づいて床面の凹凸レベルを計測し、凹凸レベルを表す凹凸レベル情報を外部装置に出力する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0132】
10 墨出しロボット
11 フレーム
11op 開口部
12 収納ケース
13 タッチパネルディスプレイ (手動入力手段)
14 PC (制御手段)
15 指向性プリズム (計測ターゲット)
15ac プリズムアクチュエータ (回転アクチュエータ)
16 プリンタ (印字手段)
16ac プリンタアクチュエータ (移動手段)
16x X軸アクチュエータ (左右方向移動手段)
16y Y軸アクチュエータ (前後方向移動手段)
16z Z軸アクチュエータ (上下方向移動手段)
17 駆動輪 (回転体)
17ac 走行アクチュエータ (走行手段)
18 無線LAN親機
191,192,193 表示灯
20 追尾型トータルステーション (三次元計測手段)
30 外部装置
60 取付板
61 印字ヘッド
62 インク収納部
63 作動機構
66 ペン型印字ヘッド
67 把持部
71 プッシャ (接触端子)
71a プッシャ (接触端子)
72 ブッシュ
73 圧縮バネ
74 シャフト
75 検知部
76 ケース
77 レーザ照射口
78 レーザ光
81 制御盤 (設備機器)
81t 天井面
81b ベース部
81p 支柱
91 アンカボルト
92a 受けナット
92b 締結ナット
96 スペーサ
Ca ケース
D1 位置情報 (墨出し線情報)
D2 機器情報 (型番情報、用途情報、アンカボルト情報等)
D3 凹凸レベル情報
Fl 床面
Fla 凹部
Fl1 低地面
Fl2 勾配面
Fl3 高地面
h 距離
L 移動量
MC モーションコントローラ
P 高さ (計測ターゲットの設置高さ)
P1,Z,Z0,Z1,Z2,Z3 高さ
S 墨出しロボットシステム
SN1 測域センサ
SN2 検知センサ
St 基準芯
x1,y1,y2,y3 バー部材
za 支持部
zb ボールねじ部
ΔZ 上下方向変動量
θ 傾き角度