(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025352
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】固体酸化物型燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04225 20160101AFI20230215BHJP
H05B 6/54 20060101ALI20230215BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20230215BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20230215BHJP
H01M 8/1213 20160101ALI20230215BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20230215BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20230215BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20230215BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20230215BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20230215BHJP
【FI】
H01M8/04225
H05B6/54
H01M8/02
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/1213
H01M8/04007
H01M8/0432
H01M8/04858
H01M8/249
H01M8/04302
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130509
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】514066561
【氏名又は名称】株式会社パナソニックシステムネットワークス開発研究所
(71)【出願人】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】内山 和弘
(72)【発明者】
【氏名】内山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中林 正剛
(72)【発明者】
【氏名】内山 靖之
【テーマコード(参考)】
3K090
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
3K090AA02
3K090AB13
5H126BB06
5H127AA07
5H127DA01
5H127DB47
5H127DC74
5H127DC81
(57)【要約】
【課題】 加熱効率の高く、短時間かつ小さいエネルギーで内部構造物の温度を目標温度(作動温度)まで上げることのできる固体酸化物型燃料電池を提供する。
【解決手段】 固体酸化物型燃料電池100は、電解質セラミック3と、電解質セラミック3を両側から挟むアノード電極4およびカソード電極5とを備える電極部1と、電極部1を両側から挟むように電極部1の周囲に配置され、アノード電極4およびカソード電極5にそれぞれ物理的に接触する金属枠2と、金属枠2に電気的に接続され、金属枠2に高周波の電力を給電するための給電ポート7を備える。電極部1と金属枠2の形状およびサイズおよび材料は、電極部1の共振周波数が目標共振周波数となるように選択され、高周波発振器8からの送信周波数は、目標共振周波数となるように調整される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質セラミックと、前記電解質セラミックを両側から挟むアノード電極およびカソード電極とを備える電極部と、
前記電極部を両側から挟むように前記電極部の周囲に配置され、前記アノード電極および前記カソード電極にそれぞれ物理的に接触する金属枠と、
前記金属枠に電気的に接続され、前記金属枠に高周波の電力を給電するための給電ポートと、
を備え、
前記電極部と前記金属枠の形状およびサイズおよび材料は、前記電極部の共振周波数が所定の目標共振周波数となるように選択されており、
前記高周波を発生させる高周波発振器からの送信周波数は、前記所定の目標共振周波数となるように調整されている、固体酸化物型燃料電池。
【請求項2】
前記高周波発振器は、前記高周波発振器から発振される前記高周波の送信周波数を調整するように構成された送信周波数調整部を備え、
前記送信周波数調整部は、前記電極部の温度に応じて変化する前記電極部の共振周波数に前記高周波発振器の送信周波数を追従させるように構成されている、請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項3】
共振周波数が異なる複数の前記電極部を備え、
前記高周波発振器は、前記複数の異なる発振周波数で高周波を送信できるように構成されている、請求項1または請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項4】
前記高周波発振器は、前記複数の異なる発振周波数を個別に制御する周波数制御部を備える、請求項3に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項5】
前記高周波を発生させる高周波発振器は、前記電極部の温度に応じて、前記給電ポートに供給する高周波の電力を制御する電力制御部を備える、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項6】
前記高周波を発生させる高周波発振器は、時間軸でパルス駆動させるパルス駆動制御部を備える、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項7】
前記高周波発振器から前記給電ポートに供給される高周波の電力の供給先を、他の固体酸化物型燃料電池の給電ポートに切り替えるスイッチ回路と、前記スイッチ回路を切り替えるスイッチ駆動制御部を備える、請求項6に記載の固体酸化物型燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)は、電解質セラミックをアノード層とカソード層とで両側から挟むことによってセルが構成された燃料電池である。SOFCは作動温度が高く、発電を開始させるためには内部構造物(セルなど)を700度近くまで加熱する必要がある。
【0003】
従来、このSOFCを加熱する方法として、ガスバーナーなどを用いて外部構造物(筐体など)を加熱する加熱方法が知られている。しかし、このガスバーナーを用いた加熱方法では、外部構造物に加えられた熱を用いて内部構造物を間接的に温めているため、加熱効率が低く、内部構造物が目標温度(作動温度)に達するまでに、長い時間と大きなエネルギーを要するという問題があった。また、ガスバーナーを用いた加熱方法では、NOx(窒素酸化物)などのエミッションが発生してしまうという問題があった。
【0004】
そこで従来、SOFCの発電体(セル)にマイクロ波を照射して加熱する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このマイクロ波を用いた加熱方法によれば、NOx(窒素酸化物)などのエミッションの発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のマイクロ波を用いた加熱方法でも、十分に高い加熱効率が得られず、内部構造物が目標温度(作動温度)に達するまでに、依然として長い時間と大きなエネルギーを要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、加熱効率の高く、短時間かつ小さいエネルギーで内部構造物の温度を目標温度(作動温度)まで上げることのできる固体酸化物型燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の固体酸化物型燃料電池は、電解質セラミックと、前記電解質セラミックを両側から挟むアノード電極およびカソード電極とを備える電極部と、前記電極部を両側から挟むように前記電極部の周囲に配置され、前記アノード電極および前記カソード電極にそれぞれ物理的に接触する金属枠と、前記金属枠に電気的に接続され、前記金属枠に高周波の電力を給電するための給電ポートと、を備え、前記電極部と前記金属枠の形状およびサイズおよび材料は、前記電極部の共振周波数が所定の目標共振周波数となるように選択されており、前記高周波を発生させる高周波発振器からの送信周波数は、前記所定の目標共振周波数となるように調整されている。
【0009】
この構成によれば、電極部の周囲に配置された金属枠に給電ポートから給電を行うと、金属枠を通じて高周波が直接電極部へ供給され、供給された高周波によって電極部が加熱される。この場合、内部構造物(電極部)に加えられた高周波を用いて内部構造物を直接的に温めているため、加熱効率の高く、短時間かつ小さいエネルギーで内部構造物の温度を目標温度(作動温度)まで上げることができる。
そのうえ、高周波発振器からの送信周波数と電極部の共振周波数が同じ(所定の目標共振周波数)になるように構成されるので、電極部へ供給された高周波は電極部で共振し、高周波による加熱効率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の固体酸化物型燃料電池では、前記高周波発振器は、前記高周波発振器から発振される前記高周波の送信周波数を調整するように構成された送信周波数調整部を備え、前記送信周波数調整部は、前記電極部の温度に応じて変化する前記電極部の共振周波数に前記高周波発振器の送信周波数を追従させるように構成されてもよい。
【0011】
この構成によれば、電極部の温度変化(室温から700度近くまで温度変化する)に応じて電極部の共振周波数が変化しても、高周波発振器の発振周波数と電極部の共振周波数とをそろえることができる。したがって、電極部の温度変化に起因して高周波による加熱効率が低下するのを抑制することができる。
【0012】
また、本発明の固体酸化物型燃料電池は、共振周波数が異なる複数の前記電極部を備え、前記高周波発振器は、前記複数の異なる発振周波数で高周波を送信できるように構成されてもよい。
【0013】
この構成によれば、固体酸化物型燃料電池は、共振周波数が異なる複数の電極部を備えており、高周波発振器は、複数の異なる発振周波数で高周波を送信させることができる。例えば、共振周波数が異なる3つの電極部(一方の外側の電極部A、真ん中の電極部B、他方の外側の電極部C)を備えている場合に、これら3つの電極部の共振周波数(電極部Aの共振周波数fA、電極部Bの共振周波数fB、電極部Cの共振周波数fC)と同一の3つの周波数(fA、fB、fC)の高周波を高周波発振器から同時に送信することにより、3つの電極部(電極部A、電極部B、電極部C)を同時に効率よく加熱することができる。また、3つの電極部のうちのある電極部(真ん中の電極部B)だけ加熱したい場合には、その電極部の共振周波数(電極部Bの共振周波数fB)で高周波を供給することにより、効率よく目標の電極部(真ん中の電極部B)を加熱することができる。
【0014】
また、本発明の固体酸化物型燃料電池では、前記高周波発振器は、前記複数の異なる発振周波数を個別に制御する周波数制御部を備えてもよい。
【0015】
この構成によれば、給電ポートへ送信する3つの周波数(fA、fB、fC)の高周波の電力を個別に制御することで、3つの電極部(電極部A、電極部B、電極部C)の加熱温度を個別に制御することができる。
【0016】
また、本発明の固体酸化物型燃料電池は、前記高周波を発生させる高周波発振器は、前記電極部の温度に応じて、前記給電ポートに供給する高周波の電力を制御する電力制御部を備えてもよい。
【0017】
この構成によれば、電極部の温度に応じて、給電ポートに供給する高周波の電力が制御される。電極部の温度が高くなると、給電ポートに供給する高周波の電力は(電極部の温度が低かったときに比べて)少なくて済む。したがって、電極部の温度が高くなるのに応じて給電ポートに供給する高周波の電力を小さくすることにより、トータルで供給する高周波の電力を削減することができる。
【0018】
また、本発明の固体酸化物型燃料電池では、前記高周波を発生させる高周波発振器は、時間軸でパルス駆動させるパルス駆動制御部を備えてもよい。
【0019】
この構成によれば、高周波発振器が、時間軸でパルス駆動するように制御(パルス駆動制御)される。高周波発振器をパルス駆動制御(例えば、オンオフ制御)しても、オン時間での温度上昇が、オフ時間での温度下降を上回るオンオフ制御のデューティー比に設定すれば、電極部の温度は十分に上昇させることができる。オン制御されているときには、給電ポートに高周波が供給されるが、オフ制御されているときには、給電ポートに高周波が供給されない。したがって、トータルで供給する高周波の電力を削減することができる。また、加熱されるセルの位置に偏りがある場合でも、オフ時間にセルの温度が拡散されて、セルの温度を均等にすることができる。また、高周波発振器の連続運転時間が減ることで、高周波発振器の寿命を延ばすことができる。
【0020】
また、本発明の固体酸化物型燃料電池は、前記高周波発振器から前記給電ポートに供給される高周波の電力の供給先を、他の固体酸化物型燃料電池の給電ポートに切り替えるスイッチ回路と、前記スイッチ回路を切り替えるスイッチ駆動制御部を備えてもよい。
【0021】
この構成によれば、高周波発振器から給電ポートに供給される高周波の供給先を、スイッチ駆動制御部によりスイッチ回路を制御し、他の固体酸化物型燃料電池の給電ポートに切り替える。これにより、1つの高周波発振器から複数の固体酸化物型燃料電池の給電ポートに高周波を時間軸で連続して供給することが可能になる。例えば、スイッチ駆動制御のデューティー比は、それぞれの固体酸化物型燃料電池の電極部の温度差に応じて変動させてもよい。また、それぞれの固体酸化物型燃料電池の物理的な大きさの比率に応じて変動させてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、加熱効率の高く、短時間かつ小さいエネルギーで内部構造物の温度を目標温度(作動温度)まで上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における固体酸化物型燃料電池の構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態における固体酸化物型燃料電池の要部の斜視図である。
【
図3】本発明の第2の実施の形態における固体酸化物型燃料電池の構成を示す説明図である。
【
図4】本発明の第3の実施の形態における固体酸化物型燃料電池の構成を示す説明図である。
【
図5】本発明の第4の実施の形態における固体酸化物型燃料電池の構成を示す説明図である。
【
図6】本発明の第5の実施の形態における固体酸化物型燃料電池の構成を示す説明図である。
【
図7】本発明の第6の実施の形態における固体酸化物型燃料電池の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態の固体酸化物型燃料電池について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、電子機器や電気自動車などに用いられる固体酸化物型燃料電池の場合を例示する。
【0025】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の固体酸化物型燃料電池の構成を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池の構成を示す説明図であり、
図2は、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池の要部の斜視図である。
【0026】
図1および
図2に示すように、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池100は、平板状の電極部1と、電極部1を両側(
図1における上下両側)から挟みこむように配置される平板状の金属枠2を備えている。金属枠2は、中央に開口部を有している(
図2参照)。電極部1は、平板状の電解質セラミック3(誘電体)と、電解質セラミック3を両側(
図1における上下両側)から挟むアノード電極4およびカソード電極5で構成されている。電極部1と金属枠2とでセルユニット6(セル構成)が構成されるともいえる。
【0027】
金属枠2は、アノード電極4およびカソード電極5に物理的に接触している。
図1の例では、上側の金属枠2がアノード電極4に物理的に接触しており、下側の金属枠2がカソード電極5に物理的に接触している。金属枠2には、給電ポート7が電気的に接続されている。給電ポート7には、高周波発振器8が電気的に接続されており、給電ポート7から金属枠2に高周波(例えば、マイクロ波)の電力が給電される。
【0028】
本実施の形態の固体酸化物型燃料電池100では、電極部1と金属枠2の形状およびサイズおよび材料は、電極部1の共振周波数が所定の目標共振周波数となるように選択されている。また、高周波発振器8からの送信周波数は、上記の目標共振周波数となるように調整されている。例えば、電極部1と金属枠2およびの形状を、平面視で四角形状とし(
図2参照)、金属枠2のサイズを、縦65mm、横41mmとし、金属枠2の開口部のサイズを、縦48mm、横18mmとし、アノード電極4およびカソード電極5のサイズを、縦50.4mm、横23.7mm、厚さ0.18mmとし、電解質セラミック3のサイズを、縦49.6mm、横19.8mm、厚さ0.2mmとし、電極部1の材料を、電気伝導率1.66×10
6S/mの材料(例えば、アノード電極4の材料としては、例えば、NiO(酸化ニッケル)などが用いられ、カソード電極5の材料としては、例えば、LSCF(ランタン-ストロンチウム-コバルト-鉄)、LSM(ランタン-ストロンチウム-マンガン)などが用いられる)とし、金属枠2の材料を、電気伝導率1.66×10
6S/mの材料(例えば、SUS(ステンレス)などが用いられる)とし、電解質セラミック3の材料を、誘電率20.5、誘電正接0.01の材料(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)などが用いられる)とすると、電極部1の共振周波数が、目標共振周波数740MHzとなる。
【0029】
このような本発明の第1の実施の形態の固体酸化物型燃料電池100によれば、電極部1の周囲に配置された金属枠2に給電ポート7から給電を行うと、金属枠2を通じて高周波が直接電極部1へ供給され、供給された高周波によって電極部1が加熱される。この場合、内部構造物(電極部1)に加えられた高周波を用いて内部構造物を直接的に温めているため、加熱効率の高く、短時間かつ小さいエネルギーで内部構造物の温度を目標温度(作動温度)まで上げることができる。
【0030】
そのうえ、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池100は、高周波発振器8からの送信周波数と電極部1の共振周波数が同じ(所定の目標共振周波数)になるように構成されているので、電極部1へ供給された高周波は電極部1で共振し、高周波による加熱効率を向上させることができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態の固体酸化物型燃料電池について説明する。ここでは、第2の実施の形態の固体酸化物型燃料電池が、第1の実施の形態と相違する点を中心に説明する。ここで特に言及しない限り、本実施の形態の構成および動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0032】
図3は、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池の構成を示す説明図である。
図3に示すように、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池200は、電極部1の温度を測定する温度センサ9と、高周波発振器8から発振される高周波の送信周波数を調整するように構成された送信周波数調整部10を備えている。送信周波数調整部10は、電極部1の温度に応じて変化する電極部の共振周波数に高周波発振器8の送信周波数を追従させるように構成されている。例えば、電極部1の温度に応じて電極部1の共振周波数が-50MHz/500度の変化率で変化する場合、送信周波数調整部10は、高周波発振器8の送信周波数を-100kHz/度の変化率で変化させるように制御する。
【0033】
このような本発明の第2の実施の形態の固体酸化物型燃料電池200によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0034】
その上、本実施の形態では、電極部1の温度変化に応じて電極部1の共振周波数が変化しても、高周波発振器8の発振周波数と電極部1の共振周波数とをそろえることができる。例えば、一般的なSOFCでは、電極部1が室温から700度近くまで温度変化するが、そのような電極部1の温度変化に応じて電極部1の共振周波数が変化しても、高周波発振器8の発振周波数と電極部1の共振周波数とをそろえることができる。したがって、電極部1の温度変化に起因して高周波による加熱効率が低下するのを抑制することができる。なお、ここでは電極部1が室温から700度近くまで温度変化する場合を例示して説明したが、電極部1の温度変化の範囲がこれに限定されないことは言うまでもない。
【0035】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態の固体酸化物型燃料電池について説明する。ここでは、第3の実施の形態の固体酸化物型燃料電池が、第1の実施の形態と相違する点を中心に説明する。ここで特に言及しない限り、本実施の形態の構成および動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0036】
図4は、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池の構成を示す説明図である。
図4に示すように、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池300は、複数のセルユニット6が、直列に配置され、互いに電気的に接続されている。セルユニット6とセルユニット6との間には、ガスのセパレータSが配置されている。セパレータSは、例えば雲母などで構成される。なお、セルユニット6とセルユニット6との間にセパレータSが設けられている場合であっても、セルユニット6の金属枠2とセルユニット6の金属枠2とは、接続部Cを介して互いに電気的に接続されている(
図4参照)。接続部Cの材料としては、例えば、金属枠2と同じ材料(金属)を用いることができる。
【0037】
本実施の形態の固体酸化物型燃料電池300では、複数のセルユニット6がスタック(積層)されて、一つのスタックユニット12(スタック構成)が構成されているともいえる。給電ポート7は、複数のセルユニット6の金属枠2のうち最も外側(
図4における最上側と最下側)に配置された金属枠2に電気的に接続されており、最も外側に配置された金属枠2に、給電ポート7から高周波の給電が行われる。
【0038】
また、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池300は、共振周波数が異なる複数の電極部1(電極部A、電極部B、電極部C)を備え、高周波発振器8は、複数の異なる発振周波数(f
A、f
B、f
C)で高周波を送信できるように構成されている。また、高周波発振器8は、複数の異なる発振周波数(f
A、f
B、f
C)を個別に制御する周波数制御部11を備えている。なお、
図4では、共振周波数が異なる複数の電極部1の一例として、3つの電極部1が図示されているが、電極部1の数がこれに限定されないことは言うまでもない。
【0039】
このような本発明の第3の実施の形態の固体酸化物型燃料電池300によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0040】
その上、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池300は、共振周波数が異なる複数の電極部1を備えており、高周波発振器8は、複数の異なる発振周波数で高周波を送信させることができる。例えば、共振周波数が異なる3つの電極部(一方の外側の電極部A、真ん中の電極部B、他方の外側の電極部C)を備えている場合に、これら3つの電極部の共振周波数(電極部Aの共振周波数fA、電極部Bの共振周波数fB、電極部Cの共振周波数fC)と同一の3つの周波数(fA、fB、fC)の高周波を高周波発振器から同時に送信することにより、3つの電極部(電極部A、電極部B、電極部C)を同時に効率よく加熱することができる。また、3つの電極部のうちのある電極部(真ん中の電極部B)だけ加熱したい場合には、その電極部の共振周波数(電極部Bの共振周波数fB)で高周波を供給することにより、効率よく目標の電極部(真ん中の電極部B)を加熱することができる。
【0041】
本実施の形態では、給電ポートへ送信する3つの周波数(fA、fB、fC)の高周波の電力を個別に制御することで、3つの電極部(電極部A、電極部B、電極部C)の加熱温度を個別に制御することができる。
【0042】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態の固体酸化物型燃料電池について説明する。ここでは、第4の実施の形態の固体酸化物型燃料電池が、第3の実施の形態と相違する点を中心に説明する。ここで特に言及しない限り、本実施の形態の構成および動作は、第3の実施の形態と同様である。
【0043】
図5は、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池の構成を示す説明図である。
図5に示すように、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池400は、電極部1の温度を測定する温度センサ13と、電極部1の温度に応じて給電ポート7に供給する高周波の電力を制御する電力制御部14を備えている。例えば、電極部1を700度まで加熱する場合であっても、室温(25度)から加熱する場合と、400度から加熱する場合とで、必要とされる高周波電力が異なる。そこで、電極部1の温度を温度センサ13で測定し、測定された温度に応じて高周波発振器8の出力電力を電力制御部14によって制御する。例えば、電極部1の温度が低い場合には、高周波発振器8の出力電力を大きくし、電極部1の温度が高い場合には、高周波発振器8の出力電力を小さくする。
【0044】
このような本発明の第4の実施の形態の固体酸化物型燃料電池400によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0045】
その上、本実施の形態では、電極部1の温度に応じて、給電ポート7に供給する高周波の電力が制御される。電極部1の温度が高くなると、給電ポート7に供給する高周波の電力は(電極部1の温度が低かったときに比べて)少なくて済む。したがって、電極部1の温度が高くなるのに応じて給電ポート7に供給する高周波の電力を小さくすることにより、トータルで供給する高周波の電力を削減することができる。これにより、必要最小限の電力で、固体酸化物型燃料電池400を効率よくかつ高速に起動することができる。
【0046】
また、本実施の形態では、直列に配置された複数の電極部1が金属枠2および接続部Cを介して電気的に接続されており、これらの電極部1は、電気回路的にはコンデンサの直列接続とみなすことができる。したがって、最も外側に配置された金属枠2に給電ポート7から給電を行うことにより、すべての電極部1に対して均一に高周波の給電を行うことが可能になる。
【0047】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態の固体酸化物型燃料電池について説明する。ここでは、第5の実施の形態の固体酸化物型燃料電池が、第3の実施の形態と相違する点を中心に説明する。ここで特に言及しない限り、本実施の形態の構成および動作は、第3の実施の形態と同様である。
【0048】
図6は、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池の構成を示す説明図である。
図6に示すように、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池500は、高周波発振器8を時間軸でパルス駆動させるパルス駆動制御部15を備えている。パルス駆動制御部15は、固体酸化物型燃料電池500を所定の目標温度(例えば700度)まで加熱するときに、一定の時間周期(例えば、60秒周期)で高周波発振器8をオンオフ制御する。
【0049】
このような本発明の第5の実施の形態の固体酸化物型燃料電池500によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0050】
その上、本実施の形態では、高周波発振器8が、時間軸でパルス駆動するように制御(パルス駆動制御)される。高周波発振器8をパルス駆動制御(例えば、オンオフ制御)しても、オン時間での温度上昇が、オフ時間での温度下降を上回るオンオフ制御のデューティー比に設定すれば、電極部1の温度は十分に上昇させることができる。オン制御されているときには、給電ポート7に高周波が供給されるが、オフ制御されているときには、給電ポート7に高周波が供給されない。したがって、トータルで供給する高周波の電力を削減することができる。また、加熱されるセルの位置に偏りがある場合でも、オフ時間にセルの温度が拡散されて、セルの温度を均等にすることができる。また、高周波発振器8の連続運転時間が減ることで、高周波発振器8の寿命を延ばすことができる。
【0051】
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態の固体酸化物型燃料電池について説明する。ここでは、第6の実施の形態の固体酸化物型燃料電池が、第3の実施の形態と相違する点を中心に説明する。ここで特に言及しない限り、本実施の形態の構成および動作は、第3の実施の形態と同様である。
【0052】
図7は、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池の構成を示す説明図である。
図7に示すように、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池600は、高周波の供給先として、複数(
図7の例では2つ)のスタックユニット12を備えている。そして、本実施の形態の固体酸化物型燃料電池600は、高周波の供給先を切り替えるスイッチ回路16と、スイッチ回路16を切り替えるスイッチ駆動制御部17を備えている。
【0053】
スイッチ駆動制御部17は、一定の時間周期(例えば、60秒周期)で高周波の供給先を切り替えるように、スイッチ回路16を制御する。例えば、
図7の例では、ある一定の時間(例えば、60秒)の間は、一方のスタックユニット12(
図7の上側のスタックユニット12)の給電ポート7に高周波発振器8から高周波の電力を供給し、その次の一定の時間(例えば、60秒)の間は、他方のスタックユニット12(
図7の下側のスタックユニット12)の給電ポート7に高周波発振器8から高周波の電力を供給するように、スイッチ回路16を制御する。
【0054】
このような本発明の第6の実施の形態の固体酸化物型燃料電池600によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0055】
その上、本実施の形態では、高周波発振器8から給電ポート7に供給される高周波の供給先を、スイッチ駆動制御部17によりスイッチ回路16を制御し、他の固体酸化物型燃料電池(スタックユニット12)の給電ポート7に切り替える。これにより、1つの高周波発振器8から複数の固体酸化物型燃料電池(スタックユニット12)の給電ポート7に高周波を時間軸で連続して供給することが可能になる。例えば、スイッチ駆動制御のデューティー比は、それぞれの固体酸化物型燃料電池(スタックユニット12)の電極部1の温度差に応じて変動させてもよい。また、それぞれの固体酸化物型燃料電池(スタックユニット12)の物理的な大きさの比率に応じて変動させてもよい。
【0056】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明にかかる固体酸化物型燃料電池は、加熱効率の高く、短時間かつ小さいエネルギーで内部構造物の温度を目標温度(作動温度)まで上げることができるという効果を有し、電子機器や電気自動車などに用いられ有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 電極部
2 金属枠
3 電解質セラミック
4 アノード電極
5 カソード電極
6 セルユニット(セル構成)
7 給電ポート
8 高周波発振器
9 温度センサ
10 送信周波数調整部
11 周波数制御部
12 スタックユニット(スタック構成)
13 温度センサ
14 電力制御部
15 パルス駆動制御部
16 スイッチ回路
17 スイッチ駆動制御部
100、200、300、400、500、600 固体酸化物型燃料電池