(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025355
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】宅配ボックス及び宅配ボックスによる荷物の配送処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20230101AFI20230215BHJP
【FI】
G06Q10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130518
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】306021424
【氏名又は名称】株式会社ハッピー
(74)【代理人】
【識別番号】100188422
【弁理士】
【氏名又は名称】小沼 良平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 英夫
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】
荷物の配送において、宅配ボックスが荷物の中継配送のための機能を提供する。
【解決手段】
コンピュータの機能を有する宅配ボックスは、荷物に付された識別情報を読取ることにより荷物の宛先住所を取得し、前記宛先住所と宅配ボックスの配置住所とを比較する。両者が同一又は所定の範囲以内でないときは、事前に登録している一人以上の配送候補人に前記荷物の中継配送を要求するメッセージを送信する。その後、一人以上の前記配送候補人から前記荷物の中継配送が可能とのメッセージを受信したときには、所定の条件に従い一人の配送人を選択し、前記通信手段を介して前記配送人に前記荷物の中継配送を依頼するメッセージを送信する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宅配ボックスであって、
前記宅配ボックスは、荷物に付される識別情報を読取る読取手段と、
前記宅配ボックスの配置住所を取得する取得手段と、
通信手段と、
命令セットを蓄積する記憶手段と、
前記命令セットを実行する少なくとも1つのプロセッサ、から構成され
前記命令セットは、
前記宅配ボックスに収納される荷物に付される識別情報を前記読取手段により読取り、
読取った前記識別情報から前記荷物の宛先住所を取得し、
前記宛先住所と前記取得手段から取得した前記宅配ボックスの配置住所とを比較し、同一又は所定の範囲以内でないときは、前記通信手段を介して、事前に登録している一人以上の配送候補人に前記荷物の配送を要求する配送要求メッセージを送信し、
前記通信手段を介して一人以上の前記配送候補人から前記荷物の配送が可能であることを示す配送可能メッセージを受信したときには、所定の条件に従い一人の配送人を選択し、
前記通信手段を介して前記配送人に前記荷物の配送を依頼する配送依頼メッセージを送信するようにした、宅配ボックス。
【請求項2】
前記命令セットはさらに、前記宛先住所と前記宅配ボックスが配置されている配置住所とが同一であるときは、前記荷物の到着を受取人に通知するようにした、
請求項1に記載の宅配ボックス。
【請求項3】
前記取得手段は、GPS信号を受信する受信器であって、前記宅配ボックスに設置され又は前記宅配ボックスから所定離隔範囲以内に設置される前記受信器を有し、
前記受信器が受信したGPS信号をもとに宅配ボックスの配置住所を取得する請求項1に記載の宅配ボックス。
【請求項4】
前記取得手段は、事前に宅配ボックスの配置住所を記憶した記憶手段を有し、
前記記憶手段から宅配ボックスの配置住所を取得する請求項1に記載の宅配ボックス。
【請求項5】
前記配送要求メッセージは前記配置住所及び前記宛先住所を含む請求項1に記載の宅配ボックス。
【請求項6】
前記配送可能メッセージは次の配送先となる宅配ボックスの配置住所又は前記宛先住所を含む請求項1に記載の宅配ボックス。
【請求項7】
コンピュータを有する宅配ボックスであって、前記コンピュータは荷物に付される識別情報を読取る読取手段と前記宅配ボックスの配置住所を取得する取得手段とを含む、前記宅配ボックスが行う荷物の配送処理方法であって、
前記宅配ボックスに収納される荷物に付される識別情報を前記読取手段により読取り、
読取った前記識別情報から前記荷物の宛先住所を取得し、
前記宛先住所と前記取得手段から取得した前記宅配ボックスの配置住所とを比較し、同一又は所定の範囲以内でないときは、事前に登録している一人以上の配送候補人に前記荷物の配送を要求する配送要求メッセージを送信し、
一人以上の前記配送候補人から前記荷物の配送が可能であることを示す配送可能メッセージを受信したときには、所定の条件に従い一人の配送人を選択し、
前記配送人に前記荷物の配送を依頼する配送依頼メッセージを送信する、荷物の配送処理方法。
【請求項8】
コンピュータを有する宅配ボックスであって、前記コンピュータは荷物に付される識別情報を読取る読取手段と前記宅配ボックスの配置住所を取得する取得手段とを含む、前記宅配ボックスが実行する荷物の配送処理プログラムであって、
前記宅配ボックスに収納される荷物に付される識別情報を前記読取手段により読取るステップと、
読取った前記識別情報から前記荷物の宛先住所を取得するステップと、
前記宛先住所と前記取得手段から取得した前記宅配ボックスの配置住所とを比較し、同一又は所定の範囲以内でないときは、事前に登録している一人以上の配送候補人に前記荷物の配送を要求する配送要求メッセージを送信するステップと、
一人以上の前記配送候補人から前記荷物の配送が可能であることを示す配送可能メッセージを受信したときには、所定の条件に従い一人の配送人を選択するステップと、
前記配送人に前記荷物の配送を依頼する配送依頼メッセージを送信するステップ、を有する荷物の配送処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の宅配ボックスを用いて荷物の中継配送に係る処理を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、荷物の配送を実現するにあたって、配送等に必要な機器やシステムの管理・運用が一つの事業者によってなされ、それとともに配送対象である荷物の管理も一つの事業者により集中的に管理されることが多い。例えば、特許文献1は荷物の集荷と分配を行う配送センターの例であり、配送センターを介して荷物が集中管理されている。特許文献2は物流情報を収集するシステムの例であり、荷物の配送に関する情報が一か所に集められ、整理、処理されている。
【0003】
荷物の配送を利用者の観点からみると、現在宅配ボックスの各戸への設置が進んでいる。不在時でも再配達の必要がないので、利用者だけではなく事業者にとっても都合がよい。そして、宅配ボックスの中にはコンピュータや通信機能を内蔵したものも出現している。特許文献3や特許文献4がその一例である。このような技術開発の背景にはコンピュータや通信モジュール等の小型化がある。さらにこれらを実現する電子デバイスの高性能化や多機能化も顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-341414号公報
【特許文献2】特開平5-338735号公報
【特許文献3】特開2019-111283号公報
【特許文献4】特開2019-146761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
荷物の配送管理を一事業者に任せてしまうと、利用者からみて利用料金の高額固定化を招いたり、地域で配送を担う人材をうまく生かせなかったり、課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明である宅配ボックスは、荷物に付される識別情報を読取る読取手段と、前記宅配ボックスの配置住所を取得する取得手段と、通信手段と、命令セットを蓄積する記憶手段と、前記命令セットを実行する少なくとも1つのプロセッサ、から構成され前記命令セットは、前記宅配ボックスに収納される荷物に付される識別情報を前記読取手段により読取り、読取った前記識別情報から前記荷物の宛先住所を取得し、前記宛先住所と前記取得手段から取得した前記宅配ボックスの配置住所とを比較し、同一又は所定の範囲以内でないときは、前記通信手段を介して、事前に登録している一人以上の配送候補人に前記荷物の配送を要求する配送要求メッセージを送信し、前記通信手段を介して一人以上の前記配送候補人から前記荷物の配送が可能であることを示す配送可能メッセージを受信したときには、所定の条件に従い一人の配送人を選択し、前記通信手段を介して前記配送人に前記荷物の配送を依頼する配送依頼メッセージを送信する、構成を有している。
【0007】
上記(1)の構成によると、宅配ボックスは、荷物に付された識別情報を読み取ることにより前記荷物の宛先住所を取得し、前記宛先住所と宅配ボックスの配置住所とを比較し、同一又は所定の範囲以内でないときは、通信手段を介して事前に登録している一人以上の配送候補人に前記荷物の配送を要求し、前記通信手段を介して一人以上の前記配送候補人から前記荷物の配送が可能であるとの応答を受けたときには、所定の条件に従い一人の配送人を選択し、前記通信手段を介して前記配送人に前記荷物の配送を依頼するメッセージを送信するようにしている。
【0008】
言い換えると、宅配ボックスは荷物の宛先住所と宅配ボックスの配置住所とが同一又は互いに近傍でないときには、中継配送のための処理を行う。ここでいう中継配送のための処理とは、宅配ボックスが事前に登録している一人以上の配送候補人との間でメッセージの交換を通じて荷物の中継配送を行う配送人を決定するための処理をいう。
【0009】
(2)上記(1)の装置において、前記命令セットはさらに、前記宛先住所と前記宅配ボックスが配置されている配置住所とが同一であるときは、前記荷物の到着を受取人に通知する、構成を有している。
【0010】
上記(2)の構成によると、さらに前記宛先住所と前記宅配ボックスが配置されている配置住所とが同一であるときは、前記荷物の到着を受取人に通知するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
荷物の中継配送を担当する配送人を決定する機能を宅配ボックスに設けることにより、一事業者に任せることなく荷物の遠方への配送が可能となる。配送候補人を宅配ボックスに登録することにより、地域で配送を担う人材を活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る宅配ボックスの外観を示す図である。
【
図2】本発明に係る宅配ボックスの機能構成を示す図である。
【
図3】ネットワーク50を介して宅配ボックス10が発送人X等と通信する様子を示す図である。
【
図4】宅配ボックス10a、10b、10cを介した中継配送の様子を示す図である。
【
図5】中継配送に係る処理フローのうち、宅配ボックス10aが実行する処理フローを示す図である。
【
図6】中継配送に係る処理フローのうち、宅配ボックス10bが実行する処理フローを示す図である。
【
図7】中継配送に係る処理フローのうち、宅配ボックス10cが実行する処理フローを示す図である。
【
図8】宅配ボックス10と配送候補人又は配送人とが交換するメッセージの内容を示す図である。
【
図9】宅配ボックス10が受取人Yに送信するメッセージの内容を示す図である。
【
図10】宅配ボックス10が荷物の受渡しのために機能するときに、宅配ボックス10が実行する処理フローである。
【
図11】中継配送に係る処理を宅内コンピュータ70が実行するときの、宅配ボックス10と当該宅内コンピュータ70との接続を示す図である。
【
図12】中継配送に係る処理をネットワーク上のクラウドサーバ80が実行するときの、宅配ボックス10とクラウドサーバ80との接続を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例0014】
1.宅配ボックスの外観説明、おおよその機能説明(
図1)
図1は本発明に係る宅配ボックス10の外観である。但し、宅配ボックス10の形状はこれに限るものではない。
【0015】
宅配ボックス10は箱体11を有し、ヒンジ13を中心に扉12が開閉する構造である。さらに宅配ボックス10は電子錠14、バーコードリーダー15及びスイッチ17を有する。
【0016】
電子錠14はバーコードリーダー15と連動して動作する。バーコードリーダー15によって読取ったバーコードは後述する制御部20が実行するソフトウエア処理を経て、バーコードに記録されている鍵情報が正しい場合には電子錠14が開錠する。
【0017】
本発明において、バーコードリーダー15は荷物に貼付されるバーコードや後述する配送人が保有する携帯端末の画面上に表示されるバーコードを読み取る。スイッチ17は荷物を宅配ボックス10に収納したのちに押下するものであり、荷物を宅配ボックス10に収納したというイベントを後述の制御部20に知らせることを目的とする。
【0018】
2.宅配ボックスの機能構成(
図2)
宅配ボックス10のハードウエア構成を
図2に示す。宅配ボックス10は制御部20及び外部入出力部21から構成される。制御部20と外部入出力部21はI/Oバス41で接続される。制御部20はプロセッサ30、メモリ31、通信インターフェース33及びI/Oインターフェース34から構成される。外部入出力部21は電子錠14、バーコードリーダー15、全地球測位システム信号受信部16(以下、GPS信号受信部16)及びスイッチ17から構成される。宅配ボックス10は全体として組み込みコンピュータと捉えることができる。
【0019】
プロセッサ30は1つ又は複数のプロセッシングコアを有し、メモリ31に格納されているプログラムを実行する。メモリ31はROMなどの不揮発性メモリ及びRAMなどの揮発性メモリから構成され、宅配ボックス10が有する機能を実現するための命令セットであるプログラムが格納される。
【0020】
通信インターフェース33は発送人端末60,受取人端末61及び配送候補人端末62との通信を行うものであり、インターネットプロトコルをサポートするものであれば物理的な通信回線の種類は何であってもよい。宅配ボックス10は通信インターフェース33を介してインターネット上の各種ホームページにも接続可能である。
【0021】
I/Oインターフェース34はI/Oバス41を提供することにより、制御部20に接続される外部入出力部21を収容する。本発明では外部入出力部21として電子錠14、バーコードリーダー15、GPS信号受信部16及びスイッチ17を含んでおり、これらがI/Oインターフェース34に接続される。なお、外部入出力部21の各要素(電子錠14、バーコードリーダー15、GPS信号受信部16及びスイッチ17)は共通バスであるI/Oバス41を介さずに、個別にI/Oインターフェース34に接続されるものであってもよい。
【0022】
プロセッサ30、メモリ31、通信インターフェース33及びI/Oインターフェース34は信号バス40により相互接続される。
【0023】
上述した制御部20及び外部入出力部21を構成する電子部材及び電子部品は宅配ボックス10を構成する箱体11に内蔵して実装される。
【0024】
3.ネットワークを介した接続(
図3)
図3はネットワークを介して宅配ボックス10が種々の機器とメッセージ交換を行う様子を示している。宅配ボックス10は荷物100を発送する発送人Xが保有する発送人端末60、荷物100の受取人Yが保有する受取人端末61及び荷物100の配送の候補となる配送候補人が保有する配送候補人端末62とメッセージ交換をする。
【0025】
以後、宅配ボックス10と発送人Xが保有する発送人端末60との間で行われるメッセージ交換を、宅配ボックス10と発送人Xとの間のメッセージ交換と称する。同様に、宅配ボックス10と受取人Yが保有する発送人端末61との間で行われるメッセージ交換を、宅配ボックス10と受取人Yとの間のメッセージ交換と称する。さらに宅配ボックス10と配送候補人が保有する配送候補端末62との間で行われるメッセージ交換を、宅配ボックス10と配送候補人との間のメッセージ交換と称する。
【0026】
宅配ボックス10は相手先情報や相手アドレスをもとにネットワーク上のコンピュータや携帯端末だけではなく、ウェブ資源にアクセスできる。ここでウェブ資源とは情報検索サイドや広く公開されているホームページなどである。
【0027】
4.中継配送の概要(
図4)
図4は宅配ボックス10を介した中継配送の様子である。ここで、発送人Xは荷物100を受取人Yに届けたいと仮定する。
【0028】
発送人Xが宅配ボックス10aに投函した荷物100は次の宅配ボックス10bまで配送され、さらに宅配ボックス10bを経由して宅配ボックス10cに配送される。受取人Yは宅配ボックス10cに到着した荷物を受け取る。ここで宅配ボックス10a~10cは同一のハードウエア及びソフトウエアを有する。
図4では、宅配ボックス10a~10cのうち宅配ボックス10a及び10bが荷物100の中継配送に必要な処理を実行している。
【0029】
宅配ボックス10aから宅配ボックス10bに荷物100を配送するのは、配送候補人A1~Anの中から既定の条件に従い選択された一人の配送候補人である。本発明では選択された当該配送候補人を配送人Aと称する。既定の条件に従い宅配ボックス10aが配送人Aを選択するのである。
【0030】
宅配ボックス10bから宅配ボックス10cまでの配送についても同様である。つまり、宅配ボックス10bから宅配ボックス10cに荷物100を配送するのは、配送候補人B1~Bnの中から選択された一人の配送候補人であり、配送人Bである。
【0031】
つまり、中継配送を行う宅配ボックス10a及び10bは一人以上の配送候補人の中から一人を選択するのである。選択されたそれぞれの配送候補人(つまり配送人)は宅配ボックス10a又は10bに赴き、宅配ボックス10a又は10bの中に収納されている荷物100を次の宅配ボックスまで配送する。
【0032】
図4では中継配送を2回行い最終目的地である宅配ボックス10cに荷物100が到達しているが、これに限るものではなく、中継配送は何回あってもよい。一般に、中継配送の回数が多ければ、中継配送による荷物100の1回当たりの移動距離は短いこととなる。
【0033】
また、次の宅配ボックスをどこにし、どのような経路で次の宅配ボックスまで配送するかは配送人に一任することとする。ここで、配送候補人とは各宅配ボックス10に荷物100が収納又は到着したときに当該荷物の配送を依頼できる可能性を有する者のことをいう。配送候補人は事前に各宅配ボックス10に登録されている一人又は複数の者である。
図4においては、宅配ボックス10aには配送候補人A1~Anが登録されており、宅配ボックス10bには配送候補人B1~Bnが登録されている。
【0034】
また、配送候補人Anと配送候補人Bnとは原則的には重複しない。各配送候補人のグループは宅配ボックス毎に登録され、かつ宅配ボックスは互いに相当の距離だけ離れているからである。なお、広い範囲にわたって配送を行う事業者を排除するものではないため、配送候補人Anと配送候補人Bnとが重複する場合もあり得る。
【0035】
5.処理フロー(
図5、6,7及び
図8、9)
以下、配送方法の詳細を説明する。
図5~
図7は3台の宅配ボックス10により荷物100が配送されるときの処理フローである。まず
図5から説明する。
【0036】
始めに発送人Xが荷物100の発送を行うために、少なくとも発送人Xの住所と、受取人Yの住所(以下、宛先住所)とを含む情報(つまり、荷物を識別するために必要な情報)をバーコード110として作成し、作成されたバーコード110を荷物100に貼付する(S1)。
【0037】
次に、発送人Xは宅配ボックス10aのバーコードリーダー15に貼付したバーコード110をかざす。これにより宅配ボックス10aはバーコード110を読取り、その情報を認識する。これにより宅配ボックス10aは荷物100の宛先住所を取得する(S10)。
【0038】
次に、発送人Xは荷物100を宅配ボックス10aに収納し、扉12を閉める。その後、発送人Xは押下ボタン17を押下する。これにより宅配ボックス10aは荷物100が宅配ボックス10aに収納されたと認識する(S11)。
【0039】
次に、宅配ボックス10aは宅配ボックス10aの配置住所を取得する。その後、宛先住所と配置住所とを比較する(S12)。
【0040】
ここで宅配ボックス10aの配置住所とは、宅配ボックス10aに設けられているGPS信号受信部16が受信するGPS信号をもとに演算して取得できる位置情報である。
【0041】
図2で述べたように、GPS信号受信部16は宅配ボックス10aに設置されているが設置場所はこれに限らない。GPS信号受信部16は宅配ボックス10aの配置住所の位置情報について演算し取得できる限りにおいて宅配ボックス10aから所定離隔範囲以内に設置されているのであってよい。当然ながら、GPS信号受信部16の配置条件については宅配ボックス10b、10cについても同様である。さらに、GPS信号受信部16に代えて、事前に宅配ボックス10aの配置住所を記憶した記憶手段から宅配ボックス10aの配置住所を取得するのであってもよい。ソフトウエアを実行するうえで必要の都度、宅配ボックス10aのプロセッサ30が当該記憶手段から配置住所を参照するのである。当該記憶手段の例としては既に述べたメモリ31であったり、プロセッサ30からアクセス可能で着脱可能な外部メモリであったり、いろいろな形態が考えられる。
【0042】
次に、宛先住所と宅配ボックス10aの配置住所とを比較する(S12)。比較した結果、同一(又は所定の範囲以内、例えば住所情報における番地又はブロックの違いや一定の離隔距離以下など)であれば、宅配ボックス10aは受取人Yの宛先住所と同一であるとみなせるので、荷物100の配送は終了することとなる。
【0043】
ここでは、受取人Yの宛先住所は宅配ボックス10aの配置住所とは異なると仮定する。宛先住所と宅配ボックス10aの配置住所とが同一ではないので、宅配ボックス10aは中継配送を要求するために配送候補人A1~Anに配送要求メッセージを送信する(S13)。
【0044】
配送候補人A1~Anから配送可能との意思を表明する一通又は複数の配送可能メッセージが宅配ボックス10aに返送されたときは(S14)、宅配ボックス10aは所定の条件に従い、一人の配送候補人を選択する(S15)。所定の条件とは種々の条件が考えられる。例えば、最速に配送可能メッセージを返送した配送候補人を選択する方法が考えられる。また、宅配ボックス10aから宛先住所までの直線距離と配送候補人が回答した配送先住所と宛先住所までの直線距離との差異が最大となる回答をした配送候補人を選択することも考えられる。
【0045】
なお、配送候補人を事前に決めておき、当該特定の配送候補人に配送要求メッセージを送信するのであってもよい。この場合は配送人を決定する処理(S15)は不要となる。さらに、S13において宅配ボックス10aが配送候補人A1~Anに配送要求メッセージを送信したにもかかわらず、宅配ボックス10aが一通の配送可能メッセージも受信できなかったときは、配送の意思を有する者が不存在であることとなる。このため、このような場合は配送要求メッセージを再送するなどして、配送可能な配送候補人を探す処理が必要となる。但し、この場合の処理は本発明の対象外であるので詳細を割愛する。
【0046】
次に、選択した一人の配送候補人を配送人Aとして配送依頼メッセージを配送人Aに送信する(S16)。当該配送依頼メッセージは鍵情報も含む。
【0047】
その後、配送人Aは宅配ボックス10aに赴き、当該鍵情報をもとに作成したバーコードをスマートフォン等の端末に表示させたうえで宅配ボックス10aのバーコードリーダー15にかざす(S17)。この動作により、バーコードリーダー15から入力された鍵情報が宅配ボックス10aにおいて検証され、配送人Aの認証が試みられる(S18)。認証に成功すると、配送人Aは荷物100の取出しが可能となる(S19)。その後、配送人Aは荷物100を次の宅配ボックス10bまで配送する(S20)。
【0048】
ここで上記登場した3種類のメッセージについて説明する。
図8に示す配送要求メッセージは、宅配ボックス10が送信し複数の配送候補人が受信するブロードキャスト型のメッセージであり、その内容は送信者である宅配ボックス10の配置住所及び宛先住所を少なくとも含むものである。配送の始点である宅配ボックス10の配置住所と荷物100の最終的な配送先である宛先住所を配送候補人に知らせ、開示することにより、配送の可否を配送候補人に判断させることを目的としている。
【0049】
配送可能メッセージは配送要求メッセージに対する配送候補人の応答である。宅配ボックス10からの配送要求に応じることができる(つまり、配送の役務を担当できる)ことを、配送候補人が宅配ボックス10に回答することを目的としている。配送可能メッセージは
図8に示すとおりであり、配送候補人自身が申告する配送可能な次の配送先住所を少なくとも含む内容を配送候補人が宅配ボックス10に向けて送信するメッセージである。
【0050】
配送依頼メッセージは上記配送可能メッセージを受信した宅配ボックスが、選択した配送人に依頼する配送内容を確認することを目的としている。その内容は次の配送先住所(配送候補人自身が申告した配送先住所)及び鍵情報である。鍵情報は、配送に先立ち荷物100が収納されている宅配ボックス10を開錠するために必要な情報である。
【0051】
次に
図6の処理フローを説明する。配送人Aが荷物100を持ち宅配ボックス10bに到着したと仮定する(S21)。
【0052】
S10と同様に宅配ボックス10bはバーコード110を読取り、その情報を認識する。これにより宅配ボックス10bは荷物100の宛先住所を取得する(S30)。以下、S30~S40までの処理は
図5におけるS10~S20までの処理と同様であるが、確認のため以下に示す。
【0053】
S11と同様にS31において、配送人Aは荷物100を宅配ボックス10bに収納し、扉12を閉める。その後、発送人Xは押下ボタン17を押下して、宅配ボックス10bは荷物100が収納されたと認識する(S31)。
【0054】
次に宅配ボックス10bは宅配ボックス10bの配置住所を取得する。その後、宛先住所と宅配ボックス10bの配置住所とを比較する(S32)。比較した結果、受取人Yの宛先住所は宅配ボックス10bの配置住所とは異なると仮定する。宅配ボックス10bは荷物100の最終目的地ではなく中継地点なのである。このためS13と同様に、宅配ボックス10bは配送候補人B1~Bnに中継配送を要求するために配送要求メッセージを送信する(S33)。
【0055】
S14と同様に、配送候補人B1~Bnから複数の配送可能メッセージが宅配ボックスに返送されたときは(S34)、宅配ボックス10bは所定の条件に従い、一人の配送候補人を選択する(S35)。
【0056】
次に、選択した一人の配送候補人を配送人Bとして配送依頼メッセージを当該配送人Bに送信する(S36)。当該配送依頼メッセージは鍵情報も有する。
【0057】
その後、配送人Bは宅配ボックス10bに赴き、当該鍵情報をもとに作成したバーコードをスマートフォン等の端末に表示させたうえで宅配ボックス10bのバーコードリーダー15にかざす(S37)。この動作により、バーコードリーダー15から入力された鍵情報が宅配ボックス10bにおいて検証され、配送人Bの認証が試みられる(S38)。認証に成功すると、配送人Bは荷物100の取出しが可能となる(S39)。その後、配送人Bは荷物100を次の宅配ボックス10cまで配送する(S40)。
【0058】
次に
図7の処理フローを説明する。S41からS52までは
図6におけるS21~S32までと同様であるので、その説明を省略する。
【0059】
S52において、受取人Yの宛先住所が宅配ボックス10cの配置住所と同一であると仮定する。つまり宅配ボックス10cの配置住所が荷物100の宛先住所であり、最終目的地である。
【0060】
この場合、宅配ボックス10cは荷物100が到着したことを受取人Yに通知するために、受取人Yに到着メッセージを送信する(S54)。到着メッセージは
図9に示す通り、宅配ボックス10cを開錠するための鍵情報を含んでいる。
【0061】
到着メッセージを受信した受取人Yは宅配ボックス10cに赴き、当該鍵情報をもとに作成したバーコードをスマートフォン等の端末に表示させたうえで宅配ボックス10bのバーコードリーダー15にかざす(S55)。この動作により、バーコードリーダー15から入力された鍵情報が宅配ボックス10cにおいて検証され、受取人Yの認証が試みられる(S56)。認証に成功すると、受取人Yは荷物100の取出しが可能となり(S57)、荷物100を受け取る(S58)。
【0062】
上記において、バーコードに代えてICタグであってもよい。この場合、バーコードリーダー15に代えて又はさらにICタグリーダーを宅配ボックス10に設ける。
【0063】
ここで、バーコードリーダー15は荷物に貼付されるバーコードや配送人が保有する携帯端末の画面上に表示されるバーコードを読み取り、読取った情報を制御部20に通知することを目的としている。このため、当該目的を達成しうるのであればバーコードリーダー15は箱体11に一体的に設けられることに限定されない。例えば、荷物を円滑に出し入れすることを考慮しバーコードリーダー15が宅配ボックス10から離れた場所に設けられる場合もあり得る。この場合、宅配ボックス10内の制御部20とバーコードリーダー15とは有線又は無線によるLANや低消費電力通信網など種々の形式のネットワークにより接続される。又は宅配ボックス10内の制御部20とバーコードリーダー15とがシリアルバス又はパラレスバス形式の電子ケーブルで接続される。
実施例1では宅配ボックス10が中継配送の制御をすることを説明した。実施例1では宅配ボックスを配送のために利用するものであった(以下、「配送モード」と称する)。実施例2は当該宅配ボックス10を介して発送人Xと受取人Yが直接荷物100の出し入れを行うものである。知り合い同士の品物や貴重品の受渡し又は交換の場所として宅配ボックス10を使用するのである(以下、「ターミナルモード」と称する)。
ここで、荷物100が宅配ボックス100に収納された場合、宅配ボックス100は実施例1で示す配送モードに従い動作するべきなのか、実施例2で示すターミナルモードにより動作するべきなのかが不明となる場合もある。この場合、発送人Xが荷物100を宅配ボックス10に収納するときにどちらのモードで動作するべきかを宅配ボックス10に指定するようにする。
例えば、発送人Xがスイッチ17を一定時間内に1回押下して荷物100を収納するときは実施例1による配送モードとして動作し、一定時間内に2回以上押下したときには実施例2によるターミナルモードとして動作するのである。スイッチ17の操作方法であって事前に定義した異なる操作方法を使い分けることにより、いずれのモードによる動作が求められているかを宅配ボックス10に指定するのである。もちろん、スイッチ17を用いることなく上記動作の違いを宅配ボックス10に指定することも可能である。例えば、発送時に発送人Xが作成するバーコード110に上記動作の違いに関する情報を埋め込み、当該バーコードを宅配ボックス10に読み取らせるようにしてもよい。