(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025366
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】冷熱回収システムおよび冷熱利用方法
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20230215BHJP
C09K 5/06 20060101ALI20230215BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20230215BHJP
F25B 39/00 20060101ALI20230215BHJP
F25B 27/02 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
F28D20/00 B
C09K5/06 L
C09K5/04 Z
F25B39/00 H
F25B27/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130547
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】坂口 善樹
(57)【要約】
【課題】ガスの減圧(断熱膨張)により生じる冷熱を比較的シンプルな設備により、効率良く利用することができる冷熱回収システムを提供する。
【解決手段】少なくともシェル14とチューブ16を備え、断熱膨張されたガスがシェル14に供給される熱交換器12と、凝固点が0℃以下の液体またはコロイド溶液から成る流動性蓄熱材をチューブ16に供給する蓄熱材供給部18と、熱交換器12で冷却された流動性蓄熱材を回収する蓄熱材回収部20と、を有する事を特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシェルとチューブを備え、断熱膨張されたガスが前記シェルに供給される熱交換器と、
凝固点が0℃以下の液体またはコロイド溶液から成る流動性蓄熱材を前記チューブに供給する蓄熱材供給部と、
前記熱交換器で冷却された前記流動性蓄熱材を回収する蓄熱材回収部と、を有する事を特徴とする冷熱回収システム。
【請求項2】
前記流動性蓄熱材は、パラフィンと、前記パラフィンが乳化するための界面活性剤、水、及び前記水の凝固点を低下させる溶質の混合により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷熱回収システム。
【請求項3】
前記溶質を塩化ナトリウム、または塩化カルシウムとしたことを特徴とする請求項2に記載の冷熱回収システム。
【請求項4】
少なくともシェルとチューブを備え、断熱膨張されたガスが前記シェルに供給される熱交換器と、凝固点が0℃以下の液体またはコロイド溶液から成る流動性蓄熱材を前記チューブに供給する蓄熱材供給部と、前記熱交換器で冷却された前記流動性蓄熱材を回収する蓄熱材回収部と、を有する冷熱回収システムの前記蓄熱材回収部で回収された前記流動性蓄熱材を冷却施設、あるいは冷却ボックスに供給し、
前記冷却施設内、あるいは前記冷却ボックス内の冷却を図ることを特徴とする冷熱利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーの活用技術に係り、特に、都市ガスの減圧時に発生する冷熱を有効利用するためのシステム、及び利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大手ガス会社は近年、都市ガス導管のガバナステーションにおける、ガス圧力差発電に取り組んできた。これは、都市ガスを減圧する際に捨てられるエネルギーを回収して発電するというシステムである。
【0003】
しかしながら、都市ガスの減圧は断熱膨張であり、減圧された都市ガスは、0℃から-30℃程度まで冷却されるため、ヒーティングにより0℃以上に温める必要があった。このため、ガス差圧発電による利益は、ヒーティングに要するコストにより相殺されてしまい、ビジネスとして成立せず、ガス圧力差発電の普及を妨げていた。
【0004】
このような実状を鑑み、特許文献1には、ガス導管のヒーティングに、ガバナステーションに設けられる発電機を駆動する内燃機関からの排ガスを利用することが開示されている。廃棄される熱エネルギーにより冷熱を温める事は、新たな熱エネルギーを生成し、これを加熱に利用する場合に比べてコストの低減を図る事ができる。しかし、生成されたエネルギー同士を相殺させるという事に変わりは無く、エネルギー効率の改善とは言い難い。
【0005】
また、特許文献2には、断熱膨張させたガスの冷熱をガスに比べて蓄熱性の高いガスハイドレートに吸熱させ、これを除熱源としてガスなどの流動性の高い冷媒との間で熱交換させることで、空調設備などの冷熱源として利用する技術が開示されている。このような熱エネルギーの利用であれば、冷熱を冷熱として利用することができるため、エネルギー効率の改善を図る事ができると考えられる。しかし、ガスをハイドレート化した上で、冷媒との間で熱交換を行うという構成は、熱交換の回数が多くなると共に、少なくともガスの循環ルート、水の循環ルート、ガスハイドレートを貯留する要素、及び冷媒の循環ルートなどが必要となり、施設の大型化が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-325583号公報
【特許文献2】特開2003-139357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、ガスの減圧(断熱膨張)により生じる冷熱を比較的シンプルな設備により、効率良く利用することができる冷熱回収システム、および冷熱利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る冷熱回収システムは、少なくともシェルとチューブを備え、断熱膨張されたガスが前記シェルに供給される熱交換器と、凝固点が0℃以下の液体またはコロイド溶液から成る流動性蓄熱材を前記チューブに供給する蓄熱材供給部と、前記熱交換器で冷却された前記流動性蓄熱材を回収する蓄熱材回収部と、を有する事を特徴とする。
【0009】
また、上記のような特徴を有する冷熱回収システムにおいて前記流動性蓄熱材は、パラフィンと、前記パラフィンが乳化するための界面活性剤、水、及び前記水の凝固点を低下させる溶質の混合により構成されていると良い。このような特徴を有する事により、熱交換により流動性蓄熱材が0℃以下となった場合であっても流動性を維持する事ができ、ポンプによる圧送が可能となる。
【0010】
さらに、上記のような特徴を有する冷熱回収システムでは、前記溶質を塩化ナトリウム、または塩化カルシウムとすることが望ましい。このような特徴を有する事によれば、流動性蓄熱材を安価に製造する事が可能となる。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明に係る冷熱利用方法は、少なくともシェルとチューブを備え、断熱膨張されたガスが前記シェルに供給される熱交換器と、凝固点が0℃以下の液体またはコロイド溶液から成る流動性蓄熱材を前記チューブに供給する蓄熱材供給部と、前記熱交換器で冷却された前記流動性蓄熱材を回収する蓄熱材回収部と、を有する冷熱回収システムの前記蓄熱材回収部で回収された前記流動性蓄熱材を冷却施設、あるいは冷却ボックスに供給し、前記冷却施設内、あるいは前記冷却ボックス内の冷却を図ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記のような特徴を有する冷熱回収システム、及び冷熱利用方法によれば、ガスの減圧(断熱膨張)により生じる冷熱を比較的シンプルな設備により、効率良く利用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る冷熱回収システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の冷熱回収システム、及び冷熱利用方法に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、
図1を参照して、実施形態に係る冷熱回収システムの構成について説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上で好適な形態の一部に過ぎず、発明の効果を奏する限りにおいて、構成の一部に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
【0015】
[構成]
本実施形態に係る冷熱回収システム10は、少なくとも熱交換器12と、蓄熱材供給部18、蓄熱材回収部20、及び蓄熱材流路22を有する。熱交換器12は、例えば一般的なチューブ型のものであれば良く、その構成としては、少なくともシェル14と、チューブ16が備えられていれば良い。シェル14は、熱交換する流体を滞留させる空間を備えると共に、この空間内に流体を流入させる流体流入口14aと、空間内から流体を排出する流体排出口14b、及びチューブ流体入口14c、並びにチューブ流体出口14dを有する。チューブ16は、シェル14の内部空間に配置されると共に、チューブ流体入口14cとチューブ流体出口14dとを接続する管状部材である。
【0016】
蓄熱材供給部18は、チューブ流体入口14cからチューブ16内に供給される流動性蓄熱材を貯留するための要素であり、具体的には、流動性蓄熱材を貯留可能なタンクなどであれば良い。また、蓄熱材回収部20は、熱交換器12によりシェル14内のガスとの間で熱交換が成された流動性蓄熱材を回収するための要素であり、具体的には、蓄熱材供給部18と同様に、流動性蓄熱材を貯留可能なタンクなどであれば良い。なお、蓄熱材流路22は、蓄熱材供給部18とチューブ流体入口14c、及び蓄熱材回収部20とチューブ流体出口14dとをそれぞれ接続する流路である。
【0017】
なお、本実施形態に係る流動性蓄熱材とは、凝固点が0℃以下の液体、またはコロイド溶液(ゾル)から成るものであれば良い。このような特性を有する流動性蓄熱材であれば、0℃以下のガスとの熱交換においても、チューブ16内で凝固してしまう恐れが無く、かつガスに比べて高い蓄熱性を保持する事ができる。
【0018】
流動性蓄熱材の具体例としては、パラフィンと、パラフィンが乳化するための界面活性剤、水、及び水の凝固点が0℃以下となる凝固点降下を発揮する溶質との混合物であると良い。ここで、水の凝固点降下を発揮する溶質とは、例えば塩化ナトリウムや、塩化カルシウムであると良い。このような構成から成る流動性蓄熱材であれば、0℃から-40℃程度の温度範囲において、ポンプ(不図示)での輸送(圧送)が可能な粘性を保つ事ができるからである。また、溶質として塩化ナトリウムや塩化カルシウムを用いる事で、流動性蓄熱材を安価に製造することが可能となる。
【0019】
[作用]
このような構成の冷熱回収システム10では、断熱膨張等により0℃以下(例えば-30℃)まで冷却されたガス(例えば都市ガス)が、流体流入口14aを介してシェル14内に供給される。これに対してシェル14内に配置されているチューブ16には、蓄熱材供給部18から蓄熱材流路22を介して供給された流動性蓄熱材が流れており、シェル14内のガスとチューブ16内の流動性蓄熱材との間で熱交換が成され、流動性蓄熱材が0℃以下まで冷却されると共に、シェル内のガスが0℃以上にまで加熱される。
【0020】
0℃以上にまで加熱されたガスは、流体排出口14bから排出され、ガスとして利用される。一方、0℃以下にまで冷却された流動性蓄熱材は、チューブ流体出口14dから排出され、蓄熱材流路22を介して蓄熱材回収部20へと流れ出る。蓄熱材回収部20に流れ出た流動性蓄熱材は、クーラーボックスや、冷蔵・冷凍車などの冷却ボックスや、冷蔵・冷凍倉庫などの冷却施設の内部を冷却するための冷却材として利用される。なお、冷却材としての流動性蓄熱材の利用形態は限定するものでは無い。例えば、扱いやすい大きさ、重量単位にパッキングしても良いし、配管等を介して熱交換装置(冷却設備)の冷熱源として搬送しても良い。
【0021】
[効果]
上記のような構成の冷熱回収システム10、及び冷熱利用方法によれば、ガスを加熱するための熱源を生成する必要が無い。よって、熱源生成のための施設等が不要となり、ガスの減圧(断熱膨張)により生じる冷熱を比較的簡易な設備により、効率良く利用することが可能となる。また、冷熱を利用して冷却された流動性蓄熱材は、冷却材として利用、販売する事が可能となる。
【符号の説明】
【0022】
10………冷熱回収システム、12………熱交換器、14………シェル、14a………流体流入口、14b………流体排出口、14c………チューブ流体入口、14d………チューブ流体出口、16………チューブ、18………蓄熱材供給部、20………蓄熱材回収部、22………蓄熱材流路。