(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025392
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】水処理装置および水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/34 20230101AFI20230215BHJP
C02F 3/00 20230101ALI20230215BHJP
G05D 21/00 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C02F3/34 101C
C02F3/34 101A
C02F3/34 101D
C02F3/00 D
G05D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130603
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠中 玄彦
(72)【発明者】
【氏名】油井 啓徳
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 吉昭
【テーマコード(参考)】
4D027
4D040
5H309
【Fターム(参考)】
4D027CA07
4D040BB02
4D040BB13
4D040BB24
4D040BB42
4D040BB52
4D040BB54
4D040BB82
4D040BB91
5H309AA02
5H309AA07
5H309BB14
5H309CC06
5H309DD12
5H309EE03
5H309FF17
5H309GG03
5H309JJ06
(57)【要約】
【課題】アンモニア性窒素を含む被処理水を生物処理によって硝化する水処理において、装置の立ち上げの際にかかる人手を減らし、装置の立ち上げや硝化活性の回復を自動的に行うことができる水処理装置および水処理方法を提供する。
【解決手段】アンモニア性窒素を含む被処理水を生物処理によって硝化する水処理装置1であって、被処理水と独立栄養性細菌とを混合する生物処理槽10と、生物処理槽10に被処理水を連続的に供給する供給手段と、生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニア性窒素濃度計14と、生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように生物処理槽10に流入する被処理水の流量を自動的に制御する制御装置12と、を備える水処理装置1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア性窒素を含む被処理水を生物処理によって硝化する水処理装置であって、
前記被処理水と独立栄養性細菌とを混合する生物処理槽と、
前記生物処理槽に前記被処理水を連続的に供給する供給手段と、
前記生物処理により得られる生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する生物処理水アンモニア性窒素濃度測定手段と、
前記生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を自動的に制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置であって、
前記被処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する被処理水アンモニア性窒素濃度測定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記被処理水のアンモニア性窒素濃度に基づいて、前記生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を制御することを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理装置であって、
前記生物処理水をろ過するろ過手段をさらに備え、
前記生物処理水アンモニア性窒素濃度測定手段は、前記ろ過手段によりろ過された生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定することを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理装置であって、
前記生物処理水アンモニア性窒素濃度測定手段、および、被処理水アンモニア性窒素濃度測定手段を備える場合における前記被処理水アンモニア性窒素濃度測定手段は、電量滴定式アンモニア性窒素メーターであることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の水処理装置であって、
前記供給手段として、ポンプを有し、
前記制御部は、前記ポンプのインバーターを制御することによって、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を制御することを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の水処理装置であって、
前記生物処理槽の前段に、前記被処理水を貯留する被処理水槽と、
前記被処理水槽からの前記被処理水の流路を前記生物処理槽と前記被処理水槽とへ分岐することができる開度の調整が可能なバルブと、
をさらに備え、
前記制御部は、前記ポンプのインバーターと前記バルブの開度を制御することによって、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を制御することを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水処理装置であって、
前記設定値は、アンモニア性窒素濃度が1mg/L以下であることを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の水処理装置であって、
前記制御部は、アンモニア性窒素負荷量に基づいて前記生物処理槽への栄養塩の添加量を制御することを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の水処理装置であって、
前記被処理水は、100mg/L以上のカルシウムを含有することを特徴とする水処理装置。
【請求項10】
アンモニア性窒素を含む被処理水を生物処理によって硝化する水処理方法であって、
前記被処理水と独立栄養性細菌とを混合するための生物処理槽に前記被処理水を連続的に供給し、前記生物処理により得られる生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を自動的に制御することを特徴とする水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア性窒素を含む被処理水を生物処理によって硝化する水処理装置および水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、集積回路(IC)等の半導体製造工程等では、フッ酸、アンモニア、硝酸等が使用される。このため、その工程からの廃液として、フッ素(フッ酸)、窒素(アンモニア、硝酸)等を含む廃水が排出される。
【0003】
廃水中のフッ素は物理化学的に、例えばカルシウムを添加することによってフッ化カルシウムとして除去されるのが一般的である。廃水中のフッ素を充分に除去するためには、相当量のカルシウムイオンが残留する条件とすることが望ましい。一般に、フッ素除去処理水中のフッ素濃度の目標濃度は10mg/L以下程度とされ、この場合にはフッ素除去処理水中の残留カルシウム濃度を100~1000mg/L程度にすることが望ましい。
【0004】
一方、窒素の除去としては、一般的に生物学的脱窒処理が採用される。この生物学的脱窒処理は、通性嫌気性細菌である脱窒菌の無酸素状態における硝酸呼吸を利用して窒素を除去する方法である。この生物学的脱窒処理においては、まず廃水を硝化処理して廃水中のアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素または硝酸性窒素とし、その後、メタノール等の水素供与体を添加して無酸素状態とすることによって脱窒処理を行う。
【0005】
上述したようなフッ素除去と窒素除去とを組み合わせることによって、廃水中のフッ素や窒素が除去される。フッ素を多量に含む廃水は細菌を用いた生物処理に対して悪影響を与えるので、生物学的脱窒処理は廃水中のフッ素を除去した後に行われる。したがって、生物学的脱窒処理の対象となる廃水はカルシウムを多量に含むことが多い(特許文献1参照)。
【0006】
生物学的脱窒処理の硝化では、例えば、活性汚泥法、生物膜法(例えば、固定床方式や流動床方式)やグラニュール法が用いられる。一般的に、活性汚泥法では、低負荷処理(例えば0.1~0.3kg-N/(m3・d))が行われ、生物膜法やグラニュール法では、高負荷処理(例えば0.5~1.0kg-N/(m3・d))が行われる(特許文献1参照)。
【0007】
このような硝化に関わる装置において、装置の初期立ち上げや装置運転停止後の再立ち上げに際しては、1日に1回または数回、硝化槽の処理水を採水し、手分析によりアンモニア性窒素濃度を測定し、アンモニア性窒素濃度が十分に下がったと判断した場合に負荷量を調整し、硝化の活性を高めていく方法が一般的である。
【0008】
しかし、この方法では、立ち上げまでに長い期間を必要とし、また立ち上げ期間中、分析や負荷量の調整に人手を必要とした。特許文献2では、硝化槽の硝化処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する手段を設置し、測定されたアンモニア性窒素濃度を、予め設定されたアンモニア性窒素濃度(1~10mg/L)と比較し、測定値が設定値以下の場合、測定値が設定値以上となるように、硝化槽の窒素負荷量を調整することによって、硝化細菌の増殖速度を高く維持し、このような課題を解決している。
【0009】
しかし、実際にはアンモニア性窒素濃度の設定値を1mg/L以上と高く保った状態で負荷を上げると、特に高負荷処理では、硝化槽の処理水のアンモニア性窒素濃度が低下することなく増加し、安定した処理を行えない場合がある。これは硝化槽の硝化活性がアンモニア性窒素容積負荷を十分に処理できるほどに上がっていない状態で、負荷を上げることによって、硝化活性が徐々に追い付かなくなり、アンモニア性窒素濃度が一時的または常に高くなり、それに伴い増加する遊離アンモニアによって硝化阻害が大きくなることが理由に挙げられる。
【0010】
特許文献2のように、硝化槽の処理水のアンモニア性窒素濃度を所定の濃度以上に保つように調整すると、負荷を上げた際に硝化活性が追い付かない場合、そのまま徐々に処理水のアンモニア性窒素濃度が高くなっていき、硝化活性がさらに低下していくこととなる。このとき、硝化活性を再度上げるために同様の操作を繰り返す必要があり、立ち上げに非常に長い時間がかかることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4865211号公報
【特許文献2】特開平08-126897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、アンモニア性窒素を含む被処理水を生物処理によって硝化する水処理において、装置の立ち上げの際にかかる人手を減らし、装置の立ち上げや硝化活性の回復を自動的に行うことができる水処理装置および水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、アンモニア性窒素を含む被処理水を生物処理によって硝化する水処理装置であって、前記被処理水と独立栄養性細菌とを混合する生物処理槽と、前記生物処理槽に前記被処理水を連続的に供給する供給手段と、前記生物処理により得られる生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する生物処理水アンモニア性窒素濃度測定手段と、前記生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を自動的に制御する制御手段と、を備える、水処理装置である。
【0014】
前記水処理装置において、前記被処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する被処理水アンモニア性窒素濃度測定手段をさらに備え、前記制御手段は、前記被処理水のアンモニア性窒素濃度に基づいて、前記生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を制御することが好ましい。
【0015】
前記水処理装置において、前記生物処理水をろ過するろ過手段をさらに備え、前記生物処理水アンモニア性窒素濃度測定手段は、前記ろ過手段によりろ過された生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定することが好ましい。
【0016】
前記水処理装置において、前記生物処理水アンモニア性窒素濃度測定手段、および、被処理水アンモニア性窒素濃度測定手段を備える場合における前記被処理水アンモニア性窒素濃度測定手段は、電量滴定式アンモニア性窒素メーターであることが好ましい。
【0017】
前記水処理装置において、前記供給手段として、ポンプを有し、前記制御部は、前記ポンプのインバーターを制御することによって、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を制御することが好ましい。
【0018】
前記水処理装置において、前記生物処理槽の前段に、前記被処理水を貯留する被処理水槽と、前記被処理水槽からの前記被処理水の流路を前記生物処理槽と前記被処理水槽とへ分岐することができる開度の調整が可能なバルブと、をさらに備え、前記制御部は、前記ポンプのインバーターと前記バルブの開度を制御することによって、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を制御することが好ましい。
【0019】
前記水処理装置において、前記設定値は、アンモニア性窒素濃度が1mg/L以下であることが好ましい。
【0020】
前記水処理装置において、前記制御部は、アンモニア性窒素負荷量に基づいて前記生物処理槽への栄養塩の添加量を制御することが好ましい。
【0021】
前記水処理装置において、前記被処理水は、100mg/L以上のカルシウムを含有することが好ましい。
【0022】
本発明は、アンモニア性窒素を含む被処理水を生物処理によって硝化する水処理方法であって、前記被処理水と独立栄養性細菌とを混合するための生物処理槽に前記被処理水を連続的に供給し、前記生物処理により得られる生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を自動的に制御する、水処理方法である。
【0023】
前記水処理方法において、前記被処理水のアンモニア性窒素濃度に基づいて、前記生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を制御することが好ましい。
【0024】
前記水処理方法において、前記生物処理水をろ過し、ろ過された生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定することが好ましい。
【0025】
前記水処理方法において、電量滴定式アンモニア性窒素メーターによって、前記生物処理水のアンモニア性窒素濃度、および、被処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する場合における前記被処理水のアンモニア性窒素濃度を測定することが好ましい。
【0026】
前記水処理方法において、ポンプのインバーターを制御することによって、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を制御することが好ましい。
【0027】
前記水処理方法において、前記生物処理槽の前段に、前記被処理水を貯留する被処理水槽と、前記被処理水の流路を前記生物処理槽と前記被処理水槽とへ分岐することができる開度の調整が可能なバルブと、をさらに備え、前記ポンプのインバーターと前記バルブの開度を制御することによって、前記生物処理槽に流入する前記被処理水の流量を制御することが好ましい。
【0028】
前記水処理方法において、前記設定値は、アンモニア性窒素濃度が1mg/L以下であることが好ましい。
【0029】
前記水処理方法において、アンモニア性窒素負荷量に基づいて前記生物処理槽への栄養塩の添加量を制御することが好ましい。
【0030】
前記水処理方法において、前記被処理水は、100mg/L以上のカルシウムを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によって、アンモニア性窒素を含む被処理水を生物処理によって硝化する水処理において、装置の立ち上げの際にかかる人手を減らし、装置の立ち上げや硝化活性の回復を自動的に行うことができる水処理装置および水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【
図5】制御装置12による制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図6】比較例における、経過日数に対するアンモニア性窒素容積負荷量[kg-N/(m
3-槽容積・d)]と生物処理水のアンモニア性窒素濃度[mg/L]の変化を示すグラフである。
【
図7】実施例における、経過日数に対するアンモニア性窒素容積負荷量[kg-N/(m
3-槽容積・d)]と生物処理水のアンモニア性窒素濃度[mg/L]の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0034】
[水処理装置および水処理方法]
本発明の実施形態に係る水処理装置の一例の概略を
図1に示し、その構成について説明する。
【0035】
図1に示す水処理装置1は、アンモニア性窒素を含む被処理水について、活性汚泥法、生物膜法またはグラニュール法等による生物処理によって硝化する水処理装置である。水処理装置1は、被処理水と独立栄養性細菌とを混合する生物処理槽(硝化槽)10と、生物処理槽10に被処理水を連続的に供給する供給手段として、ポンプ16と、生物処理により得られる生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する生物処理水アンモニア性窒素濃度測定手段として、アンモニア性窒素濃度計14と、生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、生物処理槽10に流入する被処理水の流量を自動的に制御する制御手段として、制御装置12と、を備える。
【0036】
水処理装置1において、生物処理槽10の被処理水入口26には、ポンプ16を介して被処理水供給配管18が接続されている。生物処理槽10の処理水出口28には、処理水配管20が接続されている。処理水配管20には、アンモニア性窒素濃度計14が設置されている。生物処理槽10の内底部には、空気等の酸素含有気体を供給する散気装置22が設置されている。生物処理槽10の処理水出口28を取り囲むようにスクリーン24が設置され、汚泥等の処理水への流出を抑制できるようになっている。
【0037】
制御装置12は、有線または無線の電気的接続等によって、アンモニア性窒素濃度計14およびポンプ16とそれぞれ接続されている。
【0038】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1の動作について説明する。
【0039】
アンモニア性窒素を含む被処理水は、ポンプ16によって被処理水供給配管18を通して被処理水入口26から生物処理槽10へ供給される。生物処理槽10において、被処理水は独立栄養性細菌と混合され、散気装置22によって空気等の酸素含有気体が供給、散気されながら、被処理水に含まれるアンモニア性窒素が生物処理(硝化処理)によって硝化される(硝化工程)。硝化処理が行われた生物処理水は、処理水として処理水出口28から処理水配管20を通して排出される。処理水配管20から排出された処理水は、図示しない後段の嫌気槽(脱窒槽)へと送液されてもよい。
【0040】
硝化工程は、好気性条件において、独立栄養細菌によりアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素および硝酸性窒素の少なくとも1つにまで酸化処理する工程である。
【0041】
硝化処理の立ち上げ期では、負荷を上げた後、処理水のアンモニア性窒素濃度は、一度増加するが、硝化活性が追い付く形で低減していく。このとき、処理水のアンモニア性窒素濃度が増加するのに伴って、遊離アンモニアの濃度も増加することになる。遊離アンモニアは極めて低い濃度においても硝化阻害を引き起こし、遊離アンモニアの増加具合によっては、そのまま硝化活性が低下し、負荷を安定してとることができなくなる場合がある。
【0042】
水処理装置1では、アンモニア性窒素を含む被処理水は、ポンプ16によって生物処理槽10に連続的に供給され(被処理水供給工程)、生物処理槽10において硝化が行われる(硝化工程)。例えば処理水配管20においてアンモニア性窒素濃度計14によって生物処理水のアンモニア性窒素濃度が測定され(生物処理水アンモニア性窒素濃度測定工程)、測定された生物処理水のアンモニア性窒素濃度を予め設定したアンモニア性窒素濃度と比較し、測定された生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、制御装置12により生物処理槽10に流入される被処理水の流量が自動的に制御される(流量制御工程)。
【0043】
生物処理水中のアンモニア性窒素濃度をアンモニア性窒素濃度計14によって自動的に測定し、測定したアンモニア性窒素濃度に応じて、負荷を増減させることによって、過度に遊離アンモニアが残存することを抑制し、安定した処理水質を維持しつつ、硝化活性を高くするうえで必要となる人手を減らすことが可能となる。硝化装置の立ち上げに際し、水質分析や負荷調整にかかる人手を減らし、高負荷まで立ち上げる際においても、生物処理槽10の処理水のアンモニア性窒素濃度を安定した値で維持しつつ、硝化活性が落ちないように負荷を調整していくことによって、硝化装置の立ち上げや硝化活性の回復を自動的に行い、かつ安定して硝化を行うことができる。
【0044】
制御装置12は、アンモニア性窒素濃度計14の測定結果に基づいて、生物処理槽10へ流入される被処理水の流量を自動的に制御する。制御装置12は、アンモニア性窒素濃度の測定結果が、設定したアンモニア性窒素濃度の値以下になるように被処理水の流量を自動的に制御する。流量制御は、一般的に用いられている流量調整方法であればよく、特に限定されない。流量制御の方法としては、例えば、ポンプ16のインバーター制御や被処理水供給配管18に設けたバルブの開度調整等が挙げられる。
【0045】
制御装置12は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。制御装置12は、アンモニア性窒素濃度計14により測定された生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、例えばポンプ16のインバーター制御や被処理水供給配管18に設けたバルブの開度調整等を自動的に行い、生物処理槽10に流入する被処理水の流量を自動的に制御する機能を有する。
【0046】
アンモニア性窒素濃度計14は、生物処理水、すなわち生物処理槽10の槽内水または処理水のアンモニア性窒素を測定できればよく、取水部分または測定部分が処理水配管20または生物処理槽10に設置されていればよい。
【0047】
アンモニア性窒素濃度計は、オンラインで測定可能なものであればよく、特に制限されないが、特に電量滴定式アンモニア性窒素メーターであることが好ましい。電量滴定式アンモニア性窒素メーターは、クーロメトリーを応用した電量滴定法による測定であり、原理的に検量線を作成しなくてもよく、かつアンモニアと高い選択性および反応性を有する臭素を滴定剤に用いることができる。電極部分が汚れにくく、Ca等のスケールがたまった場合でも、測定部分を生物処理槽10内等に設置しなくてもよく、酸による洗浄が比較的容易である。以上の理由から、電量滴定式アンモニア性窒素メーターを用いることによって、メンテナンスを行う人手を減らすことが可能となる。
【0048】
生物処理槽10のアンモニア性窒素負荷量は、被処理水のアンモニア性窒素濃度と生物処理槽10へ流入する被処理水の流量および生物処理槽10の容積によって決まる。被処理水のアンモニア性窒素濃度は、工場の稼働状況等により、日々変動するため、生物処理槽10のアンモニア性窒素負荷の調整をより正確に行う上で、被処理水のアンモニア性窒素濃度も測定することが好ましい。このような構成の水処理装置の例を
図2に示す。
【0049】
図2に示す水処理装置2は、被処理水と生物処理水のアンモニア性窒素濃度の値から被処理水の流量を制御する硝化処理装置の一例の概略である。
【0050】
水処理装置2は、
図1の水処理装置1の構成に加えて、生物処理槽10の前段に、被処理水を貯留する被処理水槽30をさらに備える。
【0051】
水処理装置2において、被処理水槽30の被処理水入口34には、被処理水配管32が接続されている。被処理水槽30の被処理水出口36と生物処理槽10の被処理水入口26とは、ポンプ16を介して被処理水供給配管18により接続されている。生物処理槽10の処理水出口28には、処理水配管20が接続されている。被処理水槽30および処理水配管20には、アンモニア性窒素濃度計14が設置されている。生物処理槽10の内底部には、空気等の酸素含有気体を供給する散気装置22が設置されている。生物処理槽10の処理水出口28を取り囲むようにスクリーン24が設置され、汚泥等の処理水への流出を抑制できるようになっている。アンモニア性窒素濃度計14は、被処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する被処理水アンモニア性窒素濃度測定手段、および生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する生物処理水アンモニア性窒素濃度測定手段として機能する。
【0052】
制御装置12は、有線または無線の電気的接続等によって、アンモニア性窒素濃度計14およびポンプ16とそれぞれ接続されている。
【0053】
アンモニア性窒素を含む被処理水は、被処理水配管32を通して被処理水入口34から被処理水槽30へ送液され、貯留された後、被処理水出口36からポンプ16によって被処理水供給配管18を通して被処理水入口26から生物処理槽10へ供給される。生物処理槽10において、被処理水は独立栄養性細菌と混合され、散気装置22によって空気等の酸素含有気体が供給、散気されながら、被処理水に含まれるアンモニア性窒素が生物処理(硝化処理)によって硝化される(硝化工程)。硝化処理が行われた生物処理水は、処理水として処理水出口28から処理水配管20を通して排出される。処理水配管20から排出された処理水は、図示しない後段の嫌気槽(脱窒槽)へと送液されてもよい。
【0054】
水処理装置2では、アンモニア性窒素を含む被処理水は、ポンプ16によって生物処理槽10に連続的に供給され(被処理水供給工程)、生物処理槽10において硝化が行われる(硝化工程)。例えば被処理水槽30においてアンモニア性窒素濃度計14によって被処理水のアンモニア性窒素濃度が測定され(被処理水アンモニア性窒素濃度測定工程)、例えば処理水配管20においてアンモニア性窒素濃度計14によって生物処理水のアンモニア性窒素濃度が測定され(生物処理水アンモニア性窒素濃度測定工程)、測定された被処理水のアンモニア性窒素濃度に基づいて、測定された生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、制御装置12により生物処理槽10に流入される被処理水の流量が自動的に制御される(流量制御工程)。被処理水のアンモニア性窒素濃度は、被処理水を貯留する被処理水槽30において測定されてもよいし、被処理水供給配管18において測定されてもよい。生物処理水のアンモニア性窒素濃度は、生物処理槽10において測定されてもよいし、処理水配管20において測定されてもよい。
【0055】
被処理水のアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニア性窒素濃度計は、オンラインで測定可能なものであればよく、特に制限されないが、特に電量滴定式アンモニア性窒素メーターであることが好ましい。被処理水のアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニア性窒素濃度計は、生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニア性窒素濃度計と共用でもよいし、別々でもよい。また、被処理水のアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニア性窒素濃度計は、生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定するアンモニア性窒素濃度計と別種のアンモニア性窒素濃度計でもよい。
【0056】
制御装置12による流量制御の方法としては、細かく生物処理槽10の負荷を制御する上で、ポンプ16のインバーター制御と被処理水供給配管18に設けたバルブの開度調整の両方を制御する方法が好ましい。このような構成の水処理装置の例を
図3に示す。
【0057】
図3に示す水処理装置3は、ポンプおよびバルブの開閉を制御することによって、被処理水の流量を制御する硝化処理装置の一例の概略である。
【0058】
水処理装置3は、
図1の水処理装置1の構成に加えて、生物処理槽10の前段に、被処理水を貯留する被処理水槽30と、被処理水槽30からの被処理水の流路を生物処理槽10と被処理水槽30とへ分岐することができる開度の調整が可能なバルブ38と、生物処理槽10の被処理水の流量を測定する被処理水流量測定手段として、流量計40と、をさらに備える。
【0059】
水処理装置3において、被処理水槽30の被処理水入口34には、被処理水配管32が接続されている。被処理水槽30の被処理水出口36と生物処理槽10の被処理水入口26とは、ポンプ16、バルブ38、流量計40を介して被処理水供給配管18により接続されている。生物処理槽10の処理水出口28には、処理水配管20が接続されている。バルブ38により被処理水供給配管18から分岐された循環配管42が被処理水配管32に接続されている。被処理水槽30および生物処理槽10には、アンモニア性窒素濃度計14が設置されている。生物処理槽10の内底部には、空気等の酸素含有気体を供給する散気装置22が設置されている。生物処理槽10の処理水出口28を取り囲むようにスクリーン24が設置され、汚泥等の処理水への流出を抑制できるようになっている。アンモニア性窒素濃度計14は、被処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する被処理水アンモニア性窒素濃度測定手段、および生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する生物処理水アンモニア性窒素濃度測定手段として機能する。
【0060】
制御装置12は、有線または無線の電気的接続等によって、アンモニア性窒素濃度計14、ポンプ16、バルブ38、流量計40とそれぞれ接続されている。
【0061】
アンモニア性窒素を含む被処理水は、被処理水配管32を通して被処理水入口34から被処理水槽30へ送液され、貯留された後、被処理水出口36からポンプ16によって被処理水供給配管18を通して被処理水入口26から生物処理槽10へ供給される。生物処理槽10において、被処理水は独立栄養性細菌と混合され、散気装置22によって空気等の酸素含有気体が供給、散気されながら、被処理水に含まれるアンモニア性窒素が生物処理(硝化処理)によって硝化される(硝化工程)。硝化処理が行われた生物処理水は、処理水として処理水出口28から処理水配管20を通して排出される。処理水配管20から排出された処理水は、図示しない後段の嫌気槽(脱窒槽)へと送液されてもよい。
【0062】
水処理装置3では、アンモニア性窒素を含む被処理水は、ポンプ16によって生物処理槽10に連続的に供給され(被処理水供給工程)、生物処理槽10において硝化が行われる(硝化工程)。例えば被処理水槽30においてアンモニア性窒素濃度計14によって被処理水のアンモニア性窒素濃度が測定され(被処理水アンモニア性窒素濃度測定工程)、例えば生物処理槽10においてアンモニア性窒素濃度計14によって生物処理水のアンモニア性窒素濃度が測定され(生物処理水アンモニア性窒素濃度測定工程)、測定された被処理水のアンモニア性窒素濃度に基づいて、測定された生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、制御装置12により生物処理槽10に流入される被処理水の流量が制御される(流量制御工程)。被処理水のアンモニア性窒素濃度は、被処理水を貯留する被処理水槽30において測定されてもよいし、被処理水供給配管18において測定されてもよい。生物処理水のアンモニア性窒素濃度は、生物処理槽10において測定されてもよいし、処理水配管20において測定されてもよい。
【0063】
制御装置12は、ポンプ16のインバーターとバルブ38の開度を制御することによって、生物処理槽10に流入する被処理水の流量を制御する。
【0064】
アンモニア性窒素濃度の測定は、被処理水または生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定するが、ろ過装置により固液分離されたろ過水である生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定してもよい。ろ過装置により固液分離された生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定することによって、低濃度まで精度よく測定することができる。ろ過処理により生物処理水のSS成分等を除去することによって、アンモニア性窒素濃度計のメンテナンス頻度を抑制することができる。このような構成の水処理装置の例を
図4に示す。
【0065】
図4に示す水処理装置4は、ろ過装置と担体を利用した硝化処理装置の一例の概略である。
【0066】
水処理装置4は、
図1の水処理装置1の構成に加えて、生物処理水をろ過するろ過手段として、ろ過装置44をさらに備える。
【0067】
水処理装置4において、生物処理槽10の被処理水入口26には、ポンプ16を介して被処理水供給配管18が接続されている。生物処理槽10の処理水出口28には、処理水配管20が接続されている。処理水配管20から分岐されたろ過被処理水配管48がろ過装置44の入口に接続され、ろ過装置44の出口には、ろ過処理水配管50が接続されている。ろ過処理水配管50には、アンモニア性窒素濃度計14が設置されている。生物処理槽10の内部には、微生物が担持される担体46が収容されており、槽内底部には、空気等の酸素含有気体を供給する散気装置22が設置されている。生物処理槽10の処理水出口28を取り囲むようにスクリーン24が設置され、担体46や汚泥等の処理水への流出を抑制できるようになっている。
【0068】
制御装置12は、有線または無線の電気的接続等によって、アンモニア性窒素濃度計14およびポンプ16とそれぞれ接続されている。
【0069】
アンモニア性窒素を含む被処理水は、ポンプ16によって被処理水供給配管18を通して被処理水入口26から生物処理槽10へ供給される。生物処理槽10において、被処理水は微生物が担持された担体46と混合され、散気装置22によって空気等の酸素含有気体が供給、散気されながら、被処理水に含まれるアンモニア性窒素が生物処理(硝化処理)によって硝化される(硝化工程)。硝化処理が行われた生物処理水は、処理水として処理水出口28から処理水配管20を通して排出される。処理水配管20から排出された処理水は、図示しない後段の嫌気槽(脱窒槽)へと送液されてもよい。
【0070】
水処理装置4では、アンモニア性窒素を含む被処理水は、ポンプ16によって生物処理槽10に連続的に供給され(被処理水供給工程)、生物処理槽10において硝化が行われる(硝化工程)。硝化処理が行われた生物処理水の一部は、ろ過被処理水としてろ過被処理水配管48を通してろ過装置44に送液され、ろ過装置44においてろ過処理が行われる(ろ過工程)。ろ過処理された生物処理水は、ろ過処理水としてろ過処理水配管50を通して排出される。例えばろ過処理水配管50においてアンモニア性窒素濃度計14によってろ過処理後の生物処理水のアンモニア性窒素濃度が測定され(生物処理水アンモニア性窒素濃度測定工程)、測定された生物処理水のアンモニア性窒素濃度が設定値以下を保つように、制御装置12により生物処理槽10に流入される被処理水の流量が自動的に制御される(流量制御工程)。ろ過処理後の生物処理水のアンモニア性窒素濃度は、ろ過処理水配管50において測定されてもよいし、ろ過処理水を貯留するろ過処理水貯槽を設け、ろ過処理水貯槽において測定されてもよい。
【0071】
(制御装置による制御方法の具体例)
制御装置12は、アンモニア性窒素濃度の測定結果が、設定したアンモニア性窒素濃度の値以下になるように被処理水の流量を自動的に制御する。制御装置12による制御方法の具体例を以下に示す。
【0072】
例えば、予め大小2点のアンモニア性窒素濃度の設定値を定め、生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定し、測定結果が、小さい方の設定値以下であった場合は、被処理水流量を増加させ、アンモニア性窒素濃度の測定結果が、大小の設定値の間であった場合は、被処理水流量を維持し、アンモニア性窒素濃度の測定結果が、大きい方の設定値以上であった場合は、被処理水流量を減少させる。
図5に、このような制御装置12による制御フローの一例を示す。
【0073】
例えば、予め大小2点のアンモニア性窒素濃度の設定値(設定値1:大きい方の設定値、設定値2:小さい方の設定値)と被処理水の最大流量とを定め、アンモニア性窒素濃度計14によって生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定する(S10)。アンモニア性窒素濃度の測定結果が、大きい方の設定値(設定値1)以上であった場合は、制御装置12は、被処理水の流量を減少させる(S12)。アンモニア性窒素濃度の測定結果が、大きい方の設定値(設定値1)未満であり、被処理水の流量が設定した最大流量以上の場合は、制御装置12は、被処理水の流量を維持する(S14)。被処理水の流量が設定した最大流量未満であり、アンモニア性窒素濃度の測定結果が、大きい方の設定値(設定値1)未満であり、小さい方の設定値(設定値2)を超える場合は、制御装置12は、被処理水流量を維持する(S14)。アンモニア性窒素濃度の測定結果が、小さい方の設定値(設定値2)以下であり、前回の流量増加から規定時間以上経過している場合は、制御装置12は、被処理水の流量を増加させ(S16)、前回の流量増加から規定時間以上経過していない場合は、制御装置12は、被処理水流量を維持する(S14)。所定の流量に到達後もこのような制御を繰り返すことによって、安定した処理を維持することが可能となる。
【0074】
これにより、生物処理槽10内のアンモニア性窒素濃度が設定値以下に保たれる。その他、2点以上のアンモニア性窒素濃度を設定し、被処理水の流量の増減の割合を生物処理槽10のアンモニア性窒素濃度の値によって変化させてもよい。また、前回測定したアンモニア性窒素濃度の測定結果と比較して、被処理水の流量の増減を決めてもよい。アンモニア性窒素濃度の測定頻度は任意に設定することができるが、少なくとも滞留時間内に1度以上の測定を行うのが好ましい。
【0075】
通常の場合、設定値の最大値は、アンモニア性窒素濃度が1~10mg/Lの範囲であり、1mg/L以下とすることが好ましい。大小2点のアンモニア性窒素濃度の設定値で制御する場合は、設定値1(大きい方の設定値)は、例えば、1~10mg/Lの範囲、設定値2(小さい方の設定値)は、例えば、0.3~1mg/Lの範囲とすればよい。
【0076】
生物処理槽10の負荷を上げる制御において、一回あたりに増加させる割合に特に制限はないが、微生物の生育等の点から、0.05~20%程度の範囲に調整されることが好ましい。
【0077】
被処理水の流量を上げた場合、生物処理水のアンモニア性窒素濃度が上昇するまで時間がかかることがあるため、被処理水の流量を再度上げる制御は、前回流量を上げてから間隔をあけて行う方がよく、例えば、30分以上の規定時間の間隔をあければよい。
【0078】
生物処理槽10の負荷状況に応じて被処理水の流量の増加量を調整してもよい。例えば、低負荷(例えば、0.1~0.3kg-N/(m3・d))のときは、被処理水の流量の増加割合を大きくし、高負荷(例えば、0.5~1.0kg-N/(m3・d))のときは、被処理水の流量の増加割合を小さくしてもよい。
【0079】
また、生物処理水のアンモニア性窒素濃度の測定値によっても被処理水の流量の増加量を調整してもよい。
【0080】
負荷を下げる制御において、一回あたりに減少させる流量は特に制限はないが、最後に流量を上げた前の流量以下に調整することが好ましい。
【0081】
また、生物処理水中のアンモニア性窒素濃度を設定値以下に維持することが重要であるため、流量を下げる制御は、できる限り間隔をあけずに行うのが好ましい。
【0082】
被処理水の流量の制御に合わせて、生物処理槽10やその後段にある脱窒槽に添加される栄養塩の添加量が調整されてもよい。例えば、制御装置12は、設定したアンモニア性窒素負荷量に合わせて、生物処理槽10やその後段にある脱窒槽に添加される栄養塩の添加量を自動的に制御してもよい。制御装置12は、例えば、栄養塩供給手段として生物処理槽10や脱窒槽に栄養塩を供給する栄養塩供給配管に設けられたポンプやバルブ等を制御して、生物処理槽10や脱窒槽に添加される栄養塩の添加量を自動的に制御すればよい。また、制御装置12は、脱窒槽に水素供与体を供給する水素供給配管に設けられたポンプやバルブ等を制御して、脱窒槽に添加される水素供与体の添加量を自動的に制御してもよい。
【0083】
栄養塩としては、必須栄養素の窒素(N)、リン(P)の他に、微量元素として、硫黄(S)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)等が挙げられる。水素供与体としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸等の有機酸類、水素ガス、アセトン、グルコース、エチルメチルケトン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のうちから選択される1つまたは複数が挙げられるが、これに限定されるものではなく、水素供与体として従来公知のもの全てを使用することができる。
【0084】
生物処理槽10は、硝化のみを行うものに限らず、硝化脱窒をともに行うものであってもよい。また、生物処理槽10の形式については、特に制限されないが、槽内に硝化菌をできるだけ多く保持し、かつ沈殿池を設けなくてもよい生物膜方式を利用することが好ましい。
【0085】
というのも、生物膜法では、担体に付着した硝化菌とバルク水中に漂う硝化菌が、硝化を行うが、アンモニア性窒素が槽内に多く残ると、遊離アンモニアの毒性により、担体からはがれる硝化菌が増える。そして、担体からはがれた硝化菌はバイオフィルム上にいる硝化菌と比べると遊離アンモニアの毒性により死滅しやすい。そのため、生物膜方式では、槽内のアンモニア濃度を低く保つのがよい。また、硝化菌が付着していない新品の担体では、培養初期に菌が担体から剥離しやすいため、特に槽内のアンモニア濃度を低く保つ方が好ましい。
【0086】
その際の微生物が担持される担体は、従来から好気性条件下で使用される担体であればよく、特に限定されない。担体としては、例えば、プラスチック製担体、スポンジ状担体、ゲル状担体等が挙げられるが、コストと耐久性のバランスが良好であるスポンジ状担体が好ましい。
【0087】
生物処理槽10内に、スクリーン24等の分離手段を設置し、担体等を分離して処理を行うことが好ましい。
【0088】
生物処理工程において、微生物の育成等の点から、生物処理槽10内のpHは、例えば、pH6~8の範囲に調整されることが好ましく、遊離アンモニアの阻害を抑制するため、pH6.8~7.2の範囲に調整されることがより好ましい。
【0089】
生物処理は、好気条件下で行うことが好ましく、例えば、生物処理槽10内に散気装置22を設置して、生物処理槽10内の溶存酸素濃度が例えば0.5mg/L以上、好ましくは1mg/L以上となるように酸素を供給することが好ましい。
【0090】
生物処理槽10の水温は、例えば、15~40℃の範囲に維持されればよい。
【0091】
処理対象である被処理水としては、例えば、半導体製造工程等で排出される窒素含有廃水等が挙げられる。被処理水が100mg/L以上、好ましくは100~1000mg/Lの範囲のカルシウムを含有する場合に、本実施形態に係る水処理方法および水処理装置を好適に適用することができる。
【実施例0092】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
<実施例1>
図4に示す担体を利用した水処理装置(硝化処理装置)を用いて、目標とするアンモニア性窒素負荷を0.8kg-N/(m
3・d)として、模擬排水を用いて連続通水試験を下記試験条件で実施した。
【0094】
水処理装置は、新品の担体を充填率が生物処理槽の40%(かさ容量/槽容量)となるように充填し、種汚泥をMLSSが3000mg/Lとなるように添加し、0.4kg-N/(m3-槽容積・d)まで立ち上げたのちに、生物処理水をろ過装置によってろ過した後、アンモニア性窒素濃度計によって生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定し、制御装置による制御を開始した。アンモニア性窒素濃度計としては、電量滴定式アンモニア性窒素メーター(セントラル科学製)を用いた。
【0095】
30分ごとに処理水のアンモニア性窒素濃度を測定し、設定したアンモニア性窒素濃度の範囲に入るように制御装置による制御を行った。負荷を増加させる場合は、2時間に1度、被処理水の流量を増加させることにより、調整を行った。負荷を減少させる場合は、その場で被処理水の流量を減少させることにより、調整を行った。
【0096】
[試験条件]
生物処理槽容積:9.8L
微生物保持担体:疎水性ポリウレタン製のスポンジ担体
担体充填率:40%(かさ容量/槽容量)
温度:25℃
pH:7.0~7.5
供試水:井水に塩化アンモニウムをアンモニウム性窒素濃度150mg/L相当量添加し、その他に炭酸ナトリウム、リン酸および微量元素溶液を添加したものを模擬排水とした。
【0097】
[試験結果]
<比較例>
生物処理水のアンモニア性窒素濃度が1mg/L以下になった場合に負荷上げを行うように設定し、通水を開始した。このときの経過日数に対するアンモニア性窒素容積負荷量[kg-N/(m
3-槽容積・d)]と生物処理水のアンモニア性窒素濃度[mg/L]の変化を、
図6に示す。通水開始10日目で約0.7kg-N/(m
3-槽容積・d)まで負荷を上昇させることができたが、その後、生物処理水のアンモニア性窒素濃度が1mg/L以下に下がることなく、13日目には生物処理水のアンモニア性窒素濃度が上昇し、処理性能が安定しなかった。また、14日目から生物処理水のアンモニア性窒素濃度が1mg/L以下になるまで負荷を一回下げ、再度同様の条件で、負荷上げを実施したが、生物処理水のアンモニア性窒素濃度は増加し、処理性能は安定しなかった。生物処理水のアンモニア性窒素濃度が1mg/Lを下回る負荷まで、被処理水の流量を減少させたが、最終的に約0.1kg-N/(m
3-槽容積・d)まで負荷を下げることとなった。
【0098】
<実施例>
生物処理水のアンモニア性窒素濃度が0.5mg/L(設定値2)以下の場合、被処理水の流量を増加させ、生物処理水のアンモニア性窒素濃度が0.5mg/L(設定値2)未満であり、1.0mg/L(設定値1)を超える場合は、被処理水の流量を維持し、生物処理水のアンモニア性窒素濃度が1.0mg/L(設定値1)以上の場合、被処理水の流量を減少させるように設定し、通水を開始した。このときの経過日数に対するアンモニア性窒素容積負荷量[kg-N/(m
3-槽容積・d)]と生物処理水のアンモニア性窒素濃度[mg/L]の変化を、
図7に示す。通水開始15日で約0.8kg-N/(m
3-槽容積・d)まで負荷が到達したが、処理性能は安定していた。
【0099】
このことから、硝化処理装置の立ち上げに際しては、生物処理槽内または生物処理水のアンモニア性窒素濃度を測定し、アンモニア性窒素濃度を設定した値以下に維持されるように生物処理槽に流入する被処理水の流量を制御し、アンモニア性窒素容積負荷を調整することによって、高負荷処理でもより安定した処理水質を得られることを確認した。
【0100】
このように、実施例の水処理装置および水処理方法によって、アンモニア性窒素を含む被処理水を生物処理によって硝化する水処理において、装置の立ち上げの際にかかる人手を減らし、装置の立ち上げや硝化活性の回復を自動的に行うことができることがわかった。
1,2,3,4 水処理装置、10 生物処理槽、12 制御装置、14 アンモニア性窒素濃度計、16 ポンプ、18 被処理水供給配管、20 処理水配管、22 散気装置、24 スクリーン、26,34 被処理水入口、28 処理水出口、30 被処理水槽、32 被処理水配管、36 被処理水出口、38 バルブ、40 流量計、42 循環配管、44 ろ過装置、46 担体、48 ろ過被処理水配管、50 ろ過処理水配管。