(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002541
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】伝染性気管支炎に対するワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/215 20060101AFI20221227BHJP
A61K 39/265 20060101ALI20221227BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20221227BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20221227BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20221227BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20221227BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221227BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20221227BHJP
A61K 39/17 20060101ALI20221227BHJP
A61K 39/15 20060101ALI20221227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
A61K39/215
A61K39/265 ZNA
A61K39/39
A61P37/04
A61K9/107
A61K47/28
A61K47/26
A61K47/44
A61K39/17
A61K39/15
A61P43/00 171
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022152642
(22)【出願日】2022-09-26
(62)【分割の表示】P 2018563490の分割
【原出願日】2017-05-31
(31)【優先権主張番号】62/365,419
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/344,598
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】デ・フレイタス,カーラ・マリア・バティスタ
(72)【発明者】
【氏名】ドス・サントス,マリア・キャロライナ・フェレイラ
(72)【発明者】
【氏名】ドミノウスキー,ポール・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ギーリグス,ハーメン・ヤコブ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】伝染性気管支炎及びシチメンチョウ鼻気管炎に対する家禽ワクチンを提供する。
【解決手段】抗原成分とアジュバント成分とを含む免疫原性組成物であって、a)前記抗原成分が少なくとも1つのTRT抗原と少なくとも1つのIB抗原とを含み、前記少なくとも1つのIB抗原がIB QX抗原を含み;b)前記アジュバント成分が、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと油エマルジョンとを含む、免疫原性組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原成分とアジュバント成分とを含む免疫原性組成物であって、
a) 前記抗原成分が少なくとも1つのTRT抗原と少なくとも1つのIB抗原とを含み、前記少なくとも1つのIB抗原がIB QX抗原を含み;
b) 前記アジュバント成分が、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと油エマルジョンとを含む、前記免疫原性組成物。
【請求項2】
前記油エマルジョンがW/Oエマルジョンである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
ステロールをさらに含む、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記ステロールがコレステロールである、請求項3に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
本質的にサポニンを含まない、請求項3または4に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記ステロールが前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドと混合される、請求項3~5のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
リポソームを含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのIB抗原がIB D1466抗原をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記抗原成分が、IB D1466抗原、TRT抗原、ニューカッスル病抗原、EDS抗原及びIB M41抗原のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記抗原成分が、IB M41抗原、IB D274抗原、ニューカッスル病LaSota株抗原、EDS抗原、及びTRT抗原のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
家禽動物におけるTRTを予防する方法であって、請求項1~10に記載の免疫原性組成物を前記家禽動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項12】
家禽動物におけるIBを予防する方法であって、請求項1~10に記載の免疫原性組成物を前記家禽動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記家禽動物がニワトリである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~10に記載の免疫原性組成物を投与前に、プライマーワクチンを投与することを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プライマーワクチンが、生菌の伝染性気管支炎ウイルス株H120型Massachusettsを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
家禽動物におけるIBを予防する方法であって、単回用量の請求項1~10に記載の免疫原性組成物を前記家禽動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
抗原成分とアジュバント成分とを含むワクチンであって、前記アジュバント成分が免疫
刺激性オリゴヌクレオチドと油エマルジョンとを含み、且つ前記抗原成分がIBD抗原を含む、前記ワクチン。
【請求項18】
前記IBD抗原が不活性化Lukert株抗原である、請求項17に記載のワクチン。
【請求項19】
前記IBD抗原が107.5~108TCID50の量で存在する、請求項17または18に記載のワクチン。
【請求項20】
前記抗原成分が、
a) IBDの非Lukert株に由来する抗原;
b) 伝染性気管支炎抗原;
c) レオウイルス抗原;
d) ニューカッスル病抗原;
e) シチメンチョウ鼻気管炎抗原
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項18~19のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項21】
前記伝染性気管支炎抗原が不活性化伝染性気管支炎ウイルスを含み、前記レオウイルス抗原が不活性化レオウイルスを含み、前記IBDの非Lukert株に由来する抗原が非Lukert株の不活性化IBDウイルスを含み、前記ニューカッスル病抗原が不活性化ニューカッスルウイルスを含み、前記シチメンチョウ鼻気管炎抗原が不活性化シチメンチョウ鼻気管炎ウイルスを含む、請求項20に記載のワクチン。
【請求項22】
抗原成分とアジュバント成分とを含むワクチンであって、前記アジュバント成分が免疫刺激性オリゴヌクレオチドと油エマルジョンを含み、前記抗原成分が
a) TRT抗原と;
b) ニューカッスル抗原と;
c) 産卵低下症候群(EDS)抗原と;
d) IBK抗原と;
e) コリーザ抗原と
を含む、前記ワクチン。
【請求項23】
a) 前記TRT抗原が不活性化シチメンチョウ鼻気管炎ウイルスを含み;
b) 前記ニューカッスル抗原が不活性化ニューカッスルウイルスを含み;
c) 前記EDS抗原が不活性化EDSウイルスを含み;
d) 前記IBK抗原が不活性化EDSウイルスを含み;
e) 前記コリーザ抗原が、コリーザM抗原とコリーザ221抗原とコリーザS抗原との混合物を含む、請求項22に記載のワクチン。
【請求項24】
前記TRTが、1用量当たり106.00TCID50~106.50TCID50の量で存在する、請求項22または23に記載のワクチン。
【請求項25】
前記油エマルジョンがW/Oエマルジョンである、請求項17~24のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項26】
前記油エマルジョンが鉱油を含む、請求項17~25のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項27】
前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが配列番号8を含む、請求項17~26のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項28】
前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドが1用量当たり2.5~20μgの量で存在する、請求項17~27のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項29】
前記アジュバントが、前記免疫刺激性オリゴヌクレオチドと、前記油と、1種以上の乳化剤とから本質的になる、請求項17~28のいずれか一項に記載のワクチン。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]
シチメンチョウ鼻気管炎(TRT)は、ニューモウイルスによって引き起こされるシチメンチョウ及びニワトリの上気道感染症であり、あらゆる年齢のシチメンチョウが罹患する高度に接触感染性の急性疾患である。TRT感染の臨床症状には、顕著なしばしば泡沫状鼻汁、水泡音、クリック音(snicking)、くしゃみ、頭振れが挙げられる。また、感染したシチメンチョウにおいて、眼漏または腫脹性眼窩下洞が観察される場合もある。TRTウイルス(TRTV)に対する抗体は、膨潤頭症候群(SHS)に罹患しているいくつかの鶏群(若鶏、及び若鶏/繁殖鶏の両方)において検出されている。TRTVは、SHSの病因及び関連する呼吸窮迫において役割を果たすと仮定されている。
【0002】
[0002]
伝染性気管支炎(IB)は、ニワトリにおいてのみ疾患を引き起こすコロナウイルスであるが、他の一部の鳥類において亜臨床的に感染する可能性もある。一部の血清型は地理的に制限されているのに対して、多数の血清型は1つの地理的領域内で共循環するのが一般的である。近年になってから、新規なIBV遺伝子型であるQX株は、アジア及びヨーロッパにおいて徐々に普及しつつある。罹患率は一般的に100%に近い。ヒナ鶏の咳、くしゃみ、及び気管支収縮は、10~14日間にわたって持続する場合がある。結膜炎及び呼吸困難が見られる場合があり、時には顔面腫脹、特に副鼻腔の同時の細菌感染を伴うこともある。ランプヒーターの下でヒナ鶏が元気消失し、うずくまって見える場合もある。飼料消費及び体重増加が減る。腎病原性株による感染は、初期呼吸性徴候を発呈させ、引き続いて後に、元気消失、羽毛逆立、湿潤糞、水分摂取量の増加、及び死亡につながる。産卵鶏の場合、鶏卵の生産量が70%も低下することがあり、鶏卵の奇形で、卵殻が薄く、軟質で、粗く及び/または淡色になることもしばしばであり、小さめで、卵白が水っぽくなる。たいていの場合、鶏卵の生産と鶏卵の品質は通常どおりに戻るが、戻るまでの所要期間は最大8週間と見られている。ほとんどの集団感染では、死亡率は5%であるが、細菌感染を併発して疾患が悪化すれば死亡率が高まる。幼鶏において、腎病原性株は、間質性腎炎を高い死亡率(最大60%)にて誘発する恐れがある。幼鶏の感染は、卵管に永久的な損傷を与え、産卵鶏または繁殖鶏が標準の生産レベルに達しない結果となりうる。
【0003】
[0003]
IBウイルスの公知のワクチン株は、IB-QXウイルス及びIB-QX様ウイルスによって引き起こされる伝染性気管支炎に対して保護するには不十分であることが立証されてきた。国際公開第2010017440号を参照のこと。
【0004】
[0004]
伝染性ファブリキウス嚢病(IBD、別称:ガンボロ病)は、全世界においてニワトリに見られる高度に接触感染性の免疫抑制性疾患であり、鶏卵及び肉の生産に対し経済的に深刻な影響を及ぼす。IBDワクチンは、ガンボロ制御戦略の重要な部分を成す。投与対象となるワクチンの選択は、ワクチン接種を受けるニワトリの種類、及び優勢な挑戦的状況に依存する。
【0005】
[0005]
概して、不活化抗原は家禽ワクチンにおいて使用されてきた。しかし、不活性化ウイルスの製造は比較的高コストであるので、抗原含有レベルの低い有効ワクチンが所望されている。
【0006】
[0006]
家禽ワクチン接種におけるもう1つのニーズは、ワクチン接種自体のコストに密接に関連している。複数の疾患を予防するように設計された多価ワクチンを作製することは、経済的に有利である。そのような多価ワクチンは、ワクチン投与のコストを削減するが、周知の抗原干渉という現象が起こるせいで、単に同じ剤形中に抗原を混合するだけでは、多価ワクチンの作製に対するアプローチとして効を奏さないこともしばしばである。
【0007】
[0007]
したがって、抗原及び/または多価ワクチンの含有量を低減させた家禽ワクチンに対するニーズが存在している。
【発明の概要】
【0008】
[0008]
一態様において、本発明は、抗原成分と、免疫学的に有効量のアジュバント成分と、を含む免疫原性組成物を提供する。本抗原成分は、少なくとも1つのTRT抗原と少なくとも1つのIB抗原とを含み、本アジュバント成分は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと、油エマルジョンと、任意で、ステロールとを含む。
【0009】
[0009]
或る実施形態において、少なくとも1つのTRT抗原はTRT株Kである。
[0010]
或る実施形態において、少なくとも1つのIB抗原は、IB D1466抗原及びIB
QX抗原のうちの少なくとも1つである。
【0010】
[0011]
或る実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、非リポソーム及び/または本質的にサポニンを含まない。
【0011】
[0012]
或る実施形態では、任意で、本ステロールを免疫刺激性オリゴヌクレオチドと混合する。
【0012】
[0013]
本発明はまた、抗原成分と有効量のアジュバント成分とを含むワクチンであって、アジュバント成分が免疫刺激性オリゴヌクレオチドと油エマルジョンとを含み、且つ抗原成分がIBD抗原を含むワクチンを提供する。
【0013】
[0014]
或る実施形態において、前記IBD抗原は、107.5~108TCID50の量で存在しうる、不活性化Lukert株抗原である。
【0014】
[0015]
或る実施形態において、本ワクチンは、IBDの非Lukert株に由来する抗原;伝染性気管支炎抗原;レオウイルス抗原;ニューカッスル病抗原;シチメンチョウ鼻気管炎抗原のうちの少なくとも1つを含む、多価ワクチンである。
【0015】
[0016]
別の態様において、本発明は、抗原成分と有効量のアジュバント成分とを含むワクチンを提供するものである。本アジュバント成分は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと油エマ
ルジョンとを含み、本抗原成分は、TRT抗原と;ニューカッスル抗原と;産卵低下症候群(EDS)抗原と;IBK抗原と;コリーザ抗原とを含む。
【0016】
[0017]
或る実施形態において、TRT抗原は不活性化シチメンチョウ鼻気管炎ウイルスを含み、ニューカッスル抗原は不活性化ニューカッスルウイルスを含み、EDS抗原は不活性化EDSウイルスを含み、IBK抗原は不活性化IBKウイルスを含み、コリーザ抗原はコリーザMバクテリンとコリーザ221バクテリンとコリーザSバクテリンとの混合物を含む。
【0017】
[0018]
或る実施形態において、TRT抗原は、1用量当たり106.00TCID50~106.50TCID50の量で存在する。
【0018】
[0019]
或る実施形態において、前記油エマルジョンはW/Oエマルジョンである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0020]
定義:
[0021]
「約」または「およそ」という用語は、測定可能な数値変数と関連して用いられている場合に、指示された値の実験誤差内(例えば、平均の95%信頼区間内)の変数もしくは指示値の10%以内にある変数のうちのいずれか大きい方の、指示された変数値及び全ての変数値を指す。但し、「約3週間」を17~25日間とし且つ約2~約4週間を10~40日間とした数週間の時間間隔に関して「約」が用いられている場合はこの限りではない。
【0020】
[0022]
本発明のアジュバント製剤に適用される「~から本質的になる」という用語及びこれに類するものは、前記薬剤が測定可能なアジュバント化作用または免疫調節作用を発揮する量の追加的なアジュバント化剤または免疫調節剤を含有しない組成物を指す。
【0021】
[0023]
「本質的にサポニンを含まない」、「実質的にサポニンを含まない」という用語及びこれに類するものは、サポニンが測定可能なアジュバント化作用または免疫調節作用を発揮する量のサポニンを含有しない組成物を指す。或る実施形態において、本質的にサポニンを含まない組成物の場合、サポニン含有量が、発熱などの全身性免疫応答を引き起こすうえで十分でない量である。或る実施形態において、本質的にサポニンを含まない組成物の場合、サポニン含有量がゼロであるか、または検出限界以下である。
【0022】
[0024]
「免疫刺激性分子」という用語は、免疫応答を生成する分子を指す。
[0025]
「非経口投与」という用語は、消化管を含まない経路を介して、または経由して、ワクチンのような物質を被験者の体内に導入することを指す。非経口投与には、皮下投与、筋肉内投与、経皮投与、皮内投与、腹腔内投与、眼内投与、及び静脈内投与が含まれる。
【0023】
[0026]
免疫刺激性オリゴヌクレオチド製剤に適用される純度百分率または「純度Xパーセント
」は、X%の指定されたオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド分子の集団を指す(例えば、配列ID番号:1、配列ID:番号:5、配列ID番号:8等)、及び残部(すなわち、100%からX%を減算した値)は、指定された配列の製造中に不純物として存在する、指定されたオリゴヌクレオチドの短断片を含む。ゆえに、3’~5’配列決定によって本配列を製造する場合、5’短縮型には残部が含まれることになる。非限定例として、80%純度の配列番号8の調製物のうち100μgは、配列番号8(80μg)を含み、残部20μgは配列番号8の短断片であって製剤中に存在する。
【0024】
[0027]
「治療的に有効な量」、「免疫学的に有効な量」及び「有効量」という用語は、ウイルスもしくは細菌のような病原体による感染によって引き起こされる有害な健康上の影響もしくはその合併症を含む、疾患の徴候もしくは症状を予防または軽減するのに十分な抗原、アジュバントもしくはワクチンを投与される被験者において免疫応答を誘発する程度の抗原、アジュバントもしくはワクチンの量を指す。体液性免疫または細胞性免疫、あるいは体液性免疫及び細胞性免疫の両方が誘発される可能性がある。動物におけるワクチンの免疫原性及び有効性は、例えば、抗体力価の測定、リンパ球増殖アッセイを介して間接的に、または野生型株による抗原投与後の徴候及び症状のモニタリングを通じて直接的に評価できる。ワクチンを介して付与される保護免疫は、例えば、死亡率、罹患率、体温の数値、全般的な身体状態、ならびに被験者の全般的な健康状態及びパフォーマンスなどの臨床徴候の低下を測定することによって評価できる。治療的に有効なワクチン量は、使用される特定のアジュバント、使用される特定の抗原、または被験者の病態に応じて異なる場合もあれば、当業者によって決定される場合もある。
【0025】
[0028]
商業用の産卵鶏及び繁殖鶏は、生存中に、多種多様なワクチンを用いてワクチン接種される。これらのワクチンは、主として、弱毒化された生菌ワクチンである。ニワトリに対し、産卵の開始準備が整うまでに、不活化混合ワクチンで予防接種して、既にワクチン接種を受けたことのある伝染性病原体に対する免疫力を補強し、飼育期間中に鶏卵の産生またはその他の損傷を引き起こす恐れのある他の病原体に対する免疫を誘発する。これらのワクチンが高い抗体力価を誘発しうること、及びワクチンがおよそ20週から70週までの全飼育期間中に保護する必要のあることから、免疫の持続時間が長いことが重要とされる。長期間の免疫を達成するためには、抗原をアジュバント、例えば油中水(W/O)型エマルジョン中に処方することが必要である。
【0026】
[0029]
したがって、概して、本発明は、抗原成分とアジュバント成分とを含む免疫原性組成物を提供し、ここで抗原成分は、少なくとも1つのTRT抗原及び少なくとも1つのIB抗原を含み、アジュバント成分は、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、油エマルジョン、及び任意で、ステロールを含み(または、いくつかの実施形態ではこれらから本質的になり、あるいは他の実施形態ではこれらからなる)。
【0027】
抗原成分
[0030]
異なるIB QX抗原が、本発明に好適である。或る実施形態において、IB QX抗原は完全に不活性化されたウイルスである。他の実施形態において、ウイルスは、改変された生菌ウイルスである。さらに他の実施形態では、サブユニットワクチンが使用される場合がある。例えば、ウイルスの表面に存在するタンパク質で好適と考えられるものとしては、これらに限定されるものではないが、Sタンパク質、Mタンパク質、Eタンパク質、またはこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。不活性化全ウイルスの使用を伴う実施形態では、抗原を1用量当たり103~1010感染単位、例えば104、10
5、106、107感染単位の量で用いる場合がある。或る実施形態において、IB QX不活性化ウイルスの量は、1用量当たり約105~約108感染単位である。
【0028】
[0031]
抗原成分は、さらなる実施形態ではIBD抗原を含み、或る実施形態では不活性化Lukert IBDウイルスである。
【0029】
[0032]
或る実施形態において、不活性化されたLukert IBDウイルスの量は、1用量当たり107~108TCID50(例えば、1用量当たり107.1、107.2、107.3、107.4、107.5、107.6、107.7、107.8、107.9TCID50)である。
【0030】
[0033]
或る実施形態において、ワクチンの抗原成分は、不活性化されたLukert IBDウイルスだけでなく、他の抗原を含む。例えば、IB M41及び/またはIB D1466及び/またはIB D274などのそれぞれ異なる伝染性気管支炎ウイルス株を使用できる。代替的または追加的に、本発明のワクチンはまた、TRT、ニューカッスル病(例えば、LaSota株)、EDS(産卵低下症候群)、レオウイルス、及び伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスの抗原、鳥インフルエンザを含みうる。
【0031】
[0034]
他の態様において、本発明は、TRT抗原;ニューカッスル抗原;産卵低下症候群(EDS)抗原;IBK抗原(伝染性気管支炎ウイルス);及びコリーザ抗原を含む多価ワクチンを提供する。
【0032】
[0035]
本発明の或る実施形態において、TRT抗原は、1用量当たり106.00TCID50~106.50TCID50(例えば、106.00TCID50、106.10TCID50、106.20TCID50、106.30TCID50、106.40TCID50または106.50TCID50)の量で存在する。
【0033】
[0036]
本発明のワクチンに使用されるウイルスを、弱毒化または不活性化することが可能である。ウイルスを不活性化し減弱させる方法は、当該技術分野において周知である。例えば、ウイルスを培養継代によって不活性化させる場合もある。不活性化の方法としては、限定されるものではないが、ホルマリン、βプロピオラクトン(BPL)、バイナリエチレンイミン(BEI)またはフェノールから選択される有効量の不活性化化学物質に対しウイルスを曝露させることが挙げられる。
【0034】
[0037]
コリーザはそれぞれ異なるHaemophilus paragallinarum株によって引き起こされる。ゆえに、或る実施形態において、コリーザ抗原は、1種以上のHaemophilus paragallinarum株(例えば、株M、株Z、株221及びこれらに類するもの)を含む。他の実施形態では、血清型A、B及びCを表す株の混合物が使用される。ゆえに、株221(コリーザ221)はSerovar A株として使用され、Spross(コリーザS)株はSerovar B染色剤として使用され、Stord Modesto(コリーザM)はSerovar C株として使用される場合がある。
【0035】
[0038]
当業者であれば、ウイルス滴定の方法論に応じて、時には約30%程度まで、ウイルスの力価が変動する可能性のあることを実感する場合がある。本開示において、用量が10の指数として測定されている場合、指数が0.2ずつ変動する可能性がある。ゆえに、例えば、力価106.40TCID50には、106.20TCID50~106.60TCID50間の値が包含される場合がある。同じ考え方は力価の範囲に当てはまる。例えば、力価106.00TCID50~106.50TCID50には、105.80TCID50~106.70TCID50の範囲が包含される。
【0036】
[0039]
他の実施形態では、上記の抗原に加えて他の抗原、例えば、Salmonella enteritidis、Salmonella typhimurium、Mycoplasma gallisepticum、Salmonella gallinarum、Pasteurella multocidaが用いられる場合がある。ウイルスを不活性化する場合と同様、例えば、ホルマリン、βプロピオラクトン(BPL)、バイナリエチレンイミン(BEI)またはフェノールから選択される有効量の不活性化化学物質への曝露によって、細菌を不活性化できる。
【0037】
アジュバント成分
[0040]
概して、本発明の免疫原性組成物中に使用されるアジュバント成分は、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、油、及び、任意で、界面活性剤(類)を含む。或る実施形態において、本アジュバント成分は、サポニン及び/またはISCOMを含まないか、または本質的に含まない。
【0038】
[0041]
或る実施形態において、本アジュバント成分は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと、油と、任意で、界面活性剤(類)と、から本質的になる。或る実施形態において、本アジュバント成分は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと、油と、任意で、界面活性剤(類)と、からなる。
【0039】
[0042]
好適な免疫刺激性オリゴヌクレオチドとしては、ODN(DNAベース)、ORN(RNAベース)オリゴヌクレオチド、またはキメラODN-ORN構造が挙げられる。これらの構造は、ホスホロチオエート修飾、ハロゲン化、アルキル化(例えば、エチル修飾またはメチル修飾)及びホスホジエステル修飾を含むがこれらに限定されない、修飾骨格を有しうる。いくつかの実施形態では、ポリイノシン-シチジル酸またはその誘導体(ポリI:C)が使用される場合がある。
【0040】
[0043]
CpGオリゴヌクレオチドは、特定の塩基配列のコンテキスト(CpGモチーフ)において非メチル化CGジヌクレオチドが存在することを特徴とする。(本文献は、本明細書において参照により援用されているHansel TT,Barnes PJ(編著):New Drugs for Asthma,Allergy and COPD.Prog Respir Res.Basel,Karger,2001,vol 31,pp 229-232)。これらのCpGモチーフは、真核生物のDNA内には見られない。これら真核生物DNAにおいて、CGジヌクレオチドは抑制されており、存在する場合には通常はメチル化されるが、CGジヌクレオチドは免疫刺激特性を付与される細菌DNA中に存在する。
【0041】
[0044]
選択された実施形態において、本発明のアジュバントは、いわゆるPクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドを利用し、より好ましくは修飾Pクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドを利用し、さらにより好ましくはE修飾Pクラスのオリゴヌクレオチドを利用する。Pクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、概ね6~20ヌクレオチド長のパリンドロームの存在を特徴とする、CpGオリゴヌクレオチドである。Pクラスのオリゴヌクレオチドは、インビトロ及び/またはインビボのいずれかにて、自発的にコンカテマーに自己組織化する能力を有する。これらのオリゴヌクレオチドは、厳密な意味では一本鎖であるが、パリンドロームの存在により、コンカテマー(または場合によってはステム‐アンド‐ループ構造)の形成を可能にしている。Pクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドの全長は、19~100ヌクレオチド、例えば19~30ヌクレオチド、30~40ヌクレオチド、40~50ヌクレオチド、50~60ヌクレオチド、60~70ヌクレオチド、70~80ヌクレオチド、80~90ヌクレオチド、90~100ヌクレオチドである。
【0042】
[0045]
本発明の一態様において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、5’TLR活性化ドメインと、少なくとも2つのパリンドローム領域と、を含む。一方のパリンドローム領域は、少なくとも6ヌクレオチド長の5’パリンドローム領域であって、直接的にまたはスペーサーを介して少なくとも8ヌクレオチド長の3’パリンドローム領域に対し連結されている。
【0043】
[0046]
Pクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、当該技術分野において公知の技術に従って修飾することが可能である。例えば、J修飾とは、ヨード修飾ヌクレオチドを指す。E修飾とは、エチル修飾ヌクレオチド(類)を指す。ゆえに、E修飾Pクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのヌクレオチド(好ましくは5’ヌクレオチド)がエチル化されている、Pクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。さらなる修飾には、6-ニトロ-ベンズイミダゾールの付着、O-メチル化、プロビニル-dUによる修飾、イノシン修飾、(好ましくはウリジンに対する)2-ブロモビニルの付着が含まれる。
【0044】
[0047]
Pクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドはまた、ホスホジエステル結合及びホスホロチオエート結合を含むがこれらに限定されない、修飾ヌクレオチド間結合を含む場合がある。本発明のオリゴヌクレオチドは、商業的供給源から合成される場合もあれば、または入手される場合もある。
【0045】
[0048]
Pクラスのオリゴヌクレオチド及び修飾Pクラスのオリゴヌクレオチドは、公開PCT出願国際公開第2008/068638号(2008年6月12日発行)においてさらに開示されている。修飾Pクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドの適切な非限定例は、下掲のとおりである(配列ID番号1~10において、「*」はホスホロチオエート結合を指し、「-」はホスホジエステル結合を指す)。配列ID番号11~14において、全ての結合はホスホジエステル結合である。
【0046】
配列番号1 5’T*C-G*T*C-G*A*C-G*A*T*C-G*G*C*G*C-G*C*G*C*C*G 3’
配列番号2 5’T*C-G*A*C*G*T*C*G*A*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G 3’
配列番号3 5’T*C*G*A*C*G*T*C*G*A*T*
C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G*T 3’
配列番号4 5’JU*C-G*A*C*G*T*C*G*A*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G 3’
配列番号5 5’JU*C-G*A*C*G*T*C*G*A*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G*T 3’
配列番号6 5’JU*C*G*A*C*G*T*C*G*A*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G*T 3’
配列番号7 5’EU*C-G*A*C*G*T*C*G*A*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G 3’
配列番号8 5’JU*C-G*T*C*G*A*C*G*A*T*C*G*G*C*G*G*C*C*G*C*C*G*T 3’
配列番号9 5’JU*C*G*T*C*G*A*C*G*A*T*C*G*G*C*G*G*C*C*G*C*C*G*T 3’
配列番号10 5’T*C-G*T*C-G*A*C-G*A*T*C-G*G*C*G*C_G*C*G*C*C*G 3’
配列番号11 5’-UUGUUGUUGUUGUUGUUGUU-3’
配列番号12 5’-UUAUUAUUAUUAUUAUUAUU-3’
配列番号13 5’-AAACGCUCAGCCAAAGCAG-3’
配列番号14 5’-dTdCdGdTdCdGdTdTdTdTrGrUrUrGrUrGrUdTdTdTdT-3’
[0049]
本発明の免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、化学的に合成できる。さらに、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、約60%純度(均質性)またはそれを上回る(例えば、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%もしくは100%純度)で使用できる。
【0047】
[0050]
アジュバント組成物中に用いられるPクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドの量は、使用されるPクラスの免疫刺激性オリゴヌクレオチドの性質、及び意図された種に依存する。
【0048】
[0051]
ステロール同士はる共通の化学コアを共有する。この化学コアは、ヒドロキシル(OH)基が通常炭素-3に付着した、ステロイド環構造[複数可]である。脂肪酸置換基の炭化水素鎖の長さは可変(通常、16~20個の炭素原子)であり、飽和または不飽和でありうる。ステロールは通例、環構造内に1つ以上の二重結合を含み、環に付着した多様な置換基もまた含有する。ステロール及びこれらの脂肪酸エステルは、本質的に水不溶性である。ゆえに、これらの化学的類似性を考慮すると、この化学コアを共有するステロールが、本発明のワクチン組成物中に使用される場合に同様の特性を有する可能性は高い。ステロールは当該技術分野において周知であり、ステロールの市販品を購入することが可能である。例えば、コレステロールはMerck Index,12th Ed.,p.369に開示されている。好適なステロールとしては、限定されないが、β-シトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、エルゴカルシフェロール、コレステロール及びこれらの誘導体、例えば、DC-コレステロール(3β-[N-(ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール)が挙げられる。
【0049】
[0052]
複数の油及びこれらの組み合わせは、本発明の使用に適している。これらの油としては、限定されないが、動物油、植物油、及び非代謝性油が挙げられる。本発明において好適な植物油の非限定例は、コーン油、ピーナッツ油、ダイズ油、ヤシ油、オリーブ油、及びフィトスクワランである。動物油の非限定例は、スクワランである。非代謝性油の好適な非限定例としては、軽質鉱油、直鎖状または分岐鎖状飽和油、分岐状油、及びこれらに類するものが挙げられる。
【0050】
[0053]
一連の態様において、本発明のアジュバント製剤中に使用される油は軽質鉱物油である。本明細書において、「鉱油」という用語は、ペトロラタムから蒸留技術によって得られる液体炭化水素の混合物を指す。この用語は、「液化パラフィン」、「液体ペトロラタム」及び「白色鉱油」と同義語である。この用語はまた、「軽質鉱油」(すなわち、ワセリンの蒸留によって同様に得られるが、白色鉱油よりもわずかに比重が低い油)を含むことを意図している。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1990,at pages 788及び1323)を参照のこと。鉱油は、様々な商業的供給源、例えばJ.T.Baker(ペンシルバニア州フィリップスバーグ)、USB Corporation(オハイオ州クリーブランド)から入手可能である。好ましい鉱油は、DRAKEOL(登録商標)という名称で市販されている軽鉱油である。別の実施形態において、好適な油は、鉱油MARCOL(商標)52を含む。MARCO(商標)52は、液体飽和炭化水素の精製混合物であって、毒性不純物を含有せず透明で澄みきった水白色の生成物であり、後続の精製段階(接触水素化による最終的な精製を含む)を伴う真空蒸留を介して石油から採取される。
【0051】
[0054]
本乳剤中に使用するのに適した乳化剤としては、生物学的に適合した天然乳化剤、及び非天然合成界面活性剤が挙げられる。生物学的に適合した乳化剤としては、リン脂質化合物またはリン脂質の混合物が挙げられる。リン脂質として好ましいのは、ホスファチジルコリン(レシチン)、例えば、ダイズレシチンまたは卵レシチンである。粗植物油を水洗し、結果として得られた水和ガムを分離して乾燥させることにより、ホスファチドとトリグリセリドとの混合物としてのレシチンを得ることができる。トリグリセリド及び植物油をアセトン洗浄により除去した後に残存したアセトン不溶性リン脂質及び糖脂質の混合物を分画することにより、精製された生成物を得ることができる。あるいは、レシチンを様々な商業的供給源から入手することも可能である。他の好適なリン脂質としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、及びリゾホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。リン脂質は天然源から単離される場合もあれば、慣例的に合成される場合もある。
【0052】
[0055]
さらなる実施形態では、本明細書中に使用されている乳化剤には、レシチンが含まれないか、または免疫学的に有効でない量のレシチンが使用される。
【0053】
[0056]
本発明のアジュバント製剤中に使用するのに適した非天然合成乳化剤としては、ソルビタン系非イオン性界面活性剤、例えば、脂肪酸置換ソルビタン界面活性剤(SPAN(登録商標)またはARLACEL(登録商標)という名称で市販されている)、ポリエトキシル化ソルビトールの脂肪酸エステル(TWEEN(登録商標))、ヒマシ油のような供給源由来の脂肪酸のポリエチレングリコールエステル(EMULFOR(登録商標));
ポリエトキシル化脂肪酸(例えば、SIMULSOL(登録商標)M-53という名称で入手可能なステアリン酸)、ポリエトキシル化イソオクチルフェノール/ホルムアルデヒドポリマー(TYLOXAPOL(登録商標))、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル(BRIJ(登録商標));ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(TRITON(登録商標)N)、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル(TRITON(登録商標)X)が挙げられる。合成界面活性剤として好ましいのは、SPAN(登録商標)ならびにTWEEN(登録商標)という名前で入手可能な界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアート)及びARLACEL(登録商標)83V(ソルビタンセスキオレエート))である。
【0054】
[0057]
乳化剤(類)は、一般に、ワクチン組成物中に0.01%~40%(体積基準)、好ましくは0.1%~15%、より好ましくは2%~10%の量で存在しうる。
【0055】
[0058]
実施形態のサブセットにおいて、油及び油溶性乳化剤の体積百分率は合算で、少なくともワクチン組成物の50% v/v、例えば、50~95% v/v(体積基準)であり;好ましくは50% v/v以上85% v/v以下の量で、より好ましくは50~60
v/v%、より好ましくは55~65% v/vの量である。ゆえに、例えば、限定されるものではないが、油は45% v/vの量で存在し、脂溶性乳化剤は5% v/vより多い量で存在しうる。したがって、油及び油溶性乳化剤の体積百分率は共に少なくとも50%であろう。
【0056】
[0059]
本発明の全てのワクチンに適用可能なさらに別のサブセットにおいて、油の体積百分率は、ワクチン組成物の40% v/v超、例えば、40~90体積% v/v(体積基準)であり;40% v/v~85% v/v;43%~60% v/v、44~50% v/vである。或る実施形態において、エマルジョンは、少なくとも60% v/vの油相と40% v/vの水相とを含有する。
【0057】
[0060]
時には、特にスケールアップされた商業的適用において、抗原を濃縮することは不可能または非実用的であるため、低濃度の抗原溶液を使用せざるをえないこともある。ゆえに、いくつかの実施形態において、本発明のワクチン組成物は、上記のようなアジュバント製剤を含み、これらのアジュバント製剤中の油相の含量は希釈され、ワクチン組成物は油中水型エマルジョンである。
【0058】
[0061]
実際には、油相が50% v/v未満である油中水型エマルジョンを作製することは可能である。
【0059】
[0062]
概略説明すると、最初に、本発明のアジュバント製剤を上記のように調製する。前記アジュバント製剤において、油相はアジュバント製剤の50% v/v超を占める。油及び乳化剤(類)以外の成分の量はそれぞれ、最終目標濃度及び所望の希釈率に基づいてスケールアップされる。例えば、アジュバント製剤が80% v/vを含むワクチン組成物を調製しようと企図する場合、油以外の成分の量を1.25(1/0.8)倍にスケールアップする。乳化剤(存在する場合にはTWEEN(登録商標)80及び/またはSPAN(登録商標)80)の量を、必ずしもスケールアップする必要はないが、アジュバント製剤及び最終ワクチン組成物中の油と乳化剤(類)との容量比を、同じに維持することが好
ましい。
【0060】
[0063]
次いで、抗原溶液をアジュバント製剤に添加する。
[0064]
分散された球状の水滴が、単分散液滴のランダム充填の最大充填率、すなわち0.64よりも濃縮された形態で存在しない限り、油中水型エマルジョンの完全性を維持することが可能である。Tadros,Emulsion Formation,Stability and Rheology,1st ed.2013,Wiley-VCH GmbH & Co KGaAを参照のこと。水性液滴が占める総体積分率が0.64(すなわち:64% v/v)を超えない限りと言った場合、これは、逆に、油性相が36% v/v未満に降下してはならないことを暗に示す。
【0061】
[0065]
いくつかの実施形態において、好適な1用量のアジュバントは、約0.1μg~約20μg(例えば、1~20μg、5~15μg、8~12μgまたは10μg)の免疫刺激性オリゴヌクレオチド、最高約50μg(例えば、0.5~20μg、または1~10μg)のステロール(コレステロールなど)を含む。
【0062】
[0066]
或る実施形態において、本アジュバント成分の調製方法は以下のとおり。
a) セスキオレイン酸ソルビタン及びコレステロール(ある場合)を軽質鉱油中に溶解する。結果として得られた油状溶液を滅菌濾過する。
【0063】
b) 免疫刺激性オリゴヌクレオチド及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアートを水相中に溶解し、これにより、水溶液を形成する。
c) この水溶液を、連続的に均質化しながら油溶液に加える。
【0064】
[0067]
本発明の免疫原性組成物は、抗原成分を水性相に添加し、続いて水相を油相と結合することによって調製できる。他の実施形態では、アジュバント成分の調製後に、このアジュバント成分に抗原成分を添加する場合がある。
【0065】
[0068]
本免疫原性組成物に、医薬的に許容される担体をさらに含めてもよい。本明細書において、「医薬的に許容される担体」には、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、アジュバント、安定化剤、希釈剤、防腐剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤、及びこれらに類するものが含まれる。担体(類)は、本組成物の他の成分と適合性があり、被験者に有害ではないという意味で、「許容される」ものでなければならない。担体は典型的に、無菌であり、且つパイロジェンを含まず、使用される投与様式に基づいて選択される。当業者に周知のように、本組成物を含む医薬的に許容される担体の好ましい製剤は、米国(米国)農業局、米国食品医薬品局(FDA)または米国以外の国の同等の政府機関によって公布された適用法規により承認された医薬担体を含む。したがって、本組成物の商業生産用の医薬的に許容される担体は、米国もしくは外国における適切な政府機関により既に承認済みであるかまたは承認される予定の担体である。
【0066】
[0069]
組成物の他の成分としては、医薬的に許容される賦形剤、例えば、担体、溶媒及び希釈剤、等張剤、緩衝剤、安定剤、防腐剤、血管収縮剤、抗菌剤、抗真菌剤、及びこれらに類するものを挙げることができる。典型的な担体、溶媒及び希釈剤としては、水、生理食塩
水、デキストロース、エタノール、グリセロール、油、及びこれらに類するものが挙げられる。代表的な等張剤としては、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、及びこれらに類するものが挙げられる。有用な安定剤としては、ゼラチン、アルブミン、及びこれらに類するものが挙げられる。
【0067】
ワクチンの投与
[0070]
本発明のワクチンは概して、複数の経路を介して投与することが可能である。そのような経路は、当業者に公知であり、筋肉内注射及び皮下注射を含むが、これらに限定されない。
【0068】
[0071]
或る実施形態では、産卵予定日の約3~7週間(例えば、約4~6週間)前に、ワクチンが投与される。このレジメンは、IB QXに対する免疫が、ワクチン接種された雌鶏の産卵期までに発呈され、その産卵期全体にわたって持続することを保証するものである。
【0069】
[0072]
さらなる実施形態において、本発明のワクチンは、初回抗原刺激された雌鶏に対するブースターワクチンとして投与される。当該技術分野では複数のIBプライマーが公知である。例えば、POULVAC(登録商標)IBプライマーは、凍結乾燥の生菌、Massachusetts型伝染性気管支炎ウイルスを含む。Nobilis(登録商標)IB
H120は、伝染性気管支炎に対する一次ワクチン接種として使用される凍結乾燥の生菌ワクチンである。このワクチンにはH120型Massachusettsが含有されている。他のIBプライマーも、本発明のワクチンと併用可能である。
【0070】
[0073]
以下の非限定例では、本発明についてさらに説明する。
【実施例0071】
実施例1.ワクチンの調製
[0074]
表1に、例示的な油中水型エマルジョンを示す。CpGもまた添加された水相中で、抗原が希釈されている。水相は、抗原とCpGとチメロサールとを含み、油相と混合される。完全に混合した後、安定したW/Oエマルジョンが形成される。
【0072】
【0073】
実施例2.IBまたはTRTの効力アッセイ
[0075]
本発明者らは、不活性化IB M41抗原(1用量当たり不活性化前に107.2EID50)または不活性化TRT抗原(1用量当たり不活性化前に105.3TCID50)が含有されているW/Oエマルジョンを製造した。これらのエマルジョン中のCpG含有量は、それぞれ異なるかまたはゼロ(配列ID番号:8、65%純度)であった。これらのエマルジョンはニワトリにおける効力試験で試験された。ニワトリは4週齢にてワクチン接種を受けた。ワクチン接種後5週間目に血液試料を採取して、ELISAにより抗原に対する抗体力価を試験した。
【0074】
[0076]
96ウェルマイクロELISAプレートのウェルに抗原をコーティングした酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、シチメンチョウ鼻気管炎(TRT)ウイルスに対する抗体力価を測定した。コーティング後に、標準陰性血清及び標準陽性血清を、ウェル及び試験対象の血清に添加した。全ての血清を二重に試験した。対照として、抗原を含まないウェルにおいても同様に、全ての血清を二重に試験した。非結合抗体を除去し、ペルオキシダーゼが抱合された血清抗体に対する抗体を添加することにより、抗原に対する抗体の反応性を明視化した。非結合抱合抗体を除去した後、ペルオキシダーゼ基質オルトフェニレンジアミノ+H2O2を添加した。発色反応が呈されたことにより、ペルオキシダーゼの存在が実証された。
【0075】
[0077]
表2は、TRT抗原の効力試験結果の要約である。一般に、抗体力価は十分な値であり、奏効しない例はいずれの群にも存在しなかった。抗体力価に対してはCpGの正の効果があった。1用量当たりCpG 10μgで最良の結果が得られたが、1用量当たりCpG 1μgの場合も同様にプラス効果が得られた。
【0076】
【0077】
[0078]
また、IB M41に対する抗体応答に関しても、CpGのプラス効果を特定した(表3参照)。1用量当たりCpG 1μgの用量は、抗体応答を実質的に刺激するうえで既に十分であった。CpGなしではニワトリ15羽中7羽の抗体応答が閾値2.60未満であったのに対し、1用量当たりCpG 1μgの試験では全てのニワトリが応答した。1用量当たりCpG 10μgでさらなる増加が得られた。
【0078】
【0079】
実施例3.IB、ND、EDSの効力アッセイ
[0079]
4週齢の特定病原不在(SPF)ニワトリ10羽の群に対し、1用量当たり0.5mlの用量を筋肉注射でワクチン接種した。ワクチン接種後5週間目に、血清学的検査用に血液試料を採取した。IB、ND及びEDSに対する抗体力価を測定するために、ELISA(Idexx FlockCheck IBV抗体キット;Idexx、米国メイン州)、赤血球凝集阻害試験、及びELISA(Idexx FlockCheck NCD抗体キット;Idexx、米国メイン州)をそれぞれ使用した。
【0080】
[0080]
ワクチンは、
IB M41 : 106.9EID50/用量、
ニューカッスル病(ND): 108,1EID50/用量、
産卵低下症候群(EDS): 256 HAu/用量をそれぞれ異なる分量のCpG含有の油中水型エマルジョン中に含有する。
【0081】
[0081]
4週齢の特定病原不在(SPF)ニワトリ10羽の群に対し、1用量当たり0.5ml
の用量を筋肉注射でワクチン接種した。ワクチン接種後5週間目に、血清学的検査用に血液試料を採取した。IB、ND及びEDSに対する抗体力価を測定するために、ELISA(Idexx FlockCheck IBV抗体キット;Idexx、米国メイン州)、赤血球凝集阻害試験、及びELISA(Idexx FlockCheck NCD抗体キット;Idexx、米国メイン州)をそれぞれ使用した。
【0082】
[0082]
表4~表6にIB、ND及びEDSの結果をそれぞれ示す。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
[0083]
結果と結論
[0084]
IB M41及びNDについては、CpG不含の製剤と1用量当たりCpG 5μg含有の製剤との間には有意差がある。1用量当たりCpG 2.5μg含有のNDについても、抗体力価が有意に改善された。EDSについては、CpG不含の製剤とCpG含有の製剤との間に有意差はなかったが、1用量当たりCpG 5μg含有の場合の方がCpG
不含の場合よりも数値的に良好であった。
【0087】
[0085]
1用量当たり5μgの量で添加すると、CpGはIB M41、ND及びEDSの抗体応答に対して刺激効果が得られる。1用量当たりCpG 2.5μgの効果には限界がある。
【0088】
実施例4.有効性試験
[0086]
1用量当たりCpG 10μg含有W/Oエマルジョン中に、不活性化IB QXと、不活性化IB D1466と、不活性化TRT抗原とを、それぞれ異なる分量にて含有している混合ワクチンを作製した。これらのエマルジョンは、14週齢の特定病原不在(SPF)産卵鶏にワクチン接種するために使用された。それぞれ異なるワクチン群の半数は、10週齢にて生菌IBワクチンをワクチン接種されていた。26週齢のニワトリに毒性QX様IBウイルスまたは毒性IB D1466ウイルスを抗原投与した。抗原投与2週間前から抗原投与4週間後までの間に、鶏卵の生産力を測定した。そのうえ、ワクチン接種後7週目に、血清中和試験で抗体力価を測定した。
【0089】
[0087]
表4に示すデータに見られるように、生菌の初回抗原刺激後に、ELISAで明確な抗体応答を検出できた。不活化ワクチンによるワクチン接種後に、SN試験でIBに対する抗体力価もまた算定した。SN試験では、IB QX及びIB D1466に対する抗体が特異的に検出される。交差反応は全く観察されなかったが、ELISAを用いてIB QX及びIB D1466に対する抗体を区別できなかった。
【0090】
[0088]
また、表7のデータが示すように、抗原投与後に、ワクチン接種されていないニワトリにおいて有害なIB QX抗原投与ウイルスによる鶏卵の産生低下はきわめて明白となる。生菌ワクチンのみ、ワクチン不活性化ワクチンのみ、またはその両方をワクチン接種した場合、IB QX抗原投与ウイルスによって引き起こされる産卵低下に対して保護免疫が生ずる結果となる。
【0091】
【0092】
[0089]
さらに、不活性化されたIB QX抗原は、IBの非QX株とは異なり、ワクチン接種
後のニワトリにおいて抗体力価を誘発することはほとんど不可能であると以前は考えられていた。例えば、伝染性気管支炎の他の非QX株(例えば、IB M41、IB D274、またはIB D1466)由来の抗原を含有する現在市場投入されている製品は、CpGを含まない油エマルジョンでアジュバント化され、さらに十分な保護を誘発する。それとは対照的に、表8に示すように、CpG不含の油乳剤は中和抗体を誘発するには不十分であるが、CpGを添加することによって抗体応答が堅牢化される。
【0093】
【0094】
[0090]
同時に、上述したように、IBウイルスの公知のワクチン株は、IB-QXウイルス及びIB-QX様ウイルスによって引き起こされる伝染性気管支炎に対して保護するには不十分であることが立証されてきた。WO2010017440号を参照のこと。驚くべきことに、本発明のワクチンは、不活性化IB QX抗原に対して明らかな抗体応答を誘発した。
【0095】
実施例5.伝染性気管支炎、ニューカッスル病、TRT、伝染性ファブリキウス嚢病、及び
レオウイルスに対するワクチン
[0091]
この実験では、生まれたての特定病原不在(SPF)Leghorn種鶏を雌雄混合にて使用した。ニワトリに標準食餌及び水を自由に与えた。
【0096】
[0092]
0日目に、これらの鳥にMassachusetts1株含有のワクチンを点眼にて接
種して、伝染性気管支炎に対するワクチンを接種させた。実験後28日目に、これらの鳥の羽翼及び眼に対しPOULVAC(登録商標)REO及びPOULVAC(登録商標)TRTワクチンをそれぞれ推奨用量で投与した。実験後49日目に、これらの鳥に実験用ワクチンを投与した。T01群、T02群、T04群、及びT05群は1群当たり32羽の鳥を有し、T03群、T06群、及びT07群は1群当たり13羽の鳥を有した。
【0097】
【0098】
[0093]
T01、T02、T04、及びT05中に使用された抗原はいずれも、ホルムアルデヒド中で不活性化されたものであった。
【0099】
[0094]
T01群~T05群は、乳房領域に0.5mlの筋肉内注射を受けた。製造元のプロトコールに準じて、T06群及びT07群に治療を施した。
【0100】
[0095]
70日目及び77日目に、これらの鳥から血液を血清学分析用に採取した。血清中和試験(IB、IBD、レオ)、HAI試験(ニューカッスル)及びELISA(TRT)によって分析を実施した。反復測定を伴う一般線形混合(general linear mixed)モデルを用い、T01、T02、T04及びT05に関する血清学データを分析した。適切な対数変換を適用した。治療(時間点、及び時間点相互作用毎の治療)がもたらす固定的効果;ならびにブロック、ブロック内部の動物、及び治療がもたらすランダム効果(動物用語)が、モデルに含まれていた。
【0101】
[0096]
(逆変換された)最小自乗平均及び90%信頼区間が、未加工データの範囲と共に報告された。治療(すなわち、時間相互作用毎の治療)の主効果が有意(P≦0.10)であった場合、各時点における全ての治療群間の比較を実施して報告した。治療群T03、T06及びT07を、幾何平均、標準誤差ならびに範囲に関して要約した。
【0102】
[0097]
結果を表10に示す。
【0103】
【0104】
[0098]
これらの結果は、W/OエマルジョンにCpGを添加したことによって、IBDVに対する免疫応答がほぼ3倍に増大したことを実証するものである。異なる視点からの結果を見ると、これらの結果は、IBD Lukert用量の減少を示す。108TCID50~107.5TCID50(約1/3の減少)、及び製剤にCpGを添加した結果、IBDに対する応答が(T01及びT05を比べて)増強した。同様に、ニューカッスル、レオウイルス、及びTRTに対する応答も増強し、IBに対する反応は統計的に低減しなかった。
【0105】
[0099]
さらに、全てのウイルスに対する応答によって保護力価が生じた(IBの保護力価は20、ニューカッスルに対する保護力価は16、IBDに対する保護力価は32、レオウイルスに対する保護力価は16である)。TRTワクチンの効率は、血清転換率を基準に測定される。血清転換率が70%を超える場合、ワクチンが有効であることを示した。
【0106】
[00100]
上記実験では、CpG含有の製剤(T01群及びT02群)が両方とも、TRTに対して有効であった(血清転換率が90%を上回った)。対照的に、CpGが欠けた製剤(T04群及びT05群)は、TRTに対して有効でなかった(血清転換率は62.5%以下であった)。
【0107】
[00101]
T06群をIBDVの陽性対照として用いた。表10に示すように、ワクチンT02によって誘発された力価は、陽性対照によって誘発された力価と同等であった。T07群をTRTの陽性対照として用いた。表10に示すように、実験用ワクチンT01及びT02は、T07よりも高いTRT力価を誘発した。
【0108】
[00102]
つまり、W/OエマルジョンにCpGを添加することによって、気管支炎、ニューカッスル病、TRT、伝染性嚢病(IBDまたはガンボロ)及びレオウイルスに対して効能を発揮する5価ワクチンの生成が可能となった。CpGを含まない製剤はTRTに対しては効能を発揮しなかった。加えて、ニューカッスル、レオウイルス、及びIBDに対する力価は、CpG不含の製剤の方がCpG含有の製剤よりも低かった。
【0109】
実施例6.伝染性気管支炎、コリーザ、産卵低下症候群、ニューカッスル病、及びTRTに対するワクチン
[00103]
この実験では、生まれたての特定病原不在(SPF)Leghorn種鶏を雌雄混合にて使用した。ニワトリに標準食餌及び水を自由に与えた。
【0110】
[00104]
0日目に、これらの鳥にMassachusetts1株含有のワクチンを点眼にて接種して、伝染性気管支炎に対するワクチンを接種させた。実験後14日目に、POULVAC(登録商標)TRTワクチンをそれぞれ推奨用量で眼内投与した。実験後35日目に、実験用ワクチンを筋肉内注射によって投与した。
【0111】
[00105]
表11に、これらの実験に使用された実験用ワクチン組成物及び対照用ワクチン組成物を示す。各群には56羽の鳥が含まれていた。
【0112】
【0113】
[00106]
T01、T02、T04、及びT05中に使用された抗原はいずれも、ホルムアルデヒド中で不活性化されたものであった。
【0114】
[00107]
血清学分析用に、56日目及び70日目に、これらの鳥から血液を採取した。分析には、10%両側有意水準を用いた。
【0115】
[00108]
反復測定を伴う一般線形混合(general linear mixed)モデルを用い、T01、T03、T04、T05及びT06に関する血清学データを分析した。適切な対数変換を適用した。治療(時間点、及び時間点相互作用毎の治療)がもたらす固定的効果;ならびにブロック、ブロック内部の動物、及び治療がもたらすランダム効果(動物用語)が、モデルに含まれていた。
【0116】
[00109]
(逆変換された)最小自乗平均及び90%信頼区間が、未加工データの範囲と共に報告された。治療(すなわち、時間相互作用毎の治療)の主効果が有意(P≦0.10)であった場合、各時点における全ての治療群間の比較を実施して報告した。T02を血清学的に、幾何平均、標準誤差及び範囲に関して要約した。
【0117】
[00110]
表12に、実験群(T03~T06)の結果を要約する。
【0118】
【0119】
[00111]
これらの結果は、W/OエマルジョンにCpGを添加したことによって、ELISAで測定されたTRTに対する免疫応答が2~3倍に増大したことを実証するものである。血清転換率の観点から結果を見ると、CpGなしの製剤(治療薬T03及びT05)で治療した群では、効率的なTRT血清転換応答率が実証されなかった(57%以下)。対照的に、製剤T04及びT06(両方ともCpG含有)で治療した群では、効率的な血清転換率(75%以上)は実証されなかった。TRT抗原の投与量を約1/3倍に減少させたとしても、(T04及びT05を1比較して)抗原投与量減少に対してCpGを添加することで補える。
【0120】
[00112]
さらに、全てのウイルスに対する応答によって保護力価が生じた(IBの保護力価は20、ニューカッスルに対する保護力価は16、コリーザに対する保護力価は5、EDSに対する保護力価は18である)。製剤T04及びT06(CpG含有)によって誘発されたSN力価またはHAI力価は通常、製剤T03及びT05(CpGなし)によって誘発された力価の約2倍であった。
【0121】
[00113]
本明細書中に引用されている全ての刊行物(特許刊行物及び非特許刊行物の両方)は、あたかも個々の刊行物が具体的且つ個別に参照により援用されているかのように示されるのと同じ程度まで完全に本明細書において参照により援用されている。
【0122】
[00114]
特定の実施形態を参照しながら本発明について説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例証であることを理解すべきである。したがって、例示的な実施形態に対して多くの修正を加えることが可能であり、下記の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなしに他のアレンジを考案できることを理解すべきである。