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  • 特開-人体用害虫忌避剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025443
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】人体用害虫忌避剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/16 20060101AFI20230215BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20230215BHJP
   A01N 37/18 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A01N25/16
A01P17/00
A01N37/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130697
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 明日香
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC06
4H011BA01
4H011BB06
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC07
4H011BC09
4H011BC16
4H011BC19
4H011DA18
4H011DH03
4H011DH07
(57)【要約】
【課題】吐出した泡を安定化でき、塗布しやすい人体用害虫忌避剤、及び当該人体用害虫忌避剤を泡吐出容器に充填してなる人体用害虫忌避剤製品提供すること。
【解決手段】泡状で吐出される人体用害虫忌避剤であって、害虫忌避成分と溶剤と起泡剤とを含有し、前記人体用害虫忌避剤を泡状で吐出したときに、吐出された泡の30秒後の液化率が70%以下である人体用害虫忌避剤とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡状で吐出される人体用害虫忌避剤であって、害虫忌避成分と溶剤と起泡剤とを含有し、前記人体用害虫忌避剤を泡状で吐出したときに、吐出された泡の30秒後の液化率が70%以下であることを特徴とする人体用害虫忌避剤。
【請求項2】
平均動摩擦係数が0.15以下であることを特徴とする、請求項1に記載の人体用害虫忌避剤。
【請求項3】
前記起泡剤が、酸化エチレンの付加モル数が10以上のノニオン界面活性剤、スルホン酸塩型アニオン界面活性剤及びベタイン型両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の人体用害虫忌避剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の人体用害虫忌避剤を、吐出経路内に泡形成機構を備えた泡吐出容器に充填してなることを特徴とする人体用害虫忌避剤製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に塗布して使用する害虫忌避剤(以下、「人体用害虫忌避剤」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
人体用害虫忌避剤は様々なタイプの剤型に製剤化され、エアゾールタイプ、ミストタイプ(ハンドスプレータイプ)、ジェルタイプ、ティッシュタイプ等、使用者の用途や塗りやすさに応じて使い分けられる。中でも、エアゾールタイプの製品は、手軽に塗布でき使用法が簡便であるため、広く利用されている。
【0003】
例えば、エアゾールタイプの人体用害虫忌避剤製品として、特許文献1には、少なくとも害虫忌避成分及び粉体を含有する害虫忌避組成物を少なくとも低沸点炭化水素を含有する噴射剤と共にスプレーから3秒間当たり2.0~5ミリリットル噴射させる害虫忌避エアゾールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-157107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアゾールタイプの人体用害虫忌避剤製品は、害虫忌避成分を微粒子にして皮膚面に噴霧するため、薬剤を吸い込む恐れがあり、鼻粘膜に刺激を感じる人も多い。また、塗布面への塗りむらが生じて害虫忌避成分の付着していない部分ができやすく、例えば蚊等はこの僅かな部分を敏感に感知し吸血行動を起こすため、有効な忌避効果が得られないことがある。このため、塗りむらがなく、害虫忌避成分の飛散しにくい人体用害虫忌避剤製品を求めるニーズが増加傾向にある。
【0006】
人体用害虫忌避剤を塗布しやすくする手段として、人体用害虫忌避剤を泡状で吐出させる形態が考えられる。しかし、害虫忌避成分の多くは油溶性であることから、エタノール等の溶剤に溶解させてから用いられることが多く、組成物中にエタノールが多く含まれると、エタノールの消泡作用により泡立ちがし難くなる。特にポンプ式容器を用いて吐出させると、泡にならないか、あるいは泡状になったとしても皮膚に塗布する間に液状になりやすく、塗布性が低かった。
【0007】
そこで、本発明は、吐出した泡を安定化でき、塗布しやすい人体用害虫忌避剤、及び当該人体用害虫忌避剤を泡吐出容器に充填してなる人体用害虫忌避剤製品提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は泡状で吐出される人体用害虫忌避剤について鋭意検討を重ねた。その結果、害虫忌避成分と溶剤と起泡剤とを含有し、吐出した泡の液化率が特定範囲となる組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は以下の(1)~(4)によって達成される。
(1)泡状で吐出される人体用害虫忌避剤であって、害虫忌避成分と溶剤と起泡剤とを含有し、前記人体用害虫忌避剤を泡状で吐出したときに、吐出された泡の30秒後の液化率が70%以下であることを特徴とする人体用害虫忌避剤。
(2)平均動摩擦係数が0.15以下であることを特徴とする、前記(1)に記載の人体用害虫忌避剤。
(3)前記起泡剤が、酸化エチレンの付加モル数が10以上のノニオン界面活性剤、スルホン酸塩型アニオン界面活性剤及びベタイン型両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の人体用害虫忌避剤。
(4)前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の人体用害虫忌避剤を、吐出経路内に泡形成機構を備えた泡吐出容器に充填してなることを特徴とする人体用害虫忌避剤製品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の人体用害虫忌避剤は、泡状で吐出させたときに泡立ちが良く、また泡が安定しているので、皮膚への塗布がしやすく、かつ塗りむらなく均一に塗布できる。そして、害虫忌避成分の飛散もないので、鼻粘膜への刺激を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例4の泡状態を示す写真図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の人体用害虫忌避剤について更に詳しく説明する。
本発明の人体用害虫忌避剤は、使用時は泡状で吐出されるものであって、害虫忌避成分と溶剤と起泡剤とを含有し、当該人体用害虫忌避剤を泡状で吐出したときに、吐出された泡の30秒後の液化率が70%以下であるものである。吐出された泡の30秒後の液化率が70%以下であるので、使用者が泡を塗り広げる際にも泡形状が保たれており、液だれすることなく均一に塗り広げができる。以下、各成分について説明する。
【0013】
本発明の人体用害虫忌避剤は、水溶液中に少なくとも、有効成分である害虫忌避成分と溶剤と起泡剤が溶解又は分散している。人体用害虫忌避剤中、水は、10質量%以上含有するのが好ましく、より好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。水の含有量は有効成分等他の成分の含有量により適宜調整でき、上限は特に限定されない。
水としては、例えば、精製水、イオン交換水、蒸留水、ろ過処理した水、滅菌処理した水、水道水等が挙げられ、いずれも好ましく使用できる。
【0014】
(害虫忌避成分)
人体用害虫忌避剤に含有される害虫忌避成分は、従来公知の成分が使用できる。
例えば、N,N-ジエチル-m-トルアミド(以下、「ディート」と称することがある。)、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル、イカリジン、p-メンタン-3,8-ジオール、3-(N-アセチル-n-ブチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボン酸1-メチルプロピル、2-エチル-1,3-ヘキサジオール、ブチル3,4-ジヒドロ-2,2-ジメチル-4-オキソ-2H-ピラン-6-カルボキシレート、n-ヘキシルトリエチレングリコールモノエーテル、メチル6-n-ペンチル-シクロヘキセン-1-カルボキシレート、ジメチルフタレート、酢酸メンチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等の化学合成忌避成分;ナフタリン、しょうのう、パラジクロロベンゼン等の衣類用防虫剤;ユーカリ油、シトロネラ油、レモングラス油、ハッカ油、ゼラニウム油、ローズマリー油、タイム油等の精油;p-メンタン-3,8-ジオール、L-メントール、シネオール、α-ピネン、シトロネロール、シトラール、シトロネラール、カンファー、リナロール、ゲラニオール、ターピネオール、テルペノール、カルボン等の精油由来の害虫忌避成分等が挙げられる。また、ピレトリン、ジャスモリン、アレスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、エトフェンプロックス、シフルトリン、ビフェントリン、シラフルオフェン、エムペントリン、トランスフルスリン、メトフルトリン、プロフルトリン等のピレスロイド剤、プロポクスル、フェノブカルブ等のカーバメート剤、ジクロルボス、フェンチオン、フェニトロチオン等の有機リン剤、イミダクロプリド、アセタミプリド、ジノテフラン等のネオニコチノイド系等の害虫駆除成分も使用できる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
これらの中でも、安全性、害虫忌避効果の観点から、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)、イカリジン、3-(N-アセチル-n-ブチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、精油が好ましく、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)がより好ましい。
【0016】
人体用害虫忌避剤中の害虫忌避成分の含有量は、0.1~50質量%であるのが好ましい。害虫忌避成分の含有量が0.1質量%以上であると、害虫忌避効果を発揮でき、50質量%以下であると、皮膚刺激を生じさせることなく、また、泡の形成を阻害しない。害虫忌避成分の含有量は、3質量%以上であるのがより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また、40質量%以下であるのがより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0017】
(溶剤)
溶剤は、害虫忌避成分を溶解させる成分である。水への溶解性の観点から、溶剤は、水溶性有機溶剤が好ましい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、2-メチル-2-プロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水溶性有機溶剤の中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の二価アルコール、エタノールが好ましく、さらに好ましくは1,3-ブチレングリコール、エタノールである。
【0018】
人体用害虫忌避剤中の溶剤の含有量は、0.1~70質量%であるのが好ましい。溶剤の含有量が0.1質量%以上であると、害虫忌避成分を可溶化でき、70質量%以下であると、人体用害虫忌避剤を泡状で吐出させることができる。溶剤の含有量は、60質量%以下であるのがより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、また、害虫忌避成分を溶解できれば良いため下限は特に限定されない。
【0019】
なお、本発明において、泡の形成を阻害せず、かつ油溶性の害虫忌避成分を組成物中に可溶化させるという観点から、溶剤は水1に対して、質量比で、1~1/3程度とするのが好ましい。
【0020】
(起泡剤)
起泡剤は、人体用害虫忌避剤が泡吐出容器から吐出される際に起泡を起こさせ、泡状で吐出させるものである。起泡剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤等が挙げられ、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、エステル系界面活性剤、エーテル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられ、具体的に、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、アシル化メチルタウリン塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型活性剤、ベタイン型活性剤、イミダゾリン型活性剤等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、溶剤存在下での発泡性に優れるという観点から、酸化エチレンの付加モル数が10以上のノニオン界面活性剤、スルホン酸塩型アニオン界面活性剤及びベタイン型両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
酸化エチレンの付加モル数が10以上のノニオン界面活性剤としては、ポリエチレングリコール構造を有しさらに一部が酸化エチレンに置換された化合物が挙げられ、具体的に、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体が挙げられる。スルホン酸塩型アニオン界面活性剤としては、スルホコハク酸塩が挙げられる。ベタイン型両性界面活性剤としては、酢酸ベタイン型活性剤が挙げられる。
また、安全性の観点からは、ノニオン界面活性剤を含有するのが好ましい。
【0023】
人体用害虫忌避剤中の起泡剤の含有量は、0.01~30質量%であるのが好ましい。起泡剤の含有量が0.01質量%以上であると、人体用害虫忌避剤が気泡しやすく、また消泡し難い泡を形成でき、30質量%以下であると、皮膚刺激や炎症を軽減でき、また、摩擦を低減でき塗り広げやすくなる。起泡剤の含有量は、20質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
(その他の添加剤)
人体用害虫忌避剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、通常添加可能な添加剤を更に加えることができる。添加剤としては、例えば、保湿剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、増粘剤、香料、色素、滑沢剤、経皮吸収抑制剤等が挙げられる。
【0025】
保湿剤としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、セラミド、コラーゲン、プラセンタエキス、ミルクプロテイン、ビタミンC誘導体、ソルビット等が挙げられる。
【0026】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル,パラオキシ安息香酸プロピル等のパラヒドロキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0027】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル等が挙げられる。
【0028】
酸化防止剤としては、例えば、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル-チオ-ジ-プロピオネート、2,2’-メチレン-ビス-(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、4,4’-メチレン-ビス-(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオ-ビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、フェニル-β-ナフチルアミン、2-t-ブチル-4-メトキシフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、α-トコフェロール、アスコルビン酸、エリソルビン酸等が挙げられる。
【0029】
pH調整剤としては、例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、グルコノδラクトン、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、モノイソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びこれらの水和物等が挙げられる。
【0030】
増粘剤としては、例えば、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、デキストラン、デキストリン、プルラン等の天然の水溶性高分子;メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)等のセルロース系高分子;ベントナイト、無水ケイ酸等の無機の水溶性高分子等が挙げられる。
【0031】
香料としては、例えば、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油、ユーカリ油、クローブ油、タイム油、ローズマリー油、シトロネラ油、ラベンダー油、ティーツリー油、レモングラス油等の天然精油、l-メントール、l-カルボン、カルバクロール、オイゲノール、アネトール、1,8-シネオール、ヒノキチオール、チモール等の香料成分が挙げられる。
【0032】
色素としては、例えば、青色1号、黄色4号、赤色102号、緑色3号等が挙げられる。
【0033】
滑沢剤としては、例えば、疎水性シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイソウ土、高純度シリカ、無水ケイ酸、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、酸性白土、ホワイトカーボン、パーライト等の無機粉体、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム等のアルケニルコハク酸デンプンの金属塩、シルクパウダー等の天然パウダー、ナイロン、ポリプロピレン等の樹脂等の粉体等が挙げられる。
【0034】
経皮吸収抑制剤としては、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0035】
本発明の人体用害虫忌避剤は、水に、害虫忌避成分を溶剤に溶解させた状態で添加し、起泡剤を添加し、任意の添加剤を加えて均一に混合することにより得られる。固形の成分がある場合は、加熱により溶融させてから混合するのが好ましい。
【0036】
人体用害虫忌避剤は、pHが2~9の範囲であるのが好ましい。pHが前記範囲であると、肌への刺激を低減できる。人体用害虫忌避剤のpHは、3以上であるのがより好ましく、4.5以上が更に好ましく、また8以下であるのがより好ましく、7.5以下がさらに好ましい。
【0037】
人体用害虫忌避剤は、泡吐出容器への充填等の製造時における生産性の観点から、25℃における粘度が1000mPa・s以下であるのが好ましい。人体用害虫忌避剤の25℃における粘度は、500mPa・s以下であるのがより好ましく、250mPa・s以下がさらに好ましく、下限は特に限定されない。
【0038】
本発明の人体用害虫忌避剤は、泡状で吐出したときに、吐出された泡の30秒後の液化率が70%以下である。泡の30秒後の液化率は、具体的には、以下のように測定する。
1.ポンプ式泡吐出容器(吐出量:1mL、ノズル体内に、噴口に近い側から305メッシュ(目開き48μm)と200メッシュ(目開き77μm)の網状体を有する)に、人体用害虫忌避剤を充填して試験検体を得る。
2.計量容器(例えば、アローヒネノ社製「アロー 液量計 円錐ハイグラス型 30mL」(商品名))に、試験検体から泡状の人体用害虫忌避剤を約30mL吐出させるとともに、吐出前の試験検体の質量から吐出後の試験検体の質量を減じて吐出液の質量を算出する。
3.泡状の人体用害虫忌避剤が充填された計量容器を25±2℃環境下に静置し、30秒後に底部に滞留した液を採取してその滞留液の質量を測定し、下記の式(1)にて液化率を算出する。
液化率(%)=滞留液の質量/吐出液の質量×100 ・・・(1)
【0039】
人体用害虫忌避剤の、泡状で吐出したときの30秒後の液化率が70%以下であると、吐出後に泡が早期に消泡することなく泡形状が保たれるので、液だれすることなく塗り広げしやすい。前記試験による液化率は、40%以下であるのが好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。液化率の下限は特に限定されない。
【0040】
また、本発明の人体用害虫忌避剤は、平均動摩擦係数が0.15以下であるのが好ましい。平均動摩擦係数は、静・動摩擦測定機(例えば、トリニティーラボ社製「トライボマスター TL201Tt」(商品名))を用いて以下により測定する。
1.静・動摩擦測定機の測定端子に指を想定した模擬皮膚(バイオスキンシート)を貼り付け、静・動摩擦測定機の試験面に腕を想定した模擬皮膚(バイオスキンシート)を設置する。測定時の環境温度は25±2℃、環境湿度は50±10%とする。
2.試験面の模擬皮膚上に、人体用害虫忌避剤を40μL滴下する。
3.測定端子を人体用害虫忌避剤に接触させ、垂直荷重30g、移動速度30mm/sec、移動距離40mm、サンプリング速度1ミリ秒で動作させて、試験面上を3往復させる。
4.その状態で15分風乾させた後、測定端子を試験面上で1往復させながら摩擦係数を測定し、その際の平均動摩擦係数を求める。
【0041】
人体用害虫忌避剤の平均動摩擦係数が0.15以下であると、人体用害虫忌避剤がムラのない抵抗で滑り、皮膚への感触に優れる。平均動摩擦係数は、0.10以下であるのがより好ましい。平均動摩擦係数が低いほど人体用害虫忌避剤の滑り性は優れるので、その下限値は特に限定されない。
【0042】
本発明の人体用害虫忌避剤は、泡吐出機構を備えた容器に充填して人体用害虫忌避剤製品とすることができる。泡吐出機構を備えた容器としては、例えば、ポンプ式容器、エアゾール装置等が挙げられる。
【0043】
ポンプ式容器は、人体用害虫忌避剤を充填する容器と、該容器の開口部に取り付けられ、人体用害虫忌避剤を泡状物として吐出させるノズル体とで構成される。ノズル体は、吐出経路内に泡吐出機構を備えており、泡吐出機構は、人体用害虫忌避剤と気体(空気)とを混合する気液混合室と、混合された人体用害虫忌避剤と空気が流通する吐出流路に設けられた網目構造体とを有する。ノズル体はまた、空気用シリンダと液用シリンダとで構成されるシリンダ部を備えており、空気用シリンダから送出された空気と液用シリンダから送出された人体用害虫忌避剤とが気液混合室で合流され、吐出流路に設けられた網目構造体を通過することで泡状になり、形成された泡状物がノズルヘッドの噴口から吐出される。
【0044】
本発明において、網目構造体は、網目が100~400メッシュで開き目が20~300μmの網状体を用いることが好ましく、網目が200~350メッシュで開き目が30~100μmの網状体を用いるのがより好ましい。メッシュとは、1インチ(約25.4mm)あたりの縦糸若しくは横糸の数(縦糸と横糸の数は同じとする)であり、開き目とは、縦糸どうし若しくは横糸どうしの間隔をいう。網状体の網目が粗すぎると泡がやわらかくなり消泡しやすくなるが、網目が100メッシュ以上であると、泡形状を保ち液化し難い泡を形成できる。網目が400メッシュ以下であると、ポンプを容易な力で作動することが出来る。
【0045】
網目構造体を構成する網状体の個数は特に限定されず、形成する泡の硬さや密度、泡比重に応じて適宜調整できる。
【0046】
エアゾール装置は、耐圧缶と、噴射バルブと、アクチュエーターとで構成される。エアゾール製品は、人体用害虫忌避剤(原液)と噴射剤を耐圧缶に充填し、噴射剤の噴射力によって人体用害虫忌避剤を泡状で吐出する。本発明において、使用できる噴射剤としては、例えば、液化石油ガス(LPG)やイソペンタン、プロピレン、ブタジエン、n-ブチレン、イソブチレン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサンなどの炭化水素系ガス、ジメチルエーテル(DME)、代替フロン、圧縮ガス(酸素、窒素)、及びこれらの混合物等が挙げられる。中でも、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)が好ましい。
【0047】
エアゾール装置に充填する際の、人体用害虫忌避剤(原液)と噴射剤の混合比は、容量比(体積比)で、原液:噴射剤を95:5~20:80とするのが好ましく、90:10~50:50がより好ましい。
【0048】
本発明の人体用害虫忌避剤は、ポンプ式容器に充填して用いるのに適している。ポンプ式容器から泡を吐出させる際には泡立ちが十分でないとすぐに液化してしまうが、本発明の人体用害虫忌避剤は、泡状で吐出させたときにしっかりした泡を形成できるので、液だれすることなく塗布性に優れた泡を形成できる。
【0049】
本発明の人体用害虫忌避剤を皮膚上に適用するに際しては、例えば、害虫忌避成分がディートである場合、ディートの皮膚への付着量が1.5mg/100cm以上、さらに好ましくは5.0mg/100cm以上となるように使用するのが好ましい。ディートを前記範囲とすることで、害虫忌避効果及び皮膚への浸透抑制効果を十分に得ることができる。さらに、良好な使用感を得るという観点から、ディートは1.5~150mg/100cmの付着量で用いることがより好ましい。
【0050】
本発明において忌避の対象となりうる害虫としては、例えば、カ、ブユ、イエダニ、ノミ、サシバエ、ナンキンムシ、ヤマビル、マダニ、ハチ、アリ、アブ、ツツガムシ、アタマジラミ、ケジラミ等の各種の刺咬性害虫が挙げられる。
【実施例0051】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0052】
<試験例1>
(実施例1~7、比較例1~3)
表1に示す処方に従い、各成分を撹拌下で混合し、検体組成物を調製した。
各検体組成物100gを以下の仕様を満たすポンプ式泡吐出容器Aに充填し、試験検体を作製した。
ポンプ式泡吐出容器A:容量250mL、吐出量:1mL。噴口に近い側から305メッシュ(目開き48μm)と200メッシュ(目開き77μm)の網状体を有する。
【0053】
【表1】
【0054】
上記で得た各検体組成物について、平均動摩擦係数を測定し、各試験検体を用いて、泡の評価を行った。結果を表2に示す。
【0055】
1.平均動摩擦係数の測定
測定は、トリニティーラボ社製の静・動摩擦測定機「トライボマスター TL201Tt」(商品名)を用いて行った。測定時の環境温度は25±2℃、環境湿度は50±10%とした。
静・動摩擦測定機の測定端子に指を想定した模擬皮膚(バイオスキンシート)を貼り付け、静・動摩擦測定機の試験面に腕を想定した模擬皮膚(バイオスキンシート)を設置した。
試験面の模擬皮膚上に、検体組成物を40μL滴下し、測定端子を検体組成物に接触させ、垂直荷重30g、移動速度30mm/sec、移動距離40mm、サンプリング速度1ミリ秒で動作させて、試験面上を3往復させた。
その状態で15分風乾させた後、測定端子を試験面上で1往復させながら、摩擦係数を測定し、平均動摩擦係数を求めた。
【0056】
2.液化率の測定
計量容器(アローヒネノ社製「アロー 液量計 円錐ハイグラス型 30mL」(商品名))に、試験検体から泡状の検体組成物を約30mL吐出させるとともに、吐出前の試験検体の質量から吐出後の試験検体の質量を減じて吐出液の質量を算出した。
泡状の検体組成物が充填された計量容器を25±2℃環境下に静置し、30秒後に底部に滞留した液を採取してその滞留液の質量を測定し、下記の式(1)にて液化率を算出した。
液化率(%)=滞留液の質量/吐出液の質量×100 ・・・(1)
【0057】
3.泡感の確認
日本製紙クレシア株式会製「キムタオル」(商品名)の上に、試験検体から泡を1mL吐出させ、吐出直後の泡立ちについて評価を行った。
評価は、図1に示す実施例4の泡状態を基準として行った。実施例4の泡状態よりも泡立つものを「◎(かなり良好)」、実施例4の泡状態と同程度を「〇(良好)」、実施例4の泡より泡立ちは少ないが、泡立ちがあるものを「△(やや良好)」、泡立たないものを「×(不良)」と評価した。
【0058】
4.泡持ちの確認
日本製紙クレシア株式会製「キムタオル」(商品名)の上に、試験検体から泡を1mL吐出させ、泡が消えるまでの時間を計測した。
【0059】
5.泡の弾力性の確認
50mLビーカーに、試験検体から泡を1mL吐出させ、カバーグラス(縦18mm×横18mm、厚み約0.15mm、重さ約110mg)を吐出直後の泡の上に置いた。カバーグラス設置後すぐに外観を確認し、カバーグラスが泡の上に浮いていたものを「〇(良好)」、沈んだものを「×(不良)」と評価した。
【0060】
【表2】
【0061】
<試験例2>
(実施例8~18)
表3に示す処方に従い、各成分を撹拌下で混合し、検体組成物を調製した。
試験例1と同様に、各検体組成物100gをポンプ式泡吐出容器Aに充填し、試験検体を作製した。
【0062】
【表3】
【0063】
上記で得た検体組成物及び試験検体について、試験例1と同様にして、試験を行った。結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
<試験例3>
(実施例19~22)
表5に示す処方に従い、各成分を撹拌下で混合し、検体組成物を調製した。
試験例1と同様に、各検体組成物100gをポンプ式泡吐出容器Aに充填し、試験検体を作製した。
【0066】
【表5】
【0067】
上記で得た検体組成物及び試験検体について、試験例1と同様にして、試験を行った。結果を表6に示す。
【0068】
【表6】
【0069】
表2、表4及び表6の結果より、実施例1~22は、吐出された泡が十分に泡立ち、また泡状態を5秒以上維持していた。よって、皮膚の上に塗り広げる際にも液だれすることなく、塗布性に優れることがわかった。また、平均動摩擦係数が小さく、滑り性に優れることがわかった。
図1