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  • 特開-電池パック 図1
  • 特開-電池パック 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025478
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/213 20210101AFI20230215BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20230215BHJP
【FI】
H01M50/213
H01M50/227
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130752
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】土屋 勝毅
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AT01
5H040AY07
5H040CC28
5H040CC37
5H040CC38
5H040DD07
5H040DD29
5H040JJ03
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】熱収縮チューブからなる外装カバーの二次収縮を抑制できる電池パックを提供する。
【解決手段】電池パック1は、熱収縮チューブからなるセルカバー8で覆われた複数の電池セル2からなるセル集合体3と、セル集合体を覆い熱収縮チューブからなる外装カバー4とを有する。電池セル同士は、セルの長手方向と交差する方向に並列に配置される。セルカバー及び外装カバーは、長手方向の端部に開口を有する。互いに隣接する2つの電池セルのうち、一方の電池セルの外周面と他方の電池セルの外周面とが接触する接触部に接着剤を付与して、両電池セルを一体化する固定部10を形成する。固定部は、電池セルの長手方向に沿って線条に延びている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる外周面が第1熱収縮チューブからなるセルカバーで覆われた電池セルの複数を有し、前記電池セル同士が前記長手方向と交差する方向に並列に配置されたセル集合体と、
前記第1熱収縮チューブと同一または異なる材料からなる第2熱収縮チューブからなり前記セル集合体を覆う外装カバーと、
を備える電池パックであって、
前記セルカバー及び前記外装カバーは、それぞれ前記長手方向の端部に開口部を有し、
互いに隣接する2つの電池セルのうち、一方の電池セルの外周面が他方の電池セルの外周面と接触する接触部に接着剤を付与することにより、前記一方の電池セルと前記他方の電池セルとを固定する固定部を有し、
前記固定部は、前記長手方向に沿って線条に延びる、ことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記固定部は、前記電池セルの長手方向における一端部から他端部まで連続して存在する、請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
前記固定部は、前記電池セルの長手方向における一端部から他端部までの間に部分的に存在する、請求項1記載の電池パック。
【請求項4】
前記外装カバーは、前記セル集合体の長手方向の端部の周縁部を覆いながらも、前記開口部から前記セル集合体の端部を部分的に露出させる、請求項1から3の何れか一に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを組み合わせてなる電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電源の一例として、二次電池セルからなる電池セルの複数を並べて熱収縮チューブの内部に包み込み、熱収縮パックの加熱収縮によりパッキングした電池パックが用いられている。熱収縮チューブは、複数の電池セルがばらばらにならないようにまとめると共に、絶縁性であるために、電池パックと他の部品との短絡を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-83804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池パックは、充電や使用環境に応じて温度変化に晒される場合がある。電池パックの製造工程において収縮された熱収縮チューブは、その後に収縮開始温度以上の温度に晒されると二次収縮が発生することがある。一回当たりの収縮量が僅かであっても、温度の上下変動を何回も被ると、チューブはその度ごとに収縮していくので合算した収縮量が大きくなる。その結果、本来はチューブで被覆されるべき通電部などが露出して短絡などの不測の事態を引き起こす場合があった。
【0005】
そこで、従来は、電池パックの熱収縮チューブの収縮方向に沿って熱伸縮の無いテープを貼付して熱収縮チューブと一体化させることにより、熱収縮チューブの二次収縮の発生を抑制していた。
【0006】
しかし、テープの追加は、製造工程数の増加や製造コストの増加を招いていた。
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑みて、製造コストを抑制しつつも熱収縮チューブの二次収縮を抑制することができる電池パックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電池パックは、長手方向に延びる外周面が第1熱収縮チューブからなるセルカバーで覆われた電池セルの複数を有し、前記電池セル同士が前記長手方向と交差する方向に並列に配置されたセル集合体と、
前記第1熱収縮チューブと同一または異なる材料からなる第2熱収縮チューブからなり前記セル集合体を覆う外装カバーと、を備える電池パックであって、前記セルカバー及び前記外装カバーは、それぞれ前記長手方向の端部に開口部を有し、互いに隣接する2つの電池セルのうち、一方の電池セルの外周面が他方の電池セルの外周面と接触する接触部に接着剤を付与することにより、前記一方の電池セルと前記他方の電池セルとを固定する固定部を有し、前記固定部は、前記長手方向に沿って線条に延びる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱収縮チューブからなる外装カバーの二次収縮を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施の形態に係る電池パックの斜視図。
図2】(a)は、セル集合体の上面図、(b)はセル集合体の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る電池パックを、図面を参照して以下に説明する。
【0012】
図1に示す電池パック1は、4本の二次電池セル2(以下、電池セルと称す)からなるセル集合体3と、セル集合体3を被覆する外装カバー4と、リード線5とを有する。
【0013】
各電池セル2は、互いに同一規格のニッケル水素電池である。各電池セル2は、長手方向を軸方向とする円筒形の外周面6を有し、長手方向の両端部にそれぞれ電極端子7を有する。電池セル2の外周面6は、第1熱収縮チューブからなるセルカバー8で覆われている。セルカバー8は、第1熱収縮チューブの熱収縮により電池セル2の外周面6に密着して、外周面6を長手方向の一端部から他端部に亘って連続的に延びる筒形状をなす。セルカバー8は、長手方向の両端部がそれぞれ開口している。第1熱収縮チューブは、温度が所定の収縮開始温度を越えると収縮が開始する樹脂からなる。
【0014】
電池セル2の電極端子7は、セルカバー8の開口を介して、他の電池セルやリード線、他の電気部品と電気的に接続可能である。
【0015】
電池セル2の配列について以下に説明する。一の電池セル2-1に着目すると、図2(a)に示すように、他の電池セル2-2は、一の電池セル2-1に対して各々の長手方向が平行になると共に、一の電池セル2-1の外周面6が、他の電池セル2-2の外周面6に接触するように並列に配置される。また、各電池セル2,2の長手方向の端部は、互いに面一になるように配列される。
【0016】
さらに、電池セル2は、電池パック1を使用する機器の定格や使用条件、充電仕様などによって個数が決定され、例えば、S配列、W配列またはE配列に配列される。本実施の形態では、4本の電池セル2がE配列されている。すなわち、2本の電池セル2が並置されると共に、長手方向に2本の電池セル2が直列接続されている。
【0017】
上記配列において、一の電池セル2の外周面6が他の電池セル2の外周面6と接触しているので、2本の電池セル2,2の間に接触部9が線条に形成される。
【0018】
この接触部9に、液状の接着剤を塗布、又は流し込んで固化させることによって、図2(b)に示すように、当該部分は、一の電池セル2と他の電池セル2とを互いに固定する固定部10になる。この固定部10により、一の電池セル2と他の電池セル2とは一体化する。接着剤は、固化すると加熱による熱収縮が生じにくい物質が選択される。
【0019】
本実施の形態において、固定部10は、図2(a)に示すように、電池セル2の外周面6の長手方向の一端部から他端部まで連続的に形成する。
【0020】
上述のようにして、セル集合体3が形成される。
【0021】
セル集合体3に、電池セル2からの電力を外部に取り出すための一対のリード線5を電気的に接続する。さらに、セル集合体3の長手方向端部をそれぞれ絶縁性の蓋11で覆う。
【0022】
さらに、セル集合体3を第2熱収縮チューブで覆い、第2熱収縮チューブを熱収縮させて外装カバー4を形成する。第2熱収縮チューブは、第1熱収縮チューブと同一の樹脂でも、または異なる樹脂であっても良い。第2熱収縮チューブは、第1熱収縮チューブと異なる場合は、温度が第2熱収縮チューブ固有の収縮開始温度を越えると収縮を開始する樹脂からなる。
【0023】
外装カバー4は、セル集合体3の長手方向の端部に開口部4aを有する筒形状を有する。外装カバー4は、セル集合体3に密着する。開口部4aの開口縁部は、セル集合体3の長手方向の端部3Aにおいてその周縁部から内側に位置して、セル集合体3の長手方向の端部3Aの周縁部も覆っている。この周縁部は、電池セル2の長手方向端部と蓋11との間の僅かな間隙に相当する。この間隙が外装カバー4によって覆われることにより、電池セル2の電極端子7との短絡を防止することができる。また、外装カバー4は、開口部4aよりセル集合体3の長手方向端部の中心部を露出させている。
【0024】
上記のように構成される電池パック1は、電気機器の電源やバックアップ電源として用いられ、電池セル2が充電されると電気機器に対して使用可能となる。また、電池セル2が二次電池セルからなるため、電池パック1は、複数回の充放電が可能である。
【0025】
係る電池パック1は、電池セル2の充電時の発熱や、装着された電気機器の動作により生じる発熱に晒されることがある。これらの発熱により、電池パック1の温度が第2熱収縮チューブの収縮開始温度を超えると、外装カバー4は二次収縮しようとする。しかし、外装カバー4は、セル集合体3の外郭を構成する電池セル2のセルカバー8と接触すると共に、電池セル2の固定部10が、係る収縮開始温度を超えても収縮しないために、固定部10近傍のセルカバー8の収縮が抑制されるために、セルカバー8に重なる外装カバー4の収縮も抑制される。
【0026】
さらに、固定部10が電池セル2の長手方向に一端部から他端部まで途切れることなく連続して延びるために、固定部10近傍の外装カバー4の収縮が抑制される領域が、従来の点状の固定部により収縮が抑制される外装カバーの領域に比較して広くなるので、外装カバー4全体の二次収縮も抑制される。
【0027】
その結果、収縮開始温度を超える環境温度の上下変動を繰り返しても、セル集合体3の長手方向端部の周縁部を覆っていた外装カバー4の部分が収縮せず、蓋11と電極端子7との接続箇所の露出を生じさせない。
【0028】
例えば、電池パック1をISO 16750-4の温度サイクル試験に150回、300回繰り返した後の様子を記載する。
【0029】
温度サイクル試験(ISO 16750-4)は、電池パック1の環境温度を95℃から-40℃に0.5分で変化させ、その後、環境温度-40℃で電池パック1を30分間放置し、次に環境温度を-40℃から95℃に0.5分で変化させ、さらに環境温度90℃で電池パック1を30分間放置する工程を1サイクルとする。
【0030】
従来構成の電池パックは、少なくとも2本の電池セルが長手方向とは交差する方向に並列に配置、すなわち一方の電池セルの外周面と他方の電池セルの外周面とが互いに接触するように配置された場合、隣接する電池セル同士は、互いに接触する外周面上の一点に接着剤を塗布することにより固定されていた。従来構成の電池パックに対して、上記温度サイクル試験を150回行った後では、外装カバーの電池セル長手方向の収縮が進行してセル集合体の長手方向端部の周縁部の部分的な露出が開始される。さらに、300回行った後では、外装カバーの収縮は150回後のものよりも進行し、電池セル長手方向の長さは、セル集合体の長手方向の長さよりも短くなった。その結果、セル集合体の長手方向端部は、完全に外装カバーより露出し、端部に近い外周面も露出する。セル集合体の長手方向端部は、蓋に覆われているが、蓋がセル集合体の長手方向端部に対して移動して当該端部との間に僅かな間隙を生じると、間隙から電極端子が露出するため、他の電気部品と短絡を生じる場合がある。
【0031】
これに対し、本実施の形態の電池パック1では、温度サイクル試験を300回行った後でも外装カバー4の収縮量が、従来構成の外装カバーの収縮量に比較して少ないため、外装カバー4はセル集合体3の長手方向端部の周縁部を覆った状態を維持している。従って、セル集合体3の長手方向端部を塞ぐ蓋11の周縁部が露出せず外装カバー4で覆われた状態を維持しているため、他の電気部品との短絡を防止することができる。
【0032】
このように、各電池セル2をセルカバー8で覆うと共に、電池セル2同士を固定する固定部10を電池セル2の外周面6の長手方向一端部から他端部にまで連続して設けて所定の長さにすることによって、外装カバー4の二次収縮を抑制することができる。
【0033】
また、隣接する電池セル2同士を一体化させる固定部10を、従来構成の電池パックに比較して長くするだけで、外装カバー4の二次収縮を抑制するので、熱伸縮の無いテープなどの追加部材を必要とせず、製造コストを抑えることができる。従って、高温に耐えうる電池パック1を安価に提供することができる。
【0034】
なお、上記実施の形態では、並置された電池セル2を互いに固定する接着剤からなる固定部10は、電池セル2の外周面の長手方向一端部から他端部にかけて連続して設けたが、固定部は、一端部から他端部にかけて不連続に形成しても外装カバーの二次収縮を抑制できる。
【0035】
また、電池セル2は、ニッケル水素電池に限らず、適宜の種類の二次電池セルを用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 電池パック
6 外周面
8 セルカバー
2 電池セル
3 セル集合体
4 外装カバー
10 固定部
図1
図2