(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025480
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】自在フェンス及びフェンス構造物
(51)【国際特許分類】
E04H 17/16 20060101AFI20230215BHJP
E04H 17/22 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
E04H17/16 105A
E04H17/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130757
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】390019323
【氏名又は名称】小岩金網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】阿部 剛
【テーマコード(参考)】
2E142
【Fターム(参考)】
2E142AA01
2E142CC01
2E142HH01
2E142HH12
2E142HH18
2E142HH26
2E142JJ07
2E142LL01
(57)【要約】
【課題】簡素な構造でありながら境界の曲折や地盤の傾斜に沿って容易に設置でき設計の自由度及び施工性が高い自在フェンス及びフェンス構造物を提供する。
【解決手段】自在フェンス1は、断面円形の棒状体からなる複数のアンカー支柱10と複数のアンカー支柱10の間に展設するフェンス面材20とを備え、フェンス面材20は複数の縦線材21と複数の横線材22を組んでなる溶接金網であり、複数の縦線材21の下端部が最下列の横線材22より下方に突出した貫入端21aであり、複数の横線材22の両端がフェンス面材20をアンカー支柱10の長軸周りに回動可能かつフェンス面材20をアンカー支柱10の長軸に沿って摺動可能に連結するループ端22aである。フェンス構造物Aは、複数の自在フェンス1を用い、1本のアンカー支柱10に対して隣り合う2枚のフェンス面材20を連結し、複数のアンカー支柱10の下端部及び貫入端21aを地盤に貫入してなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形の棒状体からなる複数のアンカー支柱と、
前記複数のアンカー支柱の間に展設するフェンス面材と、を備え、
前記フェンス面材は、複数の縦線材と複数の横線材を組んでなる溶接金網であり、
前記複数の縦線材の下端部が、最下列の前記横線材より下方に突出した貫入端であり、
前記複数の横線材の両端が、前記フェンス面材を前記アンカー支柱の長軸周りに回動可能、かつ前記フェンス面材を前記アンカー支柱の長軸に沿って摺動可能に連結するループ端であることを特徴とする、
自在フェンス。
【請求項2】
前記ループ端が、前記横線材の端部を折り返してなり、複数の前記ループ端の折り返した先端を縦線材で連結したことを特徴とする、請求項1に記載の自在フェンス。
【請求項3】
前記アンカー支柱が、直線状の支柱本体と、前記支柱本体の頭部を折り返してなる係止端と、からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自在フェンス。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複数の自在フェンスを用いてなるフェンス構造物であって、
1本の前記アンカー支柱に対して隣り合う2枚の前記フェンス面材を連結し、
前記複数のアンカー支柱の下端部及び前記貫入端を地盤に貫入してなることを特徴とする、
フェンス構造物。
【請求項5】
地盤が前記フェンス構造物の連続方向に傾斜する傾斜地であって、1本の前記アンカー支柱を共有する2枚の前記フェンス面材の高さが異なることを特徴とする、請求項4に記載のフェンス構造物。
【請求項6】
棒状又は索状の控え材を備え、前記控え材が前記フェンス面材の中央付近と地盤とを連結することを特徴とする、請求項4又は5に記載のフェンス構造物。
【請求項7】
前記控え材を前記フェンス面材の面方向両側に配置したことを特徴とする、請求項6に記載のフェンス構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自在フェンス及びフェンス構造物に関し、特に、簡素な構造でありながら、境界の曲折や地盤の傾斜に沿って容易に設置でき、設計の自由度及び施工性が高い、自在フェンス及びこれを用いてなるフェンス構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
耕作地への猪や鹿などの害獣の侵入を防ぐため、敷地内への他人の侵入を防ぐため等の目的で地盤に各種のフェンスが設置される。
特許文献1には、地盤に打設した支柱の前面に波形状の溶接金網を固定したフェンスが開示されている。特許文献2には、柵体を支柱に対して水平方向及び垂直方向に角度変更可能に固定したフェンスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-61509号公報
【特許文献2】特開2017-123826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には以下のような問題点が存在する。
<1>特許文献1のフェンスは、金網が支柱に固定されているため、フェンスを設置する境界が曲折している場合や、地盤が傾斜している場合に、これらに対応して設置することができない。
<2>特許文献2のフェンスは、柵体の支柱に対する角度を調整できるため、フェンスを曲折した境界に沿って連続させたり、柵体を傾斜に追従して設置することができる。しかし、柵体を回動させるための連結部の構造が複雑で部品点数が多いため、材料コストが高く、組み立てに時間と手間がかかる。
<3>特許文献2のフェンスは、傾斜した地盤に沿って設置する場合、柵体の下方の地盤が直線状に傾斜していればよいが、そうでなく傾斜に沿った凹凸があると、柵体の下部と地盤との間に隙間が生じて、フェンスとしての機能を損なう。
【0005】
本発明の目的は、以上のような問題点を解決するための自在フェンス及びフェンス構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自在フェンスは、断面円形の棒状体からなる複数のアンカー支柱と、複数のアンカー支柱の間に展設するフェンス面材と、を備え、フェンス面材は、複数の縦線材と複数の横線材を組んでなる溶接金網であり、複数の縦線材の下端部が、最下列の横線材より下方に突出した貫入端であり、複数の横線材の両端が、フェンス面材をアンカー支柱の長軸周りに回動可能、かつフェンス面材をアンカー支柱の長軸に沿って摺動可能に連結するループ端であることを特徴とする。
【0007】
本発明の自在フェンスは、ループ端が、横線材の端部を折り返してなり、複数のループ端の折り返した先端を縦線材で連結していてもよい。
【0008】
本発明の自在フェンスは、アンカー支柱が、直線状の支柱本体と、支柱本体の頭部を折り返してなる係止端と、からなっていてもよい。
【0009】
本発明のフェンス構造物は、複数の自在フェンスを用い、1本のアンカー支柱に対して隣り合う2枚のフェンス面材を連結し、複数のアンカー支柱の下端部及び貫入端を地盤に貫入してなることを特徴とする。
【0010】
本発明のフェンス構造物は、地盤がフェンス構造物の連続方向に傾斜する傾斜地であって、1本のアンカー支柱を共有する2枚のフェンス面材の高さが異なっていてもよい。
【0011】
本発明のフェンス構造物は、棒状又は索状の控え材を備え、控え材がフェンス面材の中央付近と地盤とを連結してもよい。
【0012】
本発明のフェンス構造物は、控え材をフェンス面材の面方向両側に配置してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自在フェンス及びフェンス構造物は、以上の構成を備えるため、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>簡易な構造でありながら、フェンス面材をアンカー支柱に対して回動可能かつ上下に摺動可能であるため、境界の曲折や地盤の傾斜に沿って設置することができる。このため、設計・施工の自由度が高い。
<2>フェンス面材のループ端内にアンカー支柱を挿通して打設するだけで設置できるため、施工効率が非常に高い。
<3>アンカー支柱とフェンス面材の2種類の部材の組み合わせで、様々な地形に対応可能であるため、部材の汎用性が高く、材料コストが安い。
<4>フェンス面材の貫入端を地盤に貫入して設置するため、地盤に傾斜に沿った凹凸があっても、フェンス面材の下部と地盤との間に隙間が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】フェンス構造物を傾斜地に設置した例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の自在フェンス及びフェンス構造物について詳細に説明する。
【実施例0016】
[自在フェンス]
<1>全体の構成(
図1)
本発明の自在フェンス1は、地盤の傾斜や境界の曲折に沿って設置可能なフェンスである。
本例では、自在フェンス1を、猪や鹿などの獣害防止フェンスとして用いる例について説明するが、用途はこれに限らず、他の様々な用途に用いることができる。
自在フェンス1は、複数のアンカー支柱10と、アンカー支柱10の間に展設するフェンス面材20と、を少なくとも備える。本例では、更に控え材30を備える。
自在フェンス1は、フェンス面材20を、アンカー支柱10の長軸周りに回動可能、かつ長軸に沿って摺動可能な構造に一つの特徴を有する。
【0017】
<2>アンカー支柱
アンカー支柱10は、フェンス面材20を支持する支柱である。
アンカー支柱10は、断面円形の棒状体からなり、直線状の支柱本体11と、支柱本体11の頭部に設けた係止端12と、を少なくとも備える。
本例では係止端12が、支柱本体11の頭部を折り返してなる逆U字フック形状を呈する。
ただし係止端12の構造はこれに限らず、例えば逆L字形状、逆T字形状、スタッドヘッド状であってもよい。要は打ち込みによって、ループ端22aを上から押さえ、フェンス面材20の高さを固定可能な構造であればよい。
【0018】
<3>フェンス面材
フェンス面材20は、遮蔽機能を有する面材である。
フェンス面材20は、複数の縦線材21と複数の横線材22を格子状に組んだ溶接金網からなる。
フェンス面材20の網目は、用途によって適宜選択することができる。本例ではフェンス面材20の網目を縦長にしてアライグマやハクビシン等の小動物が這い上りにくい構造としている。
縦線材21の下端部は、最下列の横線材22より下方に突出して、地盤に貫入するための貫入端21aを構成する。
横線材22の両端は、アンカー支柱10と連結するためのループ端22aを構成する。
【0019】
<3.1>ループ端(
図2)
ループ端22aは、フェンス面材20をアンカー支柱10に連結する部分である。
ループ端22aは、横線材22の両端を平面視倒U字状に折り返してなる。
上下に並列する複数の横線材22のループ端22a内に、アンカー支柱10の支柱本体11を連通可能な連通路が画設される。
本例では、各ループ端22aの折り返した先端を1本の縦線材21で連結する。
横線材22の両端がリング状の構造ではなく、折り返したループ端22aであるため、例えば害獣がフェンス面材20に衝突した場合、ループ端22aが開くように弾性変形して衝撃を吸収することで、衝撃がアンカー支柱10に伝達してアンカー支柱10が変形したり傾いたりするのを防ぐことができる。
また、ループ端22aの先端を縦線材21で連結することで、受衝時にループ端22aが瞬間的に開いても、隣り合うフェンス面材20のループ端22a上の縦線材21が受衝側のループ端22aを外側から抑えることで、フェンス面材20がアンカー支柱10から離脱するのを防ぐことができる。
【0020】
<4>控え材
控え材30は、フェンス面材20を補強する部材である。
本例では控え材30として、頭部をフック状に折り返した長尺の金属アンカーを採用する。
控え材30の頭部のフックをフェンス面材20の中央付近に係止して、先端を地盤に打ち込むことで、フェンス面材20と地盤とを連結して、フェンス面材20を面直交方向に補強する。
控え材30は、フェンス面材20の害獣側に配置するのが有効であるが、フェンス面材20の面方向両側に配置するとなお好適である。
なお、控え材30は、金属アンカーに限らず、他の棒状体、又はフェンス面材20と地盤とを連結するワイヤーロープ等の索状体であってもよい。
【0021】
<5>フェンス構造物(
図3)
フェンス構造物Aは、複数の自在フェンス1を地盤に連続設置してなる構造物である。
フェンス構造物Aは、例えば次の手順で設置する。
フェンス面材20を設置場所に据え、下部の貫入端21aを地盤に差し込んで固定する。
続いて、アンカー支柱10の支柱本体11をフェンス面材20のループ端22a内に連通して、下端を地盤に打設する。ここで、最端部の自在フェンス1以外の自在フェンス1は、1本のアンカー支柱10を隣り合う2枚のフェンス面材20が共有する。そこで、2枚のフェンス面材20のループ端22aを重ね合わせ(
図2(a)(b))、重ね合わせたループ端22a内にアンカー支柱10を連通して(
図2(c))地盤に打ち込む。
本発明のフェンス構造物Aは、フェンス面材20の片側のみにアンカー支柱10を打設した状態において、フェンス面材20の他側をアンカー支柱10を中心に回動し、自在フェンス1を自由な角度に曲折して延長できるため、設計の自由度が高い。また、立木や地盤の不陸など、設置場所の状況に応じてフェンス面材20の向きを現場で調整できるため、施工の自由度が高い。
【0022】
<6>傾斜地への設置(
図4)
フェンス構造物Aを地盤の傾斜方向に沿って設置する場合、1本のアンカー支柱10に対して、隣り合う2枚のフェンス面材20の高さを、地盤の傾斜に合わせ上下にずらして連結する。
本例では、フェンス面材20として、平地用のフェンス面材20の1/4の幅のフェンス面材20を使用する。このように幅狭のフェンス面材20を用いることによって、傾斜が急であってもフェンス構造物Aを無理なく設置することができる。
また、本発明のフェンス構造物Aは、地盤に傾斜方向に沿った凹凸があっても、フェンス面材20の貫入端21aを地盤に貫入して設置するため、フェンス面材20の下部と地盤との間に隙間が生じない。