(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025485
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】高温ガス発生装置
(51)【国際特許分類】
F23D 14/24 20060101AFI20230215BHJP
F23D 14/22 20060101ALI20230215BHJP
F23D 14/84 20060101ALI20230215BHJP
F23L 7/00 20060101ALI20230215BHJP
F23D 99/00 20100101ALI20230215BHJP
F23C 7/02 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
F23D14/24 B
F23D14/22 D
F23D14/84 A
F23L7/00 B
F23D99/00
F23C7/02 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130763
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 康之
(72)【発明者】
【氏名】萩原 義之
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 圭佑
【テーマコード(参考)】
3K019
3K065
3K091
【Fターム(参考)】
3K019AA01
3K019BA03
3K019BB03
3K019CA02
3K065QB08
3K065QC03
3K091BB26
3K091CC06
3K091CC22
3K091FB33
3K091FB43
3K091FB48
3K091FB52
(57)【要約】
【課題】高温ガスを効率よく安定して生成でき、高温ガス発生炉を小型化することが可能な高温ガス発生装置を提供する。
【解決手段】燃料ガスG1と支燃性ガスG2とで火炎Fが形成される燃焼室16を有し、火炎Fによって高温燃焼ガスG3を生成させるバーナ10と、バーナ10の燃焼室16側に一端21が接続されるとともに、燃焼室16と連通する加熱室23を内部に有した円筒形状とされ、加熱室23内に火炎Fを形成させながら各被予熱ガスG41,G42を供給することで、高温燃焼ガスG3と各被予熱ガスG41,G42とを混合して高温ガスG5を生成させ、燃焼室16と反対側の他端22に配置された排出口25から高温ガスG5を排出する高温ガス発生炉20とを備え、バーナ10は、火炎Fを、旋回流を有し、且つ、この旋回流の中心軸Jの近傍に逆流域を有するように形成させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと支燃性ガスとで火炎が形成される燃焼室を有し、前記火炎によって高温燃焼ガスを生成させるバーナと、
前記バーナの前記燃焼室側に一端が接続されるとともに、前記燃焼室と連通する加熱室を内部に有した円筒形状とされ、前記加熱室内に前記火炎を形成させながら被予熱ガスを供給することで、前記高温燃焼ガスと前記被予熱ガスとを混合して高温ガスを生成させ、前記燃焼室と反対側の他端に配置された排出口から前記高温ガスを排出する高温ガス発生炉と、を備え、
前記バーナは、前記火炎を、旋回流を有し、且つ、該旋回流の中心軸の近傍に逆流域を有するように形成させることを特徴とする高温ガス発生装置。
【請求項2】
前記バーナは、前記燃焼室が、前記火炎の形成方向における先端側が拡径するように開口した有底円錐形状とされており、
前記燃焼室の底部に、前記燃料ガスを、前記バーナの中心軸に沿った旋回流で噴出する燃料ガス噴出口が開口しており、
さらに、前記燃焼室の内面における1以上の位置に、前記燃焼室の内部に前記支燃性ガスを噴出する支燃性ガス噴出口が開口しており、
前記支燃性ガスが、前記燃料ガスに向けて、該燃料ガスの旋回流に対する接線方向で噴出することにより、前記燃料ガスの旋回流の中心軸の近傍に逆流域を形成することを特徴とする請求項1に記載の高温ガス発生装置。
【請求項3】
前記燃料ガス噴出口には、前記燃料ガスを前記旋回流として噴出する旋回羽根が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の高温ガス発生装置。
【請求項4】
前記旋回羽根は、前記燃料ガス噴出口において、該燃料ガス噴出口の中心軸に対して傾斜するように配置された複数の羽根部を備えていることを特徴とする請求項3に記載の高温ガス発生装置。
【請求項5】
前記バーナは、前記燃料ガス噴出口におけるスワール数が0.65以上であることを特徴とする請求項2~請求項4の何れか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項6】
前記バーナは、前記支燃性ガス噴出口が、前記支燃性ガスとして第1支燃性ガスを噴出する第1支燃性ガス噴出口と、前記支燃性ガスとして第2支燃性ガスを噴出する第2支燃性ガス噴出口とからなり、
前記第1支燃性ガス噴出口は、前記燃焼室の底部に開口するとともに、前記バーナの中心軸上において、平面視で前記燃料ガス噴出口に周囲を囲まれるように配置され、前記バーナの中心軸上に沿うように前記第1支燃性ガスを噴出し、
前記第2支燃性ガス噴出口は、前記燃焼室の側壁に配置され、前記燃料ガス及び前記第1支燃性ガスに向けて第2支燃性ガスを噴出することを特徴とする請求項2~請求項5の何れか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項7】
前記加熱室の内部には、前記被予熱ガスとして1次被予熱ガスを供給する1次被予熱ガス供給口と、前記被予熱ガスとして2次被予熱ガスを供給する2次被予熱ガス供給口とが開口しており、
前記1次被予熱ガス供給口は、前記高温ガス発生炉の一端側における、前記バーナの外周側から前記加熱室の内部に向けて前記1次被予熱ガスを噴出する位置で配置されており、
前記2次被予熱ガス供給口は、前記加熱室の内側面における少なくとも3箇所以上で、前記高温ガス発生炉の中心軸に向けて前記2次被予熱ガスを噴出する位置で同一断面上に配置されており、
前記2次被予熱ガス同士を前記高温ガス発生炉の中心軸の近傍で衝突させることで、前記一端に接続された前記バーナ側に向かう気流と、前記他端に配置された前記排出口側に向かう気流を形成することを特徴とする請求項1~請求項6の何れか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項8】
前記加熱室は、前記火炎の形成方向に沿った方向の炉内長L1と、炉内径Dとの比[L1/D]が1~3の範囲であることを特徴とする請求項7に記載の高温ガス発生装置。
【請求項9】
前記加熱室は、前記バーナと接続される前記一端から、前記2次被予熱ガス供給口までの距離L2と、前記炉内径Dとの比[L2/D]が0.7~2.1の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の高温ガス発生装置。
【請求項10】
前記燃料ガスは、低位発熱量が2000kcal/Nm3以下であることを特徴とする請求項1~請求項9の何れか一項に記載の高温ガス発生装置。
【請求項11】
さらに、前記バーナを外周側から冷却する冷却ジャケットを備えることを特徴とする請求項1~請求項10の何れか一項に記載の高温ガス発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温ガス発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、鉄、非鉄等の製錬やセラミックス焼成工程の雰囲気形成に利用される高温の不活性ガス、還元性ガス、酸化性ガスを発生させる方法として、燃料ガスと支燃性ガスとによって火炎を発生させるバーナを用いた方法が採用されている。
【0003】
上記のような高温ガスを発生させる方法として、例えば、円筒状の高温ガス発生炉に設けたバーナによって高温燃焼ガスを生成させ、この高温燃焼ガスと被予熱ガスとを混合することで高温ガスを発生させる方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1に開示された方法では、被予熱ガスを一次被予熱ガスと二次被予熱ガスに分割し、一次被予熱ガスをバーナ近傍の炉内壁から接線方向に噴出させ、その下流側で二次被予熱ガスを中心軸に向けて噴出させる(特許文献1の
図3~5を参照)。これにより、高温ガス発生炉の中心軸に沿って進む、バーナによって形成された高温燃焼火炎が、二次被予熱ガスと衝突することで、燃焼ガスの流れに澱みが生じるので、反応時間が長くなって燃焼が促進されるのと同時に、高温燃焼ガスと各被予熱ガスとの混合が促進される。
【0004】
また、特許文献1には、バーナの外周側から一次被予熱ガスを噴出させるとともに、高温ガス発生炉の内壁から中心軸に向けて二次被予熱ガスを噴出させる方法が記載されている(特許文献1の
図8,9を参照)。これにより、上記同様、高温ガス発生炉の中心軸に沿って進む、バーナによって形成された高温の燃焼火炎が、二次被予熱ガスと衝突することで、燃焼ガスの流れに澱みが生じるので、反応時間が長くなって燃焼が促進されるのと同時に、高温燃焼ガスと各被予熱ガスとの混合が促進される。
【0005】
上記のように、特許文献1に記載された何れの方法においても、バーナによって形成された高温の燃焼火炎を、二次被予熱ガスと衝突させることで、燃焼ガスの流れに澱みを生じさせて反応時間を長くすることで、燃焼の促進、並びに、高温燃焼ガスと各被予熱ガスとの混合の促進の両方を図る方法とされている。特許文献1によれば、従来に比べてコンパクトな炉で高温ガスを発生できるとされている。
【0006】
しかしながら、コンパクトな高温ガス発生炉を用いて、二次被予熱ガスを高温の燃焼火炎に向けて噴出させると、二次被予熱ガスがバーナ側に逆流し、バーナによって形成される火炎の燃焼状態が不安定になったり、燃焼状態を維持できなくなったりする懸念がある。特に、例えば、BFG(Blast Furnace Gas;高炉ガス)等のような、低位発熱量が2000Kcal/Nm3以下である、発熱量の低い燃料を用いた場合には、上記のような二次被予熱ガスの逆流に伴う問題が顕著に発生する。
【0007】
また、二次被予熱ガスに衝突した高温の燃焼火炎が炉壁に向かって流れることで、炉壁が高温になり、高温ガス発生炉を構成する耐火物を溶損させたり、炉の寿命が短くなったりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、高温ガスを効率よく安定して生成させることができるとともに、高温ガス発生炉を小型化することが可能な高温ガス発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を包含する。
即ち、請求項1に係る発明は、燃料ガスと支燃性ガスとで火炎が形成される燃焼室を有し、前記火炎によって高温燃焼ガスを生成させるバーナと、前記バーナの前記燃焼室側に一端が接続されるとともに、前記燃焼室と連通する加熱室を内部に有した円筒形状とされ、前記加熱室内に前記火炎を形成させながら被予熱ガスを供給することで、前記高温燃焼ガスと前記被予熱ガスとを混合して高温ガスを生成させ、前記燃焼室と反対側の他端に配置された排出口から前記高温ガスを排出する高温ガス発生炉と、を備え、前記バーナは、前記火炎を、旋回流を有し、且つ、該旋回流の中心軸の近傍に逆流域を有するように形成させることを特徴とする高温ガス発生装置である。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の高温ガス発生装置であって、前記バーナは、前記燃焼室が、前記火炎の形成方向における先端側が拡径するように開口した有底円錐形状とされており、前記燃焼室の底部に、前記燃料ガスを、前記バーナの中心軸に沿った旋回流で噴出する燃料ガス噴出口が開口しており、さらに、前記燃焼室の内面における1以上の位置に、前記燃焼室の内部に前記支燃性ガスを噴出する支燃性ガス噴出口が開口しており、前記支燃性ガスが、前記燃料ガスに向けて、該燃料ガスの旋回流に対する接線方向で噴出することにより、前記燃料ガスの旋回流の中心軸の近傍に逆流域を形成することを特徴とする高温ガス発生装置である。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の高温ガス発生装置であって、前記燃料ガス噴出口には、前記燃料ガスを旋回流として噴出する旋回羽根が配置されていることを特徴とする高温ガス発生装置である。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の高温ガス発生装置であって、前記旋回羽根は、前記燃料ガス噴出口において、該燃料ガス噴出口の中心軸に対して傾斜するように配置された複数の羽根部を備えていることを特徴とする高温ガス発生装置である。
【0014】
また、請求項5に係る発明は、請求項2~請求項4の何れかに記載の高温ガス発生装置であって、前記バーナは、前記燃料ガス噴出口におけるスワール数が0.65以上であることを特徴とする高温ガス発生装置である。
【0015】
また、請求項6に係る発明は、請求項2~請求項5の何れかに記載の高温ガス発生装置であって、前記バーナは、前記支燃性ガス噴出口が、前記支燃性ガスとして第1支燃性ガスを噴出する第1支燃性ガス噴出口と、前記支燃性ガスとして第2支燃性ガスを噴出する第2支燃性ガス噴出口とからなり、前記第1支燃性ガス噴出口は、前記燃焼室の底部に開口するとともに、前記バーナの中心軸上において、平面視で前記燃料ガス噴出口に周囲を囲まれるように配置され、前記バーナの中心軸上に沿うように前記第1支燃性ガスを噴出し、前記第2支燃性ガス噴出口は、前記燃焼室の側壁に配置され、前記燃料ガス及び前記第1支燃性ガスに向けて第2支燃性ガスを噴出することを特徴とする高温ガス発生装置である。
【0016】
また、請求項7に係る発明は、請求項1~請求項6の何れかに記載の高温ガス発生装置であって、前記加熱室の内部には、前記被予熱ガスとして1次被予熱ガスを供給する1次被予熱ガス供給口と、前記被予熱ガスとして2次被予熱ガスを供給する2次被予熱ガス供給口とが開口しており、前記1次被予熱ガス供給口は、前記高温ガス発生炉の一端側における、前記バーナの外周側から前記加熱室の内部に向けて前記1次被予熱ガスを噴出する位置で配置されており、前記2次被予熱ガス供給口は、前記加熱室の内側面における少なくとも3箇所以上で、前記高温ガス発生炉の中心軸に向けて前記2次被予熱ガスを噴出する位置で同一断面上に配置されており、前記2次被予熱ガス同士を前記高温ガス発生炉の中心軸の近傍で衝突させることで、前記一端に接続された前記バーナ側に向かう気流と、前記他端に配置された前記排出口側に向かう気流を形成することを特徴とする高温ガス発生装置である。
【0017】
また、請求項8に係る発明は、請求項7に記載の高温ガス発生装置であって、前記加熱室は、前記火炎の形成方向に沿った方向の炉内長L1と、炉内径Dとの比[L1/D]が1~3の範囲であることを特徴とする高温ガス発生装置である。
【0018】
また、請求項9に係る発明は、請求項8に記載の高温ガス発生装置であって、前記加熱室は、前記バーナと接続される前記一端から、前記2次被予熱ガス供給口までの距離L2と、前記炉内径Dとの比[L2/D]が0.7~2.1の範囲であることを特徴とする高温ガス発生装置である。
【0019】
また、請求項10に係る発明は、請求項1~請求項9の何れかに記載の高温ガス発生装置であって、前記燃料ガスは、低位発熱量が2000kcal/Nm3以下であることを特徴とする高温ガス発生装置である。
【0020】
また、請求項11に係る発明は、請求項1~請求項10の何れかに記載の高温ガス発生装置であって、さらに、前記バーナを外周側から冷却する冷却ジャケットを備えることを特徴とする高温ガス発生装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る高温ガス発生装置によれば、上記のように、バーナが、火炎を、旋回流を有し、且つ、旋回流の中心軸の近傍に逆流域(循環流)を有するように形成させることにより、燃焼ガスの循環によって燃焼の促進が図られ、安定した火炎が形成される。また、火炎が上記の逆流域を有することにより、燃焼室における燃料ガス及び支燃性ガスの滞留時間が長くなるので、未燃の燃料ガス及び支燃性ガスが残存するのを抑制することが可能になる。これにより、高温ガスを効率よく安定して生成させることができるとともに、高温ガス発生炉を小型化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態である高温ガス発生装置の構成を模式的に説明する図であり、高温ガス発生装置の内部構造を示すとともに、燃料ガス、支燃性ガス、並びに被予熱ガスの各々の流れを、形成される火炎の旋回流とともに示す、高温ガス発生装置の軸方向に沿った断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態である高温ガス発生装置の構成を模式的に説明する図であり、
図1中に示したA-A断面図である。
【
図3A】本発明の第1の実施形態である高温ガス発生装置の構成を模式的に説明する図であり、
図1中に示した燃料ガス噴出口に設けられる旋回羽根を拡大して示す断面図である。
【
図3B】本発明の第1実施形態である高温ガス発生装置の構成を模式的に説明する図であり、
図1中に示した燃料ガス噴出口に設けられる旋回羽根を拡大して示す側面図である。
【
図3C】本発明の第1実施形態である高温ガス発生装置の構成を模式的に説明する図であり、
図1中に示した燃料ガス噴出口に設けられる旋回羽根を拡大して示す平面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態である高温ガス発生装置の構成を模式的に説明する図であり、高温ガス発生装置の内部構造を示すとともに、燃料ガス、支燃性ガス、並びに被予熱ガスの各々の流れを、形成される火炎の旋回流とともに示す、高温ガス発生装置の軸方向に沿った断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態である高温ガス発生装置の構成を模式的に説明する図であり、高温ガス発生装置の内部構造を示すとともに、燃料ガス、支燃性ガス、並びに被予熱ガスの各々の流れを、形成される火炎の旋回流とともに示す、高温ガス発生装置の軸方向に沿った断面図である。
【
図6】本発明の第4実施形態である高温ガス発生装置の構成を模式的に説明する図であり、高温ガス発生装置の内部構造を示すとともに、燃料ガス、支燃性ガス、並びに被予熱ガスの各々の流れを、形成される火炎の旋回流とともに示す、高温ガス発生装置の軸方向に沿った断面図である。
【
図7】本発明に係る高温ガス発生装置の実施例について説明する図であり、加熱室の一端から2次被予熱ガス供給口までの距離L2と炉内径Dとの比[L2/D]に対する、生成された高温ガス中に残存する酸素濃度の関係を示すグラフである。
【
図8】本発明に係る高温ガス発生装置の実施例について説明する図であり、加熱室の一端から2次被予熱ガス供給口までの距離L2と炉内径Dとの比[L2/D]に対する、加熱室の内壁の温度と関係を示すグラフである。
【
図9】本発明に係る高温ガス発生装置の実施例について説明する図であり、加熱室における火炎の形成方向に沿った方向の炉内長L1と炉内径Dとの比[L1/D]を0.8としたときの、排出口の中心からの径方向の距離と、排出口内における高温ガスの温度との関係を断面分布で示すグラフである。
【
図10】本発明に係る高温ガス発生装置の実施例について説明する図であり、加熱室における火炎の形成方向に沿った方向の炉内長L1と炉内径Dとの比[L1/D]を1.0としたときの、排出口の中心からの径方向の距離と、排出口内における高温ガスの温度との関係を断面分布で示すグラフである。
【
図11】本発明に係る高温ガス発生装置の実施例について説明する図であり、加熱室における火炎の形成方向に沿った方向の炉内長L1と炉内径Dとの比[L1/D]を0.3としたときの、排出口の中心からの径方向の距離と、排出口内における高温ガスの温度との関係を断面分布で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した一実施形態である高温ガス発生装置について、
図1~
図6を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0024】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態である高温ガス発生装置の構成について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の高温ガス発生装置1の内部構造を示すとともに、燃料ガスG1、支燃性ガスG2、1次被予熱ガス(被予熱ガス)G41、並びに2次被予熱ガス(被予熱ガス)G42の各々の流れを、形成される火炎Fの旋回流とともに示す断面図である。
図2は、
図1中に示した高温ガス発生装置1のA-A断面図である。
図3Aは、
図1中に示した高温ガス発生装置1の燃料ガス噴出口12aに設けられる旋回羽根18を拡大して示す断面図であり、
図3Bは、旋回羽根18を拡大して示す側面図、
図3Cは、旋回羽根18を拡大して示す平面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の高温ガス発生装置1は、燃料ガスG1と支燃性ガスG2とで火炎Fが形成される燃焼室16を有し、火炎Fによって高温燃焼ガスG3を生成させるバーナ10を備える。
また、高温ガス発生装置1は、バーナ10の燃焼室16側に一端21が接続されるとともに、燃焼室16と連通する加熱室23を内部に有した円筒形状とされ、加熱室23内に火炎Fを形成させながら1次被予熱ガスG41及び2次被予熱ガスG42を供給することで、高温燃焼ガスG3と被予熱ガスとを混合して高温ガスG5を生成させ、燃焼室16と反対側の他端22に配置された排出口25から高温ガスG5を排出する高温ガス発生炉20を備える。
そして、本実施形態の高温ガス発生装置1は、バーナ10が、火炎Fを、旋回流を有し、且つ、この旋回流の中心軸(
図1中における符号Jを参照)の近傍に逆流域を有するように形成させるものである。
【0026】
より詳細には、本実施形態で説明する例の高温ガス発生装置1は、バーナ10の燃焼室16が、火炎Fの形成方向における先端11側が拡径するように開口した有底円錐形状とされており、燃焼室16の底部16aに、燃料ガスG1を、バーナ10の中心軸Jに沿った旋回流で噴出する燃料ガス噴出口12aが開口している。さらに、高温ガス発生装置1は、燃焼室16の内面における1以上の位置、
図1に示す例においては側壁16bの複数箇所に、燃焼室16の内部に支燃性ガスG2を噴出する支燃性ガス噴出口13aが開口している。そして、
図1及び
図2中に示すように、支燃性ガスG2が、燃料ガスG1に向けて、この燃料ガスG1の旋回流に対する接線方向で噴出することにより、燃料ガスG1の旋回流の中心軸Jの近傍に逆流域を形成する。
【0027】
また、図示例の高温ガス発生装置1は、さらに、バーナ10を冷却するための冷却ジャケット30を備える。
【0028】
なお、本明細書においては、高温ガス発生装置1における中心軸Jに関し、高温ガス発生装置1を構成するバーナ10及び高温ガス発生炉20における中心軸の他、各ガスの旋回流等の中心軸に対しても同じ符号(J)を付与して説明する。
【0029】
本実施形態の高温ガス発生装置1は、上記構成を有し、所謂直接燃焼方式により、高温燃焼ガスG3と被予熱ガスとを高温ガス発生炉20内で直接混合することで、例えば、200~1700℃の高温ガスG5を生成する装置である。
高温ガス発生装置1で生成される高温ガスG5は、例えば、鉄、非鉄等の製錬や、セラミックス焼成のプロセス等における雰囲気形成に利用されるものである。具体的には、高温ガスG5は、例えば、高炉の炉頂ガス(BFG)、コークス炉ガス(Cokes Oven Gas;COG)、天然ガス、水素ガス(H2)、一酸化炭素ガス(CO)、還元性ガス、並びにそれらの混合ガス等の可燃性成分を含むガス、あるいは酸素、酸素富化空気、又は不活性ガスを、バーナ10で生成された高温燃焼ガスG3と直接混合して得られるものである。
【0030】
本実施形態の高温ガス発生装置1は、燃料ガスG1として、低い発熱量の可燃性ガスを用いることが出来るものであり、例えば、低位発熱量が2000kcal/Nm3以下である燃料ガスG1を用いることができる。このような、燃料ガスG1としては、例えば、天然ガスの他、燃料として、可燃性であること、及び水に不溶であること等の条件を満たすものを含むガスが挙げられる。
本実施形態の高温ガス発生装置1は、発熱量の低い燃料ガスを用いた場合であっても、高温ガスG5を効率よく安定して生成させることができるものである。
【0031】
ここで、本発明において説明する「低位発熱量」とは、熱量計で測定された高位発熱量から、水蒸気の凝縮潜熱に水蒸気量を乗じた値を差し引いたものであり、例えば、次式[(低位発熱量)=(高位発熱量)-(水蒸気の凝縮潜熱)×(水蒸気量)]で算出することができる(再公表特許WO2014/148536の段落0087を参照)。
また、発熱量の測定方法は、JIS K2301:2011「燃料ガス及び天然ガス-分析・試験方法」で規定されており、例えば、「8.2 計算によって求める方法(ガスクロマトグラフ法)」に規定された方法で、計算によって求めることができる。
【0032】
また、本実施形態で説明する支燃性ガスG2、並びに、詳細を後述する第1支燃性ガスG21及び第2支燃性ガスG22(
図4等を参照)としては、例えば、酸素富化空気、又は、酸素等が挙げられる。
また、1次被予熱ガスG41及び2次被予熱ガスG42としては、例えば、窒素ガス(N
2)等が挙げられる。
【0033】
バーナ10は、燃料ガスG1と支燃性ガスG2とで火炎Fを形成する燃焼室16と、燃焼室16の底部16aに開口し、燃料ガス供給路12を介して燃焼室16に燃料ガスG1を供給する燃料ガス噴出口12aと、燃焼室16の側壁16bに開口し、支燃性ガス供給路13を介して燃焼室16に支燃性ガスG2を供給する支燃性ガス噴出口13aとを備える。
【0034】
燃焼室16は、図示例においては、先端11側が拡径するように開口し、有底円錐形状に形成された凹部とされ、縦断面で略台形状とされる。バーナ10は、上述したように、この燃焼室16内において火炎Fを発生させることで、バーナ10の下流側、即ち、高温ガス発生炉20に向けて高温燃焼ガスG3を生成する。
【0035】
燃焼室16の内部には、上述したように、燃料ガス噴出口12a及び支燃性ガス噴出口13aが開口し、燃焼室16内において、燃料ガス噴出口12aから噴出する燃料ガスG1と、支燃性ガス噴出口13aから噴出する支燃性ガスG2とで火炎Fが形成される。
【0036】
燃料ガス供給路12は、図示例では、燃焼室16の底部16aにおいて中心軸Jよりも外側の位置に開口した燃料ガス噴出口12aから、バーナ10の軸方向で燃料ガスG1を噴出する。燃料ガス供給路12は、例えば、図示略の燃料流路管や燃料制御部を介して燃料ガスG1が充填されたタンク等に接続され、この燃料ガスG1を、燃料ガス噴出口12aから燃焼室16内に向けて噴出する。
【0037】
燃料ガス噴出口12aは、詳細な図示は省略するが、例えば、燃焼室16の底部16aにおける、中心軸Jを中心とした円周上において、中心軸Jを取り囲むように、複数且つ均等間隔で配置される。
なお、複数の燃料ガス噴出口12aは、燃焼室16の底部16aに開口していれば、その配置間隔や孔数、形状等は特に限定されず、任意に設定可能である。
【0038】
支燃性ガス供給路13は、図示例では、燃焼室16の側壁16bに開口した支燃性ガス噴出口13aから、バーナ10の中心軸Jに対して直行するように支燃性ガスG2を噴出する。より具体的には、上述したように、支燃性ガス噴出口13aから噴出した支燃性ガスG2は、燃料ガス噴出口12aから噴出した燃料ガスG1に向けて、この燃料ガスG1の旋回流に対する接線方向で噴出する。これにより、支燃性ガス噴出口13aから噴出した支燃性ガスG2は、燃料ガスG1の旋回流の中心軸、即ち、バーナ10の中心軸Jの近傍に逆流域を形成する。
【0039】
支燃性ガス噴出口13aは、詳細な図示は省略するが、例えば、燃焼室16の側壁16bにおいて、中心軸Jを中心とした円周上で、燃料ガス噴出口12aを平面視で外側から囲むように、複数で均等間隔にて配置される。
また、複数の支燃性ガス噴出口13aも、燃焼室16の側壁16bに開口していれば、その配置間隔や孔数、形状等は特に限定されず、任意に設定可能である。
【0040】
本実施形態の高温ガス発生装置1に備えられるバーナ10は、燃料ガス噴出口12aに、燃料ガスG1を旋回流として噴出するための旋回羽根40が配置されている。
旋回羽根40は、
図1中では詳細な構造を省略しているが、
図3A及び
図3Bに示すように(
図1も参照)、燃料ガス噴出口12a及び燃料ガス供給路12の内部において、燃料ガス噴出口12aの中心軸、即ち、バーナ10の中心軸Jに対して傾斜するように、この燃料ガス供給路12の内管外周面に配置されている。
また、旋回羽根40は、例えば、回転することなく、燃料ガス供給路12の内管12bに固定された構成を採用できる。
【0041】
また、
図3Bに示す例では、4枚の旋回羽根40が、燃料ガス供給路12の外周面において、円周方向で等間隔に配置され、旋回羽根40の径方向における最外部が、燃料ガス供給路12の外管内面に当接又は近接する。
【0042】
旋回羽根40の中心軸Jに対する傾斜角度は、特に限定されないが、燃料ガスG1に旋回流を効果的に付与する観点から、例えば、40~60°の範囲の角度とすることがより好ましい。
ここで、旋回羽根40の中心軸Jに対する傾斜角度は、燃料ガスG1の流量及び噴出速度から燃料ガス供給路12の外径及び内径を決定し、後述する式(1)で表されるスワール数を設定することで、下記式(1)から求めることができる。例えば、スワール数が0.65である場合には、下記式(1)から得られる、旋回羽根40の中心軸Jに対する傾斜角度は40°となり、スワール数が1.4である場合には、旋回羽根40の中心軸Jに対する傾斜角度は60°となる。
【0043】
なお、図示例では、旋回羽根40を4箇所に設けた例を挙げているが、旋回羽根40の設置数は特に限定されず、燃料ガス供給路12内の5箇所以上に設けられていてもよいし、4箇所未満に設けた構成を採用してもかまわない。
また、旋回羽根40の中心軸Jに対する傾斜角度や設置数は、バーナ10の大きさや、旋回流の強さを勘案しながら適宜変更すればよい。
【0044】
燃料ガス供給路12から供給される燃料ガスG1は、旋回羽根40を通過して燃料ガス噴出口12aから噴出する。このとき、燃料ガスG1は、旋回羽根40の傾斜に沿って流れるため、バーナ10の中心軸Jの回りを旋回するように流れながら、燃焼室16内に噴出する。また、旋回羽根40は、支燃性ガス噴出口13aが発生させる旋回流と同じ方向の旋回流を発生させる。
【0045】
本実施形態においては、燃料ガス噴出口12aに上記構成の旋回羽根40を備えることにより、燃料ガス噴出口12aにおける、下記式(1)で表されるスワール数が0.65以上であることがより好ましい。
【0046】
【0047】
但し、上記式(1)において、S:スワール数(-)、d2:燃料ガス噴出口12a(燃料ガス供給路12)の外管内径、d5:燃料ガス噴出口12a(燃料ガス供給路12)の内管外径、α:旋回羽根40の中心軸Jに対する傾斜角度(°)である。
【0048】
一般に、旋回流の特性、即ち旋回強度は、上記式(1)で定義されるスワール数(S)によって表され、このスワール数(S)の値が大きくなるほど強い旋回流となり、スワール数が0.65以上であることで強力な旋回流が得られる(例えば、特開2004-108656号公報の段落0025-0026を参照)。
【0049】
バーナ10は、燃料ガス噴出口12aに上記の構成の旋回羽根40が配置されることにより、燃料ガス噴出口12aから噴出される燃料ガスG1に旋回流が生じる。さらに、支燃性ガス噴出口13aから噴出される支燃性ガスG2が、燃料ガスG1に向けて、この燃料ガスG1の旋回流に対する接線方向で噴出することにより、旋回流の中心軸の近傍に逆流域を形成する。これにより、燃焼室16内で形成される火炎Fが、旋回流を有するとともに、旋回流の中心軸の近傍に逆流域を有するものとなる。
【0050】
高温ガス発生炉20は、上述したように、加熱室23内に火炎Fを形成させながら1次被予熱ガスG41及び2次被予熱ガスG42を供給することで、高温燃焼ガスG3と各被予熱ガスG41,G42とを混合して高温ガスG5を生成させ、燃焼室16と反対側の他端22に配置された排出口25から高温ガスG5を排出する。
【0051】
上述したように、高温ガス発生炉20は、バーナ10の下流側である先端11側に一端21が接続されるとともに、バーナ10の燃焼室16と連通する加熱室23を内部に有した、概略円筒形状に構成されている。即ち、加熱室23には、バーナ10の燃焼室16で形成された火炎Fが、下流側である他端22側に向かって広がるように形成される。
【0052】
加熱室23の内部には、被予熱ガスとして1次被予熱ガスG41を供給する1次被予熱ガス噴出口26a、及び、被予熱ガスとして2次被予熱ガスG42を供給する2次被予熱ガス噴出口27aが開口している。
【0053】
1次被予熱ガス噴出口26aは、高温ガス発生炉20の一端21側における、バーナ10の外周側から加熱室23の内部に向けて1次被予熱ガスG41を噴出する位置で配置されている。即ち、1次被予熱ガス噴出口26aは、例えば、平面視で環状のスリット形状に構成され、バーナ10の外側を取り囲むように環状に構成された1次被予熱ガス供給路26を介して、加熱室23の内部に1次被予熱ガスG41を均一に噴出・供給する。
なお、1次被予熱ガス噴出口26aは、上記のように、バーナ10の周囲から加熱室23の内部に開口するように配置されていれば、その配置間隔や形状等は特に限定されず、任意に設定可能である。例えば、1次被予熱ガス噴出口26aを複数の噴出口から構成し、これら各噴出口がバーナ10の外側を取り囲むように環状に配置された構成を採用することも可能である。
【0054】
2次被予熱ガス噴出口27aは、加熱室23の内側面における少なくとも3箇所以上で、高温ガス発生炉20の中心軸Jに向けて2次被予熱ガスG42を噴出する位置で同心円上に配置されている。即ち、2次被予熱ガス噴出口27aは、
図1中に示したように、2次被予熱ガスG42同士を高温ガス発生炉20の中心軸の近傍で衝突させることで、一端21に接続されたバーナ10側から、他端22に配置された排出口25側に向かうように気流を形成する。
なお、複数の2次被予熱ガス噴出口27aも、上記のように、加熱室23の内側面に3箇所以上で、開口するように配置されていれば、その配置間隔や孔数、形状等は特に限定されず、任意に設定可能である。
【0055】
排出口25は、上述したように、加熱室23で生成された高温ガスG5を外部に排出するものであり、図示例は、加熱室23に連通するとともに、その炉内壁から高温ガス発生炉20の外部に向けて筒状に突出するように構成されている。
【0056】
上記構成により、高温ガス発生炉20は、バーナ10によって形成された、旋回流を有し、且つ、旋回流の中心軸の近傍に逆流域(循環流)を有する火炎Fが、2次被予熱ガスG42と衝突することで、高温燃焼ガスG3の流れに澱みが生じる。これにより、高温燃焼ガスG3と、1次被予熱ガスG41及び2次被予熱ガスG42との反応時間が長くなって燃焼が促進されるとともに、高温燃焼ガスG3と1次被予熱ガスG41及び2次被予熱ガスG42との混合が促進される。
【0057】
なお、2次被予熱ガス噴出口27aは、加熱室23の内側面における少なくとも3箇所以上で設けられていればよいが、4箇所以上で設けられていることが、加熱室23内に噴出される2次被予熱ガスG42に対称性をもたせる観点から、より好ましい。
【0058】
また、加熱室23を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、高アルミナ質キャスタブル等の耐火物が挙げられるが、長寿命化の観点からは、耐火温度が1600℃以上程度の耐火物を用いることが好ましい。
【0059】
また、加熱室23の寸法としても、特に限定されるものではないが、例えば、
図1中に示したような、火炎Fの形成方向に沿った方向の炉内長L1と、炉内径Dとの比[L1/D]が1~3の範囲であることが好ましい。上記の比[L1/D]が1以上であることで、加熱室23内における高温燃焼ガスG3と2次被予熱ガスG42との混合を十分に行うことができ、排出口25から排出される高温ガスG5が均一で高い温度となる。また、上記の比[L1/D]が3以下であることで、火炎Fによって加熱室23の炉壁が溶損するのを防止できるので、高温ガスG5の温度が安定するとともに、高温ガス発生炉20の高寿命化を図ることが可能になる。
【0060】
また、加熱室23は、バーナ10と接続される一端21から、2次被予熱ガス噴出口27aの中心線までの距離L2と、炉内径Dとの比[L2/D]が0.7~2.1の範囲であることがより好ましい。上記の比[L2/D]が0.7以上であることで、2次被予熱ガスG42のバーナ10側への流れの影響が大きくなりすぎるのが抑制されるので、バーナ10の良好な燃焼状態を維持でき、残存酸素濃度を低く抑制することが可能になる。また、上記の比[L2/D]が2.1以下であることで、燃焼ガスと2次被予熱ガスG42との混合が十分に促進されるので、加熱室23の炉内温度並びに炉壁温度が高くなりすぎるのを抑制できる。
また、上記と同様の理由から、上記の距離L2は、上記の炉内長L1に対して0.5~0.9の割合であることがより好ましい。
【0061】
冷却ジャケット30は、バーナ10を冷却するためのものであり、図示例においては円筒状に構成され、支燃性ガス供給路13を構成する流路管の外側を、環状空間を介して覆う二重管構造とされている。そして、この環状空間は、冷却水Wが通水される冷却水流路30aとされており、冷却水Wの通水によってバーナ10を冷却可能に構成されている。
【0062】
図示例の冷却ジャケット30は、入口30bから冷却水Wが通水され、この冷却水Wが冷却水流路30aを通過して出口30cから排出される。本実施形態の高温ガス発生装置1においては、冷却水Wが冷却水流路30aを通過する際に、バーナ10を冷却する。
冷却ジャケット30は、火炎による高温雰囲気や輻射熱からバーナ10の各構成部品を保護するとともに、燃焼室16内における過渡な加熱を抑制する。
【0063】
上記の構成を備える本実施形態の高温ガス発生装置1によって得られる作用・効果について、以下に説明する。
本実施形態の高温ガス発生装置1によれば、上記のように、バーナ10が、火炎Fを、旋回流を有するとともに、旋回流の中心軸Jの近傍に逆流域(循環流:バーナ10側に逆流する流れ)を有するように、広がりをもった火炎として形成させることにより、燃焼ガスの循環によって燃焼の促進が図られ、より安定した火炎Fが形成される。また、火炎Fが上記の逆流域を有することにより、火炎Fと2次被予熱ガスG42が中心軸J上で衝突し難くなるため、火炎Fの燃焼状態が安定するので、コンパクトな高温ガス発生炉20であっても、高温燃焼ガスG3を効率よく安定して生成できる。さらに、火炎Fが上記の逆流域を有することにより、燃焼室16における燃焼ガス及び支燃性ガスG2の滞留時間が長くなるので、未燃の燃料ガス及び支燃性ガスが残存するのを抑制することが可能になる。これにより、高温ガス発生炉20がコンパクトである場合や、燃料ガスG1として発熱量の低いものを用いた場合であっても、高温ガスG5を効率よく安定して生成させることができるとともに、高温ガス発生炉20を小型化並びに長寿命化することが可能になる。
【0064】
また、被予熱ガスを、1次被予熱ガスG41と2次被予熱ガスG42とに分け、1次被予熱ガスG41をバーナ10の周囲に配置した1次被予熱ガス噴出口26aから噴出させることにより、加熱室23の炉壁と、広がった火炎Fとの間に1次被予熱ガスG41が流れ、炉壁が高温になるのを抑制できる。特に、本実施形態で説明するバーナ10のような、有底円錐形状に形成された凹部とされた燃焼室16を有する場合、形成された火炎Fが、高温ガス発生炉20の加熱室23内で広がりやすい構成を採用した場合、炉壁温度が上昇するのを抑制し、長寿命化できる効果が得られる。
【0065】
また、2次被予熱ガスG42は、加熱室23の側面から中心軸Jに向けて噴出させ、火炎Fと衝突させることにより、加熱室23の中心軸J付近で、バーナ10側に向かう流れ(逆流域)と、排出口25側に向かう流れとを形成させる。これらのうち、バーナ10側に向かう2次被予熱ガスG42は、バーナ10の火炎Fによって生成された高温燃焼ガスG3に取り込まれ、この高温燃焼ガスG3とともに加熱室23内を循環し、混合が促進される。また、火炎F中に2次被予熱ガスG42が取り込まれることで火炎Fの温度上昇が抑制され、加熱室23の炉壁温度が上昇するのを抑制できるので、耐火物からなる高温ガス発生炉20を溶損させることなく高寿命化させることが可能になる。
【0066】
また、本実施形態の高温ガス発生装置1に備えられるバーナ10によって形成された火炎Fは、2次被予熱ガスG42が火炎Fの流れを阻害することがないので、安定した燃焼状態を維持することが可能になる。
【0067】
また、本実施形態の高温ガス発生装置1において、さらに、図示例のような冷却ジャケット30を備えた構成を採用した場合には、以下のような効果が得られる。
即ち、冷却ジャケット30を備えることにより、例えば、バーナ10と冷却水Wとが直に接触するか、あるいは、バーナ10と冷却水Wとが、他の構造物を介して接することで、バーナ10を十分に冷却でき、溶損するのを防止できる。また、熱応力によってバーナ10あるいは高温ガス発生装置1全体の変形や破損が生じるのを防止できるとともに、熱応力が繰り返し印加されることによって疲労破壊が生じるのを最小限に抑制でき、高寿命化を図ることが可能になる。
【0068】
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態である高温ガス発生装置の構成について、
図4を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す本実施形態の高温ガス発生装置1Aの説明においては、
図1、
図2及び
図3A~
図3Bに示した第1実施形態の高温ガス発生装置1と同じ構成については、同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0069】
図4は、本実施形態の高温ガス発生装置1Aの内部構造を示すとともに、燃料ガスG1、第1支燃性ガス(支燃性ガス)G21、第2支燃性ガス(支燃性ガス)G22、1次被予熱ガス(被予熱ガス)G41、並びに2次被予熱ガス(被予熱ガス)G42の各々の流れを、形成される火炎Fの旋回流とともに示す断面図である。
【0070】
図4に示すように、本実施形態の高温ガス発生装置1Aは、高温ガス発生炉20が、加熱室23の内部に、1次被予熱ガスG41を供給する1次被予熱ガス噴出口26a、及び、2次被予熱ガスG42を供給する2次被予熱ガス噴出口27aが開口した構成とされている点で、
図1等に示した第1実施形態の高温ガス発生装置1と同様である。
一方、本実施形態の高温ガス発生装置1Aは、バーナ10Aが、支燃性ガスとして第1支燃性ガスG21を噴出する第1支燃性ガス噴出口14aと、支燃性ガスとして第2支燃性ガスG22を噴出する第2支燃性ガス噴出口15aとからなる点で、
図1等に示した第1実施形態の高温ガス発生装置1とは異なる。また、本実施形態の高温ガス発生装置1Aは、第1支燃性ガス噴出口14aが、燃焼室16の底部16aに開口するとともに、バーナ10Aの中心軸J上において、平面視で燃料ガス噴出口12aに周囲を囲まれるように配置され、バーナ10Aの中心軸J上に沿うように第1支燃性ガスG21を噴出するように構成されている点で、第1実施形態の高温ガス発生装置1とは異なる。そして、本実施形態の高温ガス発生装置1Aは、第2支燃性ガス噴出口15aが、燃焼室16の側壁16bに配置され、燃料ガスG1及び第1支燃性ガスG21に向けて第2支燃性ガスG22を噴出する点でも、第1実施形態の高温ガス発生装置1とは異なる。
【0071】
本実施形態の高温ガス発生装置1Aは、第1実施形態の高温ガス発生装置1と同様、バーナ10Aの燃焼室16で形成される火炎Fによって高温燃焼ガスG3を生成させる。そして、高温ガス発生装置1Aは、直接燃焼方式により、高温燃焼ガスG3と、1次被予熱ガスG41及び2次被予熱ガスG42とを高温ガス発生炉20内で直接混合することで、例えば、200~1700℃の高温ガスG5を生成する。
【0072】
第1支燃性ガス供給路14は、バーナ10Aの中心軸J上に、燃料ガス供給路12に取り囲まれるように、この燃料ガス供給路12と同軸で配置される。また、第1支燃性ガス供給路14は、燃焼室16の底部16aに開口した第1支燃性ガス噴出口14aから燃焼室16内に向けて、バーナ10Aの軸方向で第1支燃性ガスG21を噴出するように設けられる。
なお、第1支燃性ガス噴出口14aは、燃焼室16内に開口していれば、その形状等は特に限定されず、任意に設計することが可能である。
【0073】
第2支燃性ガス供給路15は、図示例では、第1実施形態の高温ガス発生装置1に備えられるバーナ10の支燃性ガス供給路13と同様、燃焼室16の側壁16bに開口した第2支燃性ガス噴出口15aから、バーナ10Aの中心軸Jに対して直行するように第2支燃性ガスG22を噴出する。より具体的には、第2支燃性ガス噴出口15aから噴出した第2支燃性ガスG22は、燃料ガス噴出口12aから噴出した燃料ガスG1に向けて、この燃料ガスG1の旋回流に対する接線方向で噴出する。これにより、第2支燃性ガス噴出口15aから噴出した第2支燃性ガスG22は、燃料ガスG1の旋回流の中心軸、即ち、バーナ10Aの中心軸Jの近傍に逆流域を形成する。
【0074】
第2支燃性ガス噴出口15aは、第1実施形態で説明した支燃性ガス噴出口13aと同様、例えば、燃焼室16の側壁16bにおいて、中心軸Jを中心とした円周上で、燃料ガス噴出口12aを平面視で外側から囲むように、複数で均等間隔にて配置される。
また、複数の第2支燃性ガス噴出口15aも、燃焼室16の側壁16bに開口していれば、その配置間隔や孔数、形状等は特に限定されず、任意に設定可能である。
【0075】
さらに、本実施形態の高温ガス発生装置1Aにおいても、第1実施形態の高温ガス発生装置1と同様、バーナ10Aの燃料ガス噴出口12aに、燃料ガスG1を旋回流として噴出するための旋回羽根40(
図3A~
図3C)が配置されており、図示例においては、燃料ガス供給路12に周囲を囲まれた第1支燃性ガス供給路14の管表面に配置されている。
【0076】
本実施形態の高温ガス発生装置1Aは、上記構成を備えることにより、第1実施形態の高温ガス発生装置1の場合と同様、バーナ10Aが、火炎Fを、旋回流を有し、且つ、この旋回流の中心軸Jの近傍に逆流域を有するように形成させる。
【0077】
本実施形態の高温ガス発生装置1Aによれば、
図1に示したような、燃焼室16の側壁16bに設けられた支燃性ガス噴出口13aからのみ、支燃性ガスG2を噴出する第1実施形態の高温ガス発生装置1に対し、さらに、バーナ10Aの中心軸J上に配置された第1支燃性ガス噴出口14aから燃焼室16内に向けて第1支燃性ガスG21を噴出する構成を採用している。これにより、高温ガス発生装置1Aは、火炎Fとして、着火源となる中心火炎F1を形成できるので、より発熱量の低い燃料を燃料ガスG1として用いた場合でも、安定した燃焼で火炎Fを形成できる。
【0078】
より具体的に説明すると、本実施形態の高温ガス発生装置1Aは、上記のような、バーナ10Aの中心軸J上から第1支燃性ガスG21を噴出する構成により、第1実施形態における説明と同様、燃料ガスG1の循環によって燃焼の促進が図られ、より安定した火炎Fが形成される。また、火炎Fが逆流域を有することで、燃焼室16における燃料ガスG1、第1支燃性ガスG21及び第2支燃性ガスG22の滞留時間が長くなるので、未燃の燃料ガス及び支燃性ガスが残存するのを抑制できる。これにより、燃料ガスG1として発熱量の低いものを用いた場合であっても、高温ガスG5を効率よく安定して生成させることができるとともに、高温ガス発生炉20を小型化並びに長寿命化することが可能になる。
【0079】
なお、
図4中においては詳細な図示を省略しているが、高温ガス発生装置1Aのバーナ10Aに備えられる第1支燃性ガス供給路14及び第2支燃性ガス供給路15には、それぞれ、同一の供給管から支燃性ガス(第1支燃性ガスG21及び第2支燃性ガスG22)を供給する構成としてもよいし、あるいは、別個の供給源から、それぞれ異なる供給管によって供給する構成としても構わない。
【0080】
<第3実施形態>
以下に、本発明の第3実施形態である高温ガス発生装置の構成について、
図5を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す本実施形態の高温ガス発生装置1Bの説明においても、
図1、
図2及び
図3A~
図3Bに示した第1実施形態の高温ガス発生装置1、並びに、
図4に示した第2実施形態の高温ガス発生装置1Aと同じ構成については、同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0081】
図5は、本実施形態の高温ガス発生装置1Bの内部構造を示すとともに、燃料ガスG1、第1支燃性ガスG21、第2支燃性ガスG22、1次被予熱ガスG41、並びに2次被予熱ガスG42の各々の流れを、形成される火炎Fの旋回流とともに示す断面図である。
【0082】
図5に示すように、本実施形態の高温ガス発生装置1Bは、バーナ10Aが、支燃性ガスとして第1支燃性ガスG21を噴出する第1支燃性ガス噴出口14aと、支燃性ガスとして第2支燃性ガスG22を噴出する第2支燃性ガス噴出口15aとから構成される点で、
図4に示した第2実施形態の高温ガス発生装置1Aと同様である。
一方、本実施形態の高温ガス発生装置1Bは、高温ガス発生炉20Bが、加熱室23の外周を外側から覆うように2次被予熱ガス供給管29が備えられ、この2次被予熱ガス供給管29に連通した2次被予熱ガス供給路27を介して、2次被予熱ガス噴出口27aから加熱室23内に向けて2次被予熱ガスG42を噴出させる構成とされている点で、第2実施形態の高温ガス発生装置1Aとは異なる。
【0083】
本実施形態の高温ガス発生装置1Bは、第1実施形態の高温ガス発生装置1及び第2実施形態の高温ガス発生装置1Aと同様、バーナ10Aの燃焼室16で形成される火炎Fによって高温燃焼ガスG3を生成させ、高温燃焼ガスG3と、1次被予熱ガスG41及び2次被予熱ガスG42とを高温ガス発生炉20B内で直接混合することで高温ガスG5を生成する。
【0084】
2次被予熱ガス供給管29は、
図5中に示す例では、加熱室23の外周を外側から覆うよう円環状に構成され、被予熱ガス導入口29aから2次被予熱ガスG42が導入される。そして、2次被予熱ガス供給管29から2次被予熱ガス供給路27に2次被予熱ガスG42が流入することで、2次被予熱ガス噴出口27aから加熱室23内に向けて2次被予熱ガスG42を噴出する構成とされている。
【0085】
本実施形態の高温ガス発生装置1Bによれば、
図4に示したような第2実施形態の高温ガス発生装置1Aに対し、さらに、加熱室23の外周を外側から覆うように2次被予熱ガス供給管29を有する高温ガス発生炉20Bを備えた構成を採用している。これにより、加熱室23で生じる放散熱によって2次被予熱ガスG42が予熱されるので、この2次被予熱ガスG42を加熱室23内に噴出することで、加熱室23を構成する炉体からの熱損失を、投入熱量に対して極僅かとなるように抑制することが可能になる。
従って、高温燃焼ガスG3と1次被予熱ガスG41及び2次被予熱ガスG42とをより効果的に混合することができるので、高温ガスG5を効率よく安定して生成させることが可能になる。
【0086】
<第4実施形態>
以下に、本発明の第4実施形態である高温ガス発生装置の構成について、
図6を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す本実施形態の高温ガス発生装置1Cの説明においても、
図1、
図2及び
図3A~
図3Bに示した第1実施形態の高温ガス発生装置1、
図4に示した第2実施形態の高温ガス発生装置1A、並びに
図5に示した第3実施形態の高温ガス発生装置1Bと同じ構成については、同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0087】
図6は、本実施形態の高温ガス発生装置1Cの内部構造を示すとともに、燃料ガスG1、第1支燃性ガスG21、第2支燃性ガスG22、1次被予熱ガスG41、並びに2次被予熱ガスG42の各々の流れを、形成される火炎Fの旋回流とともに示す断面図である。
【0088】
図6に示すように、本実施形態の高温ガス発生装置1Cは、バーナ10Aが、支燃性ガスとして第1支燃性ガスG21を噴出する第1支燃性ガス噴出口14aと、支燃性ガスとして第2支燃性ガスG22を噴出する第2支燃性ガス噴出口15aとから構成される点で、
図5に示した第3実施形態の高温ガス発生装置1Bと同様である。また、本実施形態の高温ガス発生装置1Cは、高温ガス発生炉20Cが、加熱室23における他端22側の領域の外周を外側から覆う2次被予熱ガス供給管29Cを備え、この2次被予熱ガス供給管29Cに連通した2次被予熱ガス供給路27を介して、2次被予熱ガス噴出口27aから加熱室23内に向けて2次被予熱ガスG42を噴出させる構成とされている点で、第3実施形態の高温ガス発生装置1Bと類似した構成とされている。
【0089】
一方、本実施形態の高温ガス発生装置1Cは、高温ガス発生炉20Cが、上記の2次被予熱ガス供給管29Cに隣接するように、さらに、加熱室23における一端21側の領域における外周を外側から覆う1次被予熱ガス供給管28を備える。また、高温ガス発生炉20Cの一端21側における、バーナ10Aの外周側から加熱室23の内部に向けて1次被予熱ガスG41を噴出する位置で配置された1次被予熱ガス供給路26が、1次被予熱ガス供給管28に連通している。そして、1次被予熱ガス供給路26を介して、1次被予熱ガス噴出口26aから加熱室23内に向けて2次被予熱ガスG42を噴出できる構成とされている点で、第3実施形態の高温ガス発生装置1Bとは異なる。
【0090】
本実施形態の高温ガス発生装置1Cも、第1実施形態の高温ガス発生装置1、第2実施形態の高温ガス発生装置1A及び第3実施形態の高温ガス発生装置1Bと同様、バーナ10Aの燃焼室16で形成される火炎Fによって高温燃焼ガスG3を生成させ、高温燃焼ガスG3と、1次被予熱ガスG41及び2次被予熱ガスG42とを高温ガス発生炉20B内で直接混合することで高温ガスG5を生成する。
【0091】
1次被予熱ガス供給管28は、
図6中に示す例では、加熱室23の外周における一端21側の領域を外側から覆うよう円環状に構成され、被予熱ガス導入口28aから1次被予熱ガスG41が導入される。そして、1次被予熱ガス供給管28から1次被予熱ガス供給路26に1次被予熱ガスG41が流入することで、1次被予熱ガス噴出口26aから加熱室23内に向けて1次被予熱ガスG41を噴出する構成とされている。
【0092】
また、2次被予熱ガス供給管29Cは、
図6中に示す例では、加熱室23の外周における他端22側の領域を外側から覆うよう円環状に構成され、上述した1次被予熱ガス供給管28とは、加熱室23の外周上で近接するように配置されている。また、図示例の2次被予熱ガス供給管29Cには、第2実施形態の高温ガス発生装置1Bの場合と同様、被予熱ガス導入口29aから2次被予熱ガスG42が導入される。そして、2次被予熱ガス供給管29Cから2次被予熱ガス供給路27に2次被予熱ガスG42が流入することで、2次被予熱ガス噴出口27aから加熱室23内に向けて2次被予熱ガスG42を噴出する構成とされている。
【0093】
本実施形態の高温ガス発生装置1Cによれば、
図5に示したような第3実施形態の高温ガス発生装置1Bに対し、さらに、加熱室23の外周における一端21側の領域を外側から覆うように1次被予熱ガス供給管28を有する高温ガス発生炉20Cを備えた構成を採用している。これにより、加熱室23で生じる放散熱によって、2次被予熱ガス42のみならず、1次被予熱ガスG41も予熱される。そして、これら1次被予熱ガス41及び2次被予熱ガス42を加熱室23内に噴出することで、上記同様、加熱室23を構成する炉体からの熱損失を、投入熱量に対して極僅かとなるように抑制することが可能になる。さらに、1次被予熱ガス41が1次被予熱ガス供給管28で予熱されることで、加熱室23内に広がるように形成される火炎Fの安定性が向上する効果が得られる。
従って、上記同様、高温燃焼ガスG3と1次被予熱ガスG41及び2次被予熱ガスG42とをより効果的に混合することができるので、高温ガスG5を効率よく安定して生成させることが可能になる。
【0094】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の高温ガス発生装置1(1A,1B,1C)によれば、バーナ10(10A)が、火炎Fを、旋回流を有し、且つ、旋回流の中心軸Jの近傍に逆流域(循環流)を有するように形成させることにより、燃焼ガスの循環によって燃焼の促進が図られ、安定した火炎Fが形成される。また、火炎Fが上記の逆流域を有することにより、燃焼室16における燃料ガスG1及び支燃性ガスG2(G21,G22)の滞留時間が長くなるので、未燃の燃料ガスG1及び支燃性ガスG2(G21,G22)が残存するのを抑制することが可能になる。これにより、発熱量の低い燃料ガスG1を用いた場合であっても、高温ガスG5を効率よく安定して生成させることができるとともに、高温ガス発生炉20(20A,20B)を小型化並びに長寿命化することが可能になる。
【0095】
<本発明の他の形態>
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は上記のような特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例0096】
以下、実施例により、本発明に係る高温ガス発生装置についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本実施例で採用した各条件は、あくまで一例であり、上記同様、本発明を限定するものではない。
【0097】
<実施例1>
実施例1においては、
図1に示すような本発明に係る構成を有する高温ガス発生装置1を用い、下記表1,2に示すような、広い範囲の低位発熱量である燃料ガスG1を用いた条件で、高温ガスG5を生成する試験を行った。
【0098】
即ち、本実施例においては、高温ガス発生装置1として、燃料ガスG1と支燃性ガスG2とで火炎Fが形成される燃焼室16を有し、火炎Fによって高温燃焼ガスG3を生成させるバーナ10を備えるものを使用した。また、この高温ガス発生装置1は、バーナ10の燃焼室16側に一端21が接続されるとともに、燃焼室16と連通する加熱室23を内部に有した円筒形状とされ、加熱室23内に火炎Fを形成させながら1次被予熱ガス31及び2次被予熱ガス32を供給することで、高温燃焼ガスG3と被予熱ガスとを混合して高温ガスG5を生成させ、燃焼室16と反対側の他端22に配置された排出口25から高温ガスG5を排出する高温ガス発生炉20を備える。そして、本実施例で用いた高温ガス発生装置1は、バーナ10が、火炎Fを、旋回流を有し、且つ、この旋回流の中心軸Jの近傍に逆流域を有するように形成させるものである。
【0099】
また、本実施例で用いた高温ガス発生装置1は、高温ガス発生炉20における加熱室23の、火炎Fの形成方向に沿った方向の炉内長L1と炉内径Dとの比[L1/D]が1.4、バーナ10と接続される一端21から、2次被予熱ガス噴出口27aまでの距離L2と炉内径Dとの比[L2/D]が1.0である。
【0100】
そして、燃料ガスG1として、下記表1に示すような、「天然ガス+H2+N2混合ガス」又は「天然ガス」を用いて、広い範囲の低位発熱量である燃料ガスG1を用いた条件で試験を行った。
また、本実施例においては、バーナ10の燃料ガス噴出口12aにおけるスワール数が0.65となるように、各条件を設定した。
また、上記の燃料ガスG1、支燃性ガスG2として用いた酸化剤(O2)、並びに、1次被予熱ガス41及び2次被予熱ガス42として用いた窒素ガス(N2)の各流量についても、下記表1に記した条件に設定して試験を行った。
【0101】
【0102】
また、下記表2に、高温ガス発生炉20の排出口25から排出される高温ガスG5の温度、加熱室23の炉内温度、並びに高温ガスG5中の残存酸素濃度の一覧を示す。
【0103】
【0104】
表2中に示した結果より、本発明に係る高温ガス発生装置1A(
図1を参照)を用いて高温ガスG5を生成することで、全ての条件(条件1~3)において、800℃以上の高温ガスG5が安定して得られるとともに、残存酸素濃度を極低いレベルに抑制できることが確認できた。
なお、高温ガスG5が用いられるプロセスにおける、例えば、鉄や非鉄原料等の原料や、得られる製品の酸化を防止し、プロセスにおける高炉を高温に維持する観点から、残存酸素濃度は可能な限り低く抑制されていることが好ましい。
【0105】
<実施例2>
実施例2においても、
図1に示すような本発明に係る構成を有する高温ガス発生装置1を用い、上記表1,2に示すような、広い範囲の低位発熱量である燃料ガスG1を用いた条件で、高温ガスG5を生成する試験を行った。
なお、本実施例では、高温ガス発生装置1における炉内径D、炉内長L1、一端21から2次被予熱ガス噴出口27aまでの距離L2を適宜変更して試験を行うことにより、排出口25から排出される高温ガスG5中の残存酸素濃度及び未燃ガスを低減する検討を行った。
【0106】
一般に、水素(H2)や一酸化炭素(CO)等を含む還元性ガスを予熱して、熔解炉や熱処理装置等に供給する場合、残存酸素濃度が高すぎると、例えば鉄や非鉄等の原料、及び、それらから得られる製品を酸化させてしまう等の悪影響を及ぼす可能性がある。また、酸素や酸素富化空気等を予熱してバーナに供給する場合、未燃ガスが残存するとバーナ内部で発熱が生じ、バーナを破損するおそれがある。さらに、各種プロセスにおいて雰囲気ガスとして使用する不活性ガスを予熱する場合には、残存酸素や未燃ガスが存在すると、得られる製品に悪影響を及ぼす可能性もある。
本実施例では、上記のような問題点を解消できる最適な条件について、以下のような検討を行った。
【0107】
まず、本実施例では、一端21から2次被予熱ガス噴出口27aまでの距離L2と炉内径Dとの比[L2/D]を0.5~3の範囲で適宜変更しながら試験を行い、上記の比[L2/D]の最適な値について検討した。
図7のグラフに、上記の比[L2/D]に対する、生成された高温ガス中に残存する酸素濃度の関係を示す。
また、
図8のグラフに、上記の比[L2/D]に対する、加熱室23の内壁の温度の関係を示す。
なお、本試験においては、加熱室23の内壁の温度を、熱電対を用いて測定した。
【0108】
図7に示すように、上記の比[L2/D]が0.7よりも小さい場合には、2次被予熱ガス42のバーナ10側への流れの影響が大きくなり、バーナ10の燃焼状態が好ましくない状態となり、残存酸素濃度が高くなる傾向が見られる。
一方、
図8に示すように、上記の比[L2/D]が1.5よりも大きい場合には、高温燃焼ガスG3と2次被予熱ガス42との混合効率が徐々に低下するのに伴って加熱室23の炉内温度が高くなり、上記の比[L2/D]が2.1以上である場合には、炉壁の温度が急激に上昇する傾向が見られた。
本発明は、上記の比[L2/D]を特に限定するものではないが、上記結果より、さらに、残存酸素濃度を低減して原料や製品が酸化するのを防止するとともに、未燃ガスの残存量を抑制してバーナや炉壁に損傷が生じるのを防止する効果が得られるという観点からは、上記の比[L2/D]を0.7~2.1の範囲とすることがより好ましいことが確認できた。
【0109】
次に、本実施例では、炉内長L1と炉内径Dとの比[L1/D]を0.9~3.5の範囲で適宜変更しながら試験を行い、高温ガス発生炉20の排出口25における温度分布を測定し、上記の比[L1/D]の最適な値について検討した。
図9のグラフに、上記の比[L1/D]を0.8としたときの、排出口25の中心からの径方向の距離と、排出口25内における高温ガスG5の温度との関係を、断面分布で示す。
また、
図10のグラフに、上記の比[L1/D]を1.3としたときの、排出口25の中心からの径方向の距離と、排出口25内における高温ガスG5の温度との関係を断面分布で示す。
さらに、
図11のグラフに、上記の比[L1/D]を0.3としたときの、排出口25の中心からの径方向の距離と、排出口25内における高温ガスG5の温度との関係を断面分布で示す。
なお、上記の断面分布とは、排出口25の中心からの径方向の温度分布を意味する。
また、本試験においては、高温ガスG5の温度を、熱電対を用いて測定した。
【0110】
図9に示すように、上記の比[L1/D]が1よりも小さい場合には、加熱室23において、高温燃焼ガスG3と2次被予熱ガス42とが十分に混合されず、排出口25において、中心部付近の高温ガスG5の温度が低めとなる傾向が見られた。
また、
図10に示すように、上記の比[L1/D]が3よりも大きい場合には、加熱室23を構成する炉体への熱損失の影響により、高温ガスG5の温度が徐々に低下する傾向が見られた。
本発明は、上記の比[L1/D]を特に限定するものではないが、上記結果より、さらに、高温燃焼ガスG3と2次被予熱ガス42とを十分に混合するとともに、高温ガスG5の温度が高められる効果を得る観点からは、上記の比[L1/D]を1~3の範囲とすることがより好ましいことが確認できた。
本発明の高温ガス発生装置は、高温ガスを効率よく安定して生成させることができるとともに、高温ガス発生炉を小型化することが可能になるものである。従って、本発明の高温ガス発生装置は、例えば、鉄、非鉄等の製錬やセラミックス焼成工程等で用いられる、各種の工業炉における炉内の加熱の用途に好適である。