IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 森 祐司の特許一覧 ▶ 小野塚精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両群システム及びそれが備える車両 図1
  • 特開-車両群システム及びそれが備える車両 図2
  • 特開-車両群システム及びそれが備える車両 図3
  • 特開-車両群システム及びそれが備える車両 図4
  • 特開-車両群システム及びそれが備える車両 図5
  • 特開-車両群システム及びそれが備える車両 図6
  • 特開-車両群システム及びそれが備える車両 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025497
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】車両群システム及びそれが備える車両
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20230215BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230215BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230215BHJP
   G01S 13/74 20060101ALI20230215BHJP
   G01S 13/93 20200101ALI20230215BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G05D1/02 Z
G08G1/16 E
G01S13/74
G01S13/93
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130780
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】521352004
【氏名又は名称】森 祐司
(71)【出願人】
【識別番号】513313129
【氏名又は名称】小野塚精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】森 祐司
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼原 健也
【テーマコード(参考)】
5H181
5H301
5J070
【Fターム(参考)】
5H181AA27
5H181CC11
5H181LL01
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H301AA01
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG19
5H301MM04
5H301QQ08
5J070AC02
5J070AE03
5J070AF04
5J070AH14
5J070BC13
5J070BC25
(57)【要約】
【課題】簡素な仕組みで複数の車両が前方の車両と距離を保ちながら連なって走行可能な車両群システム及びそれが備える車両を提供する。
【解決手段】それぞれ車輪11及び車輪11を回転駆動する駆動源12を有する複数の車両13、14、15、16が、互いに非接触な状態で連なって追い越し制限のある走行路Fを走行する車両群システム10であって、後方車両14、15、16が追従する車両13、14、15は、後方車両14、15、16から発信される後方車両14、15、16の識別信号を受信して、識別信号に対応する応答信号を発信し、前方車両13、14、15に追従する車両14、15、16は、自己の識別信号の発信から応答信号を受信するまでの時間を基に前方車両13、14、15までの車間距離Dを算出し、車間距離Dが予め定められた設定距離Jに近づくように駆動源12の作動レベルを調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ車輪及び該車輪を回転駆動する駆動源を有する複数の車両が、互いに非接触な状態で連なって追い越し制限のある走行路を走行する車両群システムであって、
前記複数の車両のうち後方車両が追従する前記車両は、前記後方車両から発信される該後方車両の識別信号を受信して、該識別信号に対応する応答信号を発信し、
前記複数の車両のうち前方車両に追従する前記車両は、自己の識別信号の発信から前記前方車両の応答信号を受信するまでの時間を基に前記前方車両までの車間距離Dを算出し、該車間距離Dが予め定められた設定距離Jに近づくように前記駆動源の作動レベルを調整することを特徴とする車両群システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両群システムにおいて、前記車両は3台以上あって、前記前方車両に追従する前記各車両は、該車両に追従する前記後方車両から発信された異常検出信号を受信して、前記前方車両へ順次前記異常検出信号を発信し、先頭の前記車両は、前記異常検出信号を受信して、異常の発生を検知することを特徴とする車両群システム。
【請求項3】
請求項2記載の車両群システムにおいて、前記前方車両に追従する前記車両は、算出した前記車間距離Dが、前記設定距離Jより長い、予め定められた上限距離Kを超えたことを検出して、前記異常検出信号を発信することを特徴とする車両群システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両群システムにおいて、前記識別信号を受信して、該識別信号に対応する前記応答信号を発信するトランスポンダが、前記駆動源が固定された車体に、取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする車両群システム。
【請求項5】
請求項4記載の車両群システムにおいて、前記識別信号を発信し、該識別信号に対応する前記応答信号を受信し、前記車間距離Dを算出する制御手段も、前記車体に、取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする車両群システム。
【請求項6】
車輪及び該車輪を回転駆動する駆動源を有する車両であって、
自己の識別信号rを発信する送信機、及び、該識別信号rを受信した他の車両Qから発信される該識別信号rに対応する応答信号rを受信する受信機を有して、該識別信号rの発信から該応答信号rを受信するまでの時間を基に前記車両Qまでの車間距離Dを算出し、該車間距離Dが予め定められた設定距離Jに近づくように前記駆動源の作動レベルを調整する制御手段と、
他の車両Sから発信される該車両Sの識別信号sを受信して、該識別信号sに対応する応答信号sを発信するトランスポンダとを備えることを特徴とする車両。
【請求項7】
請求項6記載の車両において、前記制御手段は、算出した前記車間距離Dが、前記設定距離Jより長い、予め定められた上限距離Kを超えたことを検出して、異常検出信号を発信することを特徴とする車両。
【請求項8】
請求項6又は7記載の車両において、前記トランスポンダは、前記駆動源が固定された車体に、取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする車両。
【請求項9】
請求項8記載の車両において、前記制御手段も、前記車体に取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方の車両と距離を保ちながら複数の車両が連なって走行する車両群システム及びそれが備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道レールの保守や点検の際、作業者は、特許文献1に記載されているような専用車両(以下、「レール用車両」と言う)に乗車して、鉄道レール上を移動する。鉄道レールは、一般的な道路と比較して、走行する車両の数が少なく、車両の進行方向が制限されていること等から、レール用車両は、一般的な道路を走行する自動車に比べて簡素な設計であり、利用者はアクセルとブレーキの操作のみで済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-107530号公報
【特許文献2】特開2007-126003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種のレール用車両は、一台に積載できる貨物の重量が大きくない(例えば、最大で100kg)ため、一度に多くの貨物を運ぶには、多くのレール用車両が必要となり、それに伴ってレール用車両を操縦する多くの人員が必要となる。操縦者の数を減らすには、先頭のレール用車両のみを操縦者が運転し、その先頭のレール用車両を後続の無人のレール用車両が自動で追尾する仕組みの採用が考えられる。
【0005】
自動追尾システムは、自動車での普及が進んでおり、例えば特許文献2に記載されているような自動追尾システムをレール用車両に適用すれば、人の数を最小限にして複数のレール用車両を連なって走行させることが可能となる。
ところが、自動車の自動追尾システムは、カメラが撮像中の画像等から追尾の対象である車両を検出し続けたり、その車両までの距離を計測し続けたり等、複雑な処理が求められ、簡素な設計のレール用車両にとっては、過大なシステムであるという課題がある。
【0006】
この課題は、レール用車両特有のものではなく、鉄道レールのように軌条やガイド等により走行の自由度が制限されて追い越しが不可能な走行路を走行する車両(例えば、工場内でレールに沿って物を移送する搬送車、モノレールに沿って走行する自走車)や、追い越しには前方の車両の近傍を通る必要がある幅が狭い道路(例えば、車幅2台分の道路)を走行する車両全般に当てはまる課題である。なお、車両には台車も含まれる。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、簡素な仕組みで前方の車両と距離を保ちながら複数の車両が連なって走行可能な車両群システム及びそれが備える車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る車両群システムは、それぞれ車輪及び該車輪を回転駆動する駆動源を有する複数の車両が、互いに非接触な状態で連なって追い越し制限のある走行路を走行する車両群システムであって、前記複数の車両のうち後方車両が追従する前記車両は、前記後方車両から発信される該後方車両の識別信号を受信して、該識別信号に対応する応答信号を発信し、前記複数の車両のうち前方車両に追従する前記車両は、自己の識別信号の発信から前記前方車両の応答信号を受信するまでの時間を基に前記前方車両までの車間距離Dを算出し、該車間距離Dが予め定められた設定距離Jに近づくように前記駆動源の作動レベルを調整する。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係る車両は、車輪及び該車輪を回転駆動する駆動源を有する車両であって、自己の識別信号rを発信する送信機、及び、該識別信号rを受信した他の車両Qから発信される該識別信号rに対応する応答信号rを受信する受信機を有して、該識別信号rの発信から該応答信号rを受信するまでの時間を基に前記車両Qまでの車間距離Dを算出し、該車間距離Dが予め定められた設定距離Jに近づくように前記駆動源の作動レベルを調整する制御手段と、他の車両Sから発信される該車両Sの識別信号sを受信して、該識別信号sに対応する応答信号sを発信するトランスポンダとを備える。
【発明の効果】
【0009】
前記目的に沿う第1の発明に係る車両群システムは、複数の車両のうち後方車両が追従する車両が、後方車両から発信される後方車両の識別信号を受信して、識別信号に対応する応答信号を発信し、複数の車両のうち前方車両に追従する車両が、自己の識別信号の発信から前方車両の応答信号を受信するまでの時間を基に前方車両までの車間距離Dを算出し、車間距離Dが予め定められた設定距離Jに近づくように駆動源の作動レベルを調整するので、車間距離を一定の範囲に保つ仕組みの複雑化を抑制でき、簡素な仕組みで前方の車両と距離を保ちながら複数の車両が連なって走行可能である。
【0010】
また、前記目的に沿う第2の発明に係る車両は、自己の識別信号rを発信する送信機、及び、識別信号rを受信した他の車両Qから発信される識別信号rに対応する応答信号rを受信する受信機を有して、識別信号rの発信から応答信号rを受信するまでの時間を基に車両Qまでの車間距離Dを算出し、車間距離Dが予め定められた設定距離Jに近づくように駆動源の作動レベルを調整する制御手段と、他の車両Sから発信される車両Sの識別信号sを受信して、識別信号sに対応する応答信号sを発信するトランスポンダとを備えるので、簡素な仕組みで前方の車両と距離を保ちながら複数の車両が連なって走行可能な車両群システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係る車両群システムの説明図である。
図2】同車両群システムが有する車両の制御手段の説明図である。
図3】同車両群システムが有する車両のトランスポンダの説明図である。
図4】制御手段及びトランスポンダの各処理の説明図である。
図5】識別信号及び応答信号の構造を示す説明図である。
図6】車両群システムの走行方向を反対にする一例の説明図である。
図7】車両群システムの走行方向を反対にする別の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る車両群システム10は、それぞれ車輪11及び車輪11を回転駆動する駆動源の一例であるモータ12を有する複数の車両13、14、15、16が、互いに非接触な状態で連なって追い越し制限のある走行路Fを走行するシステムである。以下、詳細に説明する。
【0013】
車両群システム10は、図1に示すように、先頭を走行する車両13、車両13の後方を走行する車両14、車両14の後方を走行する車両15及び車両15の後方を走行する車両16を有する。
車両13は、人Pによる操作により回転数(作動レベル)が調整されるモータ12と、モータ12により駆動される車輪11と、従動車輪17と、人Pが握ってアクセル操作等を行うハンドル18と、モータ12及びハンドル18が固定された車体19を備えて、人Pにより運転されて走行路F上を走行する。
【0014】
車両14(車両15、16についても同様)は、無人の自走式台車であり、モータ12と、モータ12により駆動される車輪11と、従動車輪17と、モータ12が固定された車体19を備えて、走行路F上を走行する。車両14(車両15、16についても同様)の車体19には貨物Wを積載可能である。
車両13、14、15、16において、車輪11及び従動車輪17はそれぞれ2つずつあって、各車輪11及び各従動車輪17は車体19に取り付けられた車軸に装着されている。走行路Fは鉄道レールであり、車両14は前方の車両13を追い越せず、車両15は前方の車両14を追い越せず、車両16は前方の車両15を追い越せない。
【0015】
前方を他の車両13が走行する(前方車両13に追従する)車両14は、図1図2に示すように、自己の識別信号(識別信号r)を発信する送信機20、及び、送信機20に自己の識別信号を一定の時間間隔(本実施の形態では、100ミリ秒間隔)で発信させる通信回路21等を有する制御手段22を具備している。前方を他の車両14が走行する(前方車両14に追従する)車両15及び前方を他の車両15が走行する(前方車両15に追従する)車両16も、図1に示すように、制御手段22と同様の構造の制御手段23、24をそれぞれ具備している。制御手段22、23、24は、車両14、15、16の各車体19にそれぞれ取り外し可能に取り付けられている。
【0016】
車両14、15、16において、自己の識別信号とは、それぞれ車両14、15、16の識別情報を含む超音波信号であり、車両14の自己の識別信号は車両14の識別情報を含み、車両15の自己の識別信号は車両15の識別情報を含み、車両16の自己の識別信号は車両16の識別情報を含む。本実施の形態では、車両14の識別情報が1、車両15の識別情報が2、車両16の識別情報が3である。
【0017】
後方を他の車両14が走行する(後方車両14が追従する)車両13は、図1図3に示すように、後方車両14から発信される後方車両14の識別信号を受信する受信機25、受信機25により受信された識別信号をそれに対応する電気信号に変換する信号処理回路26、その電気信号を超音波信号にして発信する送信機27及び送信機27からの超音波信号の発信のタイミングを決定するタイミング回路28を有するトランスポンダ29を備えている。後方を他の車両15が走行する(後方車両15が追従する)車両14及び後方を他の車両16が走行する(後方車両16が追従する)車両15も、図1に示すように、トランスポンダ29と同構造のトランスポンダ30、31をそれぞれ備えている。トランスポンダ29、30、31は車両13、14、15の各車体19にそれぞれ取り外し可能に取り付けられている。
【0018】
車両13(車両14、15についても同様)は、受信機25が、制御手段を有する他の車両の送信機20から発信される識別信号を受信する。制御手段を有する他の車両とは、車両13に対しては車両14、15、16であり、車両14に対しては車両15、16であり、車両15に対しては車両14、16であり、車両16に対しては車両14、15である。車両13(車両14、15についても同様)は、トランスポンダ29の信号処理回路26が、受信機25により受信された識別信号(超音波信号)をその識別信号に対応する電気信号に変換し、送信機27が、その変換された電気信号を超音波信号である応答信号として発信する。
【0019】
ここで、本実施の形態では、トランスポンダ29と制御手段22が対となり、トランスポンダ30と制御手段23が対となり、トランスポンダ31と制御手段24が対となるようにペアリング設定がなされている。このペアリング設定により、トランスポンダ29の信号処理回路26は制御手段22の送信機20から発信された識別信号のみを変換し、トランスポンダ30の信号処理回路26は制御手段23の送信機20から発信された識別信号のみを変換し、トランスポンダ31の信号処理回路26は制御手段24の送信機20から発信された識別信号のみを変換する。
【0020】
そのため、車両13は、トランスポンダ29の送信機27が、図4に示すように、一台後ろの車両(後方車両)14の制御手段22の送信機20から発信された識別信号に対応する応答信号のみを発信し、車両14は、トランスポンダ30の送信機が一台後ろの車両(後方車両)15の制御手段23の送信機から発信された識別信号に対応する応答信号のみを発信し、車両15は、トランスポンダ31の送信機が一台後ろの車両(後方車両)16の制御手段24の送信機から発信された識別信号に対応する応答信号のみを発信する。
【0021】
よって、本実施の形態では、制御手段22及びトランスポンダ30を備える車両14において、トランスポンダ30が、他の車両15(車両S)から発信される車両15の識別信号(識別信号s)を受信して、その識別信号に対応する応答信号(応答信号s)を発信し、制御手段23及びトランスポンダ31を備える車両15において、トランスポンダ31が、他の車両16(車両S)から発信される車両16の識別信号(識別信号s)を受信して、その識別信号に対応する応答信号(応答信号s)を発信することとなる。
【0022】
制御手段22、23、24から発信される識別信号及びトランスポンダ29、30、31から発信される応答信号は、同様の構造を有している。識別信号及び応答信号は双方とも、図5に示すように、1ビット長のスタートビット33、8ビット長の本体データ34、1ビット長のパリティ35及び1ビット長のストップビット36から構成される。
【0023】
本体データ34の1ビット目は、その信号が識別信号か応答信号かを定義する領域として利用され、同領域がロウ(0)であれば識別信号を意味し、同領域がハイ(1)であれば応答信号を意味する。本体データ34の2ビット目から5ビット目の領域にはエラーコード等が格納され、本体データ34の6ビット目から8ビット目の領域には識別情報が格納される。よって、本実施の形態では、最大で8つの異なる識別情報を定義できる。
【0024】
トランスポンダ29(トランスポンダ30、31についても同様)は、信号処理回路26が、受信機25により受信された識別信号の本体データ34の6ビット目から8ビット目の領域に格納された識別情報を基に変換処理を行うか否かを判定する。具体的には、トランスポンダ29は受信機25で受信した識別信号に対となる制御手段22(車両14)の識別情報1が含まれていることを条件に変換処理を行い、トランスポンダ30は受信機で受信した識別信号に対となる制御手段23(車両15)の識別情報2が含まれていることを条件に変換処理を行い、トランスポンダ31は受信機で受信した識別信号に対となる制御手段24(車両16)の識別情報3が含まれていることを条件に変換処理を行う。
【0025】
トランスポンダ29の信号処理回路26(トランスポンダ30、31の各信号処理回路についても同様)は、変換処理を行うとの判定をした場合、本体データ34の1ビット目をロウからハイに変換して当該識別信号から当該識別信号に対応する電気信号を生成する。
また、車両13(車両14、15についても同様)は、トランスポンダ29のタイミング回路28が、受信機25による識別信号の受信から所定時間(例えば10ミリ秒)経過した時点で送信機27に応答信号を発信させるようにしている。
【0026】
前方車両13(車両Q)に追従する車両14は、制御手段22が、図2図4に示すように、送信機20及び通信回路21に加えて、自己(車両14)の識別信号(識別信号r)を受信した他の車両13から発信される自己の識別信号に対応する応答信号(応答信号r)を受信する受信機37と、受信機37の応答信号の受信を基に車両14から車両13までの車間距離(車間距離D)を算出する距離測定回路38と、算出された車間距離を基にして車両14の速度としてあるべき値を求める速度制御回路39と、モータ12の回転速度を調整するモータ制御回路40を有している。
【0027】
距離測定回路38は、送信機20及び受信機37に接続され、送信機20が識別信号を発信したタイミング及び受信機37が応答信号を受信したタイミングを検出可能であり、送信機20による識別信号の発信から受信機37が応答信号を受信するまでの時間(時間長)から車両13、14の車間距離D(具体的には、制御手段22からトランスポンダ29までの距離)を算出する。即ち、車両14は、自己の識別信号の発信から応答信号を受信するまでの時間を基に一台前の車両13までの車間距離を算出する。
【0028】
速度制御回路39には、車両13、14の車間距離としてあるべき距離が設定距離J(本実施の形態では、2m)として予め定められている。速度制御回路39は、車両14の現在の走行速度を検知しており、距離測定回路38により算出された車両13、14の車間距離Dが設定距離Jより長ければ車両14の走行速度を現在の走行速度より速い値(大きい値)にすることを決定し、算出された車両13、14の車間距離Dが設定距離Jより短ければ車両14の走行速度を現在の走行速度より遅い値(小さい値)にすることを決定し、算出された車両13、14の車間距離が設定距離Jであれば車両14の現在の走行速度を維持することを決定する。
【0029】
本実施の形態では、モータ制御回路40がモータ12を制御するインバータ回路であり、モータ制御回路40は、速度制御回路39の決定に従って、モータ12の回転速度を調整し、車両13、14の車間距離を設定距離Jに近づける。従って、制御手段22は、車間距離が設定距離Jに近づくようにモータ12の作動レベルを調整することとなる。
【0030】
車両15の制御手段23及び車両16の制御手段24も、車両14の制御手段22と同様に、送信機及び通信回路に加えて、受信機、距離測定回路、速度制御回路及びモータ制御回路を有している。車両15(車両16)の制御手段23(車両16については制御手段24)は、受信機が、自己の識別信号(識別信号r)を受信した他の車両14(車両16については車両15)から発信される自己の識別信号に対応する応答信号(応答信号r)を受信し、距離測定回路が、送信機による識別信号の発信から受信機による応答信号の受信までの時間を基に車両14、15(車両16については車両15、16)の車間距離を算出し、速度制御回路が、算出された車両14、15(車両16については15、16)の車間距離と予め定められた設定距離Jとを比較して、車両14の走行速度を現在の走行速度より遅い値にする等の決定をし、モータ制御回路が、速度制御回路の決定に従って、モータ12の回転速度を調整し、車両14、15(車両16については15、16)の車間距離を設定距離Jに近づける。
【0031】
車両14、15、16には、車両13が有するハンドル18と同様のハンドルを追加する(取り付ける)ことができ、車両14、15、16は、ハンドルの追加により、単独で走行するようになる。よって、例えば、車両14にハンドルを取り付け、制御手段22、23、24及びトランスポンダ29、30、31を車両13、14、15、16に適切に取り付ければ、車両14が先頭を走行するように構成できる。
【0032】
また、車両14の制御手段22(車両15の制御手段23及び車両16の制御手段24についても同様)は、図2に示すように、通信回路21、距離測定回路38、速度制御回路39及びモータ制御回路40に接続された異常検出回路41を有している。
【0033】
異常検出回路41は、
1)受信機37が一定時間(本実施の形態形態では、50ミリ秒)以上、応答信号を受信しないこと、
2)距離測定回路38が算出した車両13、14の車間距離が、設定距離Jに所定の距離を加えた上限距離K(本実施の形態では、5m)を超えたこと、
3)距離測定回路38、速度制御回路39及びモータ制御回路40の少なくとも1つが正常に処理を行えないこと、
4)送信機20からの識別信号の発信から、受信機37による超音波信号(送信機27が発信した応答信号、又は、送信機20から発信され車両14や他の物体で反射された識別信号)の受信までの時間が所定時間未満となって、車両14から所定の距離(本実施の形態では、1m)以内への物体(車両13を含む)の接近を検出したこと等を、
異常として検出し、通信回路21に異常検出を伝達すると共に、モータ制御回路40にモータ12を停止させる。
【0034】
異常検出を伝達された通信回路21は、送信機20に異常検出信号を発信させる。本実施の形態において、異常検出信号は、図5に示す識別信号と同様のデータ構造であり、本体データ34の2ビット目から5ビット目の領域にエラーコードを含み、本体データ34の6ビット目から8ビット目の領域に車両14の識別情報を含んだ超音波信号である。車両13のトランスポンダ29は、この異常検出信号を受信機25で受信して、図示しない機器に音を発生させたり、図示しない表示機を点滅させると共に車両14の識別情報を表示させたりして、人Pに異常の発生を知らせる。よって、前方を他の車両13が走行する車両14は、算出した車間距離Dが、設定距離Jより長い、予め定められた上限距離K以上となったのを検出して、異常検出信号を発信することとなる。
【0035】
ここで、車両14においては制御手段22及びトランスポンダ30が電気的に接続され、車両15においても制御手段23及びトランスポンダ31が電気的に接続されている。そのため、車両16の異常検出回路で異常が検出されると、車両16の制御手段24の送信機から異常検出信号が発信され、車両15は、トランスポンダ31が受信機でその異常検出信号を受信して制御手段23に異常検出信号の発信を伝達し、制御手段23の送信機から異常検出信号(この異常検出信号には、本体データ34の2ビット目から5ビット目の領域にエラーコードが含まれ、本体データ34の6ビット目から8ビット目の領域に車両14の識別情報データが含まれている)を発信する。
【0036】
車両14は、トランスポンダ30が受信機で車両15の制御手段23から発信された異常検出信号を受信して制御手段22に異常検出信号の発信を伝達し、制御手段22の送信機20から異常検出信号(この異常検出信号には、本体データ34の2ビット目から5ビット目の領域にエラーコードが含まれ、本体データ34の6ビット目から8ビット目の領域に車両14の識別情報データが含まれている)を発信し、車両13は、トランスポンダ29が、送信機20から発信された異常検出信号を受信機25で受信して、人Pに異常の発生を知らせる。
【0037】
よって、車両群システム10は、前方を他の車両が走行する(前方車両に追従する)各車両が、一台後ろの車両(後方車両)から発信された異常検出信号を受信して、前方車両に順次異常検出信号を発信し、先頭の車両13が、異常検出信号を受信して、異常の発生を検知することとなる。
【0038】
また、車両13、14、15、16は、走行路Fにおいて、人等によりそれぞれ180°旋回されて前後を逆にされ、更に、進行方向前側から順に、車両13、14、15、16が並ぶように配置されることによって、走行路Fに沿って反対方向に走行可能となるが、この作業を、専用の装置を用いずに人が行うのは負担が大きい。
【0039】
そこで、図6に示すように、車両13を180°旋回させて前後を逆にして、車両14の前方から車両16の後方に移動させ、車両14から制御手段22及びトランスポンダ30を取り外して車両16の後側及び前側にそれぞれ取り付け、車両16に取り付けていた制御手段24を車両14の後側に取り付け、車両15の前側及び後側にそれぞれ取り付けられていた制御手段23及びトランスポンダ31を取り外してそれぞれ車両15の後側及び前側に取り付けることによって、車両13、14、15、16の一群は、先頭から車両13、16、15、14の順に並んだ状態で、走行路Fに沿って反対方向に走行可能となる。
【0040】
なお、モータ12は正転逆転が可能である。この場合、車両14、15、16を180°旋回させる必要はない。また、車両13、16、15、14は、トランスポンダ29と制御手段22が対となり、トランスポンダ30と制御手段23が対となり、トランスポンダ31と制御手段24が対となった状態で走行する。即ち、トランスポンダ29、30、31及び制御手段22、23、24のペアリング設定を変更する必要はない。
【0041】
また、制御手段22、23、24は車両14、15、16それぞれの車体19から取り外さず、トランスポンダ29、30、31のみを車両13、14、15それぞれの車体19から取り外して、車両13、14、15、16を反対方向に走行するようにすることもできる。具体的には、図7に示すように、車両13を180°旋回させて前後を逆にし、車両14の前方から車両16の後方に移動させ、車両14、15、16をその場でそれぞれ180°旋回させて前後を逆にし、車両13、14、15それぞれから取り外したトランスポンダ29、30、31を車両15、16、13にそれぞれ取り付ける。
【0042】
これによって、車両13、14、15、16の一群は、先頭から車両13、16、15、14の順に並んだ状態で、走行路Fに沿って反対方向に走行可能となる。この場合、車両13、14、15、16の各モータ12は正転のみできればよく、制御手段22、23、24は車両14、15、16からそれぞれ取り外し不可の状態で固定されていてもよい。車両13、16、15、14が、トランスポンダ29と制御手段22が対となり、トランスポンダ30と制御手段23が対となり、トランスポンダ31と制御手段24が対となった状態で走行する点は、図6に示す例と同様である。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、制御手段及びトランスポンダは車体に取り外し不可の状態で取り付けてもよい。
先頭車両は人が搭乗して操縦されるものでなくてもよく、例えば、先頭車両は遠隔操作により走行するものであってもよい。
また、車両群システムの車両の数は2台でもよいし、3台でもよいし、5台以上でもよい。
【0044】
車両が走行する走行路は鉄道レールに限定されず、例えば、工場内に配されたレールや、リニアシステムに対応した走行路や、モノレールであってもよい。更に、走行路は、車両が追い越しできないものに限定されず、車両が追い越すために前方車両に接近する必要があるような幅が狭い走行路(例えば、横に並べる車両が最大で3台の幅を有する走行路)であってもよい。
また、駆動源はモータに限定されず、例えば、リニアシステムに適用される駆動源であってもよい。
そして、識別信号及び応答信号は、超音波信号に限定されず、例えば、可聴周波数信号や光信号であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10:車両群システム、11:車輪、12:モータ、13、14、15、16:車両、17:従動車輪、18:ハンドル、19:車体、20:送信機、21:通信回路、22、23、24:制御手段、25:受信機、26:信号処理回路、27:送信機、28:タイミング回路、29、30、31:トランスポンダ、33:スタートビット、34:本体データ、35:パリティ、36:ストップビット、37:受信機、38:距離測定回路、39:速度制御回路、40:モータ制御回路、41:異常検出回路、F:走行路、P:人、W:貨物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ車輪及び該車輪を回転駆動する駆動源を有する複数の車両が、互いに非接触な状態で連なって追い越し制限のある走行路を走行する車両群システムであって、
前記複数の車両のうち後方車両が追従する前記車両は、前記後方車両から発信される該後方車両の識別信号を受信して、該識別信号に対応する応答信号を発信し、
前記複数の車両のうち前方車両に追従する前記車両は、自己の識別信号の発信から前記前方車両の応答信号を受信するまでの時間を基に前記前方車両までの車間距離Dを算出し、該車間距離Dが予め定められた設定距離Jに近づくように前記駆動源の作動レベルを調整することを特徴とする車両群システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両群システムにおいて、前記車両は3台以上あって、前記前方車両に追従する前記各車両は、該車両に追従する前記後方車両から発信された異常検出信号を受信して、前記前方車両へ順次前記異常検出信号を発信し、先頭の前記車両は、前記異常検出信号を受信して、異常の発生を検知することを特徴とする車両群システム。
【請求項3】
請求項2記載の車両群システムにおいて、前記前方車両に追従する前記車両は、算出した前記車間距離Dが、前記設定距離Jより長い、予め定められた上限距離Kを超えたことを検出して、前記異常検出信号を発信することを特徴とする車両群システム。
【請求項4】
請求項1記載の車両群システムにおいて、前記前方車両に追従する前記車両は、一定時間以上、該前方車両の応答信号を受信しない際に、前記駆動源を停止することを特徴とする車両群システム。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の車両群システムにおいて、前記識別信号を受信して、該識別信号に対応する前記応答信号を発信するトランスポンダが、前記駆動源が固定された車体に、取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする車両群システム。
【請求項6】
請求項記載の車両群システムにおいて、前記識別信号を発信し、該識別信号に対応する前記応答信号を受信し、前記車間距離Dを算出する制御手段も、前記車体に、取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする車両群システム。
【請求項7】
車輪及び該車輪を回転駆動する駆動源を有する車両であって、
自己の識別信号rを発信する送信機、及び、該識別信号rを受信した他の車両Qから発信される該識別信号rに対応する応答信号rを受信する受信機を有して、該識別信号rの発信から該応答信号rを受信するまでの時間を基に前記車両Qまでの車間距離Dを算出し、該車間距離Dが予め定められた設定距離Jに近づくように前記駆動源の作動レベルを調整する制御手段と、
他の車両Sから発信される該車両Sの識別信号sを受信して、該識別信号sに対応する応答信号sを発信するトランスポンダとを備えることを特徴とする車両。
【請求項8】
請求項記載の車両において、前記制御手段は、算出した前記車間距離Dが、前記設定距離Jより長い、予め定められた上限距離Kを超えたことを検出して、異常検出信号を発信することを特徴とする車両。
【請求項9】
請求項7記載の車両において、前記制御手段は、前記受信機が一定時間以上、前記応答信号rを受信しない際に前記駆動源を停止する異常検出回路を、更に有することを特徴とする車両。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の車両において、前記トランスポンダは、前記駆動源が固定された車体に、取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする車両。
【請求項11】
請求項10記載の車両において、前記制御手段も、前記車体に取り外し可能に取り付けられていることを特徴とする車両。