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  • 特開-水晶振動子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025498
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】水晶振動子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
H03H9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130783
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中原 正陽
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC02
5J108EE02
5J108EE07
5J108EE18
5J108GG06
5J108GG09
5J108GG15
5J108HH03
5J108HH05
(57)【要約】
【課題】、コールドウエルド法によって封止される水晶振動子であって、封止に起因する応力の軽減可能性を有したベースを用いた水晶振動子を提供すること。
【解決手段】水晶振動子10は、コールドウエルド法によって封止されたベース11及びカバー53aと、これらベース及びカバー内に実装されている水晶振動片55と、を具えている。そして、ベース11の側壁に、応力緩和構造部11aを具えている。応力緩和構造部は、前記側壁に形成した凹凸構造であること。凹凸構造は、前記ベースの高さ方向(Y方向)に沿って凹凸が連続していて、かつ、凸及び凹それぞれは前記ベースの高さ方向と直交する方向(X方向)に延びている構造である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コールドウエルド法によって封止されたベース及びカバーと、これらベース及びカバー内に実装されている水晶振動片と、を具える水晶振動子において、前記ベースの側壁に、応力緩和構造部を具えることを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
前記応力緩和構造部は、前記側壁に形成した凹凸構造であることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子。
【請求項3】
前記凹凸構造は、前記ベースの高さ方向に沿って凹凸が連続していて、かつ、凸及び凹それぞれは前記ベースの高さ方向と直交する方向に延びている構造であることを特徴とする請求項2に記載の水晶振動子。
【請求項4】
前記凹凸構造は、前記ベースの高さ方向と直交する方向に沿って凹凸が連続していて、かつ、凸及び凹それぞれは前記ベースの高さ方向に延びている構造であることを特徴とする請求項2に記載の水晶振動子。
【請求項5】
前記凹凸構造は、前記側壁にランダムに設けた円状や楕円状や多角形状の凹凸構造であることを特徴とする請求項2に記載の水晶振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドウエルド法によって封止された水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子の利用分野では、セラミック製ベースを用いた表面実装型の水晶振動子が、主流になっている。しかし、ppbオーダーの周波数安定性が要求される高安定用の水晶振動子の場合、気密信頼性等の理由から、今でもコールドウエルド法を用いて封止される水晶振動子が多用されている。
図5はコールドウエルド法により封止されて製造された水晶振動子50を説明する図である。特に図5(A)は水晶振動子50の一部を切り欠いて示した正面図、図5(B)は同じく一部を切り欠いて示した側面図、図5(C)はカバーを外して示した上面図である。
水晶振動子50は、ベース51、カバー53、水晶振動片55及び導電性接着剤57で構成されている。
【0003】
ベース51は、金属製ヘッダ51a、金属製ヘッダ51a内に充填されたコバールガラス51b、コバールガラス51bを貫通しているリード51c及びリード51c先端に接続されたサポータ51dで構成されている。典型的には、金属製ヘッダ51aは、銅クラッドコバールで構成され、カバー53は、無酸素銅又は銅材で構成されている。水晶振動片55は、ATカット水晶片、又はSCカット等の2回回転水晶片で構成されていて、表裏に励振用電極55a及び引出電極55bを有している。
水晶振動片55は、引出電極55bの位置でベース51のサポータ51dに、導電性接着剤57によって固定されている。
ベース51及びカバー53は、互いのフランジ51e,53aを、強い圧力で加圧して両者を金属間接合することによって、接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-55559号公報
【特許文献2】特開2016-1788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高安定用の水晶振動子の場合、封止時に生じる残留応力は、例え僅かであっても、水晶振動片55に経時的に悪影響を与える。そのため、例えば特許文献1に、水晶振動片55自体の縁の領域に貫通孔を形成して上記応力が水晶振動片55の振動部(励振用電極55aの部分)に及ぶことを防止する構造が提案されている。また、特許文献2に、サポータ51dの形状を上記応力が伝わりにくい形状にした構造が提案されている。このように、残留応力の影響を低減するための様々な対策が、従来から行われている。
【0006】
しかし、高安定の水晶振動子の長期安定性をより高めるためには、これまであまり着目していない要素についても、コールドウエルド法による封止時の応力を軽減する可能性を検討し、種々の策を積み重ねる必要がある。
この出願に係る発明者は、コールドウエルド法により封止で使用するベースのヘッダに着目して上記応力の軽減可能性を検討した。
この出願は上記の点に鑑みさされたものであり、従って、この発明の目的は、コールドウエルド法によって封止される水晶振動子であって、封止に起因する応力の軽減可能性を有したベースを用いた水晶振動子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的の達成を図るため、この出願に係る発明者は、コールドウエル法により封止されるベース及びカバーを検討した。すなわち、コールドウエルド法では、ベースとカバーは、ベースのヘッダの外壁と、カバーの内壁とが所定の間隙G(図5(A)参照)をもった状態で、ベースを覆うようにカバーが嵌め合わされる。そして、カバーおよびベース各々の縁部に設けてあるフランジ同士(図5(A)中に51e、53aで示した部分同士)を加圧して金属間接合している。従って、ベースのヘッダの外壁と、カバーとの間隙Gを利用した応力緩和構造を形成できる余地があると考えた。
従って、この発明の水晶振動子によれば、コールドウエルド法によって封止されたベース及びカバーと、これらベース及びカバー内に実装されている水晶振動片と、を具える水晶振動子において、前記ベースの側壁に、応力緩和構造部を具えることを特徴とする。
【0008】
この発明を実施するに当たり、前記応力緩和構造部は、前記側壁に形成した凹凸構造であることが好ましい。
また、前記凹凸構造は、ベースの高さ方向に沿って凹凸が連続していて、かつ、凸及び凹それぞれはベースの高さ方向と直交する方向に延びている構造(以下、第1の実施形態の構造と略称する場合もある)が好ましい。この構造であると、ベースのフランジとカバーのフランジとの接合部で生じた応力が水晶振動片に及ぶ方向に沿って応力緩和構造部の凹凸が並ぶため、応力緩和効果が生じ易いと考えられる。
しかし、前記凹凸構造は、ベースの高さ方向と直交する方向に沿って凹凸が連続していて、かつ、凸及び凹それぞれはベースの高さ方向に延びている構造であっても、応力を緩和する効果はある程度生じると考える。すなわち、凹凸の配置が上記の第1の実施形態の構造と直交する凹像である。ただし、第1の実施形態の構造の方が好ましいと考える。
また、前記凹凸構造は、側壁にランダムに設けた円状や楕円状や多角形状の凹凸構造であっても良いと考える。
【発明の効果】
【0009】
この発明の水晶振動子では、ベースの側壁に応力緩和構造を具えているので、そうしない場合に比べ、ベースのフランジとカバーのフランジとの接合部で生じた応力を軽減できると考えられる。しかも、応力緩和構造は、ベースのヘッダの外壁と、カバーの内壁との間の所定の間隙Gの箇所に設けられるので、封止の支障にならない。従って、コールドウエルドによる封止で生じた応力の、水晶振動片への影響を、緩和できる可能性を持つ新規な構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)~(C)は、実施形態の第1の実施形態の水晶振動子10の説明図である。
図2】(A)、(B)は、第2の実施形態の水晶振動子20の説明図である。
図3】(A)、(B)は、第3の実施形態の水晶振動子の説明図であって、特に応力緩和構造部の他の構造例31aを有したベース31の説明図である。
図4】(A)、(B)は、第4の実施形態の水晶振動子の説明図であって、特に応力緩和構造部のさらに他の構造例41aを有したベース41の説明図である。
図5】(A)~(C)は、従来技術及び課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照してこの発明の水晶振動子の実施形態について説明する。なお、説明に用いる各図はこの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、従来及び本発明において同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明中で述べる形状、寸法、材質等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
1. 第1の実施形態
図1は、第1の実施形態の水晶振動子10の説明図である。特に図1(A)は水晶振動子10の一部を切り欠いて示した正面図、図1(B)は同じく一部を切り欠いて示した側面図、図1(C)はカバーを外して示した上面図である。
【0013】
第1の実施形態の水晶振動子10は、コールドウエルド法によって封止されるベース11及びカバー53と、これらベース11及びカバー53内に実装されている水晶振動片55と、を具える水晶振動子において、ベース11の側壁に、応力緩和構造部11aを具えることを特徴とするものである。なお、図1の例は、いわゆるNC-18型(HC-43/U型)の水晶振動子に本発明を適用したものである。
そして、第1の実施形態の水晶振動子10の場合、応力緩和構造部11aは、ベース11の側壁に形成した凹凸構造で構成してある。しかも、この凹凸構造は、ベース11の高さ方向(図1(A)中のY方向)に沿って凹凸が連続していて、かつ、凸及び凹それぞれはベースの高さ方向と直交する方向(図1(A)中のX方向)に延びている構造としてある。凹凸のピッチは応力の低減効果及びベース11自体の製造の容易さ等を考慮して任意のピッチとするのが良い。なお、凹凸構造は、凸部がカバー53の内壁に接触することがないように、ベース51の側壁とカバー53の内壁との間隙Gを考慮して形成することが重要である。なお、間隙Gは、これに限られないが、一般には、0.01~0.02mmである。
【0014】
第1の実施形態の水晶振動子10では、ベース11のフランジ51eとカバー53のフランジ53aとを、高い圧力で加圧して金属間接合を生じさせることによって、封止されるが、ベース51とカバー53との接合部で生じた応力が水晶振動片55に及ぶ方向(図1(A)中のY方向)に沿って応力緩和構造部11aの凹凸が並ぶため、応力緩和効果が生じ易いと考えられる。
【0015】
2. 第2の実施形態
図2は、第2実施形態の水晶振動子20を説明する図であり、特に図2(A)はその平面図、図2(B)はその正面図である。
第2の実施形態の水晶振動子20は、ベース21に水晶振動片55を水平に実装する構造の水晶振動子20に、第1の実施形態の応力緩和構造部11aを適用したものである。すなわち、いわゆるTO5(例えばHC-35/U)の類の構造に本発明を適用したものである。
従って、ベース21は、平面的に90度の角度で互いに配置した4つのサポータ51dを有している。ベース21の側面には第1の実施形態と同様の応力緩和構造部11aを設けてある。上記の4つのサポータ51dに水晶振動片55は、導電性接着剤57によって固定してある。
【0016】
3. 第3の実施形態
図3は、第3の実施形態の水晶振動子の説明図である。特に第3の実施形態に係るベース31及び応力緩和構造部31aに着目した図である。そして、図3(A)はその平面図、図3(B)はその正面図である。ただし、図1図2で示したサポータ等の図示は、図3では省略してある。
第3の実施形態に係るベース31は、応力緩和構造部31aを、ベース31の高さ方向と直交する方向(図3(B)中のX方向)に沿って凹凸が連続していて、かつ、凸及び凹それぞれはベースの高さ方向(図3(B)中のY方向)に延びている構造としてある。すなわち、第1の実施形態の凹凸配置構造と直交する方向に凹凸が並ぶ構造としてある。
凹凸のピッチは応力の低減効果及びベース31自体の製造の容易さ等を考慮して任意のピッチとするのが良い。この第3実施形態の応力緩和構造部31aであっても、封止の応力の影響を低減できると考える。
【0017】
4. 第4の実施形態
図4は、第4の実施形態の水晶振動子の説明図である。特に第4の実施形態に係るベース41及び応力緩和構造部41aに着目した図である。そして、図4(A)はその平面図、図4(B)はその正面図である。ただし、図1図2で示したサポータ等の図示は、図4では省略してある。
第4の実施形態に係るベース41は、応力緩和構造部41aを、ベース41の側壁にランダムに設けた円状や楕円状や多角形状の凹凸構造によって、構成した例である。図4の例では円状の凸部をベース41の側壁にランダムに設けた構造としてある。
凸部の平面的な大きさや個数は、応力の低減効果及びベース41自体の製造の容易さ等を考慮して任意の大きさ及び個数とするのが良い。
【0018】
上述の実施形態では、ベースの側壁に設けた応力緩和構造は、いずれも、ヘッダの外側面を凹凸面にした構造であった(例えば図1(A)におけるヘッダ51aの断面部分参照)。しかし、ヘッダの内側面を凹凸面とする応力緩和構造でも良いし、ヘッダの外側面及び内側面双方を凹凸面とする応力緩和構造でも良い。ただし、凹凸面を形成する容易さを考慮すると、ヘッダの外側面を凹凸面とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0019】
10:第1の実施形態の水晶振動子、 11:ベース
11a:応力緩和構造部、
20:第2の実施形態の水晶振動子、 21:ベース
30:第3の実施形態に係るベース、 31:ベース
31a:応力緩和構造部
40:第3の実施形態に係るベース、 41:ベース
41a:応力緩和構造部 51a:金属製ヘッダ
51b:コバールガラス、 51c:リード
51d:サポータ、 51e:フランジ
53:カバー 、 53a:フランジ
55:水晶振動片 55a:励振用電極
55b:引出電極 57:導電性接着剤
図1
図2
図3
図4
図5