(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025501
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】土木用繊維シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/30 20060101AFI20230215BHJP
D06M 23/08 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
B32B5/30
D06M23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130789
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000201881
【氏名又は名称】倉敷繊維加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】楠 和也
(72)【発明者】
【氏名】谷野 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】原田 知子
【テーマコード(参考)】
4F100
4L031
【Fターム(参考)】
4F100AA23C
4F100AB02C
4F100AK01B
4F100AK07A
4F100AK53B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB00B
4F100DE00C
4F100DG15A
4F100JB13B
4F100JB16B
4F100JD14C
4F100JK01
4L031AA14
4L031AB34
4L031BA04
4L031BA09
(57)【要約】
【課題】有害物質の吸着性を良好に保ち、粒子(吸着剤)の付着量を低濃度から高濃度まで自由に担持でき、繊維シートの剛軟度が低く地面への追従性が良好であり、地面と一体化しやすい土木用繊維シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の土木用繊維シート1は、不織布2の少なくとも一表面に接着樹脂2を介して、粒子3が散布状態で固着しているか、又は不織布2の少なくとも一表面に接着樹脂2を含む接着樹脂層が固着されており、接着樹脂層に粒子3が散布状態で固着している。この繊維シートの一つの製法は、不織布の少なくとも一表面に接着樹脂を付与する工程と、前記接着樹脂の表面に粒子を散布する工程と、前記接着樹脂層の乾燥、硬化及び溶融固化から選ばれる少なくとも一つの工程を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布、接着樹脂、粒子を含む土木用繊維シートであって、
前記不織布の少なくとも一表面に前記接着樹脂を介して、前記粒子が散布状態で固着していることを特徴とする土木用繊維シート。
【請求項2】
不織布、接着樹脂、粒子を含む土木用繊維シートであって、
前記不織布の少なくとも一表面に前記接着樹脂を含む接着樹脂層が固着されており、
前記接着樹脂層に前記粒子が散布状態で固着していることを特徴とする土木用繊維シート。
【請求項3】
前記繊維シートの剛軟度が200~1500mNである請求項1又は2に記載の土木用繊維シート。
【請求項4】
前記粒子の少なくとも一部は接着樹脂層から露出している請求項2又は3に記載の土木用繊維シート。
【請求項5】
前記粒子は重金属または放射線物質を含む汚染物質吸着剤である請求項1~4のいずれか1項に記載の土木用繊維シート。
【請求項6】
前記土木用繊維シートを100質量%としたとき、不織布39~65質量%、樹脂1~25質量%、粒子30~60質量%である請求項1~5のいずれか1項に記載の土木用繊維シート。
【請求項7】
前記粒子は、平均粒子径が0.1~200μm、かさ比重が0.5~5.0である請求項1~6のいずれか1項に記載の土木用繊維シート。
【請求項8】
前記不織布がポリプロピレン系繊維のニードルパンチ法不織布、水流絡合法不織布、サーマルボンド法不織布及びケミカルボンド法不織布から選ばれる少なくとも一つの不織布である請求項1~7のいずれか1項に記載の土木用繊維シート。
【請求項9】
前記接着樹脂は熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも一つである請求項1~8のいずれか1項に記載の土木用繊維シート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の土木用繊維シートの製造方法であって、
不織布の少なくとも一表面に液状接着樹脂を付与する工程と、
前記液状接着樹脂の表面に粒子を散布する工程と、
前記液状接着樹脂を乾燥及び/又は硬化する工程を含むことを特徴とする土木用繊維シートの製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の土木用繊維シートの製造方法であって、
不織布の少なくとも一表面にパウダー樹脂と粒子を散布する工程と、
前記パウダー樹脂を溶融固化する工程を含むことを特徴とする土木用繊維シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木用繊維シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル、ダム、道路、造成などの土木工事を行う現場においては、地山の掘削によって掘り起こし残土としてたとえば掘削ずりが発生する。掘削ずりには、自然由来または人工的な汚染物質が含まれることがあるため、汚染物質を含む掘削ずりを含む建設残土を用いて盛土や埋め立て等を行う場合にはこれらの汚染物質に対する恒久的な処理が求められる。特許文献1にはフェロシアン化物、フェリシアン化物などを分散させたポリウレタン樹脂エマルジョンとし、これを平均繊度0.5デシテックス以下の繊維不織布に含侵させて放射性セシウム土壌汚染シートにすることが提案されている。特許文献2にはアクリルバインダーにプルシアンブルーを分散させて塗料とし、これを不織布に塗布することが提案されている。特許文献3には繊維基材に合成ハイドロタルサイトなどの重金属イオン吸着剤とバインダー樹脂とを混合した液体を含侵させた吸着シートを使用して重金属イオンを吸着することが提案されている。特許文献4には繊維不織布に重金属吸着粒子とホットメルト樹脂を混合して塗布することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-253952号公報
【特許文献2】特開2015-161667号公報
【特許文献3】特開2018-192449号公報
【特許文献4】特開2020-097029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来技術の繊維シートは、いずれも粒子(吸着剤)と樹脂を混合して塗料にしているため、粒子は樹脂に覆われてしまい有害物質の吸着性は低下する問題、粒子(吸着剤)を高濃度で担持できない問題、繊維シートの剛軟度が高くなり地面への追従性に問題があり地面と一体化しにくいなどの問題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、有害物質の吸着性を良好に保ち、粒子(吸着剤)の付着量を低濃度から高濃度まで自由に担持でき、繊維シートの剛軟度が低く地面への追従性が良好であり、地面と一体化しやすい土木用繊維シート及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1番目の土木用繊維シートは、不織布、接着樹脂、粒子を含む土木用繊維シートであって、前記不織布の少なくとも一表面に前記接着樹脂を介して、前記粒子が散布状態で固着していることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2番目の土木用繊維シートは、不織布、接着樹脂、粒子を含む土木用繊維シートであって、前記不織布の少なくとも一表面に前記接着樹脂を含む接着樹脂層が固着されており、前記接着樹脂層に前記粒子が散布状態で固着していることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1番目の土木用繊維シートの製造方法は、前記の土木用繊維シートの製造方法であって、不織布の少なくとも一表面に液状接着樹脂を付与する工程と、前記液状接着樹脂の表面に粒子を散布する工程と、前記液状接着樹脂を乾燥及び/又は硬化する工程を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2番目の土木用繊維シートの製造方法は、前記の土木用繊維シートの製造方法であって、不織布の少なくとも一表面にパウダー樹脂と粒子を散布する工程と、前記パウダー樹脂を溶融固化する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の土木用繊維シートは、不織布、接着樹脂、粒子を含み、不織布の少なくとも一表面に前記接着樹脂を介して、前記粒子が散布状態で固着しているか、又は不織布の少なくとも一表面に接着樹脂を含む接着樹脂層が固着されており、前記接着樹脂層に前記粒子が散布状態で固着していることにより、有害物質の吸着性を良好に保ち、粒子(吸着剤)を低付着量から高付着量まで自由に担持でき、繊維シートの剛軟度が低く地面への追従性が良好であり、地面と一体化しやすい土木用繊維シーを提供できる。また、粒子を散布状態で固着させることにより、かさ比重の高い粒子であっても使用できる。さらに樹脂量を少なくでき、剛軟度を低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態の土木用繊維シートの模式的断面図である。
【
図2】
図2Aは同、土木用繊維シートを作業現場に敷いた直後の模式的断面図、
図2Bは同、作業現場の凹凸(不陸)に追従した状態の模式的断面図である。
【
図3】
図3は本発明の一実施形態の土木用繊維シートの製造方法を示す模式的説明図である。
【
図4】
図4は本発明の別の実施形態の土木用繊維シートの製造方法を示す模式的説明図である。
【
図5】
図5は比較例の製造方法を示す模式的説明図である。
【
図6】
図6は本発明の一実施形態で得られた土木用繊維シートの側面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は不織布、接着樹脂、粒子を含む土木用繊維シートである。不織布の少なくとも一表面に前記接着樹脂を介して、前記粒子が散布状態で固着しているか、又は不織布の少なくとも一表面に接着樹脂を含む接着樹脂層が固着されており、前記接着樹脂層に前記粒子が散布状態で固着している。より具体的には、粒子1個を取り上げると、一部は接着樹脂から露出していて接着樹脂が付着していない部分があり、一部は埋没している部分があるのが好ましい。本発明の繊維シートの不織布の少なくとも一表面に接着樹脂を含む接着樹脂層が固着されており、接着樹脂層に粒子が散布状態で固着している場合、粒子1個を取り上げると、一部は接着樹脂層から露出していて接着樹脂が付着していない部分があり、一部は埋没している部分があるのが好ましい。前記露出部分は有害物質の吸着性を良好にし、前記埋没部分は繊維シートからの脱落を防止できる。また、粒子が散布状態で固着していることにより、粒子(吸着剤)の付着量を低濃度から高濃度まで自由に担持できる。さらに樹脂量を少なくでき、剛軟度を低くできる。
【0013】
粒子は全部埋没しているものがあっても構わない。粒子の個数平均では1%以上露出しているのが好ましく、より好ましくは5%以上であり、さらに好ましくは10%以上である。
【0014】
本発明の繊維シートの剛軟度は縦方向、横方向ともに200~1500mNが好ましく、より好ましくは250~1400mNであり、さらに好ましくは300~1300mNである。これにより、繊維シートの剛軟度が低く不陸への追従性がより良好であり、砂礫又は地面と一体化しやすい土木用繊維シートを提供できる。前記剛軟度は、JIS L 1913:2010、一般短繊維不織布試験法、またはJIS L 1906、一般長繊維不織布試験法に規定されているガーレ法に準拠して測定する。
【0015】
粒子は無機、有機どちらでもよい。また、粒子は重金属または放射線物質を含む汚染物質吸着剤であるのが好ましい。例えば、放射性セシウム吸着剤としてフェロシアン化鉄(プルシアンブルー)、フェリシアン化物などがある。汚染物質としての重金属等としては、重金属やハロゲンを意味し、重金属としては、例えば、マンガン、クロム、銅、カドミウム、水銀、セレン、鉛、砒素、カドミウム等の1種若しくは2種以上のもので、かつ重金属単体及びその化合物が例示でき、またハロゲンとしてはフッ素、塩素等の単体及びその化合物が例示できる。さらにこれらに加え土壌汚染対策法に規定される第2種特定有害物質に含まれるホウ素単体及びその化合物を例示することができるが、これらの重金属やハロゲンに限定されるものではない。重金属吸着剤としては、ゼオライト系のアムロン社製「CAMZ-S」、一般式:[Mg2+
1-xAl3+
x(OH)2]x+[(An-)x/n・mH2O]x-(An-はn価のアニオン、0.20≦x≦0.33)、合成ハイドロタルサイト系物質、粒径分布50~100μmの鉄粉、CaMg(CO3)2、MgO及びCaCO3を含むドロマイト系化合物(半焼成品)、ゼオライト(合成ゼオライトを含む)、活性炭などがある。
【0016】
粒子は、平均粒子径が0.1~200μm、かさ比重が0.5~5.0であるのが好ましい。本発明は、粒子を散布状態で固着させるので、平均粒子径およびかさ比重が様々な粒子を採用できる。粒子を散布状態で固着させることにより、かさ比重の高い粒子であっても使用できる。本明細書において平均粒子径はレーザー回折光散乱法により、体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)を測定して算出する。
【0017】
前記土木用繊維シートを100質量%としたとき、不織布39~65質量%、樹脂1~25質量%、粒子30~60質量%が好ましく、より好ましくは、不織布40~63質量%、樹脂2~23質量%、粒子32~58質量%であり、さらに好ましくは、不織布42~60質量%、樹脂3~20質量%、粒子35~55質量%である。これにより、樹脂量を少なくでき、剛軟度を低くできる。
【0018】
本発明で使用する不織布を構成する繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエステルエラストマー等のポリエステル系繊維;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,芳香族ポリアミド,ポリアミドエラストマー等のポリアミド系繊維;アクリル繊維;ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン繊維等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。繊度は0.1~20デシテックスが好ましい。
【0019】
不織布は、長繊維不織布、短繊維不織布のいずれであってもよく、不織布のウェブ形成には、乾式法(カーディング法)、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法等を適宜採用するとよい。ウェブの結合方法も特に限定されるものではなく、例えば、ニードルパンチ法、スパンレース法(水流絡合法)等の機械的絡合法;不織布層に予め低融点繊維を混繊しておき、この低融点繊維の一部又は全部を熱溶融させて、繊維交点を固着する方法(サーマルボンド法)、ケミカルボンド法等の各種結合方法を採用できる。本発明では、繊維基材の強度を向上できることから、ニードルパンチ法、水流絡合法等の機械的絡合法が好ましい。この中でもポリプロピレン系繊維のニードルパンチ不織布が耐久性、コストの面からが好ましい。不織布の単位面積当たりの質量(目付)は10g/m2以上が好ましく、50g/m2以上がより好ましく、150g/m2以上が更に好ましく、1000g/m2以下が好ましく、700g/m2以下がより好ましく、500g/m2以下が更に好ましい。目付を前記範囲内に調整することにより、所望量の重金属イオン吸着剤を固着することが可能になる。不織布の厚さは、静置状態で例えば10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましく、6mm以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、例えば、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上が更に好ましい。繊維基材の厚さを前記範囲内に調整することで、所望量の重金属イオン吸着剤を固着することが可能になる。
【0020】
前記接着樹脂は熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用できる。例えば、酢酸ビニル系バインダー、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの共重合体であるアクリル系バインダー、合成ゴム系(例えば、ブタジエン-スチレン系、ブタジエン-アクリロニトリル系、クロロプレン系)バインダー、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン共重合体、石油樹脂、アスファルト、イソプレン系炭化水素、ブタジエンゴム、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、塩化ビニル、エポキシ樹脂、ナイロン、ポリエステルなどが挙げられる。接着樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合は、不織布を構成する繊維の融点より低い接着樹脂を使用する。熱可塑性樹脂のパウダーを使用する場合は、ホットメルト接着剤を使用する。
【0021】
次に本発明の第1番目の製造方法について説明する。本発明の第1番目の製造方法は次の工程を含む。
(1)不織布の少なくとも一表面に液状接着樹脂を付与する工程
この工程では例えばロールコーターあるいはスプレー等を使用して不織布の少なくとも一表面に接着樹脂を塗布し、接着樹脂層を形成する。接着樹脂は溶剤で希釈して塗布するのが好ましい。
(2)前記液状接着樹脂の表面に粒子を散布する工程
この工程では接着樹脂の表面に粒子粉体を落下させて散布する。粉体粒子の散布は、均一散布でもよいし、幅方向に中央部は多く散布し、端部は少なく散布することもできる。散布量を制御できることがこの方法の利点である。
(3)前記液状接着樹脂を乾燥及び/又は硬化する工程
この工程では、熱可塑性樹脂の場合は溶剤の乾燥のみでよい。熱硬化性樹脂の場合は溶剤を乾燥させ硬化させる。乾燥と硬化は1つのオーブンでもできる。
【0022】
次に本発明の第2番目の製造方法について説明する。本発明の第2番目の製造方法は次の工程を含む。
(1)不織布の少なくとも一表面にパウダー樹脂と粉体粒子を散布する工程
パウダー樹脂を散布する場合は、熱可塑性樹脂のパウダーを使用するのが好ましい。パウダー樹脂と粉体粒子は別々に散布してもよいし、予めパウダー樹脂と粉体粒子を混合しておき、混合粉体として散布してもよい。
(2)前記パウダー樹脂を溶融固化する工程
この工程では、オーブン中で熱可塑性樹脂パウダーを溶融し、オーブンを出てから冷却し固化する。これにより粉体粒子は接着樹脂に固定される。
【0023】
前記乾燥及び/又は硬化する工程、溶融固化する工程の後に繊維シートを巻き取る工程を含むのが好ましい。これにより長尺状のシートを製造できる。巻き取る工程がない場合は所定の長さにカットする。
【0024】
以下図面を用いて説明する。以下において同一符号は同一物を示す。
図1は本発明の一実施形態の土木用繊維シートの模式的断面図である。この土木用繊維シート1は、不織布2の少なくとも一表面に接着樹脂層3が固着されており、接着樹脂層3に粒子4が散布状態で固着している。粒子4は一部が露出している。
図6は本発明の一実施形態で得られた土木用繊維シートの側面写真である。表層の黒い粉粒体が粒子である。
【0025】
図2Aは土木用繊維シート1を作業現場に敷いた直後の模式的断面図である。地面又は砂礫5bの上に土木用繊維シート1が敷かれ、その上に砂礫5aが載せられる。
図2Bは作業現場の凹凸に追従した状態の模式的断面図である。地面又は砂礫5bと砂礫5aの間の土木用繊維シート1は凹凸に追従した状態となる。
【0026】
図3は本発明の一実施形態の土木用繊維シートの製造方法及び装置を示す模式的説明図である。この土木用繊維シートの製造装置6は、原反ロール7から不織布シート8を引き出し、ロールコーターを通す。ロールコーターは容器9の中に接着樹脂塗布液10を入れてあり、塗布ロール11aと押さえロール11bでニップして不織布シート8の一表面に接着樹脂塗布液10を塗布する。この接着樹脂塗布液10に添加する溶剤はトルエン、キシレンなどを使用できる。
その後、塗布した接着樹脂が半乾燥の状態で粉体落下装置12から粉体粒子13を落下させて散布する。15a~15mはガイドロールである。不織布シート8がガイドロール15g~15jを通過する際に、散布された粉体粒子13の一部は接着樹脂層に押し込まれ、この状態で樹脂は乾燥機(オーブン)14で乾燥及び/又は硬化され、冷却機16で冷却され、巻き取りロール17に巻き取られる。
【0027】
図4は本発明の別の実施形態の土木用繊維シートの製造方法を示す模式的説明図である。この土木用繊維シートの製造装置31は、原反ロール32から、ポリプロピレン繊維からなる不織布33を繰り出し、散布器34から熱可塑性パウダー樹脂(ホットメルトパウダー樹脂)と粉体粒子を予め混合した混合粉体35を散布する。散布器36は予備散布器であり、必須ではないが追加でパウダー樹脂(ホットメルトパウダー樹脂)及び/又は粉体粒子を散布するときに使用する。37は散布物体である。次に熱処理装置(オーブン)38で加熱することにより、パウダー樹脂を溶融させ、一部を不織布33に含浸させる。このとき、パウダー樹脂は溶融して接着樹脂層となる。熱処理装置(オーブン)38から排出後、上下の冷却ロール41a,41bにより冷却し、得られた土木用繊維シート43は巻き取り部45で巻き取る。42a~42dはガイドロール、44a,44bは巻き取り補助ロールである。
【0028】
図5は比較例の製造方法及び装置を示す模式的説明図である。この装置20は原反ロール21から不織布シート22を引き出し、樹脂含侵装置に通す。樹脂含侵装置は容器23の中に樹脂と粉体粒子を混合分散した塗布液24を入れてあり、不織布シート22を塗布液24に含侵させ、マングルロール25a,25bで絞る。その後、ドライヤー26で乾燥し、熱処理装置(オーブン)27で塗布液を硬化させ、巻き取りロール30に巻き取る。28は加熱ドラム、29a~29gはガイドロール、29h,29iは巻き取り補助ロールである。
【実施例0029】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<剛軟度の測定>
剛軟度は、JIS L 1913:2010、一般短繊維不織布試験法に規定されているガーレ法に準拠して測定した。
【0030】
(実施例1)
(1)不織布
繊維直径40μm、平均繊維長51mmのポリプロピレン100%使いのニードルパンチ不織布、目付375g/m
2を使用した。
(2)塗布液
エポキシ樹脂(主剤と硬化剤を含む)に溶剤としてトルエンを混合し(固形分30~35質量%)、接着樹脂塗布液とした。
(3)粒子
重金属イオン吸着剤として販売されている市販の鉄粉(Fe)-酸化鉄粉(Fe
2O
3)混合粒子(平均粒子径70μm、見掛けのかさ比重2.5~3.0)を使用した。
(4)土木用繊維シートの製造
図3に示す土木用繊維シートの製造装置6を使用し、ロールコーターで不織布の片面に接着樹脂塗布液を塗布し、半乾燥の状態で粉体落下装置12から粉体粒子13を落下させて散布し、不織布シート8がガイドロール15g~15jを通過する際に、散布された粉体粒子13の一部を接着樹脂層に押し込み、この状態で樹脂は乾燥機(オーブン)14で乾燥及び硬化(100~110℃、90分)し、巻き取りロール17で巻き取った。
得られた土木用繊維シートの各成分の質量割合は、土木用繊維シートを100質量%としたとき、不織布53質量%、樹脂5質量%、粒子42質量%であった。また粒子が露出していることは顕微鏡写真(倍率30倍)観察で確認できた。
【0031】
(実施例2)
不織布と接着樹脂と粒子の質量割合を表1のように変えた以外は実施例1と同様に実施した。
【0032】
(実施例3)
粒子としてMgO及びCaCO3を含むドロマイト系化合物(半焼成品)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0033】
(比較例1)
(1)不織布
繊維直径40μm、平均繊維長51mmのポリプロピレン100%使いのニードルパンチ不織布、目付300g/m2を使用した。
(2)塗布液
主バインダーとしてSBR樹脂159gに、実施例1で使用した鉄粉(Fe)-酸化鉄粉(Fe2O3)混合粒子(平均粒子径70μm、見掛けのかさ比重2.5~3.0)130gを混合してディップ液とした。
(3)土木用繊維シートの製造
不織布シートに前記ディップ液をディッピング後、マングルロールにて絞り、加熱処理した。
得られた土木用繊維シートの各成分の質量割合は、土木用繊維シートを100質量%としたとき、不織布47質量%、樹脂28質量%、粒子25質量%であった。
【0034】
(比較例2)
不織布として目付375g/m2を使用した以外は比較例1と同様に実施した。
【0035】
(参考例1)
比較例で使用した目付300g/m2の不織布の剛軟度を測定した。
【0036】
(参考例2)
比較例で使用した目付375g/m2の不織布の剛軟度を測定した。
以上の結果を表1~2にまとめて示す。
【0037】
【0038】
【0039】
表1~2から明らかなとおり、実施例1~3はいずれも比較例1、2に比べると剛軟度は低い値となっており、不織布表層に添着させている効果が出ている。また、各実施例の土木用繊維シートは、有害物質の吸着性を良好に保ち、粒子(吸着剤)を低付着量から高付着量まで自由に担持でき、繊維シートの剛軟度が低く地面への追従性が良好であり、地面と一体化しやすい土木用繊維シーであることが確認できた。さらに、樹脂量を少なくでき、剛軟度を低くできることが確認できた。