(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025549
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/02 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
B29C45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130863
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】安井 隼人
(72)【発明者】
【氏名】八木 隆太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 邦彦
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AC01
4F206AH32
4F206AH37
4F206JA02
4F206JE30
4F206JF01
4F206JF06
4F206JF23
4F206JF36
4F206JL02
4F206JM01
4F206JQ06
4F206JQ90
4F206JW45
(57)【要約】
【課題】樹脂成形装置に樹脂材料に被覆体を巻く機能を付与する。
【解決手段】樹脂材料Jの外側周面に被覆体7を巻く被覆体巻き機構8と、被覆体7が巻かれた状態の樹脂材料Jを用いて樹脂成形する樹脂成形機構10とを備え、被覆体巻き機構8は、樹脂材料Jを収容する樹脂収容部881と、樹脂収容部81に被覆体7を送り出す送り出し機構83とを有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料の外側周面に被覆体を巻く被覆体巻き機構と、
前記被覆体が巻かれた状態の前記樹脂材料を用いて樹脂成形する樹脂成形機構とを備え、
前記被覆体巻き機構は、前記樹脂材料を収容する樹脂収容部と、前記樹脂収容部に前記被覆体を送り出す送り出し機構とを有する、樹脂成形装置。
【請求項2】
前記被覆体巻機構は、前記樹脂収容部に連通するスリット状の開口部を有し、
前記送り出し機構は、前記開口部から前記樹脂収容部に前記被覆体を送り出すものである、請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記送り出し機構は、前記樹脂収容部の外部において前記被覆体を固定する固定部と、前記固定部により固定された前記被覆体を切断する切断部とを有し、前記切断部より切断された前記被覆体を前記樹脂収容部に送り出すものである、請求項1又は2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記被覆体は、シート状をなすものであり、
前記被覆体の幅寸法は、前記樹脂材料の外側周面の軸方向全体を覆うことができる寸法であり、
前記切断部により切断された前記被覆体の長さ寸法は、前記樹脂材料の外側周面を1巻き以上できる寸法である、請求項3に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記送り出し機構は、前記被覆体を送り出すローラを有する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
前記送り出し機構は、所定の送り出し方向に沿って離れて設けられ、前記被覆体を送り出す2つのローラを有し、
前記2つのローラの間に前記固定部及び前記切断部が設けられている、請求項3又は4に記載の樹脂成形装置。
【請求項7】
前記被覆体が巻かれた状態の前記樹脂材料を前記樹脂成形機構に搬送する樹脂材料搬送機構を備える、請求項1乃至6の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項8】
前記被覆体巻機構は、前記被覆体が巻かれた状態の前記樹脂材料を前記樹脂材料搬送機構に押し出して受け渡すプッシュ部を有し、
前記樹脂収容部には、前記プッシュ部との干渉を避けるための逃げ部が形成されている、請求項7に記載の樹脂成形装置。
【請求項9】
前記逃げ部の内面において、前記被覆体の進行方向に対して前記被覆体を案内する案内面が形成されている、請求項8に記載の樹脂成形装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料を用いて樹脂成形を行う樹脂成形方法としては、成形型のポット内に収容した樹脂材料をプランジャによって成形型のキャビティに押し出すことにより、成形対象物を樹脂封止するものがある。
【0003】
ここで、ポット内に収容される樹脂材料は、搬送時やポットへの装着時に樹脂粉塵が発生してしまう。この樹脂粉塵は、封止設備に悪影響を与えるだけでなく清掃作業も必要となる。このため、樹脂材料から発生する粉塵を防止するものとして、特許文献1に示す樹脂ペレットが考えられている。この樹脂ペレットは、表面に糊粉やワックスからなる発塵防止膜を成膜して、樹脂粉塵の発生を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポット内の樹脂材料をプランジャによってキャビティに押し出す際に、溶融した樹脂材料がポットの内面とプランジャとの摺動部に侵入し、それによって残滓である樹脂カスが発生してしまう。
【0006】
この問題に対して本願発明者は、ポットの内面と樹脂材料との間に樹脂材料を取り囲む被覆体を配置することにより、溶融した樹脂材料がポットの内面とプランジャとの摺動部に侵入しにくくして、樹脂カスを低減することを考えている。
【0007】
そして、ポットの内面と樹脂材料との間に樹脂材料を取り囲む被覆体を配置する構成として、ポットに収容する前に樹脂材料に被覆体を巻き付け、被覆体が巻かれた状態の樹脂材料をポットに収容することを考えている。
【0008】
そこで本発明は、ポットの内面と樹脂材料との間に樹脂材料を取り囲む被覆体を配置するための具体的構成を実現するためになされたものであり、樹脂成形装置において樹脂材料に被覆体を自動的に巻く機能を付与することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る樹脂成形装置は、樹脂材料の外側周面に被覆体を巻く被覆体巻き機構と、前記被覆体が巻かれた状態の前記樹脂材料を用いて樹脂成形する樹脂成形機構とを備え、前記被覆体巻き機構は、前記樹脂材料を収容する樹脂収容部と、前記樹脂収容部に前記被覆体を送り出す送り出し機構とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように構成した本発明によれば、樹脂成形装置において樹脂材料に被覆体を自動的に巻く機能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置の樹脂成形機構の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】同実施形態の樹脂材料を取り囲む被覆体の一例を示す模式図である。
【
図3】同実施形態の樹脂成形装置の機能ブロック図である。
【
図4】同実施形態の被覆体巻き機構の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図5】同実施形態の被覆体巻き機構の構成を模式的に示す平面図である。
【
図6】同実施形態において(a)樹脂収容部への被覆体の送り出し途中の状態、(b)樹脂収容部への被覆体の送り出しが終了した状態を模式的に示す断面図である。
【
図7】同実施形態の被覆体巻き機構の動作を模式的に示す斜視図である。
【
図8】同実施形態の樹脂材料搬送機構の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図9】同実施形態の第1搬送部及び第2搬送部の収容部の開口部の構成を模式的に示す断面図である。
【
図10】同実施形態の搬送収容部の構成を模式的に示す樹脂材料をポットに収容する前の(a)
図6(d)の矢印Aから見た断面図、(b)
図6(d)の矢印Bから見た断面図である。
【
図11】同実施形態の搬送収容部の構成を模式的に示す樹脂材料をポットに収容した後の(a)
図6(d)の矢印Aから見た断面図、(b)
図6(d)の矢印Bから見た断面図である。
【
図12】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための図である。
【
図13】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0013】
本発明の樹脂成形装置は、前述のとおり、樹脂材料の外側周面に被覆体を巻く被覆体巻き機構と、前記被覆体が巻かれた状態の前記樹脂材料を用いて樹脂成形する樹脂成形機構とを備え、前記被覆体巻き機構は、前記樹脂材料を収容する樹脂収容部と、前記樹脂収容部に前記被覆体を送り出す送り出し機構とを有することを特徴とする。
【0014】
この樹脂成形装置であれば、樹脂材料の外側周面に被覆体を巻く被覆体巻き機構を備えているので、樹脂成形装置において樹脂材料に被覆体を自動的に巻く機能を付与することができ、被覆体が巻かれた状態の樹脂材料を用いて樹脂成形することができる。その結果、樹脂成形時にポットの内面と樹脂材料との間に樹脂材料を取り囲む被覆体が配置されることになり、樹脂材料がポットの内面に触れないようにでき、ポットの内面に付着する樹脂カスを低減することができる。また、被覆体により樹脂材料が取り囲まれているので、たとえモールドアンダーフィル(MUF)用樹脂やクリアレジンなどの高流動樹脂であったとしても、ポットの内面とプランジャとの摺動部に溶融した樹脂材料が侵入しにくくなり、摺動部に侵入した樹脂材料によって発生する樹脂カスを低減することができる。このように樹脂カスを低減することにより、次の樹脂成形へのコンタミネーションを低減でき樹脂成形品の品質を向上することができる。また、樹脂カスによる設備トラブルを防止でき、清掃作業の頻度も低減できる。さらに、被覆体を用いることにより、プランジャの摺動抵抗の増大を防止できるので、樹脂成形品の品質の安定化を実現できるとともに、ポット及びプランジャの長寿命化も実現できる。
【0015】
樹脂収容部に被覆体を送り出すための具体的な実施の態様としては、前記被覆体巻機構は、前記樹脂収容部に連通するスリット状の開口部を有し、前記送り出し機構は、前記開口部から前記樹脂収容部に前記被覆体を送り出すものであることが望ましい。
【0016】
所望の長さの被覆体を樹脂収容部に自動的に送り出すためには、前記送り出し機構は、前記樹脂収容部の外部において前記被覆体を固定する固定部と、前記固定部により固定された前記被覆体を切断する切断部とを有し、前記切断部より切断された前記被覆体を前記樹脂収容部に送り出すものであることが望ましい。
【0017】
前記被覆体は、シート状をなすものであり、前記被覆体の幅寸法は、前記樹脂材料の外側周面の軸方向全体を覆うことができる寸法であり、前記切断部により切断された前記被覆体の長さ寸法は、前記樹脂材料の外側周面を1巻き以上できる寸法であることが望ましい。
この構成であれば、樹脂材料の外側周面全体を被覆体で覆うことができ、ポットの内面に付着する樹脂カスをより一層低減することができる。
【0018】
送り出し機構の具体的な実施の態様としては、前記送り出し機構は、前記被覆体を送り出すローラを有することが望ましい。
【0019】
前記送り出し機構は、所定の送り出し方向に沿って離れて設けられ、前記被覆体を送り出す2つのローラを有し、前記2つのローラの間に前記固定部及び前記切断部が設けられていることが望ましい。
この構成であれば、一方のローラにより固定部及び切断部に確実に被覆体を送り出すことができ、他方のローラにより樹脂収容部に切断された被覆体を確実に送り出すことができる。
【0020】
また、本発明の樹脂成形装置は、前記被覆体が巻かれた状態の前記樹脂材料を前記樹脂成形機構に搬送する搬送機構をさらに備えることが望ましい。
この構成であれば、被覆体巻き機構による被覆体の巻き動作から樹脂成形機構による樹脂成形動作までを自動的に行うことができる。
【0021】
前記被覆体巻き機構は、前記被覆体が巻かれた状態の前記樹脂材料を前記樹脂材料搬送機構に押し出して受け渡すプッシュ部を有し、前記樹脂収容部には、前記プッシュ部との干渉を避けるための逃げ部が形成されていることが望ましい。
この構成であれば、プッシュ部により樹脂材料及び被覆体の両方を確実に押し出して樹脂材料搬送機構に受け渡すことができる。
【0022】
樹脂収容部に逃げ部を形成した構成において、被覆体を樹脂材料に巻き付ける際に逃げ溝が被覆体の移動を妨げないようにするためには、前記逃げ部の内面において、前記被覆体の進行方向に対して前記被覆体を案内する案内面が形成されていることが望ましい。
【0023】
さらに、上述した樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法も本発明の一態様である。
【0024】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0025】
<樹脂成形装置100の基本構成>
本実施形態の樹脂成形装置100は、電子部品Wxが接続された成形対象物Wを、樹脂材料Jを用いたトランスファ成形によって樹脂成形するものである。
【0026】
ここで、成形対象物Wとしては、例えば金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミックス製基板、回路基板、半導体製基板、配線基板、リードフレーム等であり、配線の有無は問わない。また、樹脂成形のための樹脂材料Jは、例えば熱硬化性樹脂を含む複合材料であり、樹脂材料Jの形態は、例えば円柱状をなすタブレット状の固形である。また、成形対象物Wの上面に接続される電子部品Wxとしては、例えばベアチップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子又はこれらの電子素子の少なくとも1つが樹脂封止された状態のものである。
【0027】
具体的に樹脂成形装置100は、
図1に示すように、樹脂材料Jを用いて樹脂成形する樹脂成形機構10を備えており、当該樹脂成形機構10は、樹脂材料Jを収容するポット21が形成された一方の成形型2(以下、下型2)と、当該下型2に対向して設けられ、樹脂材料Jが注入されるキャビティ31が形成された他方の成形型3(以下、上型3)と、下型2及び上型3を型締めする型締め機構(不図示)とを有する。下型2は、型締め機構により昇降する可動盤(不図示)に下型保持部材4を介して設けられている。上型3は、上部固定盤(不図示)に上型保持部材(不図示)を介して設けられている。なお、下型保持部材4は、例えば、ヒータープレートや断熱プレート等を有している。
【0028】
下型2には、例えば複数のポット21が下型2の上面に開口して形成されている。このポット21は、下型2に形成された貫通孔2Hにより構成されており、当該貫通孔2Hは、例えば超硬合金製や鋼材製の円筒状をなすポット部材20を下型2に嵌めることにより形成されている。ポット21は、樹脂材料Jの形状に対応した形状をなしており、本実施形態では、樹脂材料Jが円柱状であることから、ポット21もそれに合わせて断面円形状をなすものである。その他、下型2の上面には、成形対象物Wが装着される装着部22が形成されている。
【0029】
また、上型3の下面(型面)には、下型2の装着部22に装着された成形対象物Wの電子部品Wxを収容するキャビティ31が形成されている。また、上型3の下面には、下型2のポット21に対向する部分に凹部であるカル部32が形成されるとともに、当該カル部32とキャビティ31とを接続するランナ部33が形成されている。
【0030】
そして、樹脂成形機構10は、下型2の複数のポット21に収容された樹脂材料Jを押し出す複数のプランジャ51を有するプランジャユニット5と、プランジャ51がポット21内で進退移動するようにプランジャユニット5を移動させる駆動機構6とを備えている。
【0031】
プランジャユニット5は、下型2の下方に設けられており、プランジャ51が、下型2の貫通孔2Hに挿入して設けられている。そして、プランジャ51の上面は、下型2のポット21の底面を構成する。また、プランジャ51は、ポット21において加熱されて溶融した樹脂材料Jをポット21から上型3に向かって押圧するものである。
【0032】
駆動機構6は、プランジャユニット5を下型2に対して相対移動させるものであり、これにより、プランジャ51はポット21内において進退する(昇降する)。本実施形態の駆動機構6は、プランジャユニット5に対して下型2とは反対側(プランジャユニット5の下側)に設けられている。ここで、駆動機構6としては、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。
【0033】
そして、型締め機構により下型2及び上型3を型締めした状態でプランジャユニット5を上昇させると、樹脂成形機構10に備えられたヒータ(不図示)の熱により溶融した樹脂材料Jがキャビティ31に注入される。これにより、キャビティ31内に収容された成形対象物Wの電子部品Wxが樹脂封止される。
【0034】
<樹脂成形品Pの製造方法の特徴部分>
次に、上記の樹脂成形装置100を用いた樹脂成形品Pの製造方法の特徴部分について説明する。
【0035】
図1に示すように、下型2のポット21に樹脂材料Jを収容する場合に、ポット21の内面と樹脂材料Jとの間に、樹脂材料Jがポット21の内面に接触しないように被覆体7を配置する。
【0036】
この被覆体7は、ポット21内において樹脂材料Jが押し出される方向を開放しつつ樹脂材料Jの全周を取り囲むものである。具体的に被覆体7は、ポット21内において樹脂材料Jの上面を覆うことなく樹脂材料Jの外側周面の全周を取り囲む。
【0037】
この被覆体7は、1回の樹脂成形ごとに廃棄される消耗材であり、例えば、紙製、樹脂製、セルロース製、織布製、不織布製、又はこれらの複合材製のものを挙げることができる。なお、複合材としては、フィラーを含有した樹脂フィルム、紙に例えば10μm以下の耐熱フィルム等の樹脂フィルムをラミネートしたもの、紙に樹脂をコーティング(塗布)したもの、紙に樹脂を含浸させたもの、パルプと樹脂の繊維を混ぜて紙として抄いたもの等が考えられる。これら被覆体7は、樹脂材料Jによって樹脂封止をするための成形温度(例えば170℃程度)において溶融及び熱分解しない材料から構成されている。
【0038】
具体的に被覆体7は、
図2に示すように、例えば矩形状をなすシート状のものであり、樹脂材料Jの外側周面に巻き付けられた状態でポット21に配置される。ここで、
図2の(d)展開図に示すように、被覆体7の幅寸法L1は、樹脂材料Jの外側周面の軸方向全体を覆う寸法であり、被覆体7の長さ寸法L2は、樹脂材料Jの外側周面の周りを1巻き以上できる寸法である。例えば、被覆体7の幅寸法L1は、樹脂材料Jの幅寸法よりも0.5~3mm程度長く、被覆体7の長さ寸法L2は、樹脂材料Jの外周を1周とした場合、1.1~1.5周分である。このようにシート状の被覆体7を樹脂材料Jに巻く構成にすることで、被覆体7の構成を簡単にでき、加工コストを低減することができる。
【0039】
また、被覆体7の厚みは、ポット21の内面とプランジャ51とのクリアランス(隙間)よりも大きく、被覆体7自体がポット21の内面とプランジャ51と摺動部に侵入しないように構成されている。例えばクリアランスが10μmに対して、被覆体7の厚みは50μmである。
【0040】
そして、被覆体7は、ポット21の内面に密着するように構成されている。具体的に被覆体7は、ポット21内で溶融又は軟化した樹脂材料Jから加わる内圧によって被覆体7がポット21の内面に密着する構成としている。本実施形態では、被覆体7を樹脂材料Jに巻くとともに当該被覆体7を周方向に拘束しない構成としており、樹脂材料Jと被覆体7とが密着しておらず、これらの間に隙間が生じ得る状態である。これにより、被覆体7は、溶融又は軟化した樹脂材料Jから加わる内圧によって径方向に拡がりやすく、ポット21の内面に密着しやすくなる。なお、溶融又は軟化した樹脂材料Jから加わる内圧とは、主として、プランジャ51による注入動作中において、溶融又は軟化した樹脂材料Jがプランジャ51に押されて周方向に広がる、又は、溶融又は軟化した樹脂材料Jがプランジャ51及び上型3のカル部32から押されて周方向に広がることにより生じる圧力である。
【0041】
このように被覆体7がポット21の内面に密着する構成とすることで、被覆体7がポット21の内面とプランジャ51との摺動部を塞ぐ構成となり、溶融した樹脂材料Jが摺動部により一層侵入しにくくなる。また、被覆体7は、ポット21内で溶融又は軟化した樹脂材料Jから加わる内圧によってポット21の内面に密着するものであることから、被覆体7をポット21に配置する際にポット21の内面に密着させる必要がなく、被覆体7をポット21内に配置しやすくできる。
【0042】
<樹脂成形品Pの製造方法を自動化する構成>
上述した樹脂成形品Pの製造方法を自動化する構成として、本実施形態の樹脂成形装置100は、
図3~
図6に示すように、樹脂材料Jの外側周面に被覆体7を巻く被覆体巻き機構8と、被覆体7が巻かれた状態の樹脂材料Jを樹脂成形機構10に搬送する樹脂材料搬送機構9とをさらに備えており、樹脂成形機構10は、被覆体7が巻かれた状態の樹脂材料Jを用いて樹脂成形するものである。なお、
図3に示すように、被覆体巻き機構8、樹脂材料搬送機構9及び樹脂成形機構10は、制御部COMにより制御される。
【0043】
<被覆体巻き機構8>
被覆体巻き機構8は、
図4~
図6に示すように、円柱状の樹脂材料Jに対して周方向の一方側から被覆体7を送り出して、樹脂材料Jの外側周面に被覆体7を巻くものである。以下において、外側周面に被覆体7が巻かれた状態の樹脂材料Jを「被覆済み樹脂材料J」という。
【0044】
具体的に被覆体巻き機構8は、
図4~
図6に示すように、被覆体巻き治具80と、プッシュ部84とを有している。被覆体巻き治具80は、樹脂材料Jを収容する樹脂収容部81と、当該樹脂収容部81に連通するスリット状の開口部82と、当該開口部82から樹脂収容部81に被覆体7を送り出す送り出し機構83とを有している。
【0045】
樹脂収容部81及びスリット状の開口部82は、被覆体巻き治具80に形成されている。ここで、樹脂収容部81は、樹脂材料Jの中心軸が水平方向に沿った姿勢(横倒し状態)で樹脂材料Jを収容するものであり、概略円筒形状をなす収容空間を有している。また、スリット状の開口部82は、樹脂収容部81の上部に形成され、樹脂収容部81の上部に接続されており、被覆体巻き治具80の上面に開口している。この開口部82の幅寸法は、被覆体7の幅寸法よりも大きい。
【0046】
さらに、被覆体巻き治具80の上面には、所定の送り出し方向SDに沿って延び、被覆体7を開口部82に案内するための直線状のガイド溝(凹溝)80Mが形成されている。なお、被覆体巻き治具80には、
図4及び
図5に示すように、被覆体巻き治具80に被覆体7を送り出す送り台85が接続されている。この送り台85にも、被覆体7を被覆体巻き治具80に案内するための直線状のガイド溝(凹溝)85Mを形成されている。
【0047】
送り出し機構83は、
図4、
図5及び
図7に示すように、樹脂収容部81の外部において被覆体7を固定する固定部831と、固定部831により固定された被覆体7を切断する切断部832とを有し、切断部832より切断された被覆体7を樹脂収容部81に送り出すものである。
【0048】
固定部831は、切断部832により被覆体7を切断する際に被覆体7を固定するものである。具体的に固定部831は、被覆体7を吸着することによって固定するものであり、被覆体巻き治具80の上面に開口する吸着孔831aと、当該吸着孔831aから空気を吸引する真空ポンプ又は真空エジェクタ等の吸引機構(不図示)とを有している。また、本実施形態の固定部831は、
図4及び
図5に示すように、切断部832による切断位置CPを挟んだ両側で被覆体7を固定するものであり、吸着孔831aは、切断部832による切断位置CPを挟んだ両側に設けられている。
【0049】
切断部832は、固定部831により固定された被覆体7を切断するものであり、被覆体7の幅方向(水平面上において被覆体7の送り出し方向SDに直交する方向)に移動して被覆体7を切断するものである(
図7(c)参照)。具体的に切断部832は、被覆体7を切断するための切断刃832aと、当該切断刃832aを進退移動させる移動機構(不図示)とを有している。この移動機構により切断刃832aが通過する位置が切断位置CPとなる。また、被覆体巻き治具80において、切断刃832aが通過する切断位置CPには、スリット80Sが形成されている。この切断部832により切断された被覆体7の長さ寸法は、樹脂材料Jの外側周面を1巻き以上できる寸法である。なお、被覆体7に対して切断刃832aを昇降移動させることにより、被覆体7を切断するものであっても良い。
【0050】
そして、送り出し機構83は、
図4、
図5及び
図7を示すように、所定の送り出し方向SDに沿って離れて設けられ、被覆体7を送り出す2つのローラ833、834を有している。これら2つのローラ833、834の間に固定部831及び切断部832が設けられている。以下において、2つのローラ833、834において、送り出し方向SDの後側に位置するローラが挿入側ローラ833であり、送り出し方向SDの前側に位置するローラが巻き部側ローラ834である。
【0051】
挿入側ローラ833は、被覆体7を固定部831及び切断部832に送り出すものであり、送り出した被覆体7の先端部が巻き部側ローラ834に到達するまで被覆体7を送り出す(
図7(b)参照)。また、巻き部側ローラ834は、切断部832により切断された被覆体7を開口部82から挿入して樹脂収容部81に送り出すものである(
図6(a)、
図7(d)参照)。なお、挿入側ローラ833及び巻き部側ローラ834はいずれも、モータ等の駆動部(不図示)により回転される。
【0052】
巻き部側ローラ834により樹脂収容部81に送り出された被覆体7は、
図6に示すように、樹脂収容部81の内側周面に沿って変形しながら樹脂収容部81の内部を一周以上進行して円筒状となる。樹脂収容部81に予め樹脂材料Jが収容されている場合には、被覆体7は、樹脂収容部81の内側周面及び樹脂材料Jの外側周面の間を進行して、樹脂材料Jの外側周面に被覆体7が1巻き以上巻かれた状態となり、樹脂材料Jが被覆体7により包装される(
図6(b)参照)。
【0053】
また、被覆体巻き機構8は、
図4、
図5及び
図7に示すように、被覆済み樹脂材料Jを搬送機構9に押し出して受け渡すプッシュ部84を有している。このプッシュ部84は、樹脂収容部81において横倒し状態の被覆済み樹脂材料Jを中心軸方向に沿って押し出すことにより搬送機構9に受け渡すものである。具体的にプッシュ部84は、
図4及び
図5に示すように、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すプッシュ部材841と、当該プッシュ部材841を進退移動させる駆動部842とを有している。なお、駆動部842としては、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。
【0054】
プッシュ部材841は、樹脂収容部81に干渉すること無く、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すことができる形状であり、例えば平板形状をなすものである(
図4参照)。
【0055】
ここで、樹脂収容部81には、
図6に示すように、プッシュ部材841との干渉を避けるための逃げ部81aが形成されている。この逃げ部81aは、プッシュ部材841の移動方向に沿って樹脂収容部81の内側周面に形成されている。そして、この逃げ部81aの内面には、被覆体7を開口部82から送り出して樹脂収容部81を進行する際に、その妨げとならないように、被覆体7の進行方向に対して被覆体7を案内する案内面81x(誘い込みテーパ面81x)が形成されている。なお、
図6では、案内面81xは、被覆体7の進行方向に行くに従って樹脂材料Jに近づくように形成された平面状をなすものであるが、被覆体7の進行方向に行くに従って樹脂材料Jに近づくように形成された湾曲面であっても良い。
【0056】
<樹脂材料搬送機構9>
樹脂材料搬送機構9は、
図8に示すように、被覆済み樹脂材料Jを樹脂成形機構10に搬送して、被覆済み樹脂材料Jを下型2のポット21に収容するものである。
【0057】
本実施形態の樹脂材料搬送機構9は、
図8に示すように、被覆体巻き機構8から被覆済み樹脂材料Jを受け取る第1搬送部91と、第1搬送部91から被覆済み樹脂材料Jを受け取る第2搬送部92と、第2搬送部92から被覆済み樹脂材料Jを受け取り、ポット21に収容する搬送収容部93とを有している。
【0058】
なお、
図8において、(a)は、被覆体巻き機構8から第1搬送部91への受け渡し状態を示し、(b)は、第1搬送部91から第2搬送部92への受け渡し状態を示し、(c)は、第2搬送部92から搬送収容部93への受け渡し状態を示し、(d)は、搬送収容部93からポット21への受け渡し状態を示している。
【0059】
第1搬送部91は、被覆体巻き機構8から第2搬送部92に被覆済み樹脂材料Jを搬送するものであり、被覆済み樹脂材料Jを収容する1又は複数の収容部91aを有している。この収容部91aは、樹脂材料Jが円柱状であることから、それに合わせて断面円形状をなす収容空間である。この収容部91aは、第1収容部材911に形成されている。第1搬送部91の収容部91aは、
図9に示すように、第1収容部材911において、互いに対向する面に開口するように形成されている。そして、第1収容部材911が被覆体巻き機構8の側方に位置した状態(
図8(a)参照)で、一方の面に形成された開口から被覆済み樹脂材料Jが入られる。また、第1収容部材911は、図示しない移動機構によって第2搬送部92への受け渡し位置に移動し(
図8(b)参照)、この状態で、他方の面に形成された開口から被覆済み樹脂材料Jが出される。
【0060】
ここで、
図9に示すように、第1搬送部91の収容部91aにおいて、被覆済み樹脂材料Jが入れられる側の収容部91aの端部である開口部の内径は、開口側に向かうに連れて大きくなるように構成されている。ここでは、開口部にはテーパ面91bが形成されている。この構成により、被覆済み樹脂材料Jを収容する際に被覆体7が開口部に引っ掛かりにくくなり、スムーズに収容部91aに収容することができる。また、被覆体7の端が折れ曲がって樹脂材料Jの外側周面において覆われていない部分が生じることを防ぐことができる。
【0061】
また、第1搬送部91は、
図8(b)に示すように、第1収容部材911の収容部91aから第2搬送部92に被覆済み樹脂材料Jを押し出して受け渡すプッシュ部912を有している。このプッシュ部912は、被覆済み樹脂材料Jを中心軸方向に沿って押し出すことにより第2搬送部92に受け渡すものである。具体的にプッシュ部912は、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すプッシュ部材912aと、当該プッシュ部材912aを進退移動させる駆動部(不図示)とを有している。プッシュ部材912aは、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すことができる形状であり、例えば、平板形状をなすものである。また、第1収容部材911には、この平板形状のプッシュ部材912aにより樹脂材料J及び被覆体7の両方を押す出すことができるスリット911Sが形成されている。また、このプッシュ部材912aにより複数の被覆済み樹脂材料Jが一括して第2搬送部92に受け渡される。
【0062】
第2搬送部92は、
図8に示すように、第1搬送部91から搬送収容部93に被覆済み樹脂材料Jを搬送するものであり、第1搬送部91と同様に、被覆済み樹脂材料Jを収容する1又は複数の収容部92a(
図9参照)を有している。この収容部92aは、樹脂材料Jが円柱状であることから、それに合わせて断面円形状をなす収容空間である。この収容部92aは、第2収容部材921に形成されている。第2搬送部92の収容部92aは、第2収容部材921において、一方の面に形成された開口から被覆済み樹脂材料Jが出し入れされる。
【0063】
ここで、
図9に示すように、第2搬送部92の収容部92aにおいて、被覆済み樹脂材料Jが入れられる側の収容部92aの端部である開口部の内径は、開口側に向かうに連れて大きくなるように構成されている。ここでは、開口部にはテーパ面92bが形成されている。この構成により、被覆済み樹脂材料Jを収容する際に被覆体7が開口部に引っ掛かりにくくなり、スムーズに収容部92aに収容することができる。また、被覆体7の端が折れ曲がって樹脂材料Jの外側周面において覆われていない部分が生じることを防ぐことができる。
【0064】
また、第2搬送部92は、第2収容部材921の収容部92aから第2搬送部92に被覆済み樹脂材料Jを押し出して受け渡すプッシュ部922を有している。このプッシュ部922は、被覆済み樹脂材料Jを中心軸方向に沿って上方に押し出すことにより搬送収容部93に受け渡すものである。ここでは、搬送収容部93は、第2搬送部92の上部に設けられており、第2搬送部92は水平状態で第1搬送部91から樹脂材料Jを受け取り(
図8(b)参照)、90度回転した起立状態で搬送収容部93に樹脂材料Jを受け渡す(
図8(c)参照)。なお、第2搬送部92の回転は、モータ等の駆動部(不図示)により行うことができる。
【0065】
具体的にプッシュ部922は、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すプッシュ部材922aと、当該プッシュ部材922aを進退移動させる駆動部922bとを有している。プッシュ部材922aは、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すことができる形状であり、例えば、平板形状をなすものである。また、第2収容部材921には、第1収容部材911と同様に、平板形状のプッシュ部材922aにより樹脂材料J及び被覆体7の両方を押す出すことができるスリット(不図示)が形成されている。また、このプッシュ部材922aにより複数の被覆済み樹脂材料Jが一括して搬送収容部93に受け渡される。
【0066】
搬送収容部93は、
図8に示すように、第2搬送部92からポット21に被覆済み樹脂材料Jを搬送して投入するものであり、第1搬送部91と同様に、被覆済み樹脂材料Jを収容する1又は複数の収容部93a(
図10、
図11参照)を有している。この収容部93aは、樹脂材料Jが円柱状であることから、それに合わせて断面円形状をなす収容空間である。この収容部93aは、第3収容部材931に形成されている。搬送収容部93の収容部93aは、第3収容部材931において、下面に形成された開口から被覆済み樹脂材料Jが出し入れされる。また、第3収容部材931には、
図10(b)及び
図11(b)に示すように、収容部93aに収容された被覆体7及び樹脂材料Jが落下しないように一時的に保持する保持シャッタ932が設けられている。なお、保持シャッタ932を設ける位置は、収容部93aに対して被覆体7及び樹脂材料Jを保持できる位置であればよい。さらに、第3収容部材931は、図示しない移動機構によってポット21への受け渡し位置(ここでは収容部93a及びポット21が上下に並ぶ位置)に移動する(
図8(d)、
図10、
図11参照)。
【0067】
ここで、
図10及び
図11に示すように、搬送収容部93の収容部93aにおいて、被覆済み樹脂材料Jが押して入れられる側の収容部93aの端部である開口部の内径は、開口側に向かうに連れて大きくなるように構成されている。ここでは、開口部にはテーパ面93bが形成されている。この構成により、被覆済み樹脂材料Jを収容する際に被覆体7が開口部に引っ掛かりにくくなり、スムーズに収容部93aに収容することができる。また、被覆体7の端が折れ曲がって樹脂材料Jの外側周面において覆われていない部分が生じることを防ぐことができる。
【0068】
また、搬送収容部93は、第3収容部材931の収容部93aからポット21に被覆済み樹脂材料Jを押し出して受け渡すプッシュ部933を有している。このプッシュ部933は、被覆済み樹脂材料Jを中心軸方向に沿って下方に押し出すことによりポット21に投入するものである。つまり、収容部93aは、開口側に向かうに連れて大きくなるように構成されている開口部から樹脂材料Jが出し入れされる。ここでは、搬送収容部93の収容部93aをポット21の上方に位置させて、プッシュ部933により被覆体7及び樹脂材料Jの両方を下方に押して、被覆済み樹脂材料Jをポット21に収容する。なお、プッシュ部933により被覆済み樹脂材料Jをポット21に収容する際には、保持シャッタ932を開ける(
図11(b)参照)。なお、
図11(b)では、保持シャッタ932がポット21(又は収容部93a)の配列方向に直交する方向に移動する構成であるが、これ以外の方向(例えばポット21(又は収容部93a)の配列方向等)に移動する構成であっても良い。
【0069】
具体的にプッシュ部933は、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すプッシュ部材933aと、当該プッシュ部材933aを進退移動させる駆動部(不図示)とを有している。プッシュ部材933aは、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すことができる形状であり、例えば、平板形状をなすものである。詳細には、プッシュ部材933aは、ポット21毎に分かれた平板形状をなすプッシュ端部933a1を有し、複数のプッシュ端部933a1の上部を互いに連結した形状であり、各ポット21に対して樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すことができる。また、第3収容部材931には、平板形状のプッシュ端部933a1により、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押す出すことができるスリット933s(
図10、
図11参照)が形成されている。また、このプッシュ部材933aにより複数の被覆済み樹脂材料Jが一括してポット21に受け渡される。
【0070】
また、
図10及び
図11に示すように、プッシュ端部933a1における被覆体7及び樹脂材料Jを押す面(下面)には、樹脂材料Jを押すための突出部933a2が形成されている。この構成により、プッシュ端部933a1の被覆体7及び樹脂材料Jを押す面(下面)を平坦面とした場合に比べて、被覆体7を傷付けにくくすることができる。なお、プッシュ端部933a1の被覆体7及び樹脂材料Jを押す面(下面)を平坦面とした場合には、プッシュ部材933aの形状が簡単で設計しやすく、コストを抑えることができる。
【0071】
<樹脂成形品Pの製造方法の全体工程>
次に、樹脂成形装置100の動作の一例を説明する。なお、本実施形態においては、樹脂成形装置100の動作、例えば被覆体巻き機構8の被覆体巻き動作、樹脂材料搬送機構9の樹脂材料の搬送動作、及び樹脂成形機構10の樹脂成形動作など、すべての動作や制御は制御部COM(
図3参照)により行われる。
【0072】
<被覆体巻き動作>
図7(a)に示すように、被覆体7を送り台85のガイド溝85に沿って被覆体巻き治具80に設けられた挿入側ローラ833に送る。これにより、被覆体7は、被覆体巻き治具80の上面と挿入側ローラ833により挟まれた状態となる。
【0073】
そして、
図7(b)に示すように、挿入側ローラ833を回転させて、被覆体7を巻き部側ローラ834に送る。これにより、被覆体7の先端部は、被覆体巻き治具80の上面と巻き部側ローラ834により挟まれた状態となる。
【0074】
次に、
図7(c)に示すように、固定部831により被覆体7を吸着して、被覆体7を被覆体巻き治具80の上面に固定する。被覆体7を被覆体巻き治具80の上面に固定した後に、切断部832を進退移動させて、被覆体7を切断する。この切断により巻き部側ローラ834に挟まれた被覆体7の長さ寸法は、樹脂材料Jの外側周面を1巻き以上できる寸法となる。
【0075】
切断部832による被覆体7の切断後に、固定部831による被覆体7の吸着を解除する。
【0076】
また、上記の各動作と並行して、又は、上記の各動作の前後において、被覆体巻き治具80の樹脂収容部81に図示しない樹脂材料供給部によって樹脂材料Jを収容する(
図7(c)参照)。
【0077】
そして、
図7(d)に示すように、巻き部側ローラ834を回転させて、切断された被覆体7を開口部82から挿入して樹脂収容部81の内部に送り出す。これにより、被覆体7は、樹脂収容部81の内側周面及び樹脂材料Jの外側周面の間を進行して(
図6(a)参照)、樹脂材料Jの外側周面に被覆体7が1巻き以上巻かれた状態となり、樹脂材料Jが被覆体7により包装される(
図6(b)参照)。
【0078】
被覆体7が樹脂材料Jに巻かれた後に、
図7(e)に示すように、プッシュ部84が被覆体7及び樹脂材料Jを押して、第1搬送部91の収容部91aに被覆済み樹脂材料Jを受け渡す(
図8(a)参照)。第1搬送部91が複数の収容部91aを有する場合には、上記の動作を繰り返して、複数の収容部91aに被覆済み樹脂材料Jを受け渡す。
【0079】
<搬送動作>
第1搬送部91は、
図8(a)の状態で被覆済み樹脂材料Jを受け取った後に、
図8(b)に示すように、第2搬送部92への受け渡し位置に移動する。この受け渡し位置において、第1搬送部91の収容部91a及び第2搬送部92の収容部92aは、水平方向において互いに対向した状態である。そして、第1搬送部91のプッシュ部912は、収容部91aに収容された被覆済み樹脂材料Jを水平方向に押し出して、第2搬送部92の収容部92aに受け渡す。
【0080】
次に、第2搬送部92は、被覆済み樹脂材料Jを受け取った後に、
図8(c)に示すように、90度回転して起立状態となる。この状態において、第2搬送部92の収容部92a及び搬送収容部93の収容部93aは、上下方向において互いに対向している。そして、第2搬送部92のプッシュ部922は、収容部92aに収容された被覆済み樹脂材料Jを上方に押し出して、搬送収容部93の収容部93aに受け渡す。搬送収容部93は、収容部93aに被覆済み樹脂材料Jを受け取った後に、保持シャッタ932を閉じて、被覆体7及び樹脂材料Jが落下しないように保持する。
【0081】
搬送収容部93は、被覆済み樹脂材料Jを受け取り保持した後に、
図8(d)に示すように、ポット21への投入位置に移動する。この投入位置において、搬送収容部93の収容部93a及びポット21は、上下方向において互いに対向している(
図10参照)。そして、搬送収容部93の保持シャッタ932が開くとともに、搬送収容部93のプッシュ部933は、収容部93aに収容された被覆済み樹脂材料Jのうち少なくとも被覆体7を押し出してポット21に収容する(
図11参照)。本実施形態では、プッシュ部933より、被覆体7及び樹脂材料Jの両方を押し出すことにより、被覆体7を確実にポット21の奥まで押し込むことができる。本実施形態では、被覆体7の幅寸法L1が樹脂材料Jの幅寸法よりも0.5~3mm程度長くしているので、自重で落下する樹脂材料Jとともに、被覆体7も大きな損傷なく両方をポット21の底面まで入れることができる。以上の一連の動作により、被覆済み樹脂材料Jがポット21に収容される。
【0082】
<樹脂成形動作>
上記の動作によりポット21内に樹脂材料J及び被覆体7を収容するとともに、
図12(a)に示すように、別の成形対象物搬送機構(不図示)を用いて下型2の装着部22に成形対象物Wを装着する。
【0083】
そして、
図12(b)に示すように、上型3及び下型2を型締めして成形対象物Wを上型3と下型2とで挟み込む。このとき、成形対象物Wの電子部品Wxは、上型3のキャビティ31内に収容された状態となる。
【0084】
そして、ポット21内で溶融した樹脂材料Jをプランジャ51によって押し出す。これにより、
図12(c)に示すように、溶融した樹脂材料Jは、上型3のカル部32及びランナ部33を通過してキャビティ31に導入される。
【0085】
そして、
図13(a)に示すように、硬化に必要な所要時間だけ溶融した樹脂材料Jを加熱することによって、樹脂材料Jを硬化させて硬化樹脂を形成する。これにより、キャビティ31内の電子部品Wxとその周辺の基板とは、キャビティ31の形状に対応して成形された硬化樹脂(封止樹脂)内に封止される。
【0086】
次に、硬化に必要な所要時間の経過後において、
図13(b)に示すように、上型3と下型2とを型開きして、封止済基板(樹脂成形品P)を不要樹脂J1とともに離型して一体的に搬送する。ここで、不要樹脂J1は、カル部32に残留した樹脂(カルJ11)及びランナ部33に残留した樹脂(ランナJ12)とからなる。その後、成形型(上型3及び下型2)から離れた別のスペースで、
図13(c)に示すように、樹脂成形品Pから不要樹脂J1を除去し、不要樹脂J1を廃棄する。ここで、樹脂成形後において被覆体7は、カル部32又はランナ部33に残留し、カル部32及びランナ部33に残留した不要樹脂J1(カルJ11又はランナJ12)内に含まれており、当該不要樹脂J1とともに廃棄される。
【0087】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、樹脂材料Jの外側周面に被覆体7を巻く被覆体巻き機構8を備えているので、樹脂成形装置100において樹脂材料Jに被覆体7を自動的に巻く機能を付与することができ、被覆体7が巻かれた状態の樹脂材料Jを用いて樹脂成形することができる。その結果、樹脂成形時にポット21の内面と樹脂材料Jとの間に樹脂材料Jを取り囲む被覆体7が配置されることになり、樹脂材料Jがポット21の内面に触れないようにでき、ポット21の内面に付着する樹脂カスを低減することができる。また、被覆体7により樹脂材料Jが取り囲まれているので、たとえモールドアンダーフィル(MUF)用樹脂やクリアレジンなどの高流動樹脂であったとしても、ポット21の内面とプランジャ51との摺動部に溶融した樹脂材料Jが侵入しにくくなり、摺動部に侵入した樹脂材料Jによって発生する樹脂カスを低減することができる。ここで、被覆体7は、樹脂材料Jが押し出される方向を開放しているので、プランジャ51による樹脂材料Jの押し出しを邪魔することもない。
【0088】
このように樹脂カスを低減することにより、次の樹脂成形へのコンタミネーションを低減でき樹脂成形品Pの品質を向上することができる。また、樹脂カスによる設備トラブルを防止でき、清掃作業の頻度も低減できる。さらに、被覆体7を用いることにより、プランジャ51の摺動抵抗の増大を防止できるので、樹脂成形品Pの品質の安定化を実現できるとともに、ポット21及びプランジャ51の長寿命化も実現できる。
【0089】
また、本実施形態の被覆体巻き機構8は、樹脂収容部81(円筒形状をなす収容空間)に樹脂材料Jを収容した状態で被覆体7を巻く構成であり、樹脂材料Jの直径における寸法公差に関わらず、被覆体7を確実に巻き付けることができる。
【0090】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0091】
例えば、前記実施形態では、樹脂収容部81に樹脂材料Jを収容した後に、当該樹脂収容部81に被覆体7を挿入して巻き付ける構成であったが、樹脂収容部81に被覆体7を挿入して円筒状とした後に、樹脂収容部81で円筒状に巻かれた被覆体7の内部に樹脂材料Jを挿入して樹脂収容部81に樹脂材料Jを収容しても良い。この構成であれば、樹脂収容部81に対する樹脂粉末(樹脂カス)の付着を低減することができる。
【0092】
また、樹脂収容部81に被覆体7を挿入した後に樹脂材料Jを収容する場合には、樹脂収容部81内の被覆体7が樹脂材料Jの挿入を妨げる可能性がある。この問題を解決するために、樹脂収容部81内の被覆体7を樹脂収容部81の内面に押さえ付けて、樹脂材料Jの挿入をガイドするガイド機構を設けることが考えられる。
【0093】
さらに、前記実施形態の固定部831は、被覆体7を吸着して被覆体巻き治具の上面に固定する構成であったが、被覆体7を被覆体巻き治具の上面に押さえ付けて固定する構成であっても良い。
【0094】
その上、スリット状の開口部82は、樹脂収容部81の上部に接続される構成の他に、樹脂収容部81に被覆体7を挿入できる位置であれば良く、例えば、樹脂収容部81の側部又は下部に接続される構成であっても良い。
【0095】
前記実施形態では、ポットが下型に形成されており、キャビティが上型に形成されたものであったが、ポット又はキャビティは何れの成形型に形成されたものであっても良い。
【0096】
また、ポット及びプランジャは、断面円形状のものに限られず、例えば、断面矩形状、又はその他の断面多角形状等のその他の形状のものであっても良い。
【0097】
さらに、前記実施形態の樹脂材料搬送機構は、第1搬送部、第2搬送部及び搬送収容部の3つに分かれていたが、第1搬送部及び第2搬送部を1つの搬送部により構成したものであっても良いし、第2搬送部及び搬送収容部を1つの搬送部により構成したものであっても良い。また、1つの搬送部によって、被覆体巻き機構からポットに樹脂材料を搬送するように構成しても良い。
【0098】
また、樹脂成形装置はマルチプランジャ方式に限定されず、1つのプランジャを有するものであっても良い。この場合、プランジャユニットは1つのプランジャを有する構成となる。
【0099】
その上、一対の成形型は、上型及び下型に限られず、トランスファ成形に用いることができるその他の成形型(例えば、中間プレートが存在しているトップゲートタイプの成形型)であっても良い。
【0100】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0101】
100・・・樹脂成形装置
J・・・樹脂材料
P・・・樹脂成形品
10・・・樹脂成形機構
21・・・ポット
2・・・成形型(下型)
32・・・カル部
33・・・ランナ部
7・・・被覆体
8・・・被覆体巻き機構
81・・・樹脂収容部
81a・・・逃げ部
81x・・・案内面
82・・・開口部
83・・・送り出し機構
831・・・固定部
832・・・切断部
833・・・挿入側ローラ
834・・・巻き部側ローラ
84・・・プッシュ部
9・・・樹脂材料搬送機構