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特開2023-25557洗浄乾燥機、マット状部材の洗浄乾燥方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025557
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】洗浄乾燥機、マット状部材の洗浄乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/10 20060101AFI20230215BHJP
   F26B 9/00 20060101ALI20230215BHJP
   D06F 58/00 20200101ALI20230215BHJP
【FI】
D06F58/10 Z
F26B9/00 Z
D06F58/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130872
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】517164556
【氏名又は名称】株式会社TOSEI
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】小野 清和
(72)【発明者】
【氏名】椙山 秀昭
【テーマコード(参考)】
3B168
3L113
【Fターム(参考)】
3B168AA40
3B168AB01
3B168AB24
3B168AB29
3B168AB42
3B168AC15
3B168AD02
3B168AE02
3B168AE04
3B168AE07
3B168BA45
3B168BA47
3L113AA01
3L113AB03
3L113AC03
3L113AC51
3L113BA11
3L113CA08
3L113CB02
3L113CB24
3L113CB35
3L113DA07
3L113DA10
(57)【要約】
【課題】マット状部材を移動させることなくマット状部材の洗浄乾燥を行い、且つ洗浄乾燥にかかる時間を短縮することができる洗浄乾燥機を提供する。
【解決手段】実施形態の洗浄乾燥機は、マット状部材の洗浄、乾燥および冷却を行う洗浄乾燥機であって、洗浄乾燥空間が形成される筐体と、前記洗浄乾燥空間に乾燥風を供給する給気部と、前記乾燥風が通過可能な載置面を有して、この載置面に前記マット状部材を載置するマット載置部と、前記載置面を通過した前記乾燥風を前記洗浄乾燥空間の外部に排出する排気部と、前記マット状部材に向けて流体を噴霧する流体噴霧部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マット状部材の洗浄、乾燥および冷却を行う洗浄乾燥機であって、
洗浄乾燥空間が形成される筐体と、
前記洗浄乾燥空間に乾燥風を供給する給気部と、
前記乾燥風が通過可能な載置面を有して、この載置面に前記マット状部材を載置するマット載置部と、
前記載置面を通過した前記乾燥風を前記洗浄乾燥空間の外部に排出する排気部と、
前記マット状部材に向けて流体を噴霧する流体噴霧部と、
を備える洗浄乾燥機。
【請求項2】
前記流体噴霧部は、前記マット状部材に密着した状態で前記流体を噴霧する請求項1に記載の洗浄乾燥機。
【請求項3】
前記流体噴霧部は、前記給気部または前記洗浄乾燥空間に向けて前記流体を噴霧する請求項1又は2に記載の洗浄乾燥機。
【請求項4】
前記流体は、水蒸気又は薬剤を含む水蒸気である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の洗浄乾燥機。
【請求項5】
前記流体噴霧部は、
前記マット状部材に密着する噴霧ノズルと、
前記噴霧ノズルを前記載置面に沿って平行移動させるノズル移動部と、
を備える請求項1又は2に記載の洗浄乾燥機。
【請求項6】
前記流体噴霧部は、
前記載置面に沿って延在して、前記噴霧ノズルを複数有する噴霧バーを備え、
前記ノズル移動部は、前記噴霧バーを前記載置面に沿って平行移動させる
請求項5に記載の洗浄乾燥機。
【請求項7】
前記流体噴霧部は、前記噴霧ノズルを前記マット状部材に密着する噴霧位置と前記マット状部材から離間する退避位置との間で搬送する搬送部を備える請求項5又は6に記載の洗浄乾燥機。
【請求項8】
前記給気部、前記排気部、および前記流体噴霧部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記流体噴霧部から前記流体を噴霧するときに、前記給気部と前記排気部による温風給排気を休止する第一洗濯乾燥モードと、
前記流体噴霧部から前記流体を噴霧するときに、前記給気部と前記排気部による温風給排気を同時に行う第ニ洗濯乾燥モードと、
を有する請求項1に記載の洗浄乾燥機。
【請求項9】
マット状部材を洗浄乾燥空間に収容して、前記マット状部材の洗浄、乾燥および冷却を行うマット状部材の洗浄乾燥方法であって、
給気部から前記洗浄乾燥空間に乾燥風を供給して設定温度に予熱する予熱工程と、
流体噴霧部から流体を噴霧して前記マット状部材を洗浄する洗浄工程と、
前記給気部から前記洗浄乾燥空間に乾燥風を供給して前記マット状部材を乾燥する乾燥工程と、
前記給気部から前記洗浄乾燥空間に冷風を供給して前記マット状部材を冷却する冷却工程と、
を有するマット状部材の洗浄乾燥方法。
【請求項10】
前記乾燥風はヒータからの温風、前記冷風は外気であり、
前記予熱工程では、前記洗浄乾燥空間の内部温度が設定温度に到達するとその予熱工程を終了し、
前記乾燥工程では、前記洗浄乾燥空間の平均温度が設定範囲内に収まるように前記乾燥風が調整され、
前記冷却工程では、設定した時間の冷却、又は設定した温度以下の冷却が行われる
請求項9に記載のマット状部材の洗浄乾燥方法。
【請求項11】
前記洗浄工程では、排気ファンを間欠運転して、前記給気部からの外気の給排気を行う請求項10に記載のマット状部材の洗浄乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗浄乾燥機およびマット状部材の洗浄乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄などによって水分を含んだ布団やマットレス等のマット状部材を乾燥させる乾燥機が知られている。
このような乾燥機として、ガスヒータからの加熱された空気が流入する乾燥空間が筐体内に画成され、この乾燥空間内にマット状部材の載置部を配し、この載置部の内部に画成された内部空間と乾燥空間とを連通させ、載置されたマット状部材に加熱された空気を通過させることによってマット状部材の乾燥を行うものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-157795号公報
【特許文献2】特開2000-288297号公報
【特許文献3】特開2006-081712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の乾燥機では、マット状部材の乾燥が不十分になり、マット状部材を専用の乾燥機に移動させる必要がある。この時、水分を含んだマット状部材は重く、利用者にとって大変な作業であり、時間も多く費やしてしまう。
発明が解決しようとする課題は、マット状部材を移動させることなくマット状部材の洗浄乾燥を行い、且つ洗浄乾燥にかかる時間を短縮することができる洗浄乾燥機およびマット状部材の洗浄乾燥方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の洗浄乾燥機は、マット状部材の洗浄、乾燥および冷却を行う洗浄乾燥機であって、洗浄乾燥空間が形成される筐体と、前記洗浄乾燥空間に乾燥風を供給する給気部と、前記乾燥風が通過可能な載置面を有して、この載置面に前記マット状部材を載置するマット載置部と、前記載置面を通過した前記乾燥風を前記洗浄乾燥空間の外部に排出する排気部と、前記マット状部材に向けて流体を噴霧する流体噴霧部と、を備える。
【0006】
実施形態のマット状部材の洗浄乾燥方法は、マット状部材を洗浄乾燥空間に収容して、前記マット状部材の洗浄、乾燥および冷却を行うマット状部材の洗浄乾燥方法であって、給気部から前記洗浄乾燥空間に乾燥風を供給して設定温度に予熱する予熱工程と、流体噴霧部から流体を噴霧して前記マット状部材を洗浄する洗浄工程と、前記給気部から前記洗浄乾燥空間に乾燥風を供給して前記マット状部材を乾燥する乾燥工程と、前記給気部から前記洗浄乾燥空間に冷風を供給して前記マット状部材を冷却する冷却工程と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る洗浄乾燥機1を示す斜視図である。
図2】洗浄乾燥機1を示す正面図である。
図3】洗浄乾燥機1を示す平面図である。
図4】洗浄乾燥機1のマット載置部3を示す斜視図である。
図5】洗浄乾燥機1のマット載置部3を示す正面図である。
図6】洗浄乾燥機1のマット載置部3を示す側面図である。
図7】布団Fが載置されたマット載置部3を示す正面図である。
図8】布団Fが載置されたマット載置部3を示す側面図である。
図9】洗浄乾燥機1の全体の側面図である。
図10】ガスヒータ21から上方壁部25に流れる温風の流れ方向を示す図である。
図11】上方壁部25から洗浄乾燥空間Dに流れる温風の流れ方向を示す図である。
図12】洗浄乾燥機1の全体の温風の流れを示す側面図である。
図13】洗浄乾燥機1の蒸気(流体)噴霧部5を示す斜視図である。
図14】洗浄乾燥機1の噴霧バー54を示す斜視図である。
図15】洗浄乾燥機1の噴霧バー54を上下移動させた状態を示す斜視図である。
図16】洗浄乾燥機1の流体(蒸気)噴霧部5の噴霧位置C1と退避位置C2を示す正面図である。
図17】洗浄乾燥機1の流体(蒸気)噴霧部6を示す模式図である。
図18】洗浄乾燥機1の流体(蒸気)噴霧部7を示す模式図である。
図19】マット状部材の洗浄乾燥方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の詳細について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0009】
(全体構成)
まず、一実施例である洗浄乾燥機1の全体構成について説明する。図1図3は、本実施形態に係る洗浄乾燥機1を示す斜視図、正面図、平面図である。
以後、洗浄乾燥機1の正面側を前方、背面側を後方と称し、前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向と称して説明を行う。
【0010】
図1乃至図3に示すように、洗浄乾燥機1は、本体部2と、本体部2内に収容されて洗浄乾燥機1による洗浄乾燥対象である布団F(マット状部材)を載置するための可動型のマット載置部3とを備える。
さらに、洗浄乾燥機1は、布団Fに水蒸気(流体)を吹き付けて洗浄(リフレッシュ洗浄)させる流体噴霧部5を備える(図13参照)。以下では、流体噴霧部5を蒸気噴霧部5と称して説明する。これにより、洗浄乾燥機1は、布団Fのダニを死滅させ、ダニやそのフン、死骸を吹き飛ばし、さらに除菌、脱臭の効果を期待することができる。
【0011】
(本体部2)
本体部2は、筐体20と、ガスヒータ21と、排気ファン22と、制御部24とを備える。筐体20は、全体として中空略直方体の箱状に形成され、上方壁部25(図12等を参照)、一対の側方壁部26、後方壁部27、底壁部28、扉部29により囲われた洗浄乾燥空間Dが内部に画成される。この洗浄乾燥空間D内に可動型のマット載置部3を収容することができる。
【0012】
扉部29は、一方の側方壁部26に蝶番等により開閉可能に取り付けられ、前方側から洗浄乾燥空間Dへのマット載置部3の出し入れを可能としている。扉部29の一部は、例えばガラスなどの光透過性を有する窓部291として形成され、さらに使用者が扉部29を開閉させるための把持部292が設けられている。
【0013】
ガスヒータ21は、上方壁部25の上方に且つ筐体20の最後方に設けられており、ガスバーナを有して、このガスバーナにより空気を加熱し、接続パイプ253(図3参照)により後述する吸気流路251(図12参照)に加熱した空気(温風)を供給する。
ガスヒータ21から吸気流路251までの部材を総称して給気部8という(図18参照)。
【0014】
排気ファン22は、ガスヒータ21の前方に設けられており、空気の逆流を防止するためのチャッキダンパ221を有して洗浄乾燥空間D内の空気を吸気し、チャッキダンパ221を介して外部へ排出する。
後述する下方排気流路281からチャッキダンパ221までの部材を総称して排気部9という(図12参照)。
【0015】
制御部24は、排気ファン22の前方、即ち筐体20の最前方に設けられており、使用者が洗浄乾燥機1の運転に関する指示操作をするための操作パネル241を有し、操作パネル241が前方を向くように設けられる。制御部24は、操作パネル241になされた操作に基づいて、ガスヒータ21、排気ファン22、及び後述するジェットノズル23(図9参照)の運転を制御する。
【0016】
マット載置部3は、本体部2の洗浄乾燥空間D内で前後方向(図1の矢印方向)に移動可能である。つまり、マット載置部3の上に布団Fを掛ける場合、本体部2の洗浄乾燥空間Dから外側に引き出され、載置後は元の位置に戻される。
マット載置部3を使用する際は、使用者が扉部29を開けて洗浄乾燥空間Dに収容されたマット載置部3を前方に移動させてある程度洗浄乾燥空間Dからマット載置部3を図1の外側の矢印方向に引き出し、その上に布団Fを載置する。載置後にマット載置部3を後方(収容方向)に移動させて再度洗浄乾燥空間Dに収容し、扉部29を閉める。その後、使用者が操作パネル241を操作して洗浄乾燥機1に所望の乾燥運転をさせることにより、布団Fを乾燥することができる。
【0017】
筐体20の底壁部28は、マット載置部3が前後に移動される際にその一部の走行経路として機能すると共に、マット載置部3が洗浄乾燥空間Dに収容された際に排気流路として機能する。この底壁部28については、後述する。
【0018】
(マット載置部3)
マット載置部3の構成について詳細に説明する。図4図6は、マット載置部3を示す斜視図、正面図、側面図である。図7図8は、それぞれ布団Fが載置された載置部を示す正面図、側面図である。図9は、洗浄乾燥機1の全体の側面図である。
【0019】
マット載置部3は、図4乃至図6に示すように、載置台31と、台座部32と、押圧帯33とを備える。
載置台31は、マット状部材Fを安定して載置できる形状を有する。載置台31は、例えば、全体として中空の略三角柱状に形成される。載置台31は、三角柱の上面及び底面が前後方向に向くように横たえ、最も鋭角に形成された頂点に対向する一側面を下方に向けた姿勢(例えば、跳び箱型)を有する。
傾斜する二側面と上端に形成された曲面は、載置台31の載置面35である。
載置面35は、前後方向を向く仮想的な折り曲げ線が上端に位置付けられるように、平面を折り曲げた形状となる。載置台31の底面は、台座部32の上面に接続される。
【0020】
図6に示すように、載置台31は、例えば横幅100cm、高さ100cmmの大きさを有している。載置台31の両側面には、載置台31の内部空間P(図5又は図12等参照)と洗浄乾燥空間Dとを連通する円形の複数の孔部からなるパンチング孔群311が設けられる。このパンチング孔群311を介して洗浄乾燥空間Dと内部空間Pとの空気の流動がなされる。これらパンチング孔群311は、載置台31の最上端から所定距離に亘って設けられ、この所定距離は、布団の長手方向幅の半分以上が好ましい。ここでは、3枚のステンレス等の金属板が結合して形成される。金属板の継ぎ目は内部側に曲げられており、強度を強化している。
【0021】
載置台31の前後(図6では左右)と下側に、パンチング孔群311が形成されていないエリア311a,311b,311cを有している。なお、図6の裏面も同じ形状である。エリア311a,311bの幅は、例えば60mm~150mm(一例としては140mm程度)である。また、エリア311cの幅は、100mm~250mm(一例としては200mm程度)である。このエリア311a,311b,311cには、載置台31に載置した布団の端部が位置する。布団の周端部にあっては、温熱が漏れないようにある程度の密着性が必要である。エリア311a,311b,311cを設けることにより、温風・冷風(乾燥風)が漏れる心配はない。一方で、布団の端部とエリア311a,311b、311cの接触面との間に生じる僅かな隙間に温風・冷風が流れることによって、布団の端部でも乾燥が行われる。
【0022】
パンチング孔群311のそれぞれの孔部は、洗浄乾燥空間D側、即ち布団Fが当接する側(図中上側)の周縁部が、洗浄乾燥空間D側に向かうにつれて拡径するように曲面が形成されている。したがって、パンチング孔群311のそれぞれの孔部は、洗浄乾燥空間D側の開口径(孔径)が内部空間P側の開口径より拡径することとなる。曲面に代わり洗浄乾燥空間D側に向かうにつれて拡径するようにテーパー面を形成してもよい。
【0023】
また、載置台31の正面には、使用者がマット載置部3を移動する際に把持する把持部312が設けられている。
【0024】
乾燥対象である布団Fを載置台31に載置する場合、図7に示すように、布団Fの短手方向を載置台31の前後方向に向け、パンチング孔群311を覆うように載置台31の載置面35に載置する。この際、布団Fは載置面35の傾斜に沿うように折り曲げられた状態となる。
【0025】
載置台31の上端は曲率を有する曲面に形成されており、その曲率半径は載置される布団Fの厚みの少なくとも0.9倍以上の大きさとすることが好ましい。このような曲率半径を有する曲面が形成されることにより、布団Fが折り曲げられて載置された場合、布団Fの折り曲げ部分を曲面に沿って面接触させることができ、そこに加わる応力を良好に分散することができる。もし載置台31の上方端部が鋭角、または曲率半径がより小さい曲面に形成されている場合、その上方端部に当接する布団Fの折り曲げ部分の一部に応力が集中することがある。このような応力集中が生じると、当該部分が圧縮され密度が高まることにより通気性が低下し、延いては乾燥効率が低下する可能性がある。しかしながら、載置台31が上述した曲率半径を有することにより、このような乾燥効率の低下を回避することができる。さらに、曲面においてもパンチング孔群311を形成することができるため、乾燥効率の向上も実現できる。
【0026】
台座部32は、図4および図5に示すように、中空の略直方体状に形成されており、台座部32の内部空間Tと載置台31の内部空間Pとを接続するための開口部321aが上面に形成されている。一方、台座部32の下面には、筐体20の底壁部28内に形成された後述する下方排気流路281と内部空間Tとを接続するための開口部321bが形成されている。これら開口部321a及び開口部321bにより、内部空間P内の空気の下方排気流路281(図12参照)への流入を可能としている。
【0027】
図4乃至図6に示すように、台座部32には、前方端部下面に2つの前輪キャスタ322aが左右方向に離間して設けられると共に、その後方端部下面に左右方向略全域に亘って上方に窪む段差部322cが形成される。この段差部322cに2つの後輪キャスタ322bが左右方向に離間して設けられている。前輪キャスタ322aは、後輪キャスタ322bより大径に形成され、その下方端部が後輪キャスタ322bより下方に位置するように設けられている。後輪キャスタ322bは、筐体20の底壁部28上面に走行可能に当接している。
【0028】
台座部32における前輪キャスタ322a後方には、左右方向に延在すると共に、前方から後方に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面323が形成されている。傾斜面323はマット載置部3が洗浄乾燥空間Dに収容された状態において、後述する支持キャスタ285が当接する位置に、傾斜面323の前方端部が位置している。この傾斜面323が形成されることにより、台座部32はその前方端部及び後方端部と比較して開口部321b近傍の領域、具体的には傾斜面323の後方端部から段差部322cの前方端部にかけて下方に僅かに突出した形状となっている。
【0029】
図12に示すように、後輪キャスタ322bの走行面を形成する筐体20の底壁部28にも同様に傾斜面283が形成されている。傾斜面283は、台座部32の傾斜面323と同一の傾斜角度、傾斜方向、及び傾斜長さを有しており、マット載置部3が洗浄乾燥空間Dに収容された状態において、後輪キャスタ322bが当接する位置に、傾斜面283の後方端部が位置するように形成されている。したがって、底壁部28は、傾斜面323より前方の領域が上方に僅かに突出した形状となっている。マット載置部3が洗浄乾燥空間Dに収容された状態において、この領域と開口部321b近傍の領域との間に僅かな間隙が形成されるよう、傾斜面283及び傾斜面323の高さを設定することが好ましい。
【0030】
さらに底壁部28の前方端部には、下方が開放された断面略コ字状のキャスタ台284が設けられており、その上面には台座部32の下面に走行可能に当接する2つの支持キャスタ285が左右方向に離間して設けられている。支持キャスタ285は、マット載置部3が洗浄乾燥空間Dに収容された状態において、傾斜面323の前方端部に位置して台座部32に当接しこれを支持している。マット載置部3が洗浄乾燥空間Dに収容された状態において、この支持キャスタ285によりマット載置部3の前方側が支持されるため、本実施形態においては前輪キャスタ322aを洗浄乾燥機1の設置面から僅かに離間させている。キャスタ台284には台座部32の前輪キャスタ322aに接触しないよう、該当する位置に切欠き286が形成されている。
【0031】
このように台座部32の後輪キャスタ322bに対応して傾斜面283が底壁部28に形成され、底壁部28の支持キャスタ285に対応して傾斜面323が台座部32に形成されることにより、マット載置部3を洗浄乾燥空間Dから引き出す際に各キャスタが対向する傾斜面を同時に走行する。これにより、台座部32と底壁部28との平行性を保ったまま傾斜面の高さ分、台座部32を底壁部28から離間するように上方へ移動させることができると共に、安定した水平移動をすることができる。また、後輪キャスタ322bと支持キャスタ285とは左右方向において同位置に配設されている。したがって支持キャスタ285により後輪キャスタ322bの前方移動が規制されるため、使用者がマット載置部3を前方に移動させた際に、マット載置部3全体が洗浄乾燥空間Dから抜け出てしまうことを防止することができる。
【0032】
さらに、図12に示すように、底壁部28は内部に下方排気流路281が画成されており、その上面に下方排気流路281と内部空間Tとを接続するための開口部282と、この開口部282後方に位置して後述する垂直流路271と下方排気流路281とを流体的に接続するための開口部287とが形成されている。開口部282は、マット載置部3が洗浄乾燥空間Dに収容された状態において、台座部32の開口部321bと対向する位置に且つ略同一形状に形成されている。
【0033】
開口部282の周縁部には、シール部材288が設けられており、マット載置部3が洗浄乾燥空間Dに収容された場合に台座部32の開口部321b周縁部がシール部材288に当接し、この開口部282と台座部32の開口部321bとをシール部材288を介して気密に接続することができる。シール部材288は、底壁部28上にネジ等に締結具や接着剤等により移動不能に固定されており、対向する開口部間を気密に接続可能であればどのようなものを用いてもよい。例えば、フェルトや弾性部材等をシール部材288として用いることができる。なお、シール部材288は、開口部321bの周縁部に設けるようにしてもよい。
【0034】
このようにマット載置部3は、後輪キャスタ322bが筐体20の底壁部28に当接し、支持キャスタ285により支持されることにより、筐体20に対して前後方向に相対移動して洗浄乾燥空間Dに対する収容及び引き出しが可能となっている。さらにマット載置部3は洗浄乾燥空間Dに収容された際に下方に相対移動することができ、開口部321bと開口部282とを気密に接続できる。
【0035】
なお、マット載置部3は、洗浄乾燥空間Dから引き出されるにつれ、後輪キャスタ322bが支持キャスタ285へ接近して前方側が下方に傾斜することとなる。しかしながら、この傾斜により前輪キャスタ322aが設置面に接地することとなり、後輪キャスタ322bが常時筐体20の底壁部28に接地しているため、マット載置部3をある程度引き出したとしてもマット載置部3を安定して走行させることができる。
【0036】
押圧帯33は、載置台31の前後方向両端部に設けられる可撓性を有する長尺の帯状部材であり、それぞれ布団Fの短手方向端部を載置台31の載置面35に押圧する。押圧帯33は、載置台31の左右方向一方の側面(図7中左側)から載置台31の上端曲面を経由して他方の側面(図7中右側)に亘って延在し、その長手方向一端部は、載置台31の一方の側面に固定的に連結されている。一方、押圧帯33の長手方向他端部には、載置台31の他方の側面に設けられた連結装置313に対して着脱自在に連結可能な連結部材331が設けられている。
【0037】
このような連結装置313と連結部材331とを用いた連結機構としては、シートベルト等に用いられているバックル装置とタングとを用いたものが挙げられる。タングは孔部や切欠き等が形成された平板部材であり、これをバックル装置に設けられた挿入口に挿入することで、バックル装置内でタングを係止することができる。一方、バックル装置の解除ボタンを押下することでタングの係止を解除することができる。その他、フックを用いて互いを係止するものや、面ファスナーを用いるなどしてもよく、着脱自在な連結機構であればどのようなものを用いてもよい。
【0038】
また、押圧帯33は、その一部に長手方向に伸縮自在な伸縮部332が形成されている。図7および図8に示すように、載置された布団Fの短手方向端部を押圧する場合、その短手方向端部上に押圧帯33を這わせることとなるため、布団Fの厚みに応じて押圧帯33が載置面35から離間し、連結部材331と連結装置313とが離間する。しかしながら、この離間距離分、伸縮部332が伸長することにより連結部材331と連結装置313とを連結することができる。さらに伸縮部332は、伸長した状態において連結部材331と連結装置313とが連結することにより、常時復元力が生じるため、この復元力により押圧帯33が一様に布団Fを載置面35側に押圧することができる。このような伸縮部332は、コイルバネやゴム体等の弾性を有する部材であることが好ましく、押圧帯33全体を伸縮部332としてもよい。
【0039】
図9に示すジェットノズル23は、消臭剤、除菌剤、防ダニ剤などの薬剤を含む流体を噴出するノズルである。ジェットノズル23から排出された薬剤は、洗浄乾燥空間D内の布団F内に向けて送風されるので、布団Fの乾燥や冷却と同時に、消毒も実施することができる。
【0040】
洗浄乾燥機1における風路について図10乃至図12を用いて説明する。
図10は、洗浄乾燥機1のガスヒータから上方壁部に流れる温風・冷風(乾燥風)の流れ方向を示す図である。図11は、洗浄乾燥機1の上方壁部から本体部の乾燥空間に流れる温風・冷風の流れ方向を示す図である。図12は、洗浄乾燥機1の全体の温風・冷風の流れを示す側面図である。
【0041】
図10に示すように、平板部25aと上方壁部25との間に形成される空間が吸気流路251においては、ガスヒータ21からの温風が、接続パイプ253を通過して平板部25aに向けて送り出される。すると、吸気流路251内に渦(トルネード)が発生して、流入孔群255から洗浄乾燥空間Dへと送られる。
【0042】
図11に示すように、吸気流路251からの温風・冷風は、洗浄乾燥空間Dにおいても渦を巻いて、布団Fに送出され、載置台31の両側面に設けられたパンチング孔群311を介して洗浄乾燥空間D内の空気が布団Fを通過してマット載置部3内に吸気される。
【0043】
図12に示すように、筐体20の上方壁部25の上方には、2枚の水平に延在して互いに平行な平板部25a,25bが設けられており、最上方に位置する平板部25b上に、ガスヒータ21、排気ファン22がそれぞれ載置されている。この平板部25bの下方に位置する平板部25aを境に、2つの空間が上下方向に分割して画成されており、平板部25aと上方壁部25との間に画成される空間が吸気流路251として用いられ、平板部25aと平板部25bとの間に画成される空間が上方排気流路252として用いられる。
上方排気流路252は、吸気流路251より僅かに後方に延在して垂直流路271と流体的に接続している。なお、平板部25aを境に吸気流路251と上方排気流路252とが上下に形成されるため、平板部25aは断熱部材により構成されることが好ましい。
【0044】
垂直流路271は、後方壁部27と、この後方壁部27に平行な且つ前方に位置する平板部27aとの間隙であり、上方から見て左右方向に長尺な矩形断面が上下方向に延在する空間として形成される。垂直流路271は、上方排気流路252と下方排気流路281とに流体的に接続されており、これらが一体となって1つの排気流路を形成している。
【0045】
図12に示すように、吸気流路251には接続パイプ253が連結され、上方排気流路252には接続パイプ254が連結されている。接続パイプ253は、ガスヒータ21に対応して形成され、吸気流路251と流体的に接続されることでガスヒータ21によって加熱された空気を吸気流路251に吸気可能となっている。
接続パイプ254は、排気ファン22に対応して形成され、上方排気流路252と流体的に接続されることで排気ファン22により上方排気流路252の空気を排出可能となっている。
【0046】
また、上方壁部25には、吸気流路251と洗浄乾燥空間Dとを連通し、ガスヒータ21により加熱された空気を洗浄乾燥空間Dに流入させる通気孔としての流入孔群255が形成される。この流入孔群255は複数のパンチング孔であり、洗浄乾燥空間Dの左右方向全域及び前後方向においての所定範囲に亘って形成される。ここでの所定範囲とは、吸気流路251の下方領域の略全域であり、より具体的には載置台31の前後方向後方端部上方から、吸気流路251の前後方向前方端部までの範囲である。
【0047】
(蒸気噴霧部5)
図13は、蒸気噴霧部5を示す斜視図である。図14は、噴霧バー54を示す斜視図である。図15は、噴霧バー54を上下移動させた状態を示す斜視図である。図16は、蒸気噴霧部5の噴霧位置C1と退避位置C2を示す正面図である。
【0048】
洗浄乾燥空間Dの内部には、マット載置部3の左右両側にそれぞれ蒸気噴霧部5が配置される。左右の側方壁部26とマット載置部3の間に、蒸気噴霧部5がそれぞれ配置される。
蒸気噴霧部5は、噴霧部50と搬送部60を備える。噴霧部50は、水蒸気を布団Fに向けて吹き付ける。搬送部60は、噴霧部50を布団Fに対して押し付けたり離間させたりする。
【0049】
噴霧部50は、ノズル部51とノズル移動部56を備える。
ノズル部51は、布団Fに密着した状態で水蒸気を噴霧する。水蒸気は、例えば圧力0.1MPa、温度120℃である。
ノズル移動部56はノズル部51を布団Fの表面(載置台31の側面)に沿って移動させることもできる。
【0050】
ノズル部51は、金網52、枠体53、噴霧バー54、噴霧ノズル55を備える。
金網52は、ステンレス製の網目体であり、載置台31の載置面35のうち、傾斜する二側面に対応する形状を有する。金網52は、載置面35の平面部よりもやや大きな四角形状を有し、載置台31に載せられた布団Fの表面(左右の側方壁部26を向く面)に押し当てられる。金網52を布団Fの表面に押し当てることにより、布団Fの膨らみを抑えて、布団Fの厚みを均一化する。そして、布団Fの洗浄時において、金網52の網目体のメッシュを通して布団Fに向けて水蒸気が噴霧される。
金網52を用いる場合に限らず、布やプラスチック製の網を用いてもよい。噴霧バー54が接触しながら移動するため、滑りやすい網目体を用いることが好ましい。
【0051】
枠体53は、金網52の外周を支持する矩形枠体であり、金網52を平坦な状態に維持するために設けられる。金網52は、枠体53のうち、載置台31を向く面に取り付けられる。
枠体53は、噴霧バー54を上下方向に移動可能に支持する部材でもある。枠体53のうち、上下方向に延在する一対の縦枠部材53aが噴霧バー54を支持する。
【0052】
噴霧バー54は、水平方向(前後方向)に延在する中空部材(角管)であり、枠体53の内側に配置される。噴霧バー54は、金網52の外面側(側方壁部26側)に配置される。噴霧バー54の両端にはそれぞれ回転ローラー54aが設けられ、枠体53の一対の縦枠部材53aに沿って上下方向に平行移動できる。
【0053】
図14に示すように、噴霧バー54には、前後方向に沿って多数の噴霧ノズル55が形成される。噴霧ノズル55は、載置台31を向く面に開口する小径孔である。
噴霧バー54の内部には、ボイラー等の水蒸気発生器(不図示)から高圧高温の水蒸気が耐熱ホース(不図示)を介して供給される。噴霧バー54に供給された水蒸気は、各噴霧ノズル55から噴出し、金網52を通過して布団Fに吹き付けられる。
【0054】
ノズル移動部56は、伸縮リンク57、エアシリンダ58を備える。
伸縮リンク57は、一方向に伸縮可能なリンク機構体であり、噴霧バー54を下方から支持する。
エアシリンダ58は、伸縮リンク57を伸縮させるアクチュエータであり、伸縮リンク57の下端側に配置される。エアシリンダ58に代えて、油圧シリンダーやモータを用いてもよい。
【0055】
図15に示すように、ノズル移動部56は、噴霧バー54を下方から支持する伸縮リンク57を伸縮させることにより、噴霧バー54を枠体53の縦枠部材53aに沿って上下方向に往復移動させることができる。
【0056】
搬送部60は、噴霧部50(ノズル部51)を、布団Fに密着する噴霧位置C1と布団Fから離間する退避位置C2の間で搬送する。
噴霧位置C1は、噴霧部50が布団Fを洗浄している姿勢位置である。噴霧部50は、噴霧位置C1において、布団Fの洗浄(リフレッシュ洗浄)を行う。
退避位置C2は、噴霧部50が停止・休止している姿勢位置である。噴霧部50は、布団Fの乾燥等が行われているときに、退避位置C2において待機(退避)する。
【0057】
搬送部60は、ノズル部51を支持する一対の支持部材61と、この支持部材61を左右方向に揺動させるエアシリンダ62を備える。
支持部材61は、枠体53を支持する支柱であり、下端が底壁部28に連結し、上端が枠体53に連結する。支持部材61の上端は、枠体53(縦枠部材53a)の上下方向の中央に連結する。
これにより、各支持部材61は、下端を支点にして左右方向に揺動することにより、噴霧部50(枠体53)を左右方向に移動させる。つまり、各支持部材61は、噴霧部50を布団Fに近づけたり布団Fからと遠ざけたりできる。
噴霧部50(枠体53)は、上下方向の中央を支点にして左右方向に独立して揺動可能である。このため、布団Fに近接したときに、左右方向に揺動して布団Fの表面に密着する。
【0058】
エアシリンダ62は、一対の支持部材61を左右方向に揺動させるアクチュエータであり、支持部材61の下端側に配置される
図16に示すように、搬送部60は、噴霧部50を支持する支持部材61を揺動させることにより、噴霧部50を噴霧位置C1と退避位置C2の間で往復移動させることができる。
【0059】
次に、上述した洗浄乾燥機1の使用方法について、図19のフローチャートを参照して説明する。
(収容載置工程S100)
まず、使用者は、洗浄乾燥空間Dからマット載置部3を引き出し、その載置面35に布団Fを載置した後、扉部29を閉状態にできるようにマット載置部3を所定距離、前後方向後方に移動させる。この移動により、後輪キャスタ322b及び支持キャスタ285がそれぞれ対応する傾斜面を含む対抗面を走行し、台座部32の開口部321bと、底壁部28の開口部282とが接近してシール部材288を介してこれら開口部が接続される。この状態において扉部29を閉状態にでき、マット載置部3を洗浄乾燥空間Dに完全に収容することができる。マット載置部3が洗浄乾燥空間Dに完全に収容されると、マット載置部3の内部空間P,Tと下方排気流路281とが流体的に接続され、よって内部空間P,Tと上方排気流路252とが流体的に接続されることとなる。
【0060】
制御部24は、洗浄乾燥機1の運転モードとして、洗浄乾燥モードと乾燥モードを有する。使用者(利用者)は、制御部24を操作して、洗浄乾燥モードと乾燥モードのいずれか一方を選択することにより、洗浄乾燥機1の運転を開始させる。
【0061】
(洗浄乾燥モード)
使用者が洗浄乾燥モードを選択した場合には、以下の工程が行われる。
洗浄乾燥は、予熱工程S110、水蒸気洗浄工程S120、乾燥工程S130および冷却工程S140からなる。
【0062】
(予熱工程S110)
予熱工程S110では、排気ファン22を作動させて、上方排気流路252内の空気が外部に排出されることにより、垂直流路271及び下方排気流路281を介して、マット載置部3内の内部空間P,Tが負圧となる。内部空間P,Tが負圧となると、載置台31の両側面に設けられたパンチング孔群311を介して洗浄乾燥空間D内の空気が布団Fを通過してマット載置部3内に吸気される。これに応じて洗浄乾燥空間D内が負圧となり、流入孔群255により洗浄乾燥空間Dと連通された吸気流路251を介して、ガスヒータ21を通過する洗浄乾燥機1外部の空気が洗浄乾燥空間D内に吸気される。
【0063】
洗浄乾燥空間D内に空気が流入する状態において、ガスヒータ21を作動させて、ガスヒータ21により加熱された空気が熱風(温風)として洗浄乾燥空間D内に流入することとなり、この熱風がマット載置部3に載置された布団Fを通過してマット載置部3内へ流入した後に洗浄乾燥機1の外部へ排出される。
熱風(温風)を洗浄乾燥空間Dに流入させることにより、洗浄乾燥空間Dの温度が徐々に上昇する。洗浄乾燥空間Dの温度が設定温度(例えば、約120℃)に到達すると、予熱工程S110を終了する。
予熱工程S110は、約5~6分程度行われる。
【0064】
(水蒸気洗浄工程S120)
水蒸気洗浄工程S120では、排気ファン22を適切な回転速度で作動させたりして、間欠運転を行う。給気部8と排気部9による温風の給排気を休止する。つまり、冷風(外気)の給排気のみを行う。
そして、蒸気噴霧部5を作動させる。まず、蒸気噴霧部5は、搬送部60を駆動させる。エアシリンダ62を駆動して、噴霧部50を退避位置C2から噴霧位置C1に移動させる。そして、噴霧部50を噴霧位置C1で保持する。
次に、蒸気噴霧部5は、噴霧部50を駆動させる。蒸気噴霧部5は、水蒸気発生器(ボイラー)を作動させて、水蒸気を噴霧バー54に供給する。また、蒸気噴霧部5は、ノズル移動部56のエアシリンダ58を駆動制御して、噴霧バー54を上下方向に往復移動させる。蒸気噴霧部5は、噴霧バー54を複数回往復移動させながら、水蒸気を布団Fに吹き付ける。
【0065】
所定時間が経過したら、水蒸気洗浄工程S120を終了する。
水蒸気発生器(例えばボイラーなど)と噴霧部50を停止する。搬送部60を駆動させて、噴霧部50を噴霧位置C1から退避位置C2に移動させる。
水蒸気洗浄工程S120は、約30分程度行われる。
【0066】
(乾燥工程S130)
乾燥工程S130では、ガスヒータ21と排気ファン22とを作動させつづける。洗浄乾燥空間Dに外気(乾燥風)が流入する状態において、ガスヒータ21を作動させることにより、ガスヒータ21により加熱された温風(熱風)がマット載置部3に載置された布団Fを通過し、外部へ排気される。このような状態を維持することにより、布団Fの乾燥が行われる。
【0067】
乾燥工程S130では、ガスヒータ21を制御(火力調整)して、洗浄乾燥空間Dの内部の平均温度を約90℃に維持する。
乾燥工程S130では、洗浄乾燥空間Dの内部温度は、最低50℃以上、最高130℃以下に調整される。
乾燥工程S130は、約5分程度行われる。
【0068】
(冷却工程S140)
冷却工程S140では、ガスヒータ21を休止し、排気ファン22を作動させつづける。これにより、洗浄乾燥空間Dに外気(乾燥風)が流入して、マット載置部3に載置された布団Fを通過する。このような状態を維持することにより、布団Fの冷却が行われる。
冷却工程S140は、約10分程度行われる。設定した温度以下の冷却が行われるようにしても良い。
【0069】
(乾燥モード)
使用者が乾燥モードを選択した場合には、以下の工程が行われる。
乾燥モードは、上述した乾燥工程S130と冷却工程S140からなる。
【0070】
以上、説明した通り、洗浄乾燥機1は、洗浄乾燥空間Dが形成される筐体20と、洗浄乾燥空間Dに乾燥風(温風・冷風)を供給する給気部8と、乾燥風が通過可能な載置面35を有し、この載置面35にマット状部材(布団F)を載置するマット載置部3と、載置面35を通過した乾燥風を洗浄乾燥空間Dの外部に排出する排気部9と、マット状部材(布団F)に向けて流体を噴霧する流体噴霧部(蒸気噴霧部)5と、を備え、マット状部材(布団F)を洗浄乾燥させる。
これにより、マット状部材(布団F)に流体(水蒸気)を吹き付けて洗浄することができ、またマット状部材(布団F)に温風を当てて乾燥することができる。したがって、マット状部材(布団F)のダニを死滅させ、ダニの死骸、フンを吹き飛ばし、さらに除菌、脱臭の効果が期待できる。
【0071】
流体噴霧部5は、マット状部材(布団F)に密着した状態で流体を噴霧する。また、流体噴霧部5は、給気部8または洗浄乾燥空間Dに向けて流体を噴霧する。また、流体は、水蒸気又は薬剤を含む水蒸気である。これにより、マット状部材(布団F)に流体噴霧部5を密接した状態で水蒸気又は薬剤を含む水蒸気を吹き付けてマット状部材(布団F)の洗浄と乾燥を実施することができる。したがって、マット状部材(布団F)のダニを死滅させ、ダニの死骸、フンを吹き飛ばし、さらに除菌、脱臭の効果が期待できる。
【0072】
流体噴霧部5は、マット状部材(布団F)に密着する噴霧ノズル55と、噴霧ノズル55を載置面35に沿って平行移動させるノズル移動部56とを備える。これにより、マット状部材(布団F)のほぼ全面に向けて流水(水蒸気)を吹き付けることができる。
【0073】
流体噴霧部5は載置面35に沿って延在して、噴霧ノズル55を複数有する噴霧バー54を備え、ノズル移動部56は噴霧バー54を載置面35に沿って平行移動させる。これにより、マット状部材(布団F)のほぼ全面に向けて効率よく流水(水蒸気)を吹き付けることができる。
【0074】
流体噴霧部5は、噴霧ノズル55(噴霧部50)をマット状部材(布団F)に密着する噴霧位置C1とマット状部材(布団F)から離間する退避位置C2との間で搬送する搬送部60を備える。これにより、マット状部材(布団F)に対する水蒸気洗浄工程と、乾燥工程を適切に切り替えて効率よく行うことができる。
【0075】
給気部8、排気部9、および流体噴霧部5を制御する制御部24を備え、制御部24は、流体噴霧部5から流水(水蒸気)を噴霧するときに、給気部8と排気部9による温風給排気を休止する第一洗浄乾燥モードと、流体噴霧部5から流水(水蒸気)を噴霧するときに、給気部8と排気部9による温風給排気を同時に行う第二洗濯乾燥モードと、を有する。これにより、マット状部材(布団F)の種類や汚れ具合等の性状に応じて、水蒸気洗浄工程と乾燥工程の最適に実施することができる。
【0076】
また、マット状部材(布団F)を洗浄乾燥空間Dに収容して、マット状部材(布団F)の洗浄、乾燥および冷却を行うマット状部材の洗浄乾燥方法は、給気部8から洗浄乾燥空間Dに乾燥風を供給して設定温度に予熱する予熱工程(S110)と、流体噴霧部5から流体を噴霧してマット状部材(布団F)を洗浄する洗浄工程(S120)と、給気部8から洗浄乾燥空間Dに乾燥風を供給してマット状部材(布団F)を乾燥する乾燥工程(S130)と、給気部8から洗浄乾燥空間Dに冷風を供給してマット状部材(布団F)を冷却する冷却工程(S140)と、を有する。
【0077】
乾燥風はヒータ21からの温風、冷風は外気であり、予熱工程(S110)では、洗浄乾燥空間Dの内部温度が設定温度に到達するとその予熱工程を終了し、乾燥工程(S130)では、洗浄乾燥空間Dの平均温度が設定範囲内に収まるように乾燥風が調整され、冷却工程(S140)では、設定した時間の冷却、又は設定した温度以下の冷却が行われる。これにより、マット状部材(布団F)に対する予熱工程、乾燥工程、冷却工程を適切に実施することができる。
【0078】
洗浄工程(S120)では、排気ファン22を間欠運転して、給気部8からの外気の給排気を行う。洗浄工程では、ヒータ21からの乾燥風の給排気が行われないので、マット状部材(布団F)を適切に冷却することができる。
【0079】
図17は、蒸気(流体)噴霧部6を示す模式図である。
蒸気噴霧部5に代えて、蒸気噴霧部6を載置台31の左右両側に配置してもよい。
蒸気噴霧部6は、載置台31の載置面35の傾斜する二側面のみならず、頂部の湾曲面にも対応する形状を有する。蒸気噴霧部6は、載置台31(布団F)に向けて水蒸気を噴霧する多数のノズル(不図示)を備える。蒸気噴霧部6は、布団Fに密着して水蒸気を吹き付けてもよいし、布団Fから離れた位置から水蒸気を吹き付けてもよい。
これにより、載置台31に載せられた布団Fの表面のうち、左右の側方壁部26を向く面のみならず、上方壁部25向く面にも水蒸気を吹き付けることができる。したがって、布団Fの全面に水蒸気を吹き付けて洗浄することができる。
【0080】
図18は、蒸気(流体)噴霧部7を示す模式図である。
蒸気噴霧部5に代えて、蒸気噴霧部7を載置台31の内部空間Pに配置してもよい。
この場合には、ガスヒータ21等と排気ファン22等との位置を交換して配設することにより、流路を逆にする。すなわち、給気部8と排気部9が入れ替わる。
蒸気噴霧部7は、内部空間Pに向けて水蒸気を噴霧する多数のノズル(不図示)を備える。水蒸気は載置台31の内部から布団Fに流入し、布団Fを通過した水蒸気が流入孔群255に流入する。
蒸気噴霧部7を用いることにより、布団Fに水蒸気を吹き付けて洗浄させたり、布団Fに温風を当てて乾燥させたりできる。
【0081】
ノズル移動部56は、伸縮リンク57とエアシリンダ58を用いて噴霧バー54を平行移動させる場合に限らない。噴霧バー54にワイヤーを取り付け、このワイヤーを回転モータで巻き付ける等して噴霧バー54を移動させてもよい。
噴霧バー54は、水平方向に延在して上下方向に移動する場合に限らない。噴霧バー54は、上下方向に延在して水平方向に移動する場合であってもよい。
【0082】
蒸気(流体)噴霧部5の水蒸気発生器として、ガスヒータ21を利用してもよい。つまり、ガスヒータ21は、温風(熱風)を発生させるだけでなく、水蒸気も発生させる。そして、水蒸気を流入孔群255から洗浄乾燥空間D内に供給してもよい。このように、蒸気(流体)噴霧部5は、給気部8や洗浄乾燥空間Dに向けて流体(水蒸気)を噴霧してもよい。
【0083】
流体は、水蒸気に限らない。また、水蒸気をマット状部材に吹き付ける場合に限らず、水や高温のお湯等を霧状にしてマット状部材に吹き付けてもよい。
水蒸気に各種薬剤等を含ませてもよい。消臭剤、除菌剤、防ダニ剤などの薬剤を含む液体を蒸気にして、布団Fに吹き付けてもよい。このとき、マット状部材Fに効率よく薬剤等を浸透させるため、流入孔群255またはその前段の風路を塞ぐ機構を有してもよい。
【0084】
予熱工程S110、水蒸気洗浄工程S120、乾燥工程S130および冷却工程S140の処理時間は、マット状部材の性状等に応じて適宜調整してもよい。温風や水蒸気の温度も適宜調整してもよい。
【0085】
本実施形態では、マット状部材として布団Fについて説明したがこれに限定されるものではなく、カーペット、ラグ、マットレスなど繊維素材がマット状に形成された他のマット状部材であってもよい。
【0086】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1…洗浄乾燥機、 3…マット載置部、 5,6,7…流体噴霧部(蒸気噴霧部)
8…給気部、 9…排気部、 20…筐体、 24…制御部、 31…載置台
35…載置面、 50…噴霧部、 51…ノズル部、 54…噴霧バー
55…噴霧ノズル、 56…ノズル移動部、 60…搬送部、 D…乾燥空間
F…布団(マット状部材)、 C1…噴霧位置、 C2…退避位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19