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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025568
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】スラリー計量移送設備
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/26 20060101AFI20230215BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
B65D88/26 C
B01J4/00 105Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130893
(22)【出願日】2021-08-10
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ノンシール
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】鴻巣 一巳
【テーマコード(参考)】
3E170
4G068
【Fターム(参考)】
3E170AA15
3E170AB04
3E170CB06
3E170VA13
3E170WD07
3E170WD09
4G068AA02
4G068AB17
4G068AC16
4G068AD22
4G068AD44
4G068AE02
4G068AE05
4G068AF31
4G068AF40
(57)【要約】
【課題】食品廃棄物を含むスラリーを流路の閉塞なく安定して移送でき、その移送量を連続して計量することが可能なスラリー計量移送設備を提供する。
【解決手段】受入れタンクと、計量手段と、移送手段と、を備え、受入れタンクは、タンク本体と、排出部と、架台と、振動装置と、を有し、計量手段は、レベル計と、ロードセル計量器と、を有し、移送手段は、ホースポンプと、制御部と、を有し、前記制御部は、前記レベル計から出力される前記液面位置の情報に基づいて、前記液面位置が一定になるように、前記ホースポンプの動作を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品廃棄物を含むスラリーを計量して移送するスラリー計量移送設備であって、
計量前の前記スラリーを受け入れる受入れタンクと、
前記受入れタンクに収容されたスラリーの重量を連続して計量する計量手段と、
前記受入れタンクに収容されたスラリーを移送する移送手段と、を備え、
前記受入れタンクは、漏斗状のタンク本体と、前記タンク本体の下部に連なる排出部と、前記タンク本体を支持する架台と、前記タンク本体に振動を印加する振動装置と、を有し、
前記計量手段は、前記タンク本体内の前記スラリーの液面位置を検出するレベル計と、前記架台に形成されるロードセル計量器と、を有し、
前記移送手段は、ホースを局部的に狭窄させた狭窄部をホースの長手方向に移動させるホースポンプと、前記ホースポンプを制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記レベル計から出力される前記液面位置の情報に基づいて、前記液面位置が一定になるように、前記ホースポンプの動作を制御することを特徴とするスラリー計量移送設備。
【請求項2】
前記架台は、前記タンク本体に付帯する本体架台と、設置面に接する下部架台と、前記本体架台と前記下部架台との間に配される中間架台と、を有し、
前記本体架台と前記中間架台との間には、防振部材が配され、前記中間架台と前記下部架台との間には、前記ロードセル計量器が配されることを特徴とする請求項1に記載のスラリー計量移送設備。
【請求項3】
前記排出部には、流路開閉装置が設けられ、前記タンク本体と前記流路開閉装置の上部とは、エキスパンジョイントで接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスラリー計量移送設備。
【請求項4】
前記タンク本体の上部には、前記タンク本体内に前記スラリーを導入するシューターが配され、前記シューターと前記タンク本体の上部とは、防振材料で形成された伸縮幕で接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスラリー計量移送設備。
【請求項5】
前記タンク本体の上部、及び肩口には、前記伸縮幕、及び前記タンク本体内にそれぞれ散水を行う散水手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のスラリー計量移送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品廃棄物を含むスラリーを計量して移送するスラリー計量移送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
循環型社会形成推進基本法(平成十二年法律第百十号)に基づいて、食品循環資源の再利用等の促進に関する法律(以下、食品リサイクル法と称する)が制定され、食品廃棄物の減量化、再資源化の促進が図られている。
【0003】
食品リサイクル法は、食品廃棄物のバイオガス化を促進している。バイオガスは、廃棄物系バイオマスから生産されるバイオ燃料であり、メタンが主成分で都市ガスに近い気体燃料であるが、燃料以外にも窒素やリンなどの植物の栄養分回収、液肥、コンポスト原料にも利用することができる。食品廃棄物の処理と利用に関する技術としては、例えば、肥料化、飼料化、ファインケミカル化、食品素材化、建築物等の資材化、燃料化などが挙げられる。
【0004】
こうした食品廃棄物の性状は様々であり、発生源によって入荷物性状(例えばパッカー車のパッカー内容物)のバラツキと、食品廃棄物の入荷品単位間での性状のバラツキ(例えばパッカー車毎の地域、排出企業、業種等)がある。例えば、食品廃棄物由来のバイオガスを用いた発電事業所内では、配合の変更(例えば 副原料の使用、微生物・酵素・添加物の調整及び仕様変更、配合割合の変更、処理操作の変更等)により、こうしたバラツキにその都度対応している。
【0005】
従来、こうした食品廃棄物処理について、例えば、特許文献1には、菌床と共にホッパから投入された生ごみを粉砕器で粉砕し、ホースポンプにより1次発酵槽に移送され、この1次発酵槽では攪拌手段より空気が与えられ高温菌により急速に生ごみが発酵され減容され、その後、生ごみを2次発酵槽において細菌による発酵に適した堆積した環境で攪拌しながら2次発酵を行うことで、高効率の微生物による廃棄物の処理を行う有機性廃棄物処理装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、搬入された粉砕生ごみを上下方向に攪拌する攪拌翼、槽内を加熱する電気ヒータ、および粉砕生ごみが好気分解した液状物を落滴させるためのメッシュを有する第一分解槽、この第一分解槽から落滴した液状物を一時的に溜める貯留槽、排水口を上部に設けた第二分解槽、貯留槽に溜まった液状物を吸引して第二分解槽の上部から落下させるためのホースポンプを有する生ごみ処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-316132号公報
【特許文献2】特開平11-267622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の食品廃棄物の処理過程では、以下の課題があった。
(1)単位時間当たりの重量測定に関する課題
食品廃棄物スラリーに代表される、様々なサイズ、硬度の固形物や密度の異なる液体が混合された不安定性状流体の単位時間当たりの重量測定は、公知の流量計では正確に測定可能なものが少なく、かつ、計測精度が低いという課題があった。
(2)食品廃棄物スラリーの移送ポンプ選定と単位時間重量測定との整合に関する課題
単位時間重量測定に流量計で対応出来ない、または流量計測精度が低い場合、単位時間容積を把握できる容積式ポンプ(往復ポンプ、回転ポンプ)を選定し、(単位時間容積量×密度)による流量の算出をすることも考えられるが、不安定性状流体である食品廃棄物スラリーでは、密度が常に変動するために、容積式ポンプを使用した単位時間重量計測では高い測定精度を得られないという課題がある。
【0009】
(3)受入タンクからの排出不安定性の課題
多くの食品廃棄物バイオガスプラントでは、受入れた食品廃棄物は、[受入ホッパ]→[切出し装置]→[破砕機]→[破袋選別機:食品廃棄物スラリーとプラスチックの分離装置]→[受入タンク]→[移送ポンプ]→[調質槽]の順に移送されるのが一般的である。このうち、食品廃棄物スラリーを後段設備である調質槽まで送る際に、食品廃棄物の性状バラツキ(例えば、パッカー車収集の場合は、複数の排出事業所、地域、業種、等々)が、受入タンク内での食品廃棄物スラリーの性状バラツキに大きく影響する。このため、不安定性状流体である食品廃棄物スラリーは、受入タンクからの排出不安定性に課題があった。
【0010】
(4)食品廃棄物スラリーの移送ポンプの安定制御とポンプの仕様の課題
食品廃棄物スラリーの単位時間当たりの移送重量値を得ようとする場合、必要な数値は、単位時間容積値と密度になるが、両方の要素を得る事は困難な課題となる。即ち、容積を計量可能な最適な移送ポンプの選定と密度を計測する制御を含めた技術が必要となる。しかし、不安定性状流体である食品廃棄物スラリーでは、変動する密度を計測する事が必要となり、密度の変動に対応して食品廃棄物スラリーの密度を正確に計測できる測定手段は知られていない。よって容積式ポンプを制御しても単位時間重量を一定にした移送する事は困難であり、仮に変動する密度を連続的に計測できたとしても、ポンプは容積式に限定されるため、食品廃棄物スラリー内に混合する固体性状が不安定(サイズ・硬度)なために、単位時間重量値を測定することが困難であった。
【0011】
(5)受入タンクからホースポンプ入口までの経路閉塞の課題
食品廃棄物スラリーの移送のためのポンプとしてホースポンプを選定した場合、ホースの内径が律速となり、受入タンクの出口径が大きい場合はホースの内径に合わせて内径を縮小する必要があり、縮径区間において食品廃棄物スラリーが閉塞しやすいという課題が生じる。
【0012】
(6)受入タンクを振動させた場合の計量精度低下の課題
受入タンク内での閉塞防止用に、タンク全体を振動させた場合、ロードセル計量器の計量精度が低下するという課題が生じる。
【0013】
以上のように、従来の食品廃棄物スラリーの移送処理設備は、密度が変動する食品廃棄物スラリーを、流路が閉塞することなく安定して移送しつつ、その移送量を連続して計量することが困難であるという課題があった。
【0014】
本発明は、食品廃棄物を含むスラリーを流路の閉塞なく安定して移送でき、その移送量を連続して計量することが可能なスラリー計量移送設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明のスラリー計量移送設備は、食品廃棄物を含むスラリーを計量して移送するスラリー計量移送設備であって、計量前の前記スラリーを受け入れる受入れタンクと、前記受入れタンクに収容されたスラリーの重量を連続して計量する計量手段と、前記受入れタンクに収容されたスラリーを移送する移送手段と、を備え、前記受入れタンクは、漏斗状のタンク本体と、前記タンク本体の下部に連なる排出部と、前記タンク本体を支持する架台と、前記タンク本体に振動を印加する振動装置と、を有し、前記計量手段は、前記タンク本体内の前記スラリーの液面位置を検出するレベル計と、前記架台に形成されるロードセル計量器と、を有し、前記移送手段は、ホースを局部的に狭窄させた狭窄部をホースの長手方向に移動させるホースポンプと、前記ホースポンプを制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記レベル計から出力される前記液面位置の情報に基づいて、前記液面位置が一定になるように、前記ホースポンプの動作を制御することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、レベル計からの検出信号に基づいてタンク内のスラリー液面を一定に保ち、ロードセル計量器によってスラリー重量を連続的に測定しているので、スラリー密度を連続的に把握できるとともに、ホースポンプの回転数からスラリーの移送容量を把握することができる。こうしたスラリー密度とスラリーの移送容量を積算することでスラリーの移送重量を正確に算出できる。これにより、通常の流量計では計測が困難な食品廃棄物を含むスラリーの単位時間当たりの移送重量の測定が可能となった。よって、食品廃棄物のバイオマスガスプラントなどにおいて、重要な運転指針となるマテリアルバランス上のフィード重量の把握を可能にすることができる。
【0017】
また、本発明では、前記架台は、前記タンク本体に付帯する本体架台と、設置面に接する下部架台と、前記本体架台と前記下部架台との間に配される中間架台と、を有し、前記本体架台と前記中間架台との間には、防振部材が配され、前記中間架台と前記下部架台との間には、前記ロードセル計量器が配されていてもよい。
【0018】
また、本発明では、前記排出部には、流路開閉装置が設けられ、前記タンク本体と前記流路開閉装置の上部とは、エキスパンジョイントで接続されていてもよい。前記流路開閉装置としては、例えば、ゲートバルブ等を利用できる。
【0019】
また、本発明では、前記タンク本体の上部には、前記タンク本体内に前記スラリーを導入するシューターが配され、前記シューターと前記タンク本体の上部とは、防振材料で形成された伸縮幕で接続されていてもよい。
【0020】
また、本発明では、前記タンク本体の上部、及び肩口には、前記伸縮幕、及び前記タンク本体内にそれぞれ散水を行う散水手段が設けられていてもよい。前記散水手段は、複数設けられていてもよく、例えば、伸縮幕内へのスラリーの固着防止用と、タンク本体内のスラリーの固液比調整用の二つであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、食品廃棄物を含むスラリーを流路の閉塞なく安定して移送でき、その移送量を連続して計量することが可能なスラリー計量移送設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るスラリー計量移送設備を示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係るスラリー計量移送設備を用いた食品廃棄物の処理の流れを示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係るスラリー計量移送設備の構成を段階的に示した説明図である。
図4】タンク本体の上部開口端とシューターの開口端との間に形成される伸縮幕を示す断面図である。
図5】タンク本体の上部開口端に形成される散水手段を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明において用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るスラリー計量移送設備を示す概略構成図である。
また、図2は、本発明の一実施形態に係るスラリー計量移送設備を用いた食品廃棄物の処理の流れを示すフローチャートである。図3は本発明の一実施形態に係るスラリー計量移送設備の構成を段階的に示した説明図である。
【0025】
スラリー計量移送設備10は、食品廃棄物のスラリー(液体中に固体が混ぜ合わされたもの)を受け入れて、単位時間当たりの移送重量を計量しながら移送する設備である。ここで、計量、移送対象のスラリーは、様々な形態の食品廃棄物を粉砕して水と混合することで形成され、食品廃棄物の種類によって、形成されるスラリーの密度が変動する。
スラリー計量移送設備10は、受入れタンク11と、計量手段12(42,43)と、移送手段13と、を少なくとも備えている。
【0026】
受入れタンク11は、漏斗状部分を持つタンク本体21と、散水口24bとタンク本体21を支持するタンク本体架台(本体架台)45と、を有している。また、タンク本体21の下部に排出部22が連なる。
タンク本体21は、例えば、全体が鋼材によって形成され垂直方向途中から四角錐状となるタンクであり、上部開口端21aから下部開口端21bに向けて、水平方向の断面積が漸減するように四方の傾斜する側面板から構成されている。
【0027】
こうした四角錐状部を持つタンク本体21では、それぞれの側面板の傾斜角度を適宜選択することで、スラリーのブリッジ発生防止の手段にすることができる。タンク本体21は、後述する振動装置41による振動で変形しない程度の剛性構造を持つことが好ましい。
【0028】
タンク本体21の内面は、できるだけ摩擦抵抗の少なく、かつ、スラリーが付着しない事が望ましい。このため、タンク本体21の内面は、例えば、SUS磨き面加工、高分子樹脂板設置、樹脂コートなどを行うことが望ましい。
【0029】
本実施形態のように、四角錐形を持つタンク本体21においては、内部のコーナー部分にスラリーの固化、堆積が進行しないように、樋状のR加工をすることが好ましい。また、タンク本体21には スラリーの付着しない位置に、内部点検用の窓を設置することも好ましい。
【0030】
タンク本体21の上部開口端21aには、タンク本体21内にスラリーを導入するシューター31が接続されている。シューター31の上流側には、食品廃棄物を受け入れる受入れホッパ、食品廃棄物を粉砕する粉砕機、粉砕した食品廃棄物に含まれるプラスチック(食品トレー、ラップ等)を選別する破袋選別機などが設けられている(図2を参照)。また、破袋選別機で取り除かれたプラスチック(廃プラ)は、廃プラ処理設備で処理される(図2を参照)。
【0031】
図4に示すように、タンク本体21の上部開口端21aと、シューター31の開口端との間の隙間は、伸縮幕(防振ジャバラ)25によって閉塞されている。伸縮幕25は、タンク本体21が後述する振動装置41によって振動する際に、振動がシューター31に伝播しないように、ゴムシートなどの防振材料によって形成されている。また、伸縮幕25は、タンク本体21の上部開口端21aとシューター31の開口端との隙間の変動を吸収可能なように、例えば、上下左右に弛むように形成されている。
【0032】
また、タンク本体21に振動が加わった状態でスラリーが伸縮幕25に接触すると、摩耗穴あきによる漏洩、タンク本体21の振動の阻害要因となるため、シューター31からタンク本体21の内部まで延びる投入部シューター内筒32を設けることもできる。
【0033】
図5に示すように、タンク本体21の上部開口端21aには、タンク本体21内に散水を行う散水手段24aが形成されている。本実施形態では、シューター31と伸縮幕25との隙間には、直接スラリーが接触しない構造であるが、スラリーの飛沫、撥ね返り等の蓄積で隙間に堆積物が固着する可能性があるため、こうした散水手段24aから適宜、散水を行うことで、上部開口端21aへの堆積物の固着を防止する。散水手段24aで使用する水は、固形分を含まない浄水が望ましい。散水箇所は、例えば、10~20cm程度の間隔にすることが好ましく、散水流量もコントロールすることが好ましい。
【0034】
スラリーの固液比で固体成分が多い場合、散水手段24bで別途計量された水を散水口44より散水することで、固液比を変え流動性向上と、タンク本体21に振動を加えた時に、タンク本体21の内面に水の膜を形成し摩擦係数を下げることができる。散水手段24bで使用する水は後段設備からの循環水でもよい。
【0035】
タンク本体21には、振動装置41および計量手段を構成するレベル計42が設けられている。
振動装置41は、タンク本体21の外面に形成され、タンク本体21に振動を加えることにより、タンク本体21の内部に貯留されるスラリーを流動状態にする。本実施形態の振動装置41としては、例えば、バイブレータを用いることができる。
【0036】
バイブレータは、スラリーが下部開口端21bに向かっていく流れを強振動により作る。タンク本体21内の閉塞防止対策としてのバイブレータによる加振は、弱加振から強加振になるほど効果はあるが、必要以上に加振する必要はなく、取扱いスラリーにより加振力を調整する。
【0037】
バイブレータによる加振の強度は、インバータによる回転数制御、及びバイブレータのバランサ角度、バイブレータ自体の加振力、加振数、バイブレータの取付方向などによって調整することができる。
【0038】
バイブレータによるタンク本体21の振動は、タンク本体21の一部(例えば側面板)だけを振動させるのではなく、タンク本体21全体を振動させることが好ましい。
これは、タンク本体21が剛性体であり、且つタンク本体21の振動を抑制するような締結部がないためにタンク本体21の全体が振動する、具体的には伸縮幕25、防振ゴム49、エキスパンジョイント58で、タンク本体21とは、あそびをもって連結されている。
【0039】
こうしたバイブレータは、スラリーに対して加振するために、振動数の多く、強振動をさせるバイブレータが好ましい。また、バイブレータは、ポール数により回転数が変化する。例えば、50Hzでは、8ポール(750rpm)、6ポール(1000rpm)、4ポール(1500rpm)、2ポール(3000rpm)となる。
【0040】
通常、バイブレータでの加振によるスラリーの閉塞防止は、スラリーを物理的に動かすことにより、ブリッジを破壊して重力方向に排出を促すことが使用理由である。食品廃棄物のスラリーの性質から、タンク本体21内のスラリーを物理的に動かすことに加え、振動数の多い加振によって、タンク本体21の内表面に水被膜が形成され、タンク本体21の内表面とスラリーとの摩擦抵抗が減少し、スラリーを重力により垂直方向に移動させる効果が得られる。よって、食品廃棄物のスラリーに対応するには、バイブレータの回転数が1000rpmを超えることが好ましく、例えば 2ポール若しくは4ポールのバイブレータとインバータ制御を用いることが好ましい。これは、スラリーの固液比が「固体>液体」である時に、特に有用である。また、バイブレータの回転数に上限はないが、例えば、5000rpm以下である。
【0041】
バイブレータの振動数は、あらかじめ回転数の多いバイブレータとインバータの組合せにより調整する。振動の強度が同条件下でのスラリーの排出量に比例する事から、強加振が望ましいが、上述のように、必要以上に加振する必要はなく タンク本体21の部材強度にも影響することから、加振強度に関しては、バイブレータに大きめの加振モーターを加振調整して使用する事が好ましい。
例えば、バイブレータメーカーの選定では、ホッパ板厚を基準に選定表から型式を選ぶが、ホッパ全体が剛性である事より、ランク上のバイブレータの選定が可能となる。
【0042】
本実施形態では、振動装置41を構成するバイブレータは、四角錐状部のタンク本体21の対向する側面板にそれぞれ1つずつ、合計2つ形成している。バイブレータによる振動はバイブレータのバランサ調整機能とインバータ調整機能を持つことが好ましく、スラリーの性状により調整幅を大きく持つことが好ましい。
【0043】
レベル計42の計測部は、タンク本体21の内側に形成され、タンク本体21に貯留されるスラリーのタンク本体21内での液面位置を検出する。レベル計42は、例えば、静電容量式のレベルメーターを用いることができる。こうした静電容量式のレベルメーターは、測定対象として、粘性液体や界面を有する液体、発泡している液体などの液面も検出することができ、食品廃棄物のスラリーの液面検出に最適である。
【0044】
レベル計42は、本実施形態では、センサー部に付着防止加工(コート処理)が施された、振動に強い電極分離型の静電用容量式レベル計を用いている。レベル計42の測定値信号は、制御部60に出力される。
【0045】
スラリーの単位時間当たりの移送重量測定は、スラリー密度とスラリーの移送容量を積算することで計測できる。スラリーの移送容量は回転数計測器付きのホースポンプを用いることで、ロータの1回転内容積×回転数、で求められ、スラリー密度は、内容物(スラリー)重量を定容積で除算することより求められる。後述するロードセル計量器43にタンク本体21の定容積(スラリーの液面位置)を計測するレベル計42を設けることによって、スラリーの単位時間当たりの移送重量の連続した自動化計量が可能になる。
【0046】
バッチでのスラリー密度測定でも簡易な単位時間あたりの重量測定は可能であるが、大きな違いは計量精度と減量質量計量(ロスインウェイト)式(タンク本体21への投入と排出を同時に行う)の連続単位時間での重量測定が可能になることであり、レベル計42とロードセル計量器43とを両方備えることにより可能となる。
【0047】
即ち、レベル計42とロードセル計量器43とを両方備えることによる連続単位時間での重量測定方法としては、定容積制御で、タンク本体21のレベル任意点をM(M位置での内容積)とすると、M位置になるように移送手段(ホースポンプ)13に回転数制御をかけ、M位置を常時保持する。そして、「M位置でのタンク本体21内の重量値(総重量-空重量)÷M位置での容積=密度」を求め、密度値×ホースポンプから得た単位時間容積(m/h)で、単位時間あたりのスラリーの移送重量(ton/h)が得られる。これにより、タンク本体21への投入量や排出量に影響されずに連続データが得られる。
【0048】
タンク本体21は四角錐状部で下部が傾斜しているため、レベル計42の設置方法として、タンク本体21の内面とレベル計42との間の距離を、タンク本体21の下部に向かって面間距離が広がるように設置することが望ましい、これは、タンク本体21の内面とレベル計42との間に、スラリーの固形物が挟まる可能性があるため、挟まった固形物を抜けやくする効果があり、タンク本体21に振動を加える振動装置41との併用によって、更に効果的になる。
【0049】
架台23は、タンク本体21を支持する防振部材49に接する中間架台46とロードセル計量器43、ロードセルを支持する下部架台47から構成されている。
【0050】
架台23のロードセル計量器43を除く部分は、鉛直方向に延びる4本の支柱と、この支柱どうしを接続する、水平方向に延びる接続材とからなり、全体が四角筒状を成している。中間架台46、および下部架台47は、互いに独立して形成されている。
【0051】
タンク本体架台45は、タンク本体21の対向する2つの側面板の外面に位置する。
【0052】
中間架台46は、タンク本体21を支持する防振部材49とロードセル計量器43、ロードセルを支持する下部架台47との間に配される矩形(直方体)の枠体からなる。中間架台46は、タンク本体21に対して防振部材49を介して接続されている。
【0053】
中間架台46は、4つのロードセル計量器43のそれぞれに均等な荷重配分をする重要な架台であり、防振部材49を介して上部にある振動するタンク本体21の伝播振動、及び荷重による変形を排した剛性の架台である。
【0054】
中間架台46上のタンク本体21にて偏荷重、局部振動が起きたとしても、ロードセル計量器43には、中間架台46により、各支点にほぼ同加重、同振動で伝えられることになる。例えば、実荷重がロードセル計量器43の許容総荷重の10倍以上の負荷であっても、歪の極めて少ない剛性架台とすることが望ましい。
【0055】
中間架台46とロードセル計量器43との間は、アジャスタ構造(ジャッキボルト調整)とし、ロードセル計量器43に均等荷重が加わる構造とする、特に4点支持の場合、水平度はゼロにはならず、3点支持になりやすいので、アジャスタ機構は重要である。また、ほぼ均等に負荷のかかる3点支持の場合であっても、アジャスタを設置することが望ましい。
【0056】
こうした中間架台(中間剛性架台)46を介して重量測定を行うことにより、特定のロードセル計量器43に負荷が集中しないので、(a)タンク本体21からの伝播振動に対する計量精度の保持、(b)ロードセル計量器43の保護、(c)ロードセル計量器43の4点支持では、最小の振動でほぼ4点に安定した荷重値の取得、といった効果を得ることができる。
【0057】
なお、タンク本体21内にスラリーの閉塞等が生じた場合、或いはタンク本体21内面の摩耗による修理等の場合に備えて、中間架台46の梁の一面(例えば上側1本)を着脱自在な構造とし、タンク本体21を横方向に移動させる事が可能な構造としておくことが望ましい。
【0058】
また、下部架台47は、中間架台46の下部に配される矩形(直方体)の枠体からなる。下部架台47は、中間架台46に対して、ロードセル計量器43を介して接続されている。また、下部架台47の底部は、受入れタンク11を設置する接地面Sに対して、例えばベースプレート54を介して固定されている。ベースプレート54は、下部架台47を固定する治具であり、下部架台47と接地面Sとの間で振動を伝播させないために、ボルトで締結せずに、下部架台47とベースプレート54との間に、更に防振部材55として防振ゴムを介して接続することが好ましい。
【0059】
下部架台47は、ロードセル計量器43の最大負荷荷重に耐え、歪まない構造の剛性架台であることが望ましい。こうしたロードセル計量器43を支える下部架台47は、動荷重強度、静加重強度と水平度が重要であることから、ベースプレート毎に独立した架台構造よりも一体型の剛性架台構造であることが望ましい。下部架台47が振動によってズレ動くことを防止するストッパー構造や、位置決め(移動防止)構造を更に具備することも好ましい。
【0060】
防振部材49は、例えば、防振ゴムからなり、振動装置41を構成するバイブレータによってタンク本体21に加えられる振動が、中間架台46に伝播することを抑制し、更にロードセル計量器43への振動伝播を大幅に減少させる。
【0061】
防振部材49は、タンク本体21内のスラリーの滞留防止のためのバイブレータによる加振(特に強振動)を吸収し、下部に配された中間架台46に振動を極力伝えないことを目的としている。これにより、タンク本体21に著しい偏荷重・偏振動があったとしても、防振部材49を介し、中間架台46からロードセル計量器43への振動は 4支点ともに均一にされたものとなる。防振部材49は、加振力の大きな機械に対応可能で横方向の剛性が大きい防振ゴムを用いることが望ましい。
【0062】
ロードセル計量器43は、中間架台46を構成する4本の支柱ごとにそれぞれ設けられ、中間架台46から上側の構造物(タンク本体21等)、および貯留されるスラリーの重量を連続して測定する。なお、これらの重量は、4つのロードセル計量器43の値を全て加算することで得られる。ロードセル計量器43の測定値信号は、制御部60に出力される。
【0063】
ロードセル計量器43は、高容量式(高剛性タイプ)のロードセル計量器を用いることが望ましく、避雷等で故障した場合を想定し、交換できるスペースと負荷をゼロにする中間架台46の上下移動を考慮することが好ましい。ロードセル計量器43は、1支点~4支点までの選択肢があるが、上に乗せる中間架台46の形状にもよるが、4支点の使用がレイアウト上は望ましい。
【0064】
ロードセル計量器43の設置条件として、振動の少ない機械的に高剛性の中間架台46を使用する必要がある。食品廃棄物由来の不安定性状流体であるスラリーを、タンク本体から排出する場合、排出不安定性(排出量が一定しない、ブリッジの発生)という課題がある。一般にタンク等から排出不安定な内容物の排出対応策として、打撃による排出促進、内部撹拌、棚吊り防止材の吊下げ(ブリッジ防止)、エアーレーション、バイブレータによる加振などの方法がある。内容物が食品廃棄物のスラリーの場合、それぞれの解決策に得失があるが、本実施形態では、閉塞防止構造のタンク本体21と、タンク本体21の加振を組合せて、排出量を安定化し、ブリッジの発生を防止している。
【0065】
ロードセル計量器43の選定として、耐振動に優れたロードセル計量装置を選定する。本実施形態で使用するロードセル計量器43は、自動はかりに属し、自動はかりとは、静止状態で計量する非自動はかりに対して、計量結果を得るために所定のプログラムに従って動作し、計量過程で操作者の介在を必要としないはかりのことで、例えば、ホッパスケール、充填用自動はかり、コンベヤスケール、自動捕捉式はかり等が挙げられる。自動はかりは、動的計量または非常に短い間隔での静止計量を行っており、言い換えるならば計量値が安定するまでの待ち時間を設ける事ができないことが特徴である。
【0066】
こうした自動はかりでは、計量物自体及び計量装置が、計量中の振動源であることが多く、更には接地面から伝わる周囲環境からの振動も影響する。ソフト面では、振動による信号ノイズ対策として、ローパスフィルタの使用、ひずみ増幅器や、ロードセル指示計には、安定したゼロ点、感度、安定した電圧電流の印加電源が必要であり、ノイズが少なく、高分解能であることもロードセル計量器43には重要な点である。
【0067】
また、ハード面では、ロードセル計量器43の高剛性化、ロードセル計量器43を乗せる振動の少ない機械的に高剛性の架台(下部架台47)の使用、風雨の直撃のない設置場所、急激な温度変化や太陽光に暴露されない工夫も必要となる。一般的使用方法に於いては、動的計量であっても、強度に振動する物の重量計量には不向きで、ロードセル計量器43の故障の原因、振動による計測値の誤差等が生じる。
【0068】
こうしたロードセル計量器43は、近年技術的進歩が進んでおり、ここで選定するロードセル計量器43に於いては、高剛性化型で、計量数値精度がKg単位で必要充分であることから、振動に対しての許容値が大きい高容量のロードセル計量器43を選定する。
例えば、タンク本体21の充填状態総重量を2tonとすると、ロードセル計量器43は、定格容量4.7ton、非直線性0.02%を選定し、4個組込みとしている。その場合、ロードセル計量器43の総定格容量は、4.7×4=18.8ton、計量精度は 4.7ton×4個×0.02%×1,000=3.76Kgとなる。
【0069】
通常は、計量精度を維持するために、総重量の1.5~2倍定格のロードセル計量器43を選択するが、例えば、総重量2ton計量に対して、ロードセル計量器43の総定格容量は18.8tonである事から、9倍以上の容量であり、よって振動に対する許容値も大きくなり、精度に関してはその分下がるが、必要充分であり、実機での使用状況では、1Kg単位での計量値が確認できている。
【0070】
振動に関しては、ロードセル計量器43の選定に加え、更に振動対策が重要なポイントであり、単に高剛性、高容量のロードセル計量器43を選定するのではなく、組合せ技術が重要となる。タンク本体21の重量測定にロードセル計量器43を用いる場合、バイブレータを強加振する場合の計量精度の不安定化、及びロードセル計量器43自体の物理的損傷が生じる懸念があるため、本実施形態では、新たな組合せ構造で、バイブレータを強加振しながらの連続計量が可能な構成にした。
【0071】
排出部22は、タンク本体21の下部開口端21bと移送手段13を構成するホースポンプとを接続するスラリー移送用の配管である。排出部22は、異径の管どうしを接続する径違いエルボ22aや偏心異径レジューサ22bを備えている。また、排出部22の経路上には、圧力計57が更に形成されていることも好ましい。
【0072】
また、排出部22には、ゲートバルブ(流路開閉装置)59が設けられている。こうしたゲートバルブ59は、スラリーの移送経路を遮断することができる。
【0073】
タンク本体21の排出部22におけるスラリーの閉塞防止として、タンク本体21の下部開口端21bの面積よりも上部開口端21aの面積を大きくすること、および、タンク本体21内での閉塞を防ぐために、下部開口端21bをできるだけ大きくすることが挙げられる。
【0074】
一般的に使用されているホースポンプの流入口の内径は、一般的にはφ5mm~200mm程度で、食品廃棄物のスラリーに使用では、おおよそ60mm~150mmの範囲に入る。適用可能なホースポンプの推奨入出口接続口径は、例えばホース内径150mmの場合、1サイズ大きなJIS175A(内径:180mm)が推奨されている。よって、配管内の溜まりを防ぐ為に、ポンプ直前には偏心異径レジューサ22b等で接続する必要がある。例えば、タンク本体21の下部開口端21bの断面積を300A(内面積730cm)、ホースポンプの流入口の内径を100A(内面積87.3cm)では、730:87.3=100:8.36の断面積比率となる。
【0075】
よって、排出部22の閉塞を防ぐためにも、一カ所で極端に断面積を絞るのではなく、径違いエルボ22aや偏心異径レジューサ22b等を使用し、徐々に断面積をタンク本体21の下部開口端21bからホースポンプの流入口に向けて縮小していくことが好ましい。
【0076】
移送手段13を構成するホースポンプは、ローターの周面に間欠的に形成されたスライディング・シューによって、柔軟なホースを局部的に狭窄させた狭窄部をホースの長手方向に移動させることで、スライディング・シューどうしの間のスラリーを移送するポンプである。即ち、スライディング・シューによって押しつぶされた特殊強化ホースの弾性復元力によって真空吸収力が発生し、スラリーを吸込み、スライディング・シューの移動により吐出するノンシールタイプの容積式ポンプである。
【0077】
不安定性状流体である食品廃棄物のスラリーの単位時間あたりの重量測定を可能にするためには、回転数計測器付きのホースポンプを用いることが好ましい。即ち、非容積式のポンプは吐出量が常に一定でないことから容積式ポンプを選定する。また、容積式ポンプであっても、往復動ポンプと回転ポンプとがあり、スラリーに含まれる固体の大きさによる吸引不良の発生、スラリーに含まれる固体の硬度による摩耗及び噛み込み、ポンプ自体のコストなどを勘案すると、食品廃棄物のスラリーを移送する移送手段13としては、ホースポンプを選定することが最適である。
【0078】
ホースポンプは、高濃度スラリー、摩耗性スラリー、固形混合液、せん断を嫌う流体に使用可能であり、渦巻き羽根やスクリューを使用しておらず、ホースを圧縮・復元する事で流体を吸込・吐出する構造のため、高粘度液・高濃度スラリー、固体混合液など幅広い液体を移送する事ができ、スラリーに含まれる固形物が潰されずに移送出来るため、液質変化がない。また、高い吐出圧力(例えば、1.47MPa)、およびホースの強力な弾性復元力により高真空(例えば、到達真空度40Torr以上)が発生し、高い自吸能力を有する。
【0079】
また、ホースポンプは、ノンシールのために空回転が発生せず、撹拌作用なくスラリーを移送可能であり、デッドコーナーがないため、スラリーがスムーズにポンプ内を通過できる。更に、正転、逆転運転が可能であり、高弾性なポンプホース(耐圧力、耐摩耗力、長寿命)によってメンテナンスが容易である。
【0080】
また、スラリーに接触するギヤ等が無く、接触はホース内面に限定されるので、クリーニングが容易であり、ホース交換の際には、ポンプ本体の分解、駆動モーター取外しなどの必要がなく、ポンプ本体を設置したままでホースを交換できるなど、メンテナンス性も非常に優れている。
【0081】
食品廃棄物のスラリーを移送する際のホースポンプの使用上の条件として、ホースポンプは、食品液状廃棄物の移送の使用例はあるが、スラリー液に使用するホースポンプの選定には、更に次の条件を満たすことが好ましい。
(1)ホースを変形させて定容積移送するホースポンプであるが、ホース変形後の形状回復方法は強制的なガイドローラーを使用した方式では耐久性に難があり、自力形状回復に耐えるホースを持つガイドローラーレスのホースポンプを用いることが望ましい。
(2)ホースポンプとして、計量用に回転数を把握できる機構が必要である。
(3)ホース自体の摩耗対策・摩擦熱対策として、ポンプケース内には油充填されている構造が望ましい。
(4)ホースに亀裂、穿孔が生じた場合に早期発見できる機能が具備されていることが望ましい。
(5)スラリー液に含まれる固形物のサイズは、ホース内径の1/3以下が望ましい。1/3以上の場合は前段設備で破砕する事を検討する。
【0082】
制御部60は、例えばマイクロコンピュータなどから構成され、レベル計42から出力されるタンク本体21内のスラリーの液面位置信号に基づいて、移送手段13を構成するホースポンプの動作、即ち、ローターの回転数を制御して、液面位置が一定になるようにホースポンプを制御する。また、制御部60は、移送されたスラリーの積算移送重量などをメモリに記憶する。
【0083】
移送手段13から排出された食品廃棄物のスラリーは、例えば、メタン発酵槽(バイオリアクター)でバイオガスを製造する原料として用いられ、バイオガスは脱硫塔などを経て発電システムに供給される(図2を参照)。また、メタン発酵槽で生じた分離液は、汚泥処理設備で処理した後に放流すればよい。
【0084】
以上の様な構成の本実施形態のスラリー計量移送設備10の作用を説明する。
スラリー計量移送設備10は、前段設備より、食品廃棄物のスラリーを受入れタンク11で受け入れて、このスラリーをタンク本体21に貯留し、排出部22を介して移送手段(ホースポンプ)13によって移送する。この時、制御部60は、タンク本体21内のスラリーの液面位置信号に基づいて、液面位置が一定になるようにホースポンプを制御する。
【0085】
食品廃棄物のスラリーの単位時間当たりの移送重量測定の制御は、例えば以下の通りである。
(1)レベル計42によるタンク本体21内のスラリー液面位置の連続測定を行う。定容積を維持する事となる。
(2)移送手段13の可変速制御により、液面位置が一定になるように制御する。例えば、タンク本体の満位置×30%を液面位置として設定する。
(3)ロードセル計量器43により、タンク本体21内のスラリーの実重量を連続測定する。
(4)タンク本体21内のスラリー実重量÷定液面位置でのスラリー保管容量=スラリー密度を算出する。
(5)ホースポンプのローター回転数(単位時間)×ローター1回転当たりのスラリー移送容量=単位時間あたりのスラリー移送容量を算出する。
(6)ホースポンプの1時間当たりのスラリー移送容量(m/h)×スラリーの平均密度(ton/m)=スラリーの1時間当たりの移送重量を算出する。
(7)ホースポンプのローターの一回転当たりのスラリー移送容量(m/回)×スラリーの平均密度(ton/m)=瞬間(ローター1回転毎)のスラリー移送重量を算出する。
【0086】
以上のように、本実施形態のスラリー計量移送設備10によれば、通常の流量計では計測が困難な、食品廃棄物を含むスラリーの単位時間当たりの移送重量測定が可能となった。これによって、食品廃棄物のバイオマスガスプラントなどにおいて、重要な運転指針となるマテリアルバランス上の調質槽へのフィード重量の把握が可能となった。
【0087】
また、スラリーの受入れタンク11の容量を、スラリー均質化を目的とした大容積化や撹拌機の設置を行わなくても、スラリーの供給内容(単位時間当たりのスラリー重量、スラリー容量)が把握できる事により、小容量型(小型)受入れタンクであっても、調質槽への安定供給が可能になる。
また、受入れタンク11を小型化できることによって、設備レイアウトの柔軟性を向上させることができる。
【0088】
また、受入れタンク11を、常時ロードセル計量器43により重量計量することと、静電容量式のレベル計42による常時計測とを用いることにより、どちらかに電気的な故障等の不具合が生じたときのバックアップ計量が可能となり、設備の不具合が瞬時に判明することで、スラリー計量移送設備10を含む食品廃棄物の処理プラント全体の操業安定性が保たれる事となる。
【0089】
なお、ここでいう電気的な故障とは、例えば、以下のようなものである。
(1)常時計量する重量値が 近傍の平均値±20%を超えた場合、レベル計異常
(2)レベル計-ホースポンプ制御稼働中に 重量値が0または∞に振れた場合、ロードセル異常
また、ここでいうバックアップ計量とは、例えば、以下のようなものである。
(1)レベル計異常時に重量制御値(仮の固定値)をもって運転
(2)ロードセル異常時にレベル制御値(仮の固定値)をもって運転
【0090】
また、受入れタンク11の形状や架台23の形状と、散水手段24a、24bと振動装置41によって、タンク本体21内のスラリーの閉塞や付着によるブリッジ等の発生を抑制することができる。
【0091】
バイブレータによる強加振において、タンク本体架台45、中間架台46、下部架台47、防振部材49、ロードセル計量器43の組合せ防振技術により、スラリーの安定した正確なロードセル計量が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
食品廃棄物の処理は、今後循環型社会構築促進の流れを背景に、未利用バイオマスとして有効利用が望まれている。その際、受入れる食品廃棄物の性状のある程度のバラツキはバイオガスプラントでは許容範囲として受入れる事を前提としているが、食品廃棄物を含むスラリーを流路の閉塞なく安定して移送でき、その移送量を連続して計量することが可能なスラリー計量移送設備は、正確なマテリアルバランスが得られることによる操業上および事業運営上役立つ。従って、本発明のスラリー計量移送設備は、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0093】
10…スラリー計量移送設備
11…受入れタンク
12…計量手段
13…移送手段(ホースポンプ)
21…タンク本体
22…排出部
23…架台
41…振動装置(バイブレータ)
42…レベル計
43…ロードセル計量器
図1
図2
図3
図4
図5