(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025602
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ウインドレギュレータ
(51)【国際特許分類】
E05F 11/48 20060101AFI20230215BHJP
E05F 15/689 20150101ALI20230215BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
E05F11/48 D
E05F11/48 E
E05F15/689
B60J1/17 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130950
(22)【出願日】2021-08-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏木 秀明
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA14
2E052EB01
2E052EC01
3D127AA17
3D127AA19
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF04
3D127DF09
3D127DF15
3D127DF26
(57)【要約】
【課題】 ヨーク部の重量に起因したモーメントによるドアパネルへの応力を低減することができるウインドレギュレータを提供する。
【解決手段】 キャリアプレート3と、ガイドレール2と、上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5と、ガイドレール2の下端部に固定された駆動部6と、ガイドレール2の上端部に固定されたプーリと、を備え、駆動部6は、回転ドラム42と、回転ドラム42を軸着した減速機51、及び減速機51の右側に隣接して配設されたヨーク部、を含む駆動モータ41と、を有し、ガイドレール2は、左右方向において、回転ドラムの右側のワイヤ繰出し位置P1からプーリ7に繰り出された上昇側ワイヤ4aのみと重なるように配設されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、
前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、
前記キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤと、
前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に固定され、前記上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤを駆動する駆動部と、
前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に固定され、前記上昇側ワイヤを方向転換する方向転換部と、を備え、
前記駆動部は、
回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラムと、
前記回転ドラムを軸着した減速機、及び前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の一方側に隣接して配設され、前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータと、を有し、
前記ガイドレールは、前記直交方向において、前記回転ドラムの前記直交方向の一方側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記回転ドラムの前記直交方向の他方側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されていることを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項2】
前記ガイドレールと前記ヨーク部とは、前記直交方向において重なるように配設されていることを特徴とする請求項1に記載のウインドレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドレギュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤ駆動式且つ下端レール式のウインドレギュレータとして、ガイドレールを、下降側ワイヤと重なるように配設したウインドレギュレータがある(特許文献1参照)。このウインドレギュレータは、車両の窓ガラスの昇降方向に沿って設けられるガイドレールと、ガイドレールと摺動して窓ガラスと共に移動するキャリアプレートと、キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ(上昇側ケーブル)及び下降側ワイヤ(下降側ケーブル)と、ガイドレールの下端部に固定された駆動部と、ガイドレールの上端部に配置された方向転換部(方向転換部材)と、を含んでいる。また、駆動部は、上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤの一端部が連結されたドラムと、ドラムを軸着した減速機、及び減速機の左側に隣接して配設されたヨーク部を含む駆動モータと、を有している。このウインドレギュレータでは、ガイドレールを、下降側ワイヤと重なるように配設したことで、ウインドレギュレータの幅寸法を小さくできるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のウインドレギュレータでは、ドア閉時に発生する衝撃によって、ヨーク部の重量に起因した、ガイドレールを回転支点とする強いモーメントが生じ、ドアパネルに強い応力がかかるという問題があった。これにより、ドアパネルを損傷又は湾曲させてしまう虞があるため、ドアパネルの板厚を厚くし剛性の高くする必要が生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、ヨーク部の重量に起因したモーメントによるドアパネルへの応力を低減することができるウインドレギュレータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、
前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、前記キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤと、前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に固定され、前記上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤを駆動する駆動部と、前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に固定され、前記上昇側ワイヤを方向転換する方向転換部と、を備え、前記駆動部は、回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラムと、前記回転ドラムを軸着した減速機、及び前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の一方側に隣接して配設され、前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータと、を有し、前記ガイドレールは、前記直交方向において、前記回転ドラムの前記直交方向の一方側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記回転ドラムの前記直交方向の他方側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されていることを特徴とするウインドレギュレータを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るウインドレギュレータは、ヨーク部の重量に起因したモーメントによるドアパネルへの応力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータ、及び、ウインドレギュレータが設けられた車両用ドアを示した全体概略図である。
【
図2】ウインドレギュレータ及びインナーパネルを示した側面図である。
【
図3】(a)は、窓ガラスの全閉状態におけるウインドレギュレータを示した正面図であり、(b)は、窓ガラスの半開状態におけるウインドレギュレータを示した正面図であり、(c)は、窓ガラスの全開状態におけるウインドレギュレータを示した正面図である。
【
図4】(a)は、キャリアプレート周りを示した正面図であり、(b)は、窓ガラスの半開状態におけるキャリアプレート周りを示した下面図である。
【
図5】キャリアプレートを示した正面図(a)、下面図(b)及び裏面図(c)である。
【
図6】プーリ周りを示した正面図(a)及び分解斜視図(b)である。
【
図7】駆動部周りを示した正面図(a)及び分解図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るウインドレギュレータについて説明する。このウインドレギュレータは、車両用ドアに取り付けられ、車両の窓ガラスを昇降する昇降装置である。特に、本ウインドレギュレータは、ガイドレールのレイアウトを工夫することで、駆動モータのヨーク部によって発生するモーメントを低減させる構造を採用したものである。なお、以下、窓ガラスの昇降方向、上昇方向及び下降方向を、単に昇降方向、上昇方向及び下降方向と呼称する。また、以下、各図に示す通り、左右、前後及び上下を規定して説明する。なお、本実施形態では、昇降方向とウインドレギュレータの上下方向とが一致し、車両の車幅方向とウインドレギュレータの前後方向とが一致しているものとする。また、昇降方向及び車幅方向に直交する方向が、ウインドレギュレータの左右方向となっている。
【0010】
(車両用ドアの構成)
ここで、
図1を参照し、ウインドレギュレータ1の説明に先駆けて、ウインドレギュレータ1が取り付けられる車両用ドアDについて説明する。この車両用ドアDは、自動車(車両)に設けられたものである。なお、
図1では、後述のアウターパネルを省略した車両用ドアDを図示している。
【0011】
図1に示すように、車両用ドアDは、ドア本体D1と、ドア本体D1に設けられたガラスガイド(図示省略)に沿って昇降自在に支持された車両の窓ガラスGと、ドア本体D1に取り付けられ、窓ガラスGを昇降させるウインドレギュレータ1と、を備えている。
【0012】
ドア本体D1は、窓ガラスGを格納する格納部D11と、格納部D11の上方に配設されたドアサッシD12と、を有している。格納部D11は、ドアパネルである車室内側のインナーパネルD13と車室外側のアウターパネル(図示省略)とを有しており、このインナーパネルD13とアウターパネルとの間に、ドア内部空間が形成されている。
図2に示すように、ウインドレギュレータ1は、このドア内部空間においてインナーパネルD13に取り付けられている。また、
図1に示すように、ウインドレギュレータ1は、ドア本体D1に対して車両前後方向の後方側に傾いて取り付けられている。
【0013】
(ウインドレギュレータの構成)
図3に示すように、ウインドレギュレータ1は、昇降方向に沿って設けられたガイドレール2と、窓ガラスGを支持すると共に、ガイドレール2に摺動自在に取り付けられたキャリアプレート3と、キャリアプレート3を牽引しガイドレール2に沿って昇降させる上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5と、ガイドレール2の下端部(昇降方向の一端部)に配設され、上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5を駆動する駆動部6と、ガイドレール2の上端部(昇降方向の他端部)に配設され、上昇側ワイヤ4を方向転換するプーリ7(方向転換部)と、を備えている。
【0014】
また、
図4に示すように、ウインドレギュレータ1は、上昇側ワイヤ4のキャリアプレート3側の端部に取り付けられた上昇側スライドブッシュ11と、上昇側スライドブッシュ11を介して、上昇側ワイヤ4に張力を付与する上昇側スプリング12と、下降側ワイヤ5のキャリアプレート3側の端部に取り付けられた下降側スライドブッシュ13と、下降側スライドブッシュ13を介して下降側ワイヤ5に張力を付与する下降側スプリング14と、を備えている。すなわち、このウインドレギュレータ1は、ワイヤ4、5を用いてキャリアプレート3を昇降するワイヤ駆動式のウインドレギュレータであると共に、駆動部6がガイドレール2の下端部に配設された下端レール式のウインドレギュレータである。
【0015】
図2に示すように、ガイドレール2は、昇降方向に沿って延在した長尺な金属製部材であり、上端部がインナーパネルD13に固定され、下端部が駆動部6(のドラムハウジング44)に固定されている。また、ガイドレール2は、車幅方向における車室外方向に向かって突出するように湾曲している。
【0016】
図4に示すように、ガイドレール2は、昇降方向に延在する平板部21と、平板部21の短手方向(昇降方向に直交する方向)における左右端部から前側に立設された右側板部22及び左側板部23(側板部)と、右側板部22の前端から右側に突出する右フランジ部24と、左側板部23の前端から左側に突出する左フランジ部25と、を有している。ガイドレール2は、左側板部23において、キャリアプレート3を摺動自在に支持している。
【0017】
図3に示すように、上昇側ワイヤ4は、一端部が駆動部6の回転ドラム42(後述する)に連結されており、駆動部6から上方に繰り出されてプーリ7に到り、プーリ7によって下方に方向転換された後、他端部がキャリアプレート3に取り付けられている。一方、下降側ワイヤ5は、一端部が駆動部6の回転ドラム42に連結されており、駆動部6から上方に繰り出されて他端部がキャリアプレート3に取り付けられている。
【0018】
そして、上昇側ワイヤ4のうちの、駆動部6とプーリ7との間に配索された上昇側ワイヤ4aは、ガイドレール2の平板部21上に位置しており、駆動部6とプーリ7との間に配索された上昇側ワイヤ4aとガイドレール2の平板部21とは、車幅方向(回転ドラム42の回転軸方向)から見て重なっている。上記したように、ガイドレール2は、車幅方向に湾曲しているため、駆動部6とプーリ7との間に配索された上昇側ワイヤ4aは、ガイドレール2の平板部21の上下方向中間部に対し、押圧接触している(
図2参照)。これにより、ガイドレール2の平板部21が、上下方向中間部において、駆動部6とプーリ7との間に配索された上昇側ワイヤ4aを支持するワイヤ支持構造として機能している。一方、上昇側ワイヤ4のうちのプーリ7とキャリアプレート3との間に配索された上昇側ワイヤ4bと、下降側ワイヤ5とは、ガイドレール2から外れた位置に位置し、当該上昇側ワイヤ4b及び下降側ワイヤ5とガイドレール2とは、車幅方向(回転ドラム42の回転軸方向)から見て、左右方向に位置ズレしている。
【0019】
図4及び
図5に示すように、キャリアプレート3は、例えばポリアセタール等の樹脂によって形成された板状の部材であり、ガイドレール2の平板部21に面して配設されている。キャリアプレート3には、窓ガラスGを取り付けるための左右2つの取付け孔31、31と、後面側(
図4中奥側)の左右方向中央に配設されたレール取付け部32と、レール取付け部32の左側に配設された上昇側収容部33と、上昇側収容部33の左側に配設された下降側収容部34と、後面側におけるレール取付け部32の右側に配設され、ガイドレール2の平板部21上の上昇側ワイヤ4aを避ける切欠き部35と、切欠き部35の右側下端部に配設され、駆動部6の位置規制部64が接触する被接触部36と、が形成されている。
【0020】
取付け孔31、31は、窓ガラスGに固定された図略のガラスホルダをボルト締結するためのものである。ボルトによって、取付け孔31、31にガラスホルダを締結することで、窓ガラスGがガラスホルダを介して、キャリアプレート3に取り付けられている。
【0021】
レール取付け部32は、ガイドレール2の左側板部23に対し摺動自在に取り付けられている。すなわち、キャリアプレート3は、このレール取付け部32によって、ガイドレール2の左側板部23に対し昇降自在に支持されている。
【0022】
図4に示すように、上昇側収容部33は、上昇側スライドブッシュ11及び上昇側スプリング12を収容している。これにより、上昇側収容部33には、上昇側スライドブッシュ11及び上昇側スプリング12を介して、上昇側ワイヤ4のキャリアプレート3側の端部が取り付けられている。一方、下降側収容部34は、下降側スライドブッシュ13及び下降側スプリング14を収容している。これにより、下降側収容部34には、下降側スライドブッシュ13及び下降側スプリング14を介して、下降側ワイヤ5のキャリアプレート3側の端部が取り付けられている。
【0023】
切欠き部35は、昇降方向に延在しており、この切欠き部35によって、キャリアプレート3が、駆動部6とプーリ7との間に配索された上昇側ワイヤ4aと接触しないようになっている。駆動部6とプーリ7との間に配索された上昇側ワイヤ4aの、ガイドレール2に対する離接は、ガイドレール2上における昇降方向の位置によって異なるため、切欠き部35の前後方向の深さは、上昇側ワイヤ4aがガイドレール2から最も離れるガイドレール2の上端位置又は下端位置に、キャリアプレート3が位置するとき(窓ガラスGの全開時又は全閉時)であっても、上昇側ワイヤ4aがキャリアプレート3に接触しない深さとなっている。
【0024】
図6に示すように、プーリ7は、上昇側ワイヤ4が巻き掛けられ、上昇側ワイヤ4を方向転換するプーリ本体37と、プーリ本体37を回転自在に支持するプーリシャフト38と、を有している。
【0025】
プーリシャフト38は、ガイドレール2の上端部に設けられたプーリ支持部26を貫通するようにして、当該プーリ支持部26に固定されている。また、プーリシャフト38の先端(後端)には、インナーパネルD13に固定するためのボルト部38aが形成されている。そのため、
図2に示すように、ガイドレール2の上端部は、プーリシャフト38によって、インナーパネルD13に固定されている。
【0026】
図7及び
図8に示すように、駆動部6は、正逆回転駆動可能な減速機51付きの駆動モータ41と、駆動モータ41によって回転駆動される樹脂製の回転ドラム42と、回転ドラム42を収容すると共に、駆動モータ41を保持する樹脂製のハウジング43と、を有している。ハウジング43は、ガイドレール2の下端部が嵌合すると共に回転ドラム42を回転自在に収容するドラムハウジング44と、駆動モータ41を保持するモータハウジング45と、を有している。
【0027】
回転ドラム42は、上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5の駆動部6側の端部が連結されており、回転することにより上昇側ワイヤ4及び下降側ワイヤ5の巻き取り及び繰り出しを行う。また、回転ドラム42は、右側のワイヤ繰出し位置P1(第1ワイヤ繰出し位置)から、上昇側ワイヤ4を繰り出すと共に、左側のワイヤ繰出し位置P2(第2ワイヤ繰出し位置)から、下降側ワイヤ5を繰り出す構成となっている。回転ドラム42の右側のワイヤ繰出し位置P1(上昇側ワイヤ4のワイヤ繰出し位置)は、左右方向(昇降方向に直交する直交方向)において、ガイドレール2に重なっているのに対し、回転ドラム42の左側のワイヤ繰出し位置P2(下降側ワイヤ5のワイヤ繰出し位置)は、左右方向において、ガイドレール2から位置ズレしている。これにより、左右方向において、回転ドラム42の右側のワイヤ繰出し位置P1からプーリ7に繰り出された上昇側ワイヤ4aと、回転ドラム42の左側のワイヤ繰出し位置P2からキャリアプレート3に繰り出された下降側ワイヤ5と、のうち、回転ドラム42の右側のワイヤ繰出し位置P1からプーリ7に繰り出された上昇側ワイヤ4aのみが、ガイドレール2と重なる構成となっている。
【0028】
駆動モータ41は、モータハウジング45に内蔵されると共に出力軸に回転ドラム42を軸着する樹脂製の減速機51と、減速機51の右側に隣接して配設され、減速機51を介して回転ドラム42を回転させるヨーク部52(モータ本体)と、を有している。ヨーク部52は、板金を積層して形成されたコアと、そのコアに巻き回される銅線と、コアの周囲に磁界を発生させるマグネットと、マグネットを保持するための金属製のヨークとから成り、大部分の部品が金属部品で構成された重量体となっている。特に、駆動部6や駆動モータ41の他の部品(減速機51、回転ドラム42及びハウジング43)が、樹脂製であるのに対し、ヨーク部52は、主に金属部品で構成されているため、ヨーク部52は、駆動部6及び駆動モータ41における高重量部となっている。さらに言えば、ヨーク部52は、ウインドレギュレータ1の高重量部であるといえる。
【0029】
駆動モータ41を正転駆動すると、回転ドラム42が正転し、これに伴って、下降側ワイヤ5が繰り出されつつ上昇側ワイヤ4が巻き取られる。これによって、キャリアプレート3が上昇側ワイヤ4に引っ張られ上昇方向に移動する。これにより、キャリアプレート3に取り付けられた窓ガラスGが上昇する(窓ガラスGの上昇動作)。一方、駆動モータ41を逆転駆動すると、回転ドラム42が逆転し、これに伴って、上昇側ワイヤ4が繰り出されつつ下降側ワイヤ5が巻き取られる。これによって、キャリアプレート3が下降側ワイヤ5に引っ張られ下方に移動する。これにより、キャリアプレート3に取り付けられた窓ガラスGが下降する(窓ガラスGの下降動作)。これらによって、キャリアプレート3及び窓ガラスGを、ガイドレール2に沿って昇降させる。
【0030】
ドラムハウジング44には、ドラムハウジング44をボルト61a、61aでインナーパネルD13に固定するための2つの固定孔61、61と、回転ドラム42を回転可能に収容するドラム収容部62と、ドラム収容部62の右上に配設され、ガイドレール2の下端部を嵌合する嵌合穴63と、嵌合穴63の前側(
図7(a)中手前側)に配設された位置規制部64と、が形成されている。位置規制部64は、窓ガラスGの全開状態において、キャリアプレート3の被接触部36と接触して、キャリアプレート3の下方への移動を規制する。
【0031】
嵌合穴63は、ガイドレール2の下端部が嵌合する。この嵌合穴63によって、ガイドレール2の下端部がドラムハウジング44に固定されている。嵌合穴63は、左右方向(昇降方向及び車幅方向に直交する方向)において、ドラム収容部62に収容された回転ドラム42の右側のワイヤ繰出し位置P1と重なるように配設されているため、嵌合穴63に嵌合されたガイドレール2と、回転ドラム42の右側のワイヤ繰出し位置P1とが、左右方向において重なるように配設されている。このため、ガイドレール2は、左右方向において、回転ドラム42の右側のワイヤ繰出し位置P1からプーリ7に繰り出された上昇側ワイヤ4aと重なる構成となっている。これにより、ガイドレール2を、駆動モータ41のヨーク部52に近づけることができる。本実施形態では、左右方向において、ガイドレール2とヨーク部52とが重なるように配設されている。
【0032】
モータハウジング45は、減速機51を内蔵しており、減速機51の出力軸を回転ドラム42に軸着させつつ、ドラムハウジング44のドラム収容部62の開口を覆っている。また、モータハウジング45には、モータハウジング45をドラムハウジング44に固定するための3つの固定部71、71、71が形成されている。なお、3つの固定部71のうちの一部は、左右方向において、ガイドレール2と重なる位置に配設されている。
【0033】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態の構成によれば、左右方向(昇降方向に直交する直交方向)において、ガイドレール2を、回転ドラム42の右側のワイヤ繰出し位置P1からプーリ7に繰り出された上昇側ワイヤ4aと、回転ドラム42の左側のワイヤ繰出し位置P2からキャリアプレート3に繰り出された下降側ワイヤ5と、のうち、右側のワイヤ繰出し位置P1からプーリ7に繰り出された上昇側ワイヤ4aと重なるように配設することで、ウインドレギュレータ1の幅寸法を小さくしつつ、ヨーク部52の重量に起因したモーメントによるインナーパネルD13への応力を低減することができる。
すなわち、車両用ドアDを閉めた時の衝撃によって、高重量部であるヨーク部52に車幅方向の強い慣性力が生じることで、ヨーク部52を力点とし、ガイドレール2を回転支点(回転軸)とし、インナーパネルD13への固定部分(固定孔61、61及びプーリシャフト38のボルト部38a)を作用点としたモーメントが発生する。そのため、ヨーク部52とガイドレール2とが左右方向(昇降方向に直交する直交方向)で離れているほど、梃子の原理で、インナーパネルD13に強い応力が発生することになる。
これに対し、上記実施形態の構成では、ヨーク部52が減速機51の右側に隣接する構成において、ガイドレール2が、回転ドラム42の右側のワイヤ繰出し位置P1から繰り出された上昇側ワイヤ4aと重なるように構成されているため、ガイドレール2に、ヨーク部52を近づけることができ、車両用ドアDの閉時に生じヨーク部52の重量に起因したモーメントによる、インナーパネルD13への応力を低減することができる。これにより、インナーパネルD13の損傷又は湾曲を抑制することができる。
また、従来のウインドレギュレータでは、車両用ドアDを閉めた時の衝撃によって、ヨーク部52の重量に起因した、ガイドレール2のねじれ方向の振動が発生して、ガイドレール2がキャリアプレート3に接触し打音が生じる虞があったが、左右方向でガイドレール2にヨーク部52を近づけたことで、ヨーク部52の重量に起因したガイドレール2の当該振動も低減することができ、ガイドレール2のねじれ、及びこれに伴うガイドレール2とキャリアプレート3との打音の発生も抑制することができる。
なお、これらの作用を鑑み、左右方向におけるヨーク部52(の例えば中心)とガイドレール2(の例えば中心)との距離は、左右方向におけるガイドレール2(の例えば中心)とインナーパネルD13への固定部分(の例えば中心)との距離以下であることが好ましい。
【0034】
また、駆動部6とプーリ7との間に配索された上昇側ワイヤ4aと、プーリ7とキャリアプレート3との間に配索された上昇側ワイヤ4bと、下降側ワイヤ5と、のうち、駆動部6とプーリ7との間に配索された上昇側ワイヤ4aのみ、ガイドレール2上に位置する構成であるため、ガイドレール2の幅寸法(左右方向の寸法)を小さくすることができる。これにより、ウインドレギュレータ1をより軽くすることができる。
【0035】
(その他の実施形態について)
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1:ウインドレギュレータ、 2:ガイドレール、 3:キャリアプレート、 4:上昇側ワイヤ、 4a:プーリと駆動部との間に配索された上昇側ワイヤ、 5:下降側ワイヤ、 6:駆動部、 7:プーリ、 41:駆動モータ、 42:回転ドラム、 51:減速機、 52:ヨーク部、 G:窓ガラス、 P1:右側のワイヤ繰出し位置、 P1:右側のワイヤ繰出し位置、 P2:左側のワイヤ繰出し位置
【手続補正書】
【提出日】2022-01-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、
前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、
前記キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤと、
前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に固定され、前記上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤを駆動する駆動部と、
前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に固定され、前記上昇側ワイヤを方向転換する方向転換部と、を備え、
前記駆動部は、
回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラムと、
前記回転ドラムを軸着した減速機、及び前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され、前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータと、を有し、
前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤは、前記回転ドラムの前記直交方向の第2側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤよりも、前記直交方向において前記ヨーク部に近く、
前記ガイドレールは、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されていることを特徴とするウインドレギュレータ。
【請求項2】
前記ガイドレールと前記ヨーク部とは、前記直交方向において重なるように配設されていることを特徴とする請求項1に記載のウインドレギュレータ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、車両の窓ガラスを支持するキャリアプレートと、前記窓ガラスの昇降方向に沿って設けられ、前記キャリアプレートを摺動自在に支持するガイドレールと、前記キャリアプレートを牽引する上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤと、前記ガイドレールの前記昇降方向の一端部に固定され、前記上昇側ワイヤ及び下降側ワイヤを駆動する駆動部と、前記ガイドレールの前記昇降方向の他端部に固定され、前記上昇側ワイヤを方向転換する方向転換部と、を備え、前記駆動部は、回転により、前記上昇側ワイヤ及び前記下降側ワイヤを駆動する回転ドラムと、前記回転ドラムを軸着した減速機、及び前記減速機に対し前記昇降方向に直交する直交方向の第1側に隣接して配設され、前記減速機を介して前記回転ドラムを回転させるヨーク部、を含む駆動モータと、を有し、前記回転ドラムの前記直交方向の前記第1側の第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤは、前記回転ドラムの前記直交方向の第2側の第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤよりも、前記直交方向において前記ヨーク部に近く、前記ガイドレールは、前記直交方向において、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤと、前記第2ワイヤ繰出し位置から前記キャリアプレートに繰り出された前記下降側ワイヤと、のうち、前記第1ワイヤ繰出し位置から前記方向転換部に繰り出された前記上昇側ワイヤのみと重なるように配設されていることを特徴とするウインドレギュレータを提供する。