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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025608
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】混成防止塗工装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20230215BHJP
   B05C 9/06 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130959
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】595038198
【氏名又は名称】株式会社ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085084
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高英
(72)【発明者】
【氏名】康井 義成
(72)【発明者】
【氏名】茶木原 雄司
(72)【発明者】
【氏名】坂田 芙美子
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA13
4F041CA03
4F041CA22
4F041CA25
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA08
4F042CB11
4F042DD45
4F042DF23
4F042DF24
4F042ED02
(57)【要約】
【課題】連続的に走行する基材に対して複数の塗工材を基材の幅方向に隙間なく、かつ、重なることなく隣接させて混成することなく塗工を施すことができる混成防止塗工装置を提供すること
【解決手段】ダイ2にスロット4の長手方向に異なる塗工材を隣接して突出させる2つの塗工材供給流路5、6を設け、両塗工材供給流路5、6の下流端はスロット4の開口部の合流点Pにおいて合流しており、一方の塗工材供給流路5は上流側のマニホールド7からスロット4に向けて鉛直下方に向かう直線流路5aと、当該直線流路5aから合流点Pに向けて徐々に拡張する拡張流路5bとにより形成されており、他方の塗工材供給流路6は上流側のマニホールド8から合流点Pに向けて塗工材を鉛直下方および合流点P方向に指向するように流動させる指向流路6aにより形成されており、合流点Pにおいて異なる塗工材を混成させないで基材Wの上面に塗工させるように形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に走行する基材の上面に対して下端の長尺なスロットより塗工材を突出させて塗工するダイを備えた混成防止塗工装置において、
前記ダイに前記スロットの長手方向に異なる塗工材を隣接して突出させる2つの塗工材供給流路を設け、
前記両塗工材供給流路の下流端は前記スロットの開口部の合流点において合流しており、一方の塗工材供給流路は上流側のマニホールドから前記スロットに向けて鉛直下方に向かう直線流路と、当該直線流路から前記合流点に向けて徐々に拡張する拡張流路とにより形成されており、他方の塗工材供給流路は上流側のマニホールドから前記合流点に向けて前記塗工材を鉛直下方および前記合流点方向に指向するように流動させる指向流路により形成されており、前記合流点において前記異なる塗工材を混成させないで前記基材の上面に塗工させるように形成されていることを特徴とする混成防止塗工装置。
【請求項2】
前記一方の塗工材供給流路の前記拡張流路はテーパ状に形成されており、前記他方の塗工材供給流路の前記指向流路はテーパ状または円弧上に形成されており、前記一方の塗工材供給流路のスロットの前記走行方向の幅は、前記他方の塗工材供給流路のスロットの前記走行方向の幅より大きくに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の混成防止塗工装置。
【請求項3】
前記ダイに対面するの前記基材の下面側を自由状態として、前記ダイの前記開口部より前記塗工材を鉛直方向(重力方向)に吐出させて、前記基材の上面に隣接する複数の塗工材を隙間なく、かつ、重なり過ぎない混成のない状態に塗工するように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の混成防止塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混成防止塗工装置に係り、特に連続的に走行する基材に対して複数の塗工材を基材の幅方向に隙間なく、かつ、重なることなく隣接させて塗工を施すのに好適な混成防止塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行する基材に加工を施す装置としては、薄いフィルム基材を連続的に走行させながら各種の塗工材を薄く塗工する装置が挙げられる。そして、連続的に走行する薄いフィルム基材の幅方向に複数の色の塗工材を同時に塗工する塗工装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-038972号公報
【特許文献2】特開2019-076824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては複数の色の塗工材が混じることも容認して塗工を施すように形成されている。特許文献2においては、隣り合う塗工材が隙間なく・重なり過ぎず塗工するために、スロットダイを複数台使用し、更にカメラなどによる塗工端部を検出するセンサを用いて位置調整を行っている。隙間・重なりにおいては、隙間が発生した場合、その部分が欠陥となり乾燥後のシート裂けが発生する。重なりが発生した場合、重なり部は膜厚が厚くなるため、基材によっては連続的に基材を巻き取ることが困難である。
【0005】
しかしながら、近年においては塗工材が多種多用となり、複数の塗工材を混成することなく即ち隙間なく、かつ、重なることなく隣接させて同時に塗工することが望まれることが多くなった。
【0006】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、連続的に走行する基材にして複数の塗工材を1台のスロットダイで、複雑な内部構造を必要とせず、基材の幅方向に混成することなく塗工を施すことができる混成防止塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明の第1の態様の混成防止塗工装置は、連続的に走行する基材の上面に対して下端の長尺なスロットより塗工材を突出させて塗工するダイを備えた混成防止塗工装置において、前記ダイに前記スロットの長手方向に異なる塗工材を隣接して突出させる2つの塗工材供給流路を設け、前記両塗工材供給流路の下流端は前記スロットの開口部の合流点において合流しており、一方の塗工材供給流路は上流側のマニホールドから前記スロットに向けて鉛直下方に向かう直線流路と、当該直線流路から前記合流点に向けて徐々に拡張する拡張流路とにより形成されており、他方の塗工材供給流路は上流側のマニホールドから前記合流点に向けて前記塗工材を鉛直下方および前記合流点方向に指向するように流動させる指向流路により形成されており、前記合流点において前記異なる塗工材を混成させないで前記基材の上面に塗工させるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明において、混成防止塗工装置は、前記第1の形態において、前記一方の塗工材供給流路の前記拡張流路はテーパ状に形成されており、前記他方の塗工材供給流路の前記指向流路はテーパ状または円弧上に形成されており、前記一方の塗工材供給流路のスロットの前記走行方向の幅は、前記他方の塗工材供給流路のスロットの前記走行方向の幅より大きくに形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明において、混成防止塗工装置は、前記第1または第2の形態において、前記ダイに対面する前記基材の下面側を自由状態として、前記ダイの前記開口部より前記塗工材を鉛直方向(重力方向)に吐出させて、前記基材の上面に隣接する複数の塗工材を隙間なく、かつ、重なり過ぎない混成のない状態に塗工するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る混成防止塗工装置によれば、連続的に走行する基材に対して複数の塗工材を1台のスロットダイで、複雑な内部構造を必要とせず、基材の幅方向に混成することなく塗工を施すことができる混成防止塗工装置を提供することができるなどの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の1実施形態を示すダイの縦断側面図
図2図1のダイの下側ダイの右側面図
図3図2のA部拡大図
図4】本発明の他の実施形態の図3と同様の図
図5】本発明の実施形態による塗工状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の混成防止塗工装置を図1~5に示す実施形態により説明する。
【0013】
本実施形態の混成防止塗工装置1は2種類の塗工材を塗工する場合を示している。
【0014】
混成防止塗工装置1は、図1に示すように、下側ダイ2aと上側ダイ2bとを密着してなるダイ2によって形成されている。このダイ2の下端部に形成されているリップ部3には長尺なスロット4が形成されている。このスロット4より2種類の塗工材が突出されて連続的に走行する基材Wの上面に対して塗工が施される。
【0015】
更に説明すると、下側ダイ2aには、スロット4の長手方向に異なる塗工材を隣接して突出させる2つの塗工材供給流路5、6が設けられている。両塗工材供給流路5、6の下流端はスロット4の開口部の合流点Pにおいて合流している。一方の塗工材供給流路5は、上流側のマニホールド7からスロットに向けて鉛直下方に向かう直線流路5aと、この直線流路5aから合流点Pに向けて徐々に拡張する拡張流路5bとにより形成されている。拡張流路5bは一辺が2mmの傾斜角45度のテーパ状に形成されている。この拡張流路5bの一辺の大きさは、塗工材の粘度や塗布厚によって5mm以内で調節するとよい。他方の塗工材供給流路6は上流側のマニホールド8から合流点pに向けて塗工材を鉛直下方および合流点P方向に指向するように流動させる指向流路6aにより形成されている。この指向流路6aはテーパ状または円弧上に形成するとよく、図2の実施形態においては半径15mmの円弧状に形成されている。一方の塗工材供給流路5は基材Wの幅のほぼ全体に亘る長さ(例えば120mm)を有しており、他方の塗工材供給流路6は基材Wの幅の端部の狭い幅の長さ(例えば7mm)を有している。また、一方の塗工材供給流路5の深さ即ちスロット4の基材Wの走行方向の幅は、他方の塗工材供給流路6の深さ即ちスロット4の基材Wの走行方向の幅より大きく(例えば、2倍の0.3mm)に形成されている。
【0016】
次に、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0017】
マニホールド7より一方の塗工材供給流路5に供給された塗工材は、直線流路5aに沿って鉛直下方に流動し、続いて拡張流路5bにおいて合流点P方向に流れを拡張しながら鉛直下方に流動し、スロット4部分より基材Wの上面に供給されて塗工される。
【0018】
マニホールド8より他方の塗工材供給流路6に供給された塗工材は、円弧状であってスロット4の長さ方向の幅が上下位置において一定とされている指向流路6aに沿って鉛直下方および合流点P方向に指向するように流動し、スロット4部分より基材Wの上面に供給されて塗工される。
【0019】
このような各塗工材供給流路5、6における塗工材の流動態様の違いと、各塗工材供給流路5、6の深さ即ちスロット4の基材Wの走行方向の幅の違いにより、合流点Pにおいて異なる塗工材どうしは混成することが防止されて、隙間なく、かつ、重なることなく隣接させた状態で塗工される。
【0020】
更に説明すると、一方の塗工材供給流路5においては、直線流路5aを鉛直下方に流動する塗工材はスロット4の長手方向に拡張する動きがない状態で流下し、その後の拡張流路5bの鉛直方向の長さは2mmと短いので、塗工材はスロット4の長手方向に拡張する動きが小さく抑えられて流動する。このようにして拡張流路5bを流動して最終的にスロット4より突出する塗工材は、合流点P部分においては、隣の塗工材供給流路6方向に広がることを抑えられる。
【0021】
他方の塗工材供給流路6においては、円弧状であってスロット4の長さ方向の幅が上下位置において一定とされている指向流路6aに沿って流動する塗工材は、指向流路6aがスロット4部分において鉛直下向きであるので、塗工材はスロット4の長手方向に拡張する動きがない状態でスロット4より突出する。このようにして指向流路6aを流動して最終的にスロット4より突出する塗工材は、合流点P部分においては、隣の塗工材供給流路5方向に広がることを抑えられる。
【0022】
このような両塗工材供給流路5、6による各塗工材が他方側に広がることを阻止する作用によって、両塗工材が混生して色が混ざることが確実に防止されるので、極めて高品位な塗工が施される。
【0023】
図4は本発明の他の実施形態を示している。
【0024】
図4においては、塗工材供給流路6の指向流路6aの他の実施形態を示しており、円弧状に代えてテーパ状としたものである。
【0025】
このように指向流路6aは必要に応じて変形することができる。
【0026】
図5は、本発明装置による塗工状態を示しており、基材Wは水平に配置された案内ロール9、9によって水平状態に走行させられている。2つの案内ロール9、9の中間位置において、ダイ2に対面する基材Wの下面側を自由状態(具体的には、バックアップロールを設けない)として、ダイ2の開口部であるスロット4より塗工材Dを鉛直方向(重力方向・下向き)に吐出させて塗工させている。これにより、基材Wの上面に隣接する複数の塗工材Dを隙間なく、かつ、重なり過ぎない混成のない状態に保持して良好に塗工することができる。このようにダイ2のスロット4から吐出される塗工材Dは、下面側が自由状態の基材Wの上面とダイ2の下端面との間に挟まれる状態に突出され、その後基材Wの進行に伴って基材Wの進行方向下流側に所定の膜厚をもって引き出されて塗工される。勿論、2種類の塗工材Dの粘度や塗工厚さが異なっていても、ダイ2の下端面と基材Wの上面との距離は、基材Wの下面が自由状態にあるので、基材Wの弾力性により若干の変動が許容されることにより、異なる2種類の塗工材が合流点P部分で合流するとともに互いに混成することを防止されて塗工されることとなる。
【0027】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 混成防止塗工装置
2 ダイ
4 スロット
5、6 塗工材供給流路
7、8 マニホールド
9 案内ロール
D 塗工材
W 基材
図1
図2
図3
図4
図5