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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025610
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】洗濯機及び洗濯槽の乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/64 20200101AFI20230215BHJP
【FI】
D06F33/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130963
(22)【出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】戎家 嵩二
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA02
3B167AA12
3B167AB27
3B167AE01
3B167AE02
3B167AE04
3B167AE05
3B167AE07
3B167BA43
3B167BA47
3B167BA48
3B167BA75
3B167BA78
3B167BA91
3B167BA92
3B167HA11
3B167HA32
3B167HA34
3B167HA53
3B167HA54
3B167JA41
3B167JA68
3B167JC03
3B167JC13
3B167JC22
3B167JC25
3B167KA02
3B167KA63
3B167KA76
3B167KB02
3B167KB03
3B167LA23
3B167LA38
3B167LC08
3B167LC09
3B167LC11
3B167LC20
3B167MA03
3B167MA13
3B167MA17
(57)【要約】
【課題】ユーザ操作に関わらず、洗濯槽の非加熱による乾燥運転を自動で行う洗濯機及び洗濯機の洗濯槽の乾燥方法を提供する。
【解決手段】外槽9及びその内部に設けた内槽10からなる洗濯槽3に送風する送風部2と、洗濯運転の終了を含む所定の判定条件23に基づいて、前記洗濯槽から洗濯対象物(洗濯物)21が取出されたと判定すると、少なくとも前記送風部を作動する制御部4とからなり、前記制御部により、自動的に前記洗濯槽の非加熱による乾燥運転が行われる、洗濯機1である。前記判定条件は、前記洗濯運転の終了に関する終了情報1a、前記洗濯槽の蓋11の開状態に関する開情報14a及び前記蓋の閉状態に関する閉情報14aのそれぞれを取得することである。
【選択図】図2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽及びその内部に設けた内槽からなる洗濯槽に送風する送風部と、
洗濯運転の終了を含む所定の判定条件に基づいて、前記洗濯槽から洗濯対象物が取出されたと判定すると、少なくとも前記送風部を作動する制御部とからなり、
前記制御部により、自動的に前記洗濯槽の非加熱による乾燥運転が行われる、洗濯機。
【請求項2】
前記判定条件は、前記洗濯運転の終了に関する終了情報、前記洗濯槽の蓋の開状態に関する開情報及び前記蓋の閉状態に関する閉情報のそれぞれを取得することである、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記判定条件は、前記蓋の閉状態において、前記内槽を駆動部により回転させる際の前記駆動部の電流値が、所定の閾値以下である、請求項1又は2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記洗濯槽の乾燥運転は、前記洗濯槽に水を供給して前記内槽を回転する水洗工程と、
前記水を排出する排水工程と、
前記送風部を作動する送風工程とを備えている、請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記排水工程の後に前記内槽を回転する水滴落し工程を備えている、請求項4に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記水滴落し工程において、前記送風部を作動するものである、請求項5に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記洗濯槽の乾燥運転において前記内槽が回転していることを表示する表示部を備えている、請求項4~6のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記洗濯槽が上方に開口している縦型の洗濯機であり、
前記洗濯槽の開口端から前記蓋の間で、且つ、前記洗濯槽の開口縁付近に、フレーム部が設けられており、
前記フレーム部に前記送風部が設けられている、請求項1~7のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項9】
前記送風部は、前記内槽と前記外槽との隙間に送風するものである、請求項8に記載の洗濯機。
【請求項10】
前記送風部は遠心式のファンである、請求項8又は9に記載の洗濯機。
【請求項11】
一端が前記送風部に接続され、他端が前記内槽と前記外槽との間隙に向けられているダクト部材を備えている、請求項10記載の洗濯機。
【請求項12】
前記内槽の内部に送風する送風部をさらに備えており、
前記送風部の総数は2つ以上である、請求項9~11のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項13】
前記内槽の内部に送風する送風部は、軸流ファンである、請求項12に記載の洗濯機。
【請求項14】
前記送風部が前記フレーム部の半径方向の内側に形成された凹部内に配置されており、
前記凹部の開口に前記洗濯運転時に閉状態となる防水カバーが設けられている、請求項8~13のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項15】
前記送風部の吸引口に防塵フィルタが設けられている、請求項8~14のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項16】
前記送風部と対角を成す位置に送風出口が形成されており、
前記送風出口にフィルタが設けられている、請求項8~15のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項17】
洗濯運転の終了を含む所定の判定条件に基づいて、洗濯槽からの洗濯対象物の取出しを判定し、
前記取出しの判定に基づいて、少なくとも送風部を作動させ、自動的に前記洗濯槽の非加熱による乾燥運転が行われる、洗濯槽の乾燥方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗濯機に関する。さらに詳しくは洗濯槽を乾燥する洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯槽内に温風を送り込む槽乾燥コースをユーザの操作によって実行する洗濯機が開示されている。槽乾燥コースが実行されると、洗濯後の洗濯槽が乾燥される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-8544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
槽乾燥コースを実行させる操作を、ある一定期間以上にわたって、ユーザが忘れてしまうと、洗濯槽内にカビや細菌が発生してしまう。洗濯槽に一度カビが生えてしまうと、簡単にキレイにすることは困難な傾向にある。
【0005】
そこで本発明は、ユーザ操作に関わらず、洗濯槽の乾燥運転を行う洗濯機及び洗濯槽の乾燥方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の洗濯機は、外槽及びその内部に設けた内槽からなる洗濯槽に送風する送風部と、洗濯運転の終了を含む所定の判定条件に基づいて、前記洗濯槽から洗濯対象物が取出されたと判定すると、少なくとも前記送風部を作動する制御部とからなり、前記制御部により、自動的に前記洗濯槽の非加熱による乾燥運転が行われることを特徴としている。
【0007】
このような洗濯機は、前記制御部は、前記判定条件に基づいて、前記取出しの判定をする判定手段と、前記取出しの判定に基づいて、前記送風部の送風運転を含む前記洗濯槽の非加熱による乾燥運転がユーザに依らないで行われる、つまり乾燥運転が自動で行われる運転手段とからなるのが好ましい。
【0008】
・「判定手段」とは、実施形態ではR4(図5参照)が対応する。
・「運転手段」とは、実施形態ではS1、S2、S3及びS4並びにS1、S2及びS3(図7参照)が対応する。
【0009】
(2)前記判定条件は、前記洗濯運転の終了に関する終了情報、前記洗濯槽の蓋の開状態に関する開情報及び前記蓋の閉状態に関する閉情報のそれぞれを取得することであるのが好ましい。
【0010】
・「開情報」とは、洗濯機の蓋が開いていることを示す情報であり、これに相当する情報を含む概念である。例えば、閉情報の検出が無いことを開情報としてもよい。
・「閉情報」とは、洗濯機の蓋が閉じていることを示す情報であり、これに相当する情報を含む概念である。例えば、開情報の検出が無いことを閉情報としてもよい。
【0011】
(3)前記判定条件は、前記蓋の閉状態において、前記内槽を駆動部により回転させる際の前記駆動部の電流値が、所定の閾値以下であるのが好ましい。
【0012】
(4)前記洗濯槽の乾燥運転は、前記洗濯槽に水を供給して前記内槽を回転する水洗工程と、前記水を排出する排水工程と、前記送風部を作動する送風工程とを備えているのが好ましい。
【0013】
(5)前記排水工程の後に前記内槽を回転する水滴落し工程を備えているのが好ましい。
【0014】
(6)前記水滴落し工程において、前記送風部を作動するものであるのが好ましい。
【0015】
(7)前記洗濯槽の乾燥運転において内槽が回転していることを表示する表示部を備えているのが好ましい。
【0016】
(8)前記洗濯槽が上方に開口している縦型の洗濯機であり、前記洗濯槽の開口端から前記蓋の間で、且つ、前記洗濯槽の開口縁付近に、フレーム部が設けられており、前記フレーム部に前記送風部が設けられているのが好ましい。
【0017】
(9)前記送風部は、前記内槽と前記外槽との隙間に送風するものであるのが好ましい。
【0018】
(10)前記送風部は遠心式のファンであるのが好ましい。
【0019】
(11)一端が前記送風部に接続され、他端が前記内槽と外槽との間隙に向けられているダクト部材を備えているのが好ましい。
【0020】
(12)前記内槽の内部に送風する送風部をさらに備えており、
前記送風部の総数は2つ以上であるのが好ましい。
【0021】
(13)前記内槽の内部に送風する送風部は、軸流ファンであるのが好ましい。
【0022】
(14)前記送風部が前記フレーム部の半径方向の内側に形成された凹部内に配置されており、前記凹部の開口に前記洗濯運転時に閉状態となる防水カバーが設けられているのが好ましい。
【0023】
(15)前記送風部の吸引口に防塵フィルタが設けられているのが好ましい。
【0024】
(16)前記送風部と対角を成す位置に送風出口が形成されており、前記送風出口にフィルタが設けられているのが好ましい。
【0025】
(17)本発明の洗濯槽の乾燥方法は、洗濯運転の終了を含む所定の判定条件に基づいて、洗濯槽からの洗濯対象物の取出しを判定し、前記取出しの判定に基づいて、少なくとも送風部を作動させ、自動的に前記洗濯槽の非加熱による乾燥運転が行われることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
ユーザの操作の有無に関わらず、自動で洗濯槽を清潔に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】洗濯槽を乾燥する方法の一実施形態を示す模式図である。
図2】洗濯機の一実施形態を示す機能ブロック図である。
図3】(a)は図2の洗濯機の上部の構造の一例を示す概略図、(b)は(a)の洗濯機の内部構造の一例を示す概略図である。
図4図2の洗濯機のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
図5】制御部で用いられるプログラムの一実施形態であるフローチャートを示す。
図6】判定条件の構造を示す表である。
図7】制御部で用いられるプログラムの一実施形態であるフローチャートを示す。
図8図2の洗濯機の他の実施形態示す概略図である。
図9】(a)は他の実施形態に係る洗濯機の上部構造を示す概略図、(b)は(a)の洗濯機の内部構造を示す概略図である。
図10】(a)は送風部の配置及び送風の向きの一例を示す概略図、(b)は送風の向きの一例を説明する概略図である。
図11】(a)は他の実施形態に係る洗濯機の内部の空気流れの一例を示す概略図、(b)は送風部及び送風出口の配置の一例を示す配置図である。
図12】(a)は送風部及び送風出口の配置の他の例を示す概略図、(b)は送風部及び送風出口の配置のさらに他の例を示す配置図、(c)は送風部及び送風出口の配置のさらに他の例を示す配置図である。
図13】他の実施形態に係る洗濯機の送風部の防水カバー及び防塵フィルタの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[1.概略説明]
まず図1を用いて、本実施形態に係る洗濯槽3(図2参照)の乾燥方法(以下乾燥方法という)の概略を説明する。図1に示している乾燥方法20は、洗濯運転後(工程T1)に、洗濯槽3に非加熱の空気を送る乾燥運転を自動で行う(工程T3)というものである。ここで乾燥運転とは、洗濯槽3に非加熱の空気を吹き送る以外に、例えば送風前に洗濯槽3を水洗いすること等を含んでもよい。非加熱の空気を送り、洗濯槽3内を乾燥させることで、カビの生育を防止する。
なお図1の乾燥方法20では、縦型洗濯機、横型ドラム洗濯機などの洗濯機を用いてもよい。
【0029】
また本実施形態では、例えば、洗濯物21の取出しを判定し(工程T2)、洗濯物21を取出したと判定すると、乾燥運転(工程T3)に進む。このためユーザの操作の有無に関わらず、自動的に非加熱による乾燥運転が行われる。例えば、ボタンの押忘れなど、ユーザの操作忘れで乾燥運転が行われないことによる、カビの発生を回避できる。また洗濯槽3を清潔に維持できる。ここで自動的に乾燥運転をするとは、ユーザが手動で直接に洗濯機に指示を出し、乾燥運転をスタートするのではなく、洗濯機が洗濯物21の有無を判定し、所定の条件に基づいて乾燥運転を実行することを含む概念である。
【0030】
また本実施形態では、例えば、洗濯運転後(工程T1)に、洗濯物21の取出しを判定し(工程T2)、洗濯物21を取出したと判定すると、非加熱による乾燥運転(工程T3)を行う。
【0031】
本実施形態では、空気を非加熱で、すなわち室温の空気を取り込んで、そのまま洗濯槽3に送風するようにしている。加熱のためのヒーターを用いないので、消費エネルギーを小さくし、電気代を抑えることができる。例えば、乾燥運転の一部である水洗いした内槽の水滴を落とすのに送風部で送風する場合にも、洗濯機の周囲の空気を取り込んで、非加熱で送風する。なお送風部2(図2参照)により送られる空気が、駆動部8(図2参照)の近傍を通過することにより加熱されることは、非加熱の送風に含まれる。非加熱とは、空気を加熱するためだけに用いる構成で、且つ、洗濯機に備え付けられた構成、例えばヒーター等により、乾燥運転のための空気を積極的に加熱していないことを含む概念である。
【0032】
次に、相対湿度(%)と乾燥時間(h)との関係の一例を説明する。洗濯槽3に送風しない場合、例えば、カビの生育に必要な湿度である約80%を下回るのに約5.5時間かかる。一方で、洗濯槽3に送風する場合、例えば、乾燥運転(送風)開始後すぐに湿度80%を下回り、3時間を超えると湿度の減少はほぼ横ばいになり、6~9時間経過すると、試験環境の湿度とほぼ同じになる。一般家庭では、通常、洗濯物21を取り出すと、次回の洗濯まで長時間、例えば、洗濯1回/日であるなら約12時間以上のインターバルがある傾向にある。このためインターバルの時間を利用し、洗濯槽3に空気を送ることができる。なお前記インターバルのほぼ全ての時間を乾燥運転の時間として利用してもよい。
【0033】
[2.各構成の説明]
(洗濯機1)
次いで図2を用いて、本実施形態に係る洗濯機の概略を説明する。図2に示している洗濯機1は、主として、洗濯槽3に非加熱の空気を送る送風部2と、洗濯運転終了後における洗濯槽3からの洗濯物21(図1参照)の取出しを判定すると、送風部2の送風を含む洗濯槽3の乾燥運転を自動で実行する制御部4とを備えている。
なお図2では、縦型洗濯機を示しているが、横型ドラム洗濯機などの他の型式の洗濯機を用いてもよい。
【0034】
洗濯機1としては、例えば、筐体7と、筐体7に設けられる駆動部8と、筐体7内で防振支持される外槽9と、その外槽9に収納され、駆動部8により回転駆動され、洗濯物21が投入される内槽10と、洗濯物21を出し入れする際に開閉される蓋11とを備えている。ここで外槽9と内槽10は、洗濯槽3を構成する。
【0035】
(送風部2)
送風部2としては、例えば、遠心ファン、軸流ファンなどのファンを用いることができる。ファンのタイプは用途に応じて使い分けるのがよい。遠心ファンは、静圧が高く、空気を送る力が大きいので、隙間などの圧力損失が大きい箇所に空気を送るのに用いるのがよい。遠心ファンとしては、シロッコファンを用いるのがよい。本実施形態では、外槽9と内槽10との隙間3a(図3(b)参照)に空気を送るのにシロッコファンを用いている。
軸流ファンは、遠心ファンに比べて大きな風量が得られるが、静圧が低い傾向にある。軸流ファンは広い空間に多量の空気を送るのに適している。軸流ファンとしては、サーキュレータを用いるのがよい。サーキュレータは送風される空気の直進性が遠心ファンに比べて高い。本実施形態では、サーキュレータを用いて、内槽10の内部の奥まで空気を届かせるようにしている。
【0036】
(洗濯槽3、外槽9)
図3を用いて、本実施形態に係る洗濯機1の各部の詳細を説明する。図3(b)は外槽9及び内槽10を示している。図3に示すように外槽9は有底筒状である。その外槽9には、その周壁の上端から径方向の内向きに延設された肩部9aが設けられている。その肩部9aの先端は、隙間3aの上空を超えて内槽10の内肩部10b(後述する)の中ほどまで達している。
【0037】
(内槽10)
内槽10は、有底筒状である。本実施形態では、例えば、内槽10の回転中心軸は、外槽9の中心軸と一致している。内槽10の周壁10aの上端からは、径方向の内向きに延設された内肩部10bが設けられている。その内肩部10bは外槽9の肩部9aの下方に配置されている。その内肩部10bの先端部は開口部10cを形成している。その開口部10cから洗濯物21が投入される。
周壁10aには、通水のための複数の貫通孔10dが形成されている。その貫通孔10dを通して、洗濯水が外槽9内と内槽10内を自由に往来できる。同様に、送風部2から送風された空気は、貫通孔10dを通して外槽9内と内槽10内を自由に往来できる。
【0038】
(筐体7)
次いで図3(a)を用いて、本実施形態に係る洗濯機の筐体7の上部付近の形状を説明する。なお図3(a)に示す洗濯機1について、図の下方を前側とし、上方を後側と呼ぶ。図3(a)に示している筐体7の上部付近のフレーム部(以下上枠部という。)7aは、枠状の部材である。上枠部7aの略中央には開口部7bが形成されている。その開口部7bから洗濯物21は投入され/取り出される。上枠部7aは、平面視において、例えば、外槽9と内槽10との隙間3a(図3(b)参照)の上空を塞ぐ程度に半径方向の内向きに延出している。また上枠部7aは、例えば、延出幅と同程度の上下方向の厚みのある形状を呈している(図3(b)参照)。
本実施形態では、例えば、上枠部7aの内周面の後方付近に凹部7cが形成されている。その凹部7c内に送風部2が設けられている。
【0039】
(表示部12)
上枠部7aの上面で前側には、操作パネル28が設けられている。操作パネル28には、乾燥運転中であることをユーザに示すための表示部12が設けられている。表示部12は、例えば、LED、ランプ等の点灯、液晶画面の画像の変化などにより乾燥運転中であることを示す。なお表示部12は、内槽10が回転中であることを示すものでもよい。
また操作パネル28には、洗濯運転の設定及び洗濯条件と共に、例えば、乾燥運転のコースや乾燥時間などの設定部を設けてもよい。さらに例えば、乾燥運転の設定条件及び乾燥運転の過程を表示するようにしてもよい。前記設定の例としては、乾燥運転のコースとして、乾燥時間が短い/普通/長い、などがある。乾燥条件として、乾燥前の内槽10の水洗いアリ/ナシ、さらには手動/自動などがある。
【0040】
またユーザが所望の計画で乾燥運転を設定できるようにしてもよい。例えば、2回又は所定の回数の洗濯運転を経た後に、乾燥運転(図1の工程T1参照)が作動するようにしてもよい。またユーザのライフスタイルに応じて、例えば、平日の深夜に乾燥運転を作動させたり、週末のお出かけの間に乾燥運転を作動させたりなど、日時を設定できるようにしてもよい。
【0041】
またユーザが所望すれば、操作パネル28で予め設定することにより、乾燥運転における送風部2による送風工程(図7参照)について、蓋11を開けた状態で実施できるようにしても良い。蓋11を開けているので、送風部2が洗濯機の外の空気を取り込んで洗濯槽3に送風するため、効率的に洗濯槽3を乾燥することができる。
【0042】
(駆動部8、負荷検出部13)
図2に戻って、駆動部8には、駆動の負荷情報13aを取得する負荷検出部13が設けられている。本実施形態では、負荷情報13aとして電流値を取得している。その他、負荷に換算できるものであればよい。例えば、電圧値、トルクセンサの出力、内槽の重量などである。内槽10に洗濯物21が残っていると、駆動部8の回転駆動に負荷がかかる。検知された駆動負荷は、内槽10に洗濯物21が残っているかどうかを制御部4の判定手段5が判定するのに用いられる。例えば、負荷情報13aが予め設定された所定の閾値を超えた場合、判定手段5は洗濯物21が内槽10に残っていると判定し、当該閾値以下であれば洗濯物が取り出されたと判定する。
所定の閾値は、洗濯物21が残ってない内槽10を回転させるための電流値とほぼ同じ値である。誤差の範囲を考慮して、誤差の上限の値を設定してもよい。また空の内槽10に水滴が付着し、重量が増加していることを考慮して、前述の空の内槽の電流値に、水滴分に相当する増加分を加算した閾値を設定してもよい。
さらに洗濯運転を始める前に、洗濯物21の量を把握するために内槽10を回転させた際の電流値を閾値に用いてもよい。また洗濯運転前の内槽の回転による電流値に基づいた閾値を設定してもよい。例えば、洗濯運転後に洗濯物21が湿っていることを考慮し、洗濯運転を始める前の電流値を約10%増加した電流値を閾値に設定するなどである。
【0043】
(蓋11)
蓋11は筐体7の開口部7bに開閉可能に設けられている。本実施系形態では、後側の一端を起点とし、前側を上方向に開く。蓋11と筐体7との間には検出部14が設けられている。
【0044】
(検出部14)
検出部14は蓋11の開閉を検知するものであればよい。検出部14としては、例えば、蓋11の開閉を検知するリミットスイッチである。リミットスイッチ14は、例えば、上方に付勢された棒状部材を備えている。その棒状部材の先端は、閉じた蓋により下方に押動されてONを検知する。一方、蓋11が少しでも上方に上がると、棒状部材が上方に移動してOFFになる。なお前記ONとOFFは逆でもよい。さらには常時ONで、少しでも棒状部材が下がるとOFFになるものでもよい。その他、誘導型、磁気型、静電容量型などの近接スイッチを用いてもよい。検出部14は蓋11の開閉情報14aを取得する。開閉情報14aは、蓋11の開情報及び閉情報又は開情報若しくは閉情報からなる。
【0045】
(給水部15、排水部16)
給水部15は洗濯槽3に給水する給水路を開閉する電磁弁を備えている。電磁弁は制御部4により制御されている。電磁弁を開けると、洗濯槽3に水が供給される。
排水部16は、外槽9と筐体7の底部との間に設けられている。排水部16は、洗濯槽3内の水を排出する排水路を開閉する電磁弁を備えている。電磁弁は制御部4により制御されている。電磁弁を開けると、洗濯槽3から水が排出される。
【0046】
(制御部4)
制御部4は、予め登録された条件23(後述する判定条件)に基づいて、取出しの判定をする判定手段5と、前記取出しの判定に基づいて、送風部2の送風運転を含む非加熱による洗濯槽3の乾燥運転を自動で実行する運転手段6とからなる。また制御部4は、洗濯機1の洗濯運転の終了を示す終了情報1aを取得する。
【0047】
(判定手段5)
判定手段5は、終了情報1a、負荷情報13a及び開閉情報14aを取得し、判定条件23に基づいて、洗濯物21が取り出されたかどうかを判定する。
【0048】
(運転手段6)
運転手段6は、判定手段5からの判定の判断に基づいて非加熱による乾燥運転を自動で実行する。運転手段6は、送風部2、駆動部8、表示部12、給水部15及び排水部16に作動又は停止の命令をする。
【0049】
[3.ハードウェア構成]
(洗濯機1のハードウェア構成)
次に図4を用いて、洗濯機1のハードウェア構成を説明する。図4に示すように、本実施形態の洗濯機1では、例えばマイクロコンピュータを用いている。そのマイクロコンピュータはCPU30を備えたものである。そのCPU30には、メモリ(以下、記録部ともいう。)31、送風部2、駆動部8、表示部12、操作パネル28、負荷検出部13、検出部14、給水部15及び排水部16がバスライン32を介して接続されている。メモリ31には、洗濯物21の取出しを判定(図1の工程T2参照)のプログラム22、22a、22bの少なくとも1つと、乾燥運転(図1の工程T3参照)のプログラム24、24aの少なくとも1つとが記憶されている。なおこれらのプログラムについては、以下の段落で詳述する。
【0050】
上述したハードウェア構成では、図2に示す機能を、例えば、CPU30とプログラム22、22a、24aの少なくとも1つと、プログラム24、24aの少なくとも1つとを用いて実現するようにしているが、その一部若しくは全部をマイコンなどの論理回路又はPLC(プログラマブルロジックコントローラ)を用いてシーケンス制御してもよい。
【0051】
なおバスライン32には、ネットワークを介して外部と通信するための通信回路33(二点鎖線参照)が接続されていてもよい。
【0052】
[4.洗濯槽の乾燥方法を示すフローチャート]
(4-1)洗濯物の取出判定のフローチャート
次に図5を用いて、制御部4で用いられるプログラムの一実施形態であるフローチャートを示す。このフローチャートによるプログラム22の処理では、洗濯物21の取出しを判定する(図1の工程T2参照)。なお図5にはプログラム22の変形例22a、22bも記載されている。以下の説明において、説明容易にするため図2を併せて用いている。
【0053】
(工程R1)洗濯運転が終了すると、CPU30は、洗濯運転の終了を示す終了情報1aを取得する。例えば洗濯運転とは、手動の洗濯運転又は予め設定されているコースに基づいた自動の洗濯運転などである。
【0054】
(工程R2)ユーザにより蓋11が開けられると、検出部14は蓋11の開状態を検出する。開状態を示す開閉情報14aを取得する。
【0055】
(工程R3)ユーザが蓋11を閉じると、検出部14は蓋11の閉状態を検出する。閉状態を示す開閉情報14aを取得する。
【0056】
(工程R4)判定条件23に基づいて洗濯物21が取り出されたことを判定する。判定条件23は、終了情報1aを取得し(運転終了後)、次に蓋11の開状態の開閉情報14aを取得し、その次に蓋11の閉状態の開閉情報14aを取得することである。判定条件23を満たすと、乾燥運転をスタートさせる。
【0057】
(判定条件23:組合せNo.3)
図6は判定条件23の一例を示す表である。表に示している判定条件23は、縦列に、判定するためのチェック項目を上から順に時系列で示している。横行は、チェック項目の組合せを示している。記号の丸印は、丸を付したチェック項目を判定の条件として用いていることを示している。
チェック項目は、例えば、洗濯終了情報の取得23a、蓋の開情報の取得23b、洗濯物の取出し待ち時間の経過23c、蓋の開情報の取得23d、閉状態の待ち時間の経過23e及び負荷情報の判別23fからなる。なお他の項目を含めてもよい。
図6の表には組合せを5種類示している。本実施形態では組合せNo.3を用いている。組合せNo.3は、運転終了の情報の取得23a後に、蓋11の開状態の開閉情報14aを取得し、次いで蓋11の閉状態の開閉情報14aを取得することである。なおこれらの組合せの複数を記憶し、使い分けるようにしてもよい。
【0058】
(4-2)洗濯槽の乾燥のフローチャート
次に図7を用いて、制御部4で用いられるプログラムの一実施形態であるフローチャートを示す。このフローチャートによるプログラム24の処理では、洗濯槽3の非加熱による乾燥運転を自動で行う(図1の工程T3参照)。なお図6にはプログラム24の変形例24aも記載されている。以下の説明において、説明容易にするため図2を併せて用いている。
【0059】
(工程S1)洗濯槽3を水洗いする(水洗工程)。CPU30は給水部15の電磁弁を開けて、洗濯槽3に給水する。給水しながら又は給水後、駆動部8を駆動させ、内槽10を回転させる。所定量の給水又は所定時間の給水後、給水部15の電磁弁を閉じて給水を止める。所定時間の経過後に内槽10の回転を止める。なお所定量の給水、給水のための所定時間及び内槽の回転のための所定時間は、操作パネル28から設定することもできる。
【0060】
(工程S2)排水部16の電磁弁を開けて、洗濯槽3内の水を排水する(排水工程)。なお排水しながら又は排水後に、駆動部8を駆動させ内槽10を回転すると、効率よく水を落とすことができる(水滴落し工程S4参照)。
【0061】
(工程S3)送風部2により洗濯槽3に空気を送る(送風工程)。なお送風しながら駆動部8を駆動させ、内槽10を回転させてもよい。所定時間の経過後、送風部2を停止する。内槽10を回転させている場合は、送風部2を停止するのとほぼ同時に内槽10の回転を停止する。
【0062】
工程S1~S3において、内槽10を回転させる際には、工程毎に内槽10の回転を一旦停止させてもよい。さらに連続する工程同士で内槽10の回転を伴う場合は、内槽10を一旦停止させないで、回転させたまま次工程に進んでもよい。
【0063】
[5.洗濯槽の乾燥方法の変形例]
(変形例22a:組合せNo.2)
図5に戻って、洗濯物の取出判定のプログラムの変形例を示す。図5に示している変形例22aは、ユーザが蓋11を開けた後に(工程R2)、直接に工程R3に行かないで、洗濯物21を取り出すための待ち時間の経過(工程R5)を経由する。すなわち取出し判定(工程R4)において、取出し待ち時間の経過23cを判定条件23に加えている。図6の表に示す組合せNo.2に相当する。
【0064】
(他の変形例22b:組合せNo.4)
洗濯物21の取出判定のプログラムのさらに他の変形例を示す。変形例22bは、蓋11を閉じた(工程R3)の後に、直接に工程R4に行かないで、内槽10を回転させる(工程R6)を経由する。駆動部8の負荷情報(電流値)を負荷検出部13が検出する。すなわち取出し判定(工程R4)において、電流値が所定の閾値以下であること(負荷情報の判別)23fを判定条件23に加えている。判定条件23を満たすと、洗濯物21が内槽10に存在しないと判定する。その後、非加熱による乾燥運転に続く。図6の表の組合せNo.4に対応する。
一方で、電流値が所定の閾値を超えている場合は、内槽10に洗濯物21が残っていると判定する。この場合は非加熱による乾燥運転に進まない。
【0065】
(他の変形例:組合せNo.5)
前述の工程R5、6の両方を満たすような判定条件23としてもよい。図6の表の組合せNo.5に対応する。R1、R2、R5、R3、R6、R4の順に進み、洗濯物21が内槽10に存在しないと判定する。その後、非加熱による乾燥運転に続く。
【0066】
(他の変形例:組合せNo.1)
洗濯運転終了後に、蓋11を開けて、洗濯物21を取り出すための十分な待ち時間の経過により、非加熱による乾燥運転に進んでもよい。図6の表の組合せNo.1に相当する。この乾燥運転では蓋11を閉じていない。このため内槽10を回転しない。
【0067】
(さらに他の変形例)
組合せNo.2から5において、蓋11を閉じた後に待ち時間を設定してもよい。図6のチェック項目における、閉状態の待ち時間の経過23eに相当する(記号△参照)。閉状態の待ち時間の経過23eを加えると、洗濯物21の取出しが終わったことが一層確実になる。
例えば、1回目の洗濯運転が終了した後に、続けて2回目の洗濯運転を行う場合に使い勝手が良い。連続で洗濯運転するので、蓋11の閉状態の待ち時間の経過23eを満たさないから、1回目の洗濯運転の終了時に非加熱による乾燥運転(工程T3)が作動しないからである。
【0068】
(乾燥運転の変形例)
図7に非加熱による乾燥運転のプログラムの変形例を示す。変形例24aは、工程S1、S2を経由しないで、送風部2により非加熱の空気を洗濯槽3に送って、洗濯槽3を自動で乾燥させるというものである。乾燥運転のプログラム24、24aは、それぞれ前述した洗濯物21の取出しの判定のプログラム22、22a、22bの後に続く。
【0069】
[6.他の実施形態]
(洗濯機17)
図8は洗濯機1の他の実施形態を示す。図8には他の実施形態に係る洗濯機17を示している。図8に示している洗濯機17は、前述した洗濯機1とほぼ同様であるので、同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。洗濯機17は、送風部2としてシロッコファンを用いている。点線の矢印は、シロッコファンによる送風の向きを示している。洗濯機17はダクト部材(ダクト)17aを備えている。ダクト17aは上枠部7a及び外槽9の肩部9aを貫通している。ダクト部材17aの上端はシロッコファン2の送風口に接続され、下端を隙間3aに向けている。ダクト部材17aは可撓性を呈する素材であるのが好ましい。本実施形態では、ダクト部材17aとして蛇腹状のダクトを用いている。
【0070】
ダクト17aを通じて送風する場合、送風部2の吸引口を上枠部7aの上面又は外周面側に設けると、洗濯槽3側から水が浸水するのを防止できる。その他、洗濯槽3から水が浸水しない位置に吸引口を設けてもよい。例えば、凹部7cの開口を上枠部7aの上面又は外周面側に設けてもよい。
【0071】
(洗濯機18)
図9(a)及び図9(b)は洗濯機1の他の実施形態を示す。図9には他の実施形態に係る洗濯機18を示している。図9(a)及び図9(b)に示している洗濯機18は、前述した洗濯機1とほぼ同様であるので、同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
洗濯機18には、送風部2、2aが設けられている。それらの送風部2の少なくとも1つは直接内槽10の内部に向けて送風している。図9では2つの送風部2が設けられている。図9(a)の左方の送風部2aは内槽10に送風している。送風部2aは上枠部7aに形成された凹部7cの内部に設けられている。本実施形態では、例えば、送風部2としてシロッコファンを用い、送風部2aとしてサーキュレータを用いている。図9(b)に示している矢印は送風の方向を示している。
【0072】
(送風部の配置)
図10(a)は送風部2、2aの配置及び送風の向きの一例を示す概略図である。図10(a)には、複数の送風部2が平面視で等間隔に配置されている。図10(a)では3つの送風部2が設けられている。なお送風部2を2つ又は4つ以上設けてもよい。送風部2は隙間3aに送風している。
一方で、送風部2aは直接内槽10の内部に送風している。図10(a)では1つの送風部2aが設けられている。なお送風部2aを複数設けてもよい(二点鎖線参照)。複数設ける場合、送風部2の間に配置するのがよい。本実施形態では、送風部2としてシロッコファンを用い、送風部2aとしてサーキュレータを用いている。送風部2、2aは隙間3a及び内槽10内で空気が同じ回転方向に旋回するように、送風方向を周方向に向けてもよい。
【0073】
図10(b)は送風の向きの一例を説明する概略図である。上述したように送風方向を周方向に向けてもよいが、送風部2、2aから空気を下方に送風したままで(符号34aの矢印参照)、内槽10を回転させもよい。内槽10の回転に基づいて、送風した空気が内槽10の周方向に引かれる(符号34bの矢印参照)。このため送風した空気の方向が斜め下方に向く(符号34cの矢印参照)。矢印34cは合成された空気の送風の方向を示している。
【0074】
(洗濯機19、送風部2と送風出口19aの配置)
図11(a)及び11(b)は他の実施形態に係る洗濯機の内部の空気流れの一例を示す概略図である。図11(a)に示している洗濯機19は、前述した洗濯機1とほぼ同様であるので、同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。図11(a)には、筐体7の底部に送風出口19a(図11(b)中の黒丸参照)が形成されている。送風出口19aは、送風した空気の出口となる。本実施形態では、例えば、送風出口19aに防塵フィルタ19bが設けられている。送風出口19aは、送風部2に対し、例えば側面視で、対角の位置に設けられている。また図11(b)には、送風部2と送風出口19aの平面視における配置が示されている。図11(b)は送風部2が2つの場合を示している。送風部2と送風出口19aとが平面視で等間隔に配置されるのがよい。符号19cは空気流れを模式的に示している。送風出口19aは、送風部2に対し、例えば平面視で、対角の位置に設けられている。なお本実施形態において、送風部2はサーキュレータ2aでもよい。
【0075】
(送風部2と送風出口19aの配置の他の例)
図12(a)は図11(b)の配置の他の例を示す配置図である。図12(a)には送風部2が3つ示されている。なお以下の実施形態において、送風部2はサーキュレータ2aでもよい。送風部2と送風出口19aとは、平面視で、ほぼ等間隔に配置されている。送風部2が4つ以上の場合でも同様にほぼ等間隔で配置するのがよい。また送風出口19aは、送風部2に対し、例えば平面視で、対角の位置に設けられている。
図12(b)は図11(b)の配置のさらに他の例を示す配置図である。図12(b)では送風部2が3つ設けられている。送風部2の1つと送風出口19aとが、平面視において、重なっている。送風部2が複数である場合は、送風部2の1つと送風出口19aとが、平面視において、重なっていてもよい。
図12(c)は図11(b)の配置のさらに他の例を示す配置図である。図12(c)には送風部2及び送風出口19aがそれぞれ2つ示されている。送風部2、2同士及び送風出口19a、19a同士は、本実施系形態では、それぞれが向かい合うように配置されている。送風部2と送風出口19aとは、平面視で、ほぼ等間隔に配置されている。送風出口19aが複数ある場合は、一方の送風出口19aに排気が集中しないのがよい。
【0076】
(サーキュレータ2a)
サーキュレータ2aは、送風口に複数のフィン(風切り羽根)が渦巻き状に設けられている。複数の風切り羽根の渦巻きの中心付近は、送風方向側に突出している。これにより、風が中央に集まり(収束し)、送風方向の中央における風速を向上できる。また、送風口から吹き出される風(スパイラル気流)の到達距離を伸ばすことができる。風切り羽根は送風の直進性を高める直進機構である。なお風切り羽根を上枠部7aに一体に設けてもよい。
【0077】
図14は他の実施形態に係る洗濯機の送風部2の防水カバー及び防塵フィルタの一例を示す概略図である。図に示している防水カバー26は、凹部7cを塞ぐ板状の部材である。防水カバー26は送風部2に洗濯槽からの水が浸水するのを防水する。例えば、スライドして凹部7cの開口を閉じるようにしてもよい。防水カバー26は、洗濯運転中は閉じている。非加熱による乾燥運転が始まると開き、当該乾燥運転が終了すると再び閉じる。
【0078】
図14に示している防塵フィルタ27は、凹部7cを覆うように設けられる。防塵フィルタ27はゴミなどの吸い込みを防止するものである。防塵フィルタ27は、例えば、凹部7cに弾力的に挿入することで固定される。
【0079】
その他、凹部7cの周縁にスリットなどの防塵フィルタ27の取付部(図示せず)を設けてもよい。また防塵フィルタ27は送風部2の吸引口に設けるのがよい。また吸引口に通じる経路の開口に防塵フィルタ27を設けてもよい。
【0080】
[7.その他]
(1)上述した実施形態は、それぞれを適宜に組み合わせて用いることができる。
(2)工程R2、R3において、検出部14は、閉状態から開状態又は開状態から閉状態への状態変化を検出するものでもよい。
(3)内槽10を回転する工程では、蓋11をロックするようにしてもよい。また蓋11を開けると、内槽10の回転を止めるブレーキ機構(図示せず)を備えてもよい。
(4)洗濯物21を取り出した後に、蓋11を閉じることが判定条件23に含まれている場合は、洗濯物21を取り出した後に、ユーザが蓋11を閉じるのを忘れないように、蓋11が所定時間開いていることを、音や光でユーザに報知してもよい。
(5)非加熱による乾燥運転中に表示部12の発光の代わりに、音を発してもよい。また表示の発光と共に音を発してもよい。
(6)上述した洗濯機において、送風部2を1つ以上設けてもよい。全ての送風部2で隙間3a又は内槽10を送風してもよい。また送風部2が複数の場合、一部を隙間3a又は内槽10のどちらかに振り分け、両方に送風するようにしてもよい。
(7)内槽10の重量を検出する重量検出部(図示せず)を設けてもよい。重量検出部による重量変化の情報を洗濯物21の取出しの判定条件の項目に加えてもよい。
(8)上述した洗濯機をインターネット回線に接続してもよい。外部の端末などから乾燥運転を命令してもよい。
(9)上枠部7aに送風部2を直接取り付けてもよい。
(10)上述した所定量、所定時間で示されている量や値は、操作パネル28を通じて、ユーザが設定できるようにしてもよい。
(11)排水工程S2の際に送風工程S3を実行してもよい。(11)負荷検出部13からの電流値が、所定の閾値と同じか、所定の閾値範囲にあるか若しくは前記閾値より小さいことを判定条件23の判定項目にしてもよい。
【0081】
[8.まとめ]
(1)本発明の洗濯機は、外槽及びその内部に設けた内槽からなる洗濯槽に非加熱の空気を送る送風部と、洗濯運転の終了を含む所定の判定条件に基づいて、前記洗濯槽から洗濯対象物が取出されたと判定すると、少なくとも前記送風部を作動する制御部とからなり、前記制御部により、自動的に前記洗濯槽の非加熱による乾燥運転が行われることを特徴としている。
洗濯槽を乾燥する操作を、ある一定期間以上にわたってユーザが忘れてしまったら、洗濯槽内にカビや細菌が発生してしまう。洗濯槽に一度カビが生えてしまったら簡単にキレイにすることは困難である。また洗濯運転の後、毎回自動で洗濯槽の乾燥を温風で行うと、ヒーターを作動させるため、電気代が増大する。
そこで、非加熱の送風で乾燥運転する。洗濯槽内の湿度を低減でき、洗濯槽でのカビの生育を防止できる。ユーザの操作の有無に関わらず、自動的に送風運転を行うと、ボタンの押忘れ(ユーザ操作)によるカビの発生を回避できる。また洗濯槽を清潔に維持できる。ヒーターを利用せず、消費エネルギーを減らすことで、電気代を抑えることができる。
【0082】
このような洗濯機は、前記制御部が、予め登録された条件に基づいて、前記取出しの判定をする判定手段と、前記取出しの判定に基づいて、少なくとも前記送風部を作動し、自動的に前記洗濯槽の非加熱による乾燥運転が行われる運転手段とからなる。
【0083】
(2)前記判定条件は、前記洗濯運転の終了に関する終了情報、前記洗濯槽の蓋の開状態に関する開情報及び前記蓋の閉状態に関する閉情報のそれぞれを順次取得することであるので、簡単な装置構成で洗濯槽から洗濯対象物が取り出されたことを検知できる。洗濯槽に洗濯対象物が存在しない状態で、非加熱での槽内乾燥を実施できる。
【0084】
(3)前記判定条件は、前記蓋の閉状態において、前記内槽を駆動部により回転させる際の前記駆動部の電流値が、所定の閾値以下であるか否かを判定するので、より確実に洗濯槽から洗濯対象物が取り出されたことを検知できる。洗濯槽に洗濯物が存在しない状態で、洗濯槽内の非加熱による乾燥を自動で実施できる。
【0085】
(4)前記乾燥運転は、前記洗濯槽に水を給水して前記内槽を回転する水洗工程と、前記水を排出する排水工程と、前記送風部を自動で作動する非加熱の送風工程とを備えているので、喫水線付近に生じる洗剤カス等、カビの栄養源を自動で定期的に除去することで、非加熱による送風乾燥の効果をさらに高めることができる。
【0086】
(5)前記排水工程の後に前記内槽を回転する水滴落し工程を備えているので、内槽が回転することで、内槽に付着した水滴を脱落させると共に、内槽の回転によって生じる気流によっても外槽に付着した水滴を脱落させられる。これにより、非加熱の送風による湿度低減又は低湿度の保持効果を高めることができる。
【0087】
(6)前記水滴落し工程において、前記送風部を作動するものであるので、内槽及び外槽に付着した水滴を脱落させることができる。これにより、非加熱の送風による湿度低減又は低湿度の保持効果を高めることができる。
【0088】
(7)前記内槽が回転していることを表示する表示部を備えているので、内槽の回転に伴う運転音がしている場合に、ユーザは当該運転が自動槽内乾燥(の一工程)であることを認識できる。例えば、実施中ランプが点灯する。また例えば、送風のみ運転の期間は通常洗濯運転等に比べて長く、また静かなため、報知しないことで電気代を抑制してもよい。点灯等の報知によるユーザへのストレスを軽減できる。
【0089】
(8)前記洗濯槽が上方に開口している縦型の洗濯機であり、前記洗濯槽の開口端から前記蓋の間で、且つ、前記洗濯槽の開口縁付近に、フレーム部が設けられており、前記フレーム部に前記送風部が設けられているので、洗濯槽(内槽及び外槽)に送風できる最上部に送風部を設けることで、送風範囲を最大化できる。
【0090】
(9)前記送風部は、前記内槽と前記外槽との隙間に非加熱の空気を送るものであるので、カビの生えやすい内槽と外槽とに対する乾燥効果を高められる。
【0091】
(10)前記送風部は遠心式のファンであるので、圧損が生じやすい狭い隙間にも非加熱の空気を流通させることができる。
【0092】
(11)一端が前記送風部に接続され、他端が前記内槽と外槽との間隙に向けられているダクト部材を備えているので、非加熱の送風の圧損、拡散を防止できる。
【0093】
(12)前記内槽の内部に非加熱の空気を送る送風部をさらに備えており、前記送風部の総数は2つ以上であるので、総送風量を大きくできる。そして非加熱による送風乾燥の効果を高めることができる。
【0094】
(13)前記内槽の内部に送風している送風部は、送風の直進性を高める直進機構を備えているので、直進性の高い送風により、内槽内の相対湿度を低減できる。槽内の奥まで非加熱の風を届かせることができる。
【0095】
(14)前記送風部が前記フレーム部の半径方向の内側に形成された凹部内に配置されており、前記凹部の開口に前記洗濯運転時に閉状態となる防水カバーが設けられているので、洗濯運転時に送風部に水が掛かって故障するのを防止できる。
【0096】
(15)前記送風部の吸引口に防塵フィルタが設けられているので、送風部に糸屑やほこり等が付着するのを防止できる。送風部の稼働時に洗濯槽内にカビの栄養源となる有機物やほこりを送風するリスクを低減できる。
【0097】
(16)前記送風部と対角を成す位置に送風出口が形成されており、前記送風出口にフィルタが設けられているので、湿った重い空気が停留しやすい送風出口付近にフィルタ装置を交換可能に設けることで、送風出口付近からのカビの槽内への流入を阻止できる。送風出口付近に生育するカビをフィルタで捕捉し、当該フィルタを交換することで、内槽及び外槽をより清潔な状態に維持できる。
【0098】
(17)本発明の濯機の洗濯槽の乾燥方法は、洗濯運転の終了を含む所定の判定条件に基づいて、洗濯槽からの洗濯対象物の取出しを判定し、前記取出しの判定に基づいて、少なくとも前記送風部を作動させ、自動的に前記洗濯槽の非加熱による乾燥運転が行われることを特徴としている。
洗濯槽を乾燥する操作を、ある一定期間以上にわたってユーザが忘れてしまったら、洗濯槽内にカビや細菌が発生してしまう。洗濯槽に一度カビが生えてしまったら簡単にキレイにすることは困難である。また洗濯運転の後、毎回自動で洗濯槽の乾燥を行うと、洗濯槽内に温風を供給するためにヒーターを作動させるため、電気代が増大する。
そこで、非加熱の送風で乾燥運転すると、洗濯槽内の湿度を低減でき、洗濯槽でのカビの生育を防止できる。ユーザの操作の有無に関わらず、自動的に送風運転を行うと、ボタンの押忘れ(ユーザ操作)によるカビの発生を回避できる。また洗濯槽を自動で清潔に維持できる。ヒーターを利用せず、消費エネルギーを減らすことで、電気代を抑えることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 洗濯機
1a 終了情報
2 送風部
2a サーキュレータ
3 洗濯槽
3a 隙間
4 制御部
5 判定手段
6 運転手段
7 筐体
7a 上枠部
7b 開口部
7c 凹部
8 駆動部
9 外槽
9a 肩部
10 内槽
10a 周壁
10b 内肩部
10c 開口部
10d 貫通孔
11 蓋
12 表示部
13 負荷検出部
13a 負荷情報
14 検出部
14a 開閉情報
15 給水部
16 排水部
17 洗濯機
18 洗濯機
19 洗濯機
19a 送風出口
19b フィルタ
19c 空気流れ
20 洗濯槽の乾燥方法
21 洗濯対象物(洗濯物)
22 プログラム
22a 変形例
22b 変形例
23 判定条件
23a 洗濯終了情報の取得
23b 蓋の開情報の取得
23c 取出し待ち時間の経過
23d 蓋の開情報の取得
23e 閉状態の待ち時間の経過
23f 内槽の回転負荷の判定
24 プログラム
24a 変形例
25 風切り羽根
25a 送風方向
26 防水カバー
27 フィルタ
28 操作パネル
30 CPU
31 メモリ
32 バスライン
33 通信回路
34a 送風方向
34b 内槽の回転に基づいて周方向に引かれる成分
34c 合成された送風方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13