(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025651
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 24/38 20110101AFI20230215BHJP
【FI】
H01R24/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077140
(22)【出願日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2021130446
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003414
【氏名又は名称】東京特殊電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中條 良亮
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直久
(72)【発明者】
【氏名】笹井 重広
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB76
5E223BA15
5E223CA13
5E223CC09
5E223GA26
5E223GA57
(57)【要約】
【課題】高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造において、屈曲性に優れた構成を提供することを目的とする。
【解決手段】高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2との接続構造は、中心導体5の外周に絶縁体6が配されて外部導体7が配されており、外部導体7に半田コートが施されて半田コート部7aが形成され、半田コート部7aがネジ切りされて雄螺子部7bが形成された高周波同軸ケーブル1と、センターピン5と本体部8とを有する同軸型コネクタ2との接続構造であって、高周波同軸ケーブル1は、雄螺子部7bに螺合する雌螺子部3cが形成された筒状のシェル3がねじ込み接続され固定されており、同軸型コネクタ2は、シェル3を収容する収容部が本体部8に形成されており、シェル3は前記収容部に収容され、クランプ9によって挟まれて固定されており、半田コート部7aは、シェル3の後端よりはみ出ない構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体の外周に絶縁体が配され前記絶縁体の外周に外部導体が配されて前記外部導体に半田コートが施されて半田コート部が形成され前記半田コート部がネジ切りされて雄螺子部が形成された高周波同軸ケーブルと、センターピンと本体部とを有する同軸型コネクタとの接続構造であり、
前記高周波同軸ケーブルは、前記雄螺子部に螺合する雌螺子部が形成された筒状のシェルがねじ込み接続され固定されており、前記同軸型コネクタは、前記シェルを収容する収容部が前記本体部に形成され前記収容部に収容された前記シェルがクランプによって挟まれて締め付け固定されており、
前記半田コート部は、前記シェルの後端よりはみ出ない構成であること
を特徴とする高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造。
【請求項2】
前記半田コート部における前記雄螺子部は、ネジ切りした外径に対して2~15%の比率の深さとなるネジ切りした溝が形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造。
【請求項3】
中心導体の外周に絶縁体が配され前記絶縁体の外周に外部導体が配されて前記外部導体に半田コートが施されて半田コート部が形成され前記半田コート部がネジ切りされて雄螺子部が形成された高周波同軸ケーブルと、センターピンと本体部とを有する同軸型コネクタとの接続構造であり、
前記高周波同軸ケーブルは、前記雄螺子部に螺合する雌螺子部が形成された前記本体部にねじ込み接続され固定されており、
前記半田コート部は、前記本体部の後端よりはみ出ない構成であること
を特徴とする高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造。
【請求項4】
前記半田コート部における前記雄螺子部は、ネジ切りした外径に対して2~15%の比率の深さとなるネジ切りした溝が形成されていること
を特徴とする請求項3に記載の高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部導体形成先端部が半田コートされ螺旋状凹凸加工が施された高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造が知られている(特許文献1:特許第4270489号公報、特許文献2:特許第4785184号公報、特許文献3:特許第6587412号公報)。特許文献1に記載の接続構造は、一例として、半田コートされた外部導体にネジ切りを行って、フランジを有するシェルにねじ込んで、前記シェルを同軸型コネクタ本体に装着して電気的に接続する構成である。特許文献2に記載の接続構造は、一例として、半田コートされた外部導体にネジ切りを行って、同軸型コネクタ本体にねじ込んで電気的に接続する構成である。特許文献3に記載の接続構造は、一例として、半田コートされた外部導体に半田や接着剤等で固定されたスリーブにネジ切りを行って、前記スリーブを同軸型コネクタ本体にねじ込んで電気的に接続する構成である。ここで、シェルとスリーブとは同義である。前記接続構造の他にも、同軸ケーブルの外部導体と同軸型コネクタを加締めて固定した構造や、筒状のシェルを半田で固定してクランプで挟み込む構造等が知られている。これらの接続構造は、必要な接続強度を確保するために実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4270489号公報
【特許文献2】特許第4785184号公報
【特許文献3】特許第6587412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロ波帯やミリ波帯等の高周波帯では、高周波同軸ケーブルが用いられている。従来、高周波同軸ケーブルの端末におけるコネクタ成端作業では、シースを剥いた外部導体部を半田コートすると同時にシェルと半田付けする方法や、シースを剥いた外部導体部を半田コートした後、シェル又はコネクタ本体の根元に追加で半田付してシェル又はコネクタ本体を固定する方法等があった。このような方法で高周波同軸ケーブルの端末にコネクタ成端作業を行った場合、シェルやコネクタ本体を接続した際に、高周波同軸ケーブルのシース内部に至るまで半田コートされたり、コネクタ外の高周波同軸ケーブルにおける外部導体にも半田コートがされたりするため、本来必要ではない部分にまで半田が上がってしまい、高周波同軸ケーブルが硬くなって折れ易くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造において、屈曲性に優れた構成を提供することを目的とする。
【0006】
一実施形態として、以下に開示するような解決策により、前記課題を解決する。
【0007】
本発明に係る高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造は、中心導体の外周に絶縁体が配され、前記絶縁体の外周に外部導体が配されており、前記外部導体に半田コートが施されて半田コート部が形成され、前記半田コート部がネジ切りされて雄螺子部が形成された高周波同軸ケーブルと、センターピンと本体部とを有する同軸型コネクタとの接続構造であって、前記高周波同軸ケーブルは、前記雄螺子部に螺合する雌螺子部が形成された筒状のシェルがねじ込み接続され固定されており、前記同軸型コネクタは、前記シェルを収容する収容部が前記本体部に形成されており、前記シェルは、前記収容部に収容され、クランプによって挟まれて固定されており、前記半田コート部は、前記シェルの後端よりはみ出ない構成であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、高周波同軸ケーブルが屈曲可能な範囲に、半田コートが施されていない構成となるので、従来品よりも屈曲性に優れた構成にできる。一例として、前記シェルの前端より前記半田コート部がはみ出る構成にする場合がある。一例として、前記シェルの前端にフランジを設ける場合がある。一例として、シェルの内部に半田コート部が収まっている構成である。
【0009】
本発明に係る高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造は、中心導体の外周に絶縁体が配され、前記絶縁体の外周に外部導体が配されており、前記外部導体に半田コートが施されて半田コート部が形成され、前記半田コート部がネジ切りされて雄螺子部が形成された高周波同軸ケーブルと、センターピンと本体部とを有する同軸型コネクタとの接続構造であって、前記高周波同軸ケーブルは、前記雄螺子部に螺合する雌螺子部が形成された前記本体部にねじ込み接続され固定されており、前記半田コート部は、前記本体部の後端よりはみ出ない構成であることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、半田コート部が本体部の中に収まっており、高周波同軸ケーブルが屈曲可能な範囲には半田コートが施されていない構成となるので、従来品よりも屈曲性に優れた構成にできる。
【0011】
前記半田コート部における前記雄螺子部は、ネジ切りした外径に対して2%以上の比率の深さとなるネジ切りした溝が形成されていることが好ましい。外部導体形成先端部の螺旋状凹凸加工の条件によっては所望の強度に達しないことがあったが、この構成によれば、細径の高周波同軸ケーブルの場合においても、必要な引張強度が確保できる。前記比率は4%以上であることがより好ましい。これにより、細径の高周波同軸ケーブルの場合においても、顕著な引張強度の向上が図れる。
【0012】
前記半田コート部における前記雄螺子部は、ネジ切りした外径に対して15%以下の比率の深さとなるネジ切りした溝が形成されていることが好ましい。従来、外部導体形成先端部の螺旋状凹凸加工の条件によっては外部導体にキズが入って破損することがあったが、この構成によれば、外部導体の破損がより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造において、屈曲性に優れた構成の接続構造が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明の第1の実施形態に係る高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造の一例を模式的に示す構造図である。
【
図2】
図2Aは第1の実施形態に係る高周波同軸ケーブルの概略断面図であり、
図2Bは
図2Aの高周波同軸ケーブルにおける外部導体に半田コートした状態の概略断面図であり、
図2Cは、
図2Bの高周波同軸ケーブルをネジ切りした状態とシェルとの関係を示す概略断面図であり、
図2Dは、
図2Cの高周波同軸ケーブルにシェルをねじ込み接続して固定した状態と同軸型コネクタとの関係を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は本発明の第2の実施形態に係る高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造の一例を模式的に示す構造図である。
【
図4】
図4Aは第2の実施形態に係る高周波同軸ケーブルの概略断面図であり、
図4Bは
図4Aの高周波同軸ケーブルにおける外部導体に半田コートした状態の概略断面図であり、
図4Cは、
図4Bの高周波同軸ケーブルをネジ切りした状態と同軸型コネクタとの関係を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は本発明の第3の実施形態に係る高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造の一例を模式的に示す構造図である。
【
図6】
図6Aは第3の実施形態に係る高周波同軸ケーブルの概略断面図であり、
図6Bは
図6Aの高周波同軸ケーブルにおける外部導体に半田コートした状態の概略断面図であり、
図6Cは、
図6Bの高周波同軸ケーブルをネジ切りした状態とシェルとの関係を示す概略断面図であり、
図6Dは、
図6Cの高周波同軸ケーブルにシェルをねじ込み接続して固定した状態と同軸型コネクタとの関係を示す概略断面図である。
【
図7】
図7Aは高周波同軸ケーブルの第1例を示す概略の構造図であり、
図7Bは高周波同軸ケーブルの第2例を示す概略の構造図であり、
図7Cは高周波同軸ケーブルの第3例を示す概略の構造図であり、
図7Dは高周波同軸ケーブルの第4例を示す概略の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。本実施形態の高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造は、一例として、DC~ミリ波帯の信号伝送用ケーブルに適用される。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0016】
[高周波同軸ケーブル]
高周波同軸ケーブル1について、
図7A~
図7Dに基づいて以下に説明する。
【0017】
図7Aは第1例の高周波同軸ケーブル1Aであり、最外周にシームレスの金属管17を設けて外部導体7にした構成である。上記構成に加えて、金属管17の外周に絶縁性のシース16を設ける場合がある。
【0018】
図7Bは第2例の高周波同軸ケーブル1Bであり、絶縁体6の外周に金属素線による編組線13を設けて外部導体7にした構成である。最外周には絶縁性のシース16が配されている。
【0019】
図7Cは第3例の高周波同軸ケーブル1Cであり、絶縁体6の外周に金属箔11を螺旋巻きして当該金属箔11の外周に金属素線による編組線13を設けて外部導体7にした構成である。最外周には絶縁性のシース16が配されている。
【0020】
図7Dは第4例の高周波同軸ケーブル1Dであり、絶縁体6の外周に金属箔11を螺旋巻きして当該金属箔11の外周に緩衝用の樹脂テープ12を螺旋巻きして当該樹脂テープ12の外周に金属素線による編組線13を設けて外部導体7にした構成である。最外周には絶縁性のシース16が配されている。
【0021】
上記構成以外の構成として、一例として、金属箔11は縦添えされる場合がある。一例として、金属素線による横巻きの場合がある。したがって、外部導体7は、絶縁体6の外周に設けられた金属管17、または螺旋巻き若しくは縦添えされた金属箔11、緩衝用の樹脂テープ12、または金属素線による編組線13若しくは金属素線による横巻き、或いはこれらを複合的に用いて構成されている。
【0022】
高周波同軸ケーブル1は、
図1に例示されているように、外部導体7における同軸型コネクタ2との接続端部の外周に半田コートが施されて半田コート部7aが形成され、半田コート部7aがネジ切りされて雄螺子部7bが形成されている。外部導体7が金属管によって構成される場合は半田コートした状態で外周に雄螺子部7bが形成される。外部導体7が螺旋巻きした金属箔、または金属素線による編組線、或いはこれらを複合的に用いた場合は、半田コートして一体構造にした外部導体7に雄螺子部7bが形成される。これにより、雄螺子部7bの形状が安定し、外部導体7の先端面をシェルやコネクタ内壁に密着させるのに十分な締め付けが可能になる。その結果、構造寸法の連続性が確保できて、良好な高周波伝送特性とシールド特性が得られる。
【0023】
中心導体5は、一例として、銅または銅合金、銅被覆鋼線、ステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金、銅クラッドアルミニウム等の複合材料或いは、これらの材料に導電率の高い金属がめっきされたものが適用される。一例として、中心導体5は銀メッキ軟銅線または軟銅線である。中心導体5は、単線または撚線を用いることができる。また、中心導体5は、複数の導線を束ねて軸線方向に圧縮し略円形の横断面に圧縮した圧縮導体を用いることができる。一例として、銅線を伸線加工して、断面が円形や楕円形等の丸形状の中心導体5にする。
【0024】
絶縁体6は、一層以上の絶縁体から構成されており、一例として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、エチレン-四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ素化樹脂共重合体(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂:PFA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)等が適用される。100GHzを超える周波数帯で使用する場合、低誘電率の絶縁体から構成されていることがより好ましい。低誘電率の絶縁体6は、一例として、多孔質PTFEやPTFEが挙げられる。
【0025】
外部導体7は、絶縁体6の外周に設けられた金属管17、または螺旋巻き若しくは縦添えされた金属箔11、緩衝用の樹脂テープ12、または金属素線による編組線13若しくは金属素線による横巻き、或いはこれらを複合的に用いて構成されている。
【0026】
金属箔11は、一層以上の導電性金属箔である。金属箔11は、ステンレス、ニッケル合金、銅または銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、またはこれらの複合材料、或いは、これらの材料に導電率の高い、且つ、半田付け性に優れた金属がめっきされたもの等が用いられる。樹脂テープ12は、一層以上の絶縁体から構成されており、金属箔11の外周面に形成され、加熱によって自己融着する構成が好ましい。樹脂テープ12を構成する絶縁体には、PEN、PPS、PET、PA等が用いられる。編組線13は、導電性金属素線による編組線である。編組線13を構成する金属素線には、ステンレス、ニッケル合金、銅または銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、またはこれらの複合材料、或いは、これらの材料に導電率の高い、且つ、半田付け性に優れた金属がめっきされたもの等が用いられる。
【0027】
一例として、高周波同軸ケーブル1における外部導体7の直径は、0.5~7mmであり、より好ましくは2~7mmである。外部導体7の直径を7mm以下にすることで、細径かつ柔軟な構成になり、小型化及び高密度化された電子機器に対応することが容易にできる。外部導体7の直径は6mm以下がより好ましい。また、外部導体7の直径を2mm以上にすることで、電子機器に使用する際に必要な引張強度が得られる。
【0028】
シース16は、外部と絶縁する絶縁外皮であり、高周波同軸ケーブル1における最外層を構成している。シース16は、一例として、フッ素系樹脂のFEPにより構成されている。用途に応じて、シース16を設ける構成とシース16を設けない構成とがある。
【0029】
[第1の実施形態]
高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造の第1の実施形態の一例について、
図1及び
図2A~
図2Dに基づいて以下に説明する。
【0030】
図1は、中心導体5の外周に絶縁体6が配され、絶縁体6の外周に外部導体7が配され、最外周にシース16が配されており、外部導体7に半田コートが施されて半田コート部7aが形成され、半田コート部7aがネジ切りされて雄螺子部7bが形成された高周波同軸ケーブル1と、センターピン15と本体部8とを有する同軸型コネクタ2との接続構造の一例である。
【0031】
高周波同軸ケーブル1は、外部導体7の外周端部に、雄螺子部7bが形成されている。金属製で筒状のシェル3は、雄螺子部7bに対応する雌螺子部3cが内部に形成されている。シェル3は、高周波同軸ケーブル1に、ねじ込み接続され固定されている。同軸型コネクタ2は、金属製の本体部8の内部に、シェル3に対応する収容部8cが形成されている。
【0032】
同軸型コネクタ2の本体部8は、内部の先端側にセンターピン15が設けられており、内部の後端側に雌ねじ8dが形成されている。クランプ9は、雌ねじ8dと螺合する雄ねじ9dが先端側の外周に形成されている。センターピン15の後端は割ピン形状になっており、一例として、中心導体5の先端がセンターピン15の後端に圧入されて接続される。シェル3は、一例として、銅または銅合金、ステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金、銅クラッドアルミニウム等の複合材料、或いは、これらの材料に導電率の高い金属がめっきされたものが用いられる。
【0033】
半田コート部7aは、シェル3の後端3bよりはみ出ない構成である。雄螺子部7bはネジ切りした外径D1に対して2~15%の比率の深さとなる溝G1が形成されている。そして、高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2とはシェル3が収容部8cに収容された状態でクランプ9によってねじ込み接続されて固定されている。
【0034】
続いて、本実施形態の製造手順について、
図2A~
図2Dに基づいて以下に説明する。
【0035】
先ず、
図2Aに示す状態の高周波同軸ケーブル1の端部を、シース16を剥いて外部導体7を露出させる。そして、露出した外部導体7の先端側に半田コートを施して、
図2Bに示すように半田コート部7aを形成する。雄螺子部7bになる部分は、編組線13にコートされた半田によって金属箔11と樹脂テープ12と編組線13とが一体構造になる。はんだ槽に浸して半田コートを施し、一例として、はんだ槽の温度を320℃、浸漬時間を約2秒間に調整し、半田コート部7aの範囲を規定内にする。少なくとも、シース16の先端は、半田コート部7aが施されていない状態にする。そして、半田コート部7aの先端部および絶縁体6の先端部を除去して中心導体5を露出させる。
【0036】
次に、半田コート部7aに、専用のネジ切りダイスを用いた粗雄ねじ加工を施して、
図2Cに示すように雄螺子部7bを形成する。ネジ切りした外径D1に対して2~15%の比率の深さとなる溝G1を形成して雄螺子部7bにする。シェル3は、内周面に雌螺子部3cが形成されている。ここで、雄螺子部7bにおけるネジ切りした外径D1は雌螺子部3cにおける谷径E1に対応しており、雄螺子部7bにおけるネジ切りした谷径D2は雌螺子部3cにおける内径E2に対応している。ここで、シェル3の前端3aは、雌螺子部3cの始端または雌螺子部3cの終端になっている。そして、半田コート部7aは、シェル3の後端3bよりはみ出ない構成である。半田コート部7aは、シェル3の前端3aよりはみ出る構成にする場合があり、シェル3の前端3aよりはみ出ない構成にする場合がある。
【0037】
そして、
図2Dに示すように、クランプ9の貫通穴9cに挿通した状態の高周波同軸ケーブル1に、シェル3がねじ込み接続されるまで回転挿入し、シェル3の前端3aと雄螺子部7bの先端面とが面一になるまで、またはシェル3の前端3aから雄螺子部7bの先端面が突き出るまで、ねじ込み接続して固定する。シェル3は、外周中ほどの位置に、外向きに突出して鍔状の受部3eが形成されている。
【0038】
高周波同軸ケーブル1とシェル3とを一体構造にした後、シェル3の受部3eにクランプ9の前端9aを当接させた状態で、同軸型コネクタ2の本体部8に、クランプ9がねじ込み接続されるまで回転挿入し、シェル3が収容部8cに収容され、クランプ9によって挟まれて固定されるまで、ねじ込み接続して固定する。このときのねじ締めトルクにて雄螺子部7bの先端面が本体部8の内壁の段差部分に押し付けられて安定接触する。これにより、
図1に示すように高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2との接続構造が完成する。
【0039】
[第2の実施形態]
続いて、高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造の第2の実施形態の一例について、
図3及び
図4A~
図4Cに基づいて以下に説明する。
【0040】
図3は、中心導体5の外周に絶縁体6が配され、絶縁体6の外周に外部導体7が配され、最外周にシース16が配されており、外部導体7に半田コートが施されて半田コート部7aが形成され、半田コート部7aがネジ切りされて雄螺子部7bが形成された高周波同軸ケーブル1と、センターピン15と本体部4とを有する同軸型コネクタ2との接続構造の一例である。
【0041】
高周波同軸ケーブル1は、外部導体7の外周端部に、雄螺子部7bが形成されている。金属製の本体部4は、雄螺子部7bに対応する雌螺子部4cが内部に形成されている。高周波同軸ケーブル1は、本体部4に、ねじ込み接続され固定されている。
【0042】
同軸型コネクタ2の本体部4は、内部の先端側にセンターピン15が設けられており、内部の後端側に雌螺子部4cが形成されている。センターピン15の後端は割ピン形状になっており、一例として、中心導体5の先端がセンターピン15の後端に圧入されて接続される。
【0043】
半田コート部7aは、本体部4の後端4bよりはみ出ない構成である。雄螺子部7bはネジ切りした外径D1に対して2~15%の比率の深さとなる溝G1が形成されている。そして、高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2とは、ねじ込み接続されて固定されている。
【0044】
続いて、本実施形態の製造手順について、
図4A~
図4Cに基づいて以下に説明する。
【0045】
先ず、
図4Aに示す状態の高周波同軸ケーブル1の端部を、シース16を剥いて外部導体7を露出させる。そして、露出した外部導体7の先端側に半田コートを施して、
図4Bに示すように半田コート部7aを形成する。上述の実施形態と同様に、半田コート部7aの範囲を規定内にする。そして、半田コート部7aの先端部および絶縁体6の先端部を除去して中心導体5を露出させる。
【0046】
次に、半田コート部7aに、専用のネジ切りダイスを用いた粗雄ねじ加工を施して、
図4Cに示すように雄螺子部7bを形成する。上述の実施形態と同様に、雄螺子部7bの範囲を規定内にする。
【0047】
そして、
図4Cに示すように、本体部4を、高周波同軸ケーブル1に、ねじ込み接続されるまで回転挿入し、ねじ込み接続して固定する。このときのねじ締めトルクにて雄螺子部7bの先端面が本体部4の内壁の段差部分に押し付けられて安定接触する。これにより、
図3に示すように高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2との接続構造が完成する。
【0048】
[第3の実施形態]
高周波同軸ケーブルと同軸型コネクタとの接続構造の第3の実施形態の一例について、
図5及び
図6A~
図6Dに基づいて以下に説明する。
【0049】
図5は、中心導体5の外周に絶縁体6が配され、絶縁体6の外周に外部導体7が配され、最外周にシース16が配されており、外部導体7に半田コートが施されて半田コート部7aが形成され、半田コート部7aがネジ切りされて雄螺子部7bが形成された高周波同軸ケーブル1と、センターピン15と本体部8とを有する同軸型コネクタ2との接続構造の一例である。
【0050】
高周波同軸ケーブル1は、外部導体7の外周端部に、雄螺子部7bが形成されている。金属製で筒状のシェル3は、雄螺子部7bに対応する雌螺子部3cが内部に形成されている。シェル3は、高周波同軸ケーブル1に、ねじ込み接続され固定されている。シェル3の先端部は、内側に向かって延設されたフランジ3dが形成されている。同軸型コネクタ2の本体部8は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0051】
続いて、本実施形態の製造手順について、
図6A~
図6Dに基づいて以下に説明する。
【0052】
先ず、
図6Aに示す状態の高周波同軸ケーブル1の端部を、シース16を剥いて外部導体7を露出させる。そして、露出した外部導体7の先端側に半田コートを施して、
図6Bに示すように半田コート部7aを形成する。上述の実施形態と同様に、半田コート部7aの範囲を規定内にする。そして、半田コート部7aの先端部および絶縁体6の先端部を除去して中心導体5を露出させる。
【0053】
次に、半田コート部7aに、専用のネジ切りダイスを用いた粗雄ねじ加工を施して、
図6Cに示すように雄螺子部7bを形成する。上述の実施形態と同様に、雄螺子部7bの範囲を規定内にする。ここで、雄螺子部7bにおけるネジ切りした外径D1は雌螺子部3cにおける谷径E1に対応しており、雄螺子部7bにおけるネジ切りした谷径D2は雌螺子部3cにおける内径E2に対応している。シェル3におけるフランジ3dの内径E3は雄螺子部7bにおける谷径D2よりも小さく設定される。
【0054】
そして、
図6Dに示すように、クランプ9の貫通穴9cに挿通した状態の高周波同軸ケーブル1に、シェル3におけるフランジ3dの内壁に雄螺子部7bの先端面が突き当たって高周波同軸ケーブル1がねじ込み接続されるまでシェル3を回転挿入して高周波同軸ケーブル1とシェル3とを一体構造にして固定する。
【0055】
高周波同軸ケーブル1とシェル3とを一体構造にした後、シェル3の受部3eにクランプ9の前端9aを当接させた状態で、同軸型コネクタ2の本体部8に、クランプ9がねじ込み接続されるまで回転挿入し、シェル3が収容部8cに収容され、クランプ9によって挟まれて固定されるまで、ねじ込み接続して固定する。このときのねじ締めトルクにてシェル3の先端面が本体部8の内壁の段差部分に押し付けられて安定接触する。これにより、
図5に示すように高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2との接続構造が完成する。
【0056】
[実施例1~4]
続いて、上述の第1の実施形態に係る高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2との接続構造の実施例1~4と、比較例1~3について、以下に説明する。
【0057】
高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2との接続構造は上述のとおり、半田コート部7aがシェル3の後端よりはみ出ない構成である。高周波同軸ケーブル1の端部における外部導体7を露出させて、露出した外部導体7に半田コートを施して半田コート部7aを形成した。半田コート部7aの厚みは0.25~0.5mmである。次に、半田コート部7aに専用のネジ切りダイスを用いた粗雄ねじ加工を施して雄螺子部7bを形成した。そして、外部導体7に螺旋状凹凸加工を施す際に、外部導体7の外径に対して0.5~18%の範囲内の深さで切り込みを入れて、切り込み条件を異ならせた実施例1~実施例4と、比較例1~比較例3とした。そして、シェル3におけるフランジ3dの内壁に雄螺子部7bの先端面が突き当たって高周波同軸ケーブル1がねじ込み接続されるまで回転挿入して高周波同軸ケーブル1とシェル3とを一体構造にした。
【0058】
各試料について、引張試験機(シングルコラム型材料試験機STA-1225)の一端側に高周波同軸ケーブル1の端部を固定し、引張試験機の他端側にシェル3を固定して、試験速度200mm/minにおける外部導体7が破断するまでに要した引張強度を測定した。評価基準は、引張強度が140N以上をAランクとし、引張強度が140N未満をBランクとし、シェル3が装着不可をCランクとした。
【0059】
各試料の引張強度の評価結果を表1に示す。
【0060】
【0061】
表1に示すように、実施例1~4は、いずれも引張強度がAランクであり、ここで必要とされる引張強度140N以上を確保できている。一方で、比較例1は、ネジ切り不足であり、引張強度がCランクの不良品になった。また、比較例2と比較例3は、ネジ切り過剰であり、引張強度がBランクとなった。実施例1~4は、従来技術と比較して、曲げや捻りに対する物理的な強度が確保できる優れた特性であることが判明した。
【0062】
[実施例5]
続いて、上述の第1の実施形態に係る高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2との接続構造の実施例5と、比較例4について、以下に説明する。
【0063】
実施例5の構成部品と実施例1~4の構成部品との相違点は外径D1を変更していることであり、接続構造は同じである。比較例4についても同様である。
【0064】
各試料について、引張試験機の一端側に高周波同軸ケーブル1の端部を固定し、引張試験機の他端側に同軸型コネクタ2を固定して、試験速度200mm/minにおける外部導体7が破断するまでに要した引張強度を測定した。評価基準は、引張強度が270N以上をAランクとし、引張強度が270N未満をBランクとし、同軸型コネクタ2が装着不可をCランクとした。
【0065】
各試料の引張強度の評価結果を表2に示す。
【0066】
【0067】
表2に示すように、実施例5は、引張強度がAランクであり、ここで必要とされる引張強度270N以上を確保できている。一方で、比較例4は、ネジ切り過剰であり、引張強度がBランクとなった。
【0068】
[実施例6]
続いて、上述の第2の実施形態に係る高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2との接続構造の実施例6について、以下に説明する。
【0069】
高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2との接続構造は上述のとおりである。高周波同軸ケーブル1の端部における外部導体7を露出させて、露出した外部導体7に半田コートを施して半田コート部7aを形成した。半田コート部7aの厚みは0.25~0.5mmである。次に、半田コート部7aに専用のネジ切りダイスを用いた粗雄ねじ加工を施して雄螺子部7bを形成した。そして、外部導体7に螺旋状凹凸加工を施す際に、外部導体7の外径に対して0.5~18%の範囲内の深さで切り込みを入れて、切り込み条件を異ならせた実施例6とした。そして、高周波同軸ケーブル1を、同軸型コネクタ2における内壁に雄螺子部7bの先端面が突き当たって高周波同軸ケーブル1がねじ込み接続されるまで回転挿入して高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2とを一体構造にした。
【0070】
各試料について、引張試験機の一端側に高周波同軸ケーブル1の端部を固定し、引張試験機の他端側に同軸型コネクタ2を固定して、試験速度200mm/minにおける外部導体7が破断するまでに要した引張強度を測定した。評価基準は、引張強度が270N以上をAランクとし、引張強度が270N未満をBランクとし、同軸型コネクタ2が装着不可をCランクとした。
【0071】
各試料の引張強度の評価結果を表3に示す。
【0072】
【0073】
表3に示すように、実施例6は、引張強度がAランクであり、ここで必要とされる引張強度270N以上を確保できている。実施例6と実施例5とは構成部品に相違点はあるが、接続構造の要部は同じである。実施例6の外径D1と実施例5の外径D1とは概ね一致していることから、引張強度が概ね一致したと判断できる。
【0074】
[実施例7]
続いて、上述の第1の実施形態に係る高周波同軸ケーブル1と同軸型コネクタ2との接続構造の実施例7について、以下に説明する。
【0075】
実施例7の構成部品と実施例1~4の構成部品との相違点は外径D1を変更していることであり、接続構造は同じである。
【0076】
各試料について、引張試験機の一端側に高周波同軸ケーブル1の端部を固定し、引張試験機の他端側に同軸型コネクタ2を固定して、試験速度200mm/minにおける外部導体7が破断するまでに要した引張強度を測定した。評価基準は、引張強度が245N以上をAランクとし、引張強度が245N未満をBランクとし、同軸型コネクタ2が装着不可をCランクとした。
【0077】
各試料の引張強度の評価結果を表4に示す。
【0078】
【0079】
表4に示すように、実施例7は、引張強度がAランクであり、ここで必要とされる引張強度245N以上を確保できている。
【0080】
上述のとおり、ネジ切りした外径D1に対して2%以上の比率の深さとなるネジ切りした溝G1が形成されていることで、細径の高周波同軸ケーブル1の場合においても、必要な引張強度が確保できることが確認できた。なお、ねじの緩みを防止する目的で、螺合部分を熱硬化性接着剤等の樹脂接着剤にて接着する場合がある。また、一例として、PVCやポリオレフィン等の樹脂製のアーマー等の保護外装を取付ける場合がある。本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 高周波同軸ケーブル
2 同軸型コネクタ
3 シェル、3a 前端、3b 後端、3c 雌螺子部、3d フランジ、3e 受部
4 本体部、4b 後端、4c 雌螺子部
5 中心導体
6 絶縁体
7 外部導体、7a 半田コート部、7b 雄螺子部
8 本体部、8c 収容部、8d 雌ねじ
9 クランプ、9a 前端、9c 貫通穴、9d 雄ねじ
11 金属箔
12 樹脂テープ
13 編組線
15 センターピン
16 シース
D1 外径
D2 谷径
E1 谷径
E2 内径
E3 内径
G1 溝