(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025679
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】モーター駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230215BHJP
H02P 27/08 20060101ALI20230215BHJP
H02P 21/22 20160101ALI20230215BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02P27/08
H02P21/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115937
(22)【出願日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0105574
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨンジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ジェホ
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA19
5H505BB02
5H505CC04
5H505DD03
5H505EE41
5H505EE49
5H505FF02
5H505GG04
5H505HA09
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505JJ22
5H505JJ28
5H505LL22
5H505LL41
5H770AA05
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA27
5H770DA30
5H770DA41
5H770EA01
5H770EA19
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA07Z
(57)【要約】
【課題】複数の相にそれぞれ対応する複数の巻線を有するモーターを駆動するモーター駆動装置を提供する。
【解決手段】前記モーター駆動装置は、複数の第1スイッチング素子を含み、前記複数の巻線のそれぞれの第1端に連結された第1インバーターと、複数の第2スイッチング素子を含み、前記複数の巻線のそれぞれの第2端に連結された第2インバーターと、事前に設定された前記モーターの電圧指令に対応する電圧ベクターに一番近い有効ベクターを前記複数の第2スイッチング素子のデューティーに決定し、前記モーターの電圧指令に前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターを合算した値を前記第1インバーターの電圧指令として使用して前記第1スイッチング素子をパルス幅変調制御するコントローラーとを含む。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の相にそれぞれ対応する複数の巻線を有するモーターを駆動するモーター駆動装置であって、
複数の第1スイッチング素子を含み、前記複数の巻線のそれぞれの第1端に連結された第1インバーターと、
複数の第2スイッチング素子を含み、前記複数の巻線のそれぞれの第2端に連結された第2インバーターと、
事前に設定された前記モーターの電圧指令に対応する電圧ベクターに一番近い有効ベクターを前記複数の第2スイッチング素子のデューティーに決定し、前記モーターの電圧指令に前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターを合算した値を前記第1インバーターの電圧指令として使用して前記第1スイッチング素子をパルス幅変調制御するコントローラーと、
を含む、モーター駆動装置。
【請求項2】
前記コントローラーは、前記第1スイッチング素子をRSPWM(Remote State Pulse Width Modulation)方式で制御することを特徴とする、請求項1に記載のモーター駆動装置。
【請求項3】
前記コントローラーは、前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターと同一の0相成分電圧を有する複数の有効ベクターを用いて前記第1インバーターの電圧指令を合成することを特徴とする、請求項1に記載のモーター駆動装置。
【請求項4】
前記コントローラーは、前記モーターの電圧指令を逆回転変換して3相電圧指令を生成し、前記3相電圧指令に基づいて前記モーターの電圧指令に対応する電圧ベクターに一番近い有効ベクターを決定することを特徴とする、請求項1に記載のモーター駆動装置。
【請求項5】
前記コントローラーは、次の式、
Dabc、inv2=Sign(Vabcn、lim
*)
(x≧0であればSign(x)=1、x<0であればSign(x)=0)を用いて前記モーターの電圧指令に対応する電圧ベクターに一番近い有効ベクターを決定することを特徴とする、請求項4に記載のモーター駆動装置(Dabc、inv2:前記モーターの電圧指令に対応する電圧ベクターに一番近い有効ベクターに相当するデューティー、Vabcn、lim
*:前記3相電圧指令)。
【請求項6】
前記コントローラーは、前記モーターの電圧指令に前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターを回転変換した結果を合算して前記第1インバーターの電圧指令を生成することを特徴とする、請求項1に記載のモーター駆動装置。
【請求項7】
前記コントローラーは、前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターと同一の0相成分電圧を有する複数の有効ベクターが一定の順に繰り返されるように前記第1スイッチング素子をスイッチングすることを特徴とする、請求項3に記載のモーター駆動装置。
【請求項8】
前記コントローラーは、前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターと同一の0相成分電圧を有する複数の有効ベクターが事前に設定された一スイッチング周期の中間時点を基準に対称的に現れるように前記第1スイッチング素子をスイッチングすることを特徴とする、請求項3に記載のモーター駆動装置。
【請求項9】
前記コントローラーは、前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターと同一の0相成分電圧を有する複数の有効ベクターのスイッチング状態の中で一番長いデューティーを有するスイッチング状態が前記中間時点の前後に連続して現れるように前記第1スイッチング素子をスイッチングすることを特徴とする、請求項8に記載のモーター駆動装置。
【請求項10】
前記コントローラーは、事前に設定された前記モーターの電圧指令を事前に設定された上限値及び下限値に制限することを特徴とする、請求項1に記載のモーター駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモーター駆動装置に関し、より詳しくはモーターの巻線の両端にそれぞれインバーターが連結されたオープンエンドワインディング方式のモーター駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モーターに含まれた各相の巻線は、その一端が一つのインバーターに連結され、他端が互いに連結されてY結線を形成する。
【0003】
モーター駆動の際、インバーター内のスイッチング素子はパルス幅変調制御によってオン/オフされ、Y結線されたモーターの巻線に線間電圧を印加して交流電流を生成することによりトルクを発生させる。
【0004】
このようなモーターによって発生するトルクを動力として用いる電気車などのような、環境に優しい車両の燃費(又は電費)は、インバーター-モーターの電力変換効率によって決定されるので、燃費向上のためには、インバーターの電力変換効率とモーターの効率を極大化することが重要である。
【0005】
インバーター-モーターシステムの効率は、主にインバーターの電圧利用率によって決定され、電圧利用率の高い区間でモーター速度とトルクとの間の関係によって決定される車両の運転点が形成される場合、車両の燃費が向上することができる。
【0006】
しかし、モーターの最大トルクを増加させるためにモーターの巻線数を増加させるほど、電圧利用率の高い区間は、車両の主要運転点である低トルク領域から遠くなって、燃費が悪くなる問題点が発生することがある。また、燃費の観点で電圧利用率が高い区間に主要運転点を含むように設計する場合、モーターの最大トルクに制約ができ、車両の加速発進性能が落ちる問題が発生することがある。
【0007】
このような問題を解決するために、当該技術分野ではモーターの巻線の一端をY結線で短絡させる代わりに、モーターの巻線の両端にそれぞれインバーターを連結して両インバーターを駆動するオープンエンドワインディング(Open End Winding:OEW)方式のモーター駆動技法が提案された。
【0008】
このようなオープンエンドワインディング方式のモーター駆動技法は、通常的なY結線構造のモーターを駆動する方式と比べて、相電圧を増加させて電圧利用率を向上させることができ、高出力が可能な利点を有する。
【0009】
しかし、オープンエンドワインディング方式のモーター駆動技法は、モーターの巻線の両端にそれぞれ連結されるインバーターに共通の直流電源を適用する場合、0相成分電圧をインバータースイッチング周期平均的に0になるように制御することができないので、共通モード電流を発生させることができる。この共通モード電流はモーターの巻線を流れながら銅損及び鉄損のような損失として作用してモーター効率を低下させ、深刻な場合にはモーターシステムの焼損も発生させることがある。
【0010】
前記背景技術として説明した事項は、本発明の背景に対する理解増進のためのものであるだけで、当該技術分野で通常の知識を有する者に既に知られた従来技術に相当するというのを認めるものとして受け入れてはいけないであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許公開第2009-0033253A1号公報
【特許文献2】特許第6285256B2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明は、モーター巻線の両端にそれぞれインバーターが連結されたオープンエンドワインディング方式のモーター駆動の際、両インバーターの間の共通モード電圧を互いに同じに設定して0相成分電圧を所望の通りに制御することにより、差によって発生する循環電流を除去してモーター効率を向上させることができるモーター駆動装置を提供することを解決しようとする技術的課題とする。
【0013】
特に、本発明は、モーター巻線の両端にそれぞれインバーターが連結されたオープンエンドワインディング方式のモーター駆動の際、瞬時的に両インバーターが同じ0相成分電圧を有するようにして両インバーターの0相成分電圧の差を瞬時的に0にすることができるモーター駆動装置を提供することを、解決しようとする技術的課題とする。
【0014】
また、本発明は、オープンエンドワインディング方式のモーター駆動に使われる二つのインバーターをそれぞれ構成するスイッチング素子の種類が相違なる場合、0相成分電流を除去するとともにスイッチング素子の種類に応じて全体スイッチング損失を最小化することができるモーター駆動装置を提供することを、解決しようとする技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記技術的課題を解決するための手段として本発明は、複数の相にそれぞれ対応する複数の巻線を有するモーターを駆動するモーター駆動装置であって、複数の第1スイッチング素子を含み、前記複数の巻線のそれぞれの第1端に連結された第1インバーターと、複数の第2スイッチング素子を含み、前記複数の巻線のそれぞれの第2端に連結された第2インバーターと、事前に設定された前記モーターの電圧指令に対応する電圧ベクターに一番近い有効ベクターを前記複数の第2スイッチング素子のデューティーに決定し、前記モーターの電圧指令に前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターを合算した値を前記第1インバーターの電圧指令として使用して前記第1スイッチング素子をパルス幅変調制御するコントローラーとを含む、モーター駆動装置を提供する。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記コントローラーは、前記第1スイッチング素子をRSPWM(Remote State Pulse Width Modulation)方式で制御することができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記コントローラーは、前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターと同一の0相成分電圧を有する複数の有効ベクターを用いて前記第1インバーターの電圧指令を合成することができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記コントローラーは、前記モーターの電圧指令を逆回転変換して3相電圧指令を生成し、前記3相電圧指令に基づいて前記モーターの電圧指令に対応する電圧ベクターに一番近い有効ベクターを決定することができる。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記コントローラーは、次の式、Dabc、inv2=Sign(Vabcn、lim
*)(x≧0であればSign(x)=1、x<0であればSign(x)=0)を用いて前記モーターの電圧指令に対応する電圧ベクターに一番近い有効ベクターを決定することができる。ここで、Dabc、inv2は前記モーターの電圧指令に対応する電圧ベクターに一番近い有効ベクターに相当するデューティーであり、Vabcn、lim
*は前記3相電圧指令である。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記コントローラーは、前記モーターの電圧指令に前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターを回転変換した結果を合算して前記第1インバーターの電圧指令を生成することができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記コントローラーは、前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターと同一の0相成分電圧を有する複数の有効ベクターが一定の順に繰り返されるように前記第1スイッチング素子をスイッチングすることができる。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記コントローラーは、前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターと同一の0相成分電圧を有する複数の有効ベクターが、事前に設定された一スイッチング周期の中間時点を基準に対称的に現れるように前記第1スイッチング素子をスイッチングすることができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記コントローラーは、前記第2スイッチング素子のデューティーに相当する有効ベクターと同一の0相成分電圧を有する複数の有効ベクターのスイッチング状態の中で一番長いデューティーを有するスイッチング状態が前記中間時点の前後に連続して現れるように前記第1スイッチング素子をスイッチングすることができる。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記コントローラーは、事前に設定された前記モーターの電圧指令を事前に設定された上限値及び下限値に制限することができる。
【発明の効果】
【0025】
前記モーター駆動装置によれば、オープンエンドワインディング方式に適用される二つのインバーターの0相成分電圧を所望の通りに制御することにより、共通モード電流の発生を抑制することができる。
【0026】
よって、前記モーター駆動装置によれば、共通モード電流によってモーター相電流が歪むことを防止してモーター電流を容易に制御し、循環電流によって発生するモーターの鉄損及び銅損のような損失を防止してモーターの駆動効率を著しく向上させることができるだけではなく、モーターの焼損を事前に防止することができる。
【0027】
特に、前記モーター駆動装置によれば、オープンエンドワインディング方式のモーター駆動の際、瞬時的に0相成分電圧を0になるようにすることにより、0相成分電流(共通モード電流)の瞬時的リップルによるモーター損失までを除去することができる。
【0028】
また、前記モーター駆動装置によれば、モーターの電圧指令に基づいて先に空間ベクターパルス幅変調を遂行した後、出力される結果に基づいてそれぞれのインバーターに対する極電圧指令を生成するので、座標変換のための演算量を最小化することができ、よって、電圧変調演算のうちサイン、コサイン演算による離散化誤差を最小化することができる。
【0029】
また、前記モーター駆動装置によれば、モーター巻線の両端にそれぞれ連結された両インバーターを同時に作動させてモーターを駆動するオープンエンドワインディング方式駆動の際、空間ベクターパルス幅変調のための電圧ベクター合成の際、スイッチング損失の大きいスイッチング素子を採用したインバーターのスイッチングを最小化し、その代わりに相対的にスイッチング損失の小さいスイッチング素子を採用したインバーターによってスイッチングを遂行することにより、スイッチング損失を減少させ、全体システムの効率を向上させることができる。
【0030】
本発明で得られる効果は以上で言及した効果に制限されず、言及しなかった他の効果は下記の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかに理解可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態によるモーター駆動装置の回路図である。
【
図2】オープンエンドワインディング方式でモーターを制御するための通常的なコントローラーを詳細に示すブロック構成図である。
【
図3】
図2に示した通常的なコントローラーに適用されるモーター制御技法を説明するための電圧ベクター図である。
【
図4】
図2に示した通常的なコントローラーによるモーター制御の際に生成される各インバーターの電圧出力を示す波形図である。
【
図5】
図2に示した通常的なコントローラー内の空間ベクター変調部をより詳細に示すブロック構成図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるモーター駆動装置に適用されたコントローラーを詳細に示すブロック構成図である。
【
図7】
図6に示した本発明の一実施形態によるモーター駆動装置に適用されたコントローラー内の空間ベクター変調部をより詳細に示すブロック構成図である。
【
図8】
図6に示した本発明の一実施形態によるモーター駆動装置の制御によって生成される各インバーターの電圧出力を示す波形図である。
【
図9】本発明の他の実施形態によるモーター駆動装置に適用されたコントローラーを詳細に示すブロック構成図である。
【
図10】
図9に示した本発明の実施形態でモーターの回転角より30度先行するように第1インバーターの相電圧指令を変換し、モーターの回転角より150度先行するように第2インバーターの相電圧指令を変換した例を説明するための電圧ベクター図である。
【
図11】
図9に示した本発明の実施形態でモーターの回転角より30度後行するように第1インバーターの相電圧指令を変換し、モーターの回転角より150度後行するように第2インバーターの相電圧指令を変換した例を説明するための電圧ベクター図である。
【
図12】
図9に示した本発明の実施形態によるモーター駆動装置の制御によって生成される各インバーターの電圧出力、0相電圧成分及び共通モード電流を示す波形図である。
【
図13】本発明のさらに他の実施形態によるモーター駆動装置に適用されたコントローラーを詳細に示すブロック構成図である。
【
図14】
図13に示した空間ベクターパルス幅変調部をより詳細に示すコントローラーのブロック構成図である。
【
図15】
図13に示した実施形態のコントローラーの変形例を示すブロック構成図である。
【
図16】本発明のさらに他の実施形態によるモーター駆動装置に適用されたコントローラーを詳細に示すブロック構成図である。
【
図17】
図16に示した実施形態によって決定される各インバーターの電圧及びモーター電圧を説明するための電圧ベクター図である。
【
図18】
図16の実施形態によるモーター駆動装置の制御によって生成される各インバーターの電圧出力を示す波形図である。
【
図19-21】
図16に示した第1インバーター用パルス幅変調部によって生成可能な多様な第1インバーターの制御方式を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面に基づいて本発明の多様な実施形態によるモーター駆動装置を詳細に説明する。
【0033】
図1は本発明の一実施形態によるモーター駆動装置の回路図である。
【0034】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるモーター駆動装置は、複数の相に対応する複数の巻線L1-L3を有するモーター100に駆動電力を供給するモーター駆動装置であって、複数の第1スイッチング素子S11-S16を含み、モーター100の巻線のそれぞれの第1端に連結された第1インバーター10と、複数の第2スイッチング素子S21-S26を含み、モーター100の巻線のそれぞれの第2端に連結された第2インバーター20と、モーター100の所要出力に基づいて第1スイッチング素子S11-S16及び第2スイッチング素子S21-S26をパルス幅変調制御するコントローラー30とを含むことができる。
【0035】
第1インバーター10と第2インバーター20は、バッテリー200に貯蔵された直流電力を3相の交流電力に変換してモーター100に提供するか、又は回生制動の際にモーター100の回生制動トルクの発生によって生成される回生制動エネルギーを直流に変換してバッテリー200に提供することができる。このような直流電力と交流電力との間の変換は、第1インバーター10と第2インバーター20とにそれぞれ備えられた複数の第1スイッチング素子S11-S16及び複数の第2スイッチング素子S21-S26のパルス幅変調制御によって遂行することができる。
【0036】
第1インバーター10は、バッテリー200の両端の間に連結された直流リンクキャパシタ300に形成された直流電圧が印加される複数のレッグ11-13を含むことができる。各レッグ11-13はモーター100の複数の相にそれぞれ対応して電気的に連結されることができる。
【0037】
より具体的には、第1レッグ11は、直流キャパシタ300の両端の間に互いに直列に連結された二つのスイッチング素子S11、S12を含み、両スイッチング素子S11、S12の連結ノードは、複数の相の中で一相に相当する交流電力が入出力されるようにモーター100内の一相の巻線L1の一端に連結されることができる。
【0038】
同様に、第2レッグ12は直流キャパシタ300の両端の間に互いに直列に連結された二つのスイッチング素子S13、S14を含み、両スイッチング素子S13、S14の連結ノードは、複数の相の中で一相に相当する交流電力が入出力されるようにモーター100内の一相の巻線L2の一端に連結されることができる。
【0039】
また、第3レッグ13は、直流キャパシタ300の両端の間に互いに直列に連結された二つのスイッチング素子S15、S16を含み、両スイッチング素子S15、S16の連結ノードは、複数の相の中で一相に相当する交流電力が入出力されるようにモーター100内の一相の巻線L3の一端に連結されることができる。
【0040】
第2インバーター20も第1インバーター10と類似した構成を有することができる。第2インバーター20は、バッテリー200の両端の間に連結された直流リンクキャパシタ300に形成された直流電圧が印加される複数のレッグ21-23を含むことができる。各レッグ21-23は、モーター100の複数の相に対応して電気的に連結されることができる。
【0041】
より具体的には、第1レッグ21は、直流キャパシタ300の両端の間に互いに直列に連結された二つのスイッチング素子S21、S22を含み、両スイッチング素子S21、S22の連結ノードは、複数の相の中で一相に相当する交流電力が入出力されるようにモーター100内の一相の巻線L1の他端に連結されることができる。
【0042】
同様に、第2レッグ22は、直流キャパシタ300の両端の間に互いに直列に連結された二つのスイッチング素子S23、S24を含み、両スイッチング素子S23、S24の連結ノードは、複数の相の中で一相に相当する交流電力が入出力されるようにモーター100内の一相の巻線L2の他端に連結されることができる。
【0043】
また、第3レッグ23は、直流キャパシタ300の両端の間に互いに直列に連結された二つのスイッチング素子S25、S26を含み、両スイッチング素子S25、S26の連結ノードは、複数の相の中で一相に相当する交流電力が入出力されるようにモーター100内の一相の巻線L3の一端に連結されることができる。
【0044】
第1インバーター10は、モーター100の巻線L1-L3の一端に連結され、第2インバーター20はモーター100の巻線L1-L3の他端に連結される。すなわち、モーター100の巻線L1-L3の両端には、第1インバーター10と第2インバーター20にそれぞれ連結されるオープンエンドワインディング方式の電気的連結が形成されることができる。
【0045】
コントローラー30は、基本的にはモーター100に要求される所要出力に基づいてモーター100が駆動されるように、第1インバーター10と第2インバーター20に含まれたスイッチング素子S11-S16、S21-S21をパルス幅変調制御する要素である。
【0046】
コントローラー30は、第1インバーター10及び第2インバーター20に印加される直流電圧Vdcと電流センサー(図示せず)で検出されるモーター100に提供される相電流及びモーター100に設けられたモーター回転子センサー(図示せず)で検出されたモーターの電気角などを受け、第1インバーター10の第1スイッチング素子S11-S16及び第2インバーター20の第2スイッチング素子S21-S26をパルス幅変調方式でスイッチングしてモーター100を駆動することができる。特に、コントローラー30は、第1スイッチング素子S11-S16及び第2インバーター20の第2スイッチング素子S21-S26をパルス幅変調方式で制御するとき、空間ベクターパルス幅変調(Space Vector Pulse Width Modulation:SVPWM)方式を適用することができる。
【0047】
以上のような構成を有する本発明の一実施形態によるモーター駆動装置に対するより明確な理解を助けるために、通常的なオープンエンドワインディング方式モーター駆動装置の制御技法についてまず説明する。
【0048】
図2は、オープンエンドワインディング方式でモーターを制御するための通常的なコントローラーを詳細に示すブロック構成図、
図3は、
図2に示した通常的なコントローラーに適用されるモーター制御技法を説明するための電圧ベクター図である。また、
図4は、
図2に示した通常的なコントローラーによるモーター制御の際に生成される各インバーターの電圧出力を示す波形図、
図5は
図2に示した通常的なコントローラー内の空間ベクター変調部をより詳細に示すブロック構成図である。
【0049】
図2に示したように、従来のモーター駆動装置のコントローラーは、電流指令マップ41、電流制御部42、第1デューティー生成部43、及び第2デューティー生成部44を含むことができる。
【0050】
電流指令マップ41は、運転者の操作などによって生成されたモーター所要出力(モーター所要トルクT
e
*)及びモーターの逆起電力λ
-1に基づいてそれに対応する電流指令I
d
*、I
q
*を生成することができる。電流指令マップ41は、モーター所要出力を反映したモーターの電流指令を生成するものであり、
図2の例にはモーター所要出力と逆起電力に基づくマップが示されているが、他の因子に基づいてモーターの電流指令を生成するマップを適用することもできる。
【0051】
電流制御部42は、電流指令Id
*、Iq
*を受け、実際にモーターに提供される電流を検出した値と比較し、その差を減少させることができる電圧指令Vd
*、Vq
*、Vn
*を生成することができる。電圧指令は、d軸成分Vd
*、q軸成分Vq
*及び0相(zero phase)成分Vn
*を含むことができる。
【0052】
第1デューティー生成部43は
図1に示した第1インバーター10内のスイッチング素子のデューティーを生成するための要素であり、電圧指令V
d
*、V
q
*、V
n
*を1/2倍にして第1インバーター10に適用するための第1インバーター電圧指令V
d1
*、V
q1
*、V
n1
*を生成する倍数部431と、第1インバーター電圧指令V
d1
*、V
q1
*、V
n1
*をモーターの各相に対応する第1インバーター相電圧指令V
as1
*、V
bs1
*、V
cs1
*に変換する座標変換部432と、第1インバーター相電圧指令V
as1
*、V
bs1
*、V
cs1
*及び第1インバーター電圧指令の中で0相成分V
n1
*に基づいて空間ベクターパルス幅変調を遂行して第1インバーター10内のスイッチング素子のデューティーを生成する第1空間ベクターパルス幅変調部433とを含むことができる。
【0053】
第1デューティー生成部43と同様に、第2デューティー生成部44は、
図1に示した第2インバーター20内のスイッチング素子のデューティーを生成するための要素であり、電圧指令V
d
*、V
q
*、V
n
*を-1/2倍にして第2インバーター20に適用するための第2インバーター電圧指令V
d2
*、V
q2
*、V
n2
*を生成する倍数部441と、第2インバーター電圧指令V
d2
*、V
q2
*、V
n2
*をモーターの各相に対応する第2インバーター相電圧指令V
as2
*、V
bs2
*、V
cs2
*に変換する座標変換部442と、第2インバーター相電圧指令V
as2
*、V
bs2
*、V
cs2
*及び第2インバーター電圧指令の中で0相成分V
n2
*に基づいて空間ベクターパルス幅変調を遂行して第2インバーター20内のスイッチング素子のデューティーを生成する第2空間ベクターパルス幅変調部443とを含むことができる。
【0054】
ここで、座標変換部432、442による座標変換は、dq同期座標をモーター3相に相当するabc座標に変換するものであり、当該技術分野に通常逆回転変換(Inverse Clarke/Park Transformation)と知られた公知の技術に相当する。その反対の変換である回転変換(Clarke/Park Transformation)も当該技術分野に公知となったものであり、以下これについての別途の詳細な説明は省略する。
【0055】
図2に示したように、通常的なオープンエンドワインディング方式モーター制御技法は、モーターの電圧指令を第1インバーターと第2インバーターとに同一に分配する方式でなされる。
【0056】
すなわち、
図3に示したように、オープンエンドワインディング構造のモーター制御で、第1インバーターに対するスイッチングベクター図と第2インバーターに対するスイッチングベクター図を合成したベクター図上に示されたモーター電圧V
MOTは、第1インバーターによる電圧V
INV1と第1インバーターによる電圧V
INV1と同じ大きさを有しながら方向が反対の第2インバーターによる電圧V
INV2との差の形態として示すことができる。それぞれのベクター図はdq平面上に示されたものであり、dq平面と空間ベクターパルス幅変調のためのベクター図などは当該技術分野に公知となった事項であり、それについての別途の詳細な説明は省略する。
【0057】
このように、同じ大きさを有しながら反対方向を有する第1インバーター電圧と第2インバーター電圧とを、空間ベクターパルス幅変調によって具現すれば
図4に示したようなインバーター出力電圧波形を得ることができる。
図4で、T
SWは、インバーター内のスイッチング素子のスイッチング周期であり、V
a1、V
b1、V
c1、V
n1は、第1インバーターの各相電圧及び0相成分電圧を示し、V
a2、V
b2、V
c2、V
n2は、第2インバーターの各相電圧及び0相成分電圧を示し、V
nは、第1インバーターの0相成分電圧と第2インバーターの0相成分電圧との差を示すものであり、第1インバーター及び第2インバーターによってモーターに印加される0相成分電圧を示すものである。
【0058】
図4に示したように、第1インバーター電圧と第2インバーター電圧は、dq平面上での電圧の大きさが同一であるにもかかわらず位相が違うから互いに異なる0相成分電圧を有することになる。よって、モーターに印加される0相成分電圧V
nの大きさは周期平均的に0を維持することができない。
【0059】
図2に示した通常的なコントローラー内の空間ベクター変調部433又は443は、
図5に示したように、オフセット電圧生成部51、極電圧指令生成部52、極電圧指令制限部53、割り算部54及び合算部55を含むことができる。
【0060】
オフセット電圧生成部51は、3相電圧指令Vas
*、Vbs
*、Vcs
*に基づいてオフセット電圧指令Vns
*を生成し、極電圧指令生成部52は、このオフセット電圧指令Vns
*に0相成分電圧Vn
*を引き算した値を3相電圧指令Vas
*、Vbs
*、Vcs
*から差し引いて極電圧指令Van
*、Vbn
*、Vcn
*を生成する。
【0061】
このように、通常のオープンエンドワインディング方式のモーター制御の際には、オフセット電圧指令Vns
*が3相電圧指令Vas
*、Vbs
*、Vcs
*に基づいて生成されるので、実際に両インバーターでモーターを駆動するとき、各インバーターから出力されるオフセット電圧との差を有することになる。特に、第1インバーターと第2インバーターは互いに異なるオフセット電圧指令Vns
*が生成されるので、実際に各インバーターではオフセット電圧指令に対応するオフセット電圧が出力されなくなる。
【0062】
これを式で示せば下記の式1の通りである。
【数1】
【0063】
したがって、モーターに最終的に印加される0相成分電圧は下記の式2になり、所望の通りに0相成分電圧を制御することができない。
【数2】
【0064】
このように、0相成分電圧が周期平均的に0に制御されることができない場合、モーターの共通モード電流が発生し、共通モード電流の流れによってモーターで発生する損失が増加し、深刻な場合にはモーターの焼損も発生することもある。
【0065】
図5で、極電圧指令制限部53は、第1インバーター及び第2インバーターに印加される直流電圧V
DCの±0.5の範囲で極電圧指令を制限し、割り算部54は、制限された極電圧指令を第1インバーター及び第2インバーターに印加される直流電圧V
DCで割り算し、合算部55は、割り算部54の結果にそれぞれ0.5を足してインバーター内のスイッチング素子のデューティーD
a、D
b、D
cを決定することができる。
【0066】
極電圧指令制限部53、割り算部54及び合算部55は、パルス幅変調制御を具現するために適用される公知の技術に相当し、詳細な動作は当該技術分野の通常の技術者が充分に実施可能なものなので、これについての追加的な詳細な説明は省略する。
【0067】
図6は、本発明の一実施形態によるモーター駆動装置に適用されたコントローラーを詳細に示すブロック構成図である。
【0068】
図6を参照すると、本発明の一実施形態によるモーター駆動装置に適用されたコントローラー30は、電流指令マップ61、電流制御部62、第1デューティー生成部63及び第2デューティー生成部64を含むことができる。
【0069】
電流指令マップ61は、運転者の操作などによって生成されたモーター所要出力(モーター所要トルクTe
*)及びモーターの逆起電力λ-1に基づいてそれに対応する電流指令Id
*、Iq
*を生成することができる。
【0070】
電流制御部62は、電流指令Id
*、Iq
*を受け、実際にモーターに提供される電流を検出した値と比較し、その差を減少させることができる電圧指令Vd
*、Vq
*、Vn
*を生成することができる。電圧指令は、d軸成分Vd
*、q軸成分Vq
*及び0相(zero phase)成分Vn
*を含むことができる。
【0071】
電流指令マップ61と電流制御部62は、
図2に示した通常的なモーター制御技法に適用されるものと実質的に同一であり得る。
【0072】
第1デューティー生成部63は第1インバーター10内のスイッチング素子のデューティーを生成するための要素であり、電圧指令Vd
*、Vq
*、Vn
*を1/2倍にして第1インバーター10に適用するための第1インバーター電圧指令Vd1
*、Vq1
*、Vn1
*を生成する倍数部631と、第1インバーター電圧指令Vd1
*、Vq1
*、Vn1
*をモーターの各相に対応する第1インバーター相電圧指令Vas1
*、Vbs1
*、Vcs1
*に変換する座標変換部632と、第1インバーター相電圧指令Vas1
*、Vbs1
*、Vcs1
*に基づいて生成された第1オフセット電圧指令Vns1
*と第1インバーター電圧指令の中で0相成分Vn1
*及び第2デューティー生成部64で生成された第2オフセット電圧指令Vns2
*とに基づいて空間ベクターパルス幅変調を遂行して第1インバーター10内のスイッチング素子のデューティーDa1、Db1、Dc1を生成する第1空間ベクターパルス幅変調部633とを含むことができる。
【0073】
第1デューティー生成部63と同様に、第2デューティー生成部64は第2インバーター20内のスイッチング素子のデューティーを生成するための要素であり、電圧指令Vd
*、Vq
*、Vn
*を-1/2倍にして第2インバーター20に適用するための第2インバーター電圧指令Vd2
*、Vq2
*、Vn2
*を生成する倍数部641と、第2インバーター電圧指令Vd2
*、Vq2
*、Vn2
*をモーターの各相に対応する第2インバーター相電圧指令Vas2
*、Vbs2
*、Vcs2
*に変換する座標変換部642と、第2インバーター相電圧指令Vas2
*、Vbs2
*、Vcs2
*に基づいて生成された第2オフセット電圧指令Vns2
*と第2インバーター電圧指令の中で0相成分Vn2
*及び第1デューティー生成部63で生成された第1オフセット電圧指令Vns1
*とに基づいて空間ベクターパルス幅変調を遂行して第2インバーター20内のスイッチング素子のデューティーDa2、Db2、Dc2を生成する第2空間ベクターパルス幅変調部643とを含むことができる。
【0074】
本発明の一実施形態で、第1デューティー生成部63と第2デューティー生成部64はそれぞれ第1インバーター10及び第2インバーター20の出力電圧によって決定されるそれぞれのオフセット電圧指令を互いに共有して両インバーターが同じ0相成分電圧を有するようにすることを特徴とする。すなわち、第1インバーター10を制御するための第1デューティー生成部63は第1インバーター10の出力電圧に対応する第1インバーター相電圧指令Vas1
*、Vbs1
*、Vcs1
*を用いて第1オフセット電圧指令Vns1
*を生成した後、第2デューティー生成部64に提供することができ、第2インバーター20を制御するための第2デューティー生成部64は第2インバーター20の出力電圧に対応する第2インバーター相電圧指令Vas2
*、Vbs2
*、Vcs2
*を用いて第2オフセット電圧指令Vns2
*を生成した後、第1デューティー生成部63に提供することができる。
【0075】
第1デューティー生成部63及び第2デューティー生成部64は、第1オフセット電圧指令Vns1
*と第2オフセット電圧指令Vns2
*を互いに合成して互いに同じ値を有する合成オフセット電圧指令を生成し、合成オフセット電圧指令と各インバーターの0相成分電圧指令Vn1
*、Vn2
*を各インバーターの相電圧指令に適用して各インバーターに対する極電圧指令を生成することができる。
【0076】
図7は本発明の一実施形態によるモーター駆動装置に適用されたコントローラー内の空間ベクター変調部をより詳細に示すブロック構成図である。特に、
図7は第1デューティー生成部63内の第1空間ベクターパルス幅変調部643を詳細に示すものであり、別に示さないが、第2デューティー生成部64内の第2空間ベクターパルス幅変調部644も互いに対応する構成を有するように具現されることができる。
【0077】
図7を参照すると、第1デューティー生成部63内の第1空間ベクターパルス幅変調部634は、オフセット電圧生成部71、オフセット電圧指令合成部711、極電圧指令生成部72、極電圧指令制限部73、割り算部74及び合算部75を含むことができる。
【0078】
オフセット電圧生成部71は、第1インバーターの3相電圧指令Vas1
*、Vbs1
*、Vcs1
*に基づいてオフセット電圧指令Vns1
*を生成することができる。
【0079】
図7に示した例で、オフセット電圧生成部71は3相電圧指令V
as1
*、V
bs1
*、V
cs1
*の中で最大値と最小値との平均値で第1インバーター10のオフセット電圧指令V
ns1
*を演算するものとして示されているが、これは単純な例であり、当該技術分野に知られた多様な方式でオフセット電圧指令を決定することができる。
【0080】
オフセット電圧指令合成部711は、オフセット電圧生成部71で生成された第1インバーター10のオフセット電圧指令Vns1
*と第2デューティー生成部64内の第2空間ベクターパルス幅変調部644によって生成された第2インバーター20のオフセット電圧指令Vns2
*とを互いに合成して合成オフセット電圧指令Vns、f
*を生成することができる。
【0081】
オフセット電圧指令合成部711は多様な方式で合成オフセット電圧指令Vns、f
*を生成することができる。例えば、オフセット電圧指令合成部711は、第1インバーター10のオフセット電圧指令Vns1
*と第2インバーター20のオフセット電圧指令Vns2
*とにそれぞれ加重値を適用した後、合算して合成オフセット電圧指令Vns、f
*を生成することができる。また、オフセット電圧指令合成部711は、第1インバーター10のオフセット電圧指令Vns1
*と第2インバーター20のオフセット電圧指令Vns2
*との平均値としてオフセット電圧指令Vns,f
*を決定することができる。
【0082】
オフセット電圧指令合成部711がどの方式で合成オフセット電圧指令Vns、f
*を生成しても、第1空間ベクターパルス幅変調部634と第2空間ベクターパルス幅変調部644とでそれぞれ生成された合成オフセット電圧指令Vns、f
*は互いに同じ値を有するように具現されなければならない。
【0083】
オフセット電圧指令合成部711によって第1インバーター10のオフセット電圧指令V
ns1
*と第2インバーター20のオフセット電圧指令V
ns2
*との平均値を合成オフセット電圧指令に決定した場合、各インバーターから出力される0相成分電圧は次の式3の通りである。
【数3】
【0084】
式3によれば、両インバーターの0相成分電圧の差(Vns1-Vns2)は電流制御部62で設定された映像成分電圧指令Vn
*として出力されることができる。ここで、両インバーターの変調に最終的に適用される合成オフセット電圧指令Vns、f
*は両オフセット電圧指令Vns1
*、Vns2
*の平均として決定される場合、両インバーターが有する出力デューティーのマージンが同一になるので、合成オフセット電圧指令Vns、f
*が両オフセット電圧指令Vns1
*、Vns2
*の平均として決定されることが好ましい。
【0085】
図7で、極電圧指令生成部72は、合成オフセット電圧指令V
ns、f
*から第1インバーター10の電圧指令の中で0相成分電圧指令V
n1
*を差し引いた値を第1インバーター10の3相電圧指令V
as1
*、V
bs1
*、V
cs1
*からそれぞれ差し引いて第1インバーター10の極電圧指令V
an1
*、V
bn1
*、V
cn1
*を生成することができる。
【0086】
図7で、極電圧指令制限部73は第1インバーター及び第2インバーターに印加される直流電圧V
DCの±0.5の範囲で極電圧指令を制限し、割り算部74は制限された極電圧指令を第1インバーター及び第2インバーターに印加される直流電圧V
DCで割り算し、合算部75は割り算部74の結果にそれぞれ0.5を足してインバーター内のスイッチング素子のデューティーD
a、D
b、D
cを決定することができる。
【0087】
極電圧指令制限部53、割り算部54及び合算部55はパルス幅変調制御を具現するために適用される公知の技術に相当し、詳細な動作は当該技術分野の通常の技術者が充分に実施可能なものなので、これについての追加的な詳細な説明は省略する。
【0088】
また、
図7は第1デューティー生成部63内の空間ベクターパルス幅変調部633の詳細構成を示すものであるが、当該技術分野の通常の技術者であれば
図7から第2デューティー生成部64内の空間ベクターパルス幅変調部643の詳細構成を容易に類推することができる。したがって、第2デューティー生成部64内の空間ベクターパルス幅変調部643についての別途の説明は省略する。
【0089】
図8は本発明の一実施形態によるモーター駆動装置の制御によって生成される各インバーターの電圧出力を示す波形図である。
【0090】
図8を参照すると、
図4に示した通常のモーター駆動装置の波形と比較するとき、本発明の一実施形態によるモーター駆動装置によれば、モーターの0相成分電圧V
nが一周期内で0の平均値を有するように決定されることを確認することができる。
【0091】
したがって、本発明の一実施形態によるモーター駆動装置は、空間ベクターパルス幅変調によって0相成分電圧の歪みが発生しないように所望の制御を遂行することができ、よってモーターで発生する共通モード電流を抑制してモーターの不必要な損失を抑制し、モーターの焼損を防止することができる。
【0092】
以上で説明した
図6~
図8に示した本発明の実施形態はスイッチング周期内の0相成分電圧の平均を0に制御する実施形態である。このような実施形態は周期平均的に0相成分電圧を0に制御することができるが、瞬時的には0相成分電圧が脈動することによって共通モード電流が発生することができ、瞬時的な共通モード電流もモーターの損失を発生させることができる。以下では、0相成分電圧の脈動を抑制することにより瞬時的な共通モード電流まで除去することができる本発明の他の実施形態を説明する。
【0093】
図9は本発明の他の実施形態によるモーター駆動装置に適用されたコントローラーを詳細に示すブロック構成図である。
【0094】
図9を参照すると、本発明の他の実施形態によるモーター駆動装置のコントローラー30は、電流指令マップ81、電流制御部82、第1デューティー生成部83及び第2デューティー生成部84を含むことができる。
【0095】
電流指令マップ81は、運転者の操作などによって生成されたモーター所要出力(モーター所要トルクTe
*)及びモーターの逆起電力λ-1に基づいてそれに対応する電流指令Id
*、Iq
*を生成することができる。
【0096】
電流制御部62は、電流指令Id
*、Iq
*を受け、実際にモーターに提供される電流を検出した値と比較し、その差を減少させることができる電圧指令Vd
*、Vq
*、Vn
*を生成することができる。電圧指令は、d軸成分Vd
*、q軸成分Vq
*及び0相(zero phase)成分Vn
*を含むことができる。
【0097】
電流指令マップ81と電流制御部82は
図2に示した通常的なモーター制御技法に適用されるものと実質的に同一であり得る。
【0098】
【0099】
【0100】
ここで、モーターの回転角(θ)は、モーターに設けられた回転角センサー(図示せず)から獲得することができるというのは当該技術分野に知られている。
【0101】
本発明の一実施形態で、第1デューティー生成部83と第2デューティー生成部84とはd軸電圧指令とq軸電圧指令を3相電圧指令に変換する過程で互いに120度の差があるように座標変換を遂行することを特徴とする。
【0102】
図10は、
図9に示した本発明の実施形態で、モーターの回転角より30度先行するように第1インバーターの相電圧指令を変換し、モーターの回転角より150度先行するように第2インバーターの相電圧指令を変換した例を説明するための電圧ベクター図、
図11は、
図9に示した本発明の実施形態で、モーターの回転角より30度後行するように第1インバーターの相電圧指令を変換し、モーターの回転角より150度後行するように第2インバーターの相電圧指令を変換した例を説明するための電圧ベクター図である。
【0103】
【0104】
【0105】
図12は、
図9に示した本発明の実施形態によるモーター駆動装置の制御によって生成される各インバーターの電圧出力、0相電圧成分及び共通モード電流を示す波形図である。
【0106】
図12に示したように、両インバーターが出力する電圧ベクターが120度の差を有すれば、両電圧ベクターを用いた変調を遂行する場合、瞬時的に同じ0相成分電圧V
n1、V
n2を示すことを確認することができる。よって、両インバーターの0相成分電圧の差V
nは瞬時的に0になり、よって0相成分電圧の差による0相成分電流リップル(共通モード電流)も0になることを確認することができる。
【0107】
一方、本発明の一実施形態で、各インバーターに対する0相成分電圧指令V
n
*は、互いに異なるように分配することもできる。すなわち、
図9で、第2倍数部832と第4倍数部842によって設定される第1インバーターに対する倍数値P
1と第2インバーターに対する倍数値P
2は、大きさが互いに異なるように決定されることができる。ここで、両倍数値の大きさの和は1にならなければならない(P
1+P
2=1)。
【0108】
0相成分電圧指令Vn
*の分配はモーターの出力には影響を及ぼさないので、モーターの立場では同一である。
【0109】
一例として、0相成分電圧の大きさを同一に分配する場合(P1とP2の大きさが同一の場合)、スイッチングデッドタイムのようなインバーターに存在する誤差とそれに対する補償のために両インバーターの最終出力デューティーが変わり、これに対して一方のインバーターが先にデューティー制限にかかる場合が発生することがある。
【0110】
一方、両インバーターに0相成分電圧指令の分配に対して自由度を付与すれば、デッドタイムのようなインバーターに存在する誤差のために互いに変わるデューティーの最大値を同一に調整することができる手段を提供することができ、これによりモーターの出力を増大させることができる。すなわち、倍数値P1、P2のチューニングによってインバーター自体が不可避に有することになる誤差による問題を適切に改善することができ、これによりモーターの出力を向上させることができる。
【0111】
このように、
図9~
図12に基づいて説明した本発明の一実施形態は、両インバーターの電圧ベクターの位相を120度の差を有するように設定して、両インバーターの空間ベクターパルス幅変調(Space Vector Pulse Width Modulation:SVPWM)による0相成分出力電圧を同一に生成することにより両インバーターの間の0相成分スイッチング脈動を除去することができる。
【0112】
しかし、このような実施形態では、モーター駆動システム全体の電圧指令Vdqn
*からそれぞれのインバーターを駆動するための電圧を分離した後、それぞれのインバーターを空間ベクターパルス幅変調方式で駆動するための演算を遂行する方式を採用している。このような方式は座標変換、大きさ制限などのための多くの演算を要求し、コサイン、サイン演算などの離散化誤差によってインバーターの出力電圧が誤差を有する問題が発生することがある。
【0113】
したがって、本発明はより単純な演算によって0相成分電圧によるスイッチング脈動を解決することができるさらに他の実施形態を提供する。
【0114】
図13は、本発明のさらに他の実施形態によるモーター駆動装置に適用されたコントローラーを詳細に示すブロック構成図、
図14は
図13に示した空間ベクターパルス幅変調部をより詳細に示すコントローラーのブロック構成図である。
【0115】
図13及び
図14を参照すると、本発明のさらに他の実施形態によるモーター駆動装置のコントローラー30は、座標変換部91と、空間ベクターパルス幅変調部92と、倍数部94と、第1極電圧指令生成部961と、第2極電圧指令生成部962とを含むことができる。
図13に示したコントローラーの例は、
図9に示した実施形態が含む電流指令マップ81と電流制御部82とを当たり前に含むことができる。すなわち、
図13の実施形態の座標変換部91は、
図9に示した実施形態の電流制御部82で生成されたモーターの電圧指令(同期座標系のdq電圧指令)V
dr
*、V
qr
*を受けて動作することができる。
【0116】
座標変換部91は、電流制御部で生成されたモーターの電圧指令Vdr
*、Vqr
*を受け、これをモーターの回転角(θ)に30度後行するように変換してモーターの回転角(θ)に30度後行する相電圧指令Vas
+*、Vbs
+*、Vcs
+*を生成することができる。座標変換部91によってなされる座標変換は、公知技術の逆回転変換(Inverse Clarke/Park Transformation)を適用して遂行することができる。
【0117】
空間ベクターパルス幅変調部92は、座標変換部91から出力されたモーターの回転角(θ)に30度後行する相電圧指令Vas
+*、Vbs
+*、Vcs
+*を受け、これに基づいて空間ベクターパルス幅変調を遂行してモーターの回転角(θ)に30度後行する、制限された極電圧指令Vam_lim
+*、Vbm_lim
+*、Vcm_lim
+*を生成することができる。
【0118】
より具体的には、空間ベクターパルス幅変調部92は、モーターの回転角(θ)に30度後行する相電圧指令Vas
+*、Vbs
+*、Vcs
+*の中で最大値と最小値との平均に相当するオフセット電圧を生成するオフセット電圧生成部921と、オフセット電圧をモーターの回転角(θ)に30度後行する相電圧指令Vas
+*、Vbs
+*、Vcs
+*から差し引いて遂行してモーターの回転角(θ)に30度後行する極電圧指令Vam
+*、Vbm
+*、Vcm
+*を生成する極電圧指令生成部922と、極電圧指令生成部922で生成されたモーターの回転角(θ)に30度後行する極電圧指令Vam
+*、Vbm
+*、Vcm
+*の大きさを制限してモーターの回転角(θ)に30度後行する制限された極電圧指令Vam_lim
+*、Vbm_lim
+*、Vcm_lim
+*を生成する極電圧指令制限部923とを含むことができる。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
第1極電圧指令生成部961は、倍数部94から出力される値にそれぞれ0相成分電圧指令Vn
*を0.5倍にして合算して最終的に第1インバーター10に対する極電圧指令を生成することができる。
【0123】
第2極電圧指令生成部962は、第2インバーター20に対する極電圧指令を生成することができる。第1インバーター10の電圧がモーター電圧と比べて30度後行する場合、第2インバーター20の電圧指令は、第1インバーターの電圧より120度さらに後行することになる。これは、第1極電圧指令の中でa相指令をb相指令に、第1極電圧指令の中でb相指令をc相指令に、第1極電圧指令の中でc相指令をa相指令にシフトさせたものに相当する。
【0124】
すなわち、第2極電圧指令生成部962は、倍数部94から出力される値からそれぞれ0相成分電圧指令Vn
*を0.5倍にして引き算し、倍数部94から出力される値の中でa相に相当する値から0相成分電圧指令Vn
*の1/2が引き算された値を第2インバーター20のb相極電圧指令に、倍数部94から出力される値の中でb相に相当する値から0相成分電圧指令Vn
*の1/2が引き算された値を第2インバーター20のc相極電圧指令に、倍数部94から出力される値の中でc相に相当する値から0相成分電圧指令Vn
*の1/2が引き算された値を第2インバーター20のa相極電圧指令に決定することができる。
【0125】
第1極電圧指令生成部961及び第2極電圧指令生成部962からそれぞれ出力される極電圧指令に基づいてデューティーを生成して第1インバーター10内のスイッチング素子及び第2インバーター20内のスイッチング素子をスイッチング制御すれば、
図9に示した実施形態のように、第1インバーターの電圧がモーター電圧指令より30度後行し、第2インバーターの電圧が第1インバーター電圧と120度の位相差を有するようにすることにより、0相成分電流を除去することができる。
【0126】
特に、
図13及び
図14に示した実施形態は、モーターの電圧指令に基づいてまず空間ベクターパルス幅変調を遂行した後、出力される結果に基づいてそれぞれのインバーターに対する極電圧指令を生成するから、
図9に示した実施形態と比べて座標変換のための演算量を最小化することができ、よって、電圧変調演算のうちサイン、コサイン演算による離散化誤差を最小化することができる。
【0127】
一方、
図13及び
図14は、0相成分電圧指令V
n
*を0.5倍にするための倍数部95が適用されたが、
図15に示したように、各インバーターに対する0相成分電圧指令V
n
*は互いに異なるように分配されることもできる。
【0128】
図15は、
図13に示した実施形態のコントローラーの変形例を示すブロック構成図である。
【0129】
図15を参照すると、第1極電圧指令生成部961に合算される0相成分電圧指令に対する倍数値P
1と第2極電圧指令生成部962に合算される0相成分電圧指令に対する倍数値P
2は大きさが互いに異なるように決定されることができる。ここで、両倍数値の大きさの和は1にならなければならない(P
1+P
2=1)。
【0130】
図9の実施形態の説明で既に記述したように、0相成分電圧指令V
n
*の分配はモーターの出力には影響を及ぼさないので、モーターの立場では同一である。両インバーターに0相成分電圧指令の分配に対して自由度を付与すれば、デッドタイムのようなインバーターに存在する誤差のために互いに変わるデューティーの最大値を同一に調整することができる手段を提供することができ、これによりモーターの出力を増大させることができる。
【0131】
すなわち、
図15に示した実施形態は、倍数値P
1、P
2のチューニングにより、インバーター自体が不可避に有することになる誤差による問題を適切に改善することができ、これによりモーターの出力を向上させることができる。
【0132】
一方、
図13~
図15で参照符号‘93’は積分制御器(
図9の電流制御器82に相当する)にフィードバックされる信号を作って与えるためのアンチワインドアップ演算部である。
【0133】
図13~
図15に示した実施形態で、電流制御器82の出力に相当するモーターの電圧指令V
d
r*、V
q
r*が空間ベクターパルス幅変調部92内の極電圧指令制限部923によって制限され、その後、各インバーターに対するスイッチング制御は制限された指令によって遂行される。すなわち、電流制御器82が正確なフィードバック制御を遂行するためには、自分が出力した電圧指令が実際にインバーター制御に適用されるときに制限された程度がフィードバックされる必要がある。
【0134】
アンチワインドアップ演算部93は、モーターの回転角(θ)に30度後行する制限された極電圧指令Vam_lim
+*、Vbm_lim
+*、Vcm_lim
+*をモーターの回転角(θ)に30度後行する回転変換(Clarke/Park Transformation)を遂行して電流制御器にフィードバックすることができる。
【0135】
加えて、本発明のさらに他の実施形態で、第1インバーター10の電圧はモーターの電圧指令に30度先行することもできる。この場合には、第2インバーター20の電圧が第1インバーター10の電圧と比べて120度先行することができる。よって、第2極電圧指令生成部962は、倍数部94から出力される値にそれぞれ0相成分電圧指令Vn
*を0.5倍にして合算し、倍数部94から出力される値の中でa相に相当する値に0相成分電圧指令Vn
*の1/2が合算された値を第2インバーター20のc相極電圧指令に、倍数部94から出力される値の中でb相に相当する値に0相成分電圧指令Vn
*の1/2が合算された値を第2インバーター20のa相極電圧指令に、倍数部94から出力される値の中でc相に相当する値に0相成分電圧指令Vn
*の1/2が合算された値を第2インバーター20のb相極電圧指令に決定することができる。
【0136】
このような第1インバーターと第2インバーターとの電圧位相関係は
図10に示される。
図10は、第1インバーターの電圧がモーター電圧より30度先行する場合の例を示すが、当該技術分野の通常の技術者であれば
図10の例から第1インバーターの電圧がモーター電圧より30度後行する実施形態も充分に類推して実施することができる。
【0137】
以上で説明した実施形態は、一スイッチング周期のうちに第1インバーター10と第2インバーター20との各相に対応するスイッチング素子が一回ずつスイッチングを遂行する。ここで、一回のスイッチングはスイッチング素子がオフ状態からオン状態に切換された後、再びオフ状態に切換されること又はオン状態からオフ状態に切換された後、再びオン状態に切換されることを意味する。
【0138】
このようなインバーター内のスイッチング素子のスイッチング方式は、第1インバーター10内の第1スイッチング素子S11-S16と第2インバーター20内の第2スイッチング素子S21-S26とが同種のスイッチング素子である場合に効率的である。
【0139】
しかし、第1インバーター10内の第1スイッチング素子S11-S16と第2インバーター20内の第2スイッチング素子S21-S26とが異種のスイッチング素子の場合、例えば第1スイッチング素子S11-S16が相対的にスイッチング損失の小さい材料であるSiCから製作されたMOSFETであり、第2スイッチング素子S21-S26が相対的にスイッチング損失が大きいが安価の材料であるSiから製作されたIGBTの場合、第1スイッチング素子S11-S16と第2スイッチング素子S21-S26とが同じ回数でスイッチングすることは非効率的であり、スイッチング損失を減少させることができるにもかかわらずスイッチング損失の大きい状態でモーターを制御する場合が発生することになる。
【0140】
したがって、本発明のさらに他の実施形態は、第1スイッチング素子S11-S16と第2インバーター20内の第2スイッチング素子S21-S26とが異種の素材から製作された互いに異なるスイッチング素子の場合、スイッチング損失を減らしてシステム効率を向上させることができる新しい制御技法を提供する。
【0141】
図16は、本発明のさらに他の実施形態によるモーター駆動装置に適用されたコントローラーを詳細に示すブロック構成図である。以下では、第2インバーター20を構成する第2スイッチング素子S21-S26がSiを材料として製作されたIGBTのようにスイッチング損失が相対的に大きい素子であり、第1インバーター10を構成する第1スイッチング素子S11-S16がSiCを材料として製作されたMOSFETのようにスイッチング損失が相対的に小さい素子の場合を例として説明する。
【0142】
図16を参照すると、本発明のさらに他の実施形態によるモーター駆動装置のコントローラー30は、電流指令マップ1010、電流制御部1020、電圧制限部1030、第2インバーター用デューティー生成部1040、座標変換部1050及び第1インバーター用パルス幅変調部1060を含むことができる。
【0143】
電流指令マップ1010及び電流制御部1020は
図6又は
図9に示した実施形態に適用された電流指令マップ及び電流制御部と実質的に同一であり得る。
【0144】
すなわち、電流指令マップ1010は、運転者の操作などによって生成されたモーター所要出力(モーター所要トルクTe
*及びモーターの逆起電力λ-1に基づいてそれに対応する電流指令Id
*、Iq
*を生成することができる。また、電流制御部1020は、電流指令Id
*、Iq
*を受け、実際にモーターに提供される電流を検出した値と比較して、その差を減少させることができる電圧指令Vd
*、Vq
*、Vn
*を生成することができる。電圧指令はd軸成分Vd
*、q軸成分Vq
*及び0相(zero phase)成分Vn
*を含むことができる。
【0145】
電圧制限部1030は、電流制御部1020で生成された電圧指令Vd
*、Vq
*、Vn
*の上下限値を制限して制限された電圧指令Vd、lim
*、Vq、lim
*、Vn、lim
*)を生成することができる。電圧制限部1030は電圧指令に対する事前に設定された上下限値を前もって保存することができ、この上下限値は第1インバーター10及び第2インバーター20内のスイッチング素子の制御によって生成可能なモーター電圧の上下限によって事前に決定されることができる。
【0146】
第2インバーター用デューティー生成部1040は、制限された電圧指令Vd、lim
*、Vq、lim
*に基づいて第2インバーター20内の第2スイッチング素子S21-S26のスイッチングデューティーを決定することができる。
【0147】
図16に示した実施形態は、第2インバーター20に適用された第2スイッチング素子S21-S26が第1インバーター10に適用された第1スイッチング素子S11-S16と比べてスイッチング損失の大きい素子の場合に適用されるコントローラー30の例を示す。すなわち、
図16に示した実施形態は、第2インバーター20の第2スイッチング素子S21-S26を一スイッチング周期のうちにスイッチングしないようにし、第1インバーター10の第1スイッチング素子S11-S16のみをスイッチングするようにすることにより、相対的にスイッチング損失の大きい第2スイッチング素子S21-S26のスイッチング損失を減少させることができる例である。
【0148】
第2インバーター用デューティー生成部1040は、制限された電圧指令Vd、lim
*、Vq、lim
*の負の値を取った値に一番近い有効電圧ベクターに基づいて第2インバーターのデューティーを決定することができる。
【0149】
図17は、
図16に示した実施形態によって決定される各インバーターの電圧及びモーター電圧を説明するための電圧ベクター図である。
【0150】
図17を参照すると、前述したように、モーターの電圧は第1インバーターの電圧から第2インバーターの電圧を差し引いたものに相当するので、電圧指令V
d、lim
*、V
q、lim
*に対応する電圧ベクターV
refは第1インバーター10の電圧ベクターV
INV1から第2インバーター20の電圧ベクターV
INV2を引き算して生成することができる。
【0151】
第2インバーター用デューティー生成部1040は、ベクター図上で六角形の頂点の一つに相当する有効電圧ベクターを第2インバーターの電圧ベクターに決定することができる。特に、第2インバーター用デューティー生成部1040は、最適演算のために電圧指令V
d、lim
*、V
q、lim
*に対応する電圧ベクターV
refに負の値に対応する電圧ベクターと一番近い有効ベクター(
図17では[001])を第2インバーターの電圧ベクターに決定することができる。よって、第2インバーターは、一スイッチング周期のうちにc相電圧のみがハイ状態を維持することができる(第2インバーター20のa相及びb相レッグのアッパースイッチング素子S21、S23がオフ、第2インバーター20のa相及びb相レッグのロワースイッチング素子S22、S24がオン、第2インバーター20のc相レッグのアッパースイッチング素子S25がオン、第2インバーター20のc相レッグのロワースイッチング素子S26がオフ状態の場合に相当する)。
【0152】
第2インバーター用デューティー生成部1040が電圧指令Vd、lim
*、Vq、lim
*に対応する電圧ベクターVrefと一番近い有効ベクターを決定するさまざまな方法があり得るが、電圧指令Vd、lim
*、Vq、lim
*に対応する各3相電圧の符号を用いて決定する方式が最も単純で効果的である。
【0153】
第2インバーター用デューティー生成部1040は、逆回転変換(Inverse Clarke/Park Transformation)を用いて電圧指令V
d、lim
*、V
q、lim
*をモーター3相に相当するabc座標に変換し、変換されたabc座標の符号によって次の式4のように第2インバーター20の電圧ベクター、すなわち第2インバーター20のデューティーを決定することができる。
【数4】
【0154】
座標変換部1050は、第2インバーター20のデューティーに対応する電圧ベクターを回転変換(Clarke/Park Transformation)によって再びdq座標に変換することができる。
【0155】
第1インバーター用パルス幅変調部1060は、電圧指令Vd、lim
*、Vq、lim
*、Vn、lim
*に座標変換部1050によって変換された第2インバーター20のデューティーに対応する電圧ベクターを変換した値を合算した値を第1インバーターの電圧指令Vd、INV1
*、Vq、INV2
*、Vn、INV3
*として受け、第1インバーターの電圧指令Vd、INV1
*、Vq、INV2
*、Vn、INV3
*に基づいてパルス幅変調を遂行して第1インバーターのデューティーDa1、Db1、Dc1を決定することができる。
【0156】
第1インバーター用パルス幅変調部1060は、スイッチング周期内の第1インバーターと第2インバーターとが同じ0相成分電圧を維持することができるように同じ0相成分電圧を有する有効ベクターを用いてスイッチングを遂行することができるようにするRSPWM(Remote State Pulse Width Modulation)を適用することができる。
【0157】
3相インバーターのスイッチング状態別の0相成分電圧は下記の表の通りに決定されると知られている。
【表1】
【0158】
例えば、
図17のように、第2インバーター20のデューティー又は電圧指令が[001]に決定された場合、第1インバーター10の電圧指令は第2インバーターのスイッチング状態による0相成分電圧と同一の0相成分電圧を有する[010]、[001]、[100]を用いて決定することができる。
【0159】
図17の最下部の六角形は、第1インバーターで[010]、[001]、[100]のスイッチング状態を有する有効ベクターによって合成することができる第1インバーター電圧の範囲を点線で示している。また、第2インバーター20のデューティーによって決定された有効ベクターによって0相成分電圧を第2インバーターと同様に決定することができる第1インバーター10の電圧範囲を、第1インバーターと第2インバーターを合成した全体モーター電圧に適用した場合、
図17の最上部の六角形に示した点線内の範囲でモーター電圧を決定することができる。
【0160】
第1インバーター用パルス幅変調部1060は、第1インバーター10の電圧VINV1を合成することができるように、第2インバーターのスイッチング状態と同一の0相成分電圧を有するスイッチング状態に対するデューティーを決定することができる。
【0161】
図18は、
図16の実施形態によるモーター駆動装置の制御によって生成される各インバーターの電圧出力を示す波形図である。
【0162】
図18に示したように、第2インバーター20は、一スイッチング周期T
swのうち[001]の状態のみを維持し、第1インバーター10は、[001]と同一の0相成分電圧を有する[001]、[100]、[010]を一定のデューティーで示すスイッチングが遂行されることを確認することができる。両インバーターの0相成分電圧V
n1、V
n2は互いに同一であるので、両0相成分電圧の差に相当する全体モーター駆動システムの0相成分電圧V
nも0であることを確認することができ、よって0相成分電流I
nが発生しないことを確認することができる。
【0163】
図19~
図21は、
図16に示した第1インバーター用パルス幅変調部によって生成可能な多様な第1インバーターの制御方式を示す波形図である。
【0164】
前記表によれば、第1インバーター用パルス幅変調部1060は、第2インバーター20のデューティーが決定されれば、それと同一の0相成分電圧を有する三つの有効電圧ベクターのスイッチング状態を用いて第1インバーター10のデューティーを決定することができる。
【0165】
まず、
図19に示したように、第1インバーター用パルス幅変調部1060は、決定された三つのスイッチング状態を一定の順に繰り返して第1インバーター10の第1スイッチング素子S11-S16をスイッチングする方式を適用することができる。
【0166】
また、
図20に示したように、第1インバーター用パルス幅変調部1060は、決定された三つのスイッチング状態を事前に設定された一スイッチング周期の中間時点を基準に対称的に分配する方式を適用することができる。
【0167】
また、
図21に示したように、第1インバーター用パルス幅変調部1060は、決定された三つのスイッチング状態を一スイッチング周期の中間時点を基準に対称的に分配する方式を適用するにあたり、最も長いデューティーを有するスイッチング状態が一スイッチング周期の中間時点の前後に連続して現れるようにしてスイッチング回数を減少させてスイッチング損失を減少させる方式などを適用することができる。
【0168】
以上で説明したように、
図16~
図21に基づいて説明した実施形態は、オープンエンドワインディング方式に適用される二つのインバーターをそれぞれ構成するスイッチング素子の種類が異なる場合、スイッチング損失の大きいスイッチング素子を適用したインバーターのスイッチングを最小化することができるので、スイッチング損失を減少させ、それによってシステム効率を著しく向上させることができる。
【0169】
以上で本発明の特定の実施形態について図示しながら説明したが、請求範囲の範疇内で本発明を多様に改良及び変化させることができるというのは当該技術分野で通常の知識を有する者に明らかであろう。
【符号の説明】
【0170】
10 第1インバーター
20 第2インバーター
30 コントローラー
100 モーター
200 バッテリー
61、81 電流指令マップ
62、82 電流制御部
63、64、83、84 デューティー生成部
631、641、831、832、841、842 倍数部
632、642、833、843 座標変換部
633、634、834、844 空間ベクターパルス幅変調部
71 オフセット電圧生成部
711 オフセット電圧指令合成部
72 極電圧指令生成部
73 極電圧指令制限部
74 割り算部
75 合算部
91 座標変換部
92 空間ベクターパルス幅変調部
921 オフセット電圧生成部
922 極電圧指令生成部
923 極電圧指令制限部
93 アンチワインドアップ演算部
94、95、951、952 倍数部
961 第1極電圧指令生成部
962 第2極電圧指令生成部
1010 電流指令マップ
1020 電流制御部
1030 電圧制限部
1040 第2インバーター用デューティー生成部
1050 座標変換部
1060 第1インバーター用パルス幅変調部
S11-S16 第1スイッチング素子
S21-S26 第2スイッチング素子
S31-S33 第3スイッチング素子
L1-L3 巻線