(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025702
(43)【公開日】2023-02-22
(54)【発明の名称】スポーツシューズ用ミッドソール
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20230215BHJP
A43B 13/18 20060101ALI20230215BHJP
A43B 5/06 20220101ALI20230215BHJP
【FI】
A43B13/14 A
A43B13/18
A43B5/06
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176661
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2021130532の分割
【原出願日】2021-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】520105164
【氏名又は名称】山崎 明美
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴志
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA04
4F050BA53
4F050HA43
4F050HA71
4F050JA09
(57)【要約】
【課題】ランニングにおける接地荷重の反発力を、ランニングの推進力として効率的に利用することができるスポーツシューズ用ミッドソールを提供する。
【解決手段】おおむね足裏全体範囲の大きさの板バネ状部材の上面プレート1がミッドソール上層に配置され、板バネ状部材の主バネ2が上面プレート1の全長の2分の1より前方で上面プレート1の下面に接続され、主バネ2は上面プレート1との接続箇所から後下方向へ、ミッドソール下層まで到達するよう配置され、上面プレート1とアウトソール6または地面に挟まれる空間の、一部または全部に弾性部材3を配置したミッドソールとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
おおむね足裏全体範囲の大きさの板バネ状部材の上面プレート(1)がミッドソール上層に配置され、板バネ状部材の主バネ(2)が上面プレート(1)の全長の2分の1より前方で、上面プレート(1)下面の部分と主バネ(2)上面の部分とが面接触する形態で接続され、主バネ(2)は上面プレート(1)との接続箇所から後下方向へ、ミッドソール下層まで到達するよう配置され、上面プレート(1)および主バネ(2)は前記接続箇所から後方に向かって薄くなる形状であり、上面プレート(1)とアウトソール(6)または地面に挟まれる空間の、一部または全部に弾性部材(3)を配置したことを特徴とする、スポーツシューズ用ミッドソール。
【請求項2】
請求項1のミッドソール表面の、一部または全部に、弾性部材(4)を配置した、請求項1のミッドソール。
【請求項3】
主バネ(2)の下端とアウトソール(6)の間に、上面プレート(1)と接続しない長さの下面プレート(5)を配置した、請求項1または請求項2のミッドソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランニングにおける接地荷重の反発力を、ランニングの推進力として効率的に利用するのに好適なスポーツシューズ用ミッドソールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスポーツシューズ用ミッドソールはほとんどが発泡体で製作されており、バネはほとんど利用されていない。弾性体の反発力を利用して飛び跳ねるための道具として代表的なものには、トランポリン、ロイター板、ホッピング、なとが挙げられ、これらで利用される弾性体は、ほとんどがコイルバネや板バネなどのバネであることから、バネは発泡体と比較して効率的に利用できる反発力を発すると考えられる。ランニングにおける接地荷重の反発力はランニングの推進力に寄与することから、スポーツシューズ用ミッドソールにバネを利用することは、ランニングにおける接地荷重の反発力をランニングの推進力として効率的に利用するために有用である。
【0003】
ミッドソールでは、厚みを増すことで変形範囲を大きくし、ミッドソールが発する反発力をより長時間にわたって作用させるようにすることができる。長すぎる作用時間の反発力はランニングの俊敏性を妨げるが、適度に長い作用時間の反発力は、短時間に衝撃的に作用する反発力と比較して、ランニングの推進力に効率的に利用できる。発泡体からなるミッドソールでは、変形が大きくなると、発泡体の剛性の低さにより左右方向のぶれが増して走行が不安定となることから、ミッドソールの変形範囲を大きくする構造とすることにはある程度の限度がある。
【0004】
特許文献1では、板バネやコイルバネを靴底に取り付けたシューズが考案されている。板バネを利用したものは、2枚の板バネがつま先側と踵側の両端で接合しており、かつ、踵側でアッパーと板バネが接触していない構造のため、ランニングの蹴り出し時に発する反発力は踵にはほとんど作用しないものとなっている。
【0005】
特許文献2では、ランニングシューズ用ミッドソールを、踵側で接合した2枚の硬質プレートにより構成する考案がされている。この考案では、プレートが踵側で接合しており、かつ、ランニングの蹴り出し時に踵側のアッパーとミッドソールが離れる構造のため、ランニングの蹴り出し時に発する反発力は踵にはほとんど作用しないものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06-189801号公報
【特許文献2】特開2010-162318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ランニングにおける接地荷重の反発力を、ランニングの推進力として効率的に利用することができるスポーツシューズ用ミッドソールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係るミッドソールは、おおむね足裏全体範囲の大きさの板バネ状部材の上面プレート1がミッドソール上層に配置され、板バネ状部材の主バネ2が上面プレート1の全長の2分の1より前方で上面プレート1の下面に接続され、主バネ2は上面プレート1との接続箇所から後下方向へ、ミッドソール下層まで到達するよう配置され、上面プレート1とアウトソール6または地面に挟まれる空間の、一部または全部に弾性部材3を配置して構成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るミッドソールでは、発泡体と比較して効率的に利用できる反発力を発する板バネで構成することにより、発泡体からなるミッドソールと比較して、効率的に反発力を利用することができる。
【0010】
本発明に係るミッドソールでは、変形が大きい場合(
図2)においても、板バネ状部材(上面プレート1、主バネ2)のねじり剛性の高さにより左右方向のぶれが抑制されて走行の不安定さを生じにくいため、発泡体からなるミッドソールと比較して、ミッドソールの変形範囲を大きくする構造とすることが可能である。
【0011】
本発明に係るミッドソールは、上面プレート1と主バネ2が上面プレートの前方で接合しているため、ランニングの蹴り出し時には、
図3のように踵側がつま先側よりも押し上げられる状態となる。このため、ランニングの蹴り出し時に発する反発力は、作用する方向が鉛直上向ではなく、鉛直上向から進行方向へ傾斜した方向となり、ランニングの推進力として有効な力となる。また、上面プレート1はおおむね足裏全面に配置されており、ランニングの蹴り出し時に発する反発力は踵側にも作用するため、蹴り出し時における足首伸展の助力となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】ランニングの接地時(変形が大きい時)の側面図である。
【
図5】請求項2に係る実施例の側面図および断面図である。(a)は側面図。(b)は(a)におけるA-A線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図4に請求項1に係るミッドソールの実施例を示す。
図4においてミッドソールは、おおむね足裏全体範囲の大きさの板バネ状部材の上面プレート1がミッドソール上層に配置され、板バネ状部材の主バネ2が上面プレート1の全長の2分の1より前方で上面プレート1の下面に接続され、主バネ2は上面プレート1との接続箇所から後下方向へ、ミッドソール下層まで到達するよう配置され、上面プレート1とアウトソール6または地面に挟まれる空間の、一部または全部に弾性部材3を配置して構成する。
【0014】
請求項2において配置される弾性部材4について、上面プレート1の上面に配置されるものは足当たりを柔らかくするのに効果があり、上面プレート1・主バネ2・弾性部材3の側面に配置されるものは接地時の安定性向上に効果がある。
【0015】
請求項3において配置される下面プレート5は、接地時の地面反力を効率よく主バネ2の下端へ伝達する効果、および、路面の凹凸から主バネ2の下端を保護する効果がある。
【0016】
上面プレート1および主バネ2の材質は、ここではFRP(繊維強化プラスチック)としているが、金属など他の材質を排除するものではない。弾性部材3および弾性部材4の材質は、ここでは樹脂発泡体としているが、他の材質を排除するものではない。下面プレート5の材質は、ここでは弾性部材3や弾性部材4よりも弾性率が大きい樹脂板としているが、他の材質を排除するものではない。
【0017】
上面プレート1と主バネ2の接合方法は、ここでは
図4に示すようにリベット7による接合としているが、一体成型、接着、ボルトナット、など他の接合方法を排除するものではない。
【0018】
図4において主バネ2の下端は、接地時の圧力集中軽減のため、アウトソール6や最下層の弾性部材3への接触面積が大きくなるように湾曲させているが、湾曲させないことを排除するものではない。
【0019】
図1~6に示される本発明に係るミッドソールでは、踵が接地しないフォアフット走法での使用を想定して、主バネ2と弾性部材3の踵側を削減して軽量化を図っているが、他の走法での使用を想定して主バネ2や弾性部材3を踵側方向に延長して配置することを排除するものではない。
【0020】
図5に示すように、弾性部材3や弾性部材4の一部を空洞8とすることにより、弾性部材3や弾性部材4の軽量化や弾性の調整を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 上面プレート
2 主バネ
3 弾性部材
4 弾性部材
5 下面プレート
6 アウトソール
7 リベット
8 空洞