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特開2023-2571融合タンパク質を含む、肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための医薬組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002571
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】融合タンパク質を含む、肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/18 20060101AFI20221227BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20221227BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221227BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20221227BHJP
   C07K 14/50 20060101ALI20221227BHJP
   C07K 14/605 20060101ALI20221227BHJP
   C07K 14/62 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
A61K38/18
A61P1/16 ZNA
A61K38/26
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/50
C07K14/605
C07K14/62
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022156834
(22)【出願日】2022-09-29
(62)【分割の表示】P 2019524255の分割
【原出願日】2017-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2016-0149866
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】500309919
【氏名又は名称】ユーハン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】YUHAN Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジュンファン
(72)【発明者】
【氏名】チェ・ヒョンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ドフン
(72)【発明者】
【氏名】キム・テワン
(72)【発明者】
【氏名】オ・セウン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ムヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジョンギュン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための組成物を提供する。
【解決手段】(1)野生型線維芽細胞増殖因子21(FGF21)タンパク質のN-末端から位置98から101でのアミノ酸の、EIRPのアミノ酸配列(配列番号:68)での置換;(2)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170から174でのアミノ酸の、TGLEAVのアミノ酸配列(配列番号:69)での置換等の変異からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む、FGF21変異体タンパク質を含む融合タンパク質;および免疫グロブリンのFc領域を含む、医薬組成物である。
【選択図】図13A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効な成分として、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質を含む融合タンパク質;および免疫グロブリンのFc領域を含む、肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための医薬組成物であって、
FGF21変異体タンパク質は、以下の変異(1)から(7):
(1)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置98から101でのアミノ酸の、EIRPのアミノ酸配列(配列番号:68)での置換;
(2)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170から174でのアミノ酸の、TGLEAVのアミノ酸配列(配列番号:69)での置換;
(3)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170から174でのアミノ酸の、TGLEANのアミノ酸配列(配列番号:70)での置換;
(4)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170でのアミノ酸の、アミノ酸Nでの置換;
(5)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置174でのアミノ酸の、アミノ酸Nでの置換;
(6)上記(1)から(5)の1つ以上の変異と共に、野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置180でのアミノ酸の、アミノ酸Eでの置換;および
(7)野生型FGF21タンパク質の免疫原性を低下させるための1から10アミノ酸の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む、医薬組成物。
【請求項2】
融合タンパク質が、生物学的に活性なタンパク質、またはその変異体またはフラグメントをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
変異によって導入されるFGF21変異体タンパク質のアミノ酸残基Nが、グリコシル化されている、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
生物学的に活性なタンパク質が、インスリン、C-ペプチド、レプチン、グルカゴン、ガストリン、胃抑制ポリペプチド(GIP)、アミリン、カルシトニン、コレシストキニン、ペプチドYY、神経ペプチドY、骨形成タンパク質-6(BMP-6)、骨形成タンパク質-9(BMP-9)、オキシントモジュリン、オキシトシン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、イリシン、フィブロネクチンIII型ドメイン含有タンパク質5(FNDC5)、アペリン、アディポネクチン、C1qおよび腫瘍壊死因子関連タンパク質(CTRPファミリー)、レジスチン、ビスファチン、オメンチン、レチノール結合タンパク質-4(RBP-4)、グリセンチン、アンジオポイエチン、インターロイキン-22(IL-22)、エキセンディン-4および成長ホルモンからなる群から選択されるものである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
生物学的に活性なタンパク質が、GLP-1、その変異体およびエキセンディン-4から選択されるものである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
GLP-1の変異体が、配列番号:43から46のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有する、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
野生型FGF21タンパク質が、配列番号:1によって示されるアミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
FGF21変異体タンパク質が、配列番号:6から23のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
融合タンパク質が、リンカーをさらに含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項10】
リンカーが、FGF21変異体タンパク質を免疫グロブリンのFc領域に連結する、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
リンカーが、免疫グロブリンのFc領域のC-末端およびFGF21変異体タンパク質のN-末端に連結される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
リンカーが、10から30アミノ酸残基からなるペプチドである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
リンカーが、配列番号:2から5のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
免疫グロブリンのFc領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgDのFc領域のいずれか、またはそれらの組合せを含むハイブリッドFcである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項15】
ハイブリッドFcが、IgG4領域およびIgD領域を含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
融合タンパク質が、N-末端からC-末端へ以下の順において連結された、生物学的に活性なタンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項17】
リンカーが、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質間にさらに連結される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
リンカーが、免疫グロブリンのFc領域のC-末端およびFGF21変異体タンパク質のN-末端に連結される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
融合タンパク質が、配列番号:36、37および39から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つによって示される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
融合タンパク質が、配列番号:65、66および67から選択されるアミノ酸配列のいずれか1つによって示される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項21】
肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための、請求項1または2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項22】
肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための組成物を製造するための、請求項1または2に記載の医薬組成物の使用。
【請求項23】
請求項1または2に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む、肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための組成物に関する。具体的には、本願発明は、生物学的に活性なタンパク質およびFGF21変異体タンパク質を含む融合タンパク質;および肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するために有効である融合タンパク質を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス性または細菌性感染、アルコールまたは毒性物質、脂肪または重金属の過剰蓄積、異常な免疫応答などのような肝臓疾患には種々の原因がある。これらの原因は、ウイルス性肝炎、アルコール性肝臓疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、中毒性肝炎、自己免疫性肝臓疾患などを含むことができる。また、いくつかの肝臓疾患は、慢性進行を介して肝硬変、肝線維症、および肝臓癌に進行する可能性がある。
【0003】
急性ウイルス性肝炎または中毒性肝炎などの急性肝臓疾患は、重度の疲労、食欲不振、黄疸などを引き起こし、肝臓移植が行われないとき死亡に至る可能性がある急性肝不全に異常に進行する可能性がある。他方では、慢性ウイルス性肝炎および脂肪肝疾患のようにゆっくりと進行する慢性肝臓疾患はほとんど無症候性であり、患者は日常生活上有意な不都合を感じないかもしれないが、肝線維症が進行中であり、慢性肝臓疾患が気付かないうちに肝硬変および肝臓癌に進行する可能性がある。肝硬変の罹患率は、韓国の肝硬変罹患率統計によると2012年に、成人で0.5%および65歳以上で約1.0%と推定される。これは医療機関での診断の病歴に基づいて調査されたアンケートの結果であるため、肝硬変の実際の罹患率はより高い可能性がある。韓国における肝硬変の最も一般的な原因はウイルス性肝炎であり、第2の最も一般的な原因はアルコール性肝臓疾患である。
【0004】
肝障害が何らかの原因によって持続的に繰り返されるとき、症状の有無にかかわらず、肝硬変、線維症、および肝臓癌を発症する大きなリスクがある。肝硬変が発症したとき、処置しても硬化した肝臓を元の状態に戻すことは困難である。
【0005】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、食物などによって刺激されるとき、腸管におけるL細胞によって分泌される31アミノ酸からなるインクレチンホルモンである。その生物学的効果は、膵臓のβ細胞、脳などのような標的組織において発現されるGタンパク質-共役受容体であるGLP-1受容体を介する細胞内シグナル伝達を介して生じる。血液に分泌されるGLP-1は、酵素ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)によるN-末端でのアミノ酸の開裂による活性の喪失によって引き起こされる2分未満の非常に短い半減期を有する。GLP-1は血糖レベルに基づいて膵臓のβ細胞におけるインスリンの分泌を刺激するため、低血糖を誘発することなく血糖を低下させることに対して強い効果を有する。さらに、GLP-1の投与は、種々の動物モデルおよびヒトにおいて体重減少をもたらし、これは食欲抑制に対する効果のために食物摂取の低減によって引き起こされることが知られている。GLP-1は、膵臓のβ細胞において発現されるGLP-1受容体を介する糖脂質毒性によって引き起こされる細胞死を阻害することによって、β細胞の増殖を誘導し、β細胞の生存能力を増強させる。グルカゴンの過剰分泌は、血糖を増加させ、糖尿病における高血糖の原因の1つであることが知られている。加えて、GLP-1が、タンパク質キナーゼA(PKA)タンパク質-特異的グルカゴンの分泌を阻害することによって、空腹時血糖上昇を阻害するように膵臓のα細胞に作用することが知られている。
【0006】
エキセンディン-4は、臨床的に重要なGLP-1受容体アゴニストである。エキセンディン-4は、39アミノ酸残基を有するポリペプチドであり、ドクトカゲ(Gila Monster lizard)の唾液腺において通常生産される。エキセンディン-4は、GLP-1と52%のアミノ酸配列相同性を有し、哺乳動物においてGLP-1受容体と相互作用することが知られている(Thorens et al. (1993) Diabetes 42:1678-1682)。エキセンディン-4は、インビトロでインスリン-生産細胞によるインスリンの分泌を刺激することが示されており、インスリン-生産細胞によるインスリン放出の誘導は、等モル条件下でGLP-1よりも強い。エキセンディン-4は、インスリンの分泌を強く刺激して、GLP-1よりも長い作用期間で齧歯動物およびヒトの両方において血糖レベルを減少させるが、エキセンディン-4は、GLP-1を欠いている哺乳動物において、よく知られていないエピトープを有するため、抗原性を示す。
【0007】
GLP-1およびエキセンディン-4類似体(例えば、リラグルチドおよびエキセナチド)がヒトにおいてグルコースコントロールを改善する能力は、臨床的に確認されている。GLP-1がアポトーシスの阻害および誘導される増殖を介してβ細胞量を増加させることが報告されている。さらに、GLP-1が、満腹シグナルを増強しながら、胃酸分泌および胃内容排出を阻害する腸ホルモンとして作用し、それにより食欲を低減させることも報告されている。GLP-1のかかる効果は、GLP-1類似体が2型糖尿病を有する患者に投与されるときに観察される体重減少を説明することができる。加えて、GLP-1は、齧歯動物において虚血後の心臓保護効果を示す。
【0008】
様々な試みが、長時間作用型GLP-1類似体を開発するためになされている。臨床的に確認される長時間作用型GLP-1類似体は、デュラグルチド(WO 2005/000892)およびアルビグルチド(WO 2003/059934)を含む。デュラグルチドはFc-融合GLP-1類似体であり、アルビグルチドはアルブミン-融合GLP-1類似体であり、これら両方が週1回投与を可能にする薬物動態学プロフィールを有する。両方の薬物は、週1回投与で血糖を低下させること、および体重を低減させることについて優れた効果を有し、また、エキセナチドおよびリラグルチドと比較したとき、処置に関して非常に改善された利便性を提供する。
【0009】
一方、肝臓で合成される線維芽細胞増殖因子21(FGF21)は、グルコースおよび脂質ホメオスタシスにおいて重要な役割を果たすことが知られているホルモンである。FGF21は、FGF21特異的受容体、すなわち、FGF受容体、およびβ-クロトー複合体の両方が発現される、肝臓、脂肪細胞、膵臓のβ細胞、脳の視床下部、および筋肉組織において薬理学的作用を示す。種々の糖尿病および代謝疾患の非ヒト霊長類およびマウスモデルにおいて、FGF21はインスリン非依存的に血糖レベルを低下させ、体重を低下させ、血中のトリグリセリドおよび低比重リポタンパク質(LDL)濃度を低下させることができることが報告されている。加えて、FGF21がインスリン感受性改善効果も有することが知られており、したがって新規の抗-糖尿病または抗肥満治療剤の標的として高い可能性を有している(WO 2003/011213)。
【0010】
したがって、FGF21に基づく新規の抗糖尿病薬を開発するために、いくつかのアミノ酸の置換、挿入、および欠失を介して野生型FGF21配列に基づくFGF21変異体を構築することによってその生物学的活性およびインビボ安定性を改良する試みがなされている(WO2010/065439参照)。しかしながら、FGF21は非常に短い半減期を有するため、生物学的薬剤として直接的に使用されるとき、問題があることが証明されている(Kharitonenkov, A. et al., Journal of Clinical Investigation 115:1627-1635, 2005)。FGF21のインビボ半減期は、マウスにおいて1から2時間、およびサルにおいて2.5から3時間である。したがって、糖尿病に対する治療剤として現在の形態において使用されるFGF21について、毎日の投与が必要とされる。
【0011】
様々なアプローチは、FGF21組換えタンパク質のインビボ半減期を増加させることを試みることにおいて報告されている。そのような一例は、ポリエチレングリコール(PEG)、すなわち、ポリマー材料をFGF21に結合させて、その分子量を増加させ、それにより、腎臓排出を阻害し、インビボ保持時間を増加させることである(WO2012/066075参照)。別のアプローチは、ヒトアルブミンに結合する脂肪酸と融合することによって半減期を改良することを試みている(WO2012/010553参照)。さらなる例は、ヒトFGF受容体単独にまたはβ-クロトーとの複合体のときに特異的に結合するアゴニスト抗体の産生を介する、野生型FGF21と同等の薬理学的活性を維持しながら半減期を増加させることを試みる(WO2012/170438参照)。別の例において、半減期は、IgGのFc領域がFGF21分子に結合する長時間作用型融合タンパク質を調製することによって改良された(WO2013/188181参照)。
【0012】
長時間作用型薬物を作製するために種々の利用可能な技術の中で、Fc融合技術は、インビボ半減期を増加させながら、免疫応答または毒性の誘導のような他のアプローチで見られる欠点が少ないため広く使用される。長時間作用型治療薬としてのFc-融合FGF21タンパク質の開発のために、以下の条件が満たされるべきである。
【0013】
第一に、融合によって引き起こされるインビトロ活性の減少は最小限にされるべきである。FGF21のN-末端およびC-末端の両方がFGF21の活性に関与している。この点において、FGF21融合タンパク質の活性は融合の位置に依存して大きく変化することが知られている。したがって、FGF21に変異が導入されているFc-融合FGF21融合タンパク質の活性は、融合の存在/非存在または位置に依存して変化し得る。第二に、ヒトにおいて1週間に1回の間隔で投与を可能にする薬物動態学プロフィールは、融合によるインビボ半減期の増加によって実現されるべきである。第三に、免疫原性がバイオ医薬品の投与後にほとんどの患者で予期され得ることを考慮すると、融合リンカーまたは変異による免疫原性リスクは最小にされるべきである。第四に、融合の位置または変異の導入から生じる安定性の問題はないべきである。第五に、望ましくない免疫応答が融合免疫グロブリンのアイソタイプに依存して生じる可能性があるため、そのような応答を防ぐための解決策が必要である。
【0014】
免疫グロブリンG(IgG)のFc領域をFGF21分子に連結することによって長時間作用型融合タンパク質を開発する試みが既に報告されている(WO 2013/188181参照)。Fcが野生型FGF21のN-末端に融合しているが、野生型FGF21と比較してインビトロ活性に明確な差異はない1つのFc-FGF21構造の場合、半減期はタンパク質のインビボ分解のために非常に短いことが知られている。この問題に取り組むために、タンパク質分解に抵抗するためにFGF21の特定の部位位置にいくつかの変異を導入することによって、インビボ半減期を改良する試みがなされてきた。しかしながら、免疫原性リスクは、複数の変異の導入とともに増加する可能性がある。対照的に、FcがFGF21分子のC-末端に融合しているFGF21-Fc構造の場合、Fc-FGF21構造と比較して、この部位での融合によって引き起こされる活性の有意な減少があることが知られている。
【0015】
GLP-1およびFGF21の組合せ投与は、体内の作用メカニズムおよび標的組織に依存して単一の投与と比較して相乗効果を有する可能性があり、潜在的に優れた抗-糖尿病有効性およびさらなる利点が期待される。GLP-1およびFGF21の組合せ投与またはGLP-1/FGF21融合タンパク質の効果は、既に研究され、報告されている(WO 2010/142665およびWO 2011/020319参照)。
【0016】
様々な問題が、GLP-1およびFGF21を含む融合タンパク質を開発するために解決されなければならない。野生型GLP-1および野生型FGF21が非常に短いインビボ半減期を有するため、たとえ治療薬として開発されたとしても、少なくとも1日に1回投与される必要がある。したがって、患者に対する利便性を改良するように長時間作用型融合タンパク質を開発するために、Fc融合のような長時間作用型技術が必要とされる。GLP-1およびFGF21の2つの標的に対するデュアル機能薬において、変異の導入は、薬の活性およびインビボ安定性を維持することが重要であり、それぞれの変異によって引き起こされる活性、構造または安定性の変化と関連する問題に対処すべきである。GLP-1およびFGF21の2つの標的に対する薬効は、バランスがとれていなければならず、インビトロ活性、薬物動態学プロフィール、動物モデルにおける薬理学的有効性、およびヒトにおける有効性の臨床評価さえも考慮した薬物設計がこの目的のために必要とされる。融合タンパク質は、人体において存在し得ない構造を有しており、単一の標的に対する融合タンパク質と比較して構造的に複雑である。加えて、変異またはリンカー操作が2つの標的のバランスをとることが必要とされるため、凝集複合体を形成する可能性が高まり得、これを防ぐためにさらなるタンパク質操作が必要とされ得る。さらに、起こり得る免疫原性は、新規の変異配列または複合体構造のために増加し得、これは対処されるべきまたは回避されるべきである。
【0017】
本願発明者らは、上記問題を解決するために努力を行い、結果として、肝炎、肝線維症、および肝硬変を処置することに対して有効な融合タンパク質を開発し、本願発明を完成させた。
【発明の概要】
【0018】
技術的問題
本願発明の目的は、肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための医薬組成物を提供することである。
【0019】
問題に対する解決手段
本願発明の1つの目的にしたがって、有効な成分として、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質を含む融合タンパク質;および免疫グロブリンのFc領域を含む、肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための医薬組成物であって、FGF21変異体タンパク質は、以下の変異(1)から(7):
(1)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置98から101でのアミノ酸の、EIRPのアミノ酸配列(配列番号:68)での置換;
(2)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170から174でのアミノ酸の、TGLEAVのアミノ酸配列(配列番号:69)での置換;
(3)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170から174でのアミノ酸の、TGLEANのアミノ酸配列(配列番号:70)での置換;
(4)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170でのアミノ酸の、アミノ酸Nでの置換;
(5)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置174でのアミノ酸の、アミノ酸Nでの置換;
(6)上記(1)から(5)の1つ以上の変異と共に、野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置180でのアミノ酸の、アミノ酸Eでの置換;および
(7)野生型FGF21タンパク質の免疫原性を低下させるための1から10アミノ酸の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む、医薬組成物を提供する。
【0020】
さらに、本願発明の別の目的にしたがって、有効な成分として、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質を含む融合タンパク質;生物学的に活性なタンパク質、またはその変異体またはフラグメント;および免疫グロブリンのFc領域を含む、肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための医薬組成物であって、FGF21変異体タンパク質は、以下の変異(1)から(7):
(1)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置98から101でのアミノ酸の、EIRPのアミノ酸配列(配列番号:68)での置換;
(2)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170から174でのアミノ酸の、TGLEAVのアミノ酸配列(配列番号:69)での置換;
(3)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170から174でのアミノ酸の、TGLEANのアミノ酸配列(配列番号:70)での置換;
(4)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170でのアミノ酸の、アミノ酸Nでの置換;
(5)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置174でのアミノ酸の、アミノ酸Nでの置換;
(6)上記(1)から(5)の1つ以上の変異と共に、野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置180でのアミノ酸の、アミノ酸Eでの置換;および
(7)野生型FGF21タンパク質の免疫原性を低下させるための1から10アミノ酸の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む、医薬組成物を提供する。
【0021】
さらに、本願発明の別の目的にしたがって、肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための本願発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0022】
さらに、本願発明の別の目的にしたがって、肝炎、肝線維症および肝硬変を予防または処置するための組成物を製造するための本願発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0023】
さらに、本願発明の別の目的にしたがって、本願発明の融合タンパク質を対象に投与する工程を含む、肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための方法を提供する。
【0024】
本願発明の有利な効果
有効な成分として、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質を含む融合タンパク質;および免疫グロブリンのFc領域を含む、肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための本願発明の医薬組成物は、炎症性細胞および繊維芽細胞の増殖を阻害する効果を有し、したがって肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための組成物として有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A図1Aは、ヒトβ-クロトーが過剰発現されるHEK293細胞系を使用して、FGF21変異体タンパク質を含む融合タンパク質(以下、「FGF21変異体融合タンパク質」)としての、DFD4、DFD5、DFD6、DFD7、DFD9、およびDFD13のインビトロ活性を示すグラフである。FGF21変異体融合タンパク質は、変異の導入のために、活性において有意な減少を示さなかった。
【0026】
図1B図1Bは、ヒトβ-クロトーが過剰発現されるHEK293細胞系を使用して、FGF21変異体融合タンパク質を含む融合タンパク質としての、DFD6、DFD13、DFD18、DFD72、DFD73およびDFD74のインビトロ活性を示すグラフである。FGF21変異体融合タンパク質は、変異の導入のために、活性において有意な減少を示さなかった。
【0027】
図1C図1Cは、ヒトβ-クロトーが過剰発現されるHEK293細胞系を使用して、FGF21変異体融合タンパク質を含む融合タンパク質としての、DFD6およびDFD6(大腸菌)のインビトロ活性を示すグラフである。FGF21変異体融合タンパク質は、変異の導入のために、活性において有意な減少を示さなかった。
【0028】
図2A図2Aは、ヒトβ-クロトーが過剰発現されるHEK293細胞系を使用して、FGF21のN-末端およびFc領域を連結するリンカーが導入されたFGF21変異体融合タンパク質としての、DFD3およびDFD4のインビトロ活性を示すグラフである。FGF21変異体融合タンパク質は、わずかな違いがリンカー配列に依存して活性において示されたが、活性において有意な減少を示さなかった。
【0029】
図2B図2Bは、ヒトβ-クロトーが過剰発現されるHEK293細胞系を使用して、FGF21のN-末端およびFc領域を連結するリンカーが導入されたFGF21変異体融合タンパク質としての、DFD1およびDFD13のインビトロ活性を示すグラフである。FGF21変異体融合タンパク質は、わずかな違いがリンカー配列に依存して活性において示されたが、活性において有意な減少を示さなかった。
【0030】
図3図3は、ヒトβ-クロトーが過剰発現されるHEK293細胞系を使用して、RGE(Amgen)、Fc-FGF21(Lilly)およびDFD1のインビトロ活性を示すグラフである。DFD1およびRGE(Amgen)は、同様の活性を有したが、Fc-FGF21(Lilly)は、他のタンパク質よりも2倍高いインビトロ活性を有した。
【0031】
図4A図4Aは、FGF21変異体融合タンパク質であるDFD4のサイズ排除クロマトグラフィー分析の結果である。
【0032】
図4B図4Bは、EIRP変異が導入されたFGF21変異体融合タンパク質であるDFD13のサイズ排除クロマトグラフィー分析の結果である。
【0033】
図4C図4Cは、融合タンパク質の安定性に対するFGF21のEIRP変異の効果を立証するためにサイズ排除クロマトグラフィーを使用してDFD4およびDFD13の提案された含有量の高分子量凝集体(HMW%)を比較するグラフである。DFD13が、DFD4と比較して、最初の段階および2週間以上後の時点で、低い割合の高分子量凝集体(HMW%)と関連したことを立証し、EIRP変異の導入がFGF21変異体融合タンパク質の安定性を改良し、それによりHMW%を有意に低下させることを示す。
【0034】
図5図5は、FGF21変異体融合タンパク質の皮下投与後96時間にわたる血液中のそれぞれのタンパク質の濃度を示す。データは平均値および標準偏差として示される。
【0035】
図6A図6Aは、投与の時点から14日までの食餌性肥満マウスモデルにおいてDFD18の単一の投与後にグラム単位にて表された体重の変化を示すグラフである。DFD18は、優れた体重減少効果を示した。データは平均値および平均の標準誤差として示される。
【0036】
図6B図6Bは、投与の時点から14日までの食餌性肥満マウスモデルにおいてDFD18の単一の投与後に%単位にて表された体重の変化を示すグラフである。DFD18は、優れた体重減少効果を示した。データは平均値および平均の標準誤差として示される。
【0037】
図7図7は、ヒトGLP-1受容体が過剰発現されるCHO細胞系を使用して、GLP-1変異体およびGLP-1のC-末端をFc領域に連結するヒンジに依存して、融合タンパク質のインビトロGLP-1活性を示すグラフである。一般的に、GLP-1(A2G)配列を含む融合タンパク質(DFD23)は、他のGLP-1変異体配列を含む他の融合タンパク質よりも2から3倍低い活性を示した。GLP-1活性において有意な差異は、GLP-1(A2G)配列以外の変異体配列を含む融合タンパク質間で示さなかった。
【0038】
図8A図8Aは、DFD59、DFD69、DFD112およびDFD114のGLP-1活性を示すグラフである。3つの融合タンパク質(DFD69、DFD112およびDFD114)およびFGF21を含まないFc-融合GLP-1変異体のインビトロGLP-1活性を、ヒトGLP-1受容体が過剰発現されるCHO細胞系を使用して、測定した。3つの融合タンパク質は、同様のEC50値を示し、Fc-融合GLP-1変異体(DFD59)は、融合タンパク質よりも約2倍高い活性を示した。
【0039】
図8B図8Bは、DFD69、DFD112、およびDFD114のFGF21活性を示すグラフである。FGF21変異体に依存する融合タンパク質のインビトロ活性を、ヒトβ-クロトーが過剰発現されるHEK293細胞系を使用して、測定した。FGF21部分のインビトロ活性が3つの融合タンパク質において同様であったことを立証した。
【0040】
図9A図9Aは、融合タンパク質DFD69、DFD112、およびDFD114のFGF21部分の、皮下投与後にわたる血清薬物濃度を示すグラフである。データは平均値および標準偏差として示される。
【0041】
図9B図9Bは、融合タンパク質DFD59、DFD69、DFD112、およびDFD114のGLP-1部分の、皮下投与後にわたる血清薬物濃度を示すグラフである。データは平均値および標準偏差として示される。
【0042】
図10A図10Aは、2週間、4日間の間隔で食餌性肥満マウスモデルにおいてDFD114、DFD112、DFD74またはDFD72の反復皮下投与後の血清トリグリセリド(TG)における変化を示すグラフである。融合タンパク質およびFGF21変異体融合タンパク質の投与は、コントロールグループと比較して、血清脂質低下効果を示した。データは平均値および平均の標準誤差として示される。統計分析は、一元配置分散分析後のDunnetの多重比較検定によって行われた(***:P<0.001 vs. ビヒクルコントロール)。
【0043】
図10B図10Bは、2週間、4日間の間隔で食餌性肥満マウスモデルにおいてDFD114、DFD112、DFD74またはDFD72の反復皮下投与後の血清総コレステロール(TC)における変化を示すグラフである。融合タンパク質およびFGF21変異体融合タンパク質の投与は、コントロールグループと比較して、血清脂質低下効果を示した(***:P<0.001 vs. ビヒクルコントロール)。
【0044】
図10C図10Cは、2週間、4日間の間隔で食餌性肥満マウスモデルにおいてDFD114、DFD112、DFD74またはDFD72の反復皮下投与後の肝臓におけるトリグリセリド(TG)における変化を示すグラフである。FGF21変異体融合タンパク質の投与は、コントロールグループと比較して、肝臓における脂質低下効果を示した(*:P<0.05、***: P<0.001 vs. ビヒクルコントロール)。
【0045】
図11図11は、2週間、4日間の間隔で食餌性肥満マウスモデルにおいてDFD114またはDFD112の反復皮下投与によって得られた肝臓の組織病理学的写真を示す。融合タンパク質の投与は、コントロールグループと比較して、肝臓脂肪症-低下効果を示した。
【0046】
図12A図12Aは、4週間、2日間の間隔でメチオニンコリン欠乏(MCD)食餌誘発性非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいてDFD112およびDFD72の反復皮下投与後のALTレベルにおける変化を示すグラフである。ALTレベルは、コントロールグループと比較して、融合タンパク質-処置グループにおいて用量依存的に減少し、ALTレベルは、FGF21変異体融合タンパク質-処置グループにおいても減少した。データは平均値および平均の標準誤差として示される。統計分析は、一元配置分散分析後のDunnetの多重比較検定によって行われた(###:P<0.001 vs. MCSコントロール、**:P<0.01、***: P<0.001 vs. MCDコントロール)。
【0047】
図12B図12Bは、4週間、2日間の間隔でメチオニンコリン欠乏(MCD)食餌誘発性非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいてDFD112およびDFD72の反復皮下投与後のASTレベルにおける変化を示すグラフである。ASTレベルは、コントロールグループと比較して、融合タンパク質-処置グループにおいて用量依存的に減少し、ASTレベルは、FGF21変異体融合タンパク質-処置グループにおいても減少した(###:P<0.001 vs. MCSコントロール、**:P<0.01 vs. MCDコントロール)。
【0048】
図12C図12Cは、4週間、2日間の間隔でメチオニンコリン欠乏(MCD)食餌誘発性非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいてDFD112およびDFD72の反復皮下投与後の炎症レベルにおける変化を示すグラフである。炎症レベルは、コントロールグループと比較して、融合タンパク質-処置グループにおいて用量依存的に減少し、炎症レベルは、FGF21変異体融合タンパク質-処置グループにおいても減少した(###:P<0.001 vs. MCSコントロール、***:P<0.001 vs. MCDコントロール)。
【0049】
図13A図13Aは、4週間、2日間の間隔でMCD食餌誘発性非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいてDFD112およびDFD72の反復皮下投与後の肝臓における線維症関連指標であるアルファ平滑筋アクチン(α-SMA)における変化を示すグラフである。α-SMAの発現は、メチオニンコリン標準(MCS)コントロールグループと比較して、MCDコントロールグループにおいて増加した。他方では、融合タンパク質-処置グループおよびFGF21変異体融合タンパク質-処置グループにおけるα-SMAレベルは、コントロールグループと比較して、減少した。データは平均値および平均の標準誤差として示される。統計分析は、一元配置分散分析後のDunnetの多重比較検定によって行われた(###:P<0.001 vs. MCSコントロール、***:P<0.001 vs. MCDコントロール)。
【0050】
図13B図13Bは、4週間、2日間の間隔でMCD食餌誘発性非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいてDFD112およびDFD72の反復皮下投与後の肝臓における線維症関連指標である形質転換増殖因子-ベータ(TGF-β)における変化を示すグラフである。TGF-βの発現は、MCSコントロールグループと比較して、MCDコントロールグループにおいて増加した。他方では、融合タンパク質-処置グループおよびFGF21変異体融合タンパク質-処置グループにおけるTGF-βレベルは、コントロールグループと比較して、減少した(###:P<0.001 vs. MCSコントロール、***:P<0.001 vs. MCDコントロール)。
【0051】
図13C図13Cは、4週間、2日間の間隔でMCD食餌誘発性非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいてDFD112およびDFD72の反復皮下投与後の肝臓における線維症関連指標であるPicrosirius Red染色の結果を示すグラフである。コラーゲンの量は、MCSコントロールグループと比較して、MCDコントロールグループにおいて増加した。他方では、融合タンパク質-処置グループおよびFGF21変異体融合タンパク質-処置グループにおけるPicrosirius Redレベルは、コントロールグループと比較して、減少した(###:P<0.001 vs. MCSコントロール、**:P<0.01 vs. MCDコントロール)。
【0052】
図14図14は、肝臓の組織病理学的写真を示す。肝臓組織における脂肪は有意に低下した。
【0053】
図15A図15Aは、8週間、2日間の間隔で食餌性肥満および非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいてDFD112の反復皮下投与後の血液生化学的指標であるALTレベルにおける変化を示すグラフである。融合タンパク質が投与されたとき、血清ALT低下効果が、コントロールグループと比較して観察された。データは平均値および平均の標準誤差として示される。統計分析は、一元配置分散分析後のDunnetの多重比較検定によって行われた(***:P<0.001)。
【0054】
図15B図15Bは、8週間、2日間の間隔で食餌性肥満および非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいてDFD112の反復皮下投与後のASTレベルにおける変化を示すグラフである。融合タンパク質が投与されたとき、血清AST低下効果が、コントロールグループと比較して観察された(***:P<0.001)。
【0055】
図15C図15Cは、8週間、2日間の間隔で食餌性肥満および非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいてDFD112の反復皮下投与後のTGにおける変化を示すグラフである。融合タンパク質が投与されたとき、血清TG低下効果が、コントロールグループと比較して観察された(*:P<0.05、***:P<0.001)。
【0056】
図15D図15Dは、8週間、2日間の間隔で食餌性肥満および非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいてDFD112の反復皮下投与後のTCレベルにおける変化を示すグラフである。融合タンパク質が投与されたとき、血清TC低下効果が、コントロールグループと比較して観察された(***:P<0.001)。
【0057】
図16A図16Aは、8週間、2日間の間隔で食餌性肥満および非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいてDFD112の反復皮下投与後の肝臓における投与前および投与後間のNAFLD活性スコア(NAS)における変化を示すグラフを提供する。融合タンパク質が投与されたとき、投与後NAFLD活性スコアは、投与前スコアと比較して減少した。
【0058】
図16B図16Bは、8週間、2日間の間隔で食餌性肥満および非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいてDFD112の反復皮下投与後の肝臓における投与前および投与後間の肝臓線維症スコアにおける変化を示すグラフを提供する。融合タンパク質が投与されたとき、投与後肝臓線維症スコアは、投与前スコアと比較して減少した。
【0059】
図17A図17Aは、8週間、2日間の間隔でチオアセトアミド(TAA)-誘発性肝線維症ラットモデルにおいてDFD112の反復皮下投与後の血液生化学的指標であるALPレベルにおける変化を示すグラフである。融合タンパク質が投与されたとき、血清ALP低下効果が、TAAコントロールグループと比較して観察された。データは平均値および平均の標準誤差として示される。統計分析は、一元配置分散分析後のDunnetの多重比較検定によって行われた(###:P<0.001 vs. 正常コントロール、**:P<0.01 vs. TAAコントロール)。
【0060】
図17B図17Bは、8週間、2日間の間隔でチオアセトアミド(TAA)-誘発性肝線維症ラットモデルにおいてDFD112の反復皮下投与後の血液生化学的指標であるGGTレベルにおける変化を示すグラフである。融合タンパク質が投与されたとき、血清GGT低下効果が、TAAコントロールグループと比較して観察された(###:P<0.001 vs. 正常コントロール、*:P<0.05 vs. TAAコントロール)。
【0061】
図17C図17Cは、8週間、2日間の間隔でチオアセトアミド(TAA)-誘発性肝線維症ラットモデルにおいてDFD112の反復皮下投与後の血液生化学的指標であるT-BILレベルにおける変化を示すグラフである。融合タンパク質が投与されたとき、血清T-BIL低下効果が、コントロールグループと比較して観察された(##:P<0.01 vs. 正常コントロール、*:P<0.05 vs. TAAコントロール)。
【0062】
図17D図17Dは、8週間、2日間の間隔でチオアセトアミド(TAA)-誘発性肝線維症ラットモデルにおいてDFD112の反復皮下投与後の肝臓における線維症領域における変化を示すグラフである。融合タンパク質が投与されたとき、線維症領域低下効果が、コントロールグループと比較して観察された(###:P<0.001 vs. 正常コントロール、***:P<0.001 vs. TAAコントロール)。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下で、本願発明は詳細に説明される。
【0064】
本願発明による肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための組成物において活性成分として含まれる融合タンパク質は、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質;および免疫グロブリンのFc領域を含み、FGF21変異体タンパク質は、以下の変異(1)から(7):
(1)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置98から101でのアミノ酸の、EIRPのアミノ酸配列(配列番号:68)での置換;
(2)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170から174でのアミノ酸の、TGLEAVのアミノ酸配列(配列番号:69)での置換;
(3)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170から174でのアミノ酸の、TGLEANのアミノ酸配列(配列番号:70)での置換;
(4)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170でのアミノ酸の、アミノ酸Nでの置換;
(5)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置174でのアミノ酸の、アミノ酸Nでの置換;
(6)上記(1)から(5)の1つ以上の変異と共に、野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置180でのアミノ酸の、アミノ酸Eでの置換;および
(7)野生型FGF21タンパク質の免疫原性を低下させるための1から10アミノ酸の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。
【0065】
融合タンパク質は、生物学的に活性なタンパク質、またはその変異体またはフラグメントをさらに含み得る。
【0066】
具体的には、本願発明による肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための組成物において活性成分として含まれる融合タンパク質は、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質;生物学的に活性なタンパク質、またはその変異体またはフラグメント;および免疫グロブリンのFc領域を含み、FGF21変異体タンパク質は、以下の変異(1)から(7):
(1)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置98から101でのアミノ酸の、EIRPのアミノ酸配列(配列番号:68)での置換;
(2)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170から174でのアミノ酸の、TGLEAVのアミノ酸配列(配列番号:69)での置換;
(3)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170から174でのアミノ酸の、TGLEANのアミノ酸配列(配列番号:70)での置換;
(4)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170でのアミノ酸の、アミノ酸Nでの置換;
(5)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置174でのアミノ酸の、アミノ酸Nでの置換;
(6)上記(1)から(5)の1つ以上の変異と共に、野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置180でのアミノ酸の、アミノ酸Eでの置換;および
(7)野生型FGF21タンパク質の免疫原性を低下させるための1から10アミノ酸の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。
【0067】
野生型FGF21タンパク質は、グルコースおよび脂肪ホメオスタシスにおいて重要な役割を果たすことが知られているホルモンであり、哺乳動物、例えばヒト、マウス、ブタ、サルなど、好ましくはヒト由来であってよい。さらに好ましくは、野生型FGF21タンパク質は、配列番号:1によって示されるアミノ酸配列を有する野生型ヒトFGF21タンパク質であり得る。
【0068】
FGF21変異体タンパク質において含まれる変異は、好ましくは、EIRP、TGLEAV、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異のいずれか1つ;TGLEAV、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異のいずれか1つおよびEIRPの変異の組合せ;EIRP、TGLEAV、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異のいずれか1つおよびA180Eの変異の組合せ;またはTGLEAV、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異のいずれか1つ、EIRPの変異およびA180Eの変異の組合せであってよい。さらに、FGF21変異体タンパク質は、N-末端またはC-末端での1から10アミノ酸が野生型FGF21タンパク質と比較して欠失されている配座を有してもよい。さらに好ましくは、FGF21変異体タンパク質は、配列番号:6から23のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を含んでもよい。よりさらに好ましくは、FGF21変異体タンパク質は、配列番号:6から23のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を含んでもよく、さらに、N-末端またはC-末端での1から10アミノ酸が野生型FGF21タンパク質と比較して欠失されている配座を有してもよい。
【0069】
融合タンパク質において、FGF21変異体タンパク質の変異によって導入されるアスパラギン(N)残基はグリコシル化されてもよい。
【0070】
生物学的に活性なタンパク質は、インスリン、C-ペプチド、レプチン、グルカゴン、ガストリン、胃抑制ポリペプチド(GIP)、アミリン、カルシトニン、コレシストキニン、ペプチドYY、神経ペプチドY、骨形成タンパク質-6(BMP-6)、骨形成タンパク質-9(BMP-9)、オキシントモジュリン、オキシトシン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、イリシン、フィブロネクチンIII型ドメイン含有タンパク質5(FNDC5)、アペリン、アディポネクチン、C1qおよび腫瘍壊死因子関連タンパク質(CTRPファミリー)、レジスチン、ビスファチン、オメンチン、レチノール結合タンパク質-4(RBP-4)、グリセンチン、アンジオポイエチン、インターロイキン-22(IL-22)、エキセンディン-4および成長ホルモンからなる群から選択される1つであってよい。好ましくは、生物学的に活性なタンパク質は、GLP-1、その変異体およびエキセンディン-4から選択される1つであってよい。具体的には、融合タンパク質は、GLP-1の効果およびFGF21タンパク質の効果を同時に示すことができる。
【0071】
本願明細書において使用される、用語「インスリン」は、膵臓のベータ細胞によって合成および分泌されるタンパク質を示し、血液中の一定のグルコースレベルを維持することにおいて役割を果たすホルモンである。インスリンは、血糖レベルが高いとき分泌され、血液中のグルコースをグリコーゲンの形態で保存される細胞に入るようにし、そして肝細胞においてグルコース生産を阻害する。それはまた、脂肪組織において脂肪酸へのグルコース酸化および転換を手助けする。筋肉において、それは、アミノ酸の吸収を促進し、タンパク質を合成する。エピネフリンおよびグルカゴンは、血糖レベルを増加させることによってインスリンのアンタゴニストとして作用する。
【0072】
本願明細書において使用される、用語「C-ペプチド」は、プロインスリンのAおよびB鎖を連結するペプチドを指す。C-ペプチドは、膵臓細胞の分泌顆粒によってインスリンと共に分泌されるが、血液中で破壊されないため、膵臓のインスリン分泌機能の指標として使用される。
【0073】
本願明細書において使用される、用語「レプチン」は、一定レベルで脂肪組織によって分泌される体脂肪を維持するホルモンを指す。脂肪組織によって分泌されるレプチンは、脳に作用して、食欲を抑制し、体内の代謝を活性化し、それにより体重を低減させる。
【0074】
本願明細書において使用される、用語「グルカゴン」は、膵臓によって合成および分泌されるタンパク質を指し、低下した血糖レベルに応答して分泌されるホルモンであり、血糖レベルを増加させる役割を果たす。グルカゴンは、ランゲルハンス島のα細胞によって分泌される29アミノ酸残基からなる。
【0075】
本願明細書において使用される、用語「ガストリン」は、胃の遠位端に分泌されるホルモンを指し、胃酸の分泌および膵液の生産を誘導し、胃、小腸、および大腸の動きを促進する。
【0076】
本願明細書において使用される、用語「ガストリン阻害ポリペプチド」は、全ての胃液分泌を阻害する線状ポリペプチドを指す。
【0077】
本願明細書において使用される、用語「アミリン」は、膵臓のベータ細胞によって合成および分泌されるホルモンを示し、インスリンのようなグルコース代謝を制御する。
【0078】
本願明細書において使用される、用語「カルシトニン」は、血液中のカルシウムレベルを制御する甲状腺ホルモンを指す。カルシトニンは、甲状腺C細胞によって分泌される32アミノ酸からなるポリペプチドである。
【0079】
本願明細書において使用される、用語「コレシストキニン」は、十二指腸および空腸のI細胞によって生産される33アミノ酸からなるホルモンを指す。コレシストキニンは、脾臓の収縮を加速しおよび膵臓酵素の分泌を促進する作用を示し、胃酸の分泌を阻害する。
【0080】
本願明細書において使用される、用語「ペプチドYY」は、ペプチドチロシンチロシンの略語であり、食物に応答して大腸および回腸の細胞によって分泌される36アミノ酸からなるポリペプチドを指す。
【0081】
本願明細書において使用される、用語「神経ペプチドY」は、カルボキシ末端がアミノ化されている36アミノ酸からなる生物学的に活性なペプチドを指す。神経ペプチドYは、脊椎動物の中枢および末梢神経系において広く分布され、交感神経系において血圧を制御し、脊椎動物の中枢神経系における内分泌または自律神経コントロール、摂食行動、記憶、および概日リズムに関与する。
【0082】
本願明細書において使用される、BMP-6とも呼ばれる用語「骨形成タンパク質6」は、骨形成に直接的に関与するタンパク質を指す。
【0083】
本願明細書において使用される、BMP-9とも呼ばれる用語「骨形成タンパク質9」は、骨形成に直接的に関与するタンパク質を指す。
【0084】
本願明細書において使用される、用語「オキシトモジュリン」は、粘膜の壁細胞によって分泌される37アミノ酸からなるポリペプチドを指す。オキシトモジュリンは、強い食欲抑制効果を有する。
【0085】
本願明細書において使用される、用語「オキシトシン」は、9アミノ酸からなるホルモンを指し、分娩中の子宮収縮を促進し、授乳中の乳の分泌を手助けする。
【0086】
本願明細書において使用される、用語「GLP-1」は、食物などによって刺激される腸L細胞において分泌される31アミノ酸からなるインクレチンホルモンを指す。例えば、GLP-1タンパク質は、配列番号:42のアミノ酸配列によって示されてもよい。
【0087】
GLP-1の変異体は、例えば、配列番号:43から46のいずれか1つのアミノ酸配列によって示されてもよい。
【0088】
本願明細書において使用される、用語「イリシン」は、運動中に筋肉によって分泌され、白色脂肪細胞の褐色脂肪細胞への転換のような脂肪を分解するために血流を介して脂肪細胞に到達するホルモンを指す。イリシンは、112アミノ酸からなり、FNDC5と呼ばれる膜タンパク質の切断されたフラグメントである。
【0089】
本願明細書において使用される、用語「FNDC5」は、フィブロネクチンIII型ドメイン含有タンパク質5の略語であり、イリシンの前駆体物質を指す。
【0090】
本願明細書において使用される、用語「アペリン」は、APLN遺伝子によってコードされるペプチドを指す。アペリンは、脂肪組織によって合成および分泌され、インスリンと同じ機能を有する。
【0091】
本願明細書において使用される、用語「アディポネクチン」は、脂肪細胞によって分泌されるタンパク質を指し、インスリン抵抗性を改良する。
【0092】
本願明細書において使用される、用語「CTRPファミリー」は、アジポカインファミリーの1つであり、グルコースおよび脂質代謝などを制御するように肝臓および筋肉組織に主に作用するC1qおよび腫瘍壊死因子-関連タンパク質を指す。
【0093】
本願明細書において使用される、用語「レジスチン」は、脂肪細胞によって分泌される最近発見されたアジポカインを指し、108アミノ酸からなるタンパク質であり、脂肪分化中に増加される剤として知られ、脂肪細胞の分化を阻害することができる。
【0094】
本願明細書において使用される、用語「ビスファチン」は、脂肪組織によって生産および分泌されるアジポカインの1つを指し、52kDaのタンパク質である。
【0095】
本願明細書において使用される、用語「オメンチン」は、脂肪組織によって生産および分泌されるアジポカインの1つを指し、抗炎症性作用を有するタンパク質である。
【0096】
本願明細書において使用される、用語「レチノール結合タンパク質-4」は、脂肪細胞によって分泌されるタンパク質を指し、インスリン抵抗性を改良するビタミンAを有する。
【0097】
本願明細書において使用される、用語「グリセリン(glycetin)」は、消化管中の主要なエンテログルカゴンを指し、位置33-66でのアミノ酸間のグルカゴンの全ての29アミノ酸を含む69アミノ酸からなる。
【0098】
本願明細書において使用される、ANGとも呼ばれる用語「アンジオポイエチン」は、血管または血管内皮細胞の増殖中または体内での創傷治癒中に作用するタンパク質を指す。
【0099】
本願明細書において使用される、IL-TIFとも呼ばれる用語「IL-22」は、IL-22遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。IL-22は、上皮細胞の細菌抗原に応答して活性化されるナチュラルキラー細胞またはT細胞によって分泌される。
【0100】
本願明細書において使用される、用語「Fc領域」、「Fcフラグメント」または「Fc」は、免疫グロブリンの重鎖定常領域1(CH1)、重鎖定常領域2(CH2)および重鎖定常領域3(CH3)を含むが、重鎖および軽鎖の可変領域および免疫グロブリンの軽鎖定常領域1(CL1)を含まないタンパク質を指す。さらに、本願明細書において使用される、用語「Fc領域変異体」は、Fc領域のアミノ酸の一部を置換することによって、または異なるタイプのFc領域を組み合わせることによって調製されるものを指す。
【0101】
免疫グロブリンのFc領域は、抗体を構成する完全なFc領域、そのフラグメント、またはFc領域変異体であってよい。さらに、Fc領域は、単量体または多量体の形態の分子を含み、重鎖定常領域のヒンジ領域をさらに含み得る。Fc領域変異体は、ヒンジ領域での開裂を防止するように修飾されてもよい。さらに、Fcのヒンジ配列は、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)または補体依存性細胞毒性(CDC)を低下させるようにいくつかのアミノ酸配列において置換を有し得る。加えて、Fcヒンジ配列のアミノ酸配列の一部は、Fab領域の再配列を阻害するように置換されてもよい。FcのC-末端でのリジン(K)は除去されてもよい。
【0102】
好ましくは、免疫グロブリンのFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgD Fc領域のいずれか1つ;またはそれらの組合せであるハイブリッドFcであってよい。さらに、ハイブリッドFcは、IgG4領域およびIgD領域を含んでよい。さらに、ハイブリッドFc領域は、一部のIgD Fcのヒンジ配列およびCH2、ならびにIgG4 FcのCH2およびCH3配列を含んでもよい。
【0103】
加えて、本願発明のFcフラグメントは、野生型グリコシル化鎖、野生型よりも多いグリコシル化鎖、野生型よりも少ないグリコシル化鎖、または脱グリコシル化鎖の形態であってよい。グリコシル化鎖の増加、減少、または除去は、当分野で知られている慣用の方法、例えば化学的方法、酵素的方法、および微生物を使用する遺伝子操作する方法によって調製され得る。
【0104】
好ましくは、免疫グロブリンFc領域は、配列番号:24から26、47および48から選択されるアミノ酸配列によって示され得る。
【0105】
融合タンパク質は、N-末端からC-末端へ以下の順において連結された生物学的に活性なタンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含んでよい。さらに、融合タンパク質は、N-末端からC-末端へ以下の順において連結されたFGF21変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域および生物学的に活性なタンパク質を含んでよい。好ましくは、融合タンパク質は、N-末端からC-末端へ以下の順において連結された生物学的に活性なタンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含んでよい。
【0106】
さらに、融合タンパク質は、N-末端からC-末端へ以下の順において連結されたGLP-1変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含んでよい。さらに、融合タンパク質は、N-末端からC-末端へ以下の順において連結されたFGF21変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびGLP-1変異体タンパク質を含んでよい。好ましくは、融合タンパク質は、N-末端からC-末端へ以下の順において連結されたGLP-1変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含んでよい。
【0107】
さらに、融合タンパク質は、リンカーをさらに含み得る。
【0108】
融合タンパク質は、FGF21変異体タンパク質が免疫グロブリンFc領域のN-末端またはC-末端に直接的に連結される、またはFGF21変異体タンパク質がリンカーを介して免疫グロブリンFc領域に連結される、形態であってよい。
【0109】
そのような場合、リンカーは、FcフラグメントのN-末端、C-末端、または遊離基に連結されてよく、また、FGF21変異体タンパク質のN-末端、C-末端、または遊離基に連結されてよい。リンカーがペプチドリンカーであるとき、結合は任意の領域にて起こってよい。例えば、リンカーは、免疫グロブリンFc領域のC-末端およびFGF21変異体タンパク質のN-末端に連結され、免疫グロブリンFc領域およびFGF21変異体タンパク質の融合タンパク質を形成してよい。
【0110】
さらに、本願発明の融合タンパク質は、生物学的に活性なタンパク質が融合タンパク質の免疫グロブリンのFc領域のN-末端に連結される形態であってよい。
【0111】
リンカーおよびFcが別々に発現され、次に連結されるとき、リンカーは当分野で知られている架橋剤であってよい。架橋剤の例は、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、4-アジドサリチル酸のようなN-ヒドロキシスクシンイミドエステルおよび3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)のようなジスクシンイミジルエステルを含むイミドエステル、およびビス-N-マレイミド-1,8-オクタンのような二機能性マレイミドを含んでよいが、これらに限定されない。
【0112】
さらに、リンカーはペプチドであってよい。好ましくは、リンカーは10から30アミノ酸残基からなるペプチドであってよい。
【0113】
さらに、アラニンはリンカーの末端にさらに付着され得る。好ましくは、リンカーは、配列番号:2から5のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有するペプチドであってよい。
【0114】
融合タンパク質は、1つ以上のFGF21変異体タンパク質が互いに連結したFGF21変異体タンパク質の二量体または多量体が、免疫グロブリンFc領域に連結される形態であってよい。さらに、融合タンパク質は、免疫グロブリンFc領域がそれに連結したFGF21変異体タンパク質を有する、2つ以上の免疫グロブリンFc領域が連結された二量体または多量体の形態であってよい。
【0115】
さらに、具体的には、融合タンパク質は、配列番号:36から39のいずれか1つのアミノ酸配列によって示されてもよい。さらに具体的には、それは、配列番号:36、37または39のアミノ酸配列によって示されてもよい。
【0116】
さらに、融合タンパク質は、好ましくは配列番号:58から67のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有するペプチドであってよい。さらに好ましくは、融合タンパク質は、配列番号:65、66または67によって示されるアミノ酸配列を有するペプチドであってよい。
【0117】
FGF21変異体タンパク質は、野生型FGF21タンパク質の免疫原性を低下させるための1から10アミノ酸の変異をさらに含み得る。免疫原性は、当分野で知られている慣用の方法によって予測され得る。例えば、タンパク質の起こり得る免疫原性は、例えば、iTopeTMおよびTCEDTM方法を使用することによってスクリーニングされ得る。
【0118】
さらに、免疫原性を最小限にするための変異は、当分野で知られている慣用の方法によって設計され得る。例えば、免疫原性が起こり得る免疫原性を評価するためにEpiScreenTM分析を実施することによって観察されるとき、免疫原性を誘導するアミノ酸配列はT細胞エピトープマッピングを介して同定され得、最小限にされた免疫原性を有する変異体はコンピューター内予測を介して設計され得る。
【0119】
融合タンパク質は、肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するために使用することができる。
【0120】
具体的には、肝炎は、急性ウイルス肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎、劇症肝炎、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)であってよい。具体的には、肝硬変は、アルコール性肝硬変、または原発性胆汁性肝硬変であってよい。
【0121】
さらに、医薬組成物は、医薬担体をさらに含んでもよい。医薬担体は、患者に抗体を送達するために適当な非毒性材料である限り、あらゆる担体であってよい。例えば、蒸留水、アルコール、脂肪、ワックスおよび不活性な固体を担体として含めてよい。薬学的に許容されるアジュバント(緩衝剤、分散剤)もまた医薬組成物に含めてよい。これらの製剤において、融合タンパク質の濃度は大きく異なり得る。
【0122】
具体的には、医薬組成物は、組成物のpH、浸透圧、粘性、透明性、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解または放出速度、吸着、または透過性を変更、維持、または保存するための製剤材料を含んでよい。適当な製剤について、それは、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン)、抗微生物剤、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウム)、緩衝剤(例えば、ホウ酸、重炭酸、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩または他の有機酸)、増量剤(例えば、マンニトールまたはグリシン)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA))、錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、増量剤、単糖類、二糖類および他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノースまたはデキストリン)、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン)、着色剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(例えば、ナトリウム)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素)、溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、懸濁剤、界面活性剤または湿潤剤(例えば、プルロニック;PEG;ソルビタンエステル;ポリソルベート、例えば、ポリソルベート 20またはポリソルベート 80;トリトン;トロメタミン;レシチン;コレステロールまたはチロキサポール)、安定性向上剤(例えば、スクロースまたはソルビトール)、成長向上剤(例えば、アルキル金属ハロゲン化物、好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム;またはマンニトール、ソルビトール)、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または医薬アジュバントをさらに含んでよいが、これらに限定されない。
【0123】
加えて、本願発明はまた、本願発明の医薬組成物を処置を必要とする対象に投与することを含む肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための方法を提供する。このような方法は、有効量の本願発明の融合タンパク質を急性ウイルス肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎、劇症肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のような肝炎の症状を有する哺乳動物に投与することを含んでよい。有効量の本願発明の融合タンパク質を肝硬変、例えば、アルコール性肝硬変、原発性胆汁性肝硬変、および肝線維症の症状を有する哺乳動物に投与することを含んでもよい。
【0124】
本願発明の医薬組成物は、任意の経路を介して投与されてよい。本願発明の組成物は、任意の適当な手段を介して、直接的に(例えば、局所的に、注射により組織領域に投与することにより、移植、または局所投与により)または全身的に(例えば、経口または非経口投与により)動物に提供されてもよい。本願発明の組成物は、静脈内、皮下、眼科的、腹腔内、筋肉内、経口、経直腸、眼窩内、脳内、頭蓋内、髄腔内、脳室内、髄腔内、大槽内、嚢内、鼻腔内、またはエアロゾル投与を介して非経腸的に提供されるとき、組成物は、好ましくは水性であるか、または生物学的に適用できる体液懸濁液または溶液の一部を含んでよい。したがって、担体またはビヒクルは、生物学的に適用可能であるため、組成物に加えられてよく、および患者に送達されてよい。したがって、生物学的に適当な塩水は、一般的に、製剤のための体液のような担体として含まれてもよい。
【0125】
さらに、投与頻度は、使用される製剤における融合タンパク質の薬物動態パラメータに依存して変化し得る。一般的に、所望の効果をなし遂げるように投与用量が達成されるまで、医師は組成物を投与するだろう。したがって、組成物は、単位用量として、時間間隔で少なくとも2つの用量で(標的融合タンパク質の同じ量を含んでも含まなくてもよい)投与されてもよく、または移植デバイスまたはカテーテルを介して連続的な注射によって投与されてもよい。適当な投与用量の添加の正確さは、当業者によって日常的に行われてもよく、それらによって日常的に行われている研究の範囲に対応する。
【0126】
さらに、ヒトにおいて融合タンパク質の好ましい単位用量は、0.01μg/kgから100mg/kg体重の範囲、およびさらに好ましくは1μg/kgから10mg/kg体重の範囲であり得る。これは最適な量であるが、単位用量は処置される疾患または副作用の存在/非存在に依存して変化し得る。それにもかかわらず、最適な投与用量は、慣用の実験を実施することにより決定されてもよい。融合タンパク質の投与は、周期的ボーラス注射、外部貯蔵器(例えば、静脈内バッグ)、または内部供給源からの連続的な静脈内、皮下、もしくは腹腔内投与(例えば、生体侵食性(bioerodable)インプラント)によって行われてよい。
【0127】
加えて、本願発明の融合タンパク質は、他の生物学的に活性な分子と共に対象レシピエントに投与され得る。融合タンパク質および他の分子、投与形態、および最適な用量の最適な組合せは、当分野でよく知られている慣用の実験によって決定され得る。
【0128】
本願発明は、有効な成分として、肝炎、肝線維症および肝硬変を予防または処置するための融合タンパク質を含む本願発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0129】
本願発明は、有効な成分として、肝炎、肝線維症および肝硬変を予防または処置するための組成物を製造するための融合タンパク質を含む本願発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0130】
さらに別の局面において、本願発明は、融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を提供する。単離された核酸分子は、DNA、RNA、およびmRNAからなる群から選択されてよく、具体的には、それはDNAであってよい。
【0131】
そのような場合、融合タンパク質をコードする単離された核酸分子は、コドン重複のために互いに異なる配列を有してよい。さらに、単離された核酸が融合タンパク質を生産することができる限り、所望の目的にしたがって、単離された核酸は適当に修飾されてよく、または、ヌクレオチドは単離された核酸のN-末端またはC-末端に加えられてよい。
【0132】
単離された核酸分子は、例えば、配列番号:71から80のいずれか1つによって示されるヌクレオチド配列を含んでよい。
【0133】
さらに別の局面において、本願発明は、単離された核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0134】
本願明細書において使用される、用語「発現ベクター」は、宿主細胞の形質転換のために適当である、および挿入された異種核酸配列の発現を指向または制御する、核酸配列を含むベクターを指す。発現ベクターは、線状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクター、およびそれらの類似体を含む。ウイルスベクターの例は、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスを含むが、これらに限定されない。
【0135】
本願明細書において使用される、用語「異種核酸配列の発現」または標的タンパク質の「発現」は、挿入されたDNA配列の転写、mRNA転写産物の翻訳、およびFc融合タンパク質産物、抗体または抗体フラグメントの生産を指す。
【0136】
有効な発現ベクターは、RcCMV(Invitrogen、Carlsbad)またはその変異体であってよい。有効な発現ベクターは、哺乳動物細胞において標的遺伝子の連続的な転写を促進するためのヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、および転写後RNA安定性のレベルを増強するためのウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列を含み得る。本願発明の例示的な態様において、発現ベクターは、RcCMVの修飾されたベクターであるpAD15である。
【0137】
さらに別の局面において、本願発明は、発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0138】
本願明細書において使用される、用語「宿主細胞」は、組換え発現ベクターが導入され得る原核細胞または真核細胞を指す。本願明細書において使用される、用語「形質転換」、または「トランスフェクト」は、当分野で知られている種々の技術によって細胞への核酸(例えば、ベクター)の導入を指す。
【0139】
適当な宿主細胞は、本願発明のDNA配列で形質転換またはトランスフェクトされ得、および標的タンパク質の発現および/または分泌のために使用され得る。本願発明において使用されてもよい適当な宿主細胞の例は、不死ハイブリドーマ細胞、NS/0骨髄腫細胞、293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、CAP細胞(ヒト羊水由来細胞)、およびCOS細胞を含む。
【0140】
発明のための様式
以下、本願発明の例示的な態様は、実施例を基準にして詳細に記載されている。しかしながら、本願発明によるこれらの実施例は、多くの異なる形態において修飾することができ、本願発明の範囲は、ここに記載の実施例に限定されると解釈されるべきでない。
【0141】
調製実施例1.FGF21変異体タンパク質を含む融合タンパク質の調製および精製
【0142】
調製実施例1-1.FGF21変異体タンパク質の発現のための発現ベクターの調製
Fc-FGF21構造においてFGF21の安定性、活性および薬物動態学プロフィールを改良するために、FGF21の変異試験を行った。
【0143】
具体的には、タンパク質変異体は、FGF21タンパク質の3次元構造分析に基づくタンパク質活性に有意に影響を及ぼすことが予期される、LLLE領域(配列番号.1のFGF21タンパク質のN-末端から位置98から101でのアミノ酸)およびGPSQG領域(配列番号.1のFGF21タンパク質のN-末端から位置170から174でのアミノ酸)、およびA180領域について設計した。
【0144】
FGF21タンパク質に導入される各変異の位置、配列情報、標的および予期される効果は、以下の表1に列挙される。表1において、は、グリコシル化アスパラギン(N)を示す。
【表1】
【0145】
さらに、表1に記載されている変異を含むFGF21変異体タンパク質は、以下の表2に列挙される。
【表2】
【0146】
アミノ酸をコードするヌクレオチドは、N-末端からC-末端に順に、融合された担体、リンカー、およびFGF21変異体タンパク質が発現されるように、発現ベクターに負荷された。各FGF21変異体融合タンパク質の材料コード、FGF21に導入される変異の配列、融合担体の配列およびリンカー配列は、以下の表3に列挙される。表3において、は、グリコシル化アスパラギン(N)を示す。
【表3】
【0147】
FGF21変異体融合タンパク質を生産するために、FGF21変異体タンパク質の各々をコードするヌクレオチド配列を、各タンパク質のアミノ酸配列に基づいてBioneer Corporation(Korea)に相談することによって合成した。NheIおよびNotI制限酵素配列を、FGF21変異体タンパク質の各々をコードするヌクレオチド配列の5’末端および3’末端に加え、タンパク質翻訳のための開始コドンおよび細胞の外側に発現されるタンパク質を分泌することができるリーダー配列(MDAMLRGLCCVLLLCGAVFVSPSHA)を5’末端で制限酵素配列の次に挿入した。終始コドンを、FGF21変異体融合タンパク質の各々をコードするヌクレオチド配列の次に挿入した。FGF21変異体融合タンパク質の各々をコードするヌクレオチド配列を、NheIおよびNotIの2つの制限酵素を使用することによってpTrans-empty発現ベクターにクローニングした。CMVプロモーター、pUC由来の複製起源、SV40由来の複製起源およびアンピシリン-耐性遺伝子を含む単純な構造を有するpTrans-empty発現ベクターを、CEVEC Pharmaceuticals(Germany)から購入した。
【0148】
一方、DFD6(大腸菌発現)およびFc-FGF21融合タンパク質RGE(Amgen)の場合、各融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、大腸菌発現のためのpET30a発現ベクターに挿入した。
【0149】
調製実施例1-2.FGF21変異体融合タンパク質の発現のためのプラスミドDNAの構築
発現のために使用される大量のプラスミドDNAを得るために、大腸菌を調製実施例1-1において構築された発現ベクターの各々で形質転換した。細胞壁が弱められた大腸菌細胞を、熱ショックを介して各発現ベクターで形質転換し、コロニーを得るために形質転換体をLBプレート上に置いた。このように得られたコロニーをLB培地に植菌し、37℃で16時間培養し、各発現ベクターを含む各大腸菌培養物を100mLの容量において得た。このように得られた大腸菌を培養培地を除去するために遠心し、次にP1、P2、P3溶液(QIAGEN、Cat No.:12963)を細胞壁を破壊するために加え、それによりタンパク質およびDNAが分離されたDNA懸濁液を得た。プラスミドDNAを、Qiagen DNA 精製カラムを使用することによってこのように得られたDNA懸濁液から精製した。溶出したプラスミドDNAをアガロースゲル電気泳動を介して同定し、濃度および純度をナノドロップデバイス(Thermo scientific、Nanodrop Lite)を使用することによって測定した。このように得られたDNAを、発現のために使用した。
【0150】
調製実施例1-3.CAP-T細胞における融合タンパク質の発現
ヒト細胞系を、調製実施例1-2において得られた各プラスミドDNA型でトランスフェクトした。各プラスミドDNA型を、PEI溶液(Polyplus、Cat. No.:101-10N)を使用することによって、PEM培地(Life technologies)において培養されていたCAP-T細胞(CEVEC)に形質導入した。DNAおよびPEI溶液の混合溶液をFreestyle293発現培地(Invitrogen)を使用することによって細胞懸濁液と混合し、37℃で5時間培養し、PEM培地を加えた。37℃で5-7日間培養後、培養物を細胞を除去するために遠心し、FGF21変異体融合タンパク質を含む上清を得た。
【0151】
調製実施例1-4.大腸菌におけるFGF21変異体融合タンパク質の発現および精製
大腸菌株BL21(DE3)を、DFD6(大腸菌)およびRGE(Amgen)融合タンパク質を発現する各プラスミドDNAで形質転換した。各融合タンパク質を発現する形質転換された大腸菌を20mlのLB培地に植菌し、37℃で15時間震盪しながら培養し、次に培養培地の一部を100mlのLB培地に植菌し、37℃で16時間震盪しながら培養した。培養完了後、培養物を大腸菌ペレットを得るために遠心し、次に細胞を高圧細胞破砕機を使用して破壊し、封入体を得た。
【0152】
得られた封入体を、洗浄および溶出、次にタンパク質リフォールディングプロセスにより精製した。具体的には、細菌タンパク質を除去するために、得られた封入体を、0.5% Triton X-100、50mM Tris、1mM EDTAおよび0.1M NaClを含むバッファー溶液(pH 8.0)で2-3回洗浄し、次に8M ウレア、50mM Trisおよび1mM DTTを含む8M ウレアバッファーに再懸濁した。8M ウレアバッファー中のタンパク質が完全に変性されるために、タンパク質リフォールディングプロセスを以下の通りに行った。
【0153】
第1に、20mM グリシン、pH9.0 バッファーで段階的に希釈することによって、8M ウレアバッファーから尿素を除去した。2M 尿素から、硫酸銅(CuSO)を80μMの濃度まで加え、タンパク質の安定な構造的フォールディングを誘導した。リフォールディングプロセスを完了したタンパク質をPBSバッファー溶液(pH7.4)に懸濁し、不純物を除去するために懸濁液を0.22μmフィルターで濾過し、次に、Protein A アフィニティークロマトグラフィーカラムに負荷した。カラムを1X PBSバッファー溶液(pH7.4)で洗浄し、次にタンパク質を100mM グリシンバッファー溶液(pH3.0)を使用して溶出し、DFD6(大腸菌)融合タンパク質を調製した。
【0154】
RGE(Amgen)融合タンパク質の場合、リフォールディングプロセスを完了したタンパク質を50mM Tris バッファー溶液(pH8.0)に懸濁し、不純物を除去するために懸濁液を0.22μmフィルターで濾過し、次に、陰イオン交換樹脂カラム(POROS(登録商標) HQ 50μm、Thermo Fisher Scientific)に負荷した。カラムを50mM Tris バッファー溶液(pH8.0)で洗浄し、次に、50mM Tris バッファー溶液(pH8.0)を濃度勾配に沿って投与し、RGE(Amgen)融合タンパク質を溶出した。陰イオン交換樹脂によって得られたRGE(Amgen)融合タンパク質を、1Mの濃度まで硫酸アンモニウムと混合し、次に、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム(Phenyl sepharose FF、GE Healthcare)を使用して精製した。具体的には、カラムを1M 硫酸アンモニウムを含む50mM Tris バッファー溶液(pH8.0)で洗浄し、50mM Tris バッファー溶液(pH8.0)を濃度勾配に沿って投与し、溶出した画分を10% Tris-グリシン ゲル電気泳動を通して分析した。ゲルを穏やかに振とうしながらクマシーブリリアントブルーRで染色し、高い純度でFGF21変異体融合タンパク質を含む画分を回収し、次に、最終バッファー溶液(1X PBS、1mM EDTA、pH7.4)を使用して4℃で一晩透析した。透析完了時に、得られたタンパク質貯蔵溶液を4℃で、30,000MWカットオフ遠心フィルターを使用することによって3,000rpmで濃縮した。FGF21変異体融合タンパク質の濃度は、BCA定量分析を介して測定した。
【0155】
調製実施例1-5.FGF21変異体融合タンパク質の精製
Protein A アフィニティークロマトグラフィーカラム(GE Healthcare)を1X PBSバッファー溶液(pH7.4)で平衡にした。調製実施例1-3において得られた各FGF21変異体融合タンパク質を含む培養上清を0.2μmフィルターで濾過し、次に、Protein A アフィニティークロマトグラフィーカラムに負荷した。カラムを1X PBSバッファー溶液(pH7.4)で洗浄し、次に、100mM グリシンバッファー溶液(pH3.0)を使用してタンパク質を溶出した。アフィニティークロマトグラフィーによって得られた融合タンパク質を、陰イオン交換樹脂カラム(POROS(登録商標)HQ 50μm、Thermo Fisher Scientific)を使用して精製した。FGF21変異体融合タンパク質をカラムから溶出する前に、陰イオン交換樹脂カラムを50mM Tris バッファー溶液(pH8.0)で平衡にした。具体的には、50mM Tris バッファー溶液(pH8.0)でカラムを洗浄後、50mM Tris バッファー溶液(pH8.0)を濃度勾配に沿って分配し、溶出した画分を分析した。各溶出した画分をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)を使用して分析し、高い純度でFGF21変異体融合タンパク質を含む画分を回収した。調製実施例1-4に記載されている方法にしたがって濃度および定量分析を行った。
【0156】
実験的実施例1.融合タンパク質のインビトロ活性
【0157】
実験的実施例1-1.タンパク質活性に対するFGF21変異の効果
調製実施例1において調製された融合タンパク質DFD4、DFD5、DFD6、DFD6(大腸菌)、DFD7、DFD9、DFD13、DFD18、DFD72、DFD73およびDFD74のインビトロ活性を測定した。
【0158】
具体的には、融合タンパク質のインビトロFGF21活性を、FGF21の共受容体であるヒトβ-クロトーを過剰発現するように修飾されたHEK293細胞系(Yuhan Corporation、Korea)を使用して評価した。活性の評価のために、調製実施例1-4および1-5において調製された融合タンパク質を含む濃縮物を、3μMの濃度で3倍連続希釈に付した。5時間、血清欠損状態において培養した後、ヒトβ-クロトーを過剰発現する細胞系を希釈された融合タンパク質で20分間処理し、次に、室温で30分間60rpmで撹拌しながら細胞溶解バッファー(Cisbio/Cat# 64ERKPEG)を加えることによって溶解した。細胞溶解物溶液を細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)およびリン酸化ERKを検出することができる抗体(Cisbio/Cat# 64ERKPEG)と混合し、混合物を2時間室温で維持した。蛍光検出器(TECAN/GENiosPro)を使用して蛍光を検出した。融合タンパク質の活性をこれらのEC50値を比較することによって測定した。結果は図1Aから1Cに示される。
【0159】
図1Aから1Cに示されるとおり、変異配列を野生型FGF21タンパク質に導入することによって調製された融合タンパク質のインビトロ活性を阻害せず、各融合タンパク質の活性は互いに類似であったことが確認された。大腸菌において発現されたDFD6(大腸菌)サンプルおよび動物細胞において発現されたDFD6サンプルを介して、N-グリコシル化変異を野生型FGF21タンパク質に導入することによって調製された融合タンパク質のインビトロ活性を阻害しなかったことも確認された。
【0160】
実験的実施例1-2.タンパク質活性に対するリンカー配列の効果
調製実施例1において調製された融合タンパク質DFD1、DFD3、DFD4およびDFD13のインビトロ活性を測定した。
【0161】
具体的に、融合タンパク質のFGF21活性を、実験的実施例1-1に記載されている方法にしたがって調製実施例1-5において調製された融合タンパク質を含む濃縮物を使用することによって測定した。結果は図2Aおよび2Bに示される。
【0162】
図2Aおよび2Bに示されるとおり、わずかな違いがリンカー配列に依存して活性において示されたが、FGF21変異体融合タンパク質は活性において有意な減少を示さなかったことが確認された。
【0163】
実験的実施例1-3.DFD1、RGE(Amgen)およびFc-FGF21(Lilly)についての実験結果
調製実施例1において調製された融合タンパク質DFD1およびコントロールタンパク質RGE(Amgen)およびFc-FGF21(Lilly)のインビトロ活性を測定した。
【0164】
具体的には、融合タンパク質のFGF21活性を、調製実施例1-5において調製された融合タンパク質および実験的実施例1-1に記載されている方法にしたがうコントロールタンパク質を含む濃縮物を使用することによって測定した。結果は図3に示される。
【0165】
図3に示されるとおり、DFD1およびRGE(Amgen)が類似のインビトロ活性を有するが、Fc-FGF21(Lilly)は他のタンパク質よりも2倍高いインビトロ活性を有することが確認された。
【0166】
実験的実施例2.融合タンパク質の安定性の評価
実験的実施例2-1.安定性を評価するための実験的方法
サンプル調製の最初の段階でタンパク質凝集体の量を測定するために、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)方法を使用して高分子量凝集体(%HMW)を定量した。結果は図4Aから4Cに示される。
【0167】
具体的には、TosoHaasモデルTSK-GEL G3000SWXLカラムを、SEC-HPLC方法のために使用した。1mL/分の流速でバッファー溶液(1X PBS、1mM EDTA、pH7.4)を流すことによって、カラムを平衡にした。調製実施例1-5において調製されたDFD4およびDFD13タンパク質貯蔵溶液を、4℃で30,000MW カットオフ遠心フィルターを使用して3,000rpmで20mg/mLまたはそれ以上の標的濃度に濃縮した。BCA定量分析によるそれぞれのサンプルの濃度の測定後、20mg/mLの最終濃度にバッファー溶液(1X PBS、1mM EDTA、pH7.4)でサンプルを希釈した。DFD4およびDFD13の初期HMW%を測定するために、20mg/mlのサンプルを、1X PBS、1mM EDTA pH7.4で1mg/mlの濃度に希釈した。次に、各100μlの希釈されたサンプルをSEC-HPLCカラムに注射し、分析した。それぞれのサンプルの安定性評価のために、2週間5℃、25℃および37℃で保存しながら、4日目、8日目および14日目にSEC-HPLC方法を使用してサンプルの%HMWを測定した。
【0168】
図4Aから4Cに示されるとおり、DFD13が、DFD4と比較して、最初の段階および最大2週の時点でより少ない量の高分子量凝集体(HMW%)を有することが確認され、EIRP変異の導入がFGF21変異体融合タンパク質の安定性を改良し、それによりHMW%を有意に低下させたことを示した。
【0169】
実験的実施例2-2.安定性結果
安定性に対するFGF21の元の配列LLLE(98-101)に導入されたEIRP変異の効果を調べるために、実験的実施例2-1に記載されている方法にしたがってDFD4(配列番号:29)およびDFD13(配列番号:35)の安定性を測定した。DFD4およびDFD13の0時サンプル(最初の段階;0日)および4、8、および14日保存サンプルに対する分析結果は、以下の表4において要約されている(表4にて、N.D.は「検出されない」を意味する)。
【0170】
【表4】
【0171】
表4に示されるとおり、最初の段階(0日)での%HMWの量は、DFD4について0.91%、およびDFD13について0.56%であった。2週後、25℃での保存条件下で、%HMWの量はDFD4について8.83%に増加したが、DFD13において観察されなかった。DFD13は、DFD4と比較して、最初の段階および2週でより小さい%HMW率を有することが示された。EIRP変異が導入されたとき、FGF21変異体融合タンパク質のHMW%率は非常に低減されたことが見いだされた。
【0172】
実験的実施例3:融合タンパク質の薬物動態学測定
実験的実施例3-1.薬物動態学測定の実験的方法
平均体重が薬物処置の1日前に類似であるように、Orient BIO Co. (Korea)から購入した6週齢オスICRマウスをグループ(血液回収時間あたりn=3)に分類した。その後、試験物質をそれぞれ、1mg/kgの単一皮下用量(RGEの場合にて2mg/kg)において投与した。次に、血液サンプルをそれぞれ、注射後1、4、8、12、24、48、72、および96時間に回収した。血液中の無傷な全長FGF21タンパク質の濃度を、FGF21タンパク質のN-末端およびC-末端に免疫反応を有するIntact ヒトFGF21 ELISAキット(F1231-K01、Eagle Biosciences、USA)を使用して、測定した。マウスへの各融合タンパク質の皮下注射後に96時間までに回収された血液中のサンプルの濃度を測定し、各物質の薬物動態パラメータを計算した。
【0173】
実験的実施例3-2.薬物動態学活性測定の結果
マウスにおいて融合タンパク質の皮下投与後の血液中のそれぞれのタンパク質の濃度 対 時間を示すグラフ(図5)に基づいて、薬物動態パラメータを計算した。データは以下の表5に示される。
【表5】
【0174】
融合タンパク質の薬物動態学プロフィールを比較し、薬物の暴露レベルを示す曲線下面積(AUC)に基づいて評価した。
【0175】
表5に示されるとおり、DFD4をDFD13と、およびDFD6をDFD73と比較すると、EIRP配列の導入がAUC値において約10から20%の増加をもたらしたことが決定された。DFD9をDFD4と比較すると、TGLEAVの導入がAUC値において約6倍の増加をもたらした。
【0176】
加えて、FGF21のC-末端でインビボでタンパク質分解されることが知られているFGF21のC-末端部分でのN-グリコシル化を介する持続性を改善する目的のために、TGLEAN、G170N、およびG174N変異体を設計した。コントロール物質のそれぞれにわたるN-グリコシル化によるAUCの増加を立証した。実際に、N-グリコシル化によるAUC改善効果を立証するために、グリコシル化なしで大腸菌において生産される物質であるDFD6(大腸菌)と比較した。ここで、ヒト細胞系において生産されたDFD6が大腸菌によって生産されたDFD6よりも3倍またはそれ以上であるAUCレベルを示したことが見いだされ、薬物動態学プロフィールがグリコシル化によって改良されたことを示した。
【0177】
Amgen Co.の特許(WO 2009/149171)に記載されている変異であるA180Eを、DFD13およびDFD73のようなTGLEAVまたはG170Nが導入された変異体に導入し、DFD18およびDFD74を得た。ここで、約2から3倍のさらなるAUC増加が見いだされた。
【0178】
上記結果を要約すると、種々の変異体およびそれらの組合せの導入は、野生型FGF21融合タンパク質DFD9と比較して薬物動態パラメータにおける改善をもたらした。最も高いAUC値を示す融合タンパク質はEIRP、G170NおよびA180Eが導入されたDFD74であり、DFD9よりも約45倍高いAUCを示した。また、RGEの投与用量、すなわち2mg/kgを考慮すると、DFD74がAmgenのRGEよりもより良い薬物暴露を示すことが見いだされた。変異配列による全体の薬物動態学改善効果は、表6において要約されている。
【表6】
【0179】
実験的実施例4.食餌性肥満マウスにおける融合タンパク質の活性
実験的実施例4-1.食餌性肥満マウスにおける活性を評価するための実験的方法
FGF21変異体融合タンパク質であるDFD18の体重低減効果を、食餌誘発性obeseマウスにおいて評価した。食餌性肥満モデルについて、C57BL/6JマウスをCentral Lab. Animal Inc.から購入し、8から12週間60kcal%脂肪を含む高脂肪食(Research diet)を与えた。薬物処置の1日前(0日)に類似の平均値の体重を有するように、マウスをグループ(n=8/グループ)に分類し、次に、30nmol/kgのサンプルを1回皮下に投与した。次に、30nmol/kgの用量での単回皮下投与を行い、次に、溶媒としてのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と比較しての体重における変化の観察を行った。
【0180】
実験的実施例4-2.食餌性肥満マウスにおけるタンパク質活性
30nmol/kgのDFD18の単一の投与後の食餌性肥満マウスモデルにおける時間とともにの体重における変化について、体重低減効果が投与後10日目まで続き、最大体重低減(約18%)が投与後11日目であり、これが14日目まで維持されたことが確認された(図6Aおよび6B)。
【0181】
調製実施例2.融合タンパク質の調製および精製
調製実施例2-1.融合タンパク質の発現のための発現ベクターの調製
インビトロ活性、薬物動態学プロフィールおよび薬理学的有効性についてのGLP-1変異体タンパク質の配列およびそれに融合されるFcヒンジの配列の効果を同定するために、Fc-融合GLP-1変異体タンパク質に関する種々の配列を設計した。GLP-1変異体タンパク質の配列は以下の表7に列挙される。
【表7】
【0182】
さらに、Fc-融合GLP-1変異体の配列は表8に列挙される。
【表8】
【0183】
表8において、HyFc5は配列番号:47を言及し、HyFc40は配列番号:48を言及する。インビトロ活性、薬物動態学プロフィールおよび薬理学的有効性についてのGLP-1変異体タンパク質およびFGF21変異体タンパク質の配列、GLP-1変異体に融合されるFcヒンジの配列、FGF21変異体タンパク質およびFc間を連結しているリンカーの配列の効果を調べるために、融合タンパク質に関する種々の配列を設計した。GLP-1変異体タンパク質およびFGF21変異体タンパク質を含む融合タンパク質の配列は以下の表9に列挙される。各融合タンパク質は、N-末端からC-末端へ以下の順において連結されたGLP-1変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域、リンカーおよびFGF21変異体タンパク質を含む。
【表9】
【0184】
具体的には、融合タンパク質の各々をコードするヌクレオチド配列を、各タンパク質のアミノ酸配列に基づいてBioneer Corporation(Korea)に相談した後に合成した。NheIおよびNotI制限酵素配列を、融合タンパク質の各々をコードするヌクレオチド配列の5’末端および3’末端に加え、タンパク質翻訳のための開始コドンおよび細胞の外側に発現されるタンパク質を分泌することができるリーダー配列(MDAMLRGLCCVLLLCGAVFVSPSHA)を5’末端で制限酵素配列の次に挿入した。終始コドンを、融合タンパク質の各々をコードするヌクレオチド配列の次に挿入した。融合タンパク質の各々をコードするヌクレオチド配列を、NheIおよびNotIの2つの制限酵素を使用することによってpTrans-empty発現ベクターにクローニングした。CMVプロモーター、pUC由来の複製起源、SV40由来の複製起源およびアンピシリン-耐性遺伝子を含む単純な構造を有するpTrans-empty発現ベクターを、CEVEC Pharmaceuticals(Germany)から購入した。
【0185】
調製実施例2-2.Fc-融合GLP-1変異体および融合タンパク質の発現のためのプラスミドDNAの構築
発現のために使用される大量のプラスミドDNAを得るために、大腸菌を調製実施例2-1において構築された発現ベクターの各々で形質転換した。熱ショックを介して弱められた細胞壁を有する大腸菌細胞を、各発現ベクターで形質転換し、コロニーを得るために形質転換体をLBプレート上に置いた。このように得られたコロニーをLB培地に植菌し、37℃で16時間培養し、各発現ベクターを含む各大腸菌培養物を100mLの容量において得た。その後に得られた大腸菌を培養培地を除去するために遠心し、次にP1、P2、P3溶液(QIAGEN、Cat No.:12963)を細胞壁を破壊するために加え、それによりタンパク質およびDNAが分離されたDNA懸濁液を得た。プラスミドDNAを、Qiagen DNA 精製カラムを使用することによってこのように得られたDNA懸濁液から精製した。溶出したプラスミドDNAをアガロースゲル電気泳動によって同定し、濃度および純度をナノドロップデバイス(Thermo Scientific、Nanodrop Lite)を使用して測定した。このように得られたDNAを、発現のために使用した。
【0186】
調製実施例2-3.CAP-T細胞におけるFc-融合GLP-1変異体および融合タンパク質の発現
ヒト細胞系を、調製実施例2-2において得られた各プラスミドDNAで形質転換した。各プラスミドDNA型を、PEI溶液(Polyplus、Cat. No.:101-10N)を使用することによって、PEM培地(Life Technologies)において培養されていたCAP-T細胞(CEVEC)に形質導入した。DNAおよびPEI溶液の混合溶液をFreestyle293発現培地(Invitrogen)を使用して細胞懸濁液と混合し、37℃で5時間培養し、PEM培地を加えた。37℃で5-7日間培養後、培養物を細胞を除去するために遠心し、それぞれのタンパク質を含む上清を得た。
【0187】
調製実施例2-4.Fc-融合GLP-1変異体および融合タンパク質の精製
Protein A アフィニティークロマトグラフィーカラム(GE Healthcare)を1X PBSバッファー溶液(pH7.4)で平衡にした。調製実施例2-3において得られた各Fc-融合GLP-1変異体および融合タンパク質を含む培養上清を0.2μmフィルターで濾過し、次に、Protein A アフィニティークロマトグラフィーカラムに負荷した。カラムを1X PBSバッファー溶液(pH7.4)で洗浄し、次に、100mM グリシンバッファー溶液(pH3.0)を使用してタンパク質を溶出した。アフィニティークロマトグラフィーによって得られたタンパク質を、陰イオン交換樹脂カラム(POROS(登録商標)HQ 50μm、Thermo Fisher Scientific)を使用して精製した。アフィニティークロマトグラフィーから溶出したタンパク質を負荷する前に、陰イオン交換樹脂カラムを50mM Tris バッファー溶液(pH8.0)で平衡にした。
【0188】
50mM Tris バッファー溶液(pH8.0)でカラムを洗浄後、50mM Tris バッファー溶液(pH8.0)を濃度勾配に沿って分配し、溶出した画分を分析した。各溶出した画分をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)を使用するによって分析し、高い純度でFc-融合GLP-1変異体および融合タンパク質を含む画分を回収し、最終バッファー溶液(1X PBS、1mM EDTA、pH7.4)を使用して4℃で一晩透析した。透析完了時に、得られたタンパク質貯蔵溶液を4℃で、30,000MWカットオフ遠心フィルターを使用して3,000rpmで濃縮した。それぞれのタンパク質の濃度は、BCA定量分析を介して測定した。
【0189】
実験的実施例5.融合タンパク質のインビトロ活性
実験的実施例5-1.DFD23、DFD24、DFD25、DFD26、DFD27、DFD28およびDFD29の活性
融合タンパク質DFD23、DFD24、DFD25、DFD26、DFD27、DFD28およびDFD29のインビトロGLP-1活性を測定した。具体的には、ヒトGLP-1受容体を過剰発現するCHO細胞系(Eurofins、HTS163C2)を購入し、融合タンパク質のGLP-1活性を評価するために使用した。活性の評価のために、融合タンパク質を含むサンプル(調製実施例2-4において調製されたタンパク質貯蔵溶液;以下「サンプル」)を、25nMの濃度で4倍連続希釈に付した。ヒトGLP-1受容体を過剰発現するCHO細胞系を30分間処理した後、生産された細胞内cAMPを測定した(Cisbio、62AM4PEB)。それぞれのタンパク質の活性をEC50値を比較することによって評価した。
【0190】
図7に示されるとおり、GLP-1(A2G)配列を含む融合タンパク質は、他のGLP-1変異体配列を含む融合タンパク質よりも約2~3倍低い活性を示した。GLP-1(A2G)配列を除く変異配列を含む融合タンパク質間でGLP-1活性において有意な差異は観察されなかった。
【0191】
実験的実施例5-2.DFD59、DFD69、DFD112およびDFD114の活性
調製実施例2において調製された融合タンパク質DFD69、DFD112およびDFD114およびDFD59(Fc-融合GLP-1変異体)のインビトロGLP-1活性を測定した。具体的には、ヒトGLP-1受容体を過剰発現するCHO細胞系(Eurofins、HTS163C2)を購入し、融合タンパク質のGLP-1活性を評価するために使用した。活性の評価のために、融合タンパク質のそれぞれを含むサンプルを、25nMの濃度で4倍連続希釈に付した。ヒトGLP-1受容体を過剰発現するCHO細胞系を30分間処理した後、生産された細胞内cAMPを測定した(Cisbio、62AM4PEB)。
【0192】
図8Aおよび8Bに示されるとおり、それぞれのタンパク質の活性をEC50値を比較することによって評価した。3つの融合タンパク質は類似のEC50値を示し、DFD59(FGF21変異体を含まない)は融合タンパク質よりも約2倍高い活性を示した。
【0193】
次に、DFD69、DFD112およびDFD114におけるFGF21部分のインビトロ活性を測定した。具体的には、融合タンパク質におけるFGF21部分のインビトロ活性を、ヒトβ-クロトー(FGF21の共受容体)を過剰発現するHEK293細胞系を使用して評価した。活性の評価のために、融合タンパク質の各々を含むサンプルを、3μMの濃度で3倍連続希釈に付した。5時間、血清欠損状態において培養された後、ヒトβ-クロトーを過剰発現するHEK293細胞系を20分間処理し、室温で30分間60rpmで撹拌しながら細胞溶解バッファー(Cisbio/Cat# 64ERKPEG)を加えることによって細胞を溶解した。細胞溶解物溶液をERKおよびリン酸化ERKを検出することができる抗体と混合し、混合物を2時間室温で維持した。蛍光検出器(TECAN/GENiosPro)を使用して蛍光を検出した。活性をこれらのEC50値を比較することによって測定した。
【0194】
図8Aおよび8Bに示されるとおり、融合タンパク質DFD69、DFD112およびDFD114のFGF21部分のインビトロ活性は類似であることが確認された。
【0195】
実験的実施例6.融合タンパク質の薬物動態学評価
実験的実施例6-1.薬物動態学評価のための実験的方法
平均体重が薬物処置の1日前に類似であるように、Orient BIO (Korea)から購入した6週齢オスICRマウスをグループ(血液回収時間あたりn=3)に分類し、それぞれのサンプルを1mg/kgの容量において1回皮下に投与した。血液サンプルをそれぞれ、注射後1、4、8、12、24、48、72、96、144、192および240時間に回収した。血液中の各融合タンパク質の濃度を、FGF21部分およびGLP-1-Fc部分に基づいて別々に測定した。血液中の融合タンパク質の無傷な全長FGF21部分の濃度を、FGF21タンパク質のN-末端およびC-末端に免疫反応を有するIntact ヒトFGF21 ELISAキット(F1231-K01、Eagle Biosciences、USA)を使用して、測定した。さらに、血液中の融合タンパク質の活性なGLP-1-Fc部分の濃度を、ELISA分析を介して決定されるとき、GLP-1およびFcのN-末端に免疫反応を有する抗体を使用して、測定した。マウスへのそれぞれのタンパク質の単回皮下注射後に240時間までに回収された血液サンプル中のそれぞれのタンパク質のFGF21およびGLP-1-Fc部分の濃度を測定し、それぞれのタンパク質の薬物動態パラメータを計算した。
【0196】
実験的実施例6-2.薬物動態学活性結果
マウスにおいてそれぞれのタンパク質の単回皮下投与後の時間とともに血液中の各活性な物質の濃度に基づいて(図9Aおよび9B)、融合タンパク質のFGF21およびGLP-1-Fc部分に対する薬物動態パラメータを計算した。データは以下の表10に示される。
【表10】
【0197】
各融合タンパク質の薬物動態学プロフィールを比較し、薬物の暴露レベルを示す曲線下面積(AUC)に基づいて評価した。
【0198】
表10に示されるとおり、FGF21部分の薬物動態パラメータについて、DFD114は薬物暴露(AUC)および半減期の最も高い程度を示し、DFD112が次に高いAUC値を示し、次にDFD69が示した。DFD114は、DFD69と比較して、AUC値において約2倍以上高いことを示した。GLP-1-Fc部分の薬物動態学について、同じGLP-1変異体配列を含む4つのタンパク質(DFD59、DFD69、DFD112およびDFD114)は類似のAUC値を示した。
【0199】
実験的実施例7.食餌性肥満マウスにおける非アルコール性脂肪性肝炎に対する融合タンパク質活性の評価
実験的実施例7-1.食餌性肥満マウスにおける非アルコール性脂肪性肝炎に対する活性の評価方法
融合タンパク質DFD114およびDFD112、およびFGF21変異体融合タンパク質DFD74およびDFD72の脂肪性肝炎および脂質の改善効果を、食餌性肥満マウスモデルにおいて評価した。
【0200】
食餌性肥満を誘導するために、C57BL/6Jマウスに約37週間60kcal%脂肪を含む高脂肪食(Research diet)を与え、脂肪性肝炎を有する肥満マウスモデルを作製した。平均体重が薬物処置の1日前に類似であるように、マウスをグループ(n=6/グループ)に分類した。その後、DFD114、DFD112、DFD74およびDFD72を、2週間4日間隔で3または10nmol/kgの用量で3回投与した。
【0201】
コントロールグループは、同じ方法によって、試験薬物の調製のために使用される溶媒(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、DPBS、Gibco、USA)で皮下に投与された。最後の投与の4日後、動物を一晩絶食させ、血液を下大静脈から回収し、肝臓組織を吸入麻酔および開腹後に摘出した。血液生化学的試験を回収された血液サンプルから単離された血清サンプルで行い、固定された肝臓組織をトリミング、脱水、パラフィン包埋、スライシングなどを介して検体として調製した。そして、調製された検体をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、組織病理学的変化を光学顕微鏡(Olympus、ECLIPSE E600)を使用して観察した。
【0202】
実験的実施例7-2.食餌性肥満マウスにおける非アルコール性脂肪性肝炎に対する活性評価結果
融合タンパク質およびFGF21変異体融合タンパク質の脂肪性肝炎および脂質改善効果を評価するために、DFD114、DFD112、DFD74およびDFD72を、食餌性肥満マウスモデルにおいて2週間4日間隔で3または10nmol/kgの用量で繰り返し投与した。次に、血清および肝臓組織における脂質変化を分析し、組織病理学的変化を観察した。
【0203】
図10Aから10Cに示されるとおり、血清中のトリグリセリド(TG)および総コレステロール(TC)を、融合タンパク質DFD114およびDFD112、およびFGF21変異体融合タンパク質DFD74およびDFD72の反復皮下投与後に測定した。結果として、ビヒクルコントロールグループと比較して、血清トリグリセリドおよび総コレステロールレベルは減少し、肝臓組織におけるトリグリセリドレベルもまた減少した。
【0204】
図11に示されるとおり、融合タンパク質DFD114およびDFD112の反復皮下投与後に行われた組織病理学的実験は、肝臓組織における脂質がビヒクルコントロールグループと比較して有意に減少したことを示した。
【0205】
実験的実施例8.MCD誘発性非アルコール性脂肪性肝炎マウスにおける融合タンパク質の活性評価
実験的実施例8-1.MCD誘発性非アルコール性脂肪性肝炎マウスにおける活性評価方法
非アルコール性脂肪性肝炎モデルにおいて融合タンパク質およびFGF21変異体融合タンパク質の炎症および線維症低下効果を評価するために、MCDモデルにおけるDFD112およびDFD72の効果を評価した。
【0206】
メチオニンコリン欠乏(MCD)食餌誘発性非アルコール性肝臓疾患動物モデルは、非アルコール性脂肪性肝炎の評価のために広範に使用されるモデルの1つである。肝臓線維症を有する脂肪性肝炎は、ベータ-酸化および超低密度リポタンパク質(VLDL)合成において重要な役割を果たすメチオニンおよびコリンを欠いている規定食を給餌することによって誘発された。このことは、ヒト脂肪性肝炎病理学的モデルと類似であることが知られている。脂肪性肝炎モデルを誘導するために、MCD規定食およびメチオニンコリン標準(MCS)規定食を、C57BL/6に10日間MCD規定食、次に4日間MCS規定食で給餌することによって17週間交互に自由に提供した。
【0207】
動物を、試験物質の投与前に計量し、各グループの平均体重が可能な限り均等に分配されるようにグループにランダム的に割り当てた。10匹のマウスを各グループに割り当てた後、3、10および30nmol/kgのDFD112および10nmol/kgのDFD72を4週間2日間隔で皮下に投与した。MSCコントロールグループおよびMCD規定食コントロールグループにおいて、マウスは、同じ方法によって4週間2日間隔で、試験物質の調製のために使用される溶媒(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、DPBS、Gibco、USA)で皮下に投与された。
【0208】
4週間試験物質の反復投与、マウスを一晩絶食させ、血液を下大静脈から回収し、肝臓組織を吸入麻酔および開腹後に摘出した。血液生化学的試験を回収された血液サンプルから単離された血清サンプルで行い、固定された肝臓組織を一般的な組織処理プロセスを介して検体として調製した。次に、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)および免疫組織化学的染色を行い、組織病理学的変化を光学顕微鏡(Olympus、BX53)を使用して観察した。
【0209】
実験的実施例8-2.MCD誘発性非アルコール性脂肪性肝炎マウスにおける活性評価結果
3、10および30nmol/kgの融合タンパク質DFD112および10nmol/kgのFGF21変異体融合タンパク質DFD72を4週間2日間隔でMCD誘発性非アルコール性脂肪性肝炎マウスに繰り返し投与した。次に、血液生化学的試験および組織病理学的試験を行い、非アルコール性脂肪性肝炎に対する効果を評価した。
【0210】
図12Aから12Cに示されるとおり、非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたMCDコントロールグループは、正常食で食餌されたMCSコントロールグループと比較して、肝臓損傷指標として有意に高いアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)を示した(p<0.001)。血清ASTおよびALTレベルは、MCDコントロールグループと比較して、DFD112を投与されたグループにおいて用量依存的に減少した。加えて、MCDコントロールグループは、組織病理学的試験にてMCSコントロールグループと比較して、有意に高い炎症レベルを示した(p<0.01)。DFD112が投与されたとき、炎症レベルはMCDコントロールグループと比較して、用量依存的に減少した。
【0211】
図13Aから13Cおよび図14に示されるとおり、肝臓線維症に対する融合タンパク質の効果を評価するために、肝臓線維症指標として肝臓組織におけるアルファ-平滑筋アクチン(α-SMA)および形質転換増殖因子-ベータ(TGF-β)を、免疫組織化学的染色を使用して染色し、画像分析によって定量した。α-SMAおよびTGF-βの発現は、MCSコントロールグループと比較して、MCDコントロールグループにおいて増加した(p<0.001)。DFD112およびDFD72が投与されたとき、α-SMAおよびTGF-βの発現はMCDコントロールグループと比較して減少した。加えて、肝臓組織におけるコラーゲンを、Picrosirius red染色を使用して染色し、画像分析によって定量した。結果として、MCDコントロールグループにおいてコラーゲンの量はMCSコントロールグループよりも高く、そして、DFD112およびDFD72が投与されたとき、MCDコントロールグループと比較して肝臓組織におけるコラーゲンの減少傾向が観察された(p<0.001)。
【0212】
実験的実施例9.食餌性肥満および非アルコール性脂肪性肝炎マウスにおける融合タンパク質の活性評価
実験的実施例9-1.食餌性肥満および非アルコール性脂肪性肝炎マウスにおける融合タンパク質の活性評価のための方法
非アルコール性脂肪性肝炎モデルにおいて融合タンパク質の炎症および線維症低下効果を評価するために、DFD112の効果を食餌性肥満および非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルにおいて評価した。
【0213】
C57BL/6マウスに約30週間、40%脂肪、40%炭水化物および2%コレステロールを含む高脂肪食(Research diet)を給餌することによって、肥満および非アルコール性脂肪性肝炎を有するマウスモデルを調製した。肝臓組織の組織病理学的試験を薬物処置の約3週前に行い、ALTおよびASTレベルおよび体重を投与前に測定した。非アルコール性脂肪性肝炎誘導程度および体重が均等に分配されるように、実験動物を選択し、グループに分類された。12匹のマウスを各グループに割り当て、DFD112を3または10nmol/kgの用量で8週間2日間隔で皮下に繰り返し投与した。コントロールグループにおいて、試験物質を調製するために使用される溶媒(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、DPBS、Gibco、USA)を同じ方法によって注射した。
【0214】
最後の投与後、マウスを一晩絶食させ、血液を下大静脈から回収し、肝臓組織を吸入麻酔および開腹後に摘出した。血液生化学的試験を回収された血液サンプルから単離された血清サンプルで行った。固定された肝臓組織を検体として調製し、調製された検体をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)またはPicrosirius redで染色し、組織病理学的変化を観察した。
【0215】
実験的実施例9-2.食餌性肥満および非アルコール性脂肪性肝炎マウスにおける融合タンパク質の活性評価結果
3または10nmol/kgの用量でのDFD112を8週間2日間隔で食餌性肥満および非アルコール性脂肪性肝炎マウスに繰り返し投与した。次に、血液生化学的および組織病理学的試験を行い、非アルコール性脂肪性肝炎に対する効果を評価した。
【0216】
図15Aから15Dに示されるとおり、肝臓損傷指標としての血清ALTおよびASTレベルは、DFD112で投与されたグループにおいて正常レベルに減少した(p<0.001)。血清トリグリセリド(TG)および総コレステロール(TC)レベルもまた、ビヒクルコントロールグループと比較して有意に減少した(p<0.05またはp<0.001)。
【0217】
図16Aから16Bに示されるとおり、投与前および投与後からの組織病理学的試験結果は、非アルコール性脂肪性肝炎グレードを分類するための指標としての投与後のNAFLD活性スコア(NAS)が、8週の反復投与で、投与前スコアと比較して、ビヒクルコントロールグループにおいて増加または維持したことを示した。他方では、NAFLD活性スコアは、投与前スコアと比較して、DFD112投与グループにおける全対象において有意に減少した。加えて、線維症程度評価時に、線維症の程度は、投与前の程度と比較して、コントロールグループにおいて維持または悪化したが、DFD112投与グループにおいて有意な改善効果が観察された(p<0.05)。
【0218】
実験的実施例10.TAA-誘発性肝線維症ラットにおける融合タンパク質活性の評価
実験的実施例10-1.TAA-誘発性肝線維症ラットにおける融合タンパク質活性の評価方法
融合タンパク質の肝線維症-低下効果を評価するために、肝線維症が飲料水によって誘導されたラットモデルにおいてDFD112の効果を評価した。
【0219】
約14週間Wistarラットにチオアセトアミド(TAA)を含む飲料水を提供することによって肝線維症モデル調製した。動物を、試験物質の投与前に計量し、各グループの平均体重が可能な限り均等に分配されるようにグループにランダム的に割り当てた。8匹のラットを各グループに割り当てた後、30nmol/kgのDFD112を8週間2日間隔で皮下に繰り返し投与した。TAA飲料水を投与の終了まで連続的に提供した。正常コントロールグループは試験の開始から投与の終了まで標準飲料水で食餌し、TAAコントロールグループは試験の開始から投与の終了までTAA飲料水で食餌した。
【0220】
投与の終了後、マウスを一晩絶食させ、血液を下大静脈から回収し、肝臓組織を吸入麻酔および開腹後に摘出した。血液生化学的試験を回収された血液サンプルから単離された血清サンプルで行い、固定された肝臓組織を検体として調製し、Picrosirius redで染色し、肝実質の線維症の程度を比較するために組織病理学的変化を観察した。
【0221】
実験的実施例10-2.TAA-誘発性肝線維症ラットにおける融合タンパク質活性の評価のための方法
30nmol/kgの融合タンパク質DFD112を8週間2日間隔でTAA-誘発性肝線維症ラットに繰り返し投与し、血液生化学的試験および組織病理学的試験によって肝線維症に対する効果を評価した。
【0222】
図17aから17dに示されるとおり、肝線維症が誘導されたTAAコントロールグループは、標準飲料水が提供されたコントロールグループと比較して、肝臓損傷指標としての、アルカリホスファターゼ(ALP)、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)および総ビリルビン(T-bil)の有意に高いレベルを示した(p<0.01またはp<0.001)。
【0223】
ALT、GGTおよびT-Bilレベルが、TAAコントロールグループと比較して、DFD112投与で有意に減少したことが観察された。組織病理学的試験は、Picrosirius red染色で陽性に染色された肝線維症領域の割合が、正常コントロールグループと比較して、TAAコントロールグループにおいて有意に増加したことを示した。加えて、肝線維症領域の割合が、TAAコントロールグループと比較して、DFD112投与で有意に減少したことが観察された(p<0.001)。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図17D
【配列表】
2023002571000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載された発明。
【外国語明細書】