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  • 特開-野菜含有調味料、及びその製造方法 図1
  • 特開-野菜含有調味料、及びその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025730
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】野菜含有調味料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20230216BHJP
【FI】
A23L27/10 C
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131026
(22)【出願日】2021-08-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1. 展示会名 カゴメベジタブルソリューション 他、別添の「展示会一覧」に記載の展示会 開催日 令和3年7月1日~令和3年7月30日 2. 説明会名 顧客向け商談会、詳しくは、別添の「説明会一覧」に記載の説明会 開催日 令和2年11月11日~令和3年8月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】角井 達人
(72)【発明者】
【氏名】葛原 大士
(72)【発明者】
【氏名】田口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 匡浩
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 淳史
(72)【発明者】
【氏名】草場 翼
(72)【発明者】
【氏名】福田 美和
(72)【発明者】
【氏名】塚副 成
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB09
4B047LG39
4B047LP05
(57)【要約】
【課題】 本発明が解決しようとする課題は、野菜含有調味料における旨味及びコクの強
化である。好ましくは、汎用的な野菜加工品を主原料として用いて、旨味及び調理感を有
するだし調味料を提供することである。
【解決手段】 本発明に係る野菜含有調味料の製造方法を構成するのは、少なくとも、調
合、及び加熱である。ここで、人、又は装置によって調合されるのは、少なくとも、第一
の野菜加工品、及び第二の野菜加工品である。前記第一の野菜加工品は、タマネギ加工品
であり、前記第二の野菜加工品は、ブロッコリー加工品、ニンニク加工品、トマト加工品
、及びアスパラガス加工品のうち、少なくとも一つ以上である。あわせて、ここで加熱さ
れるのは、前記調合によって得られた調合液である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜含有調味料の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程であ
る:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、第一の野菜加工品、及び第二の野菜加工品
であり、
前記第一の野菜加工品は、タマネギ加工品であり、
前記第二の野菜加工品は、ブロッコリー加工品、ニンニク加工品、トマト加工品、及び
アスパラガス加工品のうち、少なくとも一つ以上であり、これによって得られるのは、調
合液であり、かつ、
加熱:ここで加熱されるのは、前記調合液である。
【請求項2】
請求項1の製造方法であって、それをさらに構成するのは、以下の工程である:
濃縮:ここで濃縮されるのは、少なくとも、前記調合液である。
【請求項3】
請求項1又は2の製造方法であって、前記第一の野菜加工品、及び第二の野菜加工品は
、濃縮物である。
【請求項4】
請求項3の製造方法であって、前記調合において、さらに調合されるのは、水性媒体で
ある。
【請求項5】
請求項3又は4の製造方法であって、前記濃縮物である野菜加工品のBrixは、20
.0以上である。
【請求項6】
請求項4又は5の製造方法であって、前記調合液のBrixは、10.0以下である。
【請求項7】
請求項3乃至6の何れかの製造方法であって、当該野菜含有調味料のBrixは、20
.0以上である。
【請求項8】
請求項3乃至7の何れかの製造方法であって、前記野菜加工品の濃縮物は、液状、又は
ペースト状である。
【請求項9】
野菜含有調味料であって、当該野菜含有調味料が含有するのは、少なくとも、第一の野
菜加工品、及び第二の野菜加工品であり、
前記第一の野菜加工品は、タマネギ加工品であり、
前記第二の野菜加工品は、ブロッコリー加工品、ニンニク加工品、トマト加工品、及
びアスパラガス加工品のうち、少なくとも一つ以上であり、
当該野菜含有調味料の、Brix1.5換算時におけるDipropyl Trisu
lfide含有量は、7.0ppb以下である。
【請求項10】
請求項9の野菜含有調味料であって、当該野菜含有調味料の、Brix1.5換算時に
おけるDimethyl disulfide含有量は、6.0ppb以下である。
【請求項11】
請求項9又は10の野菜含有調味料であって、当該野菜含有調味料の、Brix1.5
換算時における3-methylbutanalの含有量は、2.0ppb以上、かつ、
50.0ppb以下である。
【請求項12】
請求項9乃至11の何れかの野菜含有調味料であって、当該野菜含有調味料の、3-m
ethylbutanalの含有量に対するDipropyl Trisulfideの
含有量の比は、1.4以下であり、かつ、
当該野菜含有調味料の、3-methylbutanalの含有量に対するDimet
hyl disulfideの含有量の比は、1.2以下である。
【請求項13】
請求項9乃至12の何れかの野菜含有調味料であって、当該野菜含有調味料のBrix
は、10.0以上、かつ60.0以下である。
【請求項14】
請求項9乃至13の何れかの調味料であって、当該調味料は、動物性原料、及び酵母エ
キスを含有しない。
【請求項15】
野菜含有調味料の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程で
ある。:
調合:ここで調合されるのは、少なくとも、野菜加工品、及び水性媒体であり、当該野
菜加工品は、濃縮物であり、これによって得られるのは、調合液であり、
濃縮:ここで濃縮されるのは、少なくとも、前記調合液である。
【請求項16】
請求項15の製造方法であって、それをさらに構成するのは、以下の工程である。:
加熱:ここで加熱されるのは、前記調合液である。
【請求項17】
請求項15又は16の製造方法であって、前記野菜加工品のBrixは、20.0以上
である。
【請求項18】
請求項15乃至17の何れかの製造方法であって、前記調合液のBrixは、10.0
以下である。
【請求項19】
請求項15乃至18の何れかの製造方法であって、当該野菜含有調味料のBrixは、
20.0以上である。
【請求項20】
請求項15乃至19の何れかの製造方法であって、前記野菜加工品は、加熱されたもの
である。
【請求項21】
請求項15乃至20の何れかの製造方法であって、ここで調合される前記野菜加工品は
、少なくとも、第一の野菜加工品、及び第二の野菜加工品であり、
当該第一の野菜加工品は、タマネギ加工品であり、
当該第二の野菜加工品は、アブラナ科野菜加工品、ニンニク加工品、トマト加工品、ア
スパラガス加工品のうち、少なくとも一つ以上である。
【請求項22】
請求項15乃至21の何れかの製造方法であって、前記野菜加工品は、液状、又はペー
スト状である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、野菜含有調味料、及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
現在、飲食品の香味のベースとなる「だし調味料」は、様々な食品分野で使用されてい
る。特に、液体のだし調味料は、調味済みで簡便に使用できることから需要が増加してい
る。また、濃縮タイプのものは、適宜希釈して使用することができるため、調味において
も便利である。
【0003】
調味料の分野において重要視されるのは、「コク」である。「コク」が左右するのは、
飲食品の美味しさだからである。ここで、「コク」を説明すると、香味の持続性であり、
より好ましくは、香味の複雑さも加味される。「コク」に寄与する成分を例示すると、水
溶性成分、脂溶性成分等である。調味料において重要な成分は、アミノ酸である。そのよ
うな観点から、調味料で用いられるのは、動物性原料であり、例えば、肉類や魚類などで
ある。
【0004】
他方で、市場で求められるのは、動物性原料の不使用である。植物性の「だし調味料」
も、野菜のやさしい味わいや、味の深さ、広がりから一定の需要がある。また、動物性の
食品を食べられない人、菜食主義の人からの需要もあり、その需要は増加している。
【0005】
しかし、野菜を主原料とするだし調味料は、動物由来の食品を主原料とするだし調味料
と比較して、旨味やコク(香味の持続性、複雑さ)が弱い。ここで、旨味やコクを増強す
るために、酵母エキスやタンパク加水分解物を使用すると、旨味や風味が強くなりすぎた
り、人工感があったりすることで、忌避されることもあった。また、野菜には、青臭さ等
の不快臭があるため、これにより嗜好性が減退することもあった。さらに、野菜を主原料
とするだし調味料を、一から自分で作るとなると、野菜の下処理や煮込み、あくとり等、
時間と労力を要していた。
【0006】
野菜を原料とした調味料は、これまでに検討されてきたが、何れも旨味やコクの観点か
ら、十分なものとは言えなかった。あわせて、汎用的な野菜原料で、工業的に旨味やコク
を強化した調味料の製造に関する検討は、十分になされていない。
【0007】
野菜含有調味料に関して、既知なのは、ソフリットである。ソフリットとは、香味野菜
(タマネギやニンニク等)を炒めたものをいう。
【0008】
特許文献1に記載されているのは、アブラナ科野菜調味料であり、減香加熱、及び付香
加熱、を行うことにより、コクを有する調味料が得られている。
【0009】
特許文献2に記載されているのは、野菜エキス組成物、調味料であり、白菜成分、タマ
ネギ成分、キャベツ成分を特定量含有させることで、野菜由来の過剰な香味を低減し、旨
味を向上させ、汎用性を持たせた調味料が得られている。
【0010】
特許文献3に記載されているのは、野菜含有調味料であり、旨味付与野菜加工品、及び
コク付与加工品を調合することで、旨味及びコクが改善された野菜含有調味料を製造する
ことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開第2018-191536号公報
【特許文献2】特許第6244494号公報
【特許文献3】特開第2021‐023283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、野菜含有調味料における旨味及びコクの強化である
。好ましくは、汎用的な野菜加工品を主原料として用いて、旨味及び調理感を有するだし
調味料を提供することである。より詳しくは、野菜含有調味料における調理感の強化及び
不快臭の抑制である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者が検討していたのは、如何に、野菜調味料のコクに寄与する成分を増加させ
、野菜由来の不快臭を除去するかである。その結果、本願発明者が見出したのは、(1)
調理感に寄与する香気が、コクに寄与していること、(2)アミノ酸含有量の多い野菜と
、フルクトース含有量の多いタマネギを混合して加熱することで、旨味を有するのみなら
ず、調理感に寄与する香気が増加すること、(3)野菜由来の青臭さ等の不快臭が強いと
、調理感を感じにくくなること、さらには、(4)野菜由来の不快臭に寄与する成分は揮
発性が高く、気化を伴う工程によりその含有量が減少しやすい、又は不快臭低減のコクへ
の影響が大きいこと、である。上記機序を応用して、本発明を定義すると、以下のとおり
である。
【0014】
本発明に係る野菜含有調味料の製造方法を構成するのは、少なくとも、調合、及び加熱
である。ここで、人、又は装置によって調合されるのは、少なくとも、第一の野菜加工品
、及び第二の野菜加工品である。前記第一の野菜加工品は、タマネギ加工品であり、前記
第二の野菜加工品は、ブロッコリー加工品、ニンニク加工品、トマト加工品、及びアスパ
ラガス加工品のうち、少なくとも一つ以上である。あわせて、ここで加熱されるのは、前
記調合によって得られた調合液である。
【0015】
本製法を構成するのは、さらに、濃縮である。ここで、人、又は装置によって濃縮され
るのは、少なくとも、前記調合液である。本製法において、好ましくは、前記第一の野菜
加工品、及び第二の野菜加工品は、濃縮物である。あわせて、好ましくは、前記調合にお
いて、さらに調合されるのは、水性媒体である。また、好ましくは、前記濃縮物である野
菜加工品のBrixは、20.0以上である。
【0016】
そして、好ましくは、前記調合液のBrixは、10.0以下である。更に好ましくは
、当該野菜含有調味料のBrixは、20.0以上である。好ましくは、前記野菜加工品
の濃縮物は、液状、又はペースト状である。
【0017】
また、本野菜含有調味料の製造方法を構成するのは、少なくとも、調合、及び濃縮であ
る。ここで、人、又は装置によって調合されるのは、少なくとも、野菜加工品、及び水性
媒体であり、当該野菜加工品は、濃縮物である。これによって得られるのは、調合液であ
る。あわせて、ここで、人、又は装置によって、濃縮されるのは、少なくとも、前記調合
液である。本製法をさらに構成するのは、加熱である。ここで加熱されるのは、前記調合
液である。
【0018】
本製法において、好ましくは、前記野菜加工品のBrixは、20以上である。また、
好ましくは、前記調合液のBrixは、10.0以下である。あわせて、好ましくは、当
該野菜含有調味料のBrixは、20.0以上である。さらに好ましくは、前記野菜加工
品は、加熱されたものである。
【0019】
また、本製法でおいて、好ましくは、調合される前記野菜加工品は、少なくとも、第一
の野菜加工品、及び第二の野菜加工品であり、当該第一の野菜加工品は、タマネギ加工品
であり、当該第二の野菜加工品は、アブラナ科野菜加工品、ニンニク加工品、トマト加工
品、アスパラガス加工品のうち、少なくとも一つ以上である。
【0020】
本発明に係る野菜含有調味料が含有するのは、少なくとも、第一の野菜加工品、及び第
二の野菜加工品である。当該第一の野菜加工品は、タマネギ加工品であり、当該第二の野
菜加工品は、ブロッコリー加工品、ニンニク加工品、トマト加工品、及びアスパラガス加
工品のうち、少なくとも一つ以上である。当該野菜含有調味料の、Brix1.5換算時
におけるDipropyl Trisulfide含有量は、7.0ppb以下である。
また、当該野菜含有調味料の、Brix1.5換算時におけるDimethyl dis
ulfide含有量は、6.0ppb以下である。そして、当該野菜含有調味料の、Br
ix1.5換算時における3-methylbutanalの含有量は、2.0ppb以
上、かつ、50.0ppb以下である。
【0021】
好ましくは、当該野菜含有調味料の、3-methylbutanalの含有量に対す
るDipropyl Trisulfideの含有量の比は、1.4以下であり、かつ、
当該野菜含有調味料の、3-methylbutanalの含有量に対するDimeth
yl disulfideの含有量の比は、1.2以下である。
また好ましくは、当該野菜含有調味料のBrixは、10.0以上、かつ60.0以下
である。さらに好ましくは、当該調味料は、動物性原料、及び酵母エキスを含有しない。
【発明の効果】
【0022】
本発明が可能にするのは、旨味、及びコクが強化された野菜含有調味料の提供である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】野菜含有調味料の製造方法の流れ図
図2】野菜含有調味料のTime Intensity法による官能評価結果の図
【発明を実施するための形態】
【0024】
<野菜含有調味料>
本発明に係る野菜含有調味料(以下、「本野菜含有調味料」という。)とは、調味料で
あって、その原料の全部又は一部が野菜であるものをいう。ここで、調味料とは、調味用
途の材料をいう。本野菜含有調味料は、調味料であって、少なくとも、後述する第一の野
菜加工品、及び第二の野菜加工品を含有する。
【0025】
<本野菜含有調味料の系統及び性状>
本野菜調味料の系統は、不問であり、例示すると、だし系、ソース系、砂糖系、塩系、
酢系、醤油系、味噌系、酒系、油系、香辛料系などである。だしの呼び名は、多岐にわた
っており、例えば、だし(出汁)、スープストック、ブイヨン、フォン・ド・ヴォー、湯
(タン)等である。また、本野菜含有調味料の性状は、不問であり、例示すると、液状(
抽出物、搾汁液、及びそれらの濃縮物等を含む)、ペースト状、固形状、粉状等である。
本野菜含有調味料の好ましい形態は、液状、又はペースト状である。
【0026】
<第一の野菜加工品>
本発明に係る第一の野菜加工品(以下、「本第一の野菜加工品」という。)とは、野菜
原料の加工品であって、前記野菜含有調味料を構成するものである。本第一の野菜加工品
は、野菜の中でもフルクトースを豊富に含む野菜の加工品である。野菜における糖組成は
、各種野菜を搾汁等により加工し、分析することにより知ることができる。また、日本食
品標準成分表2020年度版(文部科学省)からも知ることができる。当該観点から、本
第一の野菜加工品は、タマネギ加工品である。タマネギ加工品とは、タマネギ原料の加工
品であって、例示すると、タマネギ破砕物、タマネギ搾汁、タマネギ濃縮汁、タマネギペ
ースト、タマネギピューレ、タマネギエキス、及びタマネギエキスの濃縮物のうち、少な
くとも何れか一つ以上である。
【0027】
<第二の野菜加工品>
本発明に係る第二の野菜加工品(以下、「本第二の野菜加工品」という。)とは、野菜
原料の加工品であって、前記野菜含有調味料を構成するものである。本第二の野菜加工品
は、野菜の中でもアミノ酸を豊富に含む野菜の加工品である。アミノ酸含量の多い野菜を
使用することで、旨味が強化された野菜含有調味料を製造することができる。野菜におけ
るアミノ酸量は、各種野菜を搾汁等により加工し、分析することにより知ることができる
。また、日本食品標準成分表2020年度版(文部科学省)からも知ることができる。当
該観点から、本第二の野菜加工品は、ブロッコリー加工品、ニンニク加工品、トマト加工
品、及びアスパラガス加工品のうち、少なくとも一つ以上である。
【0028】
ブロッコリー加工品とは、ブロッコリー原料の加工品であって、例示すると、ブロッコ
リー破砕物、ブロッコリー搾汁、ブロッコリー濃縮汁、ブロッコリーペースト、ブロッコ
リーピューレ、ブロッコリーエキス、及びブロッコリーエキスの濃縮物のうち、少なくと
も何れか一つ以上である。
【0029】
ニンニク加工品とは、ニンニク原料の加工品であって、例示すると、ニンニク破砕物、
ニンニク搾汁、ニンニク濃縮汁、ニンニクペースト、ニンニクピューレ、ニンニクエキス
、及びニンニクエキスの濃縮物のうち、少なくとも何れか一つ以上である。
トマト加工品とは、トマト原料の加工品であって、例示すると、トマト破砕物、トマト
搾汁、トマト濃縮汁、トマトペースト、トマトピューレ、トマトエキス、及びトマトエキ
スの濃縮物のうち、少なくとも何れか一つ以上である。
【0030】
アスパラガス加工品とは、アスパラガス原料の加工品であって、例示すると、アスパラ
ガス破砕物、アスパラガス搾汁、アスパラガス濃縮汁、アスパラガスペースト、アスパラ
ガスピューレ、アスパラガスエキス、及びアスパラガスエキスの濃縮物のうち、少なくと
も何れか一つ以上である。
【0031】
本発明に係る第一の野菜加工品、及び第二の野菜加工品の好ましい態様は、濃縮物であ
る。野菜加工品であって、濃縮物であるものとは、当該加工品を製造する工程において、
少なくとも濃縮工程を経て製造されたものである。当該濃縮工程を経ることによって、前
記野菜由来の不快臭が低減された野菜加工品となる。当該濃縮方法は、公知の方法でよく
、例えば、真空濃縮、膜濃縮、凍結濃縮等である。不快臭を低減する目的から、真空濃縮
、又は膜濃縮であることが好ましい。濃縮の程度は、特に限定されないが、不快臭低減の
観点から、好ましくは、Brix20.0以上である。より好ましいBrixの下限値は
、30.0である。好ましいBrixの上限値は、60.0である。
【0032】
<その他の野菜加工品>
本野菜含有調味料で使用できるのは、前記以外の野菜である。この野菜の種類は、不問
であるが、例示すると、ニンジン、カブ、大根、セロリ、ホウレンソウ、ピーマン、大麦
若葉、春菊、カラシ菜、サラダ菜、小松菜、明日葉、甘藷、馬鈴薯、ロヘイヤ、パプリカ
、パセリ、セロリ、三つ葉、レタス、ラディッシュ、紫蘇、茄子、インゲン、カボチャ、
牛蒡、ネギ、生姜、大蒜、ニラ、トウモロコシ、さやえんどう、オクラ、かぶ、きゅうり
、ウリ、ズッキーニ、へちま、もやし等である。前記タマネギ、ブロッコリー、ニンニク
、トマト、及びアスパラガス野菜以外の野菜は、好ましくは、ニンジン、セロリである。
なぜなら、全体的な味のバランスが良くなるからである。
【0033】
<その他の調味料>
本野菜含有調味料の原材料として、本発明が排除しないのは、その他の調味料の使用で
ある。調味料とは、材料であって、料理の味を調えるものである。調味料を例示すると、
砂糖、食用酢、みりん、しょうゆ、ウスターソース、塩、うま味調味料、酵母エキス、畜
肉エキス等である。動物性原料不使用の観点から、畜肉エキス、魚エキス等の動物性原料
を使用しないことが好ましい。また、人工的な呈味を避けることから、うま味調味料、酵
母エキスを使用しないことが好ましい。
【0034】
<本野菜含有調味料の製造方法の概念的構成>
本野菜含有調味料の製造方法(以下、この欄では、「本製法」ということもある。)を
概念的に構成するのは、少なくとも、調合、及び加熱である。
【0035】
図1が示すのは、本製法の流れである。この製法を構成するのは、調合(S10)、加
熱(S20)、濃縮(S30)並びに殺菌及び充填(S40)である。
【0036】
<調合(S10)>
野菜加工品を調合する目的は、香味の調整、及び後述する加熱工程における調理感付与
の促進である。ここで調合されるのは、少なくとも、第一の野菜加工品、及び第二の野菜
加工品である。また、あわせて調合されるのは、好ましくは、水性媒体、特に水である。
水性媒体を調合することによって、調整される調合液のBrixは、10.0以下である
ことが好ましい。
【0037】
前記第一の野菜加工品、及び第二の野菜加工品を調合することによって、第一の野菜加
工品が含有するフルクトースと、第二の野菜加工品が含有するアミノ酸との化学反応が生
じやすくなる。当該観点から、第一の野菜加工品、及び第二の野菜加工品の態様は、液状
、又はペースト状であることが好ましい。
【0038】
<加熱(S20)>
調合液を加熱する目的は、コクの付与、特に調理感の付与である。第一の野菜加工品と
第二の野菜加工品とが混合された調合液を加熱することで、調理感に寄与する香り成分が
生成する。加熱の方法は、特に限定されない。加熱温度は、好ましくは、45℃以上、か
つ、100℃以下である。加熱時間は、好ましくは、30分以上、かつ、3時間以下であ
る。加熱の時期は、特に限定されない。当該工程単独で行うこともできるが、前記調合と
同時、又は後述する濃縮と同時に行うこともできる。
【0039】
一般的に、糖とアミノ酸を混合して加熱することにより、メイラード反応が起き、メイ
ラード生成物が生じる。特に、糖の中でも、フルクトースは、メイラード反応が起こりや
すい物質であることが知られている。また、メイラード生成物の中には、コクや調理感に
寄与する成分が存在することが知られている。
【0040】
<濃縮(S30)>
調合液を濃縮する目的は、不快臭の低減である。不快臭は揮発成分であるため、濃縮工
程によって、本野菜含有調味料に含有する不快臭は低減する。濃縮の他の目的は、素材の
ハンドリングの向上である。液体を濃縮することで、液体の容積が減る。つまり、液体の
保管コストが下がる。濃縮方法は、公知の方法で良く、例えば、真空濃縮、膜濃縮、凍結
濃縮等である。不快臭を低減する目的から、真空濃縮、又は膜濃縮であることが好ましい
。野菜由来の青臭さ等の不快臭に寄与する成分の多くは、調理感に寄与するメイラード生
成物より、比較的沸点が低い。そのため、真空濃縮によって、不快臭の方が除去されやす
い。濃縮の程度は、特に限定されないが、不快臭低減の観点から、好ましくは、Brix
20.0以上である。より好ましいBrixの下限値は、30.0である。好ましいBr
ixの上限値は、60.0である。
【0041】
<殺菌及び充填(S40)>以上に加えて、本製法が適宜採用するのは、殺菌及び充填
である。これらの方法は、公知の方法で良く、例えば、プレート式殺菌、チューブラー式
殺菌方法等がある。
【0042】
<香味特徴>
香味の特徴を表す一つの方法は、香味の強度と、摂食してからの経過時間との関係であ
る。対象となる飲食品を口に含んだ直後に感じる香味を「先味」という。飲食品を口に含
んだ後、飲み込む直前に感じる香味を「中味」という。飲食品を口に含み、飲み込んだ後
にも持続的に感じる香味を「後味」という。
【0043】
<コク>
本発明における「コク」とは、官能特性の一つである。コクの判断の主たる要素は、香
味の持続性であり、より好ましくは、香味の複雑さも加味される。香味の持続性は、香味
全体をとおして、中味以降まで香味が持続するか否かで判断する。本発明において、調理
感を有する特定の成分が、コクに寄与することを見出した。調理感を有する特定の成分は
、後述する。
【0044】
<調理感>
本発明において、3-methylbutanalは、野菜含有調味料における調理感に
寄与する成分であることがわかった。当該成分は、中味以降における香味の持続性、及び
複雑さに寄与することが分かった。
【0045】
3-methylbutanalは、一般に、アーモンド様の甘く、香ばしい香特徴を
有する。本発明では、タマネギのようなフルクトース含量の多い野菜加工品と、ブロッコ
リー等のようなアミノ酸含量の多い野菜加工品とを加熱することでメイラード反応が促進
し、当該成分が増加することが考えられた。当該成分の存在により、野菜含有調味料のコ
クをさらに増加させることがわかった。
【0046】
3-methylbutanalの香閾値は、一般に0.2ppb乃至2.0ppbで
あることが知られている。当該観点から、発明の効果に寄与する上で、本野菜含有調味料
のBrixが1.5のとき(以下、「Brix1.5換算時」ともいう。)の3-met
hylbutanalの含有量は、2.0ppb以上であることが好ましい。より好まし
い下限値は、3.0ppbであり、さらに好ましい下限値は、5.0ppbである。好ま
しい上限値は、100.0ppbであり、より好ましい上限値は、50.0ppbである
。3-methylbutanalの含有量が、上記の範囲であることで、適度な調理感
を感じることができる。
【0047】
なお、Brix1.5換算時とは、Brixが1.5より高いものについては、これを
水でBrix1.5まで希釈したときのことを表し、Brixが1.5より低いものにつ
いては、水だけを除いてBrix1.5まで濃縮したと想定したときのことを表す。
【0048】
<不快臭>
本発明における「不快臭」は、野菜が有する、青臭さ等の不快な臭気に由来する官能特
徴である。本発明において、野菜由来の不快臭が、調理感を抑制することを見出した。
本発明において、Dipropyl Trisulfide、及びDimethyl
disulfideは、野菜含有調味料における不快臭に寄与する成分であることがわか
った。当該成分が多く含有されることで、コクに寄与する調理感が減退することがわかっ
た。
【0049】
Dipropyl Trisulfideは、一般に、タマネギ様硫黄臭の香特徴を有
する。当該成分は、タマネギの加工品に多く含有される。当該成分の存在により、野菜含
有調味料の調理感は、減退することがわかった。
【0050】
発明の効果に寄与する上で、本野菜含有調味料のBrixが1.5のとき(Brix1
.5換算時)のDipropyl Trisulfideの含有量は、7.0ppb以下
であることが好ましい。より好ましい上限値は、6.0ppbである。Dipropyl
Trisulfideの含有量が、上記の範囲であることで、効果的に調理感を感じる
ことができる。
【0051】
Dimethyl disulfideは、一般に、タマネギ様硫黄臭の香特徴を有す
る。当該成分は、タマネギやブロッコリーの加工品に多く含有される。当該成分の存在に
より、野菜含有調味料の調理感は、減退することがわかった。
【0052】
発明の効果に寄与する上で、本野菜含有調味料のBrixが1.5のとき(Brix1
.5換算時)のDimethyl disulfideの含有量は、6.0ppb以下で
あることが好ましい。Dimethyl disulfideの含有量が、上記の範囲で
あることで、効果的に調理感を感じることができる。
【0053】
<調理感に寄与する成分と不快臭に寄与する成分の比率>
本発明において、調理感に寄与する3-methylbutanalの含有量に対する
、不快臭に寄与するDipropyl Trisulfideの含有量の比率は、1.4
以下であることが好ましい。さらに好ましくは、1.2以下である。
【0054】
また、本発明において、調理感に寄与する3-methylbutanalの含有量に
対する、不快臭に寄与するDimethyl disulfideの含有量の比率は、1
.2以下であることが好ましい。
【0055】
<糖度(Brix)>
本野菜含有調味料において、Brixは、特に限定されない。本野菜含有調味料の好ま
しいBrixは、1.0以上、かつ60.0以下である。より好ましい下限値は、10.
0であり、さらに好ましい下限値は、20.0である。より好ましい上限値は、50.0
である。Brixの測定方法は、公知の方法でよい。測定手段を例示すると、光学屈折率
計(NAR-3T ATAGO社製)である。
【0056】
<pH>
本実施の形態に係る野菜含有調味料のpHは、特に限定されないが、好ましくは、4.
0以上、かつ7.0以下である。pHが低くなりすぎて酸味が強くなると、酸味が強調さ
れることでコクが感じにくくなる。また、pHが高すぎると、衛生管理上の観点から強い
殺菌が必要となり、香味への影響等の観点からも好ましくない。より好ましくは、当該p
Hは、5.0以上、かつ7.0以下である。
【実施例0057】
[汎用野菜加工品を用いた、コクを有する野菜含有調味料の製造]
<対照例1>
ブロッコリー、タマネギ、セロリ、ニンジンを2cm程度に切断し、140℃で焙炒し
た。その後、原料の2倍量の水で95℃、1h熱水抽出した。固形分を除去後、抽出液を
真空濃縮により、Brix30まで濃縮した。その後、100℃で90秒、加熱殺菌を行
った。
【0058】
<比較例1>
市販のブロッコリー濃縮汁(Brix40)、タマネギ濃縮汁(Brix70)、セロ
リ濃縮汁(Brix37)、及び人参濃縮汁(Brix60)を調合し、水でBrix3
0となるように調整した。各原料の調合量は、各野菜の濃縮前のBrix(以下、「スト
レートBrix)ともいう。)換算で、対照例1と同量となるように調合した。その後、
100℃で90秒、加熱殺菌を行った。
【0059】
<実施例1>
市販のブロッコリー濃縮汁(Brix40)、タマネギ濃縮汁(Brix70)、セロ
リ濃縮汁(Brix37)、及び人参濃縮汁(Brix60)を、それぞれ、各野菜のス
トレートBrixとなるように水で調整した。各原料の調合量は、ストレートBrix換
算で、対照例1と同量となるように調合した(以下、「調合液」ともいう。)。これらを
調合した後、真空濃縮機により、温度55℃でBrix30となるように調整した。その
後、100℃で90秒、加熱殺菌を行った。
【0060】
<ストレートBrix>
本実施例において、ブロッコリーのストレートBrixは、3.5、タマネギのストレ
ートBrixは、6.0、セロリのストレートBrixは、3.0、人参のストレートB
rixは、6.0と設定した。
【0061】
<官能評価方法>
対照例1、比較例1、及び実施例1に関して、中味における香味の持続性の評価を行っ
た。官能評価方法は、Time Intensity法(以下、「TI法」ともいう。)
を採用した。パネリストは、TI法習得済みの者9名を選定した。各パネリストはサンプ
ルを口に含んだタイミングで官能評価を開始し、7秒後に飲み込み、香味がなくなるまで
評価した。上限の評価時間は、70秒とした。その間の香味全体の強度を経時的に評価し
た。あわせて、香味の質の違いを評価した。各パネリストは、各サンプルについて、官能
評価を2回繰り返し、N数18のデータに基づき平均値を得た。
【0062】
<結果>
図2に示すのは、対照例1、比較例1、及び実施例1に関するTime Intens
ity法の結果である。対照1と比較して、比較例1、及び実施例1は、いずれも、香味
強度で示される、香味全体の持続性については、同等の結果であった。
【0063】
香味の質に関して、実施例1は、比較例1と比較して、対照例1に近い香味であった。
比較例1は、実施例1と比較して、野菜の青臭さ等の不快臭が残っており、中味におけ
るコクに寄与する香りを弱く感じるという結果であった。
【0064】
また、比較例1は、実施例1と比較して、香味の統一感がないという結果であった。
実施例1は、比較例1と比較して、味の統一感を有し、マイルドな香味であった。
実施例1は、香味の質に関しても、対照1と同等であった。
【0065】
<実施例2-1>
市販のタマネギ濃縮汁(Brix70)を水でBrix6.0まで調整したものを準備
した。市販のブロッコリー濃縮汁(Brix40)を水でBrix3.5まで調整したも
のを準備した。これらを等量ずつ混合して、混合汁を得た(Brix4.75)。この混
合汁を、真空濃縮機により、温度55℃でBrix30となるように調整した。その後、
100℃で90秒、加熱殺菌を行った。
【0066】
<実施例2-2>
市販のタマネギ濃縮汁(Brix70)を水でBrix6.0まで調整したものを準備
した。市販のブロッコリー濃縮汁(Brix40)を水でBrix3.5まで調整したも
のを準備した。これらを等量ずつ混合して、混合汁を得た(Brix4.75)。この混
合汁を、温度55℃で、前記実施例2-1の真空濃縮時間と同時間加熱した。その後、1
00℃で90秒、加熱殺菌を行った。
【0067】
<官能評価>
本評価は、選定した6名のパネリストによる2点識別法で行った。実施例2-1と実施
例2-2について、中味(飲み込む直前における香味)の調理感の有意差の有無を検証し
た。有意差検定は、危険率5%により行った。
【0068】
<結果>
官能評価を行った結果、実施例2-1よりも、実施例2-2の方が、野菜由来の不快臭
、青臭みが低減され、中味における調理感が強かった。
【0069】
<考察>
実施例1が、比較例1と比較して、対照1と同等の香味となった理由は、第1に、野菜
由来の青臭み等の不快臭が少ないことであることが考えられた。実施例1は、濃縮物であ
る各野菜加工品を水で希釈した後に、再度濃縮を行っているため、野菜由来の青臭さ等の
不快臭が低減したものと考えられた。それにより、中味におけるコクに寄与する香りを感
じやすくなったものと考えられた。
【0070】
また、第2に、実施例1は、各野菜加工品を水で希釈した後に混合され、さらに濃縮さ
れることで、各野菜加工品中の成分が十分に混合され、加熱されたため、マイルドな香味
になったものと考えられた。
【0071】
実施例2-1に比較して、実施例2-2の方が、中味におけるコクに寄与する香りを感
じやすくなったのも、前記と同様の理由であると考えられた。
【0072】
[特定の野菜加工品の組合せ、及び加熱による、メイラード生成物の特定]
本試験では、アミノ酸の含有量が多い野菜として、ブロッコリーを採用した。また、糖
の中でも、メイラード反応を生じやすい、フルクトースの含有量が多い野菜として、タマ
ネギを採用した。糖の含有量が少ない野菜として、セロリを採用した。糖の含有量が多い
が、糖の中でも、メイラード反応を生じにくい、スクロースの含有量が多い野菜として、
ニンジンを採用した。これらの組合せにより、本発明の効果に寄与するメイラード生成物
の特定を行った。
【0073】
<実施例3>
タマネギ濃縮汁(Brix70)を水でBrix6.0まで調整したものを準備した。
ブロッコリー濃縮汁(Brix40)を水でBrix3.5まで調整したものを準備した
。これらを等量ずつ混合して、混合汁(実施例3-0)を得た(Brix4.75)。こ
の混合汁の一部を取り分け、殺菌した試料を準備した(実施例3-1)。あわせて、混合
汁の一部を取り分け、水でBrix3.25に調整し、殺菌した試料を準備した(実施例
3-2)。また、残りの混合汁を、真空濃縮器を用いて、55℃でBrix30まで濃縮
した。これを、再度水でBrix4.75まで希釈し、殺菌したもの(実施例3-3)を
準備した。殺菌条件は、98℃で1分であった。
【0074】
<比較例2>
ニンジン濃縮汁(Brix60)を水でBrix6.0まで調整したものを準備した。
ブロッコリー濃縮汁(Brix40)を水でBrix3.5まで調整したものを準備した
。これらを等量ずつ混合して混合汁(比較例2-0)を得た(Brix4.75)。この
混合汁の一部を取り分け、殺菌した試料を準備した(比較例2-1)。また、残りの混合
汁を、真空濃縮器を用いて、55℃でBrix30まで濃縮した。これを、再度水でBr
ix4.75まで希釈し、殺菌したもの(比較例2-2)を準備した。殺菌条件は、98
℃で1分であった。
【0075】
<比較例3>
セロリ濃縮汁(Brix37)を水でBrix3.0まで調整したものを準備した。ブ
ロッコリー濃縮汁(Brix40)を水でBrix3.5まで調整したものを準備した。
これらを等量ずつ混合して、混合汁(比較例3-0)を得た(Brix3.25)。この
混合汁の一部を取り分け、殺菌した試料を準備した(比較例3-1)。また、残りの混合
汁を、真空濃縮器を用いて、55℃でBrix30まで濃縮した。これを、再度水でBr
ix3.25まで希釈し、殺菌したもの(比較例3-2)を準備した。殺菌条件は、98
℃で1分であった。
【0076】
<官能評価>
本評価は、選定した6名のパネリストによる2点識別法で行った。実施例3-1と比較
例2-1,並びに、実施例3-2と比較例3-1について、中味(飲み込む直前における
香味)の調理感の有意差の有無を検証した。有意差検定は、危険率5%により行った。
【0077】
<メイラード生成物の確認>
実施例3-0乃至3-3,比較例2-0乃至2-2、並びに、比較例3-0乃至3-2
に関して、各試料に含有される香成分量を分析するため、ガスクロマトグラフィー質量分
析計(GC‐MS)により分析を行った。第一の観点として、殺菌、又は濃縮時の加熱に
より、含有量が増加したメイラード生成物を確認した。第二の観点として、実施例2,比
較例2,及び比較例3の比較において、野菜加工品の組合せの違いにより、特異的に含有
量の多いメイラード生成物の有無を確認した。GC-MS分析の分析条件は、以下のとお
りである。
【0078】
<GC-MS分析>
本発明に係る香成分の含有量を測定する方法として採用できるのは、ガスクロマトグラ
フィー質量分析法である。実施例3,比較例2,及び比較例3のサンプルを、水で薄めた
ものを分析用試料とした。ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)により当該
成分を検出することができる。詳細な前処理条件、測定条件は以下の方法である。
【0079】
<前処理条件>
前処理方法 :ダイナミックヘッドスペース法
試料採取量 :5g
内部標準物質 :10ppm1,2-ジクロロベンゼン溶液を10μL添加
インキュベーションタイム:10min
パージ条件 :6min(10ml/min)
ドライ条件:18min(50ml/min)
<TDU(加熱脱着ユニット)条件>
TDU :40℃→720℃/min→240℃(3min)
CIS :10℃→12℃/sec→240℃(20min)
<GC-MS条件>
GC :Agilent Technologies 7890A
MS :Agilent Technologies 5975C
注入口 :溶媒ベントモード
ライナー :Tenax TA充填
カラム :J&W DB-WAX
(60m×250μm×0.50μm)
オーブン温度 :40℃(3min)→10℃/min→
240℃(17min)
測定モード :Scanモード
【0080】
<結果>
官能評価の結果、実施例3は、比較例2,及び比較例3と比較して、中味における調理
感が強かった。
GC-MS分析を行った結果、実施例3において、第一の観点、及び第二の観点を満た
すメイラード生成物として、少なくとも3-methylbutanalを特定した。
【0081】
<考察>
実施例3において、中味における調理感が強かった理由としては、アミノ酸の多いブロ
ッコリー加工品と、フルクトースの多いタマネギ加工品を混合して加熱したことにより、
メイラード反応が進行しやすかったためと考えられる。セロリ加工品は、糖含有量が少な
いため、比較的メイラード反応が進行しにくかったものと考えられる。ニンジン加工品は
、糖含有量は多いが、スクロースの割合が高いため、比較的メイラード反応が進行しにく
かったものと考えられる。
【0082】
[野菜含有調味料におけるコクに寄与する香成分の特定]
野菜含有調味料を用いて、中味以降の香味に寄与する成分を、GC‐においかぎ分析(
以下、「GC-O」という。)を用いて特定した。GC―Oとは、GCカラムで分離され
、溶出する香気成分を人間の鼻でかぎ分けて検出する方法である。溶出されたにおいの香
り特徴及び成分に関する一般情報から、コクに寄与する香成分を絞り込んだ。本試験にて
用いたGC-MSの条件は、以下のとおりである。
【0083】
<GC-MS分析>
本発明に係る香成分の含有量を測定する方法として採用できるのは、ガスクロマトグラ
フィー質量分析法である。実施例1に相当する野菜含有調味料を、水で薄めたものを試料
とした。ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)により当該成分を検出するこ
とができる。詳細な前処理条件、測定条件は以下の方法が挙げられる。
【0084】
<前処理条件>
前処理方法 :ダイナミックヘッドスペース法
試料採取量 :5g
内部標準物質 :10ppm1,2-ジクロロベンゼン溶液を10μL添加
インキュベーションタイム:10min
パージ条件 :6min(10ml/min)
ドライ条件:18min(50ml/min)
<TDU(加熱脱着ユニット)条件>
TDU :40℃→720℃/min→240℃(3min)
CIS :10℃→12℃/sec→240℃(20min)
<GC-MS条件>
GC :Agilent Technologies 7890A
MS :Agilent Technologies 5975C
注入口 :溶媒ベントモード
ライナー :Tenax TA充填
カラム :J&W DB-WAX
(60m×250μm×0.50μm)
オーブン温度 :40℃(3min)→10℃/min→
240℃(17min)
測定モード :Scanモード
【0085】
当該方法により、中味以降の香味に寄与する候補成分として、少なくとも、3-met
hylbutanalを特定した。当該2成分が、特に不快臭に関与していることが考え
られた。また、野菜由来の不快臭に寄与する候補成分として、少なくとも、Diprop
yl Trisulfide、及びDimethyl disulfideを特定した。
Dipropyl Trisulfideは、タマネギに由来する香成分であることが考
えられた。Dimethyl disulfideは、ブロッコリー、及びタマネギに由
来する香成分であることが考えられた。実施例1の調合液における3-methylbu
tanalの含有量は、Brix1.5に調整した調合液において、18.5ppbであ
り、Dipropyl Trisulfideの含有量は、Brix1.5に調整した調
合液において、10.0ppbであり、Dimethyl disulfideの含有量
はBrix1.5に調整した調合液において、12.8ppbであった。実施例1におけ
る3-methylbutanalの含有量は、Brix1.5において、6.9ppb
であり、Dipropyl Trisulfideの含有量は、Brix1.5において
、1.4ppbであり、Dimethyl disulfideの含有量は、Brix1
.5において、2.1ppb程度であった。
【0086】
[モデル液を用いた、好適な香成分含量の範囲の特定]
試験1:以下の方法により、調理感を感じる上での、3-methylbutanal
の好適な範囲を特定した。
【0087】
<モデル液の準備>
蒸留水に、3-methylbutanalの標準試料を添加し、3-methylb
utanalの含有量が、1.0ppb、2.0ppb、3.0ppb、5.0ppb、
30.0ppb、50.0ppb、及び100.0ppbとなるよう調整した試料を準備
した。
【0088】
<官能評価>
訓練されたパネリスト6名により構成されたパネルによって、前記試料の官能評価を行
った。官能評価は、オープンパネル方式により行った。中味以降の香味に感じる調理感と
して好適な3-methylbutanalの含有量の範囲を、パネルにより定めた。
【0089】
<結果>
調理感を感じる好適な範囲として、3-methylbutanalの含有量は、5.
0ppb以上、かつ、50.0ppb以下であった。
【0090】
試験2:以下の方法により、Dipropyl Trisulfideが、3-met
hylbutanal由来の調理感に影響を及ぼすか否かを確認した。
【0091】
<モデル液の準備>
蒸留水に、3-methylbutanalの標準試料を添加し、3-methylb
utanalの含有量が、5.0ppbとなるよう調整した。これに、Dipropyl
Trisulfideの標準試料を添加し、Dipropyl Trisulfide
の含有量が、それぞれ、10.0ppb、8.0ppb、7.0ppb、6.0ppb、
及び4.0ppbとなるよう調整した試料を準備した。
【0092】
なお、前記実施例1で示される調合液のBrix1.5換算時におけるDipropy
l Trisulfideの含有量は、10.0ppbである。そのため、本試験におけ
るDipropyl Trisulfideの含有量が10.0ppbのモデル試料は、
前記実施例1で示される調合液を想定した。
【0093】
<官能評価>
訓練されたパネリスト7名により構成されたパネルによって、前記試料の官能評価を行
った。官能評価は、オープンパネル方式により行った。中味以降の香味に感じる調理感と
して好適な3-methylbutanalの含有量の範囲を、パネルにより定めた。D
ipropyl Trisulfideの含有量が10.0ppbの試料を対照として、
Dipropyl Trisulfideによる不快臭が有意に弱くなるDipropy
l Trisulfideの含有量を特定した。あわせて、Dipropyl Tris
ulfideの含有量が10.0ppbの試料を対照として、調理感が有意に強くなるD
ipropyl Trisulfideの含有量を特定した。
【0094】
<結果>
不快臭が有意に弱くなるDipropyl Trisulfideの含有量は、7.0
ppb以下であった。調理感が有意に強くなるDipropyl Trisulfide
の含有量は、6.0ppb以下であった。
【0095】
試験3:以下の方法により、Dimethyl disulfideが、3-meth
ylbutanal由来の調理感に影響を及ぼすか否かを確認した。
【0096】
<モデル液の準備>
蒸留水に、3-methylbutanalの標準試料を添加し、3-methylb
utanalの含有量が、5.0ppbとなるよう調整した。これに、Dimethyl
disulfideの標準試料を添加し、Dimethyl disulfideの含
有量が、それぞれ、12.8ppb、10.0ppb、8.0ppb、6.0ppb、及
び4.0ppbとなるよう調整した試料を準備した。
【0097】
前記実施例1で示される調合液のBrix1.5換算時におけるDimethyl d
isulfideの含有量は、12.8ppbである。そのため、Dimethyl d
isulfideの含有量が12.8ppbの試料は、前記実施例1で示される調合液を
想定した。
【0098】
<官能評価>
訓練されたパネリスト7名により構成されたパネルによって、前記試料の官能評価を行
った。官能評価は、オープンパネル方式により行った。中味に感じる調理感として好適な
3-methylbutanalの含有量の範囲を、パネルにより定めた。Dimeth
yl disulfideの含有量が12.8ppbの試料を対照として、Dimeth
yl disulfideによる不快臭が有意に弱くなるDimethyl disul
fideの含有量を特定した。あわせて、Dimethyl disulfideの含有
量が12.8ppbの試料を対照として、調理感が有意に強くなるDimethyl d
isulfideの含有量を特定した。
【0099】
<結果>
不快臭が有意に弱くなるDimethyl disulfideの含有量は、6.0p
pb以下であった。調理感が有意に強くなるDimethyl disulfideの含
有量は、6.0ppb以下であった。
【0100】
<考察>
試験2,及び試験3の結果、Dipropyl Trisulfide、及びDime
thyl disulfideは、3-methylbutanalの調理感を抑制する
ことが分かった。Dipropyl Trisulfideの不快臭は、7.0ppb以
下で、調合液と比較して低減されることが考えられた。また、Dipropyl Tri
sulfideの含量が6.0ppb以下のとき、3-methylbutanalの調
理感が感じられることが分かった。このことより、3-methylbutanalの調
理感を得る、より好ましい条件は、3-methylbutanalの含有量に対するD
ipropyl Trisulfideの含有量が、1.2以下であることが分かった。
【0101】
Dimethyl disulfideの不快臭は、6.0ppb以下で、調合液と比
較して低減されることが考えられた。また、Dimethyl disulfideの含
量が6.0ppb以下のとき、3-methylbutanalの調理感が感じられるこ
とが分かった。このことより、3-methylbutanalの調理感を得る、より好
ましい条件は、3-methylbutanalの含有量に対するDimethyl d
isulfideの含有量が、1.2以下であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明が有用な分野は、野菜含有調味料の製造及び販売である。
図1
図2