(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025745
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】マイクロデバイス及びマイクロデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
B81B 1/00 20060101AFI20230216BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230216BHJP
B81C 3/00 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
B81B1/00
G01N37/00 101
B81C3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131053
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】溝口 親明
(72)【発明者】
【氏名】城川 政宜
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 翔
【テーマコード(参考)】
3C081
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081AA17
3C081BA04
3C081BA23
3C081CA05
3C081CA32
3C081DA06
3C081DA10
3C081EA27
(57)【要約】
【課題】マイクロ流路からの液漏れを抑制できるマイクロデバイス及びマイクロデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】マイクロデバイス10は、第1基板20と、第1基板20に接合し、第1基板20と共に少なくとも1つのマイクロ流路52、54、56を形成する少なくとも1つの溝部32、34、36と、第1基板20と共に複数の閉空間62a、62bを形成する複数の凹部42a、42bとを有する第2基板30とを備える。平面視した場合、複数の閉空間62a、62bが少なくとも1つのマイクロ流路52、54、56を挟んで配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に接合し、前記第1基板と共に少なくとも1つのマイクロ流路を形成する少なくとも1つの溝部と、前記第1基板と共に複数の閉空間を形成する複数の凹部とを有する第2基板と、を備え、
平面視した場合、前記複数の閉空間が前記少なくとも1つのマイクロ流路を挟んで配置されている、
マイクロデバイス。
【請求項2】
前記複数の閉空間は、前記少なくとも1つのマイクロ流路を挟んで対称に配置されている、
請求項1に記載のマイクロデバイス。
【請求項3】
前記複数の閉空間が減圧された状態である、
請求項1又は2に記載のマイクロデバイス。
【請求項4】
包装体を備え、
前記第1基板と前記第2基板が前記包装体により真空包装されている、
請求項3に記載のマイクロデバイス。
【請求項5】
前記凹部の前記マイクロ流路の幅方向の長さが、3.8mm以上5mm以下である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項6】
前記第1基板が自家蛍光の小さいガラスから形成され、
前記第2基板がポリジメチルシロキサンから形成されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載のマイクロデバイス。
【請求項7】
第1基板を準備する準備工程と、
前記第1基板と共に少なくとも1つのマイクロ流路を形成する少なくとも1つの溝部と、前記少なくとも1つの溝部を挟んで位置し、前記第1基板と共に複数の閉空間を形成する複数の凹部と、を有する第2基板を形成する形成工程と、
前記第1基板と前記第2基板とを接合して、前記少なくとも1つのマイクロ流路と前記複数の閉空間とを形成する接合工程と、
形成された前記複数の閉空間の内を減圧する減圧工程と、を含む、
マイクロデバイスの製造方法。
【請求項8】
接合され、前記複数の閉空間を減圧された状態の前記第1基板と前記第2基板を、真空包装する包装工程を含む、
請求項7に記載のマイクロデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロデバイス及びマイクロデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光を用いた免疫分析法として、抗原抗体反応を利用して測定対象物質を検出する蛍光偏光免疫分析法(FPIA:Fluorescence Polarization Immunoassay)が知られている。例えば、特許文献1は、測定された蛍光の偏光度から測定抗原(測定対象物質)の濃度を求める方法を開示している。
【0003】
また、生体関連物質の分析に用いられるマイクロデバイスが知られている。例えば、特許文献2は、第1部材と第2部材との間に生体関連分子を担持し、第1部材もしくは第2部材の何れか一方において、他方の部材に対する接触面に複数の溝を並列形成し、反応領域となる空間を複数設けた生物関連分子マイクロアレイを開示している。
【0004】
生体関連物質の分析に用いられるマイクロデバイスを構成する基板には、一般に、ポリジメチルシロキサンから形成された基板(以下、PDMS基板)と、ガラス、石英等から形成された対向基板が用いられている。PDMS基板と石英ガラス基板は、PDMS基板の吸着力により、容易に接合される。しかしながら、例えば、親水処理を施されたPDMS基板を用いる場合、親水処理によりPDMS基板の吸着力が弱まり、溶液がマイクロデバイスの流路から漏れる虞がある。
【0005】
そこで、特許文献3は、PDMS基板の貼り合わせ面側の外周縁寄り部分に、当該PDMS基板を対向基板に真空吸着させるための、連続した環状の負圧用管路が設けられたマイクロチップを開示している。特許文献3のマイクロチップでは、マイクロチップの使用前に負圧用管路内を排気吸引することにより、PDMS基板と対向基板との接合力を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3-103765号公報
【特許文献2】特開2005-30927号公報
【特許文献3】特許第3918040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3のマイクロチップでは、1つの連続した負圧用管路から空気を排気するので、管路が大気圧により閉塞して、空気を十分に排気できない虞がある。また、負圧用管路がマイクロチップの外縁部に設けられているので、マイクロチップの中央部に位置する流路の周辺部分において、PDMS基板と対向基板とを十分に接合できない虞があり、また、マイクロチップの外形が大きくなる。さらに、負圧用管路内から空気を排気した後、負圧用管路の排気口を塞ぐ必要もある。
【0008】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、マイクロ流路からの液漏れを抑制できるマイクロデバイス及びマイクロデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の第1の観点に係るマイクロデバイスは、
第1基板と、
前記第1基板に接合し、前記第1基板と共に少なくとも1つのマイクロ流路を形成する少なくとも1つの溝部と、前記第1基板と共に複数の閉空間を形成する複数の凹部とを有する第2基板と、を備え、
平面視した場合、前記複数の閉空間が前記少なくとも1つのマイクロ流路を挟んで配置されている。
【0010】
本開示の第2の観点に係るマイクロデバイスの製造方法は、
第1基板を準備する準備工程と、
前記第1基板と共に少なくとも1つのマイクロ流路を形成する少なくとも1つの溝部と、前記少なくとも1つの溝部を挟んで位置し、前記第1基板と共に複数の閉空間を形成する複数の凹部と、を有する第2基板を形成する形成工程と、
前記第1基板と前記第2基板とを接合して、前記少なくとも1つのマイクロ流路と前記複数の閉空間とを形成する接合工程と、
形成された前記複数の閉空間の内を減圧する減圧工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、マイクロ流路からの液漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係るマイクロデバイスを示す上面図である。
【
図2】
図1に示すマイクロデバイスをA-A線で矢視した断面図である。
【
図3】実施形態1に係る第2基板を示す平面図である。
【
図4】実施形態1に係る溝部と凹部とを示す模式図である。
【
図5】実施形態1に係る、凹部の底の第1基板の第1主面に対する角度と、凹部の底の厚さと凹部の幅の1/2との関係を示す図である。
【
図6】実施形態1に係るマイクロデバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態1に係る第2基板を形成する形成工程を説明するための模式図である。
【
図8】実施形態2に係るマイクロデバイスを示す模式図である。
【
図9】実施形態2に係るマイクロデバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に係るマイクロデバイスについて、図面を参照して説明する。
【0014】
<実施形態1>
図1~
図7を参照して、本実施形態に係るマイクロデバイス10を説明する。マイクロデバイス10は、例えば、蛍光偏光免疫分析法を用いた測定対象物質の検出に使用される。
【0015】
マイクロデバイス10は、
図1に示すように、第1基板20と第2基板30と3つのマイクロ流路52、54、56と複数の閉空間62a、62b、64a、64b、66a、66bとを備える。なお、理解を容易にするため、本明細書では、
図1におけるマイクロデバイス10の右方向(紙面の右方向)を+X方向、上方向(紙面の上方向)を+Y方向、+X方向と+Y方向に垂直な方向(紙面の手前方向)を+Z方向として説明する。また、マイクロ流路52、54、56を総称してマイクロ流路50と、閉空間62a~66bを総称して閉空間60とも記載する。
【0016】
マイクロデバイス10の第1基板20は、平板状の石英ガラス基板である。第1基板20は、
図2に示すように、第1主面20aと、第1主面20aと反対側の第2主面20bとを有する。第2基板30が第1基板20の第1主面20aに接合される。また、蛍光偏光免疫分析法における励起光ELが
図1に示す測定領域Sに照射され、励起光ELは第1基板20の第2主面20bに垂直に入射する。
【0017】
マイクロデバイス10の第2基板30は、自家蛍光の小さい材料から形成される。本実施形態では、第2基板30は、カーボンブラックを含むポリジメチルシロキサンとポリエチレングリコールとの共重合体から形成されている。本実施形態の第2基板30は、共重合体に含まれるポリエーテル基により、親水性を有している。
【0018】
第2基板30は、
図2に示すように、第1主面30aと、第1主面30aと反対側の第2主面30bとを有する。本実施形態では、第2基板30の第1主面30aが第1基板20の第1主面20aに接合されている。
【0019】
第2基板30の第1主面30aには、
図3に示すように、第1基板20(第1主面20a)と共にマイクロ流路50を形成する3つの溝部32、34、36が形成されている。また、溝部32、34、36のそれぞれの両端には、マイクロ流路50の導入口又は排出口に相当する貫通孔37が設けられている。さらに、第2基板30の第1主面30aには、第1基板20(第1主面20a)と共に閉空間60を形成する凹部42a、42b、44a、44b、46a、46bが形成されている。
【0020】
溝部32、34、36の中央部は、測定領域S内においてX方向に平行に延びる。溝部32は、XY平面において第2基板30の中央部に位置して、両端部もX方向に延びている。溝部34は、XY平面において+Y側に位置し、両端部が+Y側に折れ曲がっている。溝部36は、XY平面において-Y側に位置し、両端部が-Y側に折れ曲がっている。
【0021】
凹部42aと凹部42bは、対をなし、同形状を有する。また、凹部42aと凹部42bは、測定領域S内の溝部32、34、36を、溝部32、34、36の幅方向に挟んで対称に位置している。凹部44aと凹部44bは、対をなし、同形状を有する。凹部44aは溝部32の+X側の端部と溝部34の+X側の端部との間に位置し、凹部44bは、溝部32の+X側の端部と溝部36の+X側の端部との間に位置する。凹部44aと凹部44bは、溝部32を溝部32の幅方向に挟んで対称に位置している。凹部46aと凹部46bは、対をなし、同形状を有する。凹部46aは溝部32の-X側の端部と溝部34の-X側の端部との間に位置し、凹部44bは、溝部32の-X側の端部と溝部36の-X側の端部との間に位置する。凹部46aと凹部46bは、溝部32を溝部32の幅方向に挟んで対称に位置している。
【0022】
マイクロデバイス10のマイクロ流路52、54、56のそれぞれは、第1基板20(第1主面20a)と第2基板30の溝部32、34、36のそれぞれとから形成される。
図1に示すように、マイクロ流路52、54、56は、溝部32、34、36と同様に、測定領域S内においてX方向に平行に延びている。また、マイクロ流路54は両端部が+Y側に折れ曲がり、マイクロ流路56は両端部が-Y側に折れ曲がっている。測定領域S内におけるマイクロ流路50の幅(すなわち、Y方向の長さ)は、例えば、200μmである。測定対象溶液、検量線用溶液等が、貫通孔37を介して、マイクロ流路50に充填され又はマイクロ流路50から排出される。
【0023】
検量線用溶液は、蛍光偏光免疫分析における検量線(すなわち、偏光度と測定対象物質の濃度との検量線)の作成に用いられる。検量線用溶液は、互いに異なる予め設定された濃度の測定対象物質と、予め設定された濃度の抗体と、予め設定された濃度の蛍光標識誘導体とを含んでいる。測定対象溶液は、蛍光偏光免疫分析において測定対象となる溶液である。測定対象溶液は、濃度が未知の測定対象物質と、検量線用溶液と同濃度の抗体と蛍光標識誘導体とを含む。
【0024】
測定対象物質は、蛍光を用いた免疫分析法で検出可能な化合物であればよい。測定対象物質として、抗生物質、生理活性物質、カビ毒等が挙げられる。具体的な測定対象物質として、プロスタグランジンE2、β-ラクトグロブリン、クロラムフェニコール、デオキシニレバノール等が挙げられる。
【0025】
抗体は、抗原抗体反応により、測定対象物質と特異的に結合する。抗体は、例えば、測定対象物質を宿主動物(例えば、ねずみ、牛)に接種した後、宿主動物が産生した血液中の抗体を回収し精製することにより、得られる。また、抗体として、市販されている抗体も利用できる。
【0026】
蛍光標識誘導体は、測定対象物質を蛍光標識した誘導体である。蛍光標識誘導体は、抗原抗体反応により、抗体に測定対象物質と競合して特異的に結合する。蛍光標識誘導体は、公知の方法を用いて、測定対象物質に蛍光物質を結合することにより得られる。蛍光物質は、フルオレセイン、ローダミンβである。
【0027】
マイクロデバイス10の閉空間62a~66bのそれぞれは、第1基板20(第1主面20a)と第2基板30の凹部42a~46bのそれぞれとから形成される。
閉空間62aと閉空間62bは、
図1に示すように、同形状であり、測定領域S内のマイクロ流路50をマイクロ流路50の幅方向に挟んで対称に位置している。本実施形態では、閉空間62a、62bは減圧された状態にあり、閉空間62a、62bを形成する凹部42a、42bの底47は、
図2に示すように、大気圧により第1基板20側(-Z方向)に凹んでいる。
【0028】
本実施形態では、閉空間62a、62bが減圧されているので、凹部42a、42bの底47が大気圧により凹み、第2基板30は大気圧により第1基板20に押し付けられる。したがって、マイクロデバイス10では、第2基板30の吸着力と大気圧とによって、第2基板30が第1基板20に強固に接合される。第1基板20と第2基板30が、第2基板30の吸着力と大気圧とによって強固に接合されているので、マイクロデバイス10は、第1基板20と第2基板30の溝部32、34、34とから形成されるマイクロ流路50からの液漏れを抑制できる。また、閉空間62aと閉空間62bは、同形状で、マイクロ流路50を挟んで対称に位置しているので、第2基板30は第1基板20に均等に押し付けられる。
【0029】
閉空間64aと閉空間64bは、同形状であり、+X側でマイクロ流路52の幅方向に挟んで対称に位置している。また、閉空間66aと閉空間66b、同形状であり、-X側でマイクロ流路52の幅方向に挟んで対称に位置している。閉空間64a~66bも、閉空間62a、62bと同様に、減圧された状態にあり、凹部44a~46bの底47は大気圧により第1基板20側(-Z方向)に凹んでいる。したがって、閉空間64a~66bが減圧された状態であることにより、第2基板30は第1基板20に更に押し付けられ、マイクロデバイス10はマイクロ流路50からの液漏れを抑制できる。
【0030】
ここで、第1基板20と共に閉空間62aを形成する凹部42aの幅(Y方向の長さ)と凹部42aの底47の厚さについて、説明する。なお、閉空間62aと閉空間62bは、同形状であり、測定領域S内のマイクロ流路50をマイクロ流路50の幅方向に挟んで対称に位置しているので、閉空間62bを形成する凹部42bについても、凹部42aと同様である。
【0031】
図4に示すように、凹部42aの幅を2×Lと、凹部42aの底47の厚さをdと、溝部34の深さ(Z方向の長さ)をhとし、大気圧をPと、凹部42aの底47に掛かる張力をTと、第2基板30のヤング率をEと、底47の中間点Mにおける、底47の第1基板20の第1主面20aに対する角度をθとすると、中間点Mにおける力の釣り合いは下記の式(1)により表される。また、底47の撓みεは(1/cosθ)-1と表されるので、張力Tは下記の式(2)により表される。溝部34の深さhは下記の式(3)と表される。なお、凹部42aの底47と溝部34の側壁との接続点Nには、第1基板20の方向(-Z方向)にL×Pの力が掛かり、第2基板30が第1基板20に押し付けられる。
【0032】
【0033】
さらに、式(4)が式(1)と式(2)から得られ、式(5)が式(3)から得られる。底47の厚さdは、式(4)と式(5)から式(6)により表される。
【0034】
【0035】
大気圧Pを0.1013N/mm
2と、第2基板30のヤング率Eを2N/mm
2と、マイクロ流路50の深さhを0.9mmとすると、角度θと、底47の厚さdと凹部42aの幅の1/2であるLとの関係は、式(6)と式(5)から
図5のように表される。一般に、第2基板30の加工の容易さ、第2基板30の強度等の観点から、底47の厚さdは1mm以上3mm以下であることが好ましい。したがって、
図5に示すように、凹部42aの幅の1/2であるLは1.9mm以上2.5mm以下、すなわち、凹部42aの幅2×Lは3.8mm以上5.0mm以下であることが好ましい。
【0036】
次に、
図6と
図7を参照して、マイクロデバイス10の製造方法を説明する。
図6は、マイクロデバイス10の製造方法を示すフローチャートである。マイクロデバイス10の製造方法は、第1基板20を準備する準備工程(ステップS10)と、第2基板30を形成する形成工程(ステップS20)と、第1基板20と第2基板30とを接合して、マイクロ流路50と閉空間60とを形成する接合工程(ステップS30)と、形成された閉空間60内を減圧する減圧工程(ステップS40)とを含む。第2基板30は、第1基板20と共にマイクロ流路50を形成する溝部32、34、36を有する。また、第2基板30は、測定領域S内の溝部32、34、36を挟んで対称に位置し第1基板20と共に閉空間62a、62bを形成する凹部42a、42bと、溝部32の+X側の端部を挟んで対称に位置し第1基板20と共に閉空間64a、64bを形成する凹部44a、44bと、溝部32の-X側の端部を挟んで対称に位置し第1基板20と共に閉空間66a、66bを形成する凹部46a、46bとを有している。
【0037】
ステップS10では、第1基板20を準備する。本実施形態では、第1基板20は平板状の石英ガラス基板である。
【0038】
ステップS20では、まず、カーボンブラックとポリジメチルシロキサン樹脂とポリエチレングリコ-ルと硬化剤とを含む、樹脂混合物を準備する。次に、
図7に示すように、第2基板30の形状に対応した鋳型82を型枠84内に配置する。そして、型枠84内に、準備された樹脂混合物を流し込み、型枠84内に流し込んだ樹脂混合物を硬化させる。硬化した樹脂混合物を鋳型82と型枠84から剥離した後、治具を用いて、硬化した樹脂混合物の所定の位置に貫通孔37を設ける。以上により、第1主面30aに溝部32、34、36と凹部42a~46bとを有し、貫通孔37が設けられた第2基板30が形成される。なお、鋳型82は、シリコン基板をフォトリソグラフィー加工することにより、作製される。
【0039】
図6に戻り、ステップS30では、第1基板20を第2基板30の第1主面30aの上に配置した後、第1基板20を第2基板に押圧する。これにより、第1基板20と第2基板30が第2基板30の吸着力により接合され、マイクロ流路50と閉空間60が形成される。
【0040】
ステップS40では、まず、接合された第1基板20と第2基板30を、真空容器内に設置し、真空容器内を脱気し減圧する。これにより、第1基板20と第2基板30との間の僅かな隙間から閉空間60内の空気も脱気され、閉空間60内も減圧される。次に、真空容器内を常圧に戻し、接合された第1基板20と第2基板30を取り出す。真空容器内を常圧に戻した場合、空気は減圧された閉空間60内に流入し難いため、減圧されている閉空間60を第1基板20と共に形成している凹部42a~46bの底47が大気圧により凹み、第2基板30は大気圧により第1基板20に押し付けられる。したがって、マイクロデバイス10では、第2基板30の吸着力と大気圧とによって、第1基板20と第2基板30が強固に接合される。以上により、マイクロデバイス10を作製できる。
【0041】
次に、マイクロデバイス10の使用方法を説明する。マイクロデバイス10は、例えば、測定対象物質の免疫分析(測定対象物質の検出)に用いられる。
【0042】
測定対象物質の免疫分析では、まず、3つの測定対象溶液のそれぞれを、マイクロピペットを用いて、マイクロデバイス10のマイクロ流路52、54、56のそれぞれに充填する。マイクロデバイス10では、第2基板30の吸着力と大気圧とによって、第1基板20と第2基板30が強固に接合されているので、マイクロ流路50からの測定対象溶液の液漏れを抑制できる。なお、3つ測定対象溶液のそれぞれは、濃度が未知の測定対象物質と、抗体と蛍光標識誘導体とを含んでいる。
【0043】
次に、測定対象溶液を充填されたマイクロデバイス10を、蛍光の偏光度を測定する装置(蛍光偏光度測定装置)にセットして、測定対象溶液から出射される蛍光の偏光度を測定する。測定された偏光度と予め作成されている検量線から、測定対象溶液含まれる測定対象物質の濃度を求めることができる。
【0044】
以上のように、マイクロデバイス10では、閉空間60が減圧されているので、第2基板30の吸着力と大気圧とによって、第1基板20と第2基板30が強固に接合され、マイクロ流路50からの液漏れを抑制できる。また、閉空間60がマイクロ流路50の幅方向に対称に位置しているので、第1基板20と第2基板30とを均一に接合できる。
【0045】
<実施形態2>
マイクロデバイス10は真空包装(真空パック)されてもよい。本実施形態のマイクロデバイス10Aは、
図8に示すように、実施形態1のマイクロデバイス10と包装体90とを備える。本実施形態では、実施形態1のマイクロデバイス10(すなわち、接合され閉空間60内を減圧された状態の第1基板20と第2基板30)が包装体90により、真空包装されている。ここでは、包装体90とマイクロデバイス10Aの製造方法について説明する。
【0046】
包装体90は、内部を減圧された状態で、実施形態1のマイクロデバイス10を収容し、実施形態1のマイクロデバイス10を密封する。包装体90は、例えば、最外層をナイロンから形成され、最内層をポリエチレンから形成された真空袋である。
【0047】
図9は、マイクロデバイス10Aの製造方法を示すフローチャートである。マイクロデバイス10Aの製造方法は、第1基板20を準備する準備工程(ステップS10)と、第2基板30を形成する形成工程(ステップS20)と、第1基板20と第2基板30とを接合して、マイクロ流路50と閉空間60とを形成する接合工程(ステップS30)と、形成された閉空間60の内を減圧する減圧工程(ステップS40)と、接合され閉空間60を減圧された状態の第1基板20と第2基板30を真空包装する包装工程(ステップS50)と、を含む。準備工程(ステップS10)~減圧工程(ステップS40)は実施形態1と同様であるので、ここでは、包装工程(ステップS50)を説明する。
【0048】
ステップS50では、まず、三辺がシールされた包装体90内に、接合され閉空間60を減圧された状態の第1基板20と第2基板30(すなわち実施形態1のマイクロデバイス10)を収容し、包装体90内を開口している一辺から減圧する。減圧が終了した後、開口している辺を熱シールにより封止して、接合され閉空間60を減圧された状態の第1基板20と第2基板30を密封する。以上により、マイクロデバイス10Aを製造できる。
【0049】
本実施形態では、接合され閉空間60を減圧された状態の第1基板20と第2基板30が真空包装されているので、閉空間60の減圧状態を長期間維持することができ、マイクロデバイス10を長期間保存できる。また、包装体90を開封するだけで、速やかに、マイクロデバイス10を使用できる。
【0050】
<変形例>
以上、実施形態を説明したが、本開示は、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
第1基板20を構成する材料は石英に限られない。第1基板20は、自家蛍光の小さいガラス(石英ガラスを含む)、合成樹脂等から形成されてもよい。また、第2基板30は、親水性を有さず、カーボンブラックを含むポリジメチルシロキサンから形成されてもよい。さらに、第2基板30は、ポリジメチルシロキサン以外の合成樹脂から形成されてもよい。
【0052】
実施形態1の第2基板30は、第2基板30を構成する共重合体のポリエーテル基により親水性を有している。第2基板30は、カーボンブラックを含むポリジメチルシロキサンから形成された後に、表面を親水処理することにより、親水性を付与されてもよい。
【0053】
実施形態1では、マイクロデバイス10は3つのマイクロ流路52、54、56を備え、第2基板30は3つの溝部32、34、36を備えるが、マイクロ流路と溝部の数は3つに限られない。マイクロデバイス10は少なくとも1つのマイクロ流路を備えればよく、第2基板30は少なくとも1つの溝部を備えればよい。
【0054】
また、マイクロデバイス10は、測定領域S内のマイクロ流路52、54、56を挟んで対称に配置された1組の閉空間62a、62bを備えればよい。第2基板30は、測定領域S内の溝部32、34、36を挟んで対称に配置された凹部42a、42bを備えればよい。
【0055】
実施形態1では、閉空間62aと閉空間62b(凹部42aと凹部42b)は、測定領域S内のマイクロ流路50(溝部32、34、36)を、マイクロ流路50(溝部32、34、36)の幅方向に挟んで対称に位置している。閉空間62aと閉空間62b(凹部42aと凹部42b)は、マイクロ流路50(溝部32、34、36)を、マイクロ流路50(溝部32、34、36)の幅方向に挟めばよく、閉空間62aと閉空間62b(凹部42aと凹部42b)は、対称に配置されなくともよい。また、閉空間64aと閉空間64b(凹部44aと凹部44b)と、閉空間66aと閉空間66b(凹部46aと凹部46b)についても、対称に配置されなくともよい。すなわち、閉空間60(凹部42a~凹部46b)は対称に配置されていなくともよい。
【0056】
さらに、閉空間62aと閉空間62b(凹部42aと凹部42b)は同形状に限られない。閉空間64aと閉空間64b(凹部44aと凹部44b)と、閉空間66aと閉空間66b(凹部46aと凹部46b)についても、同形状に限られない。
【0057】
実施形態1では、マイクロデバイス10の閉空間60は減圧されているが、閉空間60は減圧されていなくともよい。この場合、マイクロデバイス10の閉空間60は、溶液がマイクロ流路50に充填される前に、減圧される。
【0058】
マイクロデバイス10は、蛍光偏光免疫分析に限らず、他の用途に用いられてもよい。
【0059】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10,10A マイクロデバイス、20 第1基板、20a 第1主面、20b 第2主面、30 第2基板、30a 第1主面、30b 第2主面、32,34,36 溝部、37 貫通孔、42a,42b,44a,44b,46a,46b 凹部、47 凹部の底、50,52,54,56 マイクロ流路、60,62a,62b,64a,64b,66a,66b 閉空間、82 鋳型、84 型枠、90 包装体、EL 励起光、d 凹部の底の厚さ、E ヤング率、h 溝部の深さ、L 凹部の幅の1/2、M 凹部の底の中間点、N 凹部の底と溝部の側壁との接続点、P 大気圧、S 測定領域、T 張力、ε 撓み、θ 凹部の底の第1基板20の第1主面に対する角度