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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025772
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 6/18 20060101AFI20230216BHJP
   B65D 6/26 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
B65D6/18 C
B65D6/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131104
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】隅田 晃雄
【テーマコード(参考)】
3E061
【Fターム(参考)】
3E061AA02
3E061AB12
3E061AD08
3E061CA02
3E061CA12
3E061CA25
3E061DA05
3E061DB11
3E061DB17
(57)【要約】
【課題】折畳側壁の起立状態を保持しやすくすることが求められている。
【解決手段】本開示の容器10は、長側壁40が上下方向の中間部で上長側壁45と下長側壁55とに2分割されている。下長側壁55は、パレット11の長辺土手部16に回動可能かつ上下動可能に連結されている。下長側壁55には、組立状態において短側壁20の下側係合凹部35に凹凸係合する第1サイド突部60が設けられている。第1サイド突部60と下側係合凹部35とが凹凸係合すると、下長側壁55の回動が規制される。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱形の容器の少なくとも1つの側壁が底部に対して回動する折畳側壁となっていて、前記折畳側壁の一部が折畳側壁本体に対して下端部を中心に回動して側面開口を開閉する回動壁となった容器であって、
前記折畳側壁本体は、起立姿勢で上下に移動可能に支持され、
前記折畳側壁本体が上方に移動されない限り前記折畳側壁本体の回動を規制する本体規制部を備える容器。
【請求項2】
前記折畳側壁は、上下方向の中間部で前記回動壁としての上側壁と前記折畳側壁本体としての下側壁とに分割されている請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記上側壁又はその両側の1対の側壁に設けられ、操作により、前記上側壁を前記1対の側壁に対して上下に移動不能かつ回動不能にロックするロック状態と、そのロックを解除するアンロック状態とに切り替えられるロック部材を備える請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記上側壁は、起立姿勢で前記下側壁に対して上下に移動可能に支持され、
前記上側壁と前記下側壁とが共に上下の可動範囲の下端位置に配置されているときに前記上側壁の回動を規制する上側規制部を備える請求項2又は3に記載の容器。
【請求項5】
前記本体規制部は、前記折畳側壁本体と、その隣の前記側壁又は前記底部との一方に配された係合突部と、他方に配され、前記係合突部を受容可能な係合凹部と、を備え、
前記係合凹部は、
前記折畳側壁本体を上下の可動範囲の上端位置で内側に倒したときに前記係合突部が通過可能な開口と、
前記折畳側壁本体を上下の可動範囲の下端位置で外側に倒そうとすると前記係合突部と干渉する外側回動規制部と、を備え、
前記外側回動規制部は、前記折畳側壁本体の上下の可動範囲の全体で前記係合突部に干渉する請求項1から4の何れか1の請求項に記載の容器。
【請求項6】
前記本体規制部は、前記折畳側壁本体と、その隣の前記側壁又は前記底部との一方に配された係合突部と、他方に配され、前記係合突部を受容可能な係合凹部と、を備え、
前記係合凹部は、
前記折畳側壁本体を上下の可動範囲の上端位置で内側に倒したときに前記係合突部が通過可能な開口と、
前記折畳側壁本体を上下の可動範囲の下端位置で外側に倒そうとすると前記係合突部と干渉する外側回動規制部と、
前記折畳側壁本体を上下の可動範囲の下端位置で内側に倒そうとすると前記係合突部と干渉する内側回動規制部と、を備える請求項1から5の何れか1の請求項に記載の容器。
【請求項7】
前記折畳側壁本体と、その隣の前記側壁又は前記底部と、に配され、上下方向で互いに当接して、前記折畳側壁本体の上下の可動範囲の上端位置を定める上動規制部を、前記折畳側壁本体と前記底部とを連結するヒンジ部とは別に備える請求項1から6の何れか1の請求項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、箱形の容器の少なくとも1つの側壁が底部に対して回動する折畳側壁となった容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の容器として、前記折畳側壁の一部が折畳側壁本体に対して下端部を中心に回動して側面開口を開閉する回動壁となったものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-171315号公報(図22等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の容器においては、折畳側壁の起立状態を保持しやすくすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、箱形の容器の少なくとも1つの側壁が底部に対して回動する折畳側壁となっていて、前記折畳側壁の一部が折畳側壁本体に対して下端部を中心に回動して側面開口を開閉する回動壁となった容器であって、前記折畳側壁本体は、起立姿勢で上下に移動可能に支持され、前記折畳側壁本体が上方に移動されない限り前記折畳側壁本体の回動を規制する本体規制部を備える容器である。
【0006】
請求項2の発明は、前記折畳側壁は、上下方向の中間部で前記回動壁としての上側壁と前記折畳側壁本体としての下側壁とに分割されている請求項1に記載の容器である。
【0007】
請求項3の発明は、前記上側壁又はその両側の1対の側壁に設けられ、操作により、前記上側壁を前記1対の側壁に対して上下に移動不能かつ回動不能にロックするロック状態と、そのロックを解除するアンロック状態とに切り替えられるロック部材を備える請求項2に記載の容器である。
【0008】
請求項4の発明は、前記上側壁は、起立姿勢で前記下側壁に対して上下に移動可能に支持され、前記上側壁と前記下側壁とが共に上下の可動範囲の下端位置に配置されているときに前記上側壁の回動を規制する上側規制部を備える請求項2又は3に記載の容器である。
【0009】
請求項5の発明は、前記本体規制部は、前記折畳側壁本体と、その隣の前記側壁又は前記底部との一方に配された係合突部と、他方に配され、前記係合突部を受容可能な係合凹部と、を備え、前記係合凹部は、前記折畳側壁本体を上下の可動範囲の上端位置で内側に倒したときに前記係合突部が通過可能な開口と、前記折畳側壁本体を上下の可動範囲の下端位置で外側に倒そうとすると前記係合突部と干渉する外側回動規制部と、を備え、前記外側回動規制部は、前記折畳側壁本体の上下の可動範囲の全体で前記係合突部に干渉する請求項1から4の何れか1の請求項に記載の容器である。
【0010】
請求項6の発明は、前記本体規制部は、前記折畳側壁本体と、その隣の前記側壁又は前記底部との一方に配された係合突部と、他方に配され、前記係合突部を受容可能な係合凹部と、を備え、前記係合凹部は、前記折畳側壁本体を上下の可動範囲の上端位置で内側に倒したときに前記係合突部が通過可能な開口と、前記折畳側壁本体を上下の可動範囲の下端位置で外側に倒そうとすると前記係合突部と干渉する外側回動規制部と、前記折畳側壁本体を上下の可動範囲の下端位置で内側に倒そうとすると前記係合突部と干渉する内側回動規制部と、を備える請求項1から5の何れか1の請求項に記載の容器である。
【0011】
請求項7の発明は、前記折畳側壁本体と、その隣の前記側壁又は前記底部と、に配され、上下方向で互いに当接して、前記折畳側壁本体の上下の可動範囲の上端位置を定める上動規制部を、前記折畳側壁本体と前記底部とを連結するヒンジ部とは別に備える請求項1から6の何れか1の請求項に記載の容器である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の容器では、折畳側壁本体が上方に移動されない限り、本体規制部により、折畳側壁本体の回動が規制されるので、折畳側壁が意図せず倒れることが防がれ、折畳側壁の起立状態が保持されやすくなる。
【0013】
折畳側壁は、例えば、左右方向の中央部等に回動壁を有する構成であってもよいし、請求項2のように、上下方向の中間部で回動壁としての上側壁と折畳側壁本体としての下側壁とに分割されている構成であってもよい。
【0014】
請求項3の容器では、ロック部材により上側壁が1対の側壁に対して上下に移動不能かつ回動不能にロックされると、下側壁も上下に移動不能になる。そして、下側壁は、上方に移動されない限り回動が規制されるので、上側壁をロックするだけで下側壁もロックされることとなる。
【0015】
請求項4の容器では、上側壁と下側壁とが共に上下の可動範囲の下端位置に配置されているときに上側壁の回動が規制されるので、折畳側壁の起立状態が保持されやすくなる。
【0016】
請求項5の容器では、折畳側壁本体が外側に回動することが規制される。
【0017】
請求項6の容器では、係合凹部に、折畳側壁本体の外側への回動を規制する機能と折畳側壁本体の内側への回動を規制する機能とが集約されるので、他の部分の設計の自由度が増す。
【0018】
請求項7の容器では、互いに当接して、折畳側壁本体の上下の可動範囲の上端位置を定める上動規制部がヒンジ部とは別に設けられているので、ヒンジ部に過度な負荷がかかることが防がれ、ヒンジ部の破損が防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の容器の斜視図
図2】折畳状態の容器の斜視図
図3】パレットの部分拡大図
図4】容器の部分拡大図
図5】容器の部分拡大図
図6】短側壁のサイド突部近傍の拡大図
図7】容器の斜視図
図8】短側壁のサイド突部近傍の拡大図
図9】長側壁の側部の拡大図
図10】長側壁の側部の拡大図
図11】容器のヒンジ部材近傍の側断面図
図12】容器のヒンジ部材近傍の側断面図
図13】ヒンジ突起と係合凹部近傍の側断面図
図14】ヒンジ突起と係合凹部近傍の側断面図
図15】側面開口が開放した状態の容器の斜視図
図16】ロック部材近傍の容器の斜視図
図17】短側壁のサイド突部近傍の側断面図
図18】短側壁のサイド突部近傍の側断面図
図19】短側壁のサイド突部近傍の側断面図
図20】ロック部材近傍の容器の平断面図
図21】ロック部材近傍の容器の平断面図
図22】短側壁のサイド突部近傍の側断面図
図23】短側壁のサイド突部近傍の断面斜視図
図24】変形例に係る長側壁の正面図
図25】変形例に係る短側壁のサイド突部近傍の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1図23を参照して本開示の容器10について説明する。図1に示される容器10は、所謂、「折り畳み式のボックスパレット」であって、パレット11(特許請求の範囲中の「底部」に相当する)の上縁部に1対の短側壁20と1対の長側壁40(特許請求の範囲中の「折畳側壁」に相当する)とを回動可能に組み付けてなり、短側壁20及び長側壁40が起立した組立状態(図1参照)と、パレット11上に短側壁20及び長側壁40が重ねられた折畳状態(図2参照)とに変更可能である。なお、容器10を構成するパレット11、短側壁20及び長側壁40等は、何れも、樹脂の射出成形品になっている。
【0021】
以下、1対の短側壁20が対向する方向を「第1水平方向H1」とし、1対の長側壁40が対向する方向を「第2水平方向H2」という。また、各部位の説明においては、特記しない限り組立状態の上下方向が各部位における上下方向であるものとして説明する。
【0022】
図1に示すように、パレット11は、平面形状が長方形の底板部12の下面四隅から桁部13が突出した構造をなし、それら桁部13によって底板部12の下方にフォークリフトのフォークが挿入される空間が形成される。底板部12は、縦横に延びる溝形状の複数の横梁12Aと縦梁12Bとを交差させた格子構造をなしている。
【0023】
図1及び図3に示すように、底板部12の上面における1対の長辺側の外縁部からは、1対の長辺土手部16が突出し、1対の短辺側の外縁部からは、1対の短辺土手部17が突出している。短辺土手部17は、全体に亘って均一な高さをなしている。長辺土手部16は、両側縁部に、短辺土手部17から面一に延びた側縁突出部16Aを有し、その間は、短辺土手部17の1/4~1/5程の高さになっている。短辺土手部17及び長辺土手部16の詳細構造は、短側壁20及び長側壁40と併せて後に詳説する。
【0024】
図4及び図5に示すように、短側壁20は、格子状に連結した複数の縦リブ21及び横リブ22と、縦リブ21及び横リブ22から生じる角状セル内を連絡する補強壁23と、を有する。なお、補強壁23には貫通孔23Aが形成されている。
【0025】
短側壁20の下面(最下端の横リブ22)からは、1対のヒンジアーム24が垂下されている。1対のヒンジアーム24は、短側壁20の横方向の両端部寄り位置に配されていて、下端部に側方に延びたヒンジ突起24Bを備えている(図6参照。図6では、一方のヒンジ突起24Bのみが示されている)。これらヒンジアーム24に対応して、図3及び図5に示すようにパレット11の短辺土手部17にはアーム受容部17Aが形成されている。アーム受容部17Aは、短辺土手部17の内面と上面とに開放した溝状をなし、ヒンジアーム24を受容している。そして、短側壁20は、ヒンジ突起24Bを中心にして回動して、短辺土手部17上に起立した起立姿勢(図7参照)と、そこから内側に略90度回転した折畳姿勢(図2参照)とに変更される。
【0026】
図7に示すように、短側壁20は、両側部に、長側壁40に向かって突出した縦長ブロック状のサイド突部30を有している。図8に示すように、サイド突部30には、上端部に、上側係合凹部31(特許請求の範囲中の「上側規制部」に相当する)が形成され、下端部に、下側係合凹部35(特許請求の範囲中の「本体規制部」、「係合凹部」に相当する)が形成され、中間部に、ロック係合凹部38が形成されている。
【0027】
図6及び図8に示すように、上側係合凹部31は、サイド突部30の上端角部を切り欠いてなり、水平方向に延びた底面31Aと、底面31Aにおける第2水平方向H2の内側端部から上方に突出した上側内倒規制部32と、底面31Aにおける第1水平方向H1の内側端部から上方に突出した上側外倒規制部33と、を有している。上側内倒規制部32は、第1水平方向H1の内側端部まで延びていて、上側外倒規制部33は、上側内倒規制部32より第1水平方向H1の外側に配されている。また、上側外倒規制部33は、上側内倒規制部32よりも底面31Aからの突出量が大きく、上側内倒規制部32と上側外倒規制部33との間には段差部31Dが生じている。
【0028】
図8に示すように、下側係合凹部35は、サイド突部30における第1水平方向H1の内側側面と第2水平方向H2の内側側面とに開放した四角柱状の凹部である。下側係合凹部35は、水平方向に延びた底面35Aと、第2水平方向H2の外側で凹部の一面を構成する外側壁35B(特許請求の範囲中の「外側回動規制部」に相当する)と、底面35Aにおける第2水平方向H2の内側端部から上方に突出した下側内倒規制部36(特許請求の範囲中の「内側回動規制部」に相当する)と、を有する。また、ロック係合凹部38は、サイド突部30における第1水平方向H1の内側側面に開放し、縦長に延びている。
【0029】
図1及び図7に示すように、各長側壁40は、上下方向の中間部で上長側壁45(特許請求の範囲中の「回動壁」、「上側壁」に相当する)と下長側壁55(特許請求の範囲中の「折畳側壁本体」、「下側壁」に相当する)とに2分割されている。これら上長側壁45と下長側壁55とは、短側壁20と同様に、格子状に連結した複数の縦リブ45A,55A及び横リブ45B,55Bと、縦リブ45A,55A及び横リブ45B,55Bから生じる角状セル内を連絡する補強壁45C,55Cと、を有する。なお、補強壁45C,55Cには貫通孔が形成されている。
【0030】
上長側壁45と下長側壁55とは、複数のヒンジ部材41により連結されている。詳細には、図9及び図10に示すように、上長側壁45の下端部には、内側面、外側面及び下面に開放したヒンジ凹部46が形成されている。上長側壁45のヒンジ凹部46には、第1水平方向H1で対向する対向面に、1対のヒンジピン46Pが突出形成されている。
【0031】
また、下長側壁55の上端部には、上長側壁45のヒンジ凹部46と対応する位置に、内側面、外側面及び上面に開放したヒンジ凹部56が形成されている。下長側壁55のヒンジ凹部56は、第1水平方向H1で対向する対向面に、上下方向に延びた係合溝56Mを有する。係合溝56Mの上端部には、1対の突片56Tが備えられている(図11参照)。
【0032】
ヒンジ部材41は、上下方向に延びた略直方体状の本体部41Hを備え、その本体部41Hの両側面における上端部から1対のヒンジスリーブ42が突出すると共に、下端部から1対のヒンジピン43が突出した構造をなしている。ヒンジスリーブ42は、円筒体の周方向の一部を切除して第2水平方向H2の内側へ向かって開放した側面開口42Aを備えている。
【0033】
そして、図10及び図11に示すように、上長側壁45のヒンジ凹部46のヒンジピン46Pがヒンジスリーブ42内に受容されて、ヒンジ部材41の上端部が上長側壁45の下端部に回動可能に連結されている。また、ヒンジ部材41のヒンジピン43が、下長側壁55のヒンジ凹部56の係合溝56Mに受容され、ヒンジ部材41の下端部が下長側壁55の上端部に回動可能に連結されている。係合溝56Mの上下方向の長さは、ヒンジピン43の幅より大きくなっていて、ヒンジピン43が係合溝56M内を上下に移動可能になっている。なお、ヒンジ部材41のヒンジピン43は、係合溝56Mの1対の突片56Tにより抜け止めされている。
【0034】
これにより、上長側壁45は、下長側壁55に対して回動可能かつ上下動可能になっている。図11に示すように、下長側壁55の上に上長側壁45が当接する位置では、ヒンジピン43は、係合溝56M内の下端寄り位置に配される。このときの上長側壁45の位置が、可動範囲の下端位置である。そして、図12に示すように、ヒンジピン43が係合溝56Mの突片56Tに当接する位置まで、上長側壁45を下長側壁55に対して上方へ移動させることが可能となっている。このときの上長側壁45の位置が、可動範囲の上端位置である。
【0035】
また、図9及び図10に示すように、下長側壁55の内側面の上縁部には、上方へ突出し、第2水平方向H2の内側から上長側壁45に対向する干渉部55Kが複数設けられていて、上長側壁45が起立姿勢の下長側壁55に対して内側へ回動することが規制される。
【0036】
図7に示すように、下長側壁55は、パレット11の長辺土手部16にヒンジ連結されている。詳細には、図9及び図10に示すように、下長側壁55の下面からは、短側壁20と同様に、複数のヒンジアーム57が垂下され、各下ヒンジアーム57の下端部から側方に突出したヒンジ突起57B(特許請求の範囲中の「ヒンジ部」に相当する)が、パレット11の長辺土手部16に形成されているアーム受容部16Uの係合凹部16M(図5参照)に係合している。係合凹部16Mには、ヒンジ突起57Bを抜け止めするための1対の突部16Tが設けられている(図13参照)。そして、下長側壁55が、ヒンジ突起57Bを中心にして回動し、長側壁40が、長辺土手部16上に起立した起立姿勢(図1参照)と、そこから内側に略90度回転した折畳姿勢(図2参照)とに変更される。なお、図7に示すように、長側壁40全体を内側に倒す過程で、上長側壁45を外側に折り曲げ、長側壁40を2つ折りにしてパレット11上に寝かせることもできる。
【0037】
本実施形態では、ヒンジ部材41のヒンジピン43及び下長側壁55の係合溝56Mと同様、長辺土手部16の係合凹部16Mの下端から突部16Tまでの上下方向の長さが下長側壁55のヒンジ突起57Bの幅より大きく、ヒンジ突起57Bが係合凹部16M内を上下に移動可能になっている。これにより、下長側壁55は、パレット11の長辺土手部16に回動可能かつ上下動可能に連結されている。図13に示すように、長辺土手部16の上に下長側壁55が当接する位置では、ヒンジ突起57Bは、係合凹部16M内の下端寄り位置に配される。このときの下長側壁55の位置が、可動範囲の下端位置である。そして、図14に示すように、ヒンジ突起57Bが係合凹部16Mの突部16Tに近接する位置まで、下長側壁55を長辺土手部16に対して上方へ移動させることが可能となっている。このときの下長側壁55の位置が、可動範囲の上端位置である。
【0038】
上述した長側壁40の構成により、図15に示すように、容器10は、長側壁40のうち上長側壁45のみを外側へ回動させることで、長側壁40の上部を側面開口40Kとして開放させることができる。
【0039】
次に、長側壁40と短側壁20との連結のための機構について説明する。図9及び図10に示すように、長側壁40のうち上長側壁45には、横方向の両側面の上端から張り出したサイド突部48(特許請求の範囲中の「上側規制部」に相当する)が設けられている。サイド突部48は、ブロック状の本体部48Aと、本体部48Aの下面のうち第1水平方向H1の外縁部から垂下した第1係合部48Bと、本体部48の下面のうち第2水平方向H2の内縁部から垂下した第2係合部48Cと、を有している。第2係合部48Cは第1係合部48Bよりも本体部48Aの下面からの突出量が小さくなっている。また、本体部48Aの角部の下面は第2係合部48Cの下面と略同じ高さに配されていて(本体部48Aの角部も第2係合部48Cとする)、その角部と第1係合部48Bとの間に段差部48Dが形成されている。
【0040】
図16に示すように、サイド突部48は、短側壁20におけるサイド突部30の上側係合凹部31に受容されて凹凸係合する。このとき、上側係合凹部31の上側内倒規制部32(図6参照)が、サイド突部48の第1係合部48B(詳細には段差部48D)に第2水平方向H2の内側から当接又は対向し、上長側壁45が内側へ回動することが規制されるとともに、図17に示すように、上側係合凹部31の上側外倒規制部33(詳細には段差部31D)が、サイド突部48の第2係合部48Cに第2水平方向H2の外側から当接又は対向し、上長側壁45が外側へ回動することが規制される。
【0041】
そして、図18及び図19に示すように、上長側壁45が下長側壁55に対する上下の可動範囲の上端位置に配されると、サイド突部48における第2係合部48Cと上側係合凹部31の上側外倒規制部33との係合が解除され、上長側壁45が外側へ回動可能となる。本実施形態では、上長側壁45が下長側壁55に対する上下の可動範囲の上端位置に配されていれば、下長側壁55の位置に関係なく(図18には下長側壁55が下端位置に配されている状態が示され、図19には下長側壁55が上端位置に配されている状態が示されている)、上長側壁45の第2係合部48Cと短側壁20の上側外倒規制部33との係合が解除される。なお、上長側壁45が下長側壁55に対する上下の可動範囲の下端位置に配され、下長側壁55が上下の可動範囲の上端位置に配されている場合に、上長側壁45の第2係合部48Cと短側壁20の上側外倒規制部33との係合が解除されなくてもよいし、解除されてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、サイド突部48の第1係合部48Bと上側係合凹部31の上側内倒規制部32との係合は、下長側壁55が上下の可動範囲の下端位置に配されたままのときには解除されず(図17及び図18参照)、下長側壁55が上方へ向かう途中で解除される構成となっている。なお、上長側壁45が上下の可動範囲の上端位置に配されたときに、下長側壁55の位置に関係なく解除される構成であってもよい。
【0043】
また、図16に示すように、上長側壁45のサイド突部48が短側壁20の上側係合凹部31に凹凸係合した状態では、サイド突部48の本体部48Aが上側係合凹部31の内側面に内側から当接又は対向して短側壁20が内側へ回動することが規制されると共に、サイド突部48における第1係合部48Bが、上側係合凹部31の上側外倒規制部33に第1水平方向H1の外側から当接又は対向し、短側壁20が外側へ回動することが規制される。
【0044】
図1に示すように、上長側壁45の横方向の両端部には、上長側壁45を短側壁20に対して固定するロック部材70が備えられている。図16及び図20に示すように、ロック部材70は、横長の矩形部71から短側壁20のサイド突部30側へ突出した係合突部72を備え、上長側壁45の横方向の端部の上部に設けられた収納部屋50に、横方向にスライド可能に支持されている。そして、上下方向と交差する方向(第1水平方向H1)に操作されて、ロック部材70が収納部屋50の第1水平方向H1の外側であるロック位置に配されると、ロック部材70の係合突部72が短側壁20のロック係合凹部38に受容され、上長側壁45が短側壁20に対して移動不能となる(このとき、上長側壁45の上方への移動が規制されるので、下長側壁55も上方への移動が規制される。また、上長側壁45及び下長側壁55の回動も規制される)。一方、図21に示すように、ロック部材70が収納部屋50の第1水平方向H1の内側であるアンロック位置に配されると、ロック部材70の係合突部72が短側壁20のロック係合凹部38から退避し、上長側壁45が短側壁20に対して移動可能となる。
【0045】
図9及び図10に示すように、長側壁40における下長側壁55のうち、横方向の両側面には、上端部から側方へ突出した第1サイド突部60(特許請求の範囲中の「本体規制部」、「係合突部」に相当する)と、上下方向の中間位置から側方へ突出した第2サイド突部65(特許請求の範囲中の「上動規制部」に相当する)と、が形成されている。第1サイド突部60は、第1水平方向H1から見て四角形状の本体部61と、本体部61の第2水平方向H2の外縁部から下方へ突出した下突出部62と、を有している。また、第2サイド突部65は角柱状をなしている。
【0046】
図4及び図17に示すように、容器10が組立状態になると、第2サイド突部65は、長辺土手部16の側縁突出部16Aに形成された受容凹部16B(特許請求の範囲中の「上動規制部」に相当する)に受容される。受容凹部16Bは、側縁突出部16Aを第1水平方向H1の内側面から切り欠くように形成され、側縁突出部16Aにおける第1水平方向H1の内側面と、第2水平方向H2の両側面とに開口している。受容凹部16Bの上下方向の長さは、第2サイド突部65の上下方向の長さよりも大きく、第2サイド突部65は受容凹部16B内を上下動可能になっている。
【0047】
図17に示すように、下長側壁55が可動範囲の下端位置にあるときは、第2サイド突部65は、受容凹部16Bの上下方向の中間位置に配される。そして、図19に示すように、下長側壁55が長辺土手部16に対して上方へ移動すると、第2サイド突部65が受容凹部16Bの上側内面に当接する。これにより、下長側壁55の可動範囲の上端位置が位置決めされる。なお、ヒンジアーム57のヒンジ突起57B(図14参照)が係合凹部16Mの突部16Tに当接するよりも先に又は当接すると同時に、第2サイド突部65が受容凹部16Bの上側内面に当接し、ヒンジ突起57Bに過度な負荷がかからないようになっている。
【0048】
また、図4及び図17に示すように、容器10が組立状態になると、第1サイド突部60は、短側壁20におけるサイド突部30の下側係合凹部35に受容されて凹凸係合する。下側係合凹部35の上下方向の長さは、第1サイド突部60の上下方向の長さよりも大きくなっていて、第1サイド突部60は下側係合凹部35内を上下動可能になっている。
【0049】
図17に示すように、下長側壁55が可動範囲の下端位置にあるときは、第1サイド突部60の下突出部62が下側係合凹部35の外側壁35Bと下側内倒規制部36との間に受容される。この状態では、下側内倒規制部36が第1サイド突部60の下突出部62に第2水平方向H2の内側から対向又は当接し、下長側壁55が内側へ回動することが規制される。
【0050】
そして、図19に示すように、下長側壁55が可動範囲の上端位置に配されると、第1サイド突部60の下突出部62と下側係合凹部35の下側内倒規制部36との係合が解除され、下長側壁55が内側へ回動することが許容される。下長側壁55が内側へ回動すると、第1サイド突部60は、下側係合凹部35の第2水平方向H2の内側の開口35Kを通過する(図22及び図23参照)。また、図22及び図23に示すように、上長側壁45が下長側壁55に対する可動範囲の上端位置に配されていると、上長側壁45は、下長側壁55と共に内側へ回動する。なお、下長側壁55が可動範囲の上端位置に配された状態では、第1サイド突部60は下側係合凹部35の上側内面に当接しない(図19参照)。
【0051】
また、図17及び図19に示すように、本実施形態では、下長側壁55の上下の可動範囲の全体で、下側係合凹部35の外側壁35Bが第1サイド突部60に第2水平方向H2の外側から対向又は当接するので、下長側壁55が外側へ回動することが規制される。
【0052】
本実施形態の容器10の構成に関する説明は以上である。次に、この容器10の作用効果について説明する。本実施形態の容器10は、図1に示した組立状態にして、上長側壁45の全てのロック部材70をロック位置に配置すると、短側壁20と長側壁40とが、互いに結合した状態に固定される。
【0053】
このとき、上長側壁45のサイド突部48と短側壁20の上側係合凹部31との凹凸係合によって、下長側壁55に対する上長側壁45の外側への回動が規制されるとともに、下長側壁55の第1サイド突部60と短側壁20の下側係合凹部35との凹凸係合によって、下長側壁55の内側への回動が規制される。これにより長側壁40の起立状態が強固に保持される。
【0054】
また、仮に、ロック部材70がアンロック位置に配置されていたり、ロック部材70が存在しなかったとしても、長側壁40を上方に移動させない限り、上長側壁45及び下長側壁55の回動は規制されるので、長側壁40の起立状態が保持されやすくなっている。
【0055】
図18に示すように、一の上長側壁45のロック部材70をアンロック位置に配置し、上長側壁45を下長側壁55に対して引き上げて可動範囲の上端位置に配すると、上長側壁45のサイド突部48と短側壁20の上側係合凹部31との凹凸係合が解除されて、上長側壁45が下長側壁55に対して外側へ回動可能となり、長側壁40の上部を側面開口40Kとして開放させることができる(図15参照)。これにより、荷物の出し入れを容易に行うことができる。
【0056】
このとき、図19に示すように、引き上げられた上長側壁45により下長側壁55まで上方に移動したとしても、下長側壁55の外側への回動が、下側係合凹部35の外側壁35Bにより規制されるので、上長側壁45のみを外側へ回動させることができる。なお、上長側壁45を引き上げる際に、僅かに外側へ力を入れるようにして持ち上げれば、長側壁40を内側へ倒してしまうことも防がれる。
【0057】
再び側面開口40Kを閉じるときは、上長側壁45を上側へ回動させ、上長側壁45のサイド突部48と短側壁20の上側係合凹部31との位置を合わせて上長側壁45を下す。
【0058】
容器10を組立状態から折畳状態にするときは、全てのロック部材70をアンロック位置に配置し、上長側壁45を下長側壁55ごと引き上げて、上長側壁45のサイド突部48と短側壁20の上側係合凹部31との凹凸係合と、下長側壁55の第1サイド突部60と短側壁20の下側係合凹部35との凹凸係合と、を共に解除する。そして、長側壁40を内側へ倒すと、長側壁40が折畳姿勢に変更される。その後、短側壁20を内側に回動させると、短側壁20が長側壁40の上に配され、容器10が折畳状態になる。なお、長側壁40を2つ折りにしてパレット11上に寝かせた状態で、短側壁20を内側に回動して容器10を折畳状態にすることもできる。
【0059】
容器10を折畳状態から組立状態にするときは、まず、短側壁20を起立状態にする。次に、長側壁40をパレット11の長辺土手部16に対して引っ張った状態で外側に回動させ、長側壁40の各サイド突部48,60と、短側壁20の各凹部31,35との位置を合わせて、長側壁40を下す。これにより、長側壁40の各サイド突部48,60と、短側壁20の各凹部31,35とが係合し、上長側壁45及び下長側壁55の回動が規制される。そして、ロック部材70をロック位置に配置する。
【0060】
ところで、従来の容器では、上長側壁と下長側壁との両方に、隣の側壁に対して移動不能とするためのロック部材が設けられていた。これに対して、本実施形態の容器10は、下長側壁55が、上方に移動しないと回動できないように構成されているので、上長側壁45のロック部材70をロック位置に配置すると、下長側壁55も上方への移動が規制され、回動が規制される。つまり、上長側壁45のロック部材70によって、上長側壁45と下長側壁55との両方をロックできるので、下長側壁55にロック部材を設けなくてもよくなる。これにより、容器10の製造工程を減らせたり、使用時にロック部材の操作を減らすことができる。
【0061】
また、本実施形態では、下側係合凹部35に、下長側壁55の外側への回動を規制する機能(外側壁35B)と、下長側壁55の内側への回動を規制する機能(下側内倒規制部36)とが集約されるので、他の部分の設計の自由度が増す。
【0062】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、容器10が折り畳み式のボックスパレットであったが、底部がパレット構造になっていない折畳容器であってもよい。また、4つの側壁全てが回動可能になっていなくてもよい。
【0063】
(2)図24に示すように、長側壁40が、上下で2分割されているのではなく、一部が回動壁40Wとなった構成であってもよい。
【0064】
(3)長側壁40と短側壁20との両方が上下に2分割された構成であってもよいし、短側壁20のみが上下に2分割された構成であってもよい。
【0065】
(4)第2サイド突部65を有さず、第1サイド突部60が下側係合凹部35の上側内面に当接することで下長側壁55の可動範囲の上端位置が定められる構成であってもよい。
【0066】
(5)上長側壁45と下長側壁55との両方にロック部材70を設けてもよい。
【0067】
(6)図25に示すように、下長側壁55に係合凹部55Wを配し、短側壁20に係合突部20Wを配してもよい。
【0068】
(7)下長側壁55の回動を規制する規制部(下側係合凹部35又は係合突部20Wに相当)がパレット11に配されていてもよい。
【0069】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0070】
10 容器
11 パレット(底部)
20 短側壁
31 上側係合凹部(上側規制部)
35 下側係合凹部(本体規制部、係合凹部)
40 長側壁(折畳側壁)
45 上長側壁(回動壁、上側壁)
48 サイド突部(上側規制部)
55 下長側壁(折畳側壁本体、下側壁)
60 第1サイド突部(本体規制部、係合突部)
70 ロック部材
図1
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図3
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