(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025783
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】企業評価システム、企業評価方法、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230216BHJP
G06Q 10/00 20230101ALI20230216BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131128
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】320012989
【氏名又は名称】サステナブル・ラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】特許業務法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平瀬 錬司
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA20
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】有意な非財務情報を利用して企業の価値を評価する。
【解決手段】企業評価システム1は、評価対象の企業のIR情報及び当該企業でない他者が発信する情報を取得する情報取得処理部111と、情報取得処理部111が取得した情報を、前記評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす可能性が高い指標を複数用いて評価する評価処理部112~119と、評価処理部112~119による評価を出力する表示処理部120と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の企業のIR情報及び当該企業でない他者が発信する情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した情報を、前記評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす可能性が高い指標を複数用いて評価する評価手段と、
前記評価手段による評価を出力する出力手段と、
を有する企業評価システム。
【請求項2】
前記複数の指標は、IIRC(International Integrated Reporting Council、国際統合報告委員会と)、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)、GRI(Global Reporting Initiative、)、SASB(Sustainability Accounting Standards Board、持続可能性会計基準機構)、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)、ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字)を基に得ることができる指標のうち少なくとも何れかを含む請求項1に記載の企業評価システム。
【請求項3】
前記複数の指標は、前記評価対象の企業に抱く感情を評価するための指標を含む請求項1又は2に記載の企業評価システム。
【請求項4】
前記複数の指標は、前記評価対象の企業の自然災害リスク度を評価するための指標を含む請求項1乃至3の何れか1項に記載の企業評価システム。
【請求項5】
前記複数の指標は、前記評価対象の企業の不祥事を評価するための指標を含む請求項1乃至4の何れか1項に記載の企業評価システム。
【請求項6】
前記評価手段は、前記指標のカテゴリで分けて評価する請求項1乃至5の何れか1項に記載の企業評価システム。
【請求項7】
前記評価手段は、前記指標毎で重みづけをして評価する請求項1乃至6の何れか1項に記載の企業評価システム。
【請求項8】
前記評価手段は、前記指標と企業の財務指標との相関に応じた重みづけをして評価する請求項1乃至7の何れか1項に記載の企業評価システム。
【請求項9】
取得手段、評価手段、及び出力手段を有し企業を評価する企業評価システムによる企業評価方法であって、
前記取得手段が、評価対象の企業のIR情報及び当該企業でない他者が発信する情報を取得する取得工程と、
前記評価手段が、前記取得工程で取得した情報を、前記評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす可能性が高い指標を複数用いて評価する評価工程と、
前記出力手段が、前記評価工程による評価を出力する出力工程と、
を有する企業評価方法。
【請求項10】
取得手段が、評価対象の企業のIR情報及び当該企業でない他者が発信する情報を取得する取得工程と、
評価手段が、前記取得工程で取得した情報を、前記評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす可能性が高い指標を複数用いて評価する評価工程と、
出力手段が、前記評価工程による評価を出力する出力工程と、
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、企業を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ESG情報と財務情報を利用して銘柄のポートフォリオを構築する技術がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の技術は、企業の価値そのものを評価するものでない。
【0005】
本発明の目的は、有意な非財務情報を利用して企業の本来価値の評価や、将来業績の予測をすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、評価対象の企業のIR情報及び当該企業でない他者が発信する情報を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した情報を、前記評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす可能性が高い指標を複数用いて評価する評価手段と、前記評価手段による評価を出力する出力手段と、を有する企業評価システムである。
【0007】
本発明の第2の態様では、前記複数の指標は、IIRC(International Integrated Reporting Council、国際統合報告委員会と)、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)、GRI(Global Reporting Initiative、)、SASB(Sustainability Accounting Standards Board、持続可能性会計基準機構)、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)、ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字)を基に得ることができる指標のうち少なくとも何れかを含むことが好ましい。
【0008】
本発明の第3の態様では、前記複数の指標は、前記評価対象の企業に抱く感情を評価するための指標を含むことが好ましい。
【0009】
本発明の第4の態様では、前記複数の指標は、前記評価対象の企業の自然災害リスク度を評価するための指標を含むことが好ましい。
【0010】
本発明の第5の態様では、前記複数の指標は、前記評価対象の企業の不祥事を評価するための指標を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の第6の態様では、前記評価手段は、前記指標のカテゴリで分けて評価することが好ましい。
【0012】
本発明の第7の態様では、前記評価手段は、前記指標毎で重みづけをして評価することが好ましい。
【0013】
本発明の第8の態様では、前記評価手段は、前記指標と企業の財務指標との相関に応じた重みづけをして評価することが好ましい。
【0014】
前記課題を解決するために、本発明の第9の態様は、取得手段、評価手段、及び出力手段を有し企業を評価する企業評価システムによる企業評価方法であって、前記取得手段が、評価対象の企業のIR情報及び当該企業でない他者が発信する情報を取得する取得工程と、前記評価手段が、前記取得工程で取得した情報を、前記評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす可能性が高い指標を複数用いて評価する評価工程と、前記出力手段が、前記評価工程による評価を出力する出力工程と、を有する企業評価方法である。
【0015】
前記課題を解決するために、本発明の第10の態様は、取得手段が、評価対象の企業のIR情報及び当該企業でない他者が発信する情報を取得する取得工程と、評価手段が、前記取得工程で取得した情報を、前記評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす可能性が高い指標を複数用いて評価する評価工程と、出力手段が、前記評価工程による評価を出力する出力工程と、をコンピュータに実行させるコンピュータグログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の前記第1、9、10の態様によれば、企業評価システムは、評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす指標を用いることで、有意な非財務情報を利用して企業の価値を評価できる。
【0017】
また、本発明の前記第1、9、10の態様によれば、企業評価システムは、評価対象の企業のIR情報及び当該企業でない他者が発信する情報を用いることで、高い精度かつ客観性をもって企業の価値を評価できる。
【0018】
本発明の前記第2の態様によれば、企業評価システムは、一般化されている評価基準で企業の価値を評価できる。
【0019】
本発明の前記第3の態様によれば、企業評価システムは、企業に抱く感情を指標として企業の価値を評価できる。
【0020】
本発明の前記第4の態様によれば、企業評価システムは、企業の自然災害リスク度を指標として企業の価値を評価できる。
【0021】
本発明の前記第5の態様によれば、企業評価システムは、企業の不祥事を指標として企業の価値を評価できる。
【0022】
本発明の前記第6の態様によれば、企業評価システムは、指標のカテゴリで、企業の価値を評価できる。
【0023】
本発明の前記第7の態様によれば、企業評価システムは、指標毎の優先度や重要度等を反映させて企業の価値を評価できる。
【0024】
本発明の前記第8の態様によれば、企業評価システムは、指標と企業の財務指標との相関を反映させて企業の価値を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、企業評価システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、処理端末の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、管理サーバの構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、サーバ処理部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、企業評価システム1を挙げている。
【0027】
(構成)
図1は、企業評価システム1の構成の一例を示す図である。
【0028】
図1に示すように、企業評価システム1は、複数の処理端末10、及び管理サーバ100を有している。各処理端末10と管理サーバ100とは通信手段NWを介して通信可能とされている。ここで、通信手段NWは、有線又は無線により接続されるインターネット回線等である。以下では、通信手段NWをインターネット回線として説明する。
【0029】
処理端末10は、例えば、据え置き型のパーソナルコンピュータ、タブレット、又はスマートフォン等である。本実施形態では、処理端末10が据え置き型のパーソナルコンピュータである場合について説明する。
【0030】
図2は、処理端末10の構成例を示すブロック図である。
【0031】
図2に示すように、処理端末10は、通信部11、操作部12、表示部13、記憶部14、及び処理部(以下、端末処理部という。)15を有している。
【0032】
通信部11は、有線又は無線で通信手段NWを介して管理サーバ100等の外部装置とで通信を行う。操作部12は、使用者が情報を入力するためのものである。操作部12は、例えば、キーボードやマウスである。表示部13は、画像を表示する。表示部13は、例えば、モニターである。記憶部14は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等である。端末処理部15は、処理端末10における各種処理を実行する。端末処理部15は、例えば、マイクロコンピュータ及びその周辺回路を備え、例えば、CPU、ROM、RAM等によって構成されている。ROMには、1又は2以上のプログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納されている1又は2以上のプログラムに従って各種処理を実行する。そして、端末処理部15は、必要に応じて、記憶部14に記憶されている各種データや各種プログラムに従って各種処理を実行する。
【0033】
図3は、管理サーバ100の構成例を示すブロック図である。
【0034】
図3に示すように、管理サーバ100は、通信部101、記憶部102、及び処理部(以下、サーバ処理部という。)110を有している。ここで、通信部101は、通信手段NWを介して処理端末10等の他の装置との間で通信を行う。記憶部102は、HDD等であって、各種データや各種プログラムが記憶されている。サーバ処理部110は、管理サーバ100における各種処理を実行する。サーバ処理部110は、例えば、マイクロコンピュータ及びその周辺回路を備え、例えば、CPU、ROM、RAM等によって構成されている。ROMには、1又は2以上のプログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納されている1又は2以上のプログラムに従って各種処理を実行する。そして、サーバ処理部110は、必要に応じて、記憶部102に記憶されている各種データや各種プログラム102aに従って各種処理を実行する。
【0035】
図4は、サーバ処理部110の構成例を示す図である。
【0036】
図4に示すように、サーバ処理部110は、情報取得処理部111、非財務情報評価処理部112、第1独自指標評価処理部113、第2独自指標評価処理部114、第3独自指標評価処理部115、総合評価処理部116、カテゴリ評価処理部117、相対評価処理部118、情報開示評価処理部119、及び表示処理部120を有している。以下に各処理部の処理内容を具体的に説明する。
【0037】
情報取得処理部111は、通信部101を介してインターネット上のサイト、サーバ等から評価対象の企業について各種情報を取得する。また、情報取得処理部111は、ユーザが操作する処理端末10からの入力情報として各種情報を取得することもできる。例えば、各種情報は、企業のIR情報やオルタナティブデータ等である。
【0038】
非財務情報評価処理部112は、情報取得処理部111が取得した評価対象の企業情報について、非財務状況を指標として当該企業を評価する非財務情報評価処理を実行する。ここで、情報取得処理部111が取得した評価対象の企業のIR情報としては、例えば、有価証券報告書、環境報告書、サステナビリティレポート、統合報告書等がある。また、情報取得処理部111が取得した評価対象の企業のオルタナティブデータとしては、例えば、官公庁の統計データ、WEBメディアのコンテンツ等がある。また、非財務状況の指標としては、IIRC(International Integrated Reporting Council、国際統合報告委員会と)、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)、GRI(Global Reporting Initiative、)、SASB(Sustainability Accounting Standards Board、持続可能性会計基準機構)、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)、ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字)等がある。
【0039】
ここで、IIRCは、例えば、組織の戦略、ガバナンス、業績、見通しに関する重要な情報を、その組織が事業を展開している商業的、社会的、環境的な文脈を反映した形でまとめている。IIRCは、組織がどのようにスチュワードシップを発揮し、どのように価値を創造し、維持しているかを明確かつ簡潔に表現している。IIRCに基づく各指標には、例えば、売上高、キャッシュフロー、最終利益、資産、ROA、ROE、従業員数、取締役会に属する取締役の人数、取締役会に属する取締役のうち社外取締役の比率、監査役会の開催数等が含まれている。
【0040】
また、TCFDは、例えば、低炭素経済への世界的な移行に関連したものも含め、気候関連のリスクと機会がもたらす重大な財務上の影響について、一貫性があり、意思決定に有用な、将来の見通しに基づいた情報を収集することを目的としている。TCFDに基づく各指標には、例えば、排出量、エネルギー・燃料に関する値、水に関する値、土地利用に関する値が含まれている。排出量には、例えば、総排出量(温室効果ガスの種類別、排出源別、スコープ別)、出力拡大係数(例:収益、売上高、生産単位)ごとの排出量、化石燃料埋蔵量原単位あたりの排出量が含まれている。また、エネルギー・燃料に関する値には、例えば、総エネルギー消費量(メガワット時[MWh]または年間ギガジュール[GJ]のいずれか)、出力スケーリングファクター(例えは、収益、売上、生産単位、床面積)ごとに消費された総エネルギー量、エネルギー源の種類別のエネルギーの割合(例えば、再生可能エネルギー、水力、石炭、石油、天然ガス)(MWhまたはGJ)が含まれている。水に関する値には、例えば、出力拡大係数(例:収益、売上高、生産単位)ごとに使用される量(立方メートル)、ベースラインの水ストレスが高い地域からの取出し量(立方メートル)が含まれている。また、土地利用に関する値には、例えば、カバータイプ別の土地の割合(例えば、草地、森林、耕作地、牧草地、都市部)、カバータイプの年間変化量、農業耕、放牧、持続可能な方法、または保全のために使用されている土地の割合が含まれている。
【0041】
また、GRIは、例えば、ユニバーサルスタンダードから始まり、使いやすいモジュラーセットとして設計されている。経済、環境、社会といった組織の重要なトピックに基づいて、トピックスタンダードが選択され、このプロセスにより、持続可能性報告書は、重要なトピック、関連する影響、およびそれらがどのように管理されているかを包括的に把握することができる。GRIに関する各指標には、例えば、現地の最低賃金と比較した男女別の標準的な新入社員賃金の比率、地域社会から雇用された上級管理職の割合、支援されたインフラ投資およびサービスに関する値、反汚職方針および手順に関するコミュニケーションおよび研修に関する値、反競争的な行動、反トラスト、独占的慣行に関する法的措置に関する値、組織の主要製品およびサービスの製造に使用されるリサイクル原料の割合、各製品カテゴリーにおける再生製品およびその包装材の割合、保護地域内、または保護地域に隣接して所有、リース、管理されている事業用地、および保護地域外で生物多様性の価値が高い地域に関する値、育児休業を取得した従業員の男女別の総数、差別の事例と取られた是正措置に関する値が含まれている。
【0042】
また、SASBは、既存の規制の枠組みを活用しており、その使用と採用は規制の変更を必要としないというものである。むしろ、公開会社が重要な問題を開示するために既に存在する要求事項をよりよく遵守し、コンプライアンス違反のリスクを軽減する可能性があるというものである。SASBの指標の基準は、(1)エビデンスに基づいたもの、(2)市場情報に基づいたもの、(3)業界特有のものがある。SASBに基づく各指標には、例えば、薬物安全性に関する値、薬物安全性に関する値、電気の使用量、水の使用量、廃棄物に関する値、エネルギーに関する値、産業分野に関する値が含まれている。
【0043】
ここで、薬物安全性に関する値は、例えば、リコールの発行件数、リコールされた総件数である。また、安全の確保に関する値は、例えば、健康・安全・緊急時対応訓練の平均時間数である。また、電気の使用量は、例えば、系統電力から供給された消費エネルギーの割合で企業が開示している値である。また、水の使用量は、例えば、すべての水源から取り出された水の量を、数千立方メートル単位で企業が開示している値である。また、廃棄物に関する値は、例えば、発生した有害廃棄物の総重量を、発生した有害廃棄物の総重量で割ったものを、リサイクルされた有害廃棄物の総重量として、有害廃棄物のリサイクル率を計算し、事業体が開示している値である。また、廃棄物に関する値は、例えば、製造業から発生した廃棄物のうち、リサイクルされたものの割合で開示されている値である。また、エネルギーは、自社の車両が消費する燃料の総量に占める再生可能燃料の割合で企業が開示している値である。又は、事業活動から発生する石炭燃焼残渣(CCR)の量をメートルトン単位で事業体が開示している値である。又は、平均小売電気料金で、顧客を(1)家庭用、(2)商業用、(3)工業用に分類し、顧客の種類ごとに個別に開示されている値である。また、産業分野に関する値は、例えば、1,000人以上の労働者が1回のフルシフト以上の労働停止を行った件数で企業が開示している値である。
【0044】
また、SDGsは、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核をなす17の持続可能な開発目標(SDGs)とそれに関連する169の目標であり、誰も取り残されないようにしながら、あらゆる形態の貧困を終わらせ、不平等と闘い、気候変動に取り組むことに向けた世界的な新たな政策の枠組みを提供している。SDGsに基づく各指標は、例えば、女性従業員の割合、監査済サプライヤー(取引業者)数、エネルギー総消費量に占める再生可能エネルギー消費量の割合組織のガバナンス機関(取締役、監査役、各経営委員会所属者など、経営の意思決定機関従事者)に属する女性の割合、その他の温室効果ガスの排出量、GHG(温室効果ガス)もしくは二酸化炭素総排出量、通勤時に公共交通機関を利用している従業員の割合従業員1人当りのGHG(温室効果ガスもしくはCO2二酸化炭素(スコープ1+スコープ2))排出量、企業の総敷地面積に占める、陸上および海洋保護区域の割合、前年と比べた総排水量比率が含まれている。
【0045】
また、ESGは、社会的意識の高い投資家が潜在的な投資先を選別するために使用するためのものである。ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)に関する指標からなる。環境指標では、企業が自然のスチュワードとしてどのように行動しているかを検討する。社会的指標では、従業員、サプライヤー、顧客、事業を展開する地域社会との関係をどのように管理しているかを検討する。ガバナンス指標は、企業のリーダーシップ、役員報酬、監査、内部統制、株主の権利を扱う。ESGに関する指標には、例えば、独立取締役比率、取締役会開催数、1従業員当り研修費用従業員離職率、女性IT/エンジニアリング従業員の百分率、販売台数当り温室効果ガス排出量、GHGスコープ1、企業が生産活動で排出する水の合計量、購入電力量、企業の持続可能性への投資、研究開発費及びキャッシュフローが含まれている。
【0046】
以上のような非財務状況の指標は、評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす可能性が高い指標となる。例えば、非財務情報評価処理部112は、非財務情報評価処理として、文章解析等の解析技術によって、評価対象の企業情報からこれら指標に対応する情報を抽出し、抽出した情報について各指標を定量評価(数値化、スコア化)する。
【0047】
第1独自指標評価処理部113は、情報取得処理部111が取得した評価対象の企業情報を基に、当該企業に抱く感情を指標として当該企業を評価する第1独自指標評価処理を実行する。ここで、評価対象の企業情報として、例えば、インターネット上の口コミサイトに掲載されている口コミ情報がある。また、企業に抱く感情の指標は、評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす指標となる。例えば、第1独自指標評価処理部113は、第1独自指標評価処理として、評価対象の企業情報となる口コミサイトのレーティング(定量)及び、口コミ文章(定性)を感情解析等の解析技術によって、企業に抱く感情を定量評価する。第1独自指標評価処理部113は、例えば、ポジティブ感情の場合は80ポイント、ネガティブ感情の場合は60ポイントのように定量評価する。
【0048】
第2独自指標評価処理部114は、情報取得処理部111が取得した評価対象の企業情報を基に、企業の自然災害リスク度を指標として評価する第2独自指標評価処理を実行する。ここで、企業の自然災害リスク度の指標は、評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす指標となる。例えば、第2独自指標評価処理部114は、第2独自指標評価処理として、評価対象の企業情報となる事業所ロケーションマップと自然災害リスクマップとを比較解析し、自然災害リスク度を定量評価する。
【0049】
第3独自指標評価処理部115は、情報取得処理部111が取得した評価対象の企業情報を基に、当該企業の不祥事を指標として当該企業を評価する第3独自指標評価処理を実行する。ここで、企業の不祥事の指標は、評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす指標となる。例えば、第3独自指標評価処理部115は、第3独自指標評価処理として、検索エンジン等によってインターネット上のWEBニュース等を巡回して得た評価対象の企業情報の不祥事情報を、文章解析等の解析技術によって、不祥事を定量評価する。第3独自指標評価処理部115は、例えば、労働者の人権に関する不祥事の場合は80ポイント、腐敗防止に関する不祥事の場合は60ポイントのように定量評価する。
【0050】
総合評価処理部116は、非財務情報評価処理部112、及び第1乃至第3独自指標評価処理部113,114,115が取得した定量評価値の総合値(合計値)を取得する総合評価処理を実行する。このとき、例えば、総合評価処理部116は、各評価処理部112~115が取得した各定量評価値を重みづけして総合値を取得する。
【0051】
カテゴリ評価処理部117は、非財務情報評価処理部112、及び第1乃至第3独自指標評価処理部113,114,115が取得した定量評価値について当該定量評価値を取得した指標のカテゴリ毎の総合値を取得するカテゴリ評価処理を実行する。ここで、例えば、カテゴリ評価処理部117は、各評価処理部112~115が取得した定量評価値を重みづけしてカテゴリ毎の総合値を出力する。また、カテゴリ毎とは、ある1つの評価処理部が取得した定量評価値だったり、ある1つの評価処理部によって複数の定量評価値が取得できる場合には、複数の定量評価値のうちの1つ又は複数の定量評価値だったりする。例えば、非財務情報評価処理部112は、IIRC、TCFD、GRI、SASB、SDGs、ESGに関して複数の指標の定量評価値を取得している。例えば、これに対して、カテゴリ評価処理部117は、SDGsに関して複数の指標の定量評価値の総合値を1つのカテゴリの総合値として出力する。
【0052】
ここで、総合評価処理部116やカテゴリ評価処理部117で使う重みづけは以下のような観点で決定される。
【0053】
重み付けは、企業の業種における課題(各指標)の重要度に応じて決定される。
【0054】
重み付けは、財務指標に対する各指標の相関又はインパクトに応じて決定される。ここで、財務指標としては、売上高、営業利益、最終利益、株価、PER、PBR、ROIやそれらの伸び率などが挙げられる。
【0055】
相対評価処理部118は、評価対象の企業の各指標の評価結果(定量評価値)と当該評価対象の企業の同業他社や当該評価対象の企業が属する業界について取得した各指標の評価結果(定量評価値)とを比較して相対評価する相対評価処理を実行する。ここで、例えば、同業他社は、業界、業種、会社規模、売上規模等を基準にして選定されている。例えば、相対評価処理部118は、複数の同業他社について取得した各指標の評価結果の平均値、中央値、最悪値、最善値と、評価対象の企業について取得した各指標の評価結果との乖離度を評価する。ここで、平均値は、複数の同業他社の評価結果の平均値である。中央値は、複数の同業他社の評価結果の中央値である。最悪値は、複数の同業他社の評価結果のうち、最も悪い値である。最善値は、複数の同業他社の評価結果のうち、最も良い値である。
【0056】
情報開示評価処理部119は、企業の情報の開示率を評価する情報開示評価処理を実行する。例えば、情報開示評価処理部119は、評価対象の企業が各指標について自ら開示している情報の開示率に基づく定量評価をする。情報開示評価処理部119は、例えば、開示率が高いほど、定量評価値を高くする。
【0057】
表示処理部120は、各評価処理部112~119の評価結果を、当該評価結果を要求してきた処理端末10の表示部13に出力する表示処理を実行する。例えば、表示処理部120は、その1つの表示処理として、非財務情報評価処理部112、及び第1乃至第3独自指標評価処理部113~115が取得した評価定量値の生データを処理端末10の表示部13に表示したりする。
【0058】
(動作、作用等)
次に、企業評価システム1の動作、及びその作用等の一例について説明する。
【0059】
情報取得処理部111は、評価対象の企業について各種情報を取得する。そして、非財務情報評価処理部112は、情報取得処理部111が取得した評価対象の企業情報を基に非財務情報評価処理を実行し、第1乃至第3独自指標評価処理部113~115は、情報取得処理部111が取得した評価対象の企業情報を基に第1乃至第3独自指標評価処理を実行する。
【0060】
また、総合評価処理部116は、非財務情報評価処理部112、及び第1乃至第3独自指標評価処理部113~115が取得した定量評価値の総合値(合計値)を取得する。また、カテゴリ評価処理部117は、非財務情報評価処理部112、及び第1乃至第3独自指標評価処理部113~115が取得した定量評価値について当該定量評価値を取得した指標のカテゴリ毎の総合値を取得する。
【0061】
さらに、相対評価処理部118は、評価対象の企業の各指標の評価結果(定量評価値)と当該評価対象の企業の同業他社について取得した各指標の評価結果(定量評価値)とを相対評価する。また、情報開示評価処理部119は、企業の情報の開示率を評価する。
【0062】
そして、表示処理部120は、以上のようにして各評価処理部112~119が取得した評価結果を処理端末10の表示部13に出力する。
【0063】
【0064】
図5に示す例では、評価対象のABC株式会社について、情報公開レベル(情報開示率の定量評価値)、サスティナビリティ情報が表示されている。また、サスティナビリティ情報として、サスティナビリティスコア、ESGスコア(ESGの指標に基づく定量評価値)、SDGsスコア(SDGsの指標に基づく定量評価値)、メジャー指標が表示されている。また、同図中で、対象企業の定量評価値である数字の下側や右側にグレーで併記されている数字は、相対評価可能にする業界平均の評価値である。また、同図中で、グレー又は破線で表示されているグラフは、相対評価可能にする業界平均の評価値である。
【0065】
(本実施形態における効果)
(1)企業評価システム1は、評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす指標を用いることで、有意な非財務情報を利用して企業の価値を評価できる。
【0066】
(2)企業評価システム1は、評価対象の企業のIR情報及び当該企業でない他者が発信する情報を用いることで、高い精度かつ客観性をもって企業の価値を評価できる。
【0067】
(3)企業評価システム1は、IIRC(International Integrated Reporting Council、国際統合報告委員会と)、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)、GRI(Global Reporting Initiative、)、SASB(Sustainability Accounting Standards Board、持続可能性会計基準機構)、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)、ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字)を基に得ることができる指標を用いることで、一般化されている評価基準で企業の価値を評価できる。
【0068】
(4)企業評価システム1は、企業に抱く感情を指標として企業の価値を評価できる。
【0069】
(5)企業評価システム1は、企業の自然災害リスク度を指標として企業の価値を評価できる。
【0070】
(6)企業評価システム1は、企業の不祥事を指標として企業の価値を評価できる。
【0071】
(7)企業評価システム1は、指標のカテゴリで、企業の価値を評価できる。
【0072】
(8)企業評価システム1は、指標毎の優先度や重要度等を反映させて企業の価値を評価できる。
【0073】
(9)企業評価システム1は、指標と企業の財務指標との相関を反映させて企業の価値を評価できる。
【0074】
なお、前述の実施形態では、情報取得処理部111は、例えば、取得手段を構成している。また、非財務情報評価処理部112、第1独自指標評価処理部113、第2独自指標評価処理部114、第3独自指標評価処理部115、総合評価処理部116、カテゴリ評価処理部117、相対評価処理部118、及び情報開示評価処理部119は、例えば、評価手段を構成している。また、表示処理部120は、例えば、出力手段を構成している。また、オルタナティブデータは、例えば、企業でない他者が発信する情報を構成している。
【0075】
(本実施形態の変形例等)
本実施形態の変形例として、処理端末10が、管理サーバ100の処理部110と同等の機能を有することもできる。これによって、企業評価システム1は、管理サーバ100を用いることなく、処理端末10だけで処理を完結させることができる。
【0076】
また、本実施形態の変形例として、非財務情報評価処理部112は、IIRC(International Integrated Reporting Council、国際統合報告委員会と)、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)、GRI(Global Reporting Initiative、)、SASB(Sustainability Accounting Standards Board、持続可能性会計基準機構)、SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)、ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字)を基に得ることができる指標のうち少なくとも何れかを用いて、非財務情報評価処理を実行することもできる。
【0077】
また、本実施形態の変形例として、企業評価システム1は、非財務情報評価処理部112、及び第1乃至第3独自指標評価処理部113,114,115のうちの少なくとも何れかを用いて、評価処理を実行することもできる。
【0078】
また、前記の実施形態では、取得手段、評価手段、及び出力手段を有し企業を評価する企業評価システムによる企業評価方法であって、前記取得手段が、評価対象の企業のIR情報及び当該企業でない他者が発信する情報を取得する取得工程と、前記評価手段が、前記取得工程で取得した情報を、前記評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす可能性が高い指標を複数用いて評価する評価工程と、前記出力手段が、前記評価工程による評価を出力する出力工程と、を有する企業評価方法を実現している。
【0079】
また、前記の実施形態では、取得手段が、評価対象の企業のIR情報及び当該企業でない他者が発信する情報を取得する取得工程と、評価手段が、前記取得工程で取得した情報を、前記評価対象の企業の非財務の状況を示しかつ当該評価対象の企業の財務の評価に影響を及ぼす可能性が高い指標を複数用いて評価する評価工程と、出力手段が、前記評価工程による評価を出力する出力工程と、をコンピュータに実行させるコンピュータグログラムを実現している。
【0080】
また、本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0081】
1 企業評価システム、10 処理端末、13 表示部、100 管理サーバ、110 処理部、111 情報取得処理部、112 非財務情報評価処理部、113 第1独自指標評価処理部、114 第2独自指標評価処理部、115 第3独自指標評価処理部、116 総合評価処理部、117 カテゴリ評価処理部、118 相対評価処理部、119 情報開示評価処理部、120 表示処理部