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特開2023-2579ヒト自然リンパ球前駆細胞:同定、特性評価、応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002579
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ヒト自然リンパ球前駆細胞:同定、特性評価、応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0789 20100101AFI20221227BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20221227BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C12N5/0789
C12N5/0783
C12Q1/02
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022158580
(22)【出願日】2022-09-30
(62)【分割の表示】P 2019528812の分割
【原出願日】2017-11-30
(31)【優先権主張番号】62/428,310
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/468,550
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】508029653
【氏名又は名称】アンスティテュ・パストゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ディ・サント
(72)【発明者】
【氏名】アイ・イン・リム
(57)【要約】
【課題】1つには、ILC源を提供するための、ILCの前駆細胞を単離するための組成物及び方法を提供すること。
【解決手段】自然リンパ球(ILC)は、確約されたILC前駆細胞(ILCP)から分化するTヘルパー及び細胞傷害性T細胞の自然バージョンを表す。にもかかわらず、どのようにILCPが成熟組織常在性ILCに関連するのかは不確かなままである。血液並びに全ての試験したリンパ及び非リンパヒト組織中に存在するILCPを同定した。ヒトILCPはサイン転写因子(TF)並びに成熟NK細胞及びILCのサイトカイン出力を発現できないが、後成的にそうする準備ができている。ヒトILCPは、インビトロ及びインビボで全てのILCサブセットを堅牢に産生する。ヒトILCPはRAR関連オーファン受容体C(RORC)を発現する一方、循環ILCPは、EOMES+ NK細胞、T-BET+ ILC1、GATA-3+ ILC2及びIL-22+の能力を保持しているが、IL-17A+ ILC3の能力を保持していないRORC欠損患者で見られ得る。多様なILCサブセットが、環境ストレス要因、炎症及び感染に応じて、ILCPからその場で産生される組織ILC分化(「ILC形成」)のモデルが提案される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の精製集団であって、前記集団中の前記細胞の少なくとも75%が、表現型CD127+CD117+CD3-CRTh2-、並びに場合によりCD7+、NKp44-、CD94-、Lin-、CD26+及び/又はCD62L+を有する、ILCPの精製集団。
【請求項2】
前記集団中の前記細胞の少なくとも90%が、前記表現型CD127+CD117+CD3-CRTh2-を有し、並びに場合により前記表現型CD7+、NKp44-、CD94-、Lin-、CD26+及び/又はCD62L+を有する、請求項1に記載のILCPの精製集団。
【請求項3】
自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の精製集団を作製する方法であって、
ヒト細胞試料を用意する工程と、
表現型CD127+CD117+CD3-CRTh2-、並びに場合によりCD7+、NKp44-、CD94-、Lin-、CD26+及び/又はCD62L+を有する、前記細胞試料中の細胞を選択して細胞の集団を得る工程と
を含み、
前記集団中の前記細胞の少なくとも75%が、前記表現型CD127+CD117+CD3-CRTh2-、並びに場合によりCD7+、NKp44-、CD94-、Lin-、CD26+及び/又はCD62L+を有する、方法。
【請求項4】
ILC1、ILC2、ILC3及びNK細胞から選択される細胞型を作製する方法であって、
自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の集団を用意する工程と、
前記細胞集団を外部刺激に供する工程と、
ILC1、ILC2、ILC3及びNK細胞から選択される細胞型の増加を検出する工程と
を含む、方法。
【請求項5】
前記集団中の前記細胞の少なくとも90%が、表現型CD127+CD117+CD3-CRTh2-、並びに場合によりCD7+、NKp44-、CD94-、Lin-、CD26+及び/又はCD62L+を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
インビボで行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
免疫病理、感染性疾患又はがんの治療に使用するための、ILCPの精製集団を含む組成物であって、前記集団中の細胞の少なくとも90%が、表現型CD127+CD117+CD3-CRTh2-、並びに場合によりCD7+、NKp44-、CD94-、Lin-、CD26+及び/又はCD62L+を有する、組成物。
【請求項8】
ILCの発達に影響を及ぼす化合物をスクリーニングする方法であって、
自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の集団を用意する工程であって、前記集団中の前記細胞の少なくとも75%が、表現型CD127+CD117+CD3-CRTh2-、並びに場合によりCD7+、NKp44-、CD94-、Lin-、CD26+及び/又はCD62L+を有する、工程と、
前記細胞集団を試験化合物と接触させる工程と、
前記細胞集団中の前記細胞の表現型の変化を検出する工程と
を含む、方法。
【請求項9】
前記試験化合物が、前記ILCPの分化の減少を引き起こす、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試験化合物が、前記ILCPの分化の増加を引き起こす、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
マウスに前記自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の集団を注入する工程と、前記試験化合物を前記マウスに投与する工程とを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が、可塑性なしで増殖する、請求項1から11のいずれか一項に記載の精製集団又は方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のILCPの精製集団を、IL-1β及びIL-2を含む培養培地で培養する工程を含む、ILCPを増殖させる方法。
【請求項14】
前記ILCPを、IL-1β及びIL-2を含む培養培地で培養する、請求項3から6及び8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
最小限の可塑性を有するILC3細胞を増殖させる方法であって、培養培地が、IL-1β、IL-2及びIL-7を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の背景
自然リンパ球(Innate lymphoid cells)(ILC)は、細胞傷害性細胞(NK細胞)及び「ヘルパー様」ILCからなる、初期免疫反応において必須の役割を果たすリンパ球エフェクター細胞の新規なファミリーである。後者は、インターロイキン-7受容体(IL-7Rα/CD127)の発現を特徴とし、その転写因子(TF)及びTヘルパー(TH)細胞とのサインサイトカイン産生類似性に基づいて3つの別個のグループに分類される。グループ1 ILC(ILC1)は、T-BET/TBX21を発現し、TH1関連サイトカインIFN-γ及びTNF-αを産生する。グループ2 ILC(ILC2)は、GATA-3及びRORα依存性経路を介してTH2関連サイトカイン、IL-5及びIL-13を分泌する。グループ3 ILC(ILC3)は、TH17関連サイトカイン、IL-17及び/又はIL-22の産生を駆動するために関連オーファン受容体C(RORγtをコードするRORC)を利用する(Serafiniら、2015;Spitsら、2013)。これらの様々なILCサブセットは、多様なリンパ及び非リンパ組織で見られ、これらがバリア機能及び自然免疫防御において必須の役割を果たす粘膜部位で濃縮されている(Artis及びSpits、2015;Eberlら、2015)。
【0002】
多様なヒトILCサブセットは、まず二次リンパ組織で同定され、その後、いくつかの非リンパ組織部位で報告された(腸、肺、肝臓、皮膚)((Juelke及びRomagnani、2016)に概説)。
【0003】
グループ1 ILCは、1型サイトカイン(例えば、IFNγ及びTNF)を産生することができ、ナチュラルキラー(NK)細胞及びILC1を含む(Wikipedia)。ILC1はILC3と密接に関連した弱細胞傷害性細胞である(id.)。NK細胞は、細胞傷害性自然エフェクター細胞である(Id.)。これらは、血液、器官及びリンパ組織のいたるところに分布し、末梢血リンパ球の約15%を構成する(id.)。NK細胞は、腫瘍監視及びウイルス感染細胞の迅速な排除において役割を果たす(id.)。
【0004】
IFN-γ産生ILC1の2つの別個の集団が記載されている。高レベルのCD127(CD127+ ILC1と呼ばれる)及びCD161を発現しているが、他の特異的表面マーカーを欠くT-BET+細胞が、扁桃及び炎症を起こした腸で同定されている(Berninkら、2013)。対照的に、NKp44及びCD103を発現しているが、CD127を発現していない上皮内ILC1は粘膜部位に存在する(Fuchsら、2013)。これらのILC1は共にIL-12に応えてIFN-γを産生し、最小限のEomesodermin(EOMES)発現によってNK細胞から分化し得る。
【0005】
グループ2 ILCは、2型サイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、IL-9、IL-13)を産生することができる(Wikipedia)。ILC2(ナチュラルヘルパー細胞、nuocyte又は自然ヘルパー2細胞とも呼ばれる)は、蠕虫感染に応じて2型サイトカインを分泌する重要な役割を果たす(id.)。これらはまた、アレルギー性肺炎症の発症にも関係している(id.)。これらは、特徴的な表面マーカー及びケモカインの受容体を発現し、リンパ系細胞の特定の器官部位への分布に関与している(id.)。これらは、その発達にIL-7を必要とし、IL-7が2つの転写因子(共にこれらの細胞によって必要とされる)-RORα及びGATA3を活性化する。ILC2は、肺における局所Th2抗原に対する一次応答にとって重要であるが、全身送達Th2抗原に対する応答に必ずしも必要でない(id.)。
【0006】
ヒトGATA-3+ ILC2は、化学誘引物質受容体CRTh2、IL-25R及びIL-33Rを発現し(Mjosbergら、2011)、広く分布し(Montaldoら、2015)(肺、皮膚、腸、鼻茸、脂肪組織)、種々の生理学的及び病理学的状況下で2型サイトカインIL-5及びIL-13を産生する((Kim及びArtis、2015)に概説)。
【0007】
グループ3 ILCは、サイトカインIL-17A及び/又はIL-22を産生するその能力によって定義される(Wikipedia)。これらは、ILC3及びリンパ組織誘導(LTi)細胞を含む(id.)。ILC3は、IL-22を産生し、NKp46(NK細胞活性化受容体)を発現することができるリンパ球集団である(id.)。それにもかかわらず、ILC3は、転写因子RORγtに依存し、細胞傷害性エフェクター(パーフォリン、グランザイム及び細胞死受容体)を欠き、IFNγもTNFも産生しないので、NK細胞とは異なる(id.)。これらは主に粘膜組織、及び特に腸管に見られる(id.)。
【0008】
リンパ組織誘導(「Lti」)細胞は、リンパ組織の発達に必要とされるILC発現分子のサブセットである(id.)。これらは、胚形成中のリンパ器官の発達に必須であり、出生後、リンパ組織の構造を調節する(id.)。これらはまた、T細胞記憶の維持にも関連している(id.)。
【0009】
グループ3 ILCは、胎児リンパ組織誘導(Lti)細胞並びに転写因子RORγtを発現し、サイトカインIL-17A及び/又はIL-22を産生する成人系統-CD127+CD117+細胞を含む((Montaldoら、2015)に概説)。ILC3は、胎児腸間膜リンパ節及び脾臓(Cupedoら、2009)並びに成人扁桃、腸、脾臓、皮膚、肺、子宮内膜及び脱落膜で同定されている。ILC3のサブセットは、ナチュラル細胞傷害性受容体(NKp30、NKp44及びNKp46を含むNCR)を発現し、IL-22産生細胞で濃縮されている(Cellaら、2009)。
【0010】
マウス成熟ILCは、胎児肝臓(FL)及び成体骨髄(BM)で、一般的なリンパ球前駆細胞(CLP)を介して造血幹細胞(HSC)から分化して多様なID2+TCF-1+PLZF+ILC前駆細胞(ILCP)をもたらす(Constantinidesら、2014;Yangら、2015)。マウスでは多様なTF及びシグナル伝達経路がこの過程を調節する(Serafiniら、2015);対照的に、ヒトILC発達はあまりよく特徴付けられていない((Juelke及びRomagnani、2016)に概説)。細胞傷害性CD56+NK細胞をもたらすNK前駆細胞(NKP)は、FL、BM、臍帯血(CB)及び成人扁桃で同定されている(Renouxら、2015)一方で、インビトロでIL-22産生NCR+ ILC3を産生する確約されたILC3前駆細胞(ILC3P)は、扁桃及び腸固有層で見られるが、末梢血(PB)でも、胸腺でも、BMでも見られない(Montaldoら、2014)。近年の研究により、RORγtを発現し、成熟細胞傷害性及びヘルパーILCに発達することができる扁桃ヒトILCPが同定された(Scovilleら、2016)。興味深いことに、これらのヒトNKP、ILC3P及びILCPはCD34+であり、二次リンパ組織で濃縮されているが、循環からはまれである又は存在しなかった。このようなILCPが組織中に見られる成熟ILCサブセットに発生的に関連しているかどうかは不明確であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第8772028号
【特許文献2】米国特許第9533009号
【特許文献3】国際公開第2016/138590号
【特許文献4】米国特許出願公開第2016/0145344号
【特許文献5】米国特許出願公開第2016/0304574号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Limら J Exp Med 2016
【非特許文献2】Langmead,B,&Salzberg,S.L. Fast gapped-read alignment with Bowtie 2. Nat Methods 9、357~359、doi:10.1038/nmeth.1923(2012)
【非特許文献3】Heinz, S.ら Simple combinations of lineage-determining transcription factors prime cis-regulatory elements required for macrophage and B cell identities. Mol Cell 38、576~589、doi:10.1016/j.molcel.2010.05.004 (2010)
【非特許文献4】Quinlan,A.R.&Hall,I.M. BEDTools: a flexible suite of utilities for comparing genomic features. Bioinformatics 26、841~841、doi:10.1093/bioinformatics/btq033(2020)
【非特許文献5】Saldanha, A.J. Java Treeview-extensible visualization of microarray data. Bioinformatics 20、3246~3248、doi:10.1093/bioinformatics/bth349(2004)
【非特許文献6】McLean,C.Y.ら GREAT improves functional interpretation of cis-regulatory regions. Nat Biotechnol 28、495~501、doi:10.1038/nbt.l630(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
自然リンパ球は、自然免疫応答の発達において重要であり、防御免疫並びに恒常性及び炎症の調節において重要な役割を果たす(Wikipedia)。結果として、その調節不全は、アレルギー、気管支喘息及び自己免疫疾患等の免疫病理をもたらし得る(id.)。ILC源を提供するために、ILCの前駆細胞を単離するための組成物及び方法を開発することが当技術分野で必要とされている。本発明はこの必要性を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の簡単な要旨
本発明は、自然リンパ球前駆細胞(ILCP)を含む組成物、該組成物の使用、並びにこれらの組成物を作製及び使用する方法を包含する。
【0015】
種々の実施形態では、組成物が自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の精製集団を含み、集団中の細胞の少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%が表現型CD127+CD117+CD3-CRTh2-を有し、場合により表現型CD7+、NKp44-、CD94-及び/又はLin-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-(式中、Lin-はCD3-を含む)を有し、場合により表現型CD7+、NKp44-及び/又はCD94-並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD7+又はCD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有し;より好ましくは集団中の細胞の少なくとも99%又は100%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。
【0016】
一実施形態では、本発明は、自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の精製集団を作製する方法であって、ヒト細胞試料を用意する工程と、表現型CD127+CD117+CD3-CRTh2-を有し、場合により表現型CD7+、NKp44-、CD94-及び/又はLin-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する細胞を細胞試料中で選択して細胞の集団を得る工程とを含み、集団中の細胞の少なくとも75%が表現型CD127+CD117+CD3-CRTh2-を有し、場合により表現型CD7+、NKp44-、CD94-及び/又はLin-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する方法を包含する。いくつかの実施形態では、方法が、表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-(式中、Lin-はCD3-を含む)を有し、場合により表現型CD7+、NKp44-及び/又はCD94-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する細胞を細胞試料中で選択する工程を含む。本方法のいくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも75%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-(式中、Lin-はCD3-を含む)を有し、場合により表現型CD7+、NKp44-及び/又はCD94-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。好ましくは集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD7+又はCD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有し;より好ましくは集団中の細胞の少なくとも99%又は100%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、ILC1、ILC2、ILC3及びNK細胞から選択される細胞型を作製する方法であって、自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の集団を用意する工程と、細胞集団を外部刺激に供する工程と、ILC1、ILC2、ILC3及びNK細胞から選択される細胞型の増加を検出する工程とを含む方法を包含する。
【0018】
好ましくは、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD127+CD117+CD3-CRTh2-を有し、場合により表現型CD7+、NKp44-、CD94-及び/又はLin-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。本方法のいくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-(式中、Lin-はCD3-を含む)を有し、場合により表現型CD7+、NKp44-及び/又はCD94-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD7+又はCD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有し;より好ましくは、集団中の細胞の少なくとも99%又は100%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。
【0019】
一実施形態では、方法がインビボで行われる。
【0020】
一実施形態では、本発明は、ヒト患者を治療する方法であって、ILCPの精製集団を患者に投与する工程を含み、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD127+CD117+CD3-CRTh2-を有し、場合により表現型CD7+、NKp44-、CD94-及び/又はLin-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する方法を包含する。本方法のいくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-(式中、Lin-はCD3-を含む)を有し、場合により表現型CD7+、NKp44-及び/又はCD94-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD7+又はCD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有し;より好ましくは、集団中の細胞の少なくとも99%又は100%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。
【0021】
一実施形態では、本発明は、ILCの発達に影響を及ぼす化合物をスクリーニングする方法であって、自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の集団を用意する工程と、細胞集団を試験化合物と接触させる工程と、細胞集団中の細胞の表現型の変化を検出する工程とを含む方法を包含する。
【0022】
一実施形態では、試験化合物が、ILCPの分化の減少を引き起こす。一実施形態では、試験化合物が、ILCPの分化の増加を引き起こす。
【0023】
一実施形態では、本方法がマウスに自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の集団を注入する工程と、試験化合物をマウスに投与する工程とを含む。
【0024】
種々の実施形態では、細胞が可塑性なしに増殖する。
【0025】
一実施形態では、本発明は、ILCPを増殖させる方法であって、本発明によるILCPの精製集団を、IL-1β及びIL-2を含む培養培地で培養する工程を含む方法を包含する。
【0026】
種々の実施形態では、ILCPが、IL-1β及びIL-2を含む培養培地で培養される。
【0027】
一実施形態では、本発明は、最小限の可塑性を有するILC3細胞を増殖する方法であって、培養培地がIL-1β、IL-2及びIL-7を含む方法を包含する。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】末梢血CD117+ILCの特性評価を示す図である。ヒトPB ILCのFACS分析についてのゲーティング戦略。全ILCを生存CD45+Lin-(CD3-CD4-CD5-TCRαβ-TCRγδ-CD14-CD19-)CD7+CD127+細胞(赤色)でゲーティングした。NK細胞をCD56Dim(灰色)によって同定し、ILC2をCRTh2+細胞(緑色)によってマークし、CD117+ILCをCRTh2-CD117+集団(青色)でゲーティングする。
図1B】末梢血CD117+ILCの特性評価を示す図である。PBにおける生存CD45+からの全ILCの割合及び健康な成人ドナーの全ILCからのCD117+ILCの割合。27人の健康な個体からの結果(中央値)。
図1C】末梢血CD117+ILCの特性評価を示す図である。PB CD117+ILC及び腸CD117+NKp44+/-ILCの表面表現型の発現(NKp44、IL1R1及びCD69)及び細胞内転写因子(EOMES、T-BET、GATA-3及びRORγt)プロファイル。
図1D】末梢血CD117+ILCの特性評価を示す図である。3時間のPMA/イオノ刺激に応じたPB CD117+ILC及び腸CD117+NKp44+/-ILCの機能的プロファイル(IFN-γ、IL-13、IL-22及びIL-17A)。データは、少なくとも3回の独立した実験から分析した少なくとも3人の個体を表すものである。
図2】CD117+ILCの転写サイン及びクロマチンランドスケープを示す図である。(A)バルクRNA Seq及びChip Seqを行うためのFACSによる健康なドナーの末梢血から新たに単離したCD117+ILC及びCD34+HSCについての模式的ゲーティング戦略。(B)正規化ChIPm-Seqシグナルを示すヒートマップは、1989の領域がCD117+ILCから特異的に同定される36449の高い信頼性増強領域のH3K4me2強度を示した。ベン図は、H3Kme2+領域の3つのカテゴリー(「CD34+HSC-特異的」;「CD117+ILC-特異的」及び「共有」)を示した。H3K4Me2+濃縮レベルが2倍超異なる場合、領域を細胞型特異的とみなした。(C)CD117+ ILC(青色)及びCD34+ HSC(橙色)から独自に同定されたGREの近くに位置する遺伝子についての分子経路濃縮のヒートマップ。(D)RNA seqによって同定されたCD34+ HSCと比較した、CD117+ ILCによって差示的に発現される1540個の遺伝子のクラスタリングを示すヒートマップ。(E)RNA seqからのCD117+ ILCによって高度に発現される1540個の遺伝子と、「CD117+ ILC特異的」H3KMe2+ GREから同定された2283個の遺伝子の重複。
図3A】クローニングがインビトロでCD117+ ILCの多ILC系統能力を明らかにすることを示す図である。サイトカイン(各サイトカインについて20ng/ml)を含む間質細胞フリー条件下でのバルク培養CD117+ ILC(10日間)の増殖。4人の独立したドナーからの結果;ns、P>0.05;**、P<0.01;****、P<0.0001対応スチューデントt検定を使用(中央値)。
図3B】クローニングがインビトロでCD117+ ILCの多ILC系統能力を明らかにすることを示す図である。NK細胞(EOMES+細胞)、ILC1(IFN-γ+細胞)、ILC2(IL-13+)及びILC3(IL-22+及び/又はIL-17A+)を同定するための、3時間のPMA/イオノマイシン刺激後の表面表現型、細胞内EOMES及びサイトカイン発現についてのバルク培養CD117+ ILCのFACS分析。
図3C】クローニングがインビトロでCD117+ ILCの多ILC系統能力を明らかにすることを示す図である。CD117+ ILC-OP9間質同時培養系の模式図及び形態学。
図3D】クローニングがインビトロでCD117+ ILCの多ILC系統能力を明らかにすることを示す図である。単一PB CD117+ ILCをFACSインデックス選別し、OP9又はOP9-DL4間質細胞上で14~18日間培養した。表面及びサイトカインプロファイルについて分析する3時間前に細胞をPMA/イオノで刺激した。少なくとも100個の生存ヒトCD45+細胞がFACSによって検出されたら、陽性クローンとみなした。対応するサイトカインの5%超が全生存CD45細胞で検出されたら、ILCサブセットの存在をスコアリングした。
図3E】クローニングがインビトロでCD117+ ILCの多ILC系統能力を明らかにすることを示す図である。検出された全ての可能なILC組み合わせを示す円グラフ。全陽性ウェル間のそれぞれの単一又は複数ILC分化の頻度。それぞれ1人のドナーを用いた4つの独立にした実験から要約したデータ。平均して、クローニング効率はOP9で40%及びOP9-DL4間質細胞で26%であった。
図4】CD117+ ILCはインビボで多ILC系統を有効にもたらすことを示す図である。(A)インビボ移植実験の模式図。(B~C)新生BRGSマウスに、健康な個体のPBからFACSによって新たに単離された1~3×105個のCD117+ ILC又はCD34+ HSCを肝内移植した。これらの集団の子孫を注射4週間後に分析した。(B)リンパ球及び骨髄表面マーカーについてのFACS分析を、CD117+ ILC又は対照CD34+ HSCを移植したBRGSマウスの骨髄及び腸の生存ヒトCD45+細胞でゲーティングした。(C)CD117+ ILCを移植したBRGSマウスの肺、腸、肝臓及び脾臓における表面NKp44及びCD117発現、細胞内EOMES並びに細胞内サイトカイン(IFN-γ、IL-13、IL-22及びIL-17A)産生による様々なILCサブセットのFACS分析。3つの独立した実験からの各群で少なくとも4匹のマウスの代表的なデータ。
図5A】ヒトILCPがヒト免疫系(HIS)に蓄積することを示す図である。HISマウスの作製の模式図。ヒト胎児肝臓から単離した1.5~2×105個のCD17+ ILC又はCD34+CD38- HSCを新生BRGSマウスに肝内移植した。移植8~9週間後にマウスを分析した。
図5B】ヒトILCPがヒト免疫系(HIS)に蓄積することを示す図である。HISマウスの脾臓、BM、肺及び肝臓におけるヒトILCP(Lin-CD7+CD127+CD117+)の代表的なFACS分析。
図5C】ヒトILCPがヒト免疫系(HIS)に蓄積することを示す図である。HISマウスの脾臓、BM、肺及び肝臓における全ヒトCD45+からのILCPの割合(中央値)。
図5D】ヒトILCPがヒト免疫系(HIS)に蓄積することを示す図である。HISマウスの脾臓からのILCP及びNK細胞の表面表現型及び転写因子プロファイルのFACS分析。
図5E】ヒトILCPがヒト免疫系(HIS)に蓄積することを示す図である。10日間のIL-2、IL-7、IL-1β及びIL-23を用いたOP9-DL4での培養前及び培養後のHISマウスからの脾臓CD117+ ILCのサイトカイン産生。3時間のPMA/イオノ刺激後にサイトカイン産生を分析した。少なくとも3つの独立した実験からの8匹のマウスの代表的なデータ。
図6-1】図6は、リンパ及び非リンパ器官のCD117+ ILCのインビトロバルク及びクローンアッセイを示す図である。様々な器官のバルク(100~300個の細胞)又は単一CD117+NKp44+/-CD117+ ILCを、OP9又はOP9-DL4を事前に播種し、IL-2、IL-7、IL-1β及びIL-23(それぞれ20ng/ml)を補足した96ウェル丸底プレートにFACS選別した。3時間のPMA/イオノ刺激に応じたサイトカイン産生についての細胞内FACS分析を行って、8~10日間のバルク培養(A、D、G、J、M)又は14~18日間の単一細胞培養(B-C、E-F、H-I、K-L、N-O)後のILC1(IFN-γ+)、ILC2(IL-13+)及びILC3(IL-22+及び/又はIL-17A+)を同定した。(A)FL、(D)CB、(G)肺、(J)扁桃から単離したバルクCD117+NKp44- ILC、及び(M)扁桃から単離したCD117+NKp44+からの子孫の代表的なFACS分析。OP9及びOP9-DL4での(B-C)FL、(E-F)CB、(H-I)肺、(K-L)扁桃からのCD117+NKp44- ILC及び(M-N)扁桃からのCD117+NKp44+のクローン増殖後の全ての可能なILC組み合わせを示す円グラフ。図3の凡例も参照されたい。それぞれ1人のドナーによる少なくとも2つの独立した実験から要約したデータ。
図6-2】図6は、リンパ及び非リンパ器官のCD117+ ILCのインビトロバルク及びクローンアッセイを示す図である。様々な器官のバルク(100~300個の細胞)又は単一CD117+NKp44+/-CD117+ ILCを、OP9又はOP9-DL4を事前に播種し、IL-2、IL-7、IL-1β及びIL-23(それぞれ20ng/ml)を補足した96ウェル丸底プレートにFACS選別した。3時間のPMA/イオノ刺激に応じたサイトカイン産生についての細胞内FACS分析を行って、8~10日間のバルク培養(A、D、G、J、M)又は14~18日間の単一細胞培養(B-C、E-F、H-I、K-L、N-O)後のILC1(IFN-γ+)、ILC2(IL-13+)及びILC3(IL-22+及び/又はIL-17A+)を同定した。(A)FL、(D)CB、(G)肺、(J)扁桃から単離したバルクCD117+NKp44- ILC、及び(M)扁桃から単離したCD117+NKp44+からの子孫の代表的なFACS分析。OP9及びOP9-DL4での(B-C)FL、(E-F)CB、(H-I)肺、(K-L)扁桃からのCD117+NKp44- ILC及び(M-N)扁桃からのCD117+NKp44+のクローン増殖後の全ての可能なILC組み合わせを示す円グラフ。図3の凡例も参照されたい。それぞれ1人のドナーによる少なくとも2つの独立した実験から要約したデータ。
図7A】RORC-/-患者からのILCPの発達能力を示す図である。健康な患者の試料及びRORC-/-患者の試料からの末梢血ILCサブセットのFACS分析。
図7B】RORC-/-患者からのILCPの発達能力を示す図である。健康な患者及びRORC-/-患者の、生存CD45+細胞からのNKDim及びNKBrの割合、PBの全ILCからのILC、ILC2及びILCPの割合。22人の健康なドナー及び2人のRORC-/-患者からの結果。ns、P>0.05;*、P<0.05;**、P<0.01対応スチューデントt検定を使用(中央値)。
図7C】RORC-/-患者からのILCPの発達能力を示す図である。健康なドナー又はRORC-/-患者からのILCPをFACS選別し、8日間IL-2、IL-7、IL-1β及びIL-23を用いてOP9-DL4で培養した。3時間のPMA/イオノによる刺激後に、表面表現型、細胞内EOMES発現及びサイトカイン産生プロファイルを分析した。
図8】ILCPマーカーのフローサイトメトリー分析を示す図である。種々のマーカーを使用して、数人の正常な健康なドナーからの細胞のFACS分析を行い、示される細胞の割合を決定した。
図9】ILCPマーカーのフローサイトメトリー分析を示す図である。種々のマーカーを使用して、数人の正常な健康なドナーからの細胞のFACS分析を行い、示される細胞の割合を決定した。
図10】CD62L及びCD26ヒトILCPサブセットの分析を示す図である。系統枯渇ヒト末梢血細胞のFACS分析についてのゲーティング戦略を示す。Lin-CD7+CD127+CD117+ゲート(ヒトILCP)内で、CD45RAの均質な発現並びにCD62L及びCD26の可変的発現がある。
図11】ヒトILCPクローン増殖を示す図である。ヒトIL-1b、IL-2、IL-7及びIL-23を補足したOP9間質細胞(DLL4を発現している又はしていない)を使用して、単一細胞選別後に示される組織からヒトILCP(Lin-CD7+CD127+CD117+)をクローニングした。次いで、3時間のPMA/イオノマイシンによる刺激後に、サイトカイン産生(IFN-γ、IL-13、IL-17A、IL-22)についてクローンを分析した。推定上のILCPをサイトカイン非産生細胞として同定した。個々のILCPクローン中の細胞の絶対数を示す。
図12】ヒトILCPクローン表現型を示す図である。成人末梢血由来のヒトILCPクローンを示される細胞表面マーカーについて染色した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の詳細な説明
本発明者らは、末梢血CD117+ILCの表現型、分子及び機能的属性を特徴付けた。この表現型を有する細胞はヒトILC3を表すことが以前提案されたが(Hazenberg及びSpits、2014)、これらの細胞が、インビトロ及びインビボでEOMES+NK細胞を含む全ての公知のILCサブセットをもたらすことができる多能性及び単能性ILC前駆細胞(ILCP)が著しく濃縮されていることが予期せず発見された。CD117+ILCPは循環中だけでなく、組織中にも見られ、ここでILC多能性を保持している。全身に分布したILCPの同定は、循環ILCPが、感染、炎症及び細胞形質転換に応じて組織中でILC分化のための細胞基質を提供するモデルを示唆する。
【0030】
この報告で、本発明者らは、臍帯血及び成人血液並びに胎児肝臓及びいくつかの成人組織中のLin-CD7+CD127+CD117+細胞のサブセットとしてのヒトILC前駆細胞(ILCP)を同定し、特徴付けている。ヒトILCPは、インビトロ培養後、又は免疫不全マウスへのインビボ移植後、一定範囲のサイトカイン(IFN-γ、IL-13、IL-17A、IL-22)を産生することができる全ての成熟ILCサブセットをもたらす。ヒトILCPはまた、EOMES+NK細胞を産生し、サイトカイン産生ILCと細胞傷害性ILCの両方についてのその能力を実証している。これは、任意の種での循環ILCPについての最初の証拠であり、粘膜部位を含むヒトリンパ組織及び非リンパ組織内のILCPの広範な全身分布を更に実証している。
【0031】
マーカーCD127+CD117+細胞を用いた選別により、約20%のILCP及び60~80%のCD3+であるT細胞が得られた(図8A又は図9A)。系統細胞(CD3を含む)を除外すると、CD127+CD117+細胞でILCPが強く濃縮された(図8E図8F;図9E図9G)。Lin-CD127+CD117+細胞でCRTh2 ILC2を除外すると更なるILCP濃縮がもたらされ、少なくとも75%のILCPが得られた(図8E図8F;図9E図9F及び図9G)。マーカーCD127+CD117+CD7+CRTh2-Lin-を用いて選別すると、約90%のILCPが得られた(図8E及び図9F)。CD56+ NK細胞(CD94を発現する唯一のLin-細胞である)を除外することによって、ILCPの純粋な集団を同定することができた。したがって、マーカーCD127+CD117+CRTh2-Lin-CD94-を用いて選別すると、およそ100%のILCPが得られた(図8F及び図9G)。Lin+細胞内では、CD3+T細胞が、CD127又はCD117を発現する本質的に唯一の細胞である。よって、CD127+CD117+CRTh2-CD3-対CD127+CD117+CRTh2-Lin-を比較した場合、得られるILCPの割合における差は本質的にはない。
【0032】
単一細胞レベルでILC能力を評価することができる堅牢なOP9間質細胞ベースのアッセイのおかげで、ヒトILCPの同定が可能であった。このアプローチを使用して、本発明者らは、IFN-γ+、ILC1、IL-13+、ILC2若しくはIL-17A+及び/又はIL-22+ ILC3をもたらすことができる単能性ILCP並びに2つ以上のILCサブセットを産生することができる多能性ヒトILCPを同定した。本発明者らは、ヒトCD34+ HSCが、インビボで、多系統ILC能力を有するILCPを持つCD117+細胞になることができたことを実証している。まとめると、本発明者らは、多能性CD34+ HSCが、3つの主要なILCグループ(EOMES+ NK細胞を含む)をもたらすことができる多能性ILCP(CD34-CD7+CD127+CD117+CD45RA+表現型を有する)に進行的に分化する、ヒトILCP発達のモデルを提案しようとした。CD34+ HSCと多能性ILCPの両方が胎児肝臓に存在しており、この組織がこの転換を許容することを示唆している。CD117+ ILCPがヒトBM中に存在するかどうかを知ることは興味深いだろう。以前記載されたヒト扁桃ILCP(Scovilleら、2016)は、この経路の中間体を表し得る。BM並びに成人血液及び臍帯血中のCD34+CD117+CD45RA+ILCPの非存在(Scovilleら、2016)は、これらのILCPが局所的に生じることを示唆している。本発明者らが本明細書で記載する循環及び組織常在性ヒトILCPはまた、より制限された単能性ILCを有する細胞を持つ。本発明者らは、多能性ILCPと単能性ILCPの区別を可能にするマーカーを同定しないが、本発明者らは、これらが前駆体と生成物の関係を保持していると仮定している。
【0033】
循環ヒトILCPのトランスクリプトーム及びエピゲノム(epigenomic)分析によって、ILC系列への部分的指定と一致したサインが明らかになった。マウスでILC発達に重要であることが知られているTF(TCF7、TOX、ID2及びGATA3を含む;(Kloseら、2014;Seehusら、2015;Yagiら、2014;Yangら、2015))は、循環HSCと比較してILCPで明らかに上方制御された。対照的に、初期B及びTリンパ球新生のサインは自明でなく、これらの細胞がインビトロ及びインビボでリンパ球に適応することができないことと一致していた。ILCのグループを規定するTF(BCL2、BTX21、EOMES、RORC)は存在しなかった又は低レベルでしか発現しておらず、ILC1、ILC2又はILC3への確約はまだ完了していなかったことを示唆している。興味深いことに、これらの因子をコードする遺伝子座は、豊富なH3K4Me2改変によって証明されるようにまだ「落ち着いていた」。このクロマチンランドスケープは、サイトカイン駆動増殖後の分化ILCサブセットの迅速な産生を促進するようであり(Zookら、2016)、サインサイトカイン及びTF遺伝子座が優勢H3K27メチル化で不活性なままであるナイーブT細胞の状況と対照的である(Kouesら、2016;Shihら、2016)。
【0034】
単能性ILCP及び多能性ILCPは試験された全てのヒト組織試料で同定されたが、単能性又は多能性のILCPの相対割合の差が明確に存在していた。そのため、各組織が、環境シグナルによって条件づけられる独特のILCP「レパートリー」を持つようである。これらは、ILCPに作用して特定のILCサブセットの発達を誘導するILC分化の後期段階((Diefenbachら、2014)に概説)を調節する同じ成長因子及びサイトカインを含み得る。或いは、サイトカイン受容体の確率的発現が、更に分化する能力を有するILCPの画分を提供し得る。様々な組織環境内のILCP応答性を調節する機序の更なる理解が、ヒト疾患への潜在的な治療的応用にとって重要となる。
【0035】
本発明者らの研究は、単能性ILCP及び多能性ILCPからのヒトILC分化の調節におけるNotchシグナルの重要な役割を強調している。組織及び血液中のILCPは、Notchシグナルの存在下でより高い多能性を示している(OP9-DL4培養系)。これは、Notch依存性生存及び増殖シグナルについての多能性ILCPの高い依存性を示し得る(Cheaら、2016b)。或いは、特定のILCサブセットは、その恒常性の点でよりNotch依存性となり得る。特に、マウスのNCR+ ILC3サブセットは、Nptch依存性である(Cheaら、2016a)が、作用機序は不明確なままである。バルク及びクローンレベルでのOP9-DL4培養物中のIL-17A及びIL22産生細胞の頻度増加は、ヒト系における同様の要件を反映し得る。
【0036】
ヒト胎児肝臓の本発明者らの分析は、妊娠期間中の多能性ILCP及びILC3-制限前駆細胞の最初の証拠を提供する。他の単能性ILCPがこの組織でめったに検出されないことは注目すべきことであり、胎児発達のこの段階で、肝臓微小環境が、ILCPをILC3へ強力に偏向させるシグナルを送達し得ることを示唆している。マウスで、同様の知見が報告されている(Cherrierら、2012)。Notchシグナルは、マウス胎児肝臓でリンパ球の運命決定の指示において役割を果たし、T系統プライミング前駆細胞の発達を促進するが、ILCPの恒常性を改変もすることが提案されている(Cheaら、2016b;Dallasら、2005)。ILCPが組織炎症及びストレスを感知するのを可能にするいくつかのサイトカイン受容体(IL-1R、IL-2R、IL-18R)を発現するので、可溶性因子も関与しているようである。
【0037】
TF発現の調節は、ILCの運命並びに機能を指示する。サインTFが、表面表現型及びエフェクター出力のレベルでその分化を「固定する」ILCサブセット、特にサイトカインについて同定されている((Serafiniら、2015)に概説)。TF RORCは、ILC3サブセットを規定するのを助け、マウスにおけるILC3(但し、ILC1、ILC2及びNK細胞を除く)の発達及び維持に必要とされる(Luciら、2019;Sawaら、2010)。予想されるように、RORCはヒトILC3及び確約されたILC3Pで発現される(Montaldoら、2014)。全てのヒトILCサブセットがRORCを発現するという近年の報告(Scovilleら、2016)は、ヒトILC分化におけるこのTFについての広範な役割を示唆した。RORC欠損患者の血液を分析することによって、本発明者らは、RORCがヒトでの包括的なILC分化に必要とされるわけではなく、むしろIL-17+ ILC3サブセットの分化にとって重要であることを示すことができた。RORC欠損患者のILCPは、他のILC及びNK細胞サブセットを産生する能力を保持していた。興味深いことに、IL-22+ ILC3はRORC非依存的様式で発達し、ヒトでのこれらの細胞の代償的経路を示唆している。
【0038】
OP9間質の使用が、ヒトILC2可塑性を最小化することが既に示され(Limら、2016)、ここで、本発明者らは、NKp44+ ILC3クローンの大多数がその機能的属性を保持し、この培養系でILC1表現型に向けた可塑性をほとんど示さないことを示している。更に、以前の報告は、ILC1クローンがIL-1bの存在下でILC3の運命に向けて迅速に分化することを提案した一方で(Berninkら、2015)、本発明者らのOP9培養系(IL-1βを含む)中のILC1クローンはそのIFN-γサインを保持した。よって、本発明者らの培養系は、ILCPからの「主要な」ILC運命を促進するシグナルを評価するのに有用であるように思われる。
【0039】
最後に、本発明者らの循環及び組織常在性ヒトILCPの同定は、ILC分化がいずれの組織でもいずれの年齢でも起こり得るという「オンデマンドILC形成(ILC-poiesis)」の概念を示唆している。マウスでのパラビオーシスを用いた近年の研究により、ILCが定常状態及びある炎症条件下では再循環しない長命の組織常在性細胞であることが提案された(Gasteigerら、2015)。対照的に、他の報告では、いくつかの粘膜ILCサブセットの半減期が数週間程度であることが示され、これらの細胞が再生されるに違いないことを示唆している(Sawa Science)。循環ILCPの発見は、定常状態の喪失に応じて、並びに感染及び炎症という状況で組織ILCを補充する機序を提供する。本発明は、ILCPを含む組成物並びにILCPを作製及び使用する方法を包含する。
【0040】
ILCPを含む組成物
本発明は、本明細書に記載される自然リンパ球前駆細胞(ILCP)を含む組成物を包含する。本明細書で(例えば、実施例で)使用されるマーカーの全ては、ILCPのマーカーとして使用するための任意の及び全ての組み合わせで明確に熟慮され、本発明の種々の実施形態で使用され得る。
【0041】
一実施形態では、本発明は、自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の精製集団を包含する。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%が表現型CD34-CD7+CD127+CD117+CD45RA+を有する。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がNKp44及び/又はRORγtの発現を欠く。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がIL-1R1+及び/又はCD69-である。より好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%が表現型CD34-CD7+CD127+CD117+CD45RA+を有し、NKp44及び/又はRORγtの発現を欠き、IL-1R1+及び/又はCD69-である。より好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%が表現型Lin-CD34-CD7+CD127+CD117+CD45RA+を有し、NKp44及び/又はRORγtの発現を欠き、IL-1R1+及び/又はCD69-であり、場合により更にCD62L及び/又はCD26を発現する。
【0042】
好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がLin-CD7+CD127+CD117+である。
【0043】
いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がLin-CD7+CD127+CD117+CRTh2-である。
【0044】
いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がLin-CD94-CRTh2-CD127+CD117+である。
【0045】
最も好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がCD127+CD117+CD3-CRTh2-である。いくつかの実施形態では、前記集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%が更にCD7+、NKp44-、CD94-及び/又はLin-、並びに/或いは更にCD26+及び/又はCD62L+である。本方法のいくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がCD127+CD117+Lin-CRTh2-(式中、Lin-はCD3-を含む)、並びに場合により更にCD7+、NKp44-及び/又はCD94-、並びに/或いは場合により更にCD26+及び/又はCD62L+である。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は99%がCD127+CD117+Lin-CRTh2-(式中、Lin-はCD3-を含む)、並びに場合により更にCD7+、NKp44-及び/又はCD94-、並びに/或いは場合により更にCD26+及び/又はCD62L+である。いくつかの好ましい実施形態では、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD7+又はCD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有し;より好ましくは集団中の細胞の少なくとも99%又は100%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%が、これらのサイトカインが腸CD117+細胞によって産生される条件下で、刺激後にIL-17AもIL-22も産生しない。
【0046】
好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がT-BET、EOMES及びGATA-3hiを発現しない。
【0047】
好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がCD94、CD244及びCRTh2を発現しない。
【0048】
好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%が、薬理学的活性剤による刺激後にIL-13もIFN-γも産生しない。
【0049】
好ましくは、細胞の集団が少なくとも104、105、106、107、108、109又は1010個のILCP細胞を含む。
【0050】
ILCPを作製する方法
本発明は、本発明の自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の精製集団を作製する方法を包含する。一実施形態では、本方法は、ヒト細胞試料を用意する工程と、試料中でILCPについて選択する工程とを含む。ILCPは本明細書(例えば、実施例)に示されるマーカーの任意の組み合わせを用いて選択することができる。一実施形態では、細胞が、以下のマーカーLin-、CD34-CD7+CD127+CD117+CD45RA+、NKp44-、RORγt-、IL-1R1+、CD69-、CD62L+、CD26+;特に、Lin-、CD34-CD7+CD127+CD117+CD45RA+、NKp44-、IL-1R1+、CD69-、CD62L+、CD26+の任意の組み合わせについて選択される。Lin-は系統陰性細胞を指す;Lin-は、CD3-、CD4-、CD5-、TCRαβ-、TCRαβ-、CD14-及びCD19-を含む及び指す。選択は、例えば、実施例に記載されるように、FACS分析及び細胞選別等の当技術分野の日常的な技術によって行うことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、細胞を、これらのサイトカインが腸CD117+細胞によって産生される条件下で、刺激後にIL-17A又はIL-22の産生の欠如について選択する。
【0052】
いくつかの実施形態では、細胞を、T-BET、EOMES及びGATA-3hiの発現の欠如について選択する。
【0053】
いくつかの実施形態では、細胞を、CD94、CD244及びCRTh2の発現の欠如について選択する。
【0054】
いくつかの実施形態では、細胞を、例えば、実施例に記載されるように、薬理学的活性剤による刺激後のIL-13又はIFN-γの産生の欠如について選択する。
【0055】
いくつかの実施形態では、試料が血液又は組織試料である。試料は成人又は胎児試料であり得る。いくつかの実施形態では、試料が血液、扁桃、腸、胎児肝臓又は肺試料である。
【0056】
いくつかの実施形態では、細胞試料を、細胞選別等によって、Lin-CD7+CD127+CD117+CRTh2-細胞について選択する。いくつかの実施形態では、細胞試料をLin-CD94-CRTh2-CD127+CD117+細胞について選択する。いくつかの実施形態では、細胞試料を、CD127+CD117+CD3-CRTh2-細胞について選択する。いくつかの実施形態では、細胞試料を、CD127+CD117+CD3-CRTh2-細胞、並びに更にCD7+、NKp44-、CD94-及び/又はLin-細胞、並びに/或いは更にCD26+及び/又はCD62L+細胞について選択する。いくつかの好ましい実施形態では、細胞試料を、CD127+CD117+Lin-CRTh2-細胞(式中、Lin-はCD3-を含む)、並びに場合により更にCD7+、NKp44-及び/又はCD94-細胞、並びに/或いは場合により更にCD26+及び/又はCD62L+細胞について選択する。好ましくは、細胞試料を、CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD7+又はCD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-細胞、並びに場合により更にCD26+及び/又はCD62L+細胞について選択する;より好ましくは、試料をCD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-細胞、並びに場合により更にCD26+及び/又はCD62L+細胞について選択する。実施例に示されるもの等の当技術分野の日常的な技術を使用してこれらの細胞を選択することができる。好ましい実施形態では、細胞を当技術分野で周知の方法を使用して選別する。いくつかの実施形態では、FACS又はMACS(登録商標)技術(Miltenyi Biotech)を使用して特定の細胞型を単離する。本明細書に記載されるマーカーのいずれかに対する抗体を使用して、本明細書に記載される細胞マーカーのいずれかの単離、精製及び/又は検出を達成することができる。
【0057】
ILCPを増殖する方法
本発明は、添加されるILCP増殖の方法を包含する。細胞をIL-1βを用いて培養すると、細胞の堅牢な増殖が観察される。ILCPを増殖するために、培養培地はIL-1β、好ましくはIL-1β及びIl-2を含む。更に、培地は場合によりIL-7等の他のサイトカインを含むことができる。
【0058】
細胞を、実施例(例えば、実施例3)に示されるように、又は他の同様の技術によって増殖させることができる。例えば、ILCを、ヒトAB血清を含むYssel培地で培養することができ、間質細胞、IL-7、IL-2及びIL-1βを使用することができる。或いは、DMEM、IMDM又はRPMI-1640等の他の培地を使用することができる。培地及び/又は培地補充物は、細胞培養について当技術分野で知られているように変えることができる。哺乳動物血清を含む細胞培養培地の補充も熟慮される。
【0059】
培地は、好ましくはウシ血清、子ウシ血清、ウシ胎児血清、新生子ウシ血清、ヤギ血清、ウマ血清、ヒト血清、ニワトリ血清、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清及びラット血清から選択される血清、又は血清代替品若しくは胚体液を含む。アミノ酸等の追加の補充物を培地に添加することができる。抗生物質及び抗真菌薬を培地に添加することもできる。
【0060】
ILC1、ILC2、ILC3及びNK細胞を作製する方法
本発明は、ILC1、ILC2、ILC3及びNK細胞を作製する方法を包含する。ILC1、ILC2、ILC3及びNK細胞を、当技術分野で日常的な技術によって、本発明のILCPから作製することができる。例えば、ILC1、ILC2、ILC3及びNK細胞を、実施例に開示される特定の技術を使用して作製することができる。一実施形態では、細胞系(例えば、Mohtashamiら(2010)に開示されるOP9間質細胞系)を使用して、本発明のILCPからILC1、ILC2、ILC3及びNK細胞を作製することができる。最も好ましくは、細胞が「可塑性」とも呼ばれる表現型の変化も機能の変化もなく増殖する。
【0061】
種々の実施形態では、ILCPを種々のサイトカインで処理して、ILC1、ILC2、ILC3及びNK細胞への分化を促進する。これらのサイトカインには、IL-1β(IL-1ベータ)、IL-12、IL-18、IL-25、IL-33、IL-23、IL-2及びIL-7の任意の及び全ての組み合わせが含まれる。
【0062】
種々の実施形態では、ILCサブセットを、間質細胞に基づくアプローチを使用して増殖させることができる。成熟ILCをインビトロで増殖させることができることも示されているが、本発明者らの結果は、その場合、細胞が「可塑性」(特にIFN-γ等のサイトカイン産生についてのエフェクター機能の変化)なしに増殖するので異なる。本発明者らが以前の刊行物でILC2について示したように(Limら、J Exp Med 2016)、この可塑性は特定のヒトサイトカイン(IL-12)によって駆動され得る。ILC3サブセットも、同じアプローチを使用して、最小限の可塑性でインビトロで増殖させることができる。このアプローチを使用して、その機能的特性を変化させることなく、大量の成熟ILC2又はILC3を増殖させることができる。
【0063】
ILCサブセットを、単離ILCPから作製されたILCサブセット、又は患者試料から直接単離されたILCサブセットから増殖させることができる。
【0064】
細胞を、実施例に示されるように、又は他の同様の技術によって増殖させることができる。例えば、ILCをヒトAB血清を含むYssel培地で培養することができ、間質細胞、IL-7、IL-2及びIL-1βを使用することができる。或いは、DMEM、IMDM又はRPMI-1640等の他の培地を使用することができる。培地及び/又は培地補充物は、細胞培養について当技術分野で知られているように変えることができる。哺乳動物血清を含む細胞培養培地の補充も熟慮される。
【0065】
培地は、好ましくはウシ血清、子ウシ血清、ウシ胎児血清、新生子ウシ血清、ヤギ血清、ウマ血清、ヒト血清、ニワトリ血清、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清及びラット血清から選択される血清、又は血清代替品若しくは胚体液を含む。アミノ酸等の追加の補充物を培地に添加することができる。抗生物質及び抗真菌薬を培地に添加することもできる。
【0066】
最も好ましくは、IL-7、IL-2及びIL-1βを含む培地を使用する。
【0067】
ヒトILCPは、間質細胞の非存在下で、サイトカインを使用してインビトロで増殖されてきた。他の細胞株をILCPの培養に使用することができる。
【0068】
ILCPの好ましい細胞源は末梢血であるが、これには骨髄、扁桃、リンパ節、皮膚、脂肪組織、腸、肝臓及び肺も含まれ得る。これらの様々な組織の全てからのILCPをインビトロで培養し、成熟ILCサブセットを得ることができる。
【0069】
特定の成長因子の組み合わせを培養培地に添加して、ILCPを特定のサブセットに分化させることができる。例えば、IL-12及びIL-18を添加してILC1サブセットを作製することができる。IL-25及びIL-33を添加してILC2サブセットを作製することができる。IL-23を添加してILC3サブセットを作製することができる。
【0070】
特定の成長因子の組み合わせを培養培地に添加して、ILCPの特定のサブセットへの分化を阻害することができる。例えば、Tbet又はTBX21発現を変化させる小分子、化学剤又は遺伝子改変を使用して、ILC1サブセットへの分化を阻害することができる。BCL11B発現を変化させる小分子、化学剤又は遺伝子改変を使用して、ILC2サブセットへの分化を阻害することができる。RORγt(マウスではRORC)発現を変化させる小分子、化学剤又は遺伝子改変を使用して、ILC3サブセットへの分化を阻害することができる。
【0071】
OP9細胞株はATCCを通して入手可能である(オープンアクセス)。例えば、米国特許第8772028号及び米国特許第9533009号で、OP9細胞が以前、初期ヒトT細胞前駆細胞を開発するために使用されている。
【0072】
最小限の可塑性を有するILC3を増殖させる方法は、Limら J Exp Med 2016でILC2について記載されるものと異なる。ILC2については、成熟ILC2(血液から単離)をIL-2、IL-7、IL-25及びIL-33を用いて培養した(OP9で)。ILC3については、成熟ILC3を、IL-2、IL-7及びIL-1βを用いて培養している。(成熟ILC3を扁桃から単離し、IL-2、IL-7及びIL-1βを用いてOP9-DL4で培養する実施例3を参照されたい)。
【0073】
扁桃に加えて、ILC3を作製する手順は、胎児肝臓、臍帯血、成人末梢血、肺、脂肪及び腸試料でうまく使用されている。
【0074】
ILCP又はILC1、ILC2若しくはILC3細胞のいずれも、CRISPR、ZFN若しくはTALEN、又は所望のゲノム配列を付加若しくは排除するための他のゲノム編集技術によって改変することもできるだろう。レトロウイルス、AAV及びレンチウイルスベクターを含むベクターを使用してこれらの細胞を改変することもできる。種々の実施形態では、RORC、RORTγt、BCL11B、Tbet及びTBX21から選択される遺伝子を不活性化する。
【0075】
細胞を、キメラ抗原受容体(CAR)を含むように改変することもできる。これらのCARは、典型的には結合ドメインのその標的への結合に応じてシグナル伝達をもたらす膜貫通ドメイン及びエンドドメイン(endodomain)に融合したモノクローナル抗体又はナノボディ等からの単鎖結合ドメインを含む。CARの例は当技術分野で周知である。このような遺伝子操作された受容体を使用して、モノクローナル抗体の特異性を成熟ILCに移植することができる。ILCのあるサブセット(例えば、ILC2)が骨髄細胞を通して免疫応答を抑制するので、CARを発現するILCはある自己免疫疾患で有用となり得る。
【0076】
種々の実施形態では、ILCPをインビボで投与して、ILC1、ILC2、ILC3及びNK細胞への分化を促進する。
【0077】
種々の実施形態では、本方法が、自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の集団を用意する工程と、細胞集団を外部刺激に供する工程と、ILC1、ILC2、ILC3及びNK細胞から選択される少なくとも1つの細胞型の増加を検出する工程とを含む。種々の実施形態では、ILC1、ILC2、ILC3及び/又はNK細胞を分離、精製及び/又は収穫する。
【0078】
細胞集団をインビボ又はインビトロで外部刺激に供することができる。いくつかの実施形態では、細胞集団を、ヒト化マウスモデルで外部刺激に供する。種々の実施形態では、外部刺激がウイルス、寄生生物、微生物又は細菌生物(例えば、HIV若しくはマラリア)又はこれらの成分(例えば、DNA若しくはタンパク質)である。種々の実施形態では、外部刺激がサイトカイン又はサイトカインの混合物である。種々の実施形態では、外部刺激が試験化合物である。
【0079】
好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%が表現型CD34-CD7+CD127+CD117+CD45RA+を有し、NKp44及びRORγtの発現を欠く、並びに/或いはIL-1R1+及びCD69-であり、場合により更にCD62L及び/又はCD26を発現する。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%が表現型Lin-CD34-CD7+CD127+CD117+CD45RA+を有し、NKp44及びRORγtの発現を欠く、並びに/或いはIL-1R1+及びCD69-であり、場合により更にCD62L及び/又はCD26を発現する。
【0080】
いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がLin-CD7+CD127+CD117+CRTh2-である。好ましくは集団中の細胞の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は99%がLin-CD7+CD127+CD117+CRTh2-である;より好ましくは、集団中の細胞の少なくとも90%、95%又は99%がLin-CD7+CD127+CD117+CRTh2-である。
【0081】
いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がLin-CD94-CRTh2-CD127+CD117+である。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は99%がLin-CD94-CRTh2-CD127+CD117+である;より好ましくは、集団中の細胞の少なくとも90%、95%又は99%がLin-CD94-CRTh2-CD127+CD117+である;更により好ましくは、集団中の細胞の少なくとも99%又は100%がLin-CD94-CRTh2-CD127+CD117+である。
【0082】
好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がCD127+CD117+CD3-CRTh2-である。より好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がCD127+CD117+CD3-CRTh2-、並びに更にCD7+、NKp44-、CD94-及び/又はLin-、並びに/或いは更にCD26+及び/又はCD62L+である。本方法のいくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がCD127+CD117+Lin-CRTh2-(式中、Lin-はCD3-を含む)、並びに場合により更にCD7+、NKp44-及び/又はCD94-、並びに/或いは場合により更にCD26+及び/又はCD62L+である。好ましくは集団中の細胞の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は99%がCD127+CD117+Lin-CRTh2-(式中、Lin-はCD3-を含む)、並びに場合により更にCD7+、NKp44-及び/又はCD94-、並びに/或いは場合により更にCD26+及び/又はCD62L+である。いくつかの好ましい実施形態では、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD7+又はCD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する;より好ましくは集団中の細胞の少なくとも99%又は100%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。
【0083】
治療のための方法及び組成物
本発明は、自然免疫系調節を必要とする患者を治療するために使用するための自然リンパ球前駆細胞(ILCP)を含む組成物を包含する。よって、本発明は、患者を治療するためのこれらの化合物の使用及び患者を治療する方法を包含する。
【0084】
種々の実施形態では、患者が、蠕虫感染症、腸病原体感染症、腫瘍、ウイルス感染症、アレルギー、喘息、炎症又は自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス又はI型真性糖尿病)を有する。
【0085】
種々の実施形態では、患者が免疫不全、免疫無防備状態又は免疫抑制であり得る。種々の実施形態では、患者ががん患者である、又は慢性疾患(例えば、クローン病、IBD)を有する。
【0086】
種々の実施形態では、本発明は、ヒト患者を治療する方法であって、ILCPの精製集団を患者に投与する工程を含み、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD34-CD7+CD127+CD117+CD45RA+を有し、NKp44及びRORγtの発現を欠く、並びに/或いはIL-1R1+及びCD69-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+である方法を包含する。
【0087】
種々の実施形態では、本発明は、ヒト患者を治療する方法であって、ILCPの精製集団を患者に投与する工程を含み、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型Lin-CD34-CD7+CD127+CD117+CD45RA+を有し、NKp44及びRORγtの発現を欠く、並びに/或いはIL-1R1+及びCD69-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+である方法を包含する。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも90%、95%又は99%がLin-CD7+CD127+CD117+CRTh2-である。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも90%、95%又は99%がLin-CD94-CRTh2-CD127+CD117+である。
【0088】
好ましくは、集団中の細胞の少なくとも90%、95%又は99%がCD127+CD117+CD3-CRTh2-である。より好ましくは、集団中の細胞の少なくとも90%、95%又は99%がCD127+CD117+CD3-CRTh2-、並びに更にCD7+、NKp44-、CD94-及び/又はLin、並びに/或いは更にCD26+及び/又はCD62L+である。いくつかの好ましい実施形態では、集団中の細胞の少なくとも90%、95%又は99%がCD127+CD117+Lin-CRTh2-(式中、Lin-はCD3-を含む)、並びに場合により更にCD7+、NKp44-及び/又はCD94-、並びに/或いは場合により更にCD26+及び/又はCD62L+である。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD7+又はCD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する;より好ましくは集団中の細胞の少なくとも99%又は100%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。
【0089】
種々の実施形態では、単能性又は多能性ILCP、特に多能性ILCPを適切な因子と組み合わせて、これらをインビトロ又はインビボで、治療する疾患に応じて特定の型(ILC1、ILC2又はILC3)に分化させることができる。いくつかの実施形態では、疾患に応じて、ILCPの分化を増加させる若しくは阻害する、又は特定の型への分化を阻害することが有益となり得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/138590号、米国特許出願公開第2016/0145344号及び米国特許出願公開第2016/0304574号参照)。
【0090】
ILCサブセットは、感染症、がん炎症、組織修復及び恒常性を含む種々の疾患及び細胞過程に関与している。参照により本明細書に組み込まれるTait Wojneら、2016。ILC3は腸のGALT形成、炎症、免疫及び恒常性を促進するので(id.)、本発明の方法によって作製されるILC3を使用してこれらの過程を伴う疾患を治療することができる。ILC2は造血及び非造血細胞との相互作用を通して炎症、免疫、組織修復及び恒常性に影響を及ぼすので(id.)、本発明の方法によって作製されるILC2を使用してこれらの過程を伴う疾患を治療することができる。ILC1はT-bet及びIFN-γを発現し、1型炎症に寄与する(id.)。本発明の方法によって作製されるILC1を使用してこれらの過程を伴う疾患を治療することができる。
【0091】
細胞を当技術分野の日常的な技術によって患者に投与することができる。好ましくは、104、105、106、107、108、109又は1010個のILCP細胞を患者に投与する。
【0092】
自己、同種又は異種ILC又はILCPを、組織又は血液への直接注射等によって、対象、好ましくはヒトに投与することができる。好ましくは、細胞を薬学的に許容される担体と組み合わせて投与する。細胞を単回又は少なくとも2、3、4、5回等の注射で投与することができる。細胞を一般的にはその免疫認識を変えるように改変することができる。
【0093】
ILCPを使用するスクリーニング法
本発明は、ILCPのILC1、ILC2、ILC3及び/又はNK細胞への分化を調節(すなわち、阻害又は増強)する化合物をスクリーニングする方法を包含する。種々の実施形態では、本発明のILCPの集団を、インビボ又はインビトロで、試験化合物と接触させ、化合物の分化に対する効果を評価する。効果は、細胞集団中の細胞の表現型の変化を検出することによって観察することができる。
【0094】
試験化合物は天然化合物であっても合成化合物であってもよい。種々の実施形態では、試験化合物がウイルス、寄生生物、微生物又は細菌生物(例えば、HIV若しくはマラリア)又はこれらの成分(例えば、DNA若しくはタンパク質)である。種々の実施形態では、試験化合物がサイトカイン又はサイトカインの混合物である。
【0095】
いくつかの実施形態では、細胞集団中の細胞の表現型の変化を、試験化合物との接触前後の細胞集団中のILCP、ILC1、ILC2、ILC3及び/又はNK細胞のレベルを測定することによって検出する。細胞の表現型は、実施例に開示されるように、及び当業者に知られている同様の技術によって検出することができる。いくつかの実施形態では、試験化合物との接触後のILCP、ILC1、ILC2、ILC3及び/又はNK細胞のレベルを、未処理ILCP対照と比較する。
【0096】
一実施形態では、本発明は、ILCの発達に影響を及ぼす化合物をスクリーニングする方法であって、自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の集団を用意する工程と、細胞集団を試験化合物と接触させる工程と、細胞集団中の細胞の表現型の変化を検出する工程とを含む方法を包含する。
【0097】
いくつかの実施形態では、試験化合物がILCPの分化の減少を引き起こす。いくつかの実施形態では、試験化合物がILCPの分化の増加を引き起こす。いくつかの実施形態では、試験化合物が特定のILCサブセットへの分化の減少を引き起こす。いくつかの実施形態では、試験化合物が特定のILCサブセットへの分化の増加を引き起こす。
【0098】
いくつかの実施形態では、本方法が、ILCPを、これらを分化させることができる刺激(例えば、OP9-DL4培養系)と組み合わせる工程と、細胞集団を試験化合物と接触させて、化合物の分化に対する効果を決定する工程とを含む。他の実施形態では、化合物の効果を、このような刺激の非存在下で、及び/又は他の化合物若しくは刺激(例えば、サイトカイン)を添加して、決定する。
【0099】
いくつかの実施形態では、本方法が、マウスに自然リンパ球前駆細胞(ILCP)の集団を注入する工程と、試験化合物をマウスに投与する工程とを含む。好ましくは、マウスがヒト化マウスである。
【0100】
好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%が表現型CD34-CD7+CD127+CD117+CD45RA+を有し、NKp44及びRORγtの発現を欠き、IL-1R1+及びCD69-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+である。
【0101】
好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%が表現型Lin-CD34-CD7+CD127+CD117+CD45RA+を有し、NKp44及びRORγtの発現を欠き、IL-1R1+及びCD69-、並びに/或いは場合によりCD26+及び/又はCD62L+である。
【0102】
いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がLin-CD7+CD127+CD117+CRTh2-である。
【0103】
いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がLin-CD94-CRTh2-CD127+CD117+である。最も好ましくは、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がCD127+CD117+CD3-CRTh2-である。いくつかの実施形態では、前記集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%が更にCD7+、NKp44-、CD94-及び/又はLin-、並びに/或いは更にCD26+及び/又はCD62L+である。いくつかの実施形態では、集団中の細胞の少なくとも25%、35%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%がCD127+CD117+Lin-CRTh2-(式中、Lin-はCD3-を含む)、並びに場合により更にCD7+、NKp44-及び/又はCD94-、並びに/或いは場合により更にCD26+及び/又はCD62L+である。好ましくは、集団中の細胞の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は99%がCD127+CD117+Lin-CRTh2-(式中、Lin-はCD3-を含む)、並びに場合により更にCD7+、NKp44-及び/又はCD94-、並びに/或いは場合により更にCD26+及び/又はCD62L+である。いくつかの好ましい実施形態では、集団中の細胞の少なくとも90%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD7+又はCD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する;より好ましくは集団中の細胞の少なくとも99%又は100%が表現型CD127+CD117+Lin-CRTh2-CD94-、並びに場合によりCD26+及び/又はCD62L+を有する。
【実施例0104】
材料及び方法
ヒト血液及び組織試料
健康なドナーの血液試料を、パスツール研究所と署名で合意してEstablishment Francais du Sang(EFS、パリ)から入手した。RORC突然変異(RORC-/--P1;RORC-/--P2、p.A421X/Q421X)を有する患者の血液試料は以前に報告されている(26160376)。臍帯血を正常分娩から得た。扁桃を、扁桃摘出術を受けた小児患者から入手した。胎児肝臓を14~20週齢に及ぶ妊娠期間での人工妊娠中絶から入手した。ヒト胎児肝臓を用いる実験は、パスツール研究所の医学倫理委員会によって承認され、フランスの法律を完全に順守して行った。肺は外科手術を受けている患者から入手し、試料はDr.JM Sallennave(ビシャ病院)によって提供された。腸は外科手術を受けた結腸がん患者から入手し、Dr.M Allez(セントルイス病院)によって提供された。インフォームドコンセントを、ネッカー医学学校、パリデカルト大学、ビシャ病院、セントルイス病院、パリ公立病院支援機構の治験審査委員会によって要求及び承認されるように各患者から入手した。
【0105】
ヒト免疫系(HIS)マウスモデル
BALB/c Rag2-/-Il2rg-/- SirpaNOD(BRGD)マウスを記載し、パスツール研究所でアイソレーター中で維持した。CD34+HSC又はCD117+ILCを、FACS Ariaを使用して健康なドナーの末梢血から選別した。胎児肝臓CD34+ HSCを、CD34マイクロビーズキット(Miltenyi)を使用して単離した。インビボ移植実験については、1~3×105個のCD117+ ILC又はCD34+ HSCを、0.3μgのIL-2及びIL-7(Miltenyi)と合わせて、致死量以下照射(3Gy)新生(3~7日齢)BRGSマウスに肝内注射した。マウスに毎週腹腔内注射によってIL-2、IL-7、IL-1β、IL-23、IL-25及びIL-33(それぞれ0.3μg)を与え、移植4週間後に分析した。HISマウスの作製については、胎児肝臓由来CD34+ HSCを、致死量以下照射(3Gy)新生(3~7日齢)BRGSマウスに肝内注射した。マウスを注射8~9週後に屠殺した。実験は、パスツール研究所の倫理委員会によって承認され、フランス教育研究省によって検証された。
【0106】
血液、扁桃、腸、胎児肝臓及び肺からの細胞単離
CB及びPBのヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll-Paque(GE Healthcare)密度勾配遠心分離によって単離した。胎児肝臓及び扁桃からの単一細胞懸濁液を、70μmフィルタを通した機械的破壊によって達成した。肺及び腸試料を切り刻み、37℃振盪インキュベーター中で45分間、Liberase TL(25μg/ml;Roche)及びDNアーゼI(50μg/ml;Sigma-Aldrich)で消化した。消化した組織を70μmフィルタに通過させた。肝臓、肺及び腸からのリンパ球を、Ficoll-Paque密度勾配遠心分離によって単離した。
【0107】
FACS分析及び細胞選別
FACS分析のために、最初に、細胞をFlexible Viability Dye eFluor 506(eBioscience)で10分間染色し、引き続いて氷上でBrilliant Stained Buffer(BD)で20分の表面抗体染色をした。細胞内TF染色を伴う実験については、細胞を固定し、透過処理し、Foxp3/転写因子染色緩衝液キット(eBioscience)を使用して染色した。細胞内サイトカイン染色については、細胞を、Golgi Plug(BD)の存在下で、PMA(10ng/ml;Sigma)+イオノマイシン(1μg/ml;Sigma)で3時間刺激した。細胞を固定し、透過処理し、Cytofix/Cytopermキット(BD)によって染色した。試料をLSRFortessa(BD)で獲得し、FlowJ10(Tree Star)によって分析した。
【0108】
健康なPBからの細胞選別のために、製造業者の指示に従って、ビオチンコンジュゲート抗CD3、抗CD4、抗CD19、抗CD14、抗CD123、引き続いて抗ビオチンマイクロビーズ(Miltenyi)で標識することによって、最初にPBMCからT細胞、B細胞、pDC及び単球を枯渇させた。CB及び組織からの選別を系統枯渇で行った。バルク集団を純度99%以上まで、又は単一細胞指標選別として(FACSAria II;BDを共に使用)選別した。
【0109】
バルクRNA単離、ライブラリー構築、配列決定及び分析
各集団の103個の細胞を、溶解/結合緩衝液(Life Technologies)50μl中に直接FACS選別した。mRNAをDynabeadsオリゴ(dT)(Life Technologies)で捕捉し、洗浄し、10mM Tris-HCl(pH7.5)10μlで70℃で溶出した。単細胞RNA-seq用に開発された記載される(24531970)MARS-seqの派生物を使用して、1集団当たり最小2つの複製を含む発現ライブラリーを作製することができる。1ライブラリー当たり平均400万の読み取りを配列決定し、デフォルトパラメータ(10289445)と共にTopHat v2.0.10を使用してヒト参照ゲノム(NCBI)に整列した。発現レベルを計算し、各試料について、HOMERソフトウェア(homer.salk.edu)を使用して読み取り総数に正規化した。任意の2つのサブタイプの平均間のノイズに対して2倍の差を有する高度に発現された遺伝子に焦点を当てた(8つの読み取り)。DAVID(12734009)を使用して、KEGG分析を行った。
【0110】
クロマチン免疫沈降及びChipMentationを用いた配列決定(Chip-Seq)
FACS選別細胞(20~50K)を直ちに、ChIP-Seq分析のために室温で10分間、1%ホルムアルデヒド(Sigma)を含むPBS中で架橋させた。グリシン(0.125M最終濃度)を添加し、引き続いて室温で5分間インキュベートすることによって、架橋をクエンチした。細胞を氷上に置き、PBSで洗浄し、-80℃で貯蔵するために瞬間凍結した。技術的変動を最小化するためにペレットを同時に処理した。細胞を100μl超音波処理緩衝液(1%SDS、10mM EDTA、50mM Tris-HCl pH8及び1×EDTAフリー完全プロテアーゼ阻害剤;Roche)に再懸濁し、0.65ml Bioruptor超音波処理管(Diagenode)に移した。15分間の氷上でのインキュベーション後、Bioruptor Pico超音波処理器(Diagenode)を用いて、細胞を30サイクル(30秒間ON-30秒間OFF)の間超音波処理して、クロマチンを±250bpフラグメントまでせん断した。900μl 10×ChIP希釈緩衝液(0.01%SDS、1.1%Triton X-100、1.2mM EDTA、16.7mM Tris-HCl pH8、167mM NaCl)を添加することによって、クロマチンを平衡化し、1μlのH3K4Me2特異的抗体(ab32356、Abcam)又は陰性対照としての正常ウサギIgG(sc-2027、Santa Cruz)と共に4℃で一晩インキュベートした。更に、1IP当たり20μlのプロテインA Dynabeads(Thermo Fisher Scientific)を、4℃で一晩のインキュベーションによって0.1%BSA(Sigma)を含むPBS中でブロッキングした。翌日、ビーズをChIP希釈緩衝液によって元の体積に再懸濁し、クロマチン抽出物に添加した。4℃で2時間のインキュベーション後、ビーズを回収し、低塩緩衝液(0.1%SDS、1%Triton X-100、2mM EDTA、20mM Tris-HCl pH8、150mM NaCl)、高塩緩衝液(0.1%SDS、1%Triton X-100、2mM EDTA、20mM Tris-HCl pH8、500mM NaCl)及びLiCl緩衝液(10mM Tris-HCl pH8、1mM EDTA、250mM LiCl、0.5% NP-40、0.5%デオキシコール酸)で洗浄した。次いで、磁気ビーズ上に固定化されたクロマチン抗体を、近年記載されている(Schmidlら、2015)、タグメンテーション(tagmentation)に供した。溶出したDNAを、MinEluteスピンカラム(Qiagen)を使用して精製し、Nextera PCRプライマーを使用して8~12サイクル増幅した。二重(0.5×~2.0×)SPRI Ampure XPビーズ(Beckman Coulter)を使用してライブラリーを精製し、プールし(1配列決定実行当たり最大10)、単一読み取り75bpプロトコルを実行するNextSeq500(Illumina)で配列決定した。
【0111】
ChIP-Seqデータ処理、分析及び可視化
読み取りを、BaseSpace(Illumina)を使用して多重分離し、標準的な設定で、唯一にマッピングされ得なかった読み取りを除去して、Bowtie(Langmead,B,&Salzberg,S.L. Fast gapped-read alignment with Bowtie 2. Nat Methods 9、357~359、doi:10.1038/nmeth.1923(2012))を使用してマウスゲノム(mm10構築)に割り当てた。インデックスされ、選別されたbamファイルを、更なる分析のためにHOMER(Heinz, S.ら Simple combinations of lineage-determining transcription factors prime cis-regulatory elements required for macrophage and B cell identities. Mol Cell 38、576~589、doi:10.1016/j.molcel.2010.05.004 (2010))に解析した。タグディレクトリを、二重読み取り(-tbp 1オプション)の除去により各試料について作成した。正規化された数(100万当たりの読み取り)を示すBedGraphファイルを、makeUCSCfile HOMERスクリプトを使用してUCSC Genome Browser(https://genome.ucsc.edu/)で直接可視化のために作成した。H3K4Me2濃縮領域を、-領域-サイズ1000-miniDist 2500オプションでHOMER findPeaksを使用して同定した。2つの試料間の重複及び非重複領域を、1bpの最小重複を必要とするBEDTools(Quinlan,A.R.&Hall,I.M. BEDTools: a flexible suite of utilities for comparing genomic features. Bioinformatics 26、841~841、doi:10.1093/bioinformatics/btq033(2020))又はHOMER mergePeaksスクリプト(-d givenオプション)の興味深い関数を使用して同定した。細胞型特異的H3K4Me2+領域のセットを、
Java TreeView(Saldanha, A.J. Java Treeview-extensible visualization of microarray data. Bioinformatics 20、3246~3248、doi:10.1093/bioinformatics/bth349(2004))を用いてヒートマップとして可視化した。領域/ピークを、推定上の標的遺伝子GREATに割り当てた(McLean,C.Y.ら GREAT improves functional interpretation of cis-regulatory regions. Nat Biotechnol 28、495~501、doi:10.1038/nbt.l630(2010))。その後、GREATを使用して、バックグラウンドとして全ゲノムを使用して、公知の経路サインについてのこれらの遺伝子の濃縮を計算した。
【0112】
バルク及び単一細胞培養
全てのインビトロ培養実験を、2%ヒトAB血清(EFS)を補足したYssel培地(18432890)で行った。2~3×103個の間質細胞を、培養の一晩前に96ウェル丸底プレートに事前に蒔いた。Yssel培地を、IMDM(Invitrogen)+0.25%(w/v)ウシ血清アルブミン(Sigma)、1.8μg/L 2-アミノエタノール、40μg/Lアポトランスフェリン、5μg/Lインスリン及びペニシリン/ストレプトマイシンを使用することによってインハウスで調製する。バルク培養については、100~300個のFACS選別細胞を間質細胞上に蒔いた。クローニング実験については、細胞を、間質細胞を事前に蒔いた96ウェルプレートに直接インデックス選別した。サイトカインIL-2、IL-7(それぞれ20ng/ml、Miltenyi)、IL-12、IL-18、IL-25、IL-33、IL-1β、IL-23(それぞれ20ng/ml、R&D)を指示されるように種々の組み合わせで用意した。バルク培養については、新鮮なサイトカイン及び培地を5日毎に補充し、10日間の増殖後に分析した。クローニング実験のために、サイトカイン及び培地を7日毎に補充し、14~18日間の培養後に分析した。
【0113】
(実施例1)
ヒト末梢血CD117+ ILCの特性評価
指定しない限り、データを中央値として表す。各実験についての標本サイズ及び実験の複製数を図の凡例に含める。循環ILCを、健康な個体並びに多様な臨床症候群を患っている患者の系統-CD7+CD56-CD127+末梢血(PB)細胞内の低頻度集団(全CD45+細胞の0.2%未満)として同定することができる((Hazenberg及びSpits、2014;Munnekeら、2014;図1A及び図IB)。PB ICLのILC1、ILC2及びILC3への更なる分画が、CD161、CRTh2、CD117及びNKp44を含む胎児組織及び扁桃中のILCサブセットを同定する表現型マーカーを使用して達成されている(Spitsら、2013)。よって、以前の報告は、ヒト血液中の循環ILC2(CD161+CRTh2+GATA-3+細胞)並びにILCl(CD161+CRTh2-CD117-T-BET+細胞)を同定している(Mjosbergら、2011)。循環ILCはまた、CRTh2発現を欠く優勢CD117+サブセットも含む((Munnekeら、2014;Velyら2016);図1A及び図IB)。組織常在性ILC3がCD117を強力に発現するので、以前の研究は、これらの細胞を循環ILC3とみなしていた(Cellaら、2009;Cupedoら、2009)。しかしながら、PB CD117+ ILCは、ILC3を同定するNKp44及び転写因子(TF)RORγtの発現を欠くという点で、腸CD117+ ILCとは劇的に異なることが分かった(図1C)。したがって、PB CD117+ ILCは刺激後にIL-17AもIL-22も産生しないが、腸CD117+細胞はこれらのILC3関連サイトカインを豊富に産生する(図1D)。興味深いことに、循環CD117+ ILCは高レベルのIL-1R1、CD45RAを発現し、CD69-である一方、腸常在性ILC3はCD69+であるが、IL-1R1-及びCD45RA-である(図1C)。これらの知見は、PC CD117+ ILCが正真正銘のILC3ではないことを示唆している。
【0114】
PB CD117+ ILCは他の公知のILCサブセットを特徴付けるサインTF(すなわち:T-BET、EOMES、GATA-3hi)を発現しなかった(図1C)。したがって、PB CD117+ ILCは、CD94、CD244、CRTh2等のNK細胞、ILC1及びILC2に関連するマーカーを発現できず(図1A)、薬理学的活性剤による刺激後にIFN-γもIL-13も産生しなかった(図1D)。まとめると、これらの結果は、PB CD117+ ILCがいかなる標準的なILCサブセットも表さないことを示唆している。
【0115】
(実施例2)
CD117+ ILCの転写及びクロマチンランドスケープはILC前駆細胞プロファイルを明らかにする
CD117は血液リンパ系前駆細胞上で高度に発現するので(Ikuta及びWeissman、1992;Kikushigeら、2008)、PB CD117+ ILCが確約されていないリンパ球前駆細胞を含み得ると仮定された。PB CD117+ ILCの正体を更に理解するために、高度に精製された循環CD117+ ILCのトランスクリプトーム及びエピジェネティックランドスケープを明らかにし、CD34+ HSCと比較した(図2A);後者は多系統能力を有する未成熟造血前駆細胞を表す(Baumら、1992;Mohtashamiら、2010)。
【0116】
クロマチン免疫沈降を行い、引き続いてトランスポサーゼ媒介タングメンテーションを使用したハイスループット配列決定(ChIPm-Seq)を行い、これにより本発明者らが少数の精製細胞のエピゲノムを直接分析することが可能になった。CD34+ HSC及びCD117+ ILCの共通の及び特有のエピジェネティックな特徴を暴くために、ヒストンH3リジン4ジメチル化(H3KMe2)が、他のヒストン修飾よりも優れた正確さで活性遺伝子制御エレメント(GRE)と落ち着いた遺伝子調節エレメントの両方をマークするので、H3KMe2をマッピングした(Zhangら 2012 Cell、Kocheら Cell Stem Cell 2011)。約18000~35000個のGREがCD117+ ILC及びCD34+ HSCでそれぞれ同定され(図2B)、その大部分がイントロン及び遺伝子間領域に位置していた(Supp.図X)。有意な数のH3K4Me2+ GREが2つの細胞型間で共有されていた:CD117+ ILCで同定されたGREの89%がHSCの同様の濃縮を示し、その多くがハウスキーピング機能をコードする13159個の遺伝子と関連していた。それにもかかわらず、CD117+ ILCで検出されたH3KMe2+ GREの11%がCD34+ HSCに存在せず、2283個の遺伝子を潜在的に調節していた。これらの遺伝子の経路分析によって、免疫系及びリンパ球関連過程についての強力な濃縮が明らかになった(図2C)。例えば、IL1R1、IL7R、IL2RA/B等のリンパ球発達及び機能にとって重要なサイトカイン/ケモカインシグナル伝達遺伝子は、CD117+ ILC特異的GREに関連していた。逆に、CD34+ HSC中でのみ活性であるGRE(CD34+ HSC中の全GREの54%)は、止血、血小板活性化を含む造血にとって重要なより一般的な経路及びNotchシグナル伝達経路に関与する遺伝子の近くに位置していた(図2C)。
【0117】
CD117+ ILC及びCD34+ HSCのトランスクリプトームを比較するために、RNA配列決定(RNA-Seq)を行った。遺伝子発現プロファイルの明確な差異が現れ、1540個の遺伝子の大きなクラスターがCD117+ ILCで相当高いレベルで発現していた(図2D)。これらのうち、多くの遺伝子がILZF1、CD2、CD7及びIL7Rを含むリンパ系統に強く関連していた(図2D)。対照的に、CD34+ HSC細胞は、ID1、GATA1、GATA2及びMYBを含む多様な造血系統(図2D)並びに骨髄系統のサイトカイン受容体(CSF3R、CSF2RB、FLT3)の広範な発達に関与する遺伝子を高度に発現していた。HSCと比較して、CD117+ ILCは、高レベルの、ID2、GATA3、TOX及びTCF7を含むマウスILC発達に必須であることが示されているTFを発現する。RAG1、RAG2、EBF1、CD3E、BCL11A又はLMO2等のT及びB細胞発達に特徴的な転写産物はCD117+ ILCで検出されなかったが、これらの遺伝子のいくつかはHSCによって発現される。
【0118】
CD117+ ILCのトランスクリプトーム分析とエピジェネティック分析の両方によって強力なリンパ球サインが同定されたので、CD117+ ILCの発達状態についての洞察を得るために、これらのデータベースを交差した。CD117+ ILCで最も高度に発現される遺伝子の相当な割合(26%)が、CD117+ ILC-特異的GREのすぐ近くに位置していた(図2E)。驚くべきことに、これらには、ID2、GATA3、ETS1、TOX、TCF7、RORA及びNOTCHI(図2E)を含むマウスILC発達において以前関係づけられた多くの転写因子が含まれていた-CD117+ ILCの自然リンパ球の運命への確約と一致する。対照的に、成熟ILC TF(EOMES、TBX21、RORC)、サイトカイン受容体(CCR6、IL1RL1、IL23R)又はサインサイトカイン(IFNG、IL13、IL5、IL22、IL17A)のいずれについても、著しい発現レベルは検出されなかった。しかしながら、これらの成熟ILC同一性遺伝子のいくつかは既にH3K4Me2でマークされており、これらが落ち着いた状態で存することを実証している(図2E)。対照的に、B及びT細胞発達の重要な調節因子(RAG1、RAG2、EBF1、BCL11A,HES1、LMO2)はH3K4Me2で選択的にマークされなかった。まとめると、これらの分析により、CD117+ ILCが、後生的に落ち着いた状態の重要な成熟ILCサイン遺伝子による多能性ILC前駆細胞(ILCP)に似たTF発現プロファイルを有するリンパ球偏り前駆細胞を表すことが示唆されている。
【0119】
(実施例3)
末梢血CD117+ ILCは多能性ILC前駆細胞(ILCP)を含む
循環CD117+ ILCの造血能力を評価するために、これらの細胞を種々のサイトカインの存在下でバルク培養した。CD117+ ILCはCD25、CD127及びCD121a(IL-1R1)を発現するので(図1A図1C)、IL-2、IL-7及び/又はIL-1βをこれらの培養物に添加した。バルク培養物はIL-2及びIL-7の存在下で最小限増殖したが、細胞を1L-1βで培養した場合、堅牢な増殖が観察された(図3A)。ILC1/NK(IL-12、IL-18)、ILC2(IL-25、IL-33)又はILC3(IL-23)発達を駆動することができるサイトカインの更なる存在は、IL-1βで得られたものよりは細胞収率を更には増加させなかった(図3A)。バルク培養細胞はB(CD19+)細胞もT(CD3+CD5+)細胞も持たなかったが、CD161+であるCD7+細胞の純粋な集団を含んでおり、可変レベルのCD117及びCD25を発現していた(図3B)。
【0120】
注目すべきことに、増殖細胞は、いくらかのEOMES+CD94+ NK細胞並びに3つの標準ILCグループ:IFN-γ+ ILC1、IL-13+ ILC2及びNKp44+IL-17A+IL-22+ ILC3を表す細胞を含んでいた(図3B)。IL-25及びIL-33補充は、これらの培養物中のILCサブセットの分布を認識できるほどには変化させなかったが、IL-12の添加により、EOMES+CD94+ IFN-γ産生NK細胞の発達が明らかに促進され、IL-23がIL-17A産生ILC3にとって重要であった(図3B)。これらの結果は、多系統ILC及びNK細胞産生を支持するサイトカイン「ミックス」(IL-2、IL-7、IL-1β、IL-23)を規定するだけでなく、PB CD117+ ILCが多系統ILC前駆細胞(ILCP)を持つことも示唆している。
【0121】
B細胞、T細胞及び骨髄細胞発達を許容する改変間質細胞系培養系を使用して、循環CD117+ ILCの多系統能力を更に特徴付けた(図3C;Mohtashamiら、2010)。更に、この系は最小限の可塑性でクローンレベルでヒトNK細胞及びILCサブセットを広範に増殖することができる(Limら、2016)。OP9及びOP9-DL4で培養した単一PB CD117+ ILCの子孫を分析して、EOMES+ NK細胞並びにIFN-γ、IL-13、IL-17A及び/又はIL-22を産生するILCサブセットを同定した(図3D)。OP9-DL4間質は強力なNotchリガンドを発現し、本発明者らが、この経路を誘因する影響を評価するのを可能にする(Mohtashamiら、2010)。340種を超えるクローン培養物の本発明者らの分析によりいくつかの点を指摘することが可能になる。第1に、PB CD117+ ILCは単能性及び多能性ILC前駆細胞(ILCP)の不均一集団を表す。単一CD117+ ILCに由来する培養物のおよそ半分が単一ILCサブセット(ILC1、ILC2又はILC3のみ)を産生するので、系統制限ILCPを表すが、残りは2種以上の別個のLin-CD7+ ILC系統をもたらすことができる多能性ILCPである(図3E)。B細胞及びT細胞能力は観察されなかった。第2に、多能性ILCP集団内で、相当な割合(9~17%)が、3種全てのILCサブセットを産生することができ、未熟な確約されていないILCPを表すようである。更に、クローンIFN-γ+培養物はまた、EOMES+ NK細胞を含み、あるPB ILCPが、単一細胞レベルで「ヘルパー」ILC系統と「細胞傷害性」ILC系統の両方を産生する能力を有することを実証している。第3に、Lin-CD7+ILCクローンのサブセットは、試験したいずれのサイトカインも産生できなかった(図3E)。これらのクローンは高レベルのCD7及びCD117を維持していたが、他のILCマーカーを欠いていたので、これらは更には分化しなかったILCPを表し得る。第4に、ILC3含有細胞の多能化及び発達がOP9-DL4で増強されたので、NotchシグナルはCD117+ ILCPの細胞の運命の能力に明らかに影響を及ぼす(図3E)。まとめると、これらのデータは、PB CD117+ ILCを確約されたILC前駆細胞の循環プールとして同定している。バルク及びクローンアッセイの比較により、CD117+ ILC細胞の運命の能力の不均一性を規定し、機能的多能性を確立するための単一細胞アプローチの重要性が明らかに実証される。
【0122】
(実施例4)
循環CD117+ ILCPはヒト化マウスにおいてインビボで多ILC能力を有する
次に、PB CD117+ ILCPのインビボ能力を評価した。以前の研究により、ヒトCD34+造血幹細胞(HSC)前駆細胞を移植した重度免疫不全マウス株がヒトリンパ球(B、T、NK)及び骨髄(DC、マクロファージ、好中球)細胞サブセットを産生する能力が実証された((Shultzら、2012)に概説)。堅牢な多系統ヒト造血細胞移植を許容するBALB/c Rag2-/-Il2rg-/-SirpaNOD(BRGS)マウスを使用した(Legrandら、2011)。同じドナーからのヒトPB CD34+ HSC及びCD117+ ILCPを新生BRGSマウスに養子的に移植した;サイトカイン補充(IL-2、IL-7、IL-1β、IL-23)を提供し、4週間後にマウスを分析した(図4A)。ヒトCD34+ HSCを移植したBRGSマウスは骨髄でCD19+ B細胞及びCD14/CD33+骨髄細胞を発達した一方、CD3/CD5+ T細胞及びLin-CD7+ NK/ILCが腸で検出された(図4B)。対照的に、PB CD117+ ILCPを受けたBRGSマウスは、Lin-CD7+細胞を発達させたが、骨髄細胞も、B細胞も、T細胞も発達させなかった。移植CD117+ ILCPからのヒトCD45+子孫を、脾臓、肺、腸及び肝臓を含む複数の器官で検出した(図4C)。これらの組織部位の各々で、刺激時にエキソビボでIFN-γ、IL-13、IL-17A及び/又はIL-22を産生するEOMES+ NK細胞並びに多様なCD127+ ILCサブセットを同定することができた(図4C)。これらの結果は、PB CD117+ ILCPがインビボで全ての公知のILCサブセット及びNK細胞を産生する能力を有することを実証している。PB CD117+ ILCPは骨髄、B及びT細胞能力を欠いているので、これらの細胞が確約されたILC前駆細胞を構成すると結論付けられた。
【0123】
(実施例5)
ヒトCD117+ ILCPはインビボでCD34+ HSCから発達する
次に、CD34+ HSCとCD117+ ILCPの間の発達関係を調べた。免疫不全新生仔BRGSマウスに、精製CD34+ HSCを移植し、8~9週間後に屠殺した(図5A)。ヒトCD45+細胞を骨髄、肺、肝臓及び脾臓で分析した。予想されるように(Legrandら、2011)、これらの様々な組織部位は、種々の系統+ T、B及び骨髄細胞を含むヒトCD45+細胞を持っていた(図5B、データは示さず)。更に、Lin-CD7+細胞のサブセット内で、T-BET及びEOMES発現を欠くCD127+CD117+細胞の明確に規定される亜集団が複数の組織で識別された(図5B)。これらには、低レベルのGATA-3及びRORγtを発現し、NKp44-であり(図5D)、そのためPB CD117+ ILCPに似ているCD127+CD117+細胞が含まれた。エキソビボ刺激はCD127+CD117+細胞からサイトカイン産生を誘発できなかった(図5E)。これらの細胞を選別し、IL-2、IL-7、IL-1β及びIL-23の存在下でバルク培養した。増殖細胞はIFN-γ、IL-13、IL-17A及びIL-22を産生することができるサブセットを含んでおり(図5E)、それによってヒトILCPの存在が確認された。これらの結果は、CD34+ HSCがインビボでCD117+ ILCPをもたらすことができることを実証している。
【0124】
(実施例6)
ヒトCD117+ ILCPは胎児肝臓、臍帯血及び成人肺中に存在する
次に、ヒトCD117+ ILCPが生じる発達段階を評価した。最初に、胎児肝臓(FL)がいくつかの未成熟造血前駆細胞集団を持つことが示されており(Rolliniら、2007)、マウスにおけるリンパ組織誘導細胞の発達の見解として提案されている(Cherrierら、2012)ので、FL中のヒトILCサブセットを試験した。FL内のLin-CD127+ ILCは、優勢なCD117+サブセットを含んでいる。興味深いことに、これらの細胞は、その末梢血対応物を超えるレベルでRORγtを発現し(図1C)、更に、CCR6、ニューロピリン-1(NRP-1)を発現するが、NKp44は発現しない。これらの差異にもかかわらず、FL CD117+ ILCは、刺激後に有意な量のIL-17AもIL-22も産生せず、これらが完全成熟ILC3ではなかったことを示唆している。それにもかかわらず、FL CD117+ ILCをインビトロで増殖させると、IL-17A産生ILC3が豊富に産生された。更に、IL17A+ ILC3はDL4を欠く間質細胞で発達し、この過程に追加のNotch関与は必要でなかったことを示唆している(図6A)。興味深いことに、FL CD117+ ILCのバルク培養物はまた、頻度は低いが、検出可能なIL-13及びIFN-γ産生細胞を含んでいる。クローン分析によって、FL CD117+ ILCが、予想通り、高い割合のILC3確約前駆細胞を持つことが明らかになった。更に、この集団の相当な割合が、Notchリガンドの存在下でより明確に明らかにされる多能性ILCPを含んでいる(図6B図6C)。これらの結果は、ヒトFLが、全ての公知のILCサブセットを産生することができるCD34-CD127+CD117+多能性ILCPを持つことを実証している。この組織部位のILC3確約前駆細胞の濃縮は、環境シグナルが、この期間中に多能性ILCPのILC3の運命への更なる指定を指示し得ることを示唆している。
【0125】
次に、ヒト臍帯血(CB)のCD117+ ILCを特徴付けた。そのPB対応物と同様に、CB CD117+ ILCはNKp44発現並びにCCR6及びNRP-1の発現を欠き、CD45RA+であった。更に、CB CD117+ ILCはRORγt及びT-BETを発現できなかったが、GATA-3loであり、よってPB ILCPに似ていた。PB CD117+ ILCのように、CB CD117+ ILCは刺激後にエキソビボでサイトカイン(IFN-γ、IL-13、IL-17A又はIL-22)を産生しなかった。しかしながら、IL-2、IL-7、IL-1β及びIL-23中でのCB CD117+ ILCのバルク培養は、IFN-γ+、ILC1、IL-13+ ILC2及びIL-17A+又はIL-22+ ILC3を含む多様なサイトカイン産生ILCサブセットを産生した(図6D)。CB CD117+ ILCの培養物では、T細胞も、B細胞も、骨髄細胞も検出されなかった(データは示さず)。更なるクローン分析によって、CB CD117+ ILCが単能性ILCPと多能性ILCPの多様な混合物を持つことが明らかになった(図6E及び図6F)。FL CD117+ ILCとは異なり、CB CD117+ ILCはILC3確約前駆細胞に偏っていなかったが、PB CD117+ ILCPにより密接に似ていた。PB又はFLのILCPに関しては、Notch刺激が多能性ILCP(特にIL-17+及びIL-22+ ILC3の能力を有するもの)の頻度増強及びサイトカイン-ILCクローンの頻度減少をもたらし、この経路が特異的ILCサブセットの定方向の発達を促進したことを示唆している。
【0126】
成人肺組織のCD117+ ILCの表現型及び能力も調査した。肺CD117+ ILCはNKp44+及びRORγt+ ILCの控えめな集団を持っていたが、大部分はCD45A-であった。肺CD117+ ILCのバルク培養物は、多様なサイトカイン産生ILCサブセット及びEOMES+ NK細胞を産生した(図6G);クローンアッセイを使用した更なる分析により、肺CD117+ ILCのNKp44-分画が単能性ILCPと多能性ILCPの混合物として規定された(図6H及び図6I)。これらの結果は、多能性前駆細胞を含む種々のILCPがヒト粘膜組織中に存在することを実証している。
【0127】
(実施例7)
ILC前駆細胞は二次リンパ組織内に存在する
ヒト二次リンパ組織(リンパ節、扁桃)は、多様なILCサブセット及びその前駆細胞を持つ(Berninkら、2013;Cellaら、2009;Fehnigerら、2003;Mjosbergら、2011;Renouxら、2015;Montaldoら、2015;Scovilleら、2016)。そのため、扁桃CD117+ ILCPを更に特徴付け、その細胞の運命の能力を評価することは興味深かった。小児扁桃のCD117+ ILCは、IL-17A及びIL-22を産生するように刺激することができる優勢なNKp44+ ILC3サブセットを持つ(Hoorwegら、2012)。この集団はまた、刺激(IL-1β、IL-12、IL-23を使用)によってこれらの細胞のサイトカイン出力を改変することができる(Berninkら、2015;Berninkら、2013;Cellaら、2010)ので、広範な機能的可塑性を有するように思われる。扁桃CD117+ ILC内では、NKp44-細胞がCD45RA+及びNRP-1-である一方、NKp44+細胞がCD45RA-及びNRP-1+であることが分かった。これらは、NLp44+ ILC3がより成熟しており、NLp44-細胞から分化することを示唆している(Berninkら、2015)。しかしながら、サイトカイン産生プロファイルは、扁桃NKp44-対NKp44+ CD117+ ILCからのバルク培養で異なっていた(図6J及び図6M)。特に、IfN-γ+細胞及びIL-13+細胞は、特にOP9間質でのNKp44-細胞由来の培養物でより自明であった(図6J)。
【0128】
NKp44-とNKp44+ CD117+ ILCの関係をより良く理解するために、両サブセットからのクローンを作製し、そのサイトカイン産生能力を分析した。著しい差異が観察された。NKp44+ CD117+ ILCに由来するクローンは高度に濃縮されたIL-17A及び/又はIL-22を産生するILC3であった(図6N及び図6O)。クローンの画分はIFN-γを同時発現し(14%)、以前示されたように(Berninkら、2015)、T-BETを上方制御し得る「可塑性」ILC3を表しそうである。対照的に、NKp44- CD117+ ILCに由来するクローンは極めて不均一であり、細胞がIL-22及び/又はIL-17Aだけでなく、豊富な単一IFN-γ+クローン並びに単一IL-13+クローンも産生しており(図6K及び図6L)、これらはNKp44+ CD117+ ILCからは検出されなかった(図6N及び図6O)。扁桃CD127+ ILC1がIL-2、IL-23及びIL-1βの存在下で、IL-22産生ILC3に分化するという以前の報告があっても(Berninkら、2015)、IFN-γ+ ILC1クローンが観察されたという事実は予想外であった。最後に、3つのILCサブセットをもたらす多能性ILCPはNKp44- CD117+ ILCでのみ見られた。まとめると、これらの結果は、NKp44- ILCP並びにNKp44+ ILC3を含む扁桃CD117+ ILCが極めて不均一であることを示唆している。更に、本発明者らのクローンアッセイの使用によって、バルク培養レベルで可視化されないILCPレパートリーの定義が明確に可能になる。
【0129】
(実施例8)
RORC欠損患者はILCPを持つが、IL-17A+ ILC3を産生できない
CD34+CD45RA+CD117+表現型を有するヒト二次リンパ組織に確約されたILCPは、TF RORCを高度に発現することが示された(Scovilleら、2016)。CD117+ ILCPはCD34+ HSCから発達的に下流にあるので(図5)、以前記載されたCD34+CD45RA+CD117+ ILCPサブセットはこの経路の中間体となることが可能である。RORCがヒトCD117+ ILCPの産生に必要であったかどうかを扱うために、RORC欠損患者を研究した。ヒトにおけるRORC欠損は粘膜皮膚カンジダ症に関連し、以前の研究によって、このTFが真菌病原体から防御するTh17細胞の分化に必須であることが実証された(Okadaら、2015)。RORC欠損を有する2人の患者の末梢血細胞のILCサブセットを試験した(図7A)。Lin-CD7+細胞は、対照とRORC欠損患者の両方でCD56+ NK細胞の優勢な集団を含んでおり(CD56brightとCD56dimの両方)、CD127+ ILCの控えめな亜集団も明らかに検出された。以前記載されたように(Okadaら、2015)、CD117発現ILCの頻度減少がRORC欠損を有する患者で認められたが、この集団はまだ明らかに存在していた(図7A及び図7B)。対照的に、RORCの非存在下で、ILC1は存在し、全ILCからのILC2の割合は有意に増加した(図7B)。対照及びRORC欠損患者からの選別したCD117+ ILCを、上記のようにバルク培養した。Lin-CD7+細胞の堅牢な増殖が観察され、WTとRORC欠損細胞の間に有意な差はなかった。IFN-γ、IL-13又はIL-22を産生するものを含む多様なサイトカイン産生細胞がこれらの培養物で同定されたが、IL-17A産生細胞は存在しなかった(図7C)。EOMES+IFN-γ+ NK細胞の発達は、RORCの非存在によって影響を受けなかった。これらの結果は、RORCがヒトにおいてNK細胞、ILC1、ILC2及びIL-22+ ILC3の発達に必要とされないが、ILCPからのIL-17+ ILC3の産生には必須であることを実証している。
【0130】
(実施例9)
血液中のILCPマーカーの分析
CD127及びCD117はILCPによって発現されるが、これらは特異的ではない。最小限の必須マーカーの洞察を得るために、ILCPについて高度に濃縮するために使用することができたマーカーの組み合わせを分析した。そのため、様々な細胞型の割合を、成人末梢血から細胞を単離するための様々なマーカーを使用してFACSによって決定した。結果は、マルチパラメータFACS分析を用いた、末梢血中のヒトILCPについての濃縮の分析を表す。異なるゲーティングスキームを使用して、ILCP並びに存在し得る他の細胞型(T細胞、NK細胞、ILC2)の濃縮を推定することができる。結果を図8A図8F及び図9A図9Gに提示する。
【0131】
マーカーCD127+CD117+細胞を使用する選別によって、約20%のILCP及び60~80%のT細胞が得られた(図8A及び図9A)。CD7を含めることも、CRTh2を除外することも、両方の組み合わせも、汚染T細胞が優勢であったため、CD127+CD117+細胞内のILCPを濃縮するのに十分ではなかった(図8A図8D:図9A図9D)。系統細胞(CD3を含む)を除外すると、CD127+CD117+細胞内のILCPが強力に濃縮された(図8E図8F;図9E図9G)。Lin-CD127+CD117+細胞内のCRTh2 ILC2を除外すると、更なるILCP濃縮がもたらされ、少なくとも75%のILCPが得られた(図9E)。CD7はこの効果に必要とされなかった(図8E及び図9F)。CD94を除外すると、Lin-CD127+CD117+CRTh2-細胞からの純粋なILCPの単離が可能になった(図8F及び図9G)。したがって、マーカーCD127+CD117+CD7+CRTh2-Lin-を使用した選別はおよそ90%のILCPをもたらし(図8E及び図9F)、マーカーCD127+CD117+CRTh2-Lin-CD94-を使用した選別はおよそ100%のILCPをもたらした(図8F及び図9G)。
【0132】
(実施例10)
追加のILCPマーカー
ヒトILCP(Lin-CD127+CD117+CRTh2-として定義される)を、これらの細胞を単離するための有用な代用となり得る追加の細胞表面マーカーの発現について更にスクリーニングした。可変的CD62L及びCD26発現がヒトILCPで同定され、ほとんどの細胞がCD62L+であり、細胞の大部分がCD26を発現していた(図10)。
【0133】
クローン分析によって、これらのサブセットの全てが多能性ILCPを持っていることが実証された(Table 1(表1))。
【0134】
【表1】
【0135】
これらの結果は、ヒトILCPのサブセットを単離するために使用することができる追加の「任意の」マーカー(CD62L、CD26)を同定している。
【0136】
ヒトILCP増殖:ヒトILCPクローンの分析(OP9間質細胞並びにIL-2、IL-7、IL-1β及びIL-23の組み合わせを使用)によって、いずれの試験したサイトカイン(IFN-g、IL-13、IL-17A、IL-22)も発現できない細胞が同定された。これらのILCP「クローン」は数が100~1000倍増殖した(図11)。これらの細胞は表現型CD117、CD45RA及びCD26であり、CD117、CD45RA及びCD26を発現することが分かったが、CD62L-であった(図12)。再クローニング実験によって、これらの細胞が全てのILCサブセットについて多能性を有し続けることが示された。ヒトILCPは、間質細胞とサイトカインの組み合わせを使用して増殖させることができ、機能的特性を保持することができると結論付けられた。
【0137】
(参考文献)
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6-1】
図6-2】
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】