(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025790
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】道路勾配算出装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131144
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】317005022
【氏名又は名称】独立行政法人自動車技術総合機構
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】奥井 伸宜
(57)【要約】
【課題】車両(10)が走行した道路の道路勾配を正確に且つ簡便に算出する。
【解決手段】車両が道路を走行した時の走行速度および駆動力の時系列のデータを読み込み、更に、その車両を用いてシャシダイナモメータ(50)で走行速度を再現させた時の再現駆動力の時系列のデータも読み込む。読み込んだ駆動力と再現駆動力との偏差(駆動力偏差)を算出して、駆動力偏差と道路勾配との対応関係を参照することによって駆動力偏差を道路勾配に変換する。走行速度をシャシダイナモメータ上で再現する際に、シャシダイナモメータの道路勾配を勾配0に設定しておけば、駆動力偏差は道路勾配に対応する。従って、駆動力偏差を道路勾配に変換することで、車両が走行した道路の道路勾配を正確に且つ簡単に算出することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行した道路の道路勾配を算出する道路勾配算出装置であって、
前記車両が前記道路を走行した時の走行速度と、前記車両が発生させた駆動力とを、時系列で読み込む走行データ読込部と、
シャシダイナモメータ上で前記車両を用いて前記走行速度を再現させた時に、前記車両が発生させた駆動力である再現駆動力を時系列で読み込む再現データ読込部と、
前記駆動力と前記再現駆動力との偏差である駆動力偏差を算出する駆動力偏差算出部と、
予め記憶しておいた前記駆動力偏差と前記道路勾配との対応関係を参照することにより、前記駆動力偏差を前記道路勾配に変換する道路勾配変換部と
を備えることを特徴とする道路勾配算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の道路勾配算出装置であって、
前記再現データ読込部は、運転ロボットを用いて前記車両を運転することによって前記走行速度を再現した時の前記再現駆動力を読み込む
ことを特徴とする道路勾配算出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の道路勾配算出装置であって、
前記道路勾配を設定可能な前記シャシダイナモメータ上で前記道路勾配を変更しながら前記車両を走行させた時の前記車両の走行速度と、前記車両の駆動力である勾配付駆動力と、前記道路勾配とを時系列で読み込む勾配付データ読込部と、
前記シャシダイナモメータ上で前記道路勾配を0に設定した状態で前記走行速度を再現させた時の前記車両の駆動力である勾配無駆動力を時系列で読み込む勾配無データ読込部と、
前記勾配付駆動力と前記勾配無駆動力との偏差である勾配有無駆動力偏差を算出する勾配有無駆動力偏差算出部と、
前記勾配有無駆動力偏差を、前記道路勾配に対して整理することによって、前記勾配有無駆動力偏差と前記道路勾配との対応関係を生成する対応関係生成部と
を備え、
前記道路勾配変換部は、前記対応関係生成部によって生成された前記対応関係を参照することによって、前記駆動力偏差を前記道路勾配に変換する
ことを特徴とする道路勾配算出装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の道路勾配算出装置であって、
前記道路勾配が既知の標準道路を前記車両で走行した時の前記走行速度である標準走行速度と前記車両の駆動力である標準駆動力とを時系列で読み込む標準データ読込部と、
前記シャシダイナモメータ上で前記道路勾配を0に設定した状態で前記車両を用いて前記標準走行速度を再現させた時の前記車両の駆動力である再現標準駆動力を時系列で読み込む再現標準データ読込部と、
前記標準駆動力と前記再現標準駆動力との偏差である標準駆動力偏差を算出する標準駆動力偏差算出部と、
前記標準駆動力偏差を、前記標準道路の前記道路勾配に対して整理することによって、前記標準駆動力偏差と前記道路勾配との対応関係を生成する対応関係生成部と
を備え、
前記道路勾配変換部は、前記対応関係生成部によって生成された前記対応関係を参照することによって、前記駆動力偏差を前記道路勾配に変換する
ことを特徴とする道路勾配算出装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の道路勾配算出装置であって、
前記車両は、該車両を走行させるモータと、前記モータに対して電力を充放電するバッテリとを搭載した電気自動車であり、
前記バッテリから前記モータに充放電される電流値を、前記車両の駆動力として読み込む
ことを特徴とする道路勾配算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行した道路の道路勾配を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に求められる性能には、動力性能や燃費性能や排ガス性能などの様々な性能が存在する。これらの性能の中には、たとえば動力性能と排ガス性能とのように、一方を改善すると他方が悪化し、他方を改善すると一方が悪化する関係(いわゆる二律背反の関係)となっているものが多く存在する。そして、これらの性能を同時に改善することが困難である以上、それらの性能をできるだけ高いレベルでバランスさせることが重要となる。
【0003】
車両に求められる性能をバランスさせるためには、車両の実際の使われ方(たとえば走行速度や加速度およびそれらの時間変化など)を把握する必要がある。そして、車両の走行速度や加速度などは道路勾配によって大きな影響を受けるので、道路勾配もできるだけ正確に計測しておく必要が生じる。
【0004】
道路勾配を計測する技術としては、GPSなどの衛星測位システムを利用して車両の位置情報(緯度、経度、標高)を取得して、標高の変化から道路勾配を検出する技術(特許文献1)や、走行中の大気圧を精度よく計測して大気圧を車両の標高に変換し、標高の変化から道路勾配を算出する技術(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-296122号公報
【特許文献2】特開2001-331832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、提案されている技術では、道路勾配を正確に且つ簡便に計測することができないという問題があった。たとえば衛星測位システムを利用する方法では、緯度や経度に比べて標高の精度が低くなる傾向があり、精度が低い標高を用いて算出したのでは正確な道路勾配を算出することは困難である。また、走行中に計測した大気圧を利用する方法では、気圧の変化に対して計測値の変化が遅れる傾向があるので、道路勾配を小さめに算出する傾向があり、更には気象条件による外乱の影響も受け易いため、正確な道路勾配を算出することが困難である。もちろん、測量の技術を用いて、道路の標高の変化を計測することによって道路勾配を算出することはできるが、これでは多大な手間が掛かってしまうため、簡便な方法とは言い難い。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、車両が走行した道路の道路勾配を、正確に且つ簡便に算出することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の道路勾配算出装置は次の構成を採用した。すなわち、
車両が走行した道路の道路勾配を算出する道路勾配算出装置であって、
前記車両が前記道路を走行した時の走行速度と、前記車両が発生させた駆動力とを、時系列で読み込む走行データ読込部と、
シャシダイナモメータ上で前記車両を用いて前記走行速度を再現させた時に、前記車両が発生させた駆動力である再現駆動力を時系列で読み込む再現データ読込部と、
前記駆動力と前記再現駆動力との偏差である駆動力偏差を算出する駆動力偏差算出部と、
予め記憶しておいた前記駆動力偏差と前記道路勾配との対応関係を参照することにより、前記駆動力偏差を前記道路勾配に変換する道路勾配変換部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる本発明の道路勾配取得装置においては、車両が道路を走行した時の走行速度および駆動力の時系列のデータを読み込み、更に、その車両を用いてシャシダイナモメータ上で走行速度を再現させた時の駆動力である再現駆動力の時系列のデータも読み込む。そして、読み込んだ駆動力と再現駆動力との偏差である駆動力偏差を算出して、予め記憶しておいた駆動力偏差と道路勾配との対応関係を参照することによって、駆動力偏差を道路勾配に変換する。
【0010】
車両が道路を走行した時の走行速度をシャシダイナモメータ上で再現する際に、シャシダイナモメータの道路勾配を勾配0に設定しておけば、車両が道路を走行した時の駆動力と、シャシダイナモメータ上で走行速度を再現した時の再現駆動力との偏差(すなわち、駆動力偏差)は、車両が走行した道路の道路勾配に対応するものと考えられる。そこで、駆動力偏差と道路勾配との対応関係を予め求めておき、この対応関係を参照して駆動力偏差を道路勾配に変換してやれば、車両が走行した道路の道路勾配を、正確に且つ簡単に算出することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明の道路勾配算出装置においては、車両が道路を走行した時の走行速度をシャシダイナモメータ上で再現する際に、運転ロボットを用いて走行速度を再現させることによって得られた再現駆動力を読み込むようにしても良い。
【0012】
シャシダイナモメータ上で走行速度を再現する際に、運転ロボットを用いて再現してやれば、人間が再現した場合よりも走行速度を正確に再現することができるので、正確な道路勾配を算出することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明の道路勾配算出装置においては、次のようにして生成した対応関係を参照することによって、駆動力偏差を道路勾配に変換しても良い。先ず、道路勾配を設定可能なシャシダイナモメータ上で、道路勾配を変更しながら車両を走行させることによって、車両の走行速度と、車両の駆動力である勾配付駆動力と、道路勾配とを計測した時系列の勾配付データを読み込む。次に、シャシダイナモメータ上で道路勾配を0に設定した状態で走行速度を再現させた時の車両の駆動力である勾配無駆動力を計測した時系列の勾配無データを読み込む。そして、読み込んだ勾配付駆動力と勾配無駆動力との偏差である勾配有無駆動力偏差を算出して、得られた勾配有無駆動力偏差を道路勾配に対して整理することによって、勾配有無駆動力偏差と道路勾配との対応関係を生成する。
【0014】
このようにして対応関係を生成すれば、車両を実際に走行させて計測した結果に基づいて対応関係を生成するので、駆動力偏差と道路勾配との関係に影響を与える複数の要素(例えば、車重や、車両の内部での摩擦や、モータの効率など)が反映された対応関係を求めることができる。このため、より一層正確な道路勾配を算出することが可能となる。
【0015】
あるいは、上述した本発明の道路勾配算出装置においては、次のようにして生成した対応関係を参照することによって、駆動力偏差を道路勾配に変換しても良い。先ず、道路勾配が既知の標準道路を車両で走行することによって、車両の走行速度である標準走行速度と、車両の駆動力である標準駆動力とを計測した時系列の標準データを読み込む。次に、シャシダイナモメータ上で道路勾配を0に設定した状態で標準走行速度を再現させた時の車両の駆動力である再現標準駆動力を計測した時系列の再現標準データを読み込む。そして、読み込んだ標準駆動力と再現標準駆動力との偏差である標準駆動力偏差を算出して、得られた標準駆動力偏差を、標準道路の道路勾配に対して整理することによって、駆動力偏差と道路勾配との対応関係を生成する。
【0016】
こうすれば、車両の走行中に道路勾配を変更可能なシャシダイナモメータを用いなくても、駆動力偏差と道路勾配との正確な対応関係を求めることができるので、道路勾配を正確に算出することが可能となる。
【0017】
また、上述した本発明の道路勾配算出装置においては、モータの力で走行する電気自動車で道路を走行して、走行中に電気自動車のバッテリからモータに充放電される電流値を、車両の駆動力として読み込むこととしても良い。
【0018】
モータが発生させるトルクはモータに供給される電流値によって決定されるから、こうすれば、車両の車軸のトルクセンサを装着するなどして、直接的に駆動力を計測する方法よりも簡単に駆動力を計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施例の道路勾配算出装置100の大まかな構造を示した説明図である。
【
図2】本実施例の道路勾配算出装置100が実行する道路勾配算出処理のフローチャートである。
【
図3】走行データを計測するために車両10を走行させた経路を例示した説明図である。
【
図4】車両10が実路走行することによって計測した走行データを例示した説明図である。
【
図5】シャシダイナモメータ上で車両10を走行させることによって再現データを計測する様子を示した説明図である。
【
図6】実路走行時と再現走行時との駆動力偏差を示した説明図である。
【
図7】駆動力偏差と道路勾配との対応関係を例示した説明図である。
【
図8】駆動力偏差と道路勾配との対応関係を生成する対応関係生成処理のフローチャートである。
【
図10】駆動力偏差に対する道路勾配の散布図である。
【
図11】運転ロボット20と人間との走行速度の再現精度の違いを例示した説明図である。
【
図12】変形例の対応関係生成処理のフローチャートである。
【
図13】標準データを取得するための試験用道路を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施例の道路勾配算出装置100の大まかな構造を示した説明図である。
図1に示すように、本実施例の道路勾配算出装置100は、CPUやメモリーや入出力ポートなどによって構成されたいわゆるマイクロコンピュータである。周知のように、マイクロコンピュータは、メモリーに記憶されているプログラムを実行することによって様々な機能を実現することが可能であるが、本実施例の道路勾配算出装置100は、車両10で計測したデータを処理することによって、車両10が走行した道路の道路勾配を算出することが可能となっている。
【0021】
道路勾配の算出には、マイクロコンピュータの様々な機能が組み合わされて使用されるが、それらの機能に着目すると、道路勾配算出装置100は、走行データ読込部101や、記憶部102や、走行データ出力部103や、再現データ読込部104や、駆動力偏差算出部105や、道路勾配変換部106や、対応関係生成部107などを備えていると考えることができる。尚、これらの「部」は、道路勾配を算出するために道路勾配算出装置100の内部で実現される機能を概念的に表したものであり、道路勾配算出装置100の内部にこれらの「部」に対応するデバイスが搭載されていることを示すわけではない。実際には、これらの「部」はプログラムによってソフトウェア的に実現されていてもよいし、専用のICチップなどを用いてハードウェア的に実現されていてもよいし、更にはこれらの組み合わせによって実現されていてもよい。
【0022】
走行データ読込部101は、車両10が道路を走行した時の走行速度および駆動力の時系列データを読み込む機能を実現する。尚、走行速度のデータは、走行速度に変換可能なデータであればよく、必ずしも走行速度そのもののデータである必要はない。例えば、車両10のタイヤが所定角度回転する度に出力されるパルスの周波数のデータであってもよい。また、駆動力のデータについても、駆動力に変換可能なデータであればよく、必ずしも駆動力そのもののデータである必要はない。本実施例では、車両10として、モータの駆動力で走行する電気自動車を使用しており、モータの駆動力はモータに供給する電流値(正確には、電圧値を乗算して得られる電力)によって決定される。このことから、車両10の駆動力を示すデータとして、モータに供給する電流値あるいは電力を用いることもできる。更には、たとえば車軸に装着したトルクセンサを用いて駆動トルクを計測するようにしても良い。
【0023】
図1に示すように、本実施例で用いる車両10には、モータ11や、モータ11に電力を供給するバッテリ12が搭載されており、モータ11が発生する駆動力をタイヤ10tに伝達することによって走行する。バッテリ12の電圧は、定電圧回路13を介してモータ11に供給されるようになっており、定電圧回路13の下流にはモータ11に供給される電流値を検出する電流計14が搭載されている。また、車両10には、車両10の走行速度を検出する車速センサ15も搭載されており、電流計14や車速センサ15の出力はデータ収集装置16に入力されている。データ収集装置16は、所定の時間間隔でデータを取得して記憶する機能を有しており、このため、車両10で道路を走行しながら、データ収集装置16で電流計14の電流値および車速センサ15の走行速度を記憶することで、車両10の時系列の走行データを記憶することが可能となっている。
【0024】
道路勾配算出装置100の走行データ読込部101は、データ収集装置16に記憶された走行データ(すなわち、走行速度および駆動力)を、データ収集装置16から直接に、あるいは記憶媒体を介して読み込んだ後、記憶部102に記憶する。尚、本実施例では、駆動力を示すデータとして、モータ11に供給される電流値を読み込んでいる。
【0025】
走行データ出力部103は、記憶部102に記憶されている走行データの中から走行速度のデータを読み出して、外部に出力する機能を実現する。走行データ出力部103が出力する走行速度のデータを、車両10に搭載した運転ロボット20に供給すれば、車両10が道路を走行した時の状態を再現することができる。その時の走行速度や電流値の時系列のデータも、データ収集装置16を用いて記憶しておく。
【0026】
再現データ読込部104は、運転ロボット20で車両10の走行を再現した時の走行データ(以下、再現データ)を、データ収集装置16から直接に、あるいは記憶媒体を介して読み込んだ後、記憶部102に記憶する機能を実現する。
【0027】
駆動力偏差算出部105は、記憶部102に記憶されている走行データおよび再現データを読み出して、走行データ中の駆動力と、再現データ中の駆動力との偏差(以下、駆動力偏差)を算出する機能を実現する。上述したように、走行データおよび再現データは、所定の時間間隔の時系列データとなっているから、駆動力偏差算出部105によって算出される駆動力偏差も時系列データとなっている。
【0028】
道路勾配変換部106は、駆動力偏差算出部105で算出された駆動力偏差を取得すると、記憶部102に予め記憶されている対応関係を参照することによって、駆動力偏差を道路勾配に変換した後、記憶部102に記憶する。駆動力偏差を道路勾配に変換することが可能な理由や、変換に際して参照する対応関係については、後ほど詳しく説明する。また、対応関係を生成する方法についても後ほど詳しく説明する。
【0029】
駆動力偏差は時間の経過と共に変化するデータであるから、道路勾配も時間の経過と共に変化するデータとなっており、この道路勾配の変化は、車両10が道路を走行したことに伴って道路勾配が変化する様子を表したものとなっている。このことから、本実施例の道路勾配算出装置100では、車両10で道路を走行した時の走行データを読み込んで後述する処理を実行することによって、車両10が走行した経路上での道路勾配を算出することが可能となる。
【0030】
図2は、本実施例の道路勾配算出装置100が実行する道路勾配算出処理のフローチャートである。以下では、このフローチャートに従って、道路勾配を算出するための具体的な手順について説明する。
【0031】
図2に示すように、道路勾配算出処理では、先ず初めに、道路勾配を算出する対象の道路を車両10で走行して、その時に得られる走行データ(すなわち、走行速度および駆動力)を読み込む(STEP10)。例えば、
図3中に示した出発地Sから目的地Gまでの破線で示した経路を車両10で走行しながら、車両10の走行速度や駆動力を時系列に取得しておき、その時に得られた走行データを道路勾配算出装置100に読み込む。尚、車両10に道路勾配算出装置100を搭載することによって、車両10を走行させながら走行データを読み込んでも良いし、車両10にデータ収集装置16を搭載して走行データを記憶しておき、走行終了後にデータ収集装置16から直接、あるいは記録媒体を介して走行データを読み込んでも良い。
【0032】
図4は、車両10が出発地Sから目的地Gまでを走行することによって得られた走行データを示した説明図である。
図4(a)には時間の経過と共に走行速度が変化する様子が示されており、
図4(b)には駆動力が変化する様子が示されている。尚、上述したように、本実施例では駆動力を表すデータとして、バッテリ12からモータ11に供給される電流値を計測しているが、
図4(b)では、計測した電流値に、モータ11への供給電圧を乗算して得られる電力の単位であるkWで表示されている。
【0033】
図4に示すような走行データを読み込んだら、今度は、車両10をシャシダイナモメータ上に搭載すると共に、車両10に搭載した運転ロボット20に走行データを出力する。そして、運転ロボット20が車両10のアクセルペダルおよびブレーキペダルを操作して、車両10の走行速度が走行データによって示された走行速度と一致するように制御する。こうすることによって、車両10が出発地Sから目的地Gまで走行した時に走行速度が変化する様子をシャシダイナモメータ上で再現させることができる。
【0034】
図5には、シャシダイナモメータ50上で車両10の走行速度の変化を再現させる様子が示されている。シャシダイナモメータ50は、車両10のタイヤ10tが載せられる走行ローラ51や、走行ローラ51の回転負荷を制御する負荷制御装置52などを備えている。図示するように、車両10の駆動輪(図示した例では前輪)のタイヤ10tを走行ローラ51の上に載せると共に、非駆動輪(図示した例では後輪)のタイヤ10tを輪止具53で固定した状態で駆動輪を回転させれば、走行ローラ51上で車両10を走行させることができる。
【0035】
もっとも、走行ローラ51上で走行させても車両10は停止しているので、車両10の慣性や空気抵抗に起因する走行抵抗は生じないが、走行ローラ51の回転負荷がこれらの走行抵抗に相当する負荷となるように制御することで、実際に道路を走行した時と同じ状況を再現することができる。負荷制御装置52には走行ローラ51の回転速度が入力されており、負荷制御装置52は回転速度に応じて走行ローラ51の回転負荷を制御することが可能となっている。また、
図5では図示を省略しているが、車両10の前方に送風機を載置して、走行速度に応じた風速で送風することで、走行風を再現することも可能である。更には、走行ローラ51の回転負荷を調節すれば、車両10が登坂路を走行している状態や、降坂路を走行している状態を再現することも可能となっている。
【0036】
図2のSTEP11では、
図4に例示した走行データを計測した車両10をシャシダイナモメータ50上に搭載すると共に、車両10に搭載した運転ロボット20に走行データを供給することで、運転ロボット20に走行データ中の走行速度を再現させる。尚、前述したように、シャシダイナモメータ50では道路勾配も設定することが可能であるが、道路勾配は0に設定しておく。そして、この時の走行速度および駆動力(本実施例では、バッテリ12からモータ11に供給される電流値)を計測する。
【0037】
図2のSTEP12では、このようにしてシャシダイナモメータ50上で車両10の走行速度を再現した時の走行データ(すなわち再現データ)を読み込む。ここで、STEP10で読み込んだ走行データと、STEP12で読み込んだ再現データとを比較すると、走行速度については、走行データ中の走行速度と再現データ中の走行速度とで大きな差異は存在していない。これは、再現データ中の走行速度は走行データ中の走行速度を再現したものであるため、当然のことと言える。しかし、駆動力(本実施例ではモータ11に供給される電流値)については、走行データと再現データとで明確な差異が生じている。尚、再現データの駆動力を、以下では「再現駆動力」と称するものとする。
【0038】
図6は、実際の道路を走行した時(実路走行時)と、シャシダイナモメータ50上で再現した時(CDM走行時)とで、駆動力の差異を示した説明図である。尚、
図6で駆動力が正値となっている部分は、モータ11がタイヤ10tを駆動している状態を表しており、駆動力が負値となっている部分は、モータ11がタイヤ10tから駆動されている状態を表している。また、
図6では、経過時間が20秒から40秒までの範囲(
図4(b)中では細い破線で囲った範囲)が拡大して表示されている。更に、
図6でも、駆動力は、電流値に供給電圧を乗算した電力の単位であるkWで表示されている。
【0039】
図6中に示した実線は実路走行時の駆動力を表しており、
図6中の破線はCDM走行時の駆動力(すなわち、再現駆動力)を表しているが、
図6中で例えば経過時間が22~23秒にかけての時間帯では、実路走行時の駆動力の方が、CDM走行時の再現駆動力よりも大きくなっている。また、経過時間が24~25秒にかけての時間帯では、実路走行時の駆動力の方が、CDM走行時の再現駆動力よりも小さくなっている。
【0040】
実路走行時とCDM走行時とで走行速度には大きな違いが存在しないことから、このような駆動力の違いは、車両10が実際に走行した道路には勾配が存在するにも拘わらず、シャシダイナモメータ50では、道路勾配を0に設定したことによるものと考えられる。すなわち、実際に走行した道路が上り勾配であった場合は、勾配0の道路を走行するよりも大きな駆動力が必要となり、逆に、実際に走行した道路が下り勾配であった場合は、勾配0の道路を走行するよりも小さな駆動力で走行することができる。このことから、実路走行時の駆動力がCDM走行時の再現駆動力よりも大きいということは、実際に走行した道路が上り勾配であったことを表していると考えられる。逆に、実路走行時の駆動力がCDM走行時の再現駆動力よりも小さいということは、実際に走行した道路が下り勾配であったことを表していると考えられる。また、駆動力の差の大きさは道路勾配の大きさに対応しており、駆動力の差が大きいほど、道路勾配が大きくなるものと考えられる。従って、駆動力の差と道路勾配との対応関係を予め求めておけば、この対応関係を参照することによって、駆動力の差を道路勾配に変換することが可能となる。
【0041】
そこで、
図2のSTEP13では、実路走行時の駆動力からCDM走行時の再現駆動力を減算することによって駆動力偏差を算出する。そして、予め求めておいた駆動力偏差と道路勾配との対応関係を参照することによって、駆動力偏差を道路勾配に変換する(STEP14)。
図7には、駆動力偏差と道路勾配との対応関係が例示されている。対応関係を求める方法については後述するが、STEP13で得られた全ての駆動力偏差を道路勾配に変換したら、
図2中に破線で示した全経路の道路勾配が求められたことになるので、
図2の道路勾配算出処理を終了する。
【0042】
また、
図7に例示した対応関係は、車両10の重量から推定することも可能であるが、本実施例では、以下のように、車両10を用いた実験的な方法によって設定されている。
図8は、駆動力偏差と道路勾配との対応関係を生成する処理のフローチャートである。この処理は、道路勾配算出装置100によって実行されている。
【0043】
図8に示すように、対応関係生成処理では、先ず初めに、予め計測しておいた勾配付データを読み込む(STEP50)。ここで、勾配付データとは、シャシダイナモメータ50上で車両10を走行させながら、シャシダイナモメータ50の道路勾配の設定を変更することによって計測した走行速度、車両10の駆動力、および道路勾配の時系列のデータである。勾配付データは、車両10に搭載したデータ収集装置16を用いて計測されており、道路勾配算出装置100の走行データ読込部101が、データ収集装置16から直接に、あるいは記録媒体を介して間接的に読み込む。従って、道路勾配算出装置100の走行データ読込部101は、本発明における「勾配付データ読込部」にも対応している。また、走行データ読込部101が読み込む勾配付データの駆動力が、本発明における「勾配付駆動力」に対応する。
【0044】
尚、本実施例では、シャシダイナモメータ50上の車両10に運転ロボット20を搭載しておき、
図9(a)に例示した走行速度のパターンを運転ロボット20に供給して車両10を走行させると共に、
図9(b)に例示したパターンでシャシダイナモメータ50の道路勾配を変更することによって、勾配付データを取得する。
【0045】
このように、本実施例では走行速度の変化パターンおよび道路勾配の変化パターンが予め決まっているものとしているが、必ずしも走行速度および道路勾配の変化パターンを決めておく必要はない。例えば、シャシダイナモメータ50の道路勾配を予め決めておいたパターンで変化させながら、シャシダイナモメータ50上で車両10を自由に加減速させて、その時の車両10の走行速度や駆動力や、必要に応じて道路勾配を計測することによって、勾配付データを取得するようにしても良い。あるいは、車両10の走行速度が、予め決めておいた走行速度のパターンとなるように制御しながら、シャシダイナモメータ50の道路勾配を自由に変化させて、その時の車両10の走行速度および駆動力に加えて、シャシダイナモメータ50に設定した道路勾配を計測することによって、勾配付データを取得するようにしても良い。更には、シャシダイナモメータ50の道路勾配を自由に変化させながら、シャシダイナモメータ50上で車両10を自由に加減速させて、その時の車両10の走行速度と駆動力と、シャシダイナモメータ50に設定した道路勾配とを計測することによって、勾配付データを取得するようにしても良い。
【0046】
図8に示した対応関係生成処理のSTEP50では、以上のような方法で取得しておいた勾配付データを読み込むと、続いて、勾配無データを読み込む(STEP51)。勾配無データとは、シャシダイナモメータ50の道路勾配を0に設定した状態で、シャシダイナモメータ50上の車両10を用いて勾配付データの走行速度を再現した時に得られる駆動力の時系列データである。勾配無データも、シャシダイナモメータ50上の車両10に運転ロボット20を搭載しておき、
図9(a)に例示した走行速度のパターンを運転ロボット20に再現させながら、データ収集装置16を用いて、駆動力および必要に応じて走行速度を計測することによって取得する。
【0047】
尚、勾配無データは、道路勾配算出装置100の再現データ読込部104が、データ収集装置16から直接に、あるいは記録媒体を介して間接的に読み込む。従って、道路勾配算出装置100の再現データ読込部104は、本発明における「勾配無データ読込部」にも対応している。また、再現データ読込部104が読み込む勾配無データの駆動力が、本発明における「勾配無駆動力」に対応する。
【0048】
こうして、勾配付データおよび勾配無データを読み込んだら(STEP50、STEP51)、勾配付データの駆動力(勾配付駆動力)から勾配無データの駆動力(勾配無駆動力)を減算することによって、勾配有無駆動力偏差を算出する(STEP52)。尚、勾配有無駆動力偏差の算出は、道路勾配算出装置100の駆動力偏差算出部105によって実現されている。従って、道路勾配算出装置100の駆動力偏差算出部105は、本発明における「勾配有無駆動力偏差算出部」にも対応している。
【0049】
勾配付駆動力および勾配無駆動力は時間の経過と共に値が変化するから、勾配有無駆動力偏差も時間の経過と共に値が変化する。そして、この変化は、シャシダイナモメータ50に設定した道路勾配が時間の経過と共に変更されたことに起因して生じたものと考えられる。そこで、時間の経過と共に変化する勾配有無駆動力偏差と道路勾配との散布図を作成すると、
図10に示した散布図が得られる。この分布を、原点を通る直線で近似すると破線の直線を得ることができ、この直線は駆動力偏差に対する道路勾配を示していると考えることができる。そこで、
図10に示す散布図から破線の直線を求めることによって、駆動力偏差と道路勾配との対応関係を生成することができる。
図10に示す散布図から破線の直線を求める機能は、道路勾配算出装置100の道路勾配変換部106によって実現されている。
図8のSTEP53では、このようにして生成した対応関係を、
図1に示した記憶部102に記憶して、対応関係生成処理を終了する。
【0050】
以上に詳しく説明したように、本実施例の道路勾配算出装置100では、車両10を用いて実際の道路を走行した時の走行速度および駆動力の時系列データを記憶しておき、その走行速度をシャシダイナモメータ50上で運転ロボット20に再現させることで、車両10が道路を走行するに伴って刻々と変化する道路勾配を算出することができる。従って、衛星測位システムや大気圧の変化を用いて道路勾配を算出する場合に比べて、局所的な道路勾配の変化も算出することができる。
【0051】
また、
図6を用いて前述したように、本実施例では、実路走行時の車両10の駆動力と、シャシダイナモメータ50上で実路走行を再現した時の車両10の再現駆動力との偏差(駆動力偏差)が道路勾配によるものであることを前提として、駆動力偏差から道路勾配を算出している。従って、シャシダイナモメータ50上で実路走行を再現した時の再現精度は、算出される道路勾配の精度に大きく影響する。しかし本実施例では、実路走行時の走行速度を、運転ロボット20を用いて再現することで十分な再現精度を確保することができる。
【0052】
図11は、車両10に搭載した運転ロボット20に実路走行時の走行速度を再現させた時の一例を示した説明図である。
図11では、細い実線で示した走行速度を、運転ロボット20を用いて再現した結果が太い実線で示されている。また、参考として、人間が車両10を運転して再現した結果を、太い破線で表示している。
【0053】
運転ロボット20を用いて再現した場合、あるいは人間が再現した場合の何れも、全体としては目標速度の変化が再現されている。しかし、図中で一部を拡大して表示したように、人間が再現した場合は運転ロボット20で再現した場合に比べて、目標速度との乖離が大きくなっており、この速度の乖離を改善するために、人間による再現では余分な加減速が発生している。加えて、人間が再現した場合は、再現する度に大きなばらつきが発生するのに対して、運転ロボット20で再現した場合は、ほとんどばらつきが生じない。更に、運転ロボット20の場合は、目標速度を再現するためのロジックを改良することによって、目標速度の再現精度をより一層改善することも可能である。このように、運転ロボット20を使用すれば、車両10を用いて実際に道路を走行した時の走行速度を十分な精度で再現することができる。このため、本実施例では、道路勾配を精度良く算出することが可能となる。
【0054】
加えて、本実施例では、駆動力偏差と道路勾配との対応関係を、実際に車両10を走行させることによって実験的に求めている。このため、車両10の実際の重量や、車両10の内部での摩擦による損失や、モータ11の効率など、駆動力偏差と道路勾配との対応関係に影響を与える複数の要素が考慮された正しい対応関係を求めることができる。そして、このような対応関係を参照して、駆動力偏差を道路勾配に変換しているので、正確な道路勾配を算出することが可能となる。
【0055】
尚、
図8に示した本実施例の対応関係生成処理のSTEP50で読み込む勾配付データは、シャシダイナモメータ50上で車両10を走行させながら、道路勾配の設定を変更することによって計測したデータであるものとして説明した(
図9参照)。しかし、実際には、シャシダイナモメータ50で道路勾配の設定を変更して計測したデータを用いなくても、
図7に示すような駆動力偏差と道路勾配との対応関係を生成することができる。
【0056】
例えば、測量の技術を用いて道路勾配を計測して、その道路を標準道路として設定しておく。そして、標準道路を車両10が走行した時の走行データを使用することによっても対応関係を生成することができる。以下では、このような標準道路を走行することによって得られた走行データ(以下、標準データと称する)を用いて、駆動力偏差と道路勾配との対応関係を生成する方法について説明する。
【0057】
図12は、標準データを用いて対応関係を生成する変形例の対応関係生成処理のフローチャートである。この処理も、前述した
図8の対応関係生成処理と同様に、
図1に示した道路勾配算出装置100によって実現されている。
【0058】
変形例の対応関係生成処理を開始するためには、標準データを予め用意しておく必要がある。前述したように標準データとは、道路勾配が既知の標準道路を車両10で走行しながら、走行速度および駆動力を時系列で計測した走行データである。例えば、
図3中に一点鎖線で示した経路上での道路勾配を測量によって求めておき、この経路を標準道路として車両10で走行することによって標準データを求めておくことができる。標準データは、車両10に搭載したデータ収集装置16を用いて計測されており、道路勾配算出装置100の走行データ読込部101が、データ収集装置16から直接に、あるいは記録媒体を介して間接的に読み込む。従って、道路勾配算出装置100の走行データ読込部101は、本発明における「標準データ読込部」にも対応している。また、走行データ読込部101が読み込む勾配付データの駆動力が、本発明における「標準駆動力」に対応する。
【0059】
図12に示した変形例の対応関係生成処理のSTEP60では、以上のような方法で取得しておいた標準データを読み込むと、続いて、再現標準データを読み込む(STEP61)。再現標準データとは、シャシダイナモメータ50の道路勾配を0に設定した状態で、シャシダイナモメータ50上の車両10を用いて標準データの走行速度を再現した時に得られる駆動力の時系列データである。再現標準データは、シャシダイナモメータ50上の車両10に運転ロボット20を搭載しておき、運転ロボット20を用いて標準データの走行速度を再現させることによって取得する。
【0060】
尚、再現標準データは、道路勾配算出装置100の再現データ読込部104が、データ収集装置16から直接に、あるいは記録媒体を介して間接的に読み込む。従って、道路勾配算出装置100の再現データ読込部104は、本発明における「再現標準データ読込部」にも対応している。また、再現データ読込部104が読み込む再現標準データの駆動力が、本発明における「再現標準駆動力」に対応する。
【0061】
そして、標準データの駆動力から、再現標準データの駆動力を減算することによって、標準駆動力偏差を算出する(STEP62)。尚、標準駆動力偏差の算出は、道路勾配算出装置100の駆動力偏差算出部105が実現する。従って、本実施例の駆動力偏差算出部105は、本発明における「標準駆動力算出部」にも対応している。
【0062】
標準データの駆動力と再現標準データの再現駆動力との偏差(すなわち、標準駆動力偏差)は、道路勾配の有無によるものと考えられ、更に、道路勾配が0の時には、標準データと再現標準データとの駆動力の差は0になると考えられる。そこで、標準駆動力偏差と道路勾配との散布図を作成して、標準駆動力偏差に対する道路勾配を、原点を通る直線で近似することによって、駆動力偏差と道路勾配との対応関係を生成することができる(STEP63)。尚、標準駆動力偏差に対する道路勾配を直線で近似して、駆動力偏差と道路勾配との対応関係を生成する機能は、道路勾配算出装置100の対応関係生成部107によって実現されている。こうして対応関係を生成したら、得られた対応関係を
図1の記憶部102に記憶して、変形例の対応関係生成処理を終了する。
【0063】
図2を用いて前述した道路勾配算出処理のSTEP14では、以上のようにして求めた対応関係を参照して、駆動力偏差を道路勾配に変換することによっても、車両10で走行した道路の道路勾配を算出することが可能となる。
【0064】
上述した変形例の対応関係生成処理では、実際の道路の正確な道路勾配を予め計測しておき、その道路を車両10で走行することによって標準データを取得するものとして説明した。実際の道路は道路勾配が変化していると考えられるから、実際の道路を標準道路として用いれば、様々な道路勾配に対する駆動力偏差を求めることができ、それらの駆動力偏差に基づいて、道路勾配と駆動力偏差との対応関係を決定することができる。
【0065】
しかし、道路勾配が0の時には駆動力偏差も0になることは分かっているから、駆動力偏差に対する道路勾配を決定する対応関係は、駆動力偏差および道路勾配の原点を通る直線となる。そこで、実際の道路の正確な道路勾配を予め計測しておく代わりに、
図13に例示するような、所定の道路勾配で作成された試験用の標準道路を用意しておき、その標準道路を走行した時の走行データを用いて、駆動力偏差と道路勾配との対応関係を生成するようにしてもよい。こうすれば、試験用の標準道路を用意する必要ことができれば、実際の道路の道路勾配を正確に計測するよりは簡単に標準データを生成することができる。その結果、車両10が走行した道路の道路勾配をより一層簡単に算出することが可能となる。
【0066】
以上、本実施例および各種の変形例の道路勾配算出装置100について説明したが、本発明は上記の実施例および各種の変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10…車両、 10t…タイヤ、 11…モータ、
12…バッテリ、 13…定電圧回路、 14…電流計、
15…車速センサ、 16…データ収集装置、 20…運転ロボット、
50…シャシダイナモメータ、 51…走行ローラ、 52…負荷制御装置、
53…輪止具、 100…道路勾配算出装置、 101…走行データ読込部、
102…記憶部、 103…走行データ出力部、 104…再現データ読込部、
105…駆動力偏差算出部、 106…道路勾配変換部、
107…対応関係生成部。