(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002580
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】焼結多結晶立方晶窒化ホウ素材料
(51)【国際特許分類】
C04B 35/5831 20060101AFI20221227BHJP
C04B 35/645 20060101ALI20221227BHJP
C22C 1/051 20230101ALI20221227BHJP
B22F 3/14 20060101ALI20221227BHJP
B22F 7/00 20060101ALI20221227BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20221227BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20221227BHJP
B23B 27/20 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C04B35/5831
C04B35/645
C22C1/05 M
C22C1/05 G
B22F3/14 D
B22F7/00 K
B24D3/00 320B
B24D3/00 340
B23B27/14 B
B23B27/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158610
(22)【出願日】2022-09-30
(62)【分割の表示】P 2020156968の分割
【原出願日】2017-05-31
(31)【優先権主張番号】1609672.9
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】517007574
【氏名又は名称】エレメント シックス (ユーケイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】モッチェラホ アンヌ ミリアム メニエ
(72)【発明者】
【氏名】ゴッシュ サントヌ
(72)【発明者】
【氏名】カン アンティオネッテ
(57)【要約】
【課題】多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料およびPCBNの製造方法。この方法は、平均粒径が250nm以下の粒子を含むマトリックス前駆物質粉末を用意するステップと、平均粒径が少なくとも0.2μmの立方晶窒化ホウ素(cBN)の粒子を含む立方晶窒化ホウ素(cBN)粉末を用意するステップと、マトリックス前駆物質粉末とcBN粉末を均質に混合するステップと、均質混合粉末を少なくとも1100℃および少なくとも3.5GPaの圧力で焼結して、マトリックス材料中に分散させた立方晶窒化ホウ素(cBN)の粒子を含むPCBN材料を形成するステップとを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料を製造する方法であって、前記方法は、
平均粒径が250nm以下の粒子を含むマトリックス前駆物質粉末を用意するステップと、
平均粒径が少なくとも0.2μmの立方晶窒化ホウ素(cBN)の粒子を含む立方晶窒化ホウ素(cBN)粉末を用意するステップと、
前記マトリックス前駆物質粉末と前記立方晶窒化ホウ素(cBN)粉末を均質に混合するステップと、
前記均質混合粉末を少なくとも1100℃の温度および少なくとも3.5GPaの圧力で焼結して、マトリックス材料中に分散させた立方晶窒化ホウ素(cBN)粒子を含む前記PCBN材料を形成するステップとを含む、PCBN材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結多結晶立方晶窒化ホウ素材料の分野およびかかる材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶の高硬度(superhard:なお、場合によっては超硬度と呼ばれる)材料、例えば多結晶ダイヤモンド(PCD)および多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)が硬質または研磨物質、例えば岩石、金属、セラミックス、複合材および木材含有材料を切削し、機械加工し、穴あけしまたは劣化させるための多種多様な工具に使用できる。
【0003】
研磨成形体またはコンパクトが切削、磨砕、研削、穴あけおよび他の研磨作業の際に広く用いられている。これら研磨コンパクトは、一般に、セカンドフェーズマトリックス(second phase matrix)中に分散させた超硬度(ultrahard)研磨粒子を含む。マトリックスは、金属製またはセラミック製またはサーメットであるのが良い。超硬度研磨粒子は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN)、炭化ケイ素または窒化ケイ素などであるのが良い。これら粒子は、一般的に用いられる高圧高温コンパクト製造プロセス中または多結晶塊状体を形成する間に互いに結合されるのが良くまたは焼結多結晶塊を形成するために第二層材料のマトリックスを介して結合されるのが良い。かかる塊は、一般に、多結晶ダイヤモンドまたは多結晶立方晶窒化ホウ素と呼ばれており、この場合、これらはそれぞれ、超硬研磨材としてダイヤモンドまたはcBNを含む。
【0004】
米国特許第4,334,928号明細書は、本質的に20~80体積%の立方晶窒化ホウ素から成る工具に用いられる焼結コンパクトを教示しており、残部は、周期表のIVAまたはVA遷移金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ化物およびケイ化物、これらの混合物およびこれらの固溶体化合物から成る群から選択された少なくとも1種類のマトリックス複合材料のマトリックスである。マトリックスは、焼結体中に連続結合構造を形成し、高圧窒化ホウ素は、連続マトリックス内に散在してある。この米国特許明細書に概要説明された方法は全て、機械的微粉砕/混合技術、例えばボールミル粉砕を用いて所望の材料、モルタルなどを結合するステップを含む。
【0005】
焼結多結晶体は、これらを基体(サブストレート)上に形成することによって「裏打ち」される(backed)のが良い。適当な基体を形成するために用いられる場合のある焼結(cemented)炭化タングステンが炭化タングステン粒子/結晶粒とコバルトを混合し、次に加熱して固化させることによって例えばコバルトマトリックス中に分散させた炭化物粒子から形成される。超硬材料層、例えばPCDまたはPCBNを含む切削要素を形成するため、ダイヤモンド粒子もしくは結晶粒またはcBN結晶粒を耐熱金属エンクロージャ、例えばニオブエンクロージャ内で焼結炭化タングステン体に隣接して配置し、これらに高圧高温をかけ、その結果、結晶粒またはcBN結晶粒相互間の結晶粒間結合が起こり、それにより多結晶高硬度ダイヤモンドまたは多結晶cBN層を形成する。
【0006】
幾つかの場合において、基体は、超硬材料層への取り付けに先だって完全に硬化されるのが良く、これに対し、他の場合、基体は、生(グリーンのまたは完全に硬化されていない状態)であるのが良い。後者の場合、基体は、HTHP(高温高圧)焼結プロセス中に完全硬化状態になるのが良い。基体は、粉末の形態をしているのが良く、基体は、超硬材料層を焼結するために用いられる焼結プロセス中に固化するのが良い。
【0007】
図1は、焼結PCBN材料を作る例示の方法を示している。以下の符号は、
図1の符号に対応している。
S1.マトリックス前駆物質粉末を予備混合する。マトリックス前駆物質粉末の例は、チタンおよびアルミニウムの炭化物および/または窒化物を含む。マトリックス前駆物質粉末の典型的な平均粒径は、1~10μmである。
S2.マトリックス前駆物質粉末を少なくとも1時間、1000℃を超える温度で熱処理してマトリックス前駆物質粒子相互間に予備反応を開始させるとともに「ケーク」を形成する。
S3.ケークを粉砕してふるい分けし、それにより粒子の所望の粒径フラクションを得る。
S4.平均粒径が0.5~15μmの立方晶窒化ホウ素(cBN)粒子をふるい分けされたマトリックス前駆物質粉末に加える。
S5.結果として得られた混合粉末を磨砕(attrition mill)処理してマトリックス前駆物質粉末を所望の粒径(典型的には50~700nm)まで潰すとともにマトリックス前駆物質粉末とcBN粒子を均質に混合する。このプロセスは、多くの時間を必要とする場合があり、このプロセスでは微粉砕手段または微粉砕材(milling media)、例えば炭化タングステンボールを用いる。
S6.結果として得られた磨砕粉末を真空または低圧下において60℃を超える温度で乾燥させて溶剤を除去し、その後、酸素がシステム中にゆっくりと入って金属表面、例えばアルミニウムを不動態化することができるようにすることによって状態調節する。
S7.乾燥粉末をふるい分けして予備複合材集成体を調製する。
S8.予備複合材集成体を、700℃を超える温度で熱処理して吸収された水またはガスがあればこれらを除去する。
S9.ガス抜きされた予備複合材集成体を焼結に適したカプセル中に組み込む。
S10.カプセルを少なくとも1250℃および少なくとも4GPaの高圧高温(HPHT)プロセスで焼結して焼結PCBN材料を形成する。
【0008】
プロセス全体は、極めて時間がかかり、かつ商業規模では最高5日間を必要とする場合がある。
【0009】
磨砕プロセス中、粉末は、微粉砕材からの不純物をピックアップする場合がある。
図2は、磨砕が炭化タングステンボールを用いて実施された状態の焼結PCBN材料の顕微鏡写真図である。白い粒子(これら粒子の例は、黒の円で強調表示されている)は、炭化タングステンの粒子である。焼結PCBN材料は、最高8重量%までの炭化タングステンを含む場合がある。これら粒子は、特に、例えば硬質部品旋削のような用途においてPCBN材料の特性に悪影響を及ぼすことが知られている。さらに、磨砕中における炭化タングステンのピックアップは、制御されず、その結果、互いに異なるバッチが互いに異なる粒度分布を呈する互いに異なる量の炭化タングステンを含む場合があり、その結果、工具用途で用いられた場合に焼結PCBN材料の性能が予測不可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,334,928号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、炭化タングステン含有量を大幅に減少させた焼結PCBN材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の観点によれば、PCBN材料を製造する方法が提供される。平均粒径が250nm以下の粒子を含むマトリックス前駆物質粉末を用意する。平均粒径が少なくとも0.2μmの立方晶窒化ホウ素(cBN)の粒子を含むcBN粉末を用意する。マトリックス前駆物質粉末とcBN粉末を均質に混合する。均質混合粉末を少なくとも1100℃の温度および少なくとも3.5GPaの圧力で焼結して、マトリックス材料中に分散させた立方晶窒化ホウ素(cBN)粒子を含むPCBN材料を形成する。この方法の利点は、微粉砕材が用いられず、その結果、結果として得られるPCBNが微粉砕材からの不純物、例えば炭化タングステンを含まないということにある。別の利点は、磨砕ステップが不要であり、その結果、PCBNを調製するための全体的時間が短縮されることにある。別の利点は、マトリックス前駆物質粒子の粒径が小さいことにより、かかるマトリックス前駆物質粒子の反応性が焼結ステップ中、高くなることにある。
【0013】
オプションとして、本方法は、平均粒径が100nm以下の粒子を含むマトリックス前駆物質粉末を用意するステップを有する。
【0014】
マトリックス粉末とcBN粉末を均質に混合するステップは、オプションとして、マトリックス前駆物質粉末およびcBN粉末を溶剤中に分散させるステップと、超音波ミキサを用いて溶剤、マトリックス前駆物質粉末およびcBN粉末を混合するステップと、溶剤を除去してマトリックス前駆物質粒子とcBN粒子の均質混合粉末を後に残すステップとを含む。
【0015】
別のオプションとして、マトリックス前駆物質粉末とcBN粉末を均質に混合するステップは、乾式音波混合から成る。
【0016】
オプションとして、本方法は、平均粒径が0.2~15μmのcBN粒子を用意するステップを含む。cBN粒子は、オプションとして、1μmを超える平均粒径を有する。別のオプションとして、cBN粒子は、5μmから10μmまでの範囲にある平均粒径を有する。
【0017】
cBN粒子は、オプションとして、マルチモーダル平均粒度分布を呈する。
【0018】
結果として得られたPCBN材料は、80体積パーセント未満のcBN粒子を含む。
【0019】
オプションとして、マトリックス材料は、チタンおよびアルミニウムのうちのいずれかの化合物から選択された物質から成る。例示のマトリックス材料としては、チタン炭窒化物、炭化チタン、窒化チタン、二ホウ化チタン、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムのうちのいずれかが挙げられる。
【0020】
第2の観点によれば、PCBN材料を製造する方法が提供される。本方法は、粒子を含むマトリックス前駆物質粉末を用意するステップを含む。マトリックス前駆物質粉末を磨砕して1μm以下の平均粒径を達成する。磨砕されたマトリックス前駆物質粉末と平均粒径が少なくとも0.2μmの粒子を含むcBN粉末を均質に混合する。均質混合された粉末を少なくとも1100℃の温度および少なくとも3.5GPaの圧力で焼結して、マトリックス材料中に分散させた立方晶窒化ホウ素(cBN)の粒子を含むPCBN材料を形成する。この方法の利点は、結果として得られるPCBN材料が、0.5重量パーセント未満という微粉砕材からの不純物の極めて低い含有量を有することにあり、と言うのは、磨砕がcBNを加えた後においては実施されないからである。
【0021】
オプションとして、マトリックス粉末とcBN粉末を均質に混合するステップは、マトリックス前駆物質粉末およびcBN粉末を溶剤中に分散させるステップと、超音波ミキサを用いて溶剤、マトリックス前駆物質粉末およびcBN粉末を混合するステップと、溶剤を除去してマトリックス前駆物質粒子とcBN粒子の均質混合粉末を後に残すステップとを含む。別のオプションとして、界面活性剤を溶剤に添加する。
【0022】
別のオプションとして、マトリックス前駆物質粉末とcBN粉末を均質に混合するステップは、乾式音波混合から成る。
【0023】
オプションとして、磨砕されたマトリックス前駆物質粉末は、平均粒径が200nm以下の粒子を含む。
【0024】
cBN粒子は、オプションとして、0.2~15μmまたは1μmを超える平均粒径を有する。cBN粒子は、オプションとして、マルチモーダル平均粒度分布を呈する。
【0025】
結果として得られたPCBN材料は、80体積パーセント未満のcBN粒子を含む。
【0026】
オプションとして、マトリックス材料は、チタンおよびアルミニウムのうちのいずれかの化合物から選択された物質から成る。例示のマトリックス材料としては、チタン炭窒化物、炭化チタン、窒化チタン、二ホウ化チタン、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムのうちのいずれかが挙げられる。
【0027】
オプションとして、マトリックス前駆物質粉末を磨砕して700nm以下の平均粒径を達成する。別のオプションとして、マトリックス前駆物質粉末を磨砕して500nm以下の平均粒径を達成する。
【0028】
第3の観点によれば、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料が提供される。PCBN材料は、少なくとも1種類のチタン含有化合物を含むマトリックス材料中に分散させた立方晶窒化ホウ素(cBN)の粒子を含む。PCBN材料は、微粉砕材からの0.5重量パーセント以下の不純物を含む。
【0029】
オプションとして、PCBN材料は、微粉砕材不純物を含まない。
【0030】
微粉砕材不純物は、オプションとして、炭化タングステン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化チタン、および炭化ホウ素のうちのいずれかから選択された物質から成り、と言うのは、これらは、磨砕のための手段または素材として一般的に用いられるからである。
【0031】
cBN粒子は、0.2~15μmの平均粒径を有する。別のオプションとして、cBN粒子は、1μmを超える平均粒径を有する。
【0032】
オプションとして、cBN粒子は、マルチモーダル平均粒度分布を呈する。
【0033】
PCBN材料は、オプションとして、80体積パーセント未満のcBN粒子を含む。
【0034】
マトリックス材料は、オプションとして、チタンおよびアルミニウムのうちのいずれかの化合物から選択された物質から成る。別のオプションとして、マトリックス材料は、チタン炭窒化物、炭化チタン、窒化チタン、二ホウ化チタン、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムのうちのいずれかから成る。
【0035】
第4の観点によれば、第3の観点において記載した焼結多結晶材料から成る工具が提供され、この工具は、切削、微粉砕、研削、穴あけ、または他の研磨用途のうちのいずれかのためのものである。
【0036】
次に、添付の図面を参照して非限定的な実施形態を例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】焼結PCBN材料を製造する公知の例示の方法を示す流れ図である。
【
図2】
図1に示されたステップに従って作られた例示の焼結PCBN材料を示す顕微鏡写真図である。
【
図3】炭化タングステン含有量が実質的にゼロである焼結PCBN材料の製造方法の例示のステップを示す流れ図である。
【
図4】炭化タングステン含有量を大幅に減少させた焼結PCBN材料の製造方法の例示のステップを示す流れ図である。
【
図5】炭化タングステンを含まない焼結PCBN材料の製造方法の例示のステップを示す流れ図である。
【
図6】炭化タングステン含有量を大幅に減少させた焼結PCBN材料の製造方法の例示のステップを示す流れ図である。
【
図7】炭化タングステンを含まない状態で作られたサンプルの走査型電子顕微鏡写真図である。
【
図8】炭化タングステンを極めて少量にした状態で作られたサンプルの走査型電子顕微鏡写真図である。
【
図9】磨砕を用いて作られた先行技術のPCBN材料に関する炭化タングステンの存在状態を示すX線回折記録図である。
【
図10】結合剤前駆物質粉末に対してのみ磨砕を用いて作られた例示のPCBN材料に関する炭化タングステンの存在状態を示すX線回折記録図である。
【
図11】H05機械加工試験においてPCBN材料を用いて作られた工具に関する逃げ面耐摩耗性の測定結果を示す図である。
【
図12】H05機械加工試験においてPCBN材料を用いて作られた工具に関するクレータ耐摩耗性の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明者は、磨砕ステップをなくすことにより磨砕ステップ中における微粉砕材からの不純物の存在をなくすことができるということを確認した。磨砕は、マトリックス前駆物質粒子を所望の粒径まで潰すためだけではなくマトリックス前駆物質粒子とcBN粒子を均質混合して分散させるためにも用いられる。第1の実施形態では、すでに適当な所望粒径のマトリックス前駆物質粉末を用いるとともに磨砕以外の技術を用いてマトリックス前駆物質粒子とcBN粒子を均質に混合することにより、その結果として微粉砕材不純物のない焼結PCBN材料が得られるということが判明した。
【0039】
図3を参照すると、第1の実施形態による例示のステップを示す流れ図が示されている。以下の符号は、
図3の符号に対応している。
S11.マトリックス前駆物質粉末のナノ粒子を用意し、粒子は、200nm以下の平均粒径を有する。
S12.cBN粉末もまた用意する。cBN粉末中のcBN粒子の平均粒径は、少なくとも0.2μmである。cBNの粒度分布は、モノモーダルであっても良くマルチモーダル(バイモーダルを含む)であっても良い。
S13.微粉砕材を必要としない技術を用いて、例えば溶剤中での超音波混合または乾式音波混合によってcBN粉末とマトリックス前駆物質粉末を均質に混合する。
S14.混合した粉末を少なくとも1100℃の温度および少なくとも3.5GPaの圧力で高圧高温(HPHT)プレス内において焼結して少なくとも1種類のチタン化合物を含むマトリックス内にcBN粒子を含むPCBN材料を形成する。例示のマトリックス材料は、チタン炭窒化物、炭化チタン、窒化チタン、二ホウ化チタン、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムである。他の物質、例えばハフニウムを主成分とする化合物もまた存在しても良い。
【0040】
結果としての焼結PCBN材料は、炭化タングステンを全く含まずまたは微粉砕材から通常生じる他の不純物を含まず、と言うのは、炭化タングステンを用いた磨砕ステップが実施されないからである。炭化タングステンまたは他の微粉砕材不純物のないPCBNの調製に加えて、磨砕および予備反応ステップが実施されないことは、焼結PCBN材料を調製するための時間が大幅に短縮されることを意味している。前駆物質マトリックス粉末のためのナノ粒子を用いた場合の利点は、前駆物質マトリックス粉末が広い表面積を有し、したがって焼結中のその反応性が非常に高いということにある。
【0041】
マトリックス前駆物質粉末用のナノ粉末を用いることには多くの利点があるが、寸法規制されていないマトリックス前駆物質粉末を用いることが常に妥当であるとは限らない場合がある。小さな粒子を含むナノ粉末により、粉末の取り扱い上の問題、例えば凝集やナノ粉末の高められた反応性の取り扱いが生じる場合がある。本発明者は、磨砕中の微粉砕材からの大抵のピックアップがcBNの存在によって生じることを確認した。微粉砕材、例えば炭化タングステンボールは、マトリックス前駆物質粉末よりも硬く、したがってマトリックス前駆物質粉末は、炭化タングステンボールを劣化させることはまずない。しかしながら、cBNは、炭化タングステンボールよりも硬いので、炭化タングステンボールを劣化させることになり、それにより炭化タングステンボールのピックアップが生じる。
【0042】
第2の特定の実施形態では、マトリックス前駆物質粉末をcBNが存在しない状態で磨砕してマトリックス前駆物質粉末の粒径を減少させる。次に、cBN粒子をマトリックス前駆物質粉末に加えて均質に混合し、その後プレス成形および焼結を実施し、それにより焼結PCBN材料を形成する。この技術により0.5重量%未満の炭化タングステンを含む焼結PCBN材料が得られることが判明した。
【0043】
図4を参照すると、第2の実施形態としての例示のステップを示す流れ図が示されている。以下の符号は、
図4の符号に対応している。
S15.マトリックス前駆物質粉末を用意する。
S16.微粉砕材、例えば炭化タングステンボールを用いてマトリックス前駆物質粉末を磨砕して粒径を減少させてマトリックス前駆物質粉末を均質に混合する。平均粒径を最高700nmに減少させる。代表的には、これは、約200~250nmであるのが良い。
S17.磨砕後、微粉砕材を除去し、cBN粒子を所望の量、磨砕後のマトリックス前駆物質粉末に加える。
S18.微粉砕材を必要としない技術を用いて、例えば溶剤中での超音波混合または乾式音波混合によって混合状態のマトリックス前駆物質粉末とcBN粒子を均質に混合する。
S19.混合した粉末を少なくとも1100℃の温度および少なくとも3.5GPaの圧力で高圧高温(HPHT)プレス内において焼結して少なくとも1種類のチタン化合物を含むマトリックス内にcBN粒子を含むPCBN材料を形成する。例示のマトリックス材料は、チタン炭窒化物、炭化チタン、窒化チタン、二ホウ化チタン、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムである。他の物質、例えばハフニウムを主成分とする化合物もまた存在しても良い。
【0044】
図4に記載された技術は、第1の特定の実施形態においてナノ粉末に関する使用にあたって生じる粉末取り扱い上の問題のうちの幾つかを解決する。マトリックス前駆物質粉末の磨砕中に少量の炭化タングステンピックアップが生じるが、これは、cBN粒子を磨砕した場合に観察される炭化タングステンピックアップ量と比較して取るに足りない。焼結PCBN材料は、0.5重量パーセント未満の炭化タングステン含有量を有する。
【0045】
上述の第1の実施形態と第2の実施形態の両方に関し、マトリックス前駆物質粉末をcBN粒子と均質に混合するステップが実施される。上述したように、これは、超音波混合によって実施されるのが良い。これは、溶剤中で行われるのが良く、この場合、粉末を溶剤中に分散させ、超音波混合し、次に溶剤を除去する。界面活性剤を添加して粉末を溶剤中に安定化するのが良い。例示の溶剤としては、ヘキサン、エタノールおよびイソプロパノールが挙げられる。
【0046】
実施例
【0047】
図3に記載されているようにナノ粉末から成るマトリックス前駆物質粉末を用いて第1の組をなす例示のPCBN材料を作った。
図5は、ステップを詳細に示しており、以下の符号は、
図5の符号に対応している。
S20.ナノマトリックス前駆物質粉末は、平均粒径が約50nm~100nmのものであった。種々のマトリックス材料を調製した。
S21.超音波ミキサを用いてマトリックス前駆物質粉末を種々の溶剤内で均質に混合した。超音波ミキサは、20kHz、2.2kW全波50mm径ホーンを40~60%振幅で用いるBranson 2000bdcであった。
S22.立方晶窒化ホウ素(cBN)粒子を混合状態のマトリックス前駆物質粉末に加えた。
S23.混合状態のマトリックス前駆物質粉末とcBN粒子を20分間超音波混合した。
S24.結果として得られた混合状態の粉末を低圧(500mbar未満)および60℃を超える温度で乾燥させて溶剤を除去した。酸素をゆっくりと導入して全アルミニウム表面の不動態化を行うことによって粉末を状態調節した。
S25.乾燥粉末をふるい分けして予備複合材集成体を調製した。
S26.予備複合材集成体を、2時間の間、1025℃を超える温度で熱処理して吸収されたあらゆる水またはガスを除去した。熱処理を低圧で実施するのが良い。
S27.ガス抜きされた予備複合材集成体を焼結に適したカプセル中に組み込んだ。
S28.カプセルを1250℃および5.5GPaのHPHTプレス内で焼結して焼結PCBN材料を形成した。
【0048】
磨砕を受けた微粉砕材をピックアップした材料と微粉砕材をなんらピックアップする恐れのなかったPCBN材料との差を説明するために
図1に示された技術を用いて基準PCBN材料もまた調製した。
【0049】
表1は、これら実施例の組成物および幾つかの製造パラメータを示している。
表1
【0050】
図4に示されているようにcBNを加える前にマトリックス前駆物質粉末を磨砕することによって第2のPCBN材料を作った。
図6は、ステップを詳細に示しており、以下の符号は、
図6の符号に対応している。
S29.平均粒径が1~10μmのマトリックス前駆物質粉末を予備混合した。
S30.マトリックス前駆物質粉末を少なくとも1時間、約1025℃で熱処理してマトリックス前駆物質粒子相互間に予備反応を開始させるとともに「ケーク」を形成する。
S31.ケークを粉砕してふるい分けし、それにより粒子の所望の粒径フラクションを得る。
S32.結果として得られた混合粉末を磨砕処理してマトリックス前駆物質粉末を所望の粒径(典型的には50~700nm)まで潰すとともにマトリックス前駆物質粉末を均質に混合した。炭化タングステン微粉砕材を用いて磨砕を実施した。
S33.立方晶窒化ホウ素(cBN)粒子を混合状態のマトリックス前駆物質粉末に加えた。
S34.混合状態のマトリックス粉末とcBN粒子を20分間超音波混合した。
S35.結果として得られた混合状態の粉末を低圧(500mbar未満)および60℃を超える温度で乾燥させて溶剤を除去した。酸素をゆっくりと導入して全アルミニウム表面の不動態化を行うことによって粉末を状態調節した。
S36.乾燥粉末をふるい分けして予備複合材集成体を調製した。
S37.予備複合材集成体を、2時間の間、1025℃を超える温度で熱処理して吸収されたあらゆる水またはガスを除去した。熱処理を低圧で実施するのが良い。
S38.ガス抜きされた予備複合材集成体を焼結に適したカプセル中に組み込んだ。
S39.カプセルを1250℃および5.5GPaのHPHTプレス内で焼結して焼結PCBN材料を形成した。
【0051】
表2は、
図6の記載に従って作られた実施例の組成物および幾つかの製造パラメータを示している。
表2
【0052】
図7は、実施例9の走査型電子顕微鏡写真図である。
図2とは対照的に、炭化タングステンは全く存在しておらず、と言うのは、磨砕ステップが実施されなかったからである。
図8は、実施例18の走査型電子顕微鏡写真図である。この場合、ごく少量の炭化タングステンが存在している。炭化タングステン粒子の例が白い円で強調表示されている。炭化タングステンの量は、約0.2重量パーセントであると推定された。
【0053】
実施例1~17のX線回折(XRD)は、炭化タングステンのトレースまたは痕跡がない(まったく含まれていない)ことを示した。これとは対照的に、基準例のXRDは、
図9に示されているように炭化タングステンに起因したピークを明確に示した。これとは対照的に、実施例18から得られたXRD記録図は、予期したように炭化タングステンが極微量に存在することを示した。
【0054】
実施例のうちの幾つかを分析してこれらの密度、音速(SOS)、比表面積(SSA)および硬度を測定した。結果として得られたデータが表3に示されている。
表3
【0055】
例示のPCBN材料のうちの幾つかを機械加工工具の状態に成形してH05機械加工試験(V
C=200m/min、供給速度0.1mm/回転、切削深さ0.15mm、硬度が60~62HRCの加工物SAE8620、a: Glidemeister CTX500旋盤で実施)した。V
Bを用いて逃げ面(側面)耐摩耗性を測定した。実施例1、実施例2、実施例4、および基準サンプルの逃げ面耐摩耗性が
図11に示されている。実施例1、実施例2、および実施例4は、僅かに向上した逃げ面耐摩耗性を有した。
【0056】
K
Tによってクレータ耐摩耗性(化学的耐摩耗性とも呼ばれている)を測定した。実施例1、実施例2、および実施例4は全て、
図12に示されているように基準サンプルと比較して僅かに向上したクレータ耐摩耗性を有していた。この改良結果は、低いcBN含有量と低い炭化タングステン含有量の組み合わせに起因するものであると考えられる。
【0057】
上述した2つの特定の実施形態は各々、微粉砕材ピックアップがないまたは微粉砕材ピックアップが実質的に減少したPCBN材料を作る仕方を提供している(その結果、微粉砕材は、0.5重量パーセント未満のPCBN材料を有する)。これにより、極めて制御可能でありかつ予想可能な特性を備えたPCBN材料を調製することができる。さらに、この技術はまた、PCBN材料を調製するのに要する時間を短縮している。
【0058】
乾式音波混合技術を用いて別の組をなす例示の粉末を調製した。チタン炭窒化物(TiC0.5N0.5)粉末(1.3μmの平均粒径)を100mLポリアミドポット内で90:10の重量%比でアルミニウム(6μmの平均粒径)と予備混合した。36gのTiC0.5N0.5と4gのAlを秤量してポット中に入れ、このポットを封止してLABRAM I乾式音波ミキサ内に配置し、そして40Gで2分間扱うとともに、別の実験では、60Gで2分間扱った。
【0059】
次に、予備混合粉末を粒径が4~5μmおよび6~7μmの立方晶窒化ホウ素粉末と組み合わせて60体積%および70体積%の複合材を作った。この第2ステップの組み合わせを40Gおよび60Gという別々の条件下でも実施した。これら条件は、以下の表4に示されている。
表4:
【0060】
最終の粉末を約5.5GPaおよび1400℃でベルト型高圧高温装置内で焼結した。焼結材料を切断して研磨すると、SEM(走査型電子顕微鏡)での微細構造分析結果の示すところによれば、結果としての材料の微細構造は、均質であった。
【0061】
別の組をなす実験では、別々のTiCおよびTiN粉末(平均粒径1~2ミクロン)を2分間80Gで互いに予備混合した。次に、4~5μmのcBN粒子を30秒間80Gでおよび2分間100GでTiC/TiN粉末と混合した。別のステップでは、6μmアルミニウムをシステムに加え、そして30秒間80Gでおよび2分間100Gで混合した。60体積%cBNの組成物を形成するのに十分な量粉末を混合し、残りのTiC/TiN:Al比は、重量で90:10であった。結果としての粉末および焼結材料の分析結果は、均質の構造を示した。
【0062】
最後に、90gの1.3μmcBNを5分間80Gで10gの6μmアルミニウムと混合した。結果として得られた微細構造は、大きな凝集塊を示した。別の実験では、これら粉末をLABRAM Iミキサ内で100mLポリアミドポット内において20gの量混合し、200重量%の0.7mmWCボールがポットに入れられていた。混合物を30秒間80Gでおよび2分間100Gで取り扱った。最終の焼結材料の微細構造は、均質構造を示した。
【0063】
定義
【0064】
本明細書で用いられるPCBN材料は、金属またはセラミックから成るマトリックス内に分散させたcBNの結晶粒を含む高硬度材料の1種を意味している。PCBNは、高硬度材料の一例である。
【0065】
本明細書で用いられる「PCBN構造」は、PCBN材料の塊から成る。
【0066】
「マトリックス材料」は、多結晶構造内の細孔、間隙または隙間領域を全体的にまたは部分的に満たすマトリックス材料を意味するものと理解される。「マトリックス前駆物質粉末」という用語は、高圧高温焼結プロセスを受けると、マトリックス材料になる粉末を意味するために用いられている。
【0067】
結晶粒の塊状体のマルチモーダル粒度分布は、結晶粒が2つ以上のピークがある粒度分布を有することを意味するものと理解され、各ピークは、それぞれの「モード」に対応している。マルチモーダル多結晶塊を作るには、複数の結晶粒の2つ以上の源を提供し、各源が実質的に異なる平均粒径を有する結晶粒を有し、そして源からの結晶粒または粒子を互いに配合するのが良い。一実施形態では、PCBN材料は、マルチモーダル分布を呈するcBN結晶粒を含むのが良い。
【0068】
上記説明は、平均粒径を意味している。これは、円相当径(ECD)技術を用いて測定される。複数のばらばらであって結合されておらずしかも非凝集状態の結晶粒のECD分布をレーザ回折によって測定することができ、この場合、結晶粒は、入射光の経路内にランダムに配置され、結晶粒による光の回折によって生じる回折パターンを測定する。回折パターンをあたかもこれが複数の球形結晶粒によって生じたかのごとく数学的に説明することができ、かかる球形結晶粒の直径分布は、ECDにより計算して記録される。結晶粒の粒度分布の観点は、種々の用語および記号を用いて種々の統計学的特性によって表現できる。かかる用語の特定の例としては、平均値、中央値(メジアン)および最頻値(モード)が挙げられる。粒度分布を一連のそれぞれの粒径チャネルに対応した一組の値Diとして考えることができ、この場合、各Diは、それぞれのチャネルiに対応した幾何学的平均ECD値であり、iは、用いられるチャネルの1から数nまでの範囲にある整数である。
【0069】
レーザ回折法によって得られる平均値は、結晶粒体積の分布に基づいて最も容易に表現でき、体積平均値を周知の数式に従ってD[4,3]として表現することができる。結果を表面積分布に変換することができ、この表面積の平均値は、周知の数式に従ってD[3,2]である。別段の指定がなければ、本発明で用いられる平均粒度分布の平均値は、体積に基づいた平均値D[4,3]を意味している。粒度分布の中央値D50は、複数の結晶粒を2つの互いに等しい集団に分割する値であり、一方の集団は、この値よりも大きなECD粒度を有する結晶粒から成り、他方の半分は、この値以下のECD粒度を有する。粒度分布の最頻値は、結晶粒の最も高い頻度に対応した値であり、この値は、分布のピークとして可視化できる(分布は、2つ以上の局大頻度を含むのが良く、これは、マルチモーダルと呼ばれる)。複数の結晶粒のフラクションyが分布中に存在する最大粒度を表わす種々の他の値d(y)を提供することができる。例えば、d(0.9)は、結晶粒のうちの90パーセントが存在する最大ECD粒度を表わし、d(0.5)は、結晶粒のうちの50パーセントが存在する最大ECD粒度を表わし、d(0.1)は、結晶粒のうちの10パーセントが存在する最大ECD粒度を表わしている。
【0070】
実施例を参照して本発明を具体的に図示するとともに説明したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、形態および細部における種々の変更を行うことができることは理解されよう。例えば、実施例の全てはcBNを高硬度相として用いているが、同じ技術をマトリックス材料中に分布させた他形式の高硬度材料について使用できることが理解されよう。
なお、好ましい構成態様として、本発明を次のように構成することもできる。
1. 多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料を製造する方法であって、前記方法は、
平均粒径が250nm以下の粒子を含むマトリックス前駆物質粉末を用意するステップと、
平均粒径が少なくとも0.2μmの立方晶窒化ホウ素(cBN)の粒子を含む立方晶窒化ホウ素(cBN)粉末を用意するステップと、
前記マトリックス前駆物質粉末と前記立方晶窒化ホウ素(cBN)粉末を均質に混合するステップと、
前記均質混合粉末を少なくとも1100℃の温度および少なくとも3.5GPaの圧力で焼結して、マトリックス材料中に分散させた立方晶窒化ホウ素(cBN)粒子を含む前記PCBN材料を形成するステップとを含む、PCBN材料の製造方法。
2. 平均粒径が100nm以下の粒子を含むマトリックス前駆物質粉末を用意するステップを更に有する、上記1記載のPCBN材料の製造方法。
3. 前記マトリックス前駆物質粉末と前記cBN粉末を均質に混合する前記ステップは、
前記マトリックス前駆物質粉末および前記cBN粉末を溶剤中に分散させるステップと、
超音波ミキサを用いて前記溶剤、前記マトリックス前駆物質粉末および前記cBN粉末を混合するステップと、
前記溶剤を除去してマトリックス前駆物質粒子とcBN粒子の均質混合粉末を後に残すステップとを含む、上記1または2記載のPCBN材料の製造方法。
4. 前記マトリックス前駆物質粉末と前記cBN粉末を均質に混合する前記ステップは、乾式音波混合から成る、上記1または2記載のPCBN材料の製造方法。
5. 平均粒径が0.2~15μmのcBN粒子を用意するステップを含む、上記1~4のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
6. 平均粒径が1μmを超えるcBN粒子を用意するステップを含む、上記1~5のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
7. 平均粒径が5μmから10μmまでの範囲にあるcBN粒子を用意するステップを含む、上記1~6のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
8. マルチモーダル平均粒度分布を呈するcBN粒子を用意するステップを含む、上記1~7のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
9. 前記PCBN材料は、80体積パーセント未満の前記cBN粒子を含む、上記7または8記載のPCBN材料の製造方法。
10. 前記マトリックス材料は、チタンおよびアルミニウムのうちのいずれかの化合物から選択された物質から成る、上記1~9のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
11. 前記マトリックス材料は、チタン炭窒化物、炭化チタン、窒化チタン、二ホウ化チタン、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムのうちのいずれかから成る、上記10記載のPCBN材料の製造方法。
12. 多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料を製造する方法であって、前記方法は、
粒子を含むマトリックス前駆物質粉末を用意するステップと、
前記マトリックス前駆物質粉末を磨砕して1μm以下の平均粒径を達成するステップと、
前記磨砕されたマトリックス前駆物質粉末と平均粒径が少なくとも0.2μmの粒子を含むcBN粉末を均質に混合するステップと、
前記均質混合された粉末を少なくとも1100℃の温度および少なくとも3.5GPaの圧力で焼結して、マトリックス材料中に分散させた立方晶窒化ホウ素(cBN)の粒子を含む前記PCBN材料を形成するステップとを含む、PCBN材料の製造方法。
13. 前記マトリックス粉末と前記cBN粉末を均質に混合する前記ステップは、
前記マトリックス前駆物質粉末および前記cBN粉末を溶剤中に分散させるステップと、
超音波ミキサを用いて前記溶剤、前記マトリックス前駆物質粉末および前記cBN粉末を混合するステップと、
前記溶剤を除去してマトリックス前駆物質粒子とcBN粒子の均質混合粉末を後に残すステップとを含む、上記12記載のPCBN材料の製造方法。
14. 界面活性剤を前記溶剤に添加するステップを更に含む、上記13記載のPCBN材料の製造方法。
15. 前記マトリックス前駆物質粉末と前記cBN粉末を均質に混合する前記ステップは、乾式音波混合から成る、上記12記載のPCBN材料の製造方法。
16. 前記磨砕されたマトリックス前駆物質粉末は、平均粒径が200nm以下の粒子を含む、上記12~15のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
17. 平均粒径が0.2~15μmのcBN粒子を用意するステップを含む、上記12~16のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
18. 平均粒径が1μmを超えるcBN粒子を用意するステップを含む、上記12~17のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
19. マルチモーダル平均粒度分布を呈するcBN粒子を用意するステップを含む、上記12~18のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
20. 前記PCBN材料は、80体積パーセント未満の前記cBN粒子を含む、上記12~19のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
21. 前記マトリックス材料は、チタンおよびアルミニウムのうちのいずれかの化合物から選択された物質から成る、上記12~20のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
22. 前記マトリックス材料は、チタン炭窒化物、炭化チタン、窒化チタン、二ホウ化チタン、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムのうちのいずれかから成る、上記21記載のPCBN材料の製造方法。
23. 前記マトリックス前駆物質粉末を磨砕して700nm以下の平均粒径を達成するステップを含む、上記12~22のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
24. 前記マトリックス前駆物質粉末を磨砕して500nm以下の平均粒径を達成するステップを含む、上記12~22のうちいずれか一に記載のPCBN材料の製造方法。
25. 多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料であって、
立方晶窒化ホウ素(cBN)の粒子を含み、
前記cBN粒子は、少なくとも1種類のチタン含有化合物を含むマトリックス材料中に分散してあり、
前記PCBN材料は、微粉砕材からの0.5重量パーセント以下の不純物を含む、PCBN材料。
26. 微粉砕材不純物を含まない、上記25記載のPCBN材料。
27. 前記微粉砕材不純物は、炭化タングステン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化チタン、および炭化ホウ素のうちのいずれかから選択された物質から成る、上記25または26記載のPCBN材料。
28. 前記cBN粒子は、0.2~15μmの平均粒径を有する、上記25、26または27記載のPCBN材料。
29. 前記cBN粒子は、1μmを超える平均粒径を有する、上記25~28のうちいずれか一に記載のPCBN材料。
30. 前記cBN粒子は、マルチモーダル平均粒度分布を呈する、上記25~29のうちいずれか一に記載のPCBN材料。
31. 前記PCBN材料は、80体積パーセント未満の前記cBN粒子を含む、上記25~30のうちいずれか一に記載のPCBN材料。
32. 前記マトリックス材料は、チタンおよびアルミニウムのうちのいずれかの化合物から選択された物質から成る、上記25~31のうちいずれか一に記載のPCBN材料。
33. 前記マトリックス材料は、チタン炭窒化物、炭化チタン、窒化チタン、二ホウ化チタン、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムのうちのいずれかから成る、上記32記載のPCBN材料。
34. 上記25~33のうちいずれか一に記載の焼結多結晶材料から成る工具であって、前記工具は、切削、微粉砕、研削、穴あけ、または他の研磨用途のうちのいずれかのためのものである、工具。