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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025812
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】複合加熱配膳車
(51)【国際特許分類】
   A47B 31/02 20060101AFI20230216BHJP
   A47B 31/00 20060101ALI20230216BHJP
   F22G 1/16 20060101ALI20230216BHJP
   A47J 39/02 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A47B31/02 A
A47B31/00 H
F22G1/16
A47J39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131181
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】504288627
【氏名又は名称】株式会社井上製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121418
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂
【テーマコード(参考)】
4B066
【Fターム(参考)】
4B066AA08
4B066BC09
4B066BD18
4B066BD21
(57)【要約】
【課題】 配膳車内に収容された食品等に対して、マイクロ波と過熱蒸気とによる複合的な加熱を行うことで、短時間で食品等を効率的に加熱して、食味・食感に優れた食品等を得るようにする。
【解決手段】 内部にトレイTが多段に配置されたカート3と、内部にカート3を収容するカート収容室4が形成された配膳車本体を有する配膳車1において、前記配膳車本体2にマイクロ波発生手段と過熱蒸気供給手段が設けられ、マイクロ波発生手段によって、前記トレイT上の食器内に収容された食品または食材が加熱され、且つこれら食品または食材が過熱蒸気によっても加熱されるようになされている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にトレイが多段に配置され、底部に取り付けられたキャスターで移動自在なカートと、内部にカートを収容するカート収容室が形成された配膳車本体を有する配膳車において、前記配膳車本体にマイクロ波発生手段と過熱蒸気供給手段が設けられ、マイクロ波発生手段によって、前記トレイ上の食器内に収容された食品または食材が加熱され、且つこれら食品または食材が過熱蒸気によっても加熱されるようになされている、複合加熱配膳車。
【請求項2】
配膳車のカート収容室の前側がカート出入口部となされ、該カート出入口部に取り付けられた一または複数の扉によって、カート出入口部が開閉自在となされ、カートは、前側と後側が開口した全体が略直方体状または略立方体状であり、該カート内に収容されたトレイ上の食器内の食品または食材に対して、前記カート収容室の後壁から、マイクロ波発生手段と過熱蒸気供給手段とによって、マイクロ波の照射と過熱蒸気の供給が行われるようになされている、請求項1記載の複合加熱配膳車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、病院や介護施設等において、患者や入所者に対して給食を提供する際に用いられる配膳車に関し、より詳細には2つの加熱手段を相乗的に結合させた複合加熱配膳車に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波による食品の加熱は、電子レンジにおいて、広く行われている。また、配膳車についても後述するようなものが知られている。
【0003】
すなわち、飲食物を収容可能なカートと、該カート二台を左右に並べて収容可能なステーションとで構成される配膳車であって、前記ステーションの後壁に、後述する加熱手段としてのマイクロ波発生装置が設けられていた。
【0004】
すなわち、前記加熱手段は、前記ステーションの後壁部の内部にマイクロ波発生装置を上下方向に間隔をあけて取付けるとともに、該マイクロ波発生装置の前側にマイクロ波を伝導させる中空箱型状の導波体を設け、ステーションの内部に前記カートを収容させた状態で、該カートの各棚の下部に前記導波体が位置する構成としていた。そして、該導波体は、上面にマイクロ波照射開口を備え、該開口からカートの各棚に向けてマイクロ波が照射されるようになされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-9028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイクロ波による食品の加熱は、短時間で行えるという利点がある。しかしながら、マイクロ波による加熱は、所謂エッジランナウェイ(縁暴走現象)によって、加熱対象物の端部から先に加熱されるという特性を有し、そのため加熱ムラが発生し易く、また消費電力が大きいといった短所を有する。
【0007】
また、前述した従来の配膳車のように、給食にあたって、カート内に多段に収容されたトレイ上の各種食器に盛られた御飯や主菜、副菜等をマイクロ波で再加熱した場合、前記各食品がパサつき易く、食味、食感が損なわれ易いという短所も有する。
【0008】
更に、マイクロ波による加熱では、配膳車内に多段に収容されたトレイ上の各食器に入った御飯、主菜、副菜および汁物等をムラなく、完全に加熱することが困難であることから、この欠点を解消するために、前述した配膳車のように、各段のトレイに対応して、マイクロ波の導波体を多段に配設する必要があり、そのため、装置構造が複雑で製造に多大な工程を要するという問題もあった。
【0009】
本発明の目的は、配膳車内での食品や食材の加熱において、食品等を短時間で加熱することができ、且つ食品等の外側部分よりも内部が加熱され易いというマイクロ波の特性を活かしつつ、前述した種々のマイクロ波加熱の短所を相殺して有用な給食提供を実現することができ、しかも配膳車の構造自体を簡略することも可能な複合加熱配膳車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の本発明は、内部にトレイが多段に配置され、底部に取り付けられたキャスターで移動自在なカートと、内部に前記カートを収容するカート収容室が形成された配膳車本体を有する配膳車において、前記配膳車本体にマイクロ波発生手段と過熱蒸気供給手段が設けられ、マイクロ波発生手段によって、前記トレイ上の食器内に収容された食品または食材が加熱され、且つこれら食品または食材が過熱蒸気によっても加熱されるようになされていることを特徴とする複合加熱配膳車である。
【0011】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載の複合加熱配膳車について、配膳車のカート収容室の前側がカート出入口部となされ、該カート出入口部に取り付けられた一または複数の扉によって、前記カート出入口部が開閉自在となされ、カートは、前側と後側が開口した全体が略直方体状または略立方体状であり、該カート内に収容されたトレイ上の食器内の食品または食材に対して、前記カート収容室の後壁から、マイクロ波発生手段と過熱蒸気供給手段とによって、マイクロ波の照射と過熱蒸気の供給が行われるようになされているものである。
【0012】
なお、本発明において、「過熱蒸気」とは過熱水蒸気を意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る複合加熱配膳車は、前述した通り、マイクロ波による加熱と過熱蒸気による加熱の両方が複合的に行われるため、これら両加熱の相乗効果によって、配膳される食品の良好な食味や食感等が得られるという格別の効果を有する。
【0014】
より詳細には、前述した本発明によれば、マイクロ波の照射によって、トレイ上の食器に盛られた食品等が短時間で急速に加熱され、また食品の外側部分よりも内部が有効に加熱される。また、過熱蒸気の送入によって、前記トレイ上の食器に盛られた食品等がその外側部分から蒸らし加熱され得る。そして、この場合、過熱蒸気による食品の加熱は、前記マイクロ波による加熱ムラの欠点を補うという利点を有する。
【0015】
以上要するに、本発明に係る複合加熱配膳車によれば、マイクロ波による短時間での食品内部からの加熱と過熱蒸気による食品の外側部分からの蒸らし加熱が相乗的に行われ、そして、このようなマイクロ波による加熱特性と過熱蒸気による加熱特性との有機一体性(シナジー効果)によって、トレイ上の食器内食品等の全体を隈なく、且つ短時間で効率的に加熱することができ、しかも前述した過熱蒸気による蒸らし加熱によって、食味および食感にも優れた食品等の加熱が行えるという格別の実用的利点が得られる。
【0016】
また、本発明に係る複合加熱配膳車は、トレイ上の食器に調理済みの食品を入れて再加熱する場合だけでなく、前記各食器に食材を入れて配膳車内で加熱調理を行って給食を提供する場合にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る複合加熱配膳車の概要を示す正面図である。
図2図1の配膳車の扉を開けた状態の正面図であって、カート収容室にカートが収容された状態を示す。
図3図1の配膳車の扉を開けた状態の正面図であって、カート収容室からカートを出した状態を示す。た状態の正面図である。
図4図3の状態において、 カート収容室の後壁を構成するパネルを外した状態の正面図である。
図5】同実施形態に係る複合加熱配膳車の側面断面図であって、カート収容室内にカートが収容された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。なお、本実施形態において、前後・左右・上下は図2を基準とし、「前」とは図2の図面紙葉の表側方向を指し、「後」とは同図面紙葉の裏側方向を意味するものとする。また、「左右」は図2の左右方向を意味し、「上下」は図2の上下方向を意味するものとする。
【0019】
先ず、本実施形態に係る複合加熱配膳車の概要について図面にしたがって説明すると、図1図3に示すように、配膳車1は、内部にカート3が収容されるカート収容室4を有する配膳車本体2を備え、前記カート収容室4の両側壁9・11には、該部に取り付けられた上下一対のヒンジ33を介して左右の本体扉13が観音開き状に設けられている。なお、図中10は、配膳車本体2における前記カート3の出入口部を示す。また、本実施形態においては、前述した通り、カート収容室4の両側壁9・11に、左右の本体扉13を観音開き状に設けたが、本発明では、カート3の出入口部10全体を閉止する1枚の扉とする場合もある。
【0020】
また、前記配膳車本体2の上部には、後述する冷却装置5が設けられ、また後述するマイクロ波発生用のマグネトロンMTを制御するシーケンス制御部34も設けられている。
【0021】
カート収容室4は、より詳細には、天井壁7と底壁8と前記両側壁9・11および後壁12を備え、前記底壁8には、その前側両端に車輪14が軸支され、底壁8の前側中央部分並びに同後側両端には、それぞれ脚体30が設けられている。また、底壁8の両側寄り部分には、前記カート3のキャスター16が進入するための開口17が形成されている。
【0022】
前記カート3は、前後壁がない(前側と後側が開口した)全体が縦長の略直方体状のボックス型であって、その内部がトレイ収容室40となされ、その幅方向のほぼ中央部分には多数の仕切壁部材15が上下方向に列設されて仕切壁が構成されている。そして、上下に隣り合う仕切壁部材15間にはトレイTが差し込まれ、該トレイT上には各種食品入りの食器TWが載置されている。なお、カート3は、略立方体としても良い。
【0023】
そして、図3図5に示すように、前記後壁12の前面には、本実施形態では、左右一対のパネル12A・12Bが取り付けられ、左側パネル12Aの左縁寄り部分には、後述する過熱蒸気発生装置6からの過熱蒸気が吐出する多数の過熱蒸気送出孔19が上下方向に一列で設けられており、また左側パネル12Aの右半部には、多数の冷気吐出口22Aが上下方向に列設され、該冷気吐出口22Aの右側には、多数の冷気吸込口23Aが上下方向に列設され、またこれら冷気吐出口22Aと冷気吸込口23Aの下方に過熱蒸気を吸込む円形吸込口21が形成されており、該円形吸込口21の後側には吸引ファン26が設けられている。なお、図中25は前記吸引ファン26の収容ダクトを示す。
【0024】
更に、前記後壁12の右側パネル12Bには、多数の冷気吐出口22Bが上下方向に列設され、該冷気吐出口22Bの左側には、多数の冷気吸込口23Bが上下方向に列設されている。
【0025】
また、前記後壁12における左右一対のパネル12A・12Bの後側には、前述した冷気吐出口22A・22Bと対応する冷気供給用ダクト27A・27Bが設けられ、また前記冷気吸込口23A・23Bと対応する冷気吸込用ダクト28A・28Bが設けられている。そして、前記冷気供給用ダクト27A・27Bは、前記冷却装置5から冷気が供給され、冷気吐出口22A・22Bから冷気が吹き出す構造となされている。また、前記冷気吸込口23A・23Bおよび蒸気吸込用ダクト28A・28Bによる冷気の吸引は、配膳車本体2の上部に設置された吸引ファン(図示せず)を介して行われる。
【0026】
そして、前記左側パネル12Aの後側に形成された蒸気供給用ダクト24の上下部分および中段部分に、後述する蒸気発生装置6で発生した蒸気を加熱するコイル状のヒータ31が設けられ、また蒸気供給用ダクト24における前記ヒータ31間、並びに前記蒸気供給用ダクト24と隣り合う冷気供給用ダクト27AにそれぞれマグネトロンMTが合計6個配置されている。そして、これら合計6個のマグネトロンMTの前側におけるパネル12Aには、前述した導波管WGが設けられている。
【0027】
次に、過熱蒸気の供給構造について説明すると、前記配膳車本体2の後部下側に蒸気発生装置6が設置され、該蒸気発生装置6で発生した蒸気は、蒸気用ファン26を介して前記蒸気供給用ダクト24内を上昇すると共に、該蒸気供給用ダクト24内の前記ヒータ31によって、加熱されて過熱蒸気となり、該過熱蒸気は、前記左側パネル12Aの過熱蒸気送出孔19からカート3内に送入され、そして、カート3内を循環した過熱蒸気は左側パネル12Aの下部に形成された円形の過熱蒸気吸込口21から吸い込まれる。この吸込みは該過熱蒸気吸込口21の後側に設置された吸引ファン26によって行われ、吸い込まれた過熱蒸気は前記蒸気発生装置6側に回収されて蒸気の循環が行われる構成となされている。また、蒸気発生装置6には前記の通り、通常、送風ファン(図示せず)が一体に設けられ、該ファン(図示せず)によって、発生蒸気の送出が行われる。
【0028】
次に、マイクロ波の照射構造について説明すると、マイクロ波の照射は、市販されている通常の冷却フィンFN付きの前記マグネトロンMTで行われ、各マグネトロンMTの前側に前記導波管WGが取り付けられ、導波管WGによって、マイクロ波が前記トレイ3内に反射・拡散するようになされ、また前記フィンFNは、上下に隣り合うマグネトロンMT間に配置された冷却用ファンFAによって放熱・冷却される構造となされている。
【0029】
以上述べた構成のカート収容型配膳車1によれば、前述したマグネトロンMTの導波管WGによって、カート3内に多段に収容されたトレイT上の各種食器TW内の食品の初期加熱が迅速に行われ、その後、前記蒸気発生装置6並びにヒータ31で発生した過熱蒸気によって、前記食器TW内の食品の仕上げ加熱が行われる。
【0030】
また、カート3の内壁に金属製等の反射板(図示せず)を貼着することで、マグネトロンMTの導波管WGから照射されたマイクロ波はカート3内に反射・拡散される。一方、蒸気発生装置6およびヒータ31を介して供給される過熱蒸気は、ダクト24を介してカート3内の各段のトレイTに沿って水平方向に循環的に供給される。なお、図5は、説明のためにマグネトロンMTや導波管WGのみを図示したものであり、前記ヒータ31は省略されている。
【0031】
また、本実施形態のカート3には、前後二列で上下方向にそれぞれ12膳(合計24膳)のトレイTが配置される構成となされ、1トレイ当たりのマイクロ波は300W程度に設定され、前記合計24膳で7200Wのマイクロ波供給を行う。そのため、前述した合計6個のマグネトロンMTのそれぞれのワット数は1200W程度とする。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の複合加熱配膳車によれば、マイクロ波による加熱と過熱蒸気による加熱の相乗効果によって、食品等の内外部全体の効率的な加熱が実現でき、しかも両加熱後の食品の食味や食感にも優れているため、幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0033】
1 配膳車
2 配膳車本体
3 カート
4 カート収容室
5 冷却装置
6 蒸気発生装置
31 ヒータ
MT マグネトロン
WG 導波管
F 冷却用ファン
T トレイ
図1
図2
図3
図4
図5