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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025849
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】保護装置及び保護装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20230216BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20230216BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A61H1/02 G
B25J11/00 Z
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131246
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック アリワルガ
(72)【発明者】
【氏名】福本 健二
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 征幸
【テーマコード(参考)】
3C707
4C046
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707HS27
3C707HT23
3C707MS14
3C707MS27
3C707XK03
3C707XK06
3C707XK16
4C046AA08
4C046AA42
4C046BB03
4C046BB08
4C046CC01
4C046CC04
4C046DD02
4C046DD04
4C046DD06
4C046DD13
4C046DD40
4C046DD43
4C046DD45
4C046EE03
4C046EE04
4C046EE13
4C046EE14
4C046EE32
4C046EE33
4C046FF12
4C046FF27
(57)【要約】
【課題】ユーザにとって不慮の事態から当該ユーザの身体を保護する技術を提供する。
【解決手段】保護装置が、ユーザの状態、又は前記ユーザの周囲の状態を示す状態情報を検出するセンサと、前記ユーザの身体に装着される装着体と、前記装着体の少なくとも一部を移動させることにより前記身体の姿勢を変更させる稼働部と、前記稼働部を制御する制御部と、を備え、前記制御部が、前記センサから前記状態情報を取得することと、前記状態情報に基づいて、回避すべき事態が発生したか否かを判定することと、前記回避すべき事態が発生したと判定した場合に、前記稼働部を駆動させて前記装着体の少なくとも一部を移動させることを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの状態、又は前記ユーザの周囲の状態を示す状態情報を検出するセンサと、
前記ユーザの身体に装着される装着体と、
前記装着体の少なくとも一部を移動させることにより前記身体の姿勢を変更させる稼働部と、
前記稼働部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
前記センサから前記状態情報を取得することと、
前記状態情報に基づいて、回避すべき事態が発生したか否かを判定することと、
前記回避すべき事態が発生したと判定した場合に、前記稼働部を駆動させて前記装着体の少なくとも一部を移動させることと、
を実行する、保護装置。
【請求項2】
前記稼働部が、前記装着体における所定の被移動箇所に取り付けられ、前記被移動箇所を初期位置から所定距離離れた位置へ移動させる、請求項1に記載の保護装置。
【請求項3】
前記稼働部が、前記装着体における所定の被移動箇所に取り付けられ、前記被移動箇所を初期位置から移動限界位置までの間で複数段階の位置へ移動させることが可能であり、
前記制御部が、前記状態情報に基づいて前記稼働部による移動の段階を選択し、選択した段階を示す制御信号を前記稼働部へ送信し、
前記稼働部が、前記制御部から受信した制御信号が示す段階の位置へ前記被移動箇所を移動させる、請求項1又は2に記載の保護装置。
【請求項4】
前記装着体における複数の被移動箇所にそれぞれ前記稼働部が取り付けられ、
前記制御部が、前記状態情報に基づいて、前記複数の被移動箇所に取り付けられた前記稼働部のうち、稼働させる前記稼働部を選択し、選択した前記稼働部に対して制御信号を送信する、請求項1~3の何れか一項に記載の保護装置。
【請求項5】
前記稼働部が、一方向に伸縮可能な伸縮構造体と、前記伸縮構造体を伸縮させる駆動源とを備え、前記装着体の前記被移動箇所と、当該被移動箇所から移動方向へ離間した位置に固設された固設部との間に、少なくとも前記伸縮構造体が接続され、前記駆動源によって前記伸縮構造体を縮めることにより前記被移動箇所を前記固設部側へ移動させる、請求項2~4の何れか一項に記載の保護装置。
【請求項6】
前記伸縮構造体がワイヤーであり、前記駆動源が前記ワイヤーを巻きとるリールであって、前記リールが前記ワイヤーを巻きとることで、前記リールから前記ワイヤー先端までの距離を縮める、請求項5に記載の保護装置。
【請求項7】
前記伸縮構造体が、伸縮方向に延在する中空部を有し、当該中空部を画する周壁が蛇腹状の弾性体で構成され、
前記駆動源が、ポンプであり、前記中空部内へ空気を供給して蛇腹状の前記周壁を伸ばすことで前記伸縮構造体を伸長させる、又は前記中空部内から空気を排出して蛇腹状の前記周壁を縮ませることで前記伸縮構造体を短縮させる、請求項5に記載の保護装置。
【請求項8】
前記伸縮構造体が、伸縮方向に延在する中空部を有し、前記中空部を画する周壁が、中空部内の気圧と中空部外の気圧とが等しい場合に前記伸縮方向において伸長した状態をとる筒状の弾性体であり、
前記駆動源が、ポンプであって、前記中空部内へ空気を供給して前記中空部内を陽圧と
し、前記周壁を外側へ湾曲させることで、前記伸縮構造体を前記伸縮方向において短縮させる、請求項5に記載の保護装置。
【請求項9】
前記稼働部が、前記装着体の前記被移動箇所に一端部が接続されたビーム部と、前記ビーム部の他端部に接続された駆動部とを備え、前記駆動部が前記ビーム部の前記他端部付近を中心に前記ビーム部を回転させることで、前記被移動箇所を移動させる、請求項2~4の何れか一項に記載の保護装置。
【請求項10】
前記稼働部が、前記被移動箇所から移動方向へ離間した位置に配置された電磁石と、
前記装着体の前記被移動箇所に配置され、前記電磁石によって吸引される吸引部材とを備え、前記電磁石が電力の供給を受けて磁力を発生させて前記吸引部材を引き寄せることで前記被移動箇所を移動させる、請求項2~4の何れか一項に記載の保護装置。
【請求項11】
センサによって、ユーザの状態、又は前記ユーザの周囲の状態を示す状態情報を検出するステップと、
前記センサから前記状態情報を制御部が取得するステップと、
前記状態情報に基づいて、回避すべき事態が発生したか否かを前記制御部が判定するステップと、
前記回避すべき事態が発生したと前記制御部が判定した場合に、前記ユーザが装着する装着体に取り付けられた稼働部を駆動させて前記装着体の少なくとも一部を移動させるステップと、
を含む、保護装置の駆動方法。
【請求項12】
前記装着体の少なくとも一部を移動させるステップでは、前記装着体の所定の被移動箇所に取り付けられた前記稼働部により、前記被移動箇所を初期位置から所定距離離れた位置へ移動させるステップを含む、請求項11に記載の保護装置の駆動方法。
【請求項13】
前記被移動箇所を初期位置から移動限界位置までの間で複数設定された移動の段階から、前記制御部により、前記状態情報に基づいて前記稼働部による移動の段階を選択し、選択した段階を示す制御信号を前記稼働部へ送信するステップと、
前記稼働部により、前記制御部から受信した制御信号が示す段階の位置へ前記被移動箇所を移動させるステップ
を含む、請求項12に記載の保護装置の駆動方法。
【請求項14】
前記制御部によって、前記装着体における複数の被移動箇所にそれぞれ取り付けられた稼働部のうち前記状態情報に基づいて稼働させる前記稼働部を選択し、選択した前記稼働部に対して制御信号を送信するステップ
を含む、請求項11~13の何れか一項に記載の保護装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護装置及び保護装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アクチュエータによって伸長または短縮される伝達要素を介して能動的に補助される肢に結合されたアクチュエータを含むウェアラブル能動補助装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/049164号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、怪我や病気によって四肢の動きが損なわれている患者に装着され、当該四肢の動きに合わせて、その動きを補助するものである。このため例えば、患者の死角から接近する障害物を避けるなど、患者の意図しない動きが行えるものではなかった。
【0005】
本開示の技術は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザにとって不慮の事態から当該ユーザの身体を保護する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の保護装置は、
ユーザの状態、又は前記ユーザの周囲の状態を示す状態情報を検出するセンサと、
前記ユーザの身体に装着される装着体と、
前記装着体の少なくとも一部を移動させることにより前記身体の姿勢を変更させる稼働部と、
前記稼働部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
前記センサから前記状態情報を取得することと、
前記状態情報に基づいて、回避すべき事態が発生したか否かを判定することと、
前記回避すべき事態が発生したと判定した場合に、前記稼働部を駆動させて前記装着体の少なくとも一部を移動させることと、
を実行する。
【0007】
前記保護装置は。前記稼働部が、前記装着体における所定の被移動箇所に取り付けられ、前記被移動箇所を初期位置から所定距離離れた位置へ移動させてもよい。
【0008】
前記保護装置は。前記稼働部が、前記装着体における所定の被移動箇所に取り付けられ、前記被移動箇所を初期位置から移動限界位置までの間で複数段階の位置へ移動させることが可能であり、
前記制御部が、前記状態情報に基づいて前記稼働部による移動の段階を選択し、選択した段階を示す制御信号を前記稼働部へ送信し、
前記稼働部が、前記制御部から受信した制御信号が示す段階の位置へ前記被移動箇所を移動させても良い。
【0009】
前記保護装置は。前記装着体における複数の被移動箇所にそれぞれ前記稼働部が取り付けられ、
前記制御部が、前記状態情報に基づいて、前記複数の被移動箇所に取り付けられた前記稼働部のうち、稼働させる前記稼働部を選択し、選択した前記稼働部に対して制御信号を送信してもよい。
【0010】
前記保護装置は。前記稼働部が、一方向に伸縮可能な伸縮構造体と、前記伸縮構造体を伸縮させる駆動源とを備え、前記装着体の前記被移動箇所と、当該被移動箇所から移動方向へ離間した位置に固設された固設部との間に、少なくとも前記伸縮構造体が接続され、前記駆動源によって前記伸縮構造体を縮めることにより前記被移動箇所を前記固設部側へ移動させてもよい。
【0011】
前記保護装置は。前記伸縮構造体がワイヤーであり、前記駆動源が前記ワイヤーを巻きとるリールであって、前記リールが前記ワイヤーを巻きとることで、前記リールから前記ワイヤー先端までの距離を縮めてもよい。
【0012】
前記保護装置は。前記伸縮構造体が、伸縮方向に延在する中空部を有し、当該中空部を画する周壁が蛇腹状の弾性体で構成され、
前記駆動源が、ポンプであり、前記中空部内へ空気を供給して蛇腹状の前記周壁を伸ばすことで前記伸縮構造体を伸長させる、又は前記中空部内から空気を排出して蛇腹状の前記周壁を縮ませることで前記伸縮構造体を短縮させてもよい。
【0013】
前記保護装置は。前記伸縮構造体が、伸縮方向に延在する中空部を有し、前記中空部を画する周壁が、中空部内の気圧と中空部外の気圧とが等しい場合に前記伸縮方向において伸長した状態をとる筒状の弾性体であり、
前記駆動源が、ポンプであって、前記中空部内へ空気を供給して前記中空部内を陽圧とし、前記周壁を外側へ湾曲させることで、前記伸縮構造体を前記伸縮方向において短縮させてもよい。
【0014】
前記保護装置は。前記稼働部が、前記装着体の前記被移動箇所に一端部が接続されたビーム部と、前記ビーム部の他端部に接続された駆動部とを備え、前記駆動部が前記ビーム部の前記他端部付近を中心に前記ビーム部を回転させることで、前記被移動箇所を移動させてもよい。
【0015】
前記保護装置は。前記稼働部が、前記被移動箇所から移動方向へ離間した位置に配置された電磁石と、
前記装着体の前記被移動箇所に配置され、前記電磁石によって吸引される吸引部材とを備え、前記電磁石が電力の供給を受けて磁力を発生させて前記吸引部材を引き寄せることで前記被移動箇所を移動させてもよい。
【0016】
上記課題を解決するために、本開示係る保護装置の駆動方法は、
センサによって、ユーザの状態、又は前記ユーザの周囲の状態を示す状態情報を検出するステップと、
前記センサから前記状態情報を制御部が取得するステップと、
前記状態情報に基づいて、回避すべき事態が発生したか否かを前記制御部が判定するステップと、
前記回避すべき事態が発生したと前記制御部が判定した場合に、前記ユーザが装着する装着体に取り付けられた稼働部を駆動させて前記装着体の少なくとも一部を移動させるステップと、
を含む。
【0017】
前記保護装置の駆動方法において、前記装着体の少なくとも一部を移動させるステップでは、前記装着体の所定の被移動箇所に取り付けられた前記稼働部により、前記被移動箇所を初期位置から所定距離離れた位置へ移動させるステップを含んでもよい。
【0018】
前記保護装置の駆動方法において、前記被移動箇所を初期位置から移動限界位置までの間で複数設定された移動の段階から、前記制御部により、前記状態情報に基づいて前記稼働部による移動の段階を選択し、選択した段階を示す制御信号を前記稼働部へ送信するステップと、
前記稼働部により、前記制御部から受信した制御信号が示す段階の位置へ前記被移動箇所を移動させるステップ
を含んでもよい。
【0019】
前記保護装置の駆動方法において、前記制御部によって、前記装着体における複数の被移動箇所にそれぞれ取り付けられた稼働部のうち前記状態情報に基づいて稼働させる前記稼働部を選択し、選択した前記稼働部に対して制御信号を送信するステップ
を含んでもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、ユーザにとって不慮の事態から当該ユーザの身体を保護する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る保護装置の正面図である。
図2】実施形態に係る保護装置の背面図である。
図3】実施形態に係る保護装置の側面図である。
図4】制御部の構成を示す図である。
図5】保護装置の制御部が実行する処理手順を示す図である。
図6】ユーザに装着された保護装置が作動する前の状態を示す図である。
図7】ユーザに装着された保護装置が作動した後の状態を示す図である。
図8】保護装置の作動によりユーザの上体を前側に倒すように姿勢を変更させた状態を示す図である。
図9】変形例1に係る保護装置の構成を示す図である。
図10】右前及び右後ろの稼働部を短縮させ、ユーザの上体を右手側へ傾斜させた例を示している。
図11】変形例2に係る保護装置の構成を示す図である。
図12】右前及び右後ろの稼働部を短縮させ、ユーザの上体を右手側へ傾斜させた例を示している。
図13】変形例3に係る保護装置の構成を示す図である。
図14】変形例3に係る保護装置を作動させた状態を示す図である。
図15】変形例4に係る保護装置の構成を示す図である。
図16】変形例4に係る保護装置を作動させた状態を示す図である。
図17】変形例5に係る保護装置の構成を示す図である。
図18】変形例5に係る電磁石ユニットの配置を示す図である。
図19】変形例5に係る保護装置を作動させた状態を示す図である。
図20】変形例6に係る保護装置の構成を示す図である。
図21】変形例6に係る保護装置を作動させた状態を示す図である。
図22】変形例7に係る保護装置の構成を示す図である。
図23】変形例7に係る保護装置を作動させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る保護装置について説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0023】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る保護装置1の正面図、図2は、本実施形態に係る保護装置1の背面図、図3は、本実施形態に係る保護装置1の側面図である。図1図3では、上下方向をY方向、左右方向をX方向、前後方向をZ方向として示す。なお、以下の説明において、左右は、主にユーザから見た場合の左右を示す。これらの方向は、説明の便宜のため一例として示すものであり、保護装置1の構成をこれに限定するものではない。以降の図面についても同様である。
【0024】
保護装置1は、装着体10と、稼働部20と、制御部30と、センサ40とを備えている。本実施形態の装着体10は、ユーザの上半身に装着されるジャケット型である。なお、装着体10は、ジャケット型に限定されるものではなく、ユーザの下半身や、腕、足、頭部など、他の部位に個別に装着されるものであってもよい。
【0025】
装着体10は、ユーザの胸部及び腹部などを覆う胴部11と、腕を覆う袖部12とを有している。胴部11は、布や合成樹脂のシートが筒状に成形され、その上側開口における左右の一部が前後に縫い合わされて肩部111が形成されている。胴部11の上端において、左右の肩部111の間には、上下に貫通したネックホール112が設けられている。また、胴部11の左右側面において、肩部111の直下には、ユーザの腕を通すためのアームホール113が設けられている。袖部12は、胴部11と同様の素材で筒状に成形され、肩側(上側)の開口がアームホール113と連通するように、袖部12の一端が胴部11の肩口に縫い付けられている。なお、袖部12は、省略されてもよい。装着体10は、ユーザが下端の開口117から、頭部、腕、及び胸部を入れ、左右の腕を夫々左右のアームホール113から袖部12内に通すと共に、ネックホール112から頭部を出し、胴部11がユーザの胸部から腰付近を覆うように装着される。
【0026】
本実施形態の装着体10では、左右の肩部111付近における前側及び後側を被移動箇所114とし、この位置に稼働部20の一端を接続するための接続部115が設けられている。また、各被移動箇所114から移動方向(Y方向)に離間した位置、本例では装着体10の下端付近を固設部116とし、稼働部20の他端を接続している。固設部116は、ユーザが装着体10を装着した場合にウェストの付近に位置し、装着体10がユーザの身体にフィットすることで、固設部116の位置が保たれる。また、固設部116や装着体10の下端がユーザのズボンやベルトに連結されることで、固設部116の位置が保たれるように構成されてもよい。
【0027】
稼働部20は、例えば一方向に伸縮可能な伸縮構造体と、この伸縮構造体を伸縮させる駆動源とを備えている。本実施形態では、伸縮構造体としてワイヤー21を備え、駆動源としてワイヤー21を巻きとる電動のリール22とを備えている。ワイヤー21の先端には例えばフックやカラビナなどの接続部210が設けられ、このフックやカラビナを装着体側の接続部115であるリング等にかけることで、ワイヤー21の先端が装着体10の被移動箇所114に接続される。リール22は、装着体10の下端付近における固設部116に設けられ、制御部30によって、その回転が制御される。リール22が、ワイヤー21を巻き取ることで、リール22からワイヤー21先端までの距離を短縮させる。また
、リール22が、ワイヤー21を繰り出すことで、リール22からワイヤー21先端までの距離を伸長させる。つまり本実施形態では稼働部の一部を構成する伸縮構造体として、リール22の巻取りによってワイヤー21の長さが接続部115と固設部116間で変わる例を示している。図1及び図2に示すように、稼働部20は、装着体10の前側左右と後側左右の4カ所に設けられており、これらを総括して説明する場合には、符号20を用い、これらを区別して説明する場合、左前の稼働部に符号2FL、右前の稼働部に符号2FR、左後の稼働部に符号2BL、右後の稼働部に符号2BRを用いて説明する。
【0028】
センサ40は、ユーザの状態又はユーザの周囲の状態を検出する手段であり、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ(角速度センサ)、測位装置、カメラ、レーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)、三次元スキャナなどの感知手段を含むものである。センサ40は、ユーザが転倒した場合や、ユーザが他の物体と衝突した場合など、ユーザの状態変化を検出するものや、ユーザが衝撃を受けることを予測するものであってもよい。さらにセンサ40は、ユーザ自身が装着しているものだけでなく、ユーザの周囲に存在するセンサ類から無線通信によって制御部30に信号を送るものであってもよい。また、センサ40は、ユーザに接近し、ユーザに衝突しそうな物体や、衝突した物体など、ユーザの周囲に存在する物体の状態変化を検出するものであってもよい。測位装置としては、例えばGPS(Global Positioning System)
等の衛星測位システムが挙げられる。レーダ及びLIDARは、保護装置1(ユーザ)の周囲に存在する物体との距離や、当該物体の移動速度を求める。
【0029】
本実施形態では、保護装置1の加速度、即ち保護装置1を装着したユーザの加速度を検出する加速度センサ41を制御部内に有している。加速度センサ41は、所定の軸(例えばXYZ方向の三軸)における速度の変化率と、その方向を各軸の加速度として検出する。加速度センサ41は、これらの軸における角速度を検出するセンサを兼ねた所謂六軸センサであってもよい。また、装着体10の肩部111上には、カメラ42が第二のセンサとして備えられ、ユーザの前方を撮影して、その撮影画像をユーザの周囲の状態を示す情報として制御部30へ入力する。なお、カメラ42は、所定の距離(基線長)を隔てて配置した一対の撮像ユニットで同一の被写体(物体)を撮影し、その視差から被写体までの距離等を検出できるステレオカメラであってもよい。また、カメラ42は、ユーザの前方に加え、後方を撮影して、その撮影画像をユーザの周囲の状態を示す情報として制御部30へ出力するものが更に設けられてもよい。このように前後に配置されたカメラ42は、例えば夫々が190度以上の画角で撮影を行うことで、ユーザを中心とした全周囲を撮影する。また、加速度センサ41、カメラ42以外のセンサを更に備えてもよい。
【0030】
制御部30は、センサ40による検出結果を取得し、検出結果が所定条件を満たした場合に稼働部20を制御して、装着体10の被移動部を移動させることにより、ユーザの姿勢を変更させる。図4は、制御部30の構成を示す図である。制御部30は、プロセッサ31、記憶部32、及び入出力部33を備える。プロセッサ31は、制御部30における各種の演算処理を統括的に実行する。プロセッサ31は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はFPGA(Field-Programmable Gate
Array)などの演算処理手段である。
【0031】
記憶部32は、例えば、主記憶部321と、補助記憶部322を備える。主記憶部321は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)などの主記憶部を備え、例えプロセッサ31で演算処理する情報が展開される。なお、主記憶部321は、プロセッサ31と一体に形成されてもよい。
【0032】
補助記憶部322は、RAM等の揮発性メモリ、ROM等の不揮発性メモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive
)、又はリムーバブルメディアなどの記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、または、メモリカード等、外部から装着可能で、かつコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0033】
補助記憶部322には、保護装置1の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベース、ユーザデータなどが記憶可能である。
【0034】
入出力部33は、例えば、センサ40からの情報(検出結果等)の入力、及びセンサ40や他の装置への情報(制御信号等)の出力を行うインターフェイスである。また、入出力部33は、他の装置からの情報の入力(受信)、及び他の装置への情報の出力(送信)を行う通信モジュールであってもよい。更に、入出力部33は、操作ボタンやタッチパネルなどユーザによる操作情報の入力、及びディスプレイやスピーカ、バイブレータなどによるユーザへの出力(表示や音出力、振動等)を行うユーザインターフェイスであってもよい。
【0035】
≪保護動作≫
図5は、制御部30が実行する保護装置1の実行方法を示す図である。保護装置1は、電源がONとなっている期間、或いは起動の指示を受けた場合に、図5の処理を繰り返し実行する。
【0036】
ステップS10にて、制御部30は、センサ40からユーザの状態及び周囲の状態を示す状態情報を取得する。例えば、制御部30は、加速度センサ41から、ユーザの加速度を取得すると共に、カメラ42から周囲の撮影画像を検出する。
【0037】
ステップS20にて、制御部30は、ステップS10で取得したセンサ40の検出結果に基づいて、ユーザの状態及びユーザの周囲の状態を解析する。例えば、制御部30は、加速度センサ41で検出した各軸の加速度に基づいて、ユーザの移動方向、移動速度、単位時間当たりの加速度の変化率(躍度)、及び重力方向に対する傾き等、ユーザの状態を示す情報を求める。また、制御部30は、カメラ42で撮影した撮影画像を画像処理することにより、ユーザの周囲に存在する物体を抽出し、その物体の位置や移動方向、移動速度等を周囲の情報として求める。更に、制御部30は、カメラ42で撮影した撮影画像に基づき、ユーザが歩いている、座っている、走っている、自転車に乗っている、停止している等、ユーザの動作を検出してもよい。なお、撮影画像から、物体の位置や速度、移動方向等を求める手法は、公知の技術を用いることができるので、詳細な説明を省略する。また、物体の位置や速度、移動方向は、カメラ42に限らず、レーダ、LIDAR、三次元スキャナ、又はこれらの組み合わせによって取得されるものであってもよい。
【0038】
ステップS30にて、制御部30は、ステップS20で求めたユーザの状態及び周囲の状態を示す情報が、所定条件を満たすか否かによって、保護装置1を作動させるか否かを判定する。例えば、ユーザが何かに衝突したり、車両等に衝突されたりして衝撃を受けた場合、この衝撃が加速度の急激な変化として検出されるので、制御部30は、ステップS20で求めた躍度が所定の閾値を超えた場合、ユーザが衝撃を受けたものとして、保護装置1を作動させると判定(肯定判定)する。また、ユーザが転倒すると、ユーザの頭部(保護装置1)が自由落下に近い加速度で落ちるので、制御部30は、所定の閾値を超えた加速度で下方向へ移動したことがステップS20で求められた場合、転倒した、即ち頭部に衝撃を受ける可能性があるものとして肯定判定する。更に、制御部30は、ステップS20で求めた物体の位置や移動方向、移動速度等に基づいて、所定時間後のユーザの位置と周囲の物体位置が一致する、即ち当該物体がユーザに衝突する可能性が高い場合(つまりユーザが衝撃を受ける前)に、肯定判定する。なお、これらの条件や閾値は、ユーザの
操作によって設定可能であってもよい。または、車両等がユーザに向かって移動している場合に、車輌の速度や加速度、および走行方向等を加味して、衝突が不可避であると予想できる場合に、肯定判定してもよい。
【0039】
ステップS30で肯定判定した場合、制御部30は、ステップS40へ移行し、装着体10における複数の被移動箇所114にそれぞれ取り付けられた稼働部20(2FL,2FR,2BL,2BR)のうち稼働させる稼働部20をステップS30の判定結果に基づいて選択する。例えば、ユーザの左手側から衝撃を受けると判定した場合、これと反対側の右手側へユーザの姿勢を傾斜させるように、稼働部2FR,2BRを選択する。また、ユーザが車両に乗車しており、車両の衝突が予測され、且つユーザが前方のエアバック装置に近づきすぎている場合に、ユーザを後傾させるように、稼働部2BL,2BRを選択する。
【0040】
ステップS50にて、制御部30は、ステップS30の判定結果に基づいて、被移動箇所を移動させる場合の移動の段階を選択する。例えば、被移動箇所を初期位置から移動限界位置までの間で複数設定されている場合、受ける衝撃が大きく、移動限界位置まで移動させる場合に、最も大きな移動の段階を選択する。また、受ける衝撃が中程度であり、中程度だけ移動させる場合に、中程度の移動の段階を選択する。なお、移動の段階は、被移動箇所114の移動距離で規定されてもよい。
【0041】
ステップS60にて、制御部30は、ステップS50で選択した移動の段階を示す制御信号を生成し、ステップS40で選択した稼働部20へ送信することで、稼働部20を作動させる。また移動部20の作動時に、センサ40によって被移動箇所の移動量を検出し、或は稼働部20に設けたエンコーダ(不図示)により稼働部20の移動量を検出し、制御部30へフィードバックして、被移動箇所が所定量移動するようにフィードバック制御してもよい。
【0042】
ステップS70にて、制御部30は、入出力部33のディスプレイやスピーカ、バイブレータなどから、所定量の移動が完了したことをユーザ(装着者)に音や光、振動などで通知する。なお、ユーザへの通知は、移動完了時に限らず、稼働部20の作動と同時や、作動前に行われてもよい。例えば、制御部30は、状態情報に基づいて障害物とユーザとの距離が所定範囲内となったと判定したときに警告のための通知を行い、稼働部20を作動させるときに作動を知らせる通知を行い、移動完了時に動作終了を知らせる通知を行ってもよい。なお、ユーザへの通知は、これらのタイミングに限定されるものではなく、省略することも含めて任意に設定され得る。
【0043】
図6は、ユーザに装着された保護装置1が作動する前の状態を示す図、図7は、ユーザに装着された保護装置1が作動した後の状態を示す図である。図6に示すように、保護装置1が作動する前は、ユーザが直立した状態で、被移動箇所114が初期位置にあり、各稼働部20におけるワイヤー21の長さが等しくなっている。そして、例えばユーザの右手側に障害物の衝突が予測される場合、制御部30は、稼働部2FL及び稼働部2BLのリール22を動作させてワイヤー21を巻き取り、ワイヤー21を短くすることで被移動箇所114を固設部116側に引き寄せることで、ユーザの上体を左手側に倒すように姿勢を変更させる。これによりユーザが認識していない障害物との衝突を避けるように姿勢を変更させ、ユーザを不慮の事態から保護することができる。なお、図7では、上体を左手側へ傾斜させたが、例えばユーザの左手側に障害物の衝突が予測される場合、制御部30は、稼働部2FR及び稼働部2BRのリール22を動作させてワイヤー21を巻き取り、ワイヤー21を短くすることでユーザの上体を右手側に倒すように姿勢を変更させてもよい。また、図8に示すように、制御部30が、稼働部2FL及び稼働部2FRのリール22を動作させてワイヤー21を短くすることでユーザの上体を前側に倒すように姿勢を
変更させてもよい。更に、図8とは反対に、制御部30が、稼働部2BL及び稼働部2BRのリール22を動作させてワイヤー21を短くすることでユーザの上体を後ろへ反らすように姿勢を変更させてもよい。このように制御部30は、センサ40から取得した情報に基づき、衝撃を受ける方向を判別し、これに応じて操作させる稼働部20を選択し、この衝撃から頭部や心臓を遠ざけるように姿勢を変更させる。
【0044】
また、制御部は、予測される衝撃の大きさや、障害物の速度に応じて、稼働部20による被移動箇所の移動の程度を変化させてもよい。即ち、制御部30は予測される衝撃が大きいほど移動量を大きく、当該衝撃が小さいほど移動量を小さくするように、ワイヤー21を縮める距離を調整する。例えば、リール22が、ワイヤー21を200mm短くすることで被移動箇所114を固設部116側へ移動限界位置まで移動させる場合に、制御部30は、ワイヤー21を予測される衝撃の大きさに応じて、50mm、100mm、150mm、200mmのように段階的に調整してもよい。この場合、制御部30は、被移動箇所114が初期位置から目的の距離だけ移動するようにリール22へ制御信号を送信する。その結果、所定距離を移動したことをユーザにフィードバックする回路を含んでいてもよい。なお、制御信号は、特段限定されるものではなく、パルス数や、デューティー比、コマンドなど、リール22の動作を制御できるものであればよい。本実施形態では、動作させるリール22に電力の供給を開始し、被移動箇所114を所定距離移動させた場合に電力供給を停止するといった、電力供給のON/OFFも制御信号に含む。なお、保護装置1は非作動時において装着者の自由な身体の動きを妨げないよう、リール22はある程度自由に回転するようになっている。ただしワイヤー21が弛まないようにするためリール22はワイヤー21を引き込む方向に付勢された状態になっている。
【0045】
また、このように本実施形態の保護装置1は、稼働部20が、装着体10の被移動箇所114を目的とする距離だけ移動させるように制御する。ユーザの姿勢を変更させる場合に、電流量やトルク量を目的値として制御を行なうと、ユーザの体格によって制御結果が変化してしまい、目的の姿勢とならないことが考えられる。このため本実施形態の保護装置1は、被移動箇所114の移動距離を目的値として制御することで、精度良く姿勢を変更させることができる。
【0046】
なお、稼働部20は、装着体10の前側左右と後側左右の4カ所に設けられたが、これに限らず、前側左右の2カ所のみ、又は後側左右の2カ所のみに設けられてもよい。
【0047】
<変形例1>
図9は、変形例1に係る保護装置1Aの構成を示す図である。本変形例の保護装置1Aは、前述の実施形態と比べて、稼働部20Aの構成が異なっている。なお、その他の構成は前述の実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0048】
本変形例の稼働部20Aは、伸縮構造体として蛇腹管21Aを備え、駆動源としてポンプ22Aを備えている。蛇腹管21Aは、伸縮方向に延在する中空部211を有する筒状の弾性体であって、中空部211を画する周壁212が蛇腹状に形成されている。ポンプ22Aは、蛇腹管21Aの中空部211内へ空気を供給して蛇腹状の周壁212を伸ばすことで蛇腹管21Aを伸長させる。また、ポンプ22Aは、中空部211内から空気を排出して周壁212の蛇腹部分を畳ませることで、蛇腹管21Aを短縮させる。
【0049】
図10は、左前及び左後ろの稼働部20Aを短縮させ、ユーザの上体を左手側へ傾斜させた例を示している。左前及び左後ろの稼働部20Aを短縮させる制御は前述の実施形態と同じである。また、本変形例においてもポンプ22Aが、蛇腹管21Aの中空部211内へ給気する程度、又は中空部211から排気する程度を制御するように、制御部30が
ポンプ22Aへ制御信号を送ることで、稼働部20Aの長さを調整できる。
【0050】
<変形例2>
図11は、変形例2に係る保護装置1Bの構成を示す図である。本変形例の保護装置1Bは、前述の実施形態と比べて、稼働部20Bの構成が異なっている。なお、その他の構成は前述の実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0051】
本変形例の稼働部20Bは、伸縮構造体として弾性管21Bを備え、駆動源としてポンプ22Bを備えている。弾性管21Bは、伸縮方向に延在する中空部211を有した筒状の弾性部材であって、中空部211を画する周壁213が、中空部内の気圧と中空部外の気圧とが等しい場合に前記伸縮方向において伸長した直管状となっている。また、弾性管21Bは、伸縮方向において所定の間隔を空けて複数の区切り部214が設けられている。区切り部214は、弾性管21Bの外周に嵌められた金属のリングであり、弾性管21Bの拡径を制限している。
【0052】
ポンプ22Bは、中空部211内へ空気を供給して中空部211内を陽圧とし、弾性管21Bを区切り部214以外の部分で径方向へ膨張させる。これにより弾性管21Bの周壁213を外側へ湾曲させることで、弾性管21Bを伸縮方向において短縮させる。
【0053】
図12は、左前及び左後ろの稼働部20Bを短縮させ、ユーザの上体を左手側へ傾斜させた例を示している。左前及び左後ろの稼働部20Bを短縮させる制御は前述の実施形態と同じである。また、本変形例においてもポンプ22Bが、弾性管21Bの中空部211内へ給気する程度を制御するように、制御部30がポンプ22Bへ制御信号を送ることで、稼働部20Bの長さを調整できる。
【0054】
<変形例3>
図13は、変形例3に係る保護装置1Cの構成を示す図である。本変形例の保護装置1Cは、前述の実施形態と比べて、稼働部20Cの構成が異なっている。なお、その他の構成は前述の実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0055】
本変形例の稼働部20Cは、装着体10の被移動箇所114に一端部2151が接続されたビーム部215と、ビーム部215の他端部2152に接続された駆動部22Cとを備えている。駆動部22Cは、モータ221と、回転軸222、ウォームギヤ223、ウォームホイール224を備えている。モータ221は、装着体10の下部に配置され、制御部30からの制御信号に応じて回転軸222を回転させる。回転軸222は、モータ221と接続され、Y軸周りに回転駆動される。回転軸222の上端にはウォームギヤ223が設けられている。ウォームホイール224は、装着体10の固設部118に回転自在に設けられている。また、ウォームホイール224は、その外周にもうけられた歯がウォームギヤ223と噛み合うように配置され、ウォームギヤ223がY軸回りに回転することにより、Z軸回りに回転させられる。
【0056】
駆動部22Cのウォームホイール224は、ビーム部215の他端部2152と接続されビーム部215を回転させる。
【0057】
図14では、制御部30によって稼働部20Cが作動され、モータ221の回転が回転軸222、ウォームギヤ223、及びウォームホイール224を介してビーム部215に伝えられ、ビーム部215の下端部2152を中心に被移動箇所114側端部2151が左手側に回転され、ユーザの上体を左手側へ傾斜させた例を示している。また、制御部3
0は、図14の例とは逆にモータ221を回転させることで、ビーム部215の被移動箇所114側端部2151を右手側に回転させることもできる。また、本変形例においてもモータ221が制御部30の制御信号に応じて回転量を調整することで、被移動箇所114の移動量を調整できる。
【0058】
<変形例4>
図15は、変形例4に係る保護装置1Dの構成を示す図である。本変形例の保護装置1Dは、前述の実施形態と比べて、稼働部20Dの構成が異なっている。なお、その他の構成は前述の実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0059】
本変形例の稼働部20Dは、駆動源としての電磁石ユニット22Dと、電磁石ユニット22Dによって吸引される吸引部材21Dとを有している。本変形例では、ユーザが乗車した車両内で用いられ、駆動源としての電磁石ユニット22Dが周囲の構造物に設けられている。図15では、隣の座席53に電磁石ユニット22Dが配置されている例を示している。なお、電磁石ユニット(駆動源)22Dは、座席に限らず、車両のAピラー、Bピラー、Cピラーインストルメンタルパネル、ルーフ、ドアトリムなどに設けられてもよい。このように本変形例の駆動源は、装着体10や制御部30と別体となっている。このため、制御部30は、例えば無線通信回線を介して制御信号を電磁石ユニット22Dへ送信し、電磁石ユニット22Dを作動させる。また、ユーザが乗車時に制御部30と電磁石ユニット22Dとを通信ケーブルで接続し、制御部30から通信ケーブルを介して制御信号を送るようにしてもよい。また電磁石ユニット22Dと吸引部材21Dの設置場所を入れ替えてもよい。
【0060】
電磁石ユニット22Dは、磁力を発生させるコイル225、通信部226、駆動回路227を有している。通信部226は、制御部30と通信し制御信号を受信する。駆動回路227は、通信部226で受信した制御信号に基づいてコイル225に電力を供給して磁力を発生させ、電磁石として機能させる。駆動回路227は、例えば車両側の電力ラインと接続し、車両側から電力を取得してコイル225へ供給する。なお、作動前は、コイル225に電力を供給していないので、磁力を発生させず、ユーザ側の吸引部材21Dを吸引しない。
【0061】
また、本変形例の装着体10は、肩先を被移動箇所119とし、この位置に吸引部材21Dが設けられている。吸引部材21Dは、電磁石ユニット22Dの磁力によって吸引される部材であり、例えば強磁性体や永久磁石である。また、吸引部材21Dは、電磁石ユニット22Dと引き合うように磁力を発生させる電磁石であってもよい。
【0062】
図16では、制御部30が、稼働部20Dの電磁石ユニット22Dへ制御信号を送信して磁力を発生させ、装着体10の被移動箇所119に設けられている吸引部材21Dを電磁石ユニット22D側へ引き寄せることで、ユーザの上体を左手側に傾斜させている。これにより障害物が飛翔してきた場合や、他の車輛による衝突を受けた場合に、この衝突の影響を抑えるようにユーザの姿勢を制御することができる。
【0063】
なお、本変形例では、稼働部20Dの駆動源を車両に設けた例を示したが、駆動源を設ける車両の種類は、特段限定されるものではなく、バス、トラック、タクシー、作業車両等であってもよい。また、ユーザが乗って移動する乗物であればよく、例えば、自転車、自動二輪、船舶、飛行機、キックボード、電車、モノレールであってもよい。更に、アミューズメント施設のジェットコースターや、メリーゴーランド、メルヘンカップ、ゴーカート等であってもよい。
【0064】
<変形例5>
図17は、変形例5に係る保護装置1Dの構成を示す図である。本変形例の保護装置1Dは、前述の変形例4と比べて、駆動源を車両の天井に配置した構成が異なっている。なお、その他の構成は前述の変形例4と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0065】
本変形例の稼働部20Dは、駆動源としての電磁石ユニット22Dを車両の天井51に設け、且つ図18に示すように平面視においてユーザが座る各座席53の周囲を囲むように4カ所ずつ電磁石ユニット22Dが設けられている。図18の例では、各座席53の右後側に電磁石ユニット22D1、左後側に電磁石ユニット22D2、左前側に電磁石ユニット22D3、右前側に電磁石ユニット22D4が設けられている。
【0066】
図19は、制御部30が、稼働部20Dの電磁石ユニット22D3へ制御信号を送信して磁力を発生させ、装着体10の被移動箇所119に設けられている吸引部材21Dを電磁石ユニット22D3側へ引き寄せることで、ユーザの上体を左手側前方に傾斜させている。この場合、ユーザの左肩に位置する吸引部材21Dの極性と、電磁石ユニット22D3の極性を異ならせることで、吸引部材21Dを電磁石ユニット22D3側へ引き寄せている。ここで、移動方向と反対側の電磁石ユニット22D1,22D4の極性と、ユーザの右肩に位置する吸引部材21Dの極性とを同一にすることで、斥力を働かせ、左手側への傾斜を助長するように構成してもよい。また、制御部30は、これらと左右対称に電磁石ユニット22Dを作動させることで、ユーザを右手側前方へ傾斜させることができる。同様に、制御部30は、電磁石ユニット22D1,22D2を作動させることで、ユーザを右手側後方、又は左手側後方へ傾斜させることができる。このように本変形例によれば、制御部30が、電磁石ユニット22D1~22D4のうち、どの電磁石ユニット22Dにどれだけの電流を流すのかを制御することにより、ユーザの姿勢を前後左右へ任意に調整できる。
【0067】
<変形例6>
図20は、変形例6に係る保護装置1Eの構成を示す図である。本変形例の保護装置1Eは、前述の変形例4と比べて、稼働部20の構成が異なっている。なお、その他の構成は前述の変形例4と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0068】
本変形例の稼働部20Eは、伸縮構造体としてワイヤー21を備え、駆動源としてワイヤー21を巻きとる電動のリールユニット22Eとを備えている。そしてリールユニット22Eが車両のインストルメンタルパネル52に設けられている。図20では、助手席に座るユーザを平面視して示している。本変形例では、ユーザの右手側前方にリールユニット22ERが設けられ、ユーザの左手側前方にリールユニット22ELが設けられている。リールユニット22E(22ER,22EL)は、ワイヤー21を巻き取る電動のリール228、通信部226、駆動回路229を有している。通信部226は、制御部30と通信し制御信号を受信する。駆動回路229は、通信部226で受信した制御信号に基づいてリール228に電力を供給することにより、ワイヤー21の巻き取り又は繰り出しを行わせる。駆動回路229は、例えば車両側の電力ラインと接続し、車両側から電力を取得してリール228へ供給する。
【0069】
ユーザは、車両に乗車した際、これらリールユニット22E(22ER,22EL)からワイヤー21の先端を引き出し、この先端に設けられているフックやカラビナなどの接続部210を装着体10におけるリング状の接続部115と接続させる。
【0070】
そして制御部30が保護装置1を作動させると判定した場合、リールユニット22Eに
制御信号を送信し、ワイヤー21を巻き取らせてユーザの姿勢を制御する。図21は、リールユニット22ELを作動させてユーザの上体を左手側前方に移動させた例を示している。同様に、制御部30は、リールユニット22ERを作動させてユーザの上体を右手側前方に移動させることもできる。なお、図20図21では、リールユニット22Eを左右二か所に設けた例を示したが、これに限らず隣接するシートや、Bピラー、ドアトリム、天井など、他の箇所に設け、これらの方向へ移動させる構成としてもよい。
【0071】
<変形例7>
図22は、変形例7に係る保護装置1Eの構成を示す図である。本変形例の保護装置1Eは、前述の変形例6と比べて、リールユニット22Eを運転席前方のハンドル54付近に設けた構成が異なっている。なお、その他の構成は前述の変形例6と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0072】
本変形例の稼働部20Eは、伸縮構造体としてワイヤー21を備え、駆動源としてワイヤー21を巻きとる電動のリールユニット22Eとを備えている。そしてリールユニット22Eが車両のハンドル54付近、例えばインストルメンタルパネル52に設けられている。図21では、運転席に座るユーザを平面視して示している。本変形例では、ユーザの右手側前方にリールユニット22ERが設けられ、ユーザの左手側前方にリールユニット22ELが設けられている。
【0073】
制御部30は保護装置1を作動させると判定した場合、リールユニット22Eに制御信号を送信し、ワイヤー21を巻き取らせてユーザの姿勢を制御する。図23は、リールユニット22ELを作動させてユーザの上体を左手側前方に移動させた例を示している。同様に、制御部30は、リールユニット22ERを作動させてユーザの上体を右手側前方に移動させることもできる。
【0074】
以上、本開示に係る電気回路遮断装置の実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0075】
1,1A,1B,1C,1D,1E 保護装置
10 装着体
11 胴部
12 袖部
20,20A,20B,20C,20D,20E 稼働部
21 ワイヤー
21A 蛇腹管
21B 弾性管
21D 吸引部材
22 リール
22A,22B ポンプ
22C 駆動部
22D 電磁石ユニット(駆動源)
22D1 電磁石ユニット
22E リールユニット
30 制御部
31 プロセッサ
32 記憶部
33 入出力部
40 センサ
111 肩部
112 ネックホール
113 アームホール
114 被移動箇所
115 接続部
116 固設部
116 固定部
117 開口
118 固設部
119 被移動箇所
211 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図20
図21
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