(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025865
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】光デバイス及び光通信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
G02F1/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131273
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA09
2K102CA10
2K102DA05
2K102DB04
2K102DB05
2K102DC04
2K102DC08
2K102DD05
2K102EA02
2K102EB11
(57)【要約】
【課題】DCドリフトの発生を抑制できる光デバイス等を提供することを目的とする。
【解決手段】光デバイスは、薄膜LN(Lithium Niobate)結晶のリブ導波路と、前記リブ導波路上に積層されたバッファ層と、前記リブ導波路に電圧を印加する電極と、を有する。前記バッファ層は、前記リブ導波路のリブ上に積層された厚膜部位と、前記リブの両脇にある、前記リブ導波路のスラブ上に積層され、かつ、前記厚膜部位の厚みに比較して薄くした薄膜部位と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜LN(Lithium Niobate)結晶のリブ導波路と、
前記リブ導波路上に積層されたバッファ層と、
前記リブ導波路に電圧を印加する電極と、を有し、
前記バッファ層は、
前記リブ導波路のリブ上に積層された厚膜部位と、
前記リブの両脇にある、前記リブ導波路のスラブ上に積層され、かつ、前記厚膜部位の厚みに比較して薄くした薄膜部位と、
を有することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記厚膜部位は、
当該厚膜部位の幅を前記リブの幅に比較して広くする構造にしたことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記厚膜部位は、
前記リブを被覆する第1の厚膜部位と、
前記リブの側壁面を被覆すると共に、前記リブ側の前記スラブの一部を被覆する第2の厚膜部位と、を有し、前記第2の厚膜部位の厚みを前記薄膜部位の厚みに比較して厚くする構造にしたことを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記電極の一端が前記第2の厚膜部位から離間するように前記薄膜部位の幅を広くしたことを特徴とする請求項3に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記電極の一部は、
前記薄膜部位以外の前記バッファ層の内、前記第1の厚膜部位及び前記第2の厚膜部位と異なる第3の厚膜部位に積層されることを特徴とする請求項4に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記電極が前記薄膜部位に接触している積層箇所の幅は、
前記薄膜部位の厚みに比較して広くすることを特徴とする請求項5に記載の光デバイス。
【請求項7】
電気信号に対する信号処理を実行するプロセッサと、
光を発生させる光源と、
前記プロセッサから出力される電気信号を用いて、前記光源から発生する光を変調する光デバイスと、を有し、
前記光デバイスは、
薄膜LN(Lithium Niobate)結晶のリブ導波路と、
前記リブ導波路上に積層されたバッファ層と、
前記リブ導波路に電圧を印加する電極と、を有し、
前記バッファ層は、
前記リブ導波路のリブ上に積層された厚膜部位と、
前記リブの両脇にある、前記リブ導波路のスラブ上に積層され、かつ、前記厚膜部位の厚みに比較して薄くした薄膜部位と、
を有することを特徴とする光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス及び光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光変調器は、例えば、基板上に設けられた光導波路及び、その近傍に設けられた変調部で構成される。変調部は、信号電極と、接地電極とを有し、信号電極に電圧を与えると、光導波路内に電界が発生し、光導波路内の電界によって光導波路の屈折率が変化し、光の位相が変化する。光導波路はマッハツェンダ干渉計を構成し、光導波路間の光の位相の差により光出力が変化する。
【0003】
光変調器では、例えば、4チャネルのマッハツェンダ変調器が集積されている。各マッハツェンダ干渉計には、RF変調部とDC変調部とがある。RF変調部の電極には、例えば、数10GHzの帯域を有する高周波信号を入力し、高速変調を行う。また、DC変調部の電極には、バイアス電圧を印加し、電気信号のON/OFFが光信号のON/OFFに対応するようにバイアス電圧を調整する。
【0004】
光変調器の光導波路は、例えば、マッハツェンダ干渉計を構成し、平行に配置された複数の光導波路間の光の位相差により、例えば、XY偏波多重されるIQ信号を出力する。そして、4チャネルの出力を2チャネルずつ合波して2つのIQ信号とし、その一つを偏波回転して偏波ビームコンバイナで偏波多重化して出力することになる。
【0005】
一方、光導波路は、例えば、チタン等の金属を基板表面から拡散することにより、信号電極と重ならない位置に形成される拡散光導波路がある。拡散光導波路を被覆したバッファ層上に電極を配置する。尚、バッファ層は、DCドリフト(印加されたバイアス電圧に起因して起きる出射光の経時変化)を抑制するために抵抗値が低くなるように組成及び膜厚を決める。しかしながら、この拡散光導波路は光の閉じ込めが小さいため、電界の印加効率が悪く、そのため、駆動電圧が高くなる。そこで、LN(Lithium Niobate:ニオブ酸リチウム:LiNbO3)結晶の薄膜を用いた光導波路が信号電極と重ならない位置に形成される薄膜光導波路がある。薄膜光導波路は、金属を拡散させる拡散光導波路よりも光の閉じ込めを強くすることができ、電界の印加効率を改善し、駆動電圧を低減できる。
【0006】
光変調器は、RF変調部と、DC変調部とを有する。
図7は、光変調器のDC変調部200の一例を示す略断面図である。
図7に示すDC変調部200は、Si(シリコン)等の支持基板201と、支持基板201上に積層された中間層202とを有する。更に、DC変調部200は、中間層202上に積層された薄膜LN基板203と、薄膜LN基板203上に積層されたSiO
2のバッファ層204とを有する。
【0007】
薄膜LN基板203は、上方へ突起する凸形状の薄膜光導波路207である。薄膜光導波路207は、リブ207Aと、リブ207Aの両脇に形成されたスラブ207Bとを有するリブ型導波路である。そして、リブ207A及びスラブ207Bは、バッファ層204によって被覆され、バッファ層204の表面にコプレーナ(CPW:Coplanar Waveguide)構造の信号電極205及び一対の接地電極206が配置される。つまり、バッファ層204上には、信号電極205と、信号電極205を挟む一対の接地電極206とが配置されている。尚、バッファ層204は、薄膜光導波路207を伝搬する光が信号電極205及び接地電極206で吸収されるのを防止できる。
【0008】
信号電極205と接地電極206との間に位置する薄膜LN基板203には、凸形状の薄膜光導波路207が形成されている。更に、信号電極205と接地電極206との間に位置するバッファ層204にも、凸形状の薄膜光導波路207全体を被覆する段差部204Aがある。
【0009】
このような薄膜光導波路207によれば、信号電極205にバイアス電圧を印加して電界を発生させ、薄膜光導波路207の屈折率を変化させることにより、薄膜光導波路207を伝搬する光を変調することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5-158001号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0106141号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
光変調器の薄膜光導波路207では、バッファ層204がクラッドとなるため、薄膜光導波路207を伝搬する光のモードフィールドがバッファ層204内にまで入り込むことになる。従って、薄膜光導波路207の光が信号電極205や接地電極206で吸収されるのを防ぐために、バッファ層204の厚みを厚くする必要がある。
【0012】
しかしながら、バッファ層204の厚みを厚くした場合でも、温度上昇時には、バッファ層204の抵抗値がLN結晶に比較して高くなる。従って、信号電極205にバイアス電圧を印加した場合でも、バッファ層204にかかるバイアス電圧が経時変化に応じて徐々に高くなる一方で、薄膜光導波路207のリブ207Aにかかるバイアス電圧が相対的に低下するようなDCドリフトが発生する。その結果、電界が徐々に小さくなるため、光変調器を正常に制御することができなくなる。従って、DCドリフトの発生を抑制することが求められている。
【0013】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、DCドリフトの発生を抑制できる光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願が開示する光デバイスは、1つの態様において、薄膜LN(Lithium Niobate)結晶のリブ導波路と、前記リブ導波路上に積層されたバッファ層と、前記リブ導波路に電圧を印加する電極と、を有する。前記バッファ層は、前記リブ導波路のリブ上に積層された厚膜部位と、前記リブの両脇にある、前記リブ導波路のスラブ上に積層され、かつ、前記厚膜部位の厚みに比較して薄くした薄膜部位と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本願が開示する光デバイス等の1つの態様によれば、DCドリフトの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例1の光通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施例1の光変調器の構成の一例を示す平面模式図である。
【
図3】
図3は、実施例1の光変調器の第1のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【
図4】
図4は、実施例2の光変調器の第1のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【
図5】
図5は、実施例3の光変調器の第1のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【
図6】
図6は、実施例4の光変調器の第1のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【
図7】
図7は、光変調器のDC変調部の一例を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願が開示する光デバイス等の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【実施例0018】
図1は、実施例1の光通信装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す光通信装置1は、出力側の光ファイバ2A(2)及び入力側の光ファイバ2B(2)と接続する。光通信装置1は、DSP(Digital Signal Processor)3と、光源4と、光変調器5と、光受信器6とを有する。DSP3は、デジタル信号処理を実行する電気部品である。DSP3は、例えば、送信データの符号化等の処理を実行し、送信データを含む電気信号を生成し、生成した電気信号を光変調器5に出力する。また、DSP3は、受信データを含む電気信号を光受信器6から取得し、取得した電気信号の復号等の処理を実行して受信データを得る。
【0019】
光源4は、例えば、レーザダイオード等を備え、所定の波長の光を発生させて光変調器5及び光受信器6へ供給する。光変調器5は、DSP3から出力される電気信号によって、光源4から供給される光を変調し、得られた光送信信号を光ファイバ2Aに出力する光デバイスである。光変調器5は、例えば、LN(Lithium Niobate:ニオブ酸リチウム:LiNbO3)光導波路と変調部とを備えるLN光変調器等の光デバイスである。LN光導波路は、LN結晶の基板で形成される。光変調器5は、光源4から供給される光がLN光導波路を伝搬する際に、この光を変調部へ入力される電気信号によって変調することで、光送信信号を生成する。
【0020】
光受信器6は、光ファイバ2Bから光信号を受信し、光源4から供給される光を用いて受信光信号を復調する。そして、光受信器6は、復調した受信光信号を電気信号に変換し、変換後の電気信号をDSP3に出力する。
【0021】
図2は、実施例1の光変調器5の構成の一例を示す平面模式図である。
図2に示す光変調器5は、入力側に光源4からの光ファイバ4Aを接続し、出力側に送信信号送出用の光ファイバ2Aを接続する。光変調器5は、第1の光入力部11と、RF(Radio Frequency)変調部12と、DC(Direct Current)変調部13と、第1の光出力部14とを有する。第1の光入力部11は、第1の光導波路11Aと、第1の導波路接合部11Bとを有する。第1の光導波路11Aは、光ファイバ4Aと接続する1本の光導波路と、1本の光導波路から分岐する2本の光導波路と、各2本の光導波路を分岐する4本の光導波路と、各4本の光導波路を分岐する8本の光導波路とを有する。第1の導波路接合部11Bは、第1の光導波路11A内の8本の光導波路とLN光導波路21内の8本のLN光導波路21との間を接合する。
【0022】
RF変調部12は、LN光導波路21と、電極部22と、RF終端器23とを有する。RF変調部12は、第1の光導波路11Aから供給される光がLN光導波路21を伝搬する際に、この光を電極部22の信号電極22Aから印加される電界によって変調する。LN光導波路21は、例えば、薄膜LN基板53を用いて形成されるリブ型の光導波路であり、入力側から分岐を繰り返し、複数の平行な8本のLN光導波路を有する。LN光導波路21を伝搬して変調された光は、DC変調部13内の第1のDC変調部32へ出力される。薄膜LN基板53は、結晶のX軸の方向にDC電圧を印加した場合に屈折率が高くなるXカット基板である。
【0023】
電極部22内の信号電極22Aは、LN光導波路21に重ならない位置に設けられ、DSP3から出力される電気信号に応じてLN光導波路21へ電界を印加する。電極部22内の信号電極22Aの終端は、RF終端器23に接続されている。RF終端器23は、信号電極22Aの終端に接続され、信号電極22Aによって伝送される信号の不要な反射を防止する。
【0024】
DC変調部13は、RF変調部12のLN光導波路21と接合するLN光導波路31と、第1のDC変調部32と、第2のDC変調部33とを有する。第1のDC変調部32は、4個の子側MZ(Mach-Zehnder)である。第2のDC変調部33は、2個の親側MZである。第1のDC変調部32は、LN光導波路31と、電極部22とを有する。
【0025】
LN光導波路31は、8本のLN光導波路と、8本のLN光導波路の内、2本のLN光導波路と合流する4本のLN光導波路とを有する。8本のLN光導波路31は、2本のLN光導波路毎に第1のDC変調部32を配置している。第1のDC変調部32は、LN光導波路31上の信号電極22Aにバイアス電圧を印加することで、電気信号のON/OFFが光信号のON/OFFに対応するようにバイアス電圧を調整して、同相軸成分のI信号若しくは直交軸成分のQ信号を出力する。LN光導波路31内の4本のLN光導波路は、2本のLN光導波路毎に第2のDC変調部33を配置している。第2のDC変調部33は、LN光導波路31上の信号電極22Aにバイアス電圧を印加することで、電気信号のON/OFFが光信号のON/OFFに対応するようにバイアス電圧を調整してI信号若しくはQ信号を出力する。
【0026】
第1の光出力部14は、第2の導波路接合部41と、第2の光導波路42と、PR(Polarization Rotator)43と、PBC(Polarization Beam Combiner:偏波ビームコンバイナ)44とを有する。第2の導波路接合部41は、DC変調部13内のLN光導波路31と第2の光導波路42との間を接合する。第2の光導波路42は、第2の導波路接合部41に接続する4本の光導波路と、4本の光導波路の内、2本の光導波路と合流する2本の光導波路とを有する。
【0027】
PR43は、一方の第2のDC変調部33から入力したI信号若しくはQ信号を90度回転して90度回転後の垂直偏波の光信号を得る。そして、PR43は、垂直偏波の光信号をPBC44に入力する。PBC44は、PR43からの垂直偏波の光信号と、他方の第2のDC変調部33から入力した水平偏波の光信号とを合波して偏波多重信号を出力する。
【0028】
次に、実施例1の光変調器5の構成について、具体的に説明する。
図3は、実施例1の光変調器5の第1のDC変調部32の一例を示す略断面図である。尚、第2のDC変調部33も、第1のDC変調部32と同一の構成であるため、同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
図3に示す第1のDC変調部32は、支持基板51と、支持基板51上に積層された中間層52とを有する。更に、第1のDC変調部32は、中間層52に積層された、薄膜LN結晶の薄膜LN基板53と、薄膜LN基板53上に積層されたバッファ層54と、電極部22とを有する。電極部22は、信号電極22A及び一対の接地電極22Bを有する。
【0029】
支持基板51は、例えば、SiO2(二酸化ケイ素)、TiO2(二酸化チタン)、Si又はLN等の基板である。中間層52は、例えば、SiO2又はTiO2等の屈折率がLNに比較して低い透明材からなる層である。同様に、バッファ層54は、例えば、SiO2又はTiO2等の屈折率がLNに比較して低い透明材からなる層である。
【0030】
薄膜LN基板53は、上方へ突起する突条の薄膜光導波路60である。薄膜光導波路60は、第1のDC変調部32のLN光導波路21である。薄膜光導波路60は、リブ60Aと、リブ60Aの両脇にあるスラブ60Bとを有するリブ型の光導波路である。リブ60Aは、リブ60Aの上面60A1と、リブ60Aの側壁面60A2とを有する。そして、薄膜光導波路60がバッファ層54によって被覆されている。バッファ層54は、薄膜光導波路60を伝搬する光が電極部22で吸収されるのを防ぐために設けられる。
【0031】
バッファ層54は、薄膜光導波路60のリブ60Aの上面60A1を被覆する厚膜部位54Aと、薄膜光導波路60のスラブ60Bを被覆する薄膜部位54Bとを有する。薄膜部位54Bの厚みX2は、厚膜部位54Aの厚みX1に比較して薄くした構造である。信号電極22A及び一対の接地電極22Bは、薄膜部位54B上に配置されることになる。
【0032】
信号電極22Aと接地電極22Bとの間に位置する薄膜光導波路60は、薄膜光導波路60内のリブ60Aである。更に、信号電極22Aと接地電極22Bとの間に位置する薄膜光導波路60内のリブ60Aを被覆するバッファ層54は、厚膜部位54Aである。信号電極22A及び接地電極22Bが位置する薄膜光導波路60は、薄膜光導波路60内のスラブ60Bである。更に、信号電極22A及び接地電極22Bが位置する薄膜光導波路60内のスラブ60Bを被覆するバッファ層54は、薄膜部位54Bである。リブ60Aの側壁面60A2を被覆する段差部54Dは、接地電極22B又は信号電極22Aとの間を離間している。
【0033】
中間層52とバッファ層54との間には、厚みが0.5~3μmの薄膜LN基板53の薄膜光導波路60が挟まれている。薄膜光導波路60となるリブ60Aの幅は、例えば、1~8μm程度である。
【0034】
信号電極22Aは、例えば、金や銅等の金属材料からなり、幅が2~10μm、厚みが1~20μmの電極である。接地電極22Bは、例えば、金や銅等の金属材料からなり、厚みが1μm以上の電極である。DSP3から出力される電気信号に応じたバイアス電圧が信号電極22Aに印加することで、信号電極22Aから接地電極22Bへ向かう方向の電界が発生し、この電界が薄膜光導波路60に印加される。その結果、薄膜光導波路60への電界印加に応じて薄膜光導波路60の屈折率が変化し、薄膜光導波路60を伝搬する光を変調することが可能となる。
【0035】
第1のDC変調部32では、薄膜光導波路60のリブ60Aを被覆するバッファ層54を厚膜部位54A、電極部22を積層する箇所のバッファ層54を薄膜部位54Bにした。その結果、厚膜部位54Aでは、バッファ層54の厚みが厚くなるため、リブ60Aを導波する光が電極部22に吸収される光の散乱損失を抑制できる。更に、薄膜部位50Bでは、バッファ層54の厚みが薄くなるために経時変化によるDCドリフトの発生を抑制できる。尚、電極部22とLN結晶の薄膜光導波路60との間のバッファ層54の厚みを薄くすることで、温度上昇時におけるバッファ層54の抵抗値の影響が小さくなる。その結果、温度上昇時のDCドリフトの発生を抑制できる。
【0036】
そこで、出願人は、下記条件に基づき、第1のDC変調部32のDCドリフトの50%到達時間を検証した。第1のDC変調部32の条件は、バッファ層54の厚膜部位54Aの厚みを1.2μm、薄膜部位54Bの厚みを0.2μm、環境温度を120℃にした。また、従来のDC変調部200の条件は、バッファ層204(204A,204B)の厚み1.2μm、環境温度を120℃にした。その結果、第1のDC変調部32は、従来のDC変調部200に比較して、DCドリフトの50%到達時間を4倍に長くできる。
【0037】
実施例1の第1のDC変調部32では、薄膜光導波路60のリブ60Aを被覆するバッファ層54を厚膜部位54A、電極部22を積層する積層箇所のバッファ層54を薄膜部位54Bにした。その結果、厚膜部位54Aでは、バッファ層54の厚みが厚くなるため、リブ60A内を導波する光が電極部22に吸収されるような光の散乱損失を抑制できる。薄膜部位54Bでは、バッファ層54の抵抗値の影響が小さくなるため、経時変化による温度上昇時のDCドリフトの発生を抑制できる。更に、DCドリフトの発生を抑制することで第1のDC変調部32の寿命を長くできる。
【0038】
第2のDC変調部33では、薄膜光導波路60のリブ60Aを被覆するバッファ層54を厚膜部位54A、電極部22を積層する積層箇所のバッファ層54を薄膜部位54Bにした。その結果、厚膜部位54Aでは、バッファ層54の厚みが厚くなるため、リブ60Aを通過する光が電極部22に吸収される光の散乱損失を抑制できる。更に、薄膜部位54Bでは、バッファ層54の抵抗値の影響が小さくなるため、経時変化による温度上昇時のDCドリフトの発生を抑制できる。更に、DCドリフトの発生を抑制することで第2のDC変調部33の寿命を長くできる。
【0039】
実施例1の第1のDC変調部32では、リブ60Aの上面60A1を被覆するバッファ層54が厚膜部位54Aであるものの、電極部22とリブ60Aの側壁面60A2との間のバッファ層54が薄くなる。その結果、電極部22とリブ60Aの側壁面60A2との間のバッファ層54が薄くなることで、リブ60A内を導波する光が電極部22で吸収されて光の散乱損失が増大する事態も想定できる。そこで、電極部22とリブ60Aの側壁面60A2との間のバッファ層54を厚くする方が望ましく、その実施の形態につき、実施例2として以下に説明する。
バッファ層54の厚膜部位54Aは、薄膜光導波路60のリブ60Aの上面60A1を被覆する第1の厚膜部位54A1と、リブ60Aの側壁面60A2を被覆すると共に、リブ60A側のスラブ60Bの一部を被覆する第2の厚膜部位54A2とを有する。第2の厚膜部位54A2は、第2の厚膜部位54A2の厚みを薄膜部位54Bの厚みに比較して厚くする構造にした。更に、厚膜部位54Aの幅L2は、リブ60Aの幅L1に比較して広くした。尚、説明の便宜上、第2の厚膜部位54A2の厚みは第1の厚膜部位54A1の厚みと同一した場合、厚膜部位54Aの作成工程を簡易化できる。
実施例2の第1のDC変調部32Aでは、厚膜部位54Aの幅L2をリブ60Aの幅L1に比較して広くする構造にし、厚膜部位54Aの第2の厚膜部位54A2でリブ60Aの側壁面60A2を被覆した。その結果、第2の厚膜部位54A2でリブ60Aの側壁面60A2から電極部22を離すことで、リブ60A内を導波する光の散乱損失を抑制できる。更に、薄膜部位54Bでは、バッファ層54の厚みが薄くなるために経時変化によるDCドリフトの発生を抑制できる。
第2のDC変調部33Aでは、厚膜部位54Aの幅L2をリブ60Aの幅L1に比較して広くする構造にし、厚膜部位54Aの第2の厚膜部位54A2でリブ60Aの側壁面60A2を被覆した。その結果、第2の厚膜部位54A2でリブ60Aの側壁面60A2から電極部22を離すことで、リブ60A内を導波する光の散乱損失を抑制できる。更に、薄膜部位54Bでは、バッファ層54の厚みが薄くなるために経時変化によるDCドリフトの発生を抑制できる。
また、実施例2の第1のDC変調部32Aでは、薄膜部位54Bの幅と、薄膜部位54B上の電極部22の積層領域の幅とが同一である。従って、例えば、製造工程で薄膜領域54B上に電極部22を積層する際のマスク合わせのズレが発生した場合、電極部22の一部が第2の厚膜部位54A2に積層されてしまうような場合がある。そこで、このような事態に対処する光変調器5の実施の形態につき、実施例3として説明する。