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特開2023-25922排水処理装置及び排水処理装置の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025922
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】排水処理装置及び排水処理装置の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20230216BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20230216BHJP
   C02F 3/28 20230101ALI20230216BHJP
【FI】
C02F1/44 F
B01D65/02 520
C02F3/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131376
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒見 伸一
【テーマコード(参考)】
4D006
4D040
【Fターム(参考)】
4D006GA07
4D006HA12
4D006JA18A
4D006JA31Z
4D006JA52Z
4D006KA31
4D006KA43
4D006KA67
4D006KB24
4D006KC14
4D006KD30
4D006MA01
4D006MC11
4D006MC22
4D006MC29
4D006MC33
4D006MC37
4D006MC62
4D006PA01
4D006PB08
4D006PC67
4D040AA24
4D040AA42
4D040AA61
(57)【要約】
【課題】排水を利用して分離膜を洗浄できるとともに、分離膜の上部側に蓄積した汚濁物質をも好適に除去する。
【解決手段】 排水処理装置1は、隣接して設置された少なくとも2つの嫌気性排水処理槽2A,2Bと、2つの嫌気性排水処理槽2A,2Bのそれぞれに設置され、排水をろ過する分離膜10,10と、両分離膜10,10の下方にそれぞれ配置され、両分離膜10,10に向けてガスの気泡を供給する散気管11,11とを備えている。また、両分離膜10,10の下方に設けられ、2つの嫌気性排水処理槽2A,2B同士を連通する連通路5と、2つの嫌気性排水処理槽2A,2Bの間に圧力差を発生させる圧力差発生手段6と、を具備している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接して設置された少なくとも2つの嫌気性排水処理槽と、
前記2つの嫌気性排水処理槽のそれぞれに設置され、排水をろ過する分離膜と、
前記両分離膜の下方にそれぞれ配置され、前記両分離膜に向けてガスの気泡を供給する散気管と、
前記両分離膜の下方において前記2つの嫌気性排水処理槽同士を連通する連通路と、
前記2つの嫌気性排水処理槽の間に圧力差を発生させる圧力差発生手段と、を具備したことを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
前記圧力差発生手段は、前記2つの嫌気性排水処理槽にそれぞれ接続されるガス回収管と、前記ガス回収管に設けられた回収側開閉弁と、前記両散気管にそれぞれ接続されたガス供給管と、前記両ガス供給管に設けられた供給側開閉弁と、前記両回収側開閉弁及び前記両供給側開閉弁の開閉を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記両ガス回収管は、ブロア装置を通じて前記両ガス供給管に接続されていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項4】
隣接して設置された少なくとも2つの嫌気性排水処理槽と、前記2つの嫌気性排水処理槽のそれぞれに設置され、排水をろ過する分離膜と、前記両分離膜の下方にそれぞれ配置され、前記両分離膜に向けてガスの気泡を供給する散気管と、前記両分離膜の下方において前記2つの嫌気性排水処理槽を連通する連通路と、を備えた排水処理装置の洗浄方法であって、
前記2つの嫌気性排水処理槽の間に圧力差を発生させることで前記2つの嫌気性排水処理槽の間に水位差を形成する水位差形成工程と、
水頭が高い側の前記嫌気性排水処理槽から水頭が低い側の前記嫌気性排水処理槽へ前記連通路を通じて流れる水流を形成する水流形成工程と、を含むことを特徴とする排水処理装置の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理装置及び排水処理装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業排水や生活排水等の排水を処理する排水処理技術として、嫌気性膜分離法(嫌気性MBR:Membrane Bio Reactor)が知られている。嫌気性膜分離法は、微生物を用い、分離膜による固液分離を行って、排水中の有機物をメタンと二酸化炭素にまで分解できる優れた排水処理技術である。
【0003】
通常、嫌気性膜分離法を用いた排水処理装置では、継続的な使用に伴い、分離膜の表面や孔中に、し渣や汚れ等の汚濁物質が付着して目詰まり(ファウリング)が生じるため、分離膜の洗浄が必要である。分離膜の汚れは、透過流速(フラックス)を低下させ、排水処理性能に大きな影響を与える。
従来、分離膜の洗浄方法としては、散気管による洗浄や薬液による洗浄等が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
散気管による洗浄は、分離膜の下方に散気管を設置して気泡を発生させ、この気泡の上昇によって形成される気泡と排水(被処理水)との気液混合流を分離膜の表面に接触させることで、分離膜の表面に付着した汚濁物質を除去するものである。通常、散気管による洗浄は、排水処理装置の運転中に継続して行われる。一方、薬液による洗浄は、所定濃度の薬液に分離膜を浸漬するものであり、例えば、定期的に行われる。この場合、槽外に分離膜を取り出して薬液に浸漬することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09-117646号公報
【特許文献2】特開平09-117789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した散気管による洗浄は、気泡の上昇による気液混合流の上向きの流れを利用したものであるため、汚濁物質が分離膜の上部側に蓄積しやすく、蓄積した汚濁物質を除去し難いという課題があった。
また、薬液による洗浄では、洗浄時に槽内の嫌気性細菌類に影響を与えるため、薬液を使用しない分離膜の洗浄技術の実現が期待されている。
【0007】
本発明は、前記した問題を解決し、排水(被処理水)を利用して分離膜を洗浄できるとともに、分離膜の上部側に蓄積した汚濁物質をも好適に除去できる排水処理装置及び排水処理装置の洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明の排水処理装置は、隣接して設置された少なくとも2つの嫌気性排水処理槽と、前記2つの嫌気性排水処理槽のそれぞれに設置され、排水をろ過する分離膜と、前記両分離膜の下方にそれぞれ配置され、前記両分離膜に向けてガスの気泡を供給する散気管と、前記両分離膜の下方において前記2つの嫌気性排水処理槽同士を連通する連通路と、前記2つの嫌気性排水処理槽の間に圧力差を発生させる圧力差発生手段と、を具備したことを特徴とする。
【0009】
本発明の排水処理装置では、一方の嫌気性排水処理槽と他方の嫌気性排水処理槽との間に圧力差を発生させることで水位差を形成でき、水頭が高い嫌気性排水処理槽から水頭が低い嫌気性排水処理槽へ連通路を通じて流れる水流を形成できる。この水流により、水頭が高い嫌気性排水処理槽内では、散気管の気泡の上昇による気液混合流の上向きの流れと逆の下向きの水流が勢いよく形成され、分離膜の上部側に蓄積した汚濁物質が下方向に剥ぎ取られる。これにより、分離膜の上部側に蓄積した汚濁物質を、排水(被処理水)を利用して好適に除去できる。
したがって、薬液による洗浄頻度を減少させることができる。
【0010】
また、前記圧力差発生手段は、前記2つの嫌気性排水処理槽にそれぞれ接続されるガス回収管と、前記ガス回収管に設けられた回収側開閉弁と、前記両散気管にそれぞれ接続されたガス供給管と、前記両ガス供給管に設けられた供給側開閉弁と、前記両回収側開閉弁及び前記両供給側開閉弁の開閉を制御する制御部と、を備えていることが好ましい。
【0011】
この構成では、制御部により両回収側開閉弁及び両供給側開閉弁の開閉を制御することにより、水頭圧を利用した洗浄を容易に行うことができる。例えば、一方の嫌気性排水処理槽を洗浄する場合、その槽の回収側開閉弁を制御部により開くとともに、供給側開閉弁を閉じる。そして他方の嫌気性排水処理槽における回収側開閉弁を制御部により閉じるとともに、供給側開閉弁を開く。そうすると、他方の嫌気性排水処理槽内で気圧が増加し続け、増加したガスにより他方の槽内の水位が低下する。この水位の低下に伴い、他方の嫌気性排水処理槽から一方の嫌気性排水処理槽へ連通路を通じて排水(被処理水)が流れ、一方の嫌気性排水処理槽の水位が上昇する。一方の嫌気性排水処理槽の水位が所定高さに上昇すると、他方の嫌気性排水処理槽における回収側開閉弁が制御部により開かれる。これにより、一方の嫌気性排水処理槽から他方の嫌気性排水処理槽へ連通路を通じて排水(被処理水)が勢いよく流れ、一方の嫌気性排水処理槽の分離膜の上部側に蓄積した汚濁物質が排水(被処理水)により好適に除去される。
【0012】
また、前記両ガス回収管で回収されたガスは、ブロア装置を通じて前記両ガス供給管に供給されることが好ましい。
【0013】
この構成では、両ガス回収管で回収されたガスが両嫌気性排水処理槽に再び循環供給されるので、効率のよい分離膜の洗浄を実現できる。
【0014】
前記課題を解決するため本発明の排水処理装置の洗浄方法は、隣接して設置された少なくとも2つの嫌気性排水処理槽と、前記2つの嫌気性排水処理槽のそれぞれに設置され、排水をろ過する分離膜と、前記両分離膜の下方にそれぞれ配置され、前記両分離膜に向けてガスの気泡を供給する散気管と、前記両分離膜の下方において前記2つの嫌気性排水処理槽を連通する連通路と、を備えた排水処理装置の洗浄方法である。前記2つの嫌気性排水処理槽の間に圧力差を発生させることで前記2つの嫌気性排水処理槽の間に水位差を形成する水位差形成工程と、水頭が高い側の前記嫌気性排水処理槽から水頭が低い側の前記嫌気性排水処理槽へ前記連通路を通じて流れる水流を形成する水流形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の排水処理装置の洗浄方法では、水位差形成工程により2つの嫌気性排水処理槽の間に水位差を形成でき、水流形成工程により水頭が高い側から低い側に連通路を通じて流れる水流を形成できる。この水流は、散気管の気泡の上昇による気液混合流の上向きの流れと逆の下向きの流れであるので、分離膜の上部側に蓄積した汚濁物質を下方向に剥ぎ取るように作用する。これにより、分離膜の上部側に蓄積した汚濁物質を、排水(被処理水)を利用して好適に除去できる。
したがって、薬液による洗浄頻度を減少させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の排水処理装置及び排水処理装置の洗浄方法では、排水を利用して分離膜を洗浄できるとともに、分離膜の上部側に蓄積した汚濁物質をも好適に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る排水処理装置を示した構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る排水処理装置の洗浄方法を示す図であり、水位差形成工程を示した図である。
図3】本発明の一実施形態に係る排水処理装置の洗浄方法を示す図であり、水流形成工程を示した図である。
図4】本発明の一実施形態に係る排水処理装置のレイアウト例を示した模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、上下の方向は、排水処理装置の嫌気性排水処理槽が設置される面に直交する鉛直方向である。
【0019】
図1に示すように、排水処理装置1は、嫌気性排水処理槽2A,2Bと、膜ユニット10,10と、散気管11,11とを備えている。また、排水処理装置1は、2つの嫌気性排水処理槽2A,2Bの間に圧力差を発生させる圧力差発生手段6を備えている。圧力差発生手段6の詳細は、後記する。
【0020】
嫌気性排水処理槽2A,2B(以下、「処理槽2A,2B」と称す。)は、左右中央部分に形成された隔壁2aを介して隣接配置されている。各処理槽2A,2Bは、密閉されており、被処理水として排水W1がそれぞれ流入するように構成されている。排水W1は、排水供給路の途中に設けられた不図示の送液ポンプにより処理槽2A,2Bに供給される。排水W1としては、工場等から排出される産業排水や生活排水(汚水)等が挙げられる。なお、各処理槽2A,2Bにおいて、排水W1の水位W1aは、膜ユニット10,10の全体が浸漬される高さに設定されている。
【0021】
隔壁2aの下部には、処理槽2A,2B同士を連通する連通路5が形成されている。連通路5は、処理槽2A,2B相互の排水W1の通流を可能にするものであり、処理槽2A,2B相互間の排水W1の通流に抵抗とならない開口面積を有している。連通路5は、各処理槽2A,2Bの膜ユニット10,10よりも下方となる位置に開口形成されている。
なお、処理槽2A,2Bの内空上部には、排水W1の水位の上昇を許容するスペースが形成されている。また、処理槽2A,2Bは、余剰汚泥を排出するための不図示の排出路を備えている。
【0022】
膜ユニット10は、公知の分離膜からなる複数の膜エレメントを備えている。膜ユニット10は、各処理槽2A,2Bで同じ仕様のものを用いている。膜エレメントは集積性の高い平型形状を呈している。なお、円筒形等の形状の異なるものを用いてもよい。
分離膜としては、精密ろ過膜(MF膜)を使用することが好ましい。分離膜の形状としては、中空糸膜、平膜、管状膜、袋状膜等が挙げられ、容積ベースで比較した場合に膜面積の大きい中空糸膜が好ましい。
分離膜の材質としては、有機材料(セルロース、ポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン等)が挙げられる。分離膜の材質は、被処理水の性状に応じて適宜選択する。
【0023】
膜ユニット10は、例えば、枠状のフレームに複数の膜エレメントが保持されてなる。膜ユニット10の上部には、複数の膜エレメントからの透過水W2を排出するための透過水排出路12が接続されている。各膜ユニット10,10の透過水排出路12,12は、下流側で一つに合流している。その合流路の途中には、不図示の吸引ポンプが設けられている。透過水W2は、吸引ポンプに吸引されて外部に排出され、後段の不図示の高度処理設備(窒素処理方式)またはアナモックス処理装置に送られて窒素が除去される。
【0024】
散気管11は、各膜ユニット10,10の下方にそれぞれ配置されている。散気管11は、ブロア装置19から供給されるガスとしてのバイオガスを膜ユニット10の膜エレメントに向けて吐出するものである。散気管11には、ガス吐出用の吐出孔が複数設けられている。各散気管11,11には、ガス供給管13がそれぞれ接続されている。各ガス供給管13,13は、ブロア装置19に接続された主管18にそれぞれ接続され、主管18を通じてガスの供給を受けるように構成されている。散気管11で発生した気泡は、上昇によって気泡と排水W1との気液混合流を形成する。なお、バイオガスは、メタンガス、二酸化炭素、窒素、硫化水素等を含むガスである。
【0025】
圧力差発生手段6は、ガス回収管15,15と、回収側開閉弁16,16と、ガス供給管13,13と、供給側開閉弁14,14と、制御部30とを備えている。
ガス回収管15,15は、処理槽2A,2Bに一端が接続されており、処理槽2A,2Bの内空からバイオガスを回収する。回収側開閉弁16,16は、ガス回収管15,15の途中に設けられており、制御部30の制御により作動する。回収側開閉弁16は、開いているときに、バイオガスが回収されることを許容し、閉じられているときに、バイオガスの回収を阻止する。ガス回収管15,15の各他端は、回収側主管17に接続されている。回収側主管17の下流端は、ガスフォルダ20に接続されている。ガスフォルダ20は、余剰のバイオガスが生じた場合にこれを貯溜する機能を有している。回収側主管17には、主管18の端部が接続されている。
【0026】
ガス供給管13,13は、一端が散気管11,11に接続されており、散気管11,11に対してバイオガスを供給する。ガス供給管13,13の各他端は、主管18に接続されている。供給側開閉弁14,14は、ガス供給管13,13の途中に設けられており、制御部30の制御により作動する。供給側開閉弁14は、開いているときに、バイオガスが散気管11に供給されることを許容し、閉じられているときに、散気管11への供給を阻止する。主管18の上流側は、回収側主管17に接続されている。
【0027】
制御部30は、回収側開閉弁16,16及び供給側開閉弁14,14の開閉を制御する装置である。制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力回路等を備えて構成されている。制御部30は、入力装置からの入力、ROMに記憶されたプログラム、データなどに基づいて各種処理を行うことによって制御を実行する。
【0028】
次に、制御部30の制御によって実行される排水処理装置の洗浄方法について説明する。図2は排水処理装置の洗浄方法を示す図であり、水位差形成工程を示した図である。図3は、排水処理装置の洗浄方法を示す図であり、水流形成工程を示した図である。
【0029】
なお、圧力差を付けない通常運転時は、図1に示すように、処理槽2A,2Bにおいて各膜ユニット10,10の全体が浸漬される水位W1a,1aに設定されている。通常運転時では、制御部30の制御により、回収側開閉弁16,16及び供給側開閉弁14,14の全てが開かれており、ブロア装置19から吐出されたバイオガスが主管18及びガス供給管13,13を通じて散気管11,11から処理槽2A,2B内に散気されている。そして、処理槽2A,2B内に散気されたバイオガスは、処理槽2A,2Bの内空に放出された後、ガス回収管15,15で回収されて、回収側主管17から主管18に流入して再びブロア装置19で主管18に吐出される。つまり、通常運転時には、このような循環経路をたどって、バイオガスが循環することにより、処理槽2A,2Bが嫌気性微生物の生息に適した環境に維持されるようになっている。
【0030】
排水処理装置1の洗浄方法は、水位差形成工程と、水流形成工程とを含んでいる。以下では、左側の処理槽2Aを洗浄対象として説明する。
水位差形成工程は、処理槽2Aと処理槽2Bとの間に圧力差を発生させて水位差を形成する工程である。具体的に、処理槽2A側では、回収側開閉弁16を開いた状態にするとともに、供給側開閉弁14を閉じた状態にする。一方、処理槽2B側では、回収側開閉弁16を閉じた状態にするとともに、供給側開閉弁14を開いた状態にする。このようにすると、処理槽2B側では、ガス回収管15が閉じられた状態で散気管11からバイオガスが供給され続けるので、処理槽2Bの内空の容積がバイオガスの滞留で大きくなり、内空の圧力が高くなる。これにより、通常運転時に図1の高さにあった処理槽2Bの水位W1aが、図2に示した低水位W1cまで押し下げられる。
【0031】
そうすると、処理槽2Bに貯留されていた排水W1が連通路5を通じて処理槽2Aに流入し、通常運転時に図1の高さにあった処理槽2Aの水位W1aが、図2に示した高水位W1bまで押し上げられる。
これにより、処理槽2Aと処理槽2Bとの間に水位差が形成される。
【0032】
水流形成工程は、水位差形成工程により処理槽2Aと処理槽2Bとの間に形成された水位差に基づき、水頭が高い側の処理槽2Aから水頭が低い側の処理槽2Bへ連通路5を通じて流れる水流を形成する工程である。水位差のピークは、例えば処理槽2Aの水位をセンサー等により監視することで検出できる。
水流形成工程では、処理槽2A側の回収側開閉弁16を開いた状態に維持するとともに、供給側開閉弁14を閉じた状態に維持する。一方、処理槽2B側では、回収側開閉弁16を開いた状態に切り換えるとともに、供給側開閉弁14を開いた状態に維持する。このようにすると、処理槽2Bの内空に滞留していたバイオガスがガス回収管15を通じて回収され、処理槽2Bの内空の圧力が急激に低下する。これにより、処理槽2Bの水位が、低水位W1cから通常運転時の水位W1aに上昇する。
【0033】
そうすると、処理槽2Aに高水位W1bで貯留されていた排水W1が連通路5を通じて処理槽2Bに戻る。このとき、処理槽2Aで生じる水流は、散気管11の気泡による気液混合流の上向きの流れと逆の下向きの流れであるので、膜ユニット10の上部側に蓄積した汚濁物質を下方向に剥ぎ取るように作用する。これにより、処理槽2Aにおいて、膜ユニット10の上部側及び膜エレメントの上部側に蓄積した汚濁物質を、排水W1(被処理水)を利用して好適に除去できる。
【0034】
処理槽2Bの膜ユニット10を洗浄する場合には、前記した洗浄方法と反対に、処理槽2Aの内空の圧力を高くして水位差を形成し、水頭が高い側の処理槽2Bから水頭が低い側の処理槽2Aへ連通路5を通じて流れる水流を形成する。これにより、処理槽2B側において、膜ユニット10の上部側及び膜エレメントの上部側に蓄積した汚濁物質を、排水W1(被処理水)を利用して好適に除去できる。
【0035】
以上説明した本実施形態の排水処理装置1では、処理槽2Aと処理槽2Bとの間に圧力差を発生させることで水位差を形成でき、例えば、水頭が高い処理槽2Aから水頭が低い処理槽2Bへ連通路5を通じて流れる水流を形成できる。処理槽2Aにおいて、この水流は、散気管11の気泡による気液混合流の上向きの流れと逆の下向きの流れであるので、膜ユニット10や膜エレメントの上部側に蓄積した汚濁物質を下方向に剥ぎ取るように作用する。これにより、膜ユニット10や膜エレメントの上部側に蓄積した汚濁物質を、排水W1(被処理水)を利用して好適に除去できる。
したがって、薬液による洗浄頻度を減少させることができる。
【0036】
また、制御部30により両回収側開閉弁16,16及び両供給側開閉弁14,14の開閉を制御することにより、水頭圧を利用した洗浄を容易に行うことができる。例えば、制御部30により、1日に1回、一週間に1回等、所定のサイクルで洗浄を実施できる。
なお、吸引ポンプの吸引圧をセンサー等により検出して、吸引圧が所定の値より大きくなった場合に膜ユニット10に汚れが生じていると判断して、制御部30により洗浄を自動的に実施するように構成してもよい。
【0037】
また、両ガス回収管15,15で回収されたバイオガスは、ブロア装置19を通じて両ガス供給管13,13に供給されるので、効率のよい膜ユニット10の洗浄を実現できる。
【0038】
また、本実施形態の排水処理装置1の洗浄方法では、水位差形成工程により処理槽2A,2Bの間に水位差を形成でき、水流形成工程により水頭が高い側から低い側に連通路5を通じて流れる水流を形成できる。この水流は、散気管11の気泡による気液混合流の上向きの流れと逆の下向きの流れであるので、膜ユニット10や膜エレメントの上部側に蓄積した汚濁物質を下方向に剥ぎ取るように作用する。これにより、膜ユニット10や膜エレメントの上部側に蓄積した汚濁物質を、排水W1(被処理水)を利用して好適に除去できる。
したがって、薬液による洗浄頻度を減少させることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、ブロア装置19により散気管11に送られるバイオガスにより処理槽2Aと処理槽2Bとの間に水位差を形成する構成としたが、これに限られることはなく、ブロア装置19を用いずに、貯溜された排水W1から自然に発生するバイオガスを溜めることによって、内空の圧力を高めるように構成してもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、隣り合う2つの処理槽2A,2Bの間に水位差を形成して洗浄を行うものについて説明したが、これに限られることはなく、図4に示すような3つの処理槽61~63と予備槽55とを有する排水処理装置60においても水位差を利用して膜ユニット10の洗浄を好適に行うことができる。
図4に示した処理槽61~63は、膜ユニット10をそれぞれ備えているとともに、2つの隔壁2a,2aに連通路5をそれぞれ備えている。そして、処理槽61~63には、同様に、ガス回収管15、回収側開閉弁16、ガス供給管13及び供給側開閉弁14がそれぞれ備わり、これらの開閉を制御する制御部30が備わる。
【0041】
このような排水処理装置60において、例えば、処理槽61の膜ユニット10を洗浄する場合には、水位差形成工程により、処理槽61の供給側開閉弁14を閉じるとともに、処理槽62,63の各回収側開閉弁16を閉じて処理槽62,63の各内空の圧力を高くする。これにより、処理槽62,63の水位がそれぞれ下がり、代わりに処理槽61の水位が上がって処理槽61と処理槽62,63との間に水位差が形成される。
【0042】
水位差が形成されたら、水流形成工程により、処理槽61側において、回収側開閉弁16を開いた状態に維持するとともに、供給側開閉弁14を閉じた状態に維持する。一方、処理槽62,63側において、各回収側開閉弁16を開いた状態に切り換えるとともに、各供給側開閉弁14を開いた状態に維持する。これにより、処理槽62,63の内空の圧力がそれぞれ低下し、処理槽62,63の各水位が低水位から通常運転時の水位に上昇する。この上昇により、処理槽61から連通路5を通じて処理槽62,63に排水W1が勢いよく流入する。このときに処理槽61で生じる水流は、散気管11の気泡による気液混合流の上向きの流れと逆の下向きの流れであるので、膜ユニット10の上部側に蓄積した汚濁物質を下方向に剥ぎ取るように作用する。これにより、処理槽61において、膜ユニット10の上部側及び膜エレメントの上部側に蓄積した汚濁物質を、排水W1(被処理水)を利用して好適に除去できる。
なお、処理槽62,63の各膜ユニット10,10の洗浄についても、水位差を同様に形成することにより、汚濁物質を好適に除去できる。
以上のように、3つの処理槽61~63と予備槽55とを有する排水処理装置60について説明したが、これに限られることはなく、4つ以上の処理槽や予備槽を有する排水処理装置についても水位差を利用して膜ユニット10の洗浄を好適に行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 排水処理装置
2A,2B 嫌気性排水処理槽(処理槽)
5 連通路
6 圧力差発生手段
10 膜ユニット
11 散気管
13 ガス供給管
14 供給側開閉弁
15 ガス回収管
16 回収側開閉弁
30 制御部
60 排水処理装置
61~63 処理槽
W1 排水
図1
図2
図3
図4