(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025925
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】コック、及び、注出装置
(51)【国際特許分類】
F16K 5/04 20060101AFI20230216BHJP
B65D 47/26 20060101ALI20230216BHJP
B65D 47/32 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
F16K5/04 E
B65D47/26 120
B65D47/32 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131385
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】595124158
【氏名又は名称】原化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】原 琢磨
【テーマコード(参考)】
3E084
3H054
【Fターム(参考)】
3E084AA05
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HB02
3E084HD04
3E084KA02
3E084KB01
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD01
3H054AA02
3H054BB30
3H054CA09
3H054GG02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外筒体に対する内筒体の位置を開放位置にした時点から十分に空気を外に逃がすことができ、外筒体から注ぎ出される液体にエアー噛みが生じにくくできるコックを提供する。
【解決手段】基端と先端がそれぞれ開口するとともに、側面部に液体を流通させるための液体通過孔2Hが開口する外筒体22と、前記外筒体22に対して軸方向に移動可能に挿入されるものであり、基端が閉塞し、先端が開口するとともに、側面部に空気を流通させるための空気孔3Hが開口する内筒体31と、を備え、前記内筒体31が、前記液体通過孔2Hが前記内筒体31で塞がれているとともに前記空気孔3Hの少なくとも一部が前記外筒体22の外側へ出る開放準備位置と、前記空気孔3Hの少なくとも一部が前記外筒体22の外側へ出ており、かつ、前記液体通過孔2Hが開放されて前記外筒体22の先端側から液体が注ぎ出される開放位置と、を少なくとも移動可能に構成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端と先端がそれぞれ開口するとともに、側面部に液体を流通させるための液体通過孔が開口する外筒体と、
前記外筒体に対して軸方向に移動可能に挿入されるものであり、基端が閉塞し、先端が開口するとともに、側面部に空気を流通させるための空気孔が開口する内筒体と、を備え、
前記内筒体が、前記液体通過孔が前記内筒体で塞がれているとともに前記空気孔の少なくとも一部が前記外筒体の外側へ出る開放準備位置と、前記空気孔の少なくとも一部が前記外筒体の外側へ出ており、かつ、前記液体通過孔が開放されて前記外筒体の先端側から液体が注ぎ出される開放位置と、を少なくとも移動可能に構成されていることを特徴とするコック。
【請求項2】
前記内筒体が、前記液体通過孔が前記内筒体で塞がれているとともに、前記空気孔が前記外筒体で塞がれている閉塞位置に移動可能に構成された請求項1記載のコック。
【請求項3】
前記内筒体が、前記外筒体の内側面との間でシールを形成する軸方向に所定距離離間した一対の突条シールを具備し、
前記空気孔が前記内筒体の基端側において前記一対の突条シールの外側に設けられている請求項1又は2記載のコック。
【請求項4】
前記内筒体が、基端が閉塞した筒状をなす本体と、前記本体の先端側を覆うように取り付けられる前記本体よりも軟質の樹脂で形成された筒状のカバーと、を具備し、
前記カバーの外側面に前記一対の突条シールが形成されている請求項3記載のコック。
【請求項5】
前記外筒体の先端に対して着脱可能な蓋体と、
前記内筒体の基端部と前記蓋体との間を接続する紐体と、をさらに備えた請求項1乃至4いずれかに記載のコック。
【請求項6】
液体貯留容器に設けられたスパウトに係合されるキャップと、
前記キャップの天面部と前記外筒体の側面部に開口する前記液体通過孔との間を接続する中空の連通管と、をさらに備え、
前記キャップ、前記外筒体、及び、前記連通管が一体に成形された請求項1乃至5いずれかに記載のコック。
【請求項7】
前記キャップが、前記スパウトの係合突起に対して係合される内側面に形成された係合爪と、前記係合爪を複数の係合爪要素に分割するように軸方向に延びる複数の溝と、を備えた請求項6記載のコック。
【請求項8】
天面部に開口が形成されているとともに、液体貯留容器に設けられたスパウトに螺合されるキャップと、
前記キャップの天面部の開口を塞ぐように前記キャップに取り付けられる天板体と、
前記天板体と前記外筒体の側面部に開口する前記液体通過孔との間を接続する中空の連通管と、をさらに備え、
前記天板体、前記外筒体、及び、前記連通管が一体に成形されてコック本体を構成するとともに、前記コック本体と前記キャップが別体として構成されている請求項1乃至5いずれかに記載のコック。
【請求項9】
前記キャップが、前記スパウトに取り付けられた状態において前記スパウトの縁と前記キャップの天面部との間に凹部が形成されている請求項6乃至8いずれかに記載のコック。
【請求項10】
請求項6乃至9いずれかに記載のコックと、
前記スパウトと、を備えた注出装置。
【請求項11】
基端と先端がそれぞれ開口するとともに、側面部に液体を流通させるための液体通過孔が開口する外筒体と、
前記外筒体に対して軸方向に移動可能に挿入されるものであり、基端が閉塞し、先端が開口するとともに、側面部に空気を流通させるための空気孔が開口する内筒体と、を備え、
前記内筒体が、前記外筒体の内側面との間でシールを形成する軸方向に所定距離離間した一対の突条シールを具備し、
前記一対の突条シールが前記内筒体の先端側に設けられ、前記空気孔が前記内筒体の基端側に設けられていることを特徴とするコック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液体貯留容器に対して取り付けられるものであって、開状態と閉状態とを切り替え可能に構成されたコックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、バックインボックス等の液体貯留容器に取り付けられるコックを既に出願している(特許文献1参照)。
【0003】
このようなコックは、例えば液体貯留容器を形成する樹脂製の袋が熱溶着されたスパウトを利用して取り付けられる。具体的にはコックは、外筒体を備えたコック本体と、外筒体に対して内筒体が円周方向に対して回動可能に挿入されたハンドルと、を備えている。
【0004】
これに対して、外筒体に対して内筒体を軸方向に移動可能に構成されたコックもある。このようなコックでは、外筒体に対して内筒体が最も押し込まれた閉塞位置にある場合には、外筒体の側面に開口し、液体貯留容器内と連通する液体流通孔は内筒体の先端部で閉塞されて液体は外部に注ぎ出されない。また、外筒体に対して内筒体を所定量だけ引き抜いた開放位置に移動させることで外筒体の液体流通孔が開放されて、液体貯留容器内の液体を外部に注ぎ出すことができる。
【0005】
ところで、内筒体を閉塞位置から開放位置に移動させた場合には液体貯留容器内からは液体だけでなく、空気も外筒体内へと流入することがある。このような空気は外筒体の先端である注ぎ出し口以外に逃げ場がない場合、液体内に気泡として取り込まれていわゆるエアー噛みの状態となってしまうことがある。エアー噛みが生じると、液体の注ぎ出しの勢いが悪くなったり、液体が連続して流れなくなってしまったりする。そうすると、外筒体内に液体が残ってしまい、注ぎ出し口に液垂れが生じ、汚れてしまう。
【0006】
このような問題を解決するために外筒体内の空気を外部に逃がすための空気孔が外筒体に別途設けられているものもあるが、注ぎ出し開始時に十分に空気を逃がすことができないために微小ではあるもののエアー噛みが生じたりすることもある。かといって空気を逃しやすくするために空気孔を大きくしようとすると、外筒体と内筒体との間に形成されているシール部分と空気孔が干渉してしまい、内筒体が閉塞位置にある場合でも液体が空気孔から漏れてしまうといったことが起こり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、外筒体に対する内筒体の位置を開放位置にした時点から十分に空気を外に逃がすことができ、外筒体から注ぎ出される液体にエアー噛みが生じにくくできるコックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係るコックは、基端と先端がそれぞれ開口するとともに、側面部に液体を流通させるための液体通過孔が開口する外筒体と、前記外筒体に対して軸方向に移動可能に挿入されるものであり、基端が閉塞し、先端が開口するとともに、側面部に空気を流通させるための空気孔が開口する内筒体と、を備え、前記内筒体が、前記液体通過孔が前記内筒体で塞がれているとともに前記空気孔の少なくとも一部が前記外筒体の外側へ出る開放準備位置と、前記空気孔の少なくとも一部が前記外筒体の外側へ出ており、かつ、前記液体通過孔が開放されて前記外筒体の先端側から液体が注ぎ出される開放位置と、を少なくとも移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、前記開放準備位置に前記内筒体が移動した状態では、液体が注ぎ出される前に予め前記空気孔を外気と連通させることができる。したがって、前記内筒体が前記開放位置まで移動した時点で前記空気孔は所定面積以上が外部と連通した状態にできるので、前記液体通過孔が開放された時点から前記液体通過孔を通って前記外筒内に流入する空気を前記空気孔を介して十分に外部へ逃すことが可能となる。この結果、前記外筒体内における空気の圧力の上昇を防ぐことができるので、前記外筒体の先端から注ぎ出される液体にはエアー噛みが生じにくくなり、連続的で滑らかな液体の注ぎ出しを実現できる。また、液体の流出する勢いが損なわれにくいので、前記外筒体内に液体が残りにくくなり、前記外筒体の先端からの液垂れも生じにくく、衛生的な状態を保ちやすい。言い換えると、開放位置において液体通過孔と空気孔が同時に開放されるようにすると、液体貯留容器から液体及び空気が外筒体内に流入し始める時点では空気孔はわずかにしか外部と連通できず、外筒体内の空気を逃しにくくなり、外筒体内の空気の圧力が上昇してしまう。この結果、空気孔があったとしてもエアー噛みを十分に低減できなくなってしまう。
【0011】
前記外筒体の前記液体通過孔が閉塞されている状態において、前記内筒体の空気孔を介して外部に液体が漏出するのを確実に防止できるようにするには、前記内筒体が、前記液体通過孔が前記内筒体で塞がれているとともに、前記空気孔が前記外筒体で塞がれている閉塞位置に移動可能に構成されたものであればよい。
【0012】
前記空気孔を大きく形成して、液体の注ぎ出しの際に前記外筒体内から空気を外部へさらに逃しやすくしても、前記外筒体と前記内筒体との間のシール性が損なわれないようにして、前記液体通過孔からの液体の漏出は確実に防止できるようにするには、前記内筒体が、前記外筒体の内側面との間でシールを形成する軸方向に所定距離離間した一対の突条シールを具備し、前記空気孔が前記内筒体の基端側において前記一対の突条シールの外側に設けられていればよい。
【0013】
前記外筒体と前記内筒体の一部において密着性を高めやすくして、前記内筒体が前記閉塞位置又は前記開放準備位置にある場合に前記液体通過孔からの液体の漏出を防ぐためのシール性を確保しやすくする具体的な態様としては、前記内筒体が、基端が閉塞した筒状をなす本体と、前記本体の先端側を覆うように取り付けられる前記本体よりも軟質の樹脂で形成された筒状のカバーと、を具備し、前記カバーの外側面に前記一対の突条シールが形成されているものが挙げられる。
【0014】
前記コックが使用されない場合に前記外筒体の先端を塞ぐことができるようにして衛生的な状態を保ちやすくするとともに、前記内筒体が勝手に前記開放位置に移動することが生じないようにするには、前記外筒体の先端に対して着脱可能な蓋体と、前記内筒体の基端部と前記蓋体との間を接続する紐体と、をさらに備えたものであればよい。また、このようなものであれば、液体の注ぎ出し時には前記蓋体は前記内筒体の動きに連動させることができ、操作の邪魔にならないようにもできる。
【0015】
例えばバッグインボックスのように樹脂製の袋に設けられたスパウトに本発明に係るコックを取り付けやすくするための具体的な態様としては、天面部に開口が形成されているともに、液体貯留容器に設けられたスパウトに係合されるキャップと、前記キャップの天面部と前記外筒体の側面部に開口する前記液体通過孔との間を接続する中空の連通管と、をさらに備え、前記キャップ、前記外筒体、及び、前記連通管が一体に成形されたものが挙げられる。
【0016】
前記キャップを打栓式として前記スパウトへの取り付けを簡素化しつつ、前記キャップが硬質樹脂で形成されている場合でも変形しやすくして、前記スパウトから前記キャップを簡単に取り外せるようにするには、前記キャップが、前記スパウトの係合突起に対して係合される内側面に形成された係合爪と、前記係合爪を複数の係合爪要素に分割するように軸方向に延びる複数の溝と、を備えたものであればよい。
【0017】
液体貯留容器に対して前記コックを取り付けるための別の具体的な態様としては、天面部に開口が形成されているとともに、液体貯留容器に設けられたスパウトに螺合されるキャップと、前記キャップの天面部の開口を塞ぐように前記キャップに取り付けられる天板体と、前記天板体と前記外筒体の側面部に開口する前記液体通過孔との間を接続する中空の連通管と、をさらに備え、前記天板体、前記外筒体、及び、前記連通管が一体に成形されてコック本体を構成するとともに、前記コック本体と前記キャップが別体として構成されたものが挙げられる。
【0018】
前記キャップをさらに変形させやすくして、前記キャップに対する前記天面板の嵌め込みやすさをさらに向上させるには、前記キャップが、前記スパウトに取り付けられた状態において前記スパウトの縁と前記天面部との間に凹部が形成されていればよい。
【0019】
本発明に係るコックと、前記スパウトと、を備えた注出装置であれば、様々なタイプの液体貯留容器に対して取り付けが容易であるとともに、コックから液体の注ぎ出しが行われる際に空気を外部に逃してエアー噛みが生じにくくして、液体の流出する勢いを保つことができる。
【0020】
また、本発明に係る別の態様のコックは、基端と先端がそれぞれ開口するとともに、側面部に液体を流通させるための液体通過孔が開口する外筒体と、前記外筒体に対して軸方向に移動可能に挿入されるものであり、基端が閉塞し、先端が開口するとともに、側面部に空気を流通させるための空気孔が開口する内筒体と、を備え、前記内筒体が、前記外筒体の内側面との間でシールを形成する軸方向に所定距離離間した一対の突条シールを具備し、前記一対の突条シールが前記内筒体の先端側に設けられ、前記空気孔が前記内筒体の基端側に設けられていることを特徴とする。
【0021】
このようなものであれば、前記一対の突条シールと前記空気孔をそれぞれ離れた場所に形成できるので、前記外筒体内の空気を外部に逃がす能力を大きくするために前記空気孔の面積を大きくしても前記一対の突条には干渉しないようにできる。このため、注ぎ出される液体にエアー噛みが発生しないようにしつつ、前記液体通過孔が閉塞されている状態でのシール性能が損なわれないようにできる。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明に係るコックであれば、前記開放準備位置に前記内筒体を移動させた時点から前記外筒体の前記液体通過孔を閉塞した状態で前記外筒体内と外部とを連通させることができる。したがって、前記開放位置に前記内筒体を移動させた時点から前記空気孔における所定面積以上は外部と予め連通した状態にできるので、液体の注ぎ出しを開始した時点からスムーズに前記液体通過孔から前記外筒体内に流入する空気を外部に逃がすことができる。この結果、従来のコックであれば注ぎ出し開始時に発生していたエアー噛みを無くす事が可能となり、注ぎ出される液体の勢いを一定に保つ事が可能となる。また、流出する液体に勢いがあるので、前記外筒体内に留まる液体を少なくできるので前記外筒体の先端における液切れも良くし、衛生的な状態を保ちやすい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるコックの模式的斜視図。
【
図2】第1実施形態におけるコックの模式的縦断面図。
【
図3】第1実施形態におけるハンドルの模式的斜視図。
【
図4】第1実施形態における内筒体が閉塞位置にある場合のコックの模式的縦断面図。
【
図5】第1実施形態における内筒体が開放準備位置にある場合のコックの模式的縦断面図。
【
図6】第1実施形態における内筒体が開放位置にある場合のコックの模式的縦断面図。
【
図7】本発明の第2実施形態におけるコックの模式的縦断面図。
【
図8】第2実施形態におけるキャップの模式的斜視図。
【
図9】本発明の別の実施形態におけるキャップがスパウトに取り付けられた状態を示す模式的縦断面図。
【
図10】本発明の別の実施形態におけるキャップの模式的斜視図。
【
図11】本発明の別の実施形態におけるキャップの模式的縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1実施形態におけるコック100について
図1乃至
図6を参照しながら説明する。
【0025】
本実施形態に係るコック100は、例えば、
図1の斜視図及び
図2の縦断面図に示すように、プラスチックやPET等によって形成された容器や、バッグインボックスの内袋等である液体貯留容器Tにおける下側に取り付けられるものである。すなわち、コック100は、液体貯留容器Tの内容液が自重で外部に導出されるように構成してある。
【0026】
より具体的には、液体貯留容器Tがフランジ部に熱溶着されたスパウトSに対してコック100が取り付けられて、注出装置200が構成される。コック100は、3つの樹脂成形部品から構成されており、スパウトSに対して螺合される天面部に開口が形成されたキャップ1と、キャップ1の開口を塞ぐように取り付けられるコック本体2と、コック本体2に取り付けられて液体貯留容器Tの内外の開閉状態を切り替えるためのハンドル3を備えている。
【0027】
コック100の各部について詳述する。
【0028】
キャップ1は、
図2の縦断面図に示すようにスパウトSの先端部分に螺合される扁平円筒状をなすものであり、側面部の内側周面にはスパウトSの先端部に形成されている雄ねじと螺合する雌ねじSCが形成されている。また、キャップ1の天面部にはスパウトSの内径とほぼ同じ直径の開口が形成されている。キャップ1の天面部における開口の縁は一部内周側へと突出した環状をなしており、後述するコック本体2の天面板21の上面側と係合される。
【0029】
コック本体2は、3つの部分が一つの中空樹脂成形部品として形成されている。すなわち、コック本体2は、キャップ1の天面部の開口を塞ぐようにキャップ1に対して取り付けられる天面板21と、両端が開口した外筒体22と、天面板21と外筒体22の側面部との間を接続する中空の連通管23と、を具備する。コック本体2の天面板21はキャップ1の天面部の開口に対して円周方向に対して回転可能に嵌め込まれる。スパウトSに対してキャップ1を螺合させた後でもキャップ1に対してコック本体2を回転させて、その向きを所望の方向へと調節することができる。
【0030】
天面板21の内側面には円筒状をなしスパウトSに対して嵌合される円筒部211が連続して形成されている。また、
図1及び
図2に示すように天面板21の外側面の面板方向と外筒体22の軸方向が一致するように設けられており、外筒体22の先端部は天面板21の外周よりも外側にはみ出るように構成されている。また、連通管23は天面板21に対して垂直となるとともに、外筒体22の軸方向に対して直交するように設けられている。外筒体22の側面部において連通管23と接続されている部分には液体貯留容器T内の液体を流通させるための液体通過孔2Hが形成されている。また、外筒体22の先端部は基端部よりもその内径が若干絞られており、先端に形成されている開口が注出口2Eとして機能する。
【0031】
ハンドル3は、
図2及び
図3の斜視図に示すように基端が閉塞し、先端部が開口するとともに、基端部の側面に形成された空気孔3Hが開口する中空の内筒体31と、コック100が使用されない場合に外筒体22の注出口2Eに取り付けられて開口を塞ぐ蓋体32と、内筒体31の基端部と蓋体32との間を接続する可撓性を有する紐体33と、を備え、これらが一体で樹脂成形されたものである。
【0032】
内筒体31は基端が外筒体の内径よりも若干大きく形成してあり、外筒体22に挿入された場合にこれ以上先端側に進まないようにさせるストッパとしての機能を発揮するように構成されている。内筒体31のそれ以外の部分における外径は、外筒体22の先端部以外の内径とほぼ同じもしくは若干小さくしてあり、外筒体22に対して軸方向に移動可能に外筒体22の基端側から挿入される。本実施形態では外筒体22の内側面と内筒体31の外側面はそれぞれ滑らかに摺動可能に構成されている。この内筒体31の先端部には例えば軟質性樹脂で形成された筒状をなすカバー31Rが取り付けられており、このカバー31Rによって外筒体22の内周面と内筒体31との間でシールが形成されているように構成されている。より具体的にはカバー31Rには軸方向に所定距離離隔させて形成された一対のリング状をなす突条SRが形成されており、外筒体22内に内筒体31が挿入された状態で突条SRが押しつぶされてシールが形成される。本実施形態ではカバー31Rの側面において先端部及び基端部にそれぞれ突条SRが二重で形成されている。突条SRの離間距離は
図2及び
図5に示すように外筒体22の液体通過孔2Hよりも大きく設定してあり、内筒体31が外筒体22に完全に差し込まれている状態では一対の突条SRの間に液体通過孔2Hに配置される。この状態では一対の突条SRがシールを形成しているので液体通過孔2Hから外筒体22内へは液体は漏出しない。
【0033】
加えて、内筒体31の側面部に形成されている空気孔3Hは軸方向を長軸方向とする概略楕円形状をなす開口であって、前述した一対の突条SRの外側に配置される。すなわち、空気孔3Hは突条SRによって形成されるシールとは全く干渉しないように設けられている。
【0034】
また、
図4乃至
図6に記載しているように内筒体31は外筒体22に対して少なくとも閉塞位置、開放準備位置、開放位置の3つの位置に移動可能に構成されている。
【0035】
閉塞位置は、本実施形態では
図4に示すように外筒体22に対して内筒体31のほぼ全体が差し込まれている状態の位置である。外筒体22に対して内筒体31が閉塞位置に配置されている状態では、液体通過孔2Hが内筒体31で塞がれているとともに、空気孔3Hが外筒体22で塞がれている。すなわち、内筒体31が閉塞位置にある場合には液体貯留容器T内から液体は液体通過孔2Hを介して外筒体22内へは流入せず、外部から空気孔3Hを介して空気が外筒体22内へ流入しない。ここで、「液体通過孔2Hが内筒体31で塞がれている」とは、液体通過孔2Hから外筒体22内へ液体が流入して注出口2Eから外部へ注ぎ出されない状態をいう。本実施形態では一対の突条SRの間に液体通過孔2Hが配置されることで液体通過孔2Hは内筒体31で塞がれる。なお、内筒体31の外側面で液体通過孔2H自体が隙間なく塞がれていても良い。
【0036】
開放準備位置は、
図5に示すように外筒体22に対して内筒体31が軸方向に対して外側に若干引き抜かれた状態の位置である。この状態では、液体通過孔2Hが内筒体31で塞がれているとともに空気孔3Hの基端側一部が外筒体22の基端側から外側へ出る。すなわち、内筒体31が開放準備位置にある場合には液体貯留容器T内から液体は液体通過孔2Hを介して外筒体22内へは流入せず、空気孔3Hの一部を介して外筒体22又は内筒体31内と外部との間で空気の流出又は流入が可能となる。このように開放準備位置に内筒体31が配置されている状態にすることで、液体貯留容器Tから液体及び気体が外筒体22内への流入が始まる前に予め空気孔3Hにおいて外部と連通している部分を所定面積以上にしておくことができる。
【0037】
開放位置は、
図6に示すように内筒体31が開放準備位置よりもさらに基端側に引き抜かれて、液体通過孔2Hが一対の突条SRの外側に配置された状態の位置である。言い換えると、開放位置では、液体通過孔2Hが開放されて、外筒体22の先端側にある注出口2Eから液体が注ぎ出される。また、第1実施形態では空気孔3Hについても全体が外筒体22の基端から外側に出ている状態となる。液体貯留容器Tから外筒体22内へと流入する空気については空気孔3Hから外部へと逃がすことができる。
【0038】
このように構成されたコック100及び注出装置200であれば、外筒体22に対して内筒体31が開放準備位置に配置されている状態において、液体通過孔2Hは内筒体31で塞いだ状態にしておきながら、空気孔3Hの一部は外部に開放させることができる。したがって、内筒体31が開放位置に配置されて液体通過孔2Hから液体及び空気が外筒体22内へ流入してくる前から空気孔3Hについては所定面積以上を外部と予め連通させておくことができる。内筒体31が開放位置に移動して、液体通過孔2Hが開放された時点から空気孔3Hの例えば全体を外部と連通させることができるので、液体貯留容器Tから液体だけでなく空気も外筒体22内へしても空気については空気孔3Hから外部へスムーズかつ十分に逃がすことができる。この結果、注ぎ出される液体にエアー噛みが発生にくくなって、注ぎ出される液体の勢いが削がれるのを防ぐことができる。また、注ぎ出される液体に勢いがあるので、注ぎ出し終了時に外筒体22内に残留する液体を少なくできるので、注出口2Eにおける液垂れも防ぐことができ、この付近を衛生的に保ちやすい。
【0039】
また、外筒体22と内筒体31との間にシールを形成する一対の突条SRの外側に空気孔3Hが形成されており、さらに一対の突条SRは内筒体31の先端側に配置され、空気孔3Hは内筒体の基端側に配置されているので、空気の通りを良くするために空気孔3Hの開口径を大きくしても突条SRと干渉することはない。このため、空気を逃がすための性能を向上させてもシール機能は低下せず、液体通過孔2Hから意図しない液体の漏出が発生するのを防ぐことができる。
【0040】
さらに、蓋体32は紐体33で内筒体31の基端に接続されているので、内筒体31の軸方向の動きに連動して蓋体32も動かすことができる。したがって、ハンドル3による開閉操作を行っても蓋体32が内筒体31の移動の妨げにはならず、また、蓋体32を紛失する恐れもなくすことができる。加えて、内筒体31が閉塞位置にある状態で蓋体32を外筒体22の先端にある注出口2Eを塞ぐように取り付ければ、注出口2E近傍を清浄に保てるだけでなく、紐体33によって内筒体31の軸方向の移動をロックすることができる。例えば注出装置200の搬送時等に内筒体31が衝撃等で動くことによって意図せず液体が外部に漏れてしまうといった事態を防ぐことができる。
【0041】
次に本発明の第2実施形態におけるコック100及び注出装置200について
図7及び
図8を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した部材に対応する部材には同じ符号を付すこととする。また、
図8の斜視図では後述する溝Gを明示するために円筒部211等については省略している。
【0042】
第2実施形態のコック100は、キャップ1が打栓式のものとして構成されており、キャップ1とコック本体2は一体で樹脂成形される。すなわち、第1実施形態ではキャップ1の天面部に開口が形成されており、天面板21がキャップ1に対して後付されていたが、第2実施形態ではキャップ1には天面部に開口はなく、天面板21が一体に形成されている。さらに具体的には、キャップ1はスパウトSの外側面から外周方向に突出してリング状をなす係合突起S1に対して係合される係合爪Cを備えている。このようなキャップ1はコック本体2が取り付けられた状態でスパウトSに対して叩きつけられて固定される。キャップ1はスパウトSに対して螺合させる必要がないので、コック本体2の向きは叩き込む時点での向きのままにすることができる。
【0043】
図8の斜視図にキャップ1の内面側を示す。キャップ1の内側面から内周側に突出させて形成されている係合爪Cは軸方向に延びる複数の溝Gによって複数の係合爪要素CEに分割されている。すなわち、複数の溝G及び係合爪要素CEは円周方向に対して交互に等間隔で並べて設けられており、複数の係合爪要素CE全体で係合爪Cとしての機能を発揮するように構成されている。また、キャップ1において溝Gが形成されている部分は係合爪要素CEが形成されている部分と比較してその厚み寸法は小さく設定してある。さらに溝Gは内側面の下端からキャップ1の天面部における開口の縁近傍まで軸方向に延びている。より具体的には
図7の断面図に示すようにキャップ1がスパウトSに完全に掛かり留められた状態においてスパウトSの先端よりも天面側まで溝Gの先端が延びており、キャップ1の内側面における天面側とスパウトSの先端との間には凹部Dが形成される。
【0044】
このように構成された第2実施形態のコック100及び注出装置200であれば、スパウトSに対してキャップ1をねじ込まずに押し込んだり、叩き込んだりするだけでキャップ1をスパウトSに取り付けることができ、組立作業を簡素化できる。また、打栓式のキャップ1として求められる強度を実現できるようにキャップ1及びコック本体2を硬質樹脂で形成した場合でも、キャップ1に設けられている溝Gと凹部Dによって厚みを調節することができ、キャップ1にたわみ変形を生じやすくすることもできる。
【0045】
すなわち、従来であれば硬質樹脂で形成されたキャップは非常に硬く、人の手ではほとんど変形させられなかったため、スパウトSから打栓式のキャップ1を取り外すのは難しかった。これに対して第2実施形態であれば人の手でも十分にキャップ1を変形させて、簡単にスパウトSからキャップ1を取り外すことができる。この結果、例えば注出装置200から全ての液体が注ぎだされた後に各部位を取り外して分別して回収又は廃棄しやすい。あるいは、液体貯留容器Tから多量の液体を短時間で注ぎ出したい場合にも、スパウトSからキャップ1を取り外して、スパウトSから直接液体を注ぎ出すことができるようにするといった使い方も可能となる。
【0046】
次に本発明の別の実施形態におけるキャップ1について
図9乃至
図11を参照しながら説明する。
【0047】
この実施形態のキャップ1はスパウトSの蓋をするために用いられるものであって、係合爪Cが内側面に形成された側面部だけでなく、天面板21及び円筒部211も備えている。より具体的にはキャップ1は、天面板21は円筒部211の底面側と接続されており、天面側から見た場合に凹んだ状態となるように形成されている。また、内側面に形成されている係合爪Cについては前述した実施形態と同様に
図10に示すように軸方向に延びる複数の溝Gが円周方向に対して等間隔で形成されており、係合爪Cは複数の係合爪要素CEに分割されている。また、
図9、
図11に示すようにキャップ1がスパウトSに係合している状態、言い換えると、スパウトSの係合突起S1に対してキャップ1の係合爪Cが掛かり留められている状態ではスパウトSの先端よりも天面側において凹部Dも同様に形成されている。
【0048】
このようなキャップ1であれば例えばスパウトSに対してキャップ1を取り付ける場合にねじ込むのではなく、打ち込みでも簡単に取り付ける事が可能となる。さらに、打栓式のキャップ1として求められる強度等を実現できるように硬質樹脂で形成したとしても、溝Gによってキャップ1の側面部の一部を円周方向に対して伸ばしやすくできるとともに、凹部Dによって天面部と側面部との間の角部をたわませやすくできる。このため、硬質樹脂で形成されたキャップ1であっても人の手でキャップ1をスパウトSから簡単に取り外す事が可能となる。
【0049】
その他の実施形態について説明する。
【0050】
コック100の形状や構成については
図1乃至
図8に記載の実施形態に限られるものではない。例えば連通管23がなく、天面板21に対して直接外筒体が形成されていてもよい。また、ハンドル3については少なくとも内筒体31を備えていればよい。
【0051】
内筒体31において形成される空気孔3Hの位置や大きさについては
図1乃至
図8に示した物に限られない。すなわち、空気孔3Hについては内筒体31が外筒体22の液体通過孔2Hを塞いている状態において少なくとも一部が外部と連通することができる位置、大きさ、形状であればよい。また、開放準備位置において空気孔3H全体が外部と連通するように構成してもよい。なお、一対の突条SRの軸方向に対する距離をほぼ液体通過孔2Hの軸方向の大きさと同等にして外筒体22の軸方向の長さ寸法をできる限り短くするには、開放準備位置において空気孔3Hの一部のみが外部に開放されるようにしたほうがよい。
【0052】
内筒体31によって液体通過孔2Hを塞ぐための構成としては、一対の突条SRに限られず既存の様々な構成を用いても構わない。例えば内筒体21の側面で直接液体通過孔2Hを塞ぐようにしても構わない。また、内筒体31に別体のカバー31Rを取り付けず、筒自体で液体通過孔2Hを防ぐようにしてもよい。
【0053】
内筒体31は外筒体22に対して摺動して軸方向に移動するものに限られない。例えば外筒体22の内側面と内筒体31の外側面との間にねじ構造が形成されており、内筒体31を外筒体22に対して円周方向に回転させることで、軸方向に移動するように構成してもよい。
【0054】
打栓式のキャップ1については、溝G又は凹部Dのいずれか一方のみが形成されていてもよい。また、第2実施形態の打栓式のキャップ1はキャップ1とコック本体2が一体で成形されていたが、第1実施形態と同様にキャップ1が天面部に開口を有しているとともに、コック本体2がキャップ1の天面部に対して嵌め込まれる天面板21を備え、打栓式のキャップ1とコック本体2が別体として成形されていてもよい。
【0055】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や各実施形態の一部同士の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0056】
200 :注出装置
100 :コック
1 :キャップ
C :係合爪
CE :係合爪要素
G :溝
D :凹部
2 :コック本体
21 :天面板
211 :円筒部
22 :外筒体
23 :連通管
3 :ハンドル
31 :内筒体
31R :カバー
SR :突条
32 :蓋体
33 :紐体
T :液体貯留容器
S :スパウト
S1 :係合突起