(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025930
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131396
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植草 貴行
(72)【発明者】
【氏名】深川 克正
(72)【発明者】
【氏名】安井 基泰
(57)【要約】
【課題】ノーズフィッターなどの変形可能な部分を、使用者が容易に変形できる特徴を維持したまま、長時間マスクを装着した場合でも変形しにくいマスクを提供する。
【解決手段】マスク本体と、マスク本体の周辺部に形成された折り曲げ部とを含み、折り曲げ部は、要件(x1)および(x2)を満たす熱可塑性樹脂組成物(X)を含有している、マスク。
(x1)JIS K6253に準拠して、厚さ3mmのプレスシートの状態で測定される、押針接触開始直後のショアーD硬度の値が45以上である;
(x2)押針接触開始直後のショアーD硬度と、押針接触開始から15秒後におけるショアーD硬度の値との間の変化量ΔHSが10以上50以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体と、
前記マスク本体の周辺部に形成された折り曲げ部とを含み、
前記折り曲げ部は、下記要件(x1)および(x2)を満たす熱可塑性樹脂組成物(X)を含有している、マスク。
(x1)JIS K6253に準拠して、厚さ3mmのプレスシートの状態で測定される、押針接触開始直後のショアーD硬度の値が45以上である;
(x2)押針接触開始直後のショアーD硬度と、押針接触開始から15秒後におけるショアーD硬度の値との間の変化量ΔHSが10以上50以下である。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物(X)の、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδがピーク値となる温度は、25℃以上40℃以下であり、損失正接tanδのピーク値は、0.5以上3.0以下である、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂組成物(X)は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と、無機物(B)とを含有する組成物であり、
前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、
4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)と、
4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)と、
任意に非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)を含み、
構成単位(i)、(ii)および(iii)の合計を100モル%としたときに、
構成単位(i)を55モル%以上85モル%以下、
構成単位(ii)を15モル%以上45モル%以下、
構成単位(iii)を0モル%以上10モル%以下含む、
請求項1または2に記載のマスク。
【請求項4】
前記無機物(B)が、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムおよびタルクからなる群より選ばれる1種以上である、請求項3に記載のマスク。
【請求項5】
前記マスク本体が不織布を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉、ウイルス、および煤塵などの粒子状物質などから体内を保護するため、マスクの需要が高まっている。マスクは、通常、使用者の鼻孔および口を被覆するマスク本体部と、使用者の耳に掛けてマスク本体を保持する耳掛け部とを有する。マスク本体部は、通常、長方形などの鼻孔および口を被覆可能な形状に成形した不織布もしくは織布から形成される。
【0003】
マスクを装着したときに、マスク本体部と使用者の顔面との間に隙間が生じると、使用者の息が外部に漏れることがある。例えば、使用者の鼻と頬面との間には窪みがあるため、マスク本体部の上辺には上記窪みに由来する隙間が生じやすい。このマスク本体部の上辺に生じた隙間から使用者の息が漏れると、使用者の眼鏡を曇らせてしまうことがある。
【0004】
そのため、マスクの上辺に折り曲げ可能なノーズフィッターを設けて、使用者の顔面の形状にあわせてノーズフィッターを折り曲げて隙間を生じにくくし、マスク本体部の上辺からの息漏れを抑制する技術が知られている。特許文献1などに記載のように、ノーズフィッターとしては、金属製やポリエチレン製のテープなどが使用されている。また特許文献2には体温で変形する4-メチル-1-ペンテン共重合体を用いたマスクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-053237号公報
【特許文献2】特開2018-044269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マスク本体部と使用者の顔面との間に隙間をより少なくすることが望まれている。上述したように、マスク本体部の上辺に生じた隙間から使用者の息が漏れると、使用者の眼鏡を曇らせてしまうことがあるし、マスク本体部の左右辺や下辺に隙間が生じると、これらの隙間から外部の空気が侵入して使用者の口内に到達し、花粉、ウイルスおよび粒子状物質などからの保護が不十分になることもある。
【0007】
しかし、特許文献1に記載のような金属製やポリエチレン製のテープでは、応力に対する軟化の度合いが小さすぎて、所望の形状への折り曲げが容易ではない(凹凸追従性が良好ではない)ことがある。ノーズフィッターには、自分の顔の形状にあわせて使用者が容易に変形できることが望まれている。しかしながら、特許文献2に記載のような、ノーズフィッターに体温で変形する材料が加持されているマスクでは、体温付近での変形量が大きいため、長時間(例えば、一日など)にわたってマスクを装着した場合にノーズフィッターが垂れ下がる懸念があった。
【0008】
上記の課題に鑑み、本発明は、ノーズフィッターなどの変形可能な部分を、使用者が容易に変形できる特徴を維持したまま、長時間(例えば、一日など)にわたってマスクを装着した場合でも変形しにくいマスクを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が研究を進めた結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出した。本発明の構成例は、以下の通りである。
なお、本明細書では、数値範囲を示す「A~B」は、A以上B以下を示す。
【0010】
[1] マスク本体と、
前記マスク本体の周辺部に形成された折り曲げ部とを含み、
前記折り曲げ部は、下記要件(x1)および(x2)を満たす熱可塑性樹脂組成物(X)を含有している、マスク。
(x1)JIS K6253に準拠して、厚さ3mmのプレスシートの状態で測定される、押針接触開始直後のショアーD硬度の値が45以上である;
(x2)押針接触開始直後のショアーD硬度と、押針接触開始から15秒後におけるショアーD硬度の値との間の変化量ΔHSが10以上50以下である。
【0011】
[2] 前記熱可塑性樹脂組成物(X)の、10rad/sの周波数で動的粘弾性測定して得られる損失正接tanδがピーク値となる温度は、25℃以上40℃以下であり、損失正接tanδのピーク値は、0.5以上3.0以下である、[1]に記載のマスク。
【0012】
[3] 前記熱可塑性樹脂組成物(X)は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と、無機物(B)とを含有する組成物であり、
前記4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、
4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)と、
4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)と、
任意に非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)を含み、
構成単位(i)、(ii)および(iii)の合計を100モル%としたときに、
構成単位(i)を55モル%以上85モル%以下、
構成単位(ii)を15モル%以上45モル%以下、
構成単位(iii)を0モル%以上10モル%以下含む、
[1]または[2]に記載のマスク。
【0013】
[4] 前記無機物(B)が、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムおよびタルクからなる群より選ばれる1種以上である、[3]に記載のマスク。
【0014】
[5] 前記マスク本体が不織布を含むことを特徴とする[1]~[4]のいずれか一つに記載のマスク。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ノーズフィッターなどの変形可能な部分を、使用者が容易に変形できる特徴を維持したまま、長時間にわたってマスクを装着した場合でも変形しにくいマスクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪マスク≫
本発明に係るマスクは、マスク本体と、前記マスク本体の周辺部に形成された折り曲げ部とを含む。
本発明の一実施形態に係るマスク100は、
図1Aに示すように、使用者の鼻孔および口を被覆するマスク本体110を有し、マスク本体110の周辺部には、折り曲げ部120が形成されている。また、マスク本体110には、使用者の耳に掛けてマスク本体110を保持する耳掛け部130が形成されてもよい。なお、マスク本体110、折り曲げ部120、および耳掛け部130の1つ以上が不織布を含んでもよく、マスク本体110、折り曲げ部120、および耳掛け部130の全てが不織布を含んでもよい。
【0018】
≪マスク本体≫
マスク本体110は、例えば、使用者の顔面の鼻孔、口角部および喉元のうち顎の先端に近傍する領域を少なくとも覆被する形状とすればよい。マスク本体110は、例えば、立体状または平面状の、略矩形状とすることができる。マスク本体110は、鼻や喉元に掛けやすいように上辺または下辺を伸張させた略五角形または略六角形形状としてもよい。マスク本体110は、使用者が装着したときに顔面に密着できるように、多段加工して上下方向(装着したときに使用者の鼻と顎とを結ぶ方向)に伸縮可能としてもよい。マスク本体110は、使用者が装着したときに顔面に密着できるように、2枚の略矩形のシート材料を融着などによって接合して、中央から左右方向(装着したときに使用者の両耳を結ぶ方向)に折り曲げ可能としてもよい。
【0019】
マスク本体110は、柔軟性および通気性を有する不織布または織布から形成される。上記不織布または織布は、紙、レーヨンおよび綿などの天然繊維から形成されてもよいし、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのオレフィン重合体、ポリエステルテレフタラート(PET)などのポリエステル、ならびにエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などのビニルアルコール系樹脂などを含む合成繊維から形成されてもよい。マスク本体110は、これらの材料から形成されるシート材料が積層された積層体から形成されることが好ましい。このとき、マスク本体110は、その左右辺(装着した時に使用者の耳側にあたる辺)にサイドシートを備え、上記サイドシートによって積層体を保持してもよい。なお、マスク本体110は少なくとも一部に不織布を含むことが好ましく、マスク本体110の、少なくとも使用者の肌と接する面は、不織布から形成されることが好ましい。
【0020】
≪折り曲げ部≫
<折り曲げ部の構成>
折り曲げ部120は、マスク本体110の周辺部に線状に形成されており、応力の印加によって変形可能に構成されている。折り曲げ部120は、マスク本体110の最外周部に形成されてもよいし、マスク本体110の外周部から一定の幅だけ内部に形成されてもよいし、部分的に最外周部に形成され、部分的に外周部から一定の幅だけ内部の領域に形成されてもよい。
【0021】
また、折り曲げ部120は、
図1Aに示すようにマスク本体110の上辺に形成されてもよいし、マスク本体110の左右いずれかまたは両方の辺に形成されてもよいし、マスク本体110の下辺に形成されてもよい。また、折り曲げ部120は、
図1Bに示すようにマスク本体110のすべての周辺部に形成されてもよい。
【0022】
また、折り曲げ部120は、マスク本体110の表側(使用者と当接しない側)に形成されてもよいし、マスク本体110の裏側(使用者と当接する側)に形成されてもよい。マスク本体110が上記積層体であるときは、折り曲げ部120は、マスク本体110を構成する各層の間に挟まれて形成されてもよい。
【0023】
また、折り曲げ部120は、マスク本体110の各辺に1本の連続した線状に形成されてもよいし、
図1Cに示すように、不連続な2本以上の線状に形成されていてもよい。折り曲げ部120は、不連続な2本以上の線状に形成されているとき、互いに異なる複数の部材から構成されてもよい。このとき、上記複数の部材は、装着したときに当接する使用者の顔面の形状に応じて、応力を印加した際の変形しやすさなどの物性が互いに異なる部材とすることができる。なお、応力を印加した際の変形しやすさの指標として、後述するΔHS値などが用いられる。例えば、使用者の鼻の近辺に当接するため折り曲げ量が多くなる領域に位置する折り曲げ部120-1を構成する部材を、応力を印加した際に変形しやすい部材とし、使用者の頬の近辺に当接するため折り曲げ量が少ない領域に位置する折り曲げ部120-2を構成する部材を、折り曲げ部120-1を構成する部材に比べて変形しにくい部材としてもよい。
【0024】
折り曲げ部120がマスク本体110の上辺に形成されると、使用者は、自分の鼻から頬面にかかる領域の形状にあわせて折り曲げ部120を変形させて装着することで、マスク本体110の上辺に生じた隙間からの息漏れを抑制して、眼鏡の曇りなどを抑制することができる。
【0025】
折り曲げ部120がマスク本体110の左右辺または下辺に形成されると、使用者は、自分の頬または顎の形状にあわせて折り曲げ部120を変形させて装着することで、マスク本体110の左右辺または下辺に生じた隙間からの外部の空気の侵入を抑制することができる。そのため、このようなマスク100は、外部の空気が使用者の口内により到達しにくく、花粉、ウイルスおよび粒子状物質などからの使用者の保護効果をさらに高めることができる。
また、折り曲げ部120によってマスクの端部(またはその近傍)が使用者の顔面の形状にあわせて折り曲げられると、マスクがより顔面に密着しやすい。
【0026】
<折り曲げ部の原材料>
折り曲げ部120は、特定の物性を有する熱可塑性樹脂組成物(X)を含有する。
【0027】
≪熱可塑性樹脂組成物(X)≫
熱可塑性樹脂組成物(X)は、下記要件(x1)および(x2)を満たす。
【0028】
[要件(x1)]
JIS K6253に準拠して、厚さ3mmのプレスシートの状態で測定される、押針接触開始直後のショアーD硬度の値が45以上であり、好ましくは50~95であり、より好ましくは65~80である。
押針接触開始直後のショアーD硬度の値がこの範囲にある熱可塑性樹脂組成物(X)を含む材料で折り曲げ部120を製造すると、マスクの使用者がマスクを長時間にわたって装着しても、該折り曲げ部120での変形が発生しにくくなる。
【0029】
[要件(x2)]
押針接触開始直後のショアーD硬度と、押針接触開始から15秒後におけるショアーD硬度の値と、の間の変化量ΔHSが、10以上50以下であり、好ましくは10以上40以下であり、より好ましくは15以上40以下である。
ΔHSが10以上である熱可塑性樹脂組成物(X)は、応力の印加によって変形させやすい。また、ΔHSが50以下である熱可塑性樹脂組成物(X)は、応力を印加しても過剰に変形することがなく、使用者の顔面の形状に容易に適合させることができる。そのため、ΔHSが上記範囲である熱可塑性樹脂組成物(X)を含有する材料を用いて折り曲げ部120を製造すると、折り曲げ部120を凹凸追従性に優れたものとしやすい。
【0030】
熱可塑性樹脂組成物(X)は、さらに、下記要件(x3)、(x4)のうちの1つ以上を満たしてもよく、好ましくは下記要件(x3)および(x4)を満たす。
【0031】
[要件(x3)]
10rad/sの周波数で、-40~150℃までの温度範囲において熱可塑性樹脂組成物(X)の動的粘弾性測定を行い、各温度での損失弾性率と貯蔵弾性率との比(損失正接、tanδ)を温度の関数としてプロットした場合、tanδがピーク値となる温度が、好ましくは25℃以上40℃以下、より好ましくは28℃以上40℃以下、さらに好ましくは29℃以上38℃以下である。ここで、得られたプロットに複数のピークがある場合、0~60℃の範囲でtanδが最大値となる際の温度を、上記tanδがピーク値となる温度とする。なお、動的粘弾性測定の方法は実施例に記載の通りである。
tanδがピーク値となる温度が25℃以上40℃以下である熱可塑性樹脂組成物(X)は、人の体温の付近で変形しやすい。そのため、tanδがピーク値となる温度が上記範囲である熱可塑性樹脂組成物(X)を含有する材料を用いて折り曲げ部120を製造すると、該折り曲げ部120は人の手による変形が容易になりやすい。なお、tanδがピーク値となる温度は、熱可塑性樹脂組成物(X)のガラス転移温度付近である。
【0032】
[要件(x4)]
10rad/sの周波数で、-40~150℃までの温度範囲において熱可塑性樹脂組成物(X)の動的粘弾性測定を行い、各温度でのtanδを温度の関数としてプロットした場合、tanδのピーク値が、好ましくは0.5以上3.0以下であり、より好ましくは0.8以上2.5以下であり、さらに好ましくは1.0以上2.1以下である。ここで、得られたプロットに複数のピークがある場合、要件(x3)でtanδのピーク値とする温度(0~60℃の範囲でtanδが最大値となる際の温度)でのtanδの値を、上記tanδのピーク値とする。なお、動的粘弾性測定の方法は実施例に記載の通りである。
tanδのピーク値が3.0以下である熱可塑性樹脂組成物(X)は、応力の印加によって変形させやすい。また、tanδのピーク値が0.5以上である熱可塑性樹脂組成物(X)は、応力を印加しても過剰に変形することがなく、使用者の顔面の形状に容易に適合させることができる。そのため、tanδのピーク値が上記範囲である熱可塑性樹脂組成物(X)を含有する材料を用いて折り曲げ部120を製造すると、折り曲げ部120を凹凸追従性に優れたものにしやすい。また、tanδのピーク値が0.5以上である熱可塑性樹脂組成物(X)を含有する材料は、応力吸収性が高いため、折り曲げ部120としたときに使用者が違和感を覚えにくい。
【0033】
熱可塑性樹脂組成物(X)は、発泡体でも未発泡体でもよいが、発泡体の場合は硬度が低下して長時間使用した際に変形が発生する可能性が高くなるため、凹凸追従性をより高めつつ変形を抑制する意味では未発泡体であることが好ましい。
【0034】
上記熱可塑性樹脂組成物(X)は、上述した要件(x1)および(x2)を満たすものであれば限定されないが、例えば、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と、無機物(B)と、を含有する組成物とすることができる。
【0035】
<4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)>
〔4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の構成〕
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(i)および4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のα-オレフィンから導かれる構成単位(ii)を含む。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、任意に、非共役ポリエンから導かれる構成単位(iii)を含んでもよい。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、1種単独で、または2種類以上を組み合せて用いることができる。
【0036】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、構成単位(i)、構成単位(ii)および構成単位(iii)の合計を100モル%としたときに、構成単位(i)を好ましくは55モル%以上85モル%以下、より好ましくは60モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは68モル%以上75モル%以下含む。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)が含む構成単位(i)の割合が上記上限値以下であると、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)が適度な柔軟性を有するため、熱可塑性樹脂組成物(X)のΔHSを上述した範囲に調整しやすい。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)が含む構成単位(i)の割合が上記下限値以上であると、熱可塑性樹脂組成物(X)のtanδピーク温度を体温付近に設定しやすくなる。その結果、熱可塑性樹脂組成物(X)を含む材料を用いて製造された折り曲げ部120は、使用者の体にフィットしやすくなる。
【0037】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、構成単位(i)、構成単位(ii)および構成単位(iii)の合計を100モル%としたときに、構成単位(ii)を好ましくは15モル%以上45モル%以下、より好ましくは20モル%以上40モル%以下、さらに好ましくは23モル%以上32モル%以下含む。
構成単位(ii)の割合が上記範囲内にある4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を含有する場合、熱可塑性樹脂組成物(X)を含む材料の硬度が適切な範囲になりやすい。このため、該熱可塑性樹脂組成物(X)を含む材料を用いて製造した折り曲げ部120は、長時間の使用により変形しづらい上、追従性に優れるのでマスクの使用者が良好なフィット感を得やすい。
一方、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体が含む構成単位(ii)の割合が上記上限値を超えると、該共重合体を含む材料が柔軟化するため、長時間使用時の変形が発生しやすくなる。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体が含む構成単位(ii)の割合が上記下限値未満であると、該共重合体を含む材料が硬質化するため、折り曲げ部120が該材料から製造されると、追従性が低下してフィット感も低減する。
【0038】
構成単位(ii)を導くα-オレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセンなどを含む炭素原子数2~20(好ましくは炭素原子数2~15、より好ましくは炭素原子数2~10)の直鎖状のα-オレフィン、ならびに、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、および3-エチル-1-ヘキセンなどを含む炭素原子数5~20(好ましくは炭素原子数5~15)の分岐状のα-オレフィンが挙げられる。これらの中でもエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。構成単位(ii)は、これらのうち1つの化合物から導かれてもよいし、2以上の化合物から導かれてもよい。
【0039】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、構成単位(iii)を含む場合、構成単位(i)、構成単位(ii)および構成単位(iii)の合計を100モル%としたときに、構成単位(iii)を好ましくは0モル%以上10モル%以下、より好ましくは0.1モル%以上8モル%以下、さらに好ましくは0.5モル%以上7モル%以下含む。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)が含む構成単位(iii)の割合が上記範囲内であると、該重合体を含む熱可塑性樹脂組成物(X)は室温付近での柔軟性を保持しやすくなる傾向がある。
【0040】
構成単位(iii)を導く非共役ポリエンの例には、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、および4-エチリデン-1,7-ウンデカジエンなどを含む鎖状非共役ジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-イソブテニル-2-ノルボルネン、シクロペンタジエン、およびノルボルナジエンなどを含む環状非共役ジエン、ならびに、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、および4-エチリデン-8-メチル-1,7-ナノジエンなどを含むトリエンなどが含まれる。これらのうち、特に構成単位(ii)を導くα-オレフィンがプロピレンであるときは、架橋効率を高める観点からは、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)および5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)が好ましい。構成単位(iii)は、これらのうち1つの化合物から導かれてもよいし、2以上の化合物から導かれてもよい。
【0041】
ただし、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、実質的に構成単位(i)および構成単位(ii)からなることが好ましい。
【0042】
〔4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の物性〕
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、以下の要件(a1)~(a7)から選ばれる1以上の要件を満たすことが好ましい。
【0043】
[要件(a1)]
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]は、好ましくは0.1dL/g以上5.0dL/g以下、より好ましくは0.5dL/g以上4.0dL/g以下、さらに好ましくは0.5dL/g以上3.5dL/g以下である。なお、上記極限粘度[η]は、後述する実施例に記載の条件で測定される。
上記極限粘度[η]が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を含有する熱可塑性樹脂組成物(X)は、シート状の成形物への成形が容易である。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の上記極限粘度[η]は、重合による製造中に系内に水素を添加して重合体の分子量や重合活性を制御することにより、上記範囲に調整することができる。
【0044】
[要件(a2)]
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布:Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上3.5以下、より好ましくは1.2以上3.0以下、さらに好ましくは1.5以上2.8以下である。なお、上記重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、後述する実施例に記載の条件で測定される。
上記Mw/Mnが上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、低分子量ポリマー、および低立体規則性ポリマーによる成形性の低下が生じにくい。このため、Mw/Mnが上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を含有する熱可塑性樹脂組成物(X)はシート状の成形物への成形が容易である。
また、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、好ましくは500以上10,000,000以上、より好ましくは1,000以上5,000,000以下、さらに好ましくは1,000以上2,500,000以下である。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)のMw/MnおよびMwは、例えば重合触媒としてメタロセン触媒を使用することで、上記範囲に調整することができる。
【0045】
[要件(a3)]
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238に準拠、230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.1~50g/10分、より好ましくは1~30g/10分、さらに好ましくは5~20g/10分である。メルトフローレートが前記範囲内にある4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を含有する熱可塑性樹脂組成物(X)は、成形性に優れる。
【0046】
[要件(a4)]
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)のJIS K7112に準拠して測定される密度は、好ましくは0.83g/cm3以上0.87g/cm3以下、より好ましくは0.83g/cm3以上0.865g/cm3以下、さらに好ましくは0.83g/cm3以上0.855g/cm3以下である。
上記密度が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、軽量であるため、使用者に負荷がかかりにくい。このため、上記密度が上記範囲である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を含有する熱可塑性樹脂組成物(X)を用いて折り曲げ部120を形成すると、マスクの使用者が違和感を生じにくい折り曲げ部120になりやすい。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の上記密度は、構成単位(i)~構成単位(iii)の組成比によって適宜調整することができる。
【0047】
[要件(a5)]
示差走査熱量測定(DSC)において、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の融点が観測されないことが好ましい。ここで、融点が観測されないとは、-50~200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。融点測定条件の詳細は、後述の実施例の項に記載したとおりである。融点が示差走査熱量計により観測されない4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を含有する熱可塑性樹脂組成物(X)は、室温付近で柔軟性を有するため、該熱可塑性樹脂組成物(X)を含む材料で製造した折り曲げ部120は、鼻の形状に変形させやすくなる。
【0048】
[要件(a6)]
10rad/sの周波数で、-40~150℃までの温度範囲において4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の動的粘弾性測定を行い、各温度でのtanδを温度の関数としてプロットした場合、tanδがピーク値となる温度が、好ましくは25℃以上40℃以下、より好ましくは28℃以上40℃以下、さらに好ましくは29℃以上38℃以下である。ここで、得られたプロットに複数のピークがある場合、0~60℃の範囲でtanδが最大値となる際の温度を、上記tanδがピーク値となる温度とする。なお、動的粘弾性測定の方法は実施例に記載の通りである。
tanδがピーク値となる温度が25℃以上40℃以下である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を用いると、熱可塑性樹脂組成物(X)のtanδがピーク値となる温度を、要件(x3)を満たす範囲に設定しやすい。
【0049】
[要件(a7)]
10rad/sの周波数で、-40~150℃までの温度範囲において4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の動的粘弾性測定を行い、各温度でのtanδを温度の関数としてプロットした場合、tanδのピーク値が、好ましくは0.5以上5.0以下であり、より好ましくは0.7以上3.5以下であり、さらに好ましくは1.0以上3.0以下である。ここで、得られたプロットに複数のピークがある場合、要件(a6)でtanδのピーク値とする温度(0~60℃の範囲でtanδが最大値となる際の温度)でのtanδの値を、上記tanδのピーク値とする。なお、動的粘弾性測定の方法は実施例に記載の通りである。
tanδのピーク値が上記範囲にある4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を用いると、熱可塑性樹脂組成物(X)のtanδのピーク値を、要件(x4)を満たす範囲に設定しやすい。
【0050】
〔4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法〕
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)は、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマーを、マグネシウム担持型チタン触媒またはメタロセン触媒などの適当な触媒の存在下で重合させて,製造することができる。重合は、溶解重合および懸濁重合などを含む液相重合法、ならびに気相重合法などから適宜選択して行うことができる。
【0051】
液相重合法では、液相を構成する溶媒として不活性炭化水素溶媒を用いることができる。上記不活性炭化水素溶媒の例には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、および灯油などを含む脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、およびメチルシクロヘキサンなどを含む脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどを含む芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、およびテトラクロロメタンなどを含むハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物などが含まれる。
また、液相重合法では、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマー自身を溶媒とする塊状重合とすることもできる。
【0052】
なお、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマーの共重合を段階的に行うことにより、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を構成する構成単位(i)~構成単位(iii)の組成分布を適当に制御することもできる。
【0053】
重合温度は、好ましくは-50℃以上200℃以下、より好ましくは0℃以上100℃以下、さらに好ましくは20℃以上100℃以下である。
重合圧力(ゲージ圧)は、好ましくは0.1MPa以上10MPa、より好ましくは0.1MPa以上5MPaである。
重合の際に、生成する共重合体の分子量や重合活性を制御する目的で水素を添加してもよい。添加される水素の量は、例えば、上記構成単位(i)~構成単位(iii)を導くモノマーの合計量1kgに対して、0.001NL以上100NL以下程度とすることができる。
【0054】
<無機物(B)>
無機物(B)は、無機化合物であれば特に限定はなく、公知のものが利用できる。無機物(B)の例として、カーボンブラックまたはグラファイトもしくはシランカップリング剤などにより表面処理が施されたカーボンブラック、微粉ケイ酸、シリカ(煙霧質シリカ、沈降性シリカ、珪藻土および石英などを含む)、アルミナ、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化チタン、三酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化バリウムおよび酸化カルシウムなどを含む酸化物系フィラー、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムなどを含む水酸化物系フィラー、珪酸アルミニウム(クレー)、珪酸マグネシウム(タルク)、マイカ、カオリン、珪酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズなどを含む珪酸塩系フィラー、珪藻土および石灰岩などを含む堆積岩系フィラー、モンモリロン石(モンモリロンナイト)、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミニアンバイデライト、ノントロン石、アルミニアンノントロナイト、サポー石(サポナイト)、アルミニアンサポー石、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、およびベントナイトなどを含む粘土鉱物系フィラー、フェライト、鉄およびコバルトなどを含む磁性系フィラー、銀、金、銅およびこれらの合金などを含む導電性フィラー、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、シリコンカーバイト、窒化ボロンなどが含まれる。
【0055】
無機物(B)としては、シリカ、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、および、タルクが好ましく、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、および、タルクがより好ましく、価格、性能、取扱い性、供給安定性等のバランスの点から、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、および、タルクが最も好ましい。
これらの無機物(B)は、1種単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
無機物(B)の平均粒子径は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)に無機物(B)を配合して得られる熱可塑性樹脂組成物(X)の加工性の点から、好ましくは0.01μm~100μm、より好ましくは0.01μm~80μm、さらに好ましくは0.01μm~50μmである。上記平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で求めた粒度分布曲線における、体積累積50%の粒径(d50)である。
【0057】
<熱可塑性樹脂組成物(X)中の4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と無機物(B)との割合>
本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)が含有する4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と無機物(B)との質量比(4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の質量/無機物(B)の質量、以下、単に「(A)/(B)」ともいう。)は、通常10/90~50/50、好ましくは15/85~50/50、より好ましくは20/80~50/50、さらに好ましくは25/75~45/55である。
言い換えると、本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)において、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と無機物(B)との合計を100質量部としたときに、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の量は、通常10~50質量部、好ましくは15~50質量部、より好ましくは20~50質量部、さらに好ましくは25~45質量部である。一方、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と無機物(B)との合計を100質量部としたときに、無機物(B)の量は、通常50~90質量部、好ましくは50~85質量部、より好ましくは50~80質量部、さらに好ましくは55~75質量部である。
(A)/(B)が上記範囲にあると、熱可塑性樹脂組成物(X)は、体温付近で容易に変形できるが、体温付近の環境で長時間置かれた場合に、応力が印加されなくても変形してしまうことを防ぐことができる。このため、(A)/(B)が上記範囲にある熱可塑性樹脂組成物(X)を含む材料で折り曲げ部120を形成すると、該折り曲げ部120は使用者が容易に変形できるが、使用者の長時間の使用により該折り曲げ部120が体温付近の温度に長時間おかれても変形しにくくなる。
【0058】
<熱可塑性樹脂組成物(X)に含まれるその他の成分>
熱可塑性樹脂組成物(X)は、必要に応じて、上述した以外の添加剤をさらに含んでいてもよい。
例えば、熱可塑性樹脂組成物(X)は、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤、防黴剤、抗菌剤、および軟化剤等の添加剤を含んでもよい。これらのその他の添加剤はそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
これらの添加剤の使用量の合計は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と無機物(B)との合計を100質量部として、0.001~10質量部とすることが好ましい。
なお、熱可塑性樹脂組成物(X)は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)以外の熱可塑性樹脂を含有してもよく、含有しなくてもよいが、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)以外の熱可塑性樹脂を含有しないことが好ましい。
【0059】
<熱可塑性樹脂組成物(X)の製造方法>
上記熱可塑性樹脂組成物(X)は、公知の方法で製造することができる。例えば、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)と、無機物(B)と、任意に含まれる上記その他の成分と、を混合して、熱可塑性樹脂組成物(X)とすることができる。このとき、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の溶融温度以上に加熱して混合してもよい。
【0060】
≪耳掛け部≫
耳掛け部130は、マスク本体110の左右両端に設けられた、紐状または帯状の部材であり、使用者の両耳に掛けてマスク100を保持可能に構成されている。耳掛け部130は、マスク本体110と同様の材料から形成することができる。耳掛け部130とマスク本体110とは、同一の材料からなることが好ましい。
【0061】
≪マスクの製造方法≫
マスク100は、マスク本体110に折り曲げ部120および耳掛け部130を接着させて、製造することができる。これらの接着方法は特に限定されず、折り曲げ部120および耳掛け部130の材料によって適宜選択することができる。接着方法の例には、接着剤による接着、熱融着、超音波融着、縫合などが含まれる。
また、耳掛け部130は、マスク本体110の左右の端部が環状に形成されるようにマスク本体110に切れ込みを入れて、耳掛け部130とマスク本体110とを一体的に形成してもよい。
【実施例0062】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0063】
<測定条件等>
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の物性の測定方法は、以下のとおりである。
【0064】
〔組成〕
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)中の各構成単位(4-メチル-1-ペンテン、α-オレフィン、および非共役ポリエン)の含有率(モル%)は、以下の条件で13C-NMR測定を行い、13C-NMRスペクトルを解析することにより求めた。
・測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
・観測核:13C(125MHz)
・シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
・パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
・繰り返し時間:5.5秒
・積算回数:1万回以上
・溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
・試料濃度:55mg/0.6mL
・測定温度:120℃
・ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
【0065】
〔極限粘度[η]〕
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計を用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。
具体的には、20mgの4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)とした(下記の式(1)参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)・・・(1)
【0066】
〔重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)〕
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、および重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、下記条件でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、標準ポリスチレン換算法を用いて算出した。
・測定装置:GPC(ALC/GPC 150-C plus型、示差屈折計検出器一体型、Waters製)
・カラム:GMH6-HT(東ソー(株)製)2本、およびGMH6-HTL(東ソー(株)製)2本を直列に接続
・溶離液:o-ジクロロベンゼン
・カラム温度:140℃
・流量:1.0mL/min
・サンプル濃度:1wt%
・注入量 :10μL
【0067】
〔メルトフローレート(MFR)〕
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)のメルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)は、ASTM D1238に準拠し、230℃で2.16kgの荷重にて測定した。単位は、g/10分である。
【0068】
〔密度〕
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して、測定した。
【0069】
〔融点(Tm)〕
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の融点(Tm)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)を用いて測定した。約5mgの4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)を、測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで200℃まで加熱する。重合体を完全に融解させるために、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで-50℃まで冷却した。-50℃で5分間置いた後、10℃/minで200℃まで2度目の加熱を行ない、この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を重合体の融点(Tm)とした。なお、複数のピークが検出される場合には、最も高温側で検出されるピークを採用した。
【0070】
〔動的粘弾性〕
動的粘弾性の測定では、測定対象とする4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)からなる厚さ3mmのプレスシートを測定試料として用いた。測定試料から、動的粘弾性測定に必要な45mm×10mm×3mmの短冊片を切り出した。粘弾性測定装置(MCR301、ANTONPaar社製)を用いて、10rad/sの周波数で-40~150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、0~60℃の範囲でガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)がピーク値(最大値)となる際の温度(以下「ピーク温度」ともいう。)、およびその際の損失正接(tanδ)の値を測定した。
【0071】
<合成例:4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)の合成>
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn-ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、および450mlの4-メチル-1-ペンテンを23℃で装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、オートクレーブ内の全圧(ゲージ圧)が0.40MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、および0.01mmolのジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlを、オートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。
次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、100℃で12時間乾燥させて、36.9gの粉末状の4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A-1)(以下、「共重合体(A-1)」)を得た。得られた共重合体(A-1)の各種物性の測定結果を表1に示す。ここで、表1中、「4MP1」とあるのは4-メチル-1-ペンテンを、「AO」とあるのはα-オレフィンをそれぞれ指している。
【0072】
【0073】
<原材料>
以下の実施例および比較例で使用した原材料は以下のとおりである。
【0074】
[4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)]
・「共重合体(A-1)」: 上記合成例で合成した共重合体(A-1)を4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)として用いた。
【0075】
[無機物(B)]
・「無機物(B-1)」: 重質炭酸カルシウム(カルファイン株式会社製、KS-1000、平均粒子径4.2μm)
【0076】
[その他の樹脂]
・「TPV」: 熱可塑性エラストマー(三井化学株式会社製、ミラストマー5030NS)
・「PE」: ポリエチレンシート(三井化学株式会社製、商品名テクノロート(登録商標))
【0077】
<実施例>
[熱可塑性樹脂組成物(X-1)の調製]
共重合体(A-1)30質量部と、無機物(B-1)70質量部とを混合し、二次抗酸化剤および耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートを0.2質量部配合した。然る後に、(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT-30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒してペレット化することにより、熱可塑性樹脂組成物(X-1)のペレットを得た。
【0078】
[プレスシート(厚さ3mm)の作成]
熱可塑性樹脂組成物(X-1)のペレットを熱プレス成形機にてプレス加工した(プレス温度:200℃、冷却温度:20℃、予熱時間:5分、加圧溶融時間:5分)。プレス加工の結果、熱可塑性樹脂組成物(X-1)について、長さ80mm、幅80mm、厚さ3mmのプレスシートを得た。
【0079】
[密度]
上記プレスシートから切り出した試料(20mm×20mm×3mmの短冊片)を用いて、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して、熱可塑性樹脂組成物(X-1)の密度を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0080】
〔動的粘弾性測定〕
熱可塑性樹脂組成物(X-1)の動的粘弾性測定は、測定試料を熱可塑性樹脂組成物(X-1)のプレスシート(厚さ3mm)から長さ45mm、幅10mm、厚さ3mmに切り出して作成した以外は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(A)の動的粘弾性測定と同様に行った。得られた結果を表2に示す。
【0081】
[ショアーD硬度の測定]
熱可塑性樹脂組成物(X-1)の上記プレスシート(厚さ3mm)を用いて、JIS K6253に準拠してショアーD硬度計でショアーD硬度(押針接触開始直後、および押針接触開始から15秒後)を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0082】
[マスクの作成]
熱可塑性樹脂組成物(X-1)のペレットを熱プレス成形機にてプレス加工した(プレス温度:200℃、冷却温度:20℃、予熱時間:5分、加圧溶融時間:5分)。プレス加工の結果、熱可塑性樹脂組成物(X-1)について、長さ100mm、幅5mm、厚さ0.5mmのシートを得た。ノーズフィッター付きの市販のマスクからノーズフィッターを除去し、該マスクのノーズフィッターが設置されていた部分(ノーズフィット部分)に得られたシートを挿入し、170℃で熱圧着させることで試験用のマスクを得た。なお、ノーズフィット部分は折り曲げ部120に相当する。
【0083】
[密着性の評価]
上記方法で作成した試験用のマスクを被験者5名に装着してもらい、ノーズフィット部分の変形に要する力の強さと、鼻部分への装着感とに基づいて、下記評価基準で評価してもらった。〇が最多回答であったため(被験者のうち5人が〇と評価)、熱可塑性樹脂組成物(X-1)をノーズフィット部分に用いたマスクの密着性を〇と評価した。得られた結果を表2に示す。
〔密着性の評価基準〕
〇:ノーズフィット部分が軽い力で変形し、ノーズフィット部分が被験者の鼻に密着した。
△:ノーズフィット部分は軽い力で変形したがノーズフィット部分が被験者の鼻に密着しなかった、または、ノーズフィット部分を変形させるのに力が必要だがノーズフィット部分が被験者の鼻に密着した。
×:ノーズフィット部分を変形させるのに力が必要で、かつ、ノーズフィット部分が被験者の鼻に密着しなかった。
【0084】
[長時間装着時の変形の評価]
上記方法で作成した試験用のマスクを被験者5名に装着してもらい、各被験者について装着直後のマスクの形状を記録した。その後、12時間にわたってマスクを装着してもらい、各マスクについて被験者が12時間装着した後の形状と、装着直後の形状とを比較した。さらに、各被験者に対し、マスクの装着中にノーズフィット部分の変形に起因する違和感を持ったかについての聞き取り調査を行った。聞き取り調査では、被験者のうち4人が「違和感を持たなかった」と評価し、1人の被験者は「違和感があった」と評価した。12時間装着後の形状と装着直後の形状との比較では、いずれの被験者についても、ノーズフィット部分の変形がみられないか、変形量がわずか(変形量が5mm以下)であった。そこで、熱可塑性樹脂組成物(X-1)をノーズフィット部分に用いたマスクの長時間使用時の変形に対する評価を〇とした。得られた結果を表2に示す。
なお、長時間装着後と装着直後の間でノーズフィット部分の変形量が5mm以下である場合、ノーズフィット部分は実質的に変形していないので、ノーズフィット部分の変形による違和感が発生していないと判断した。
〔長時間装着時の変形についての評価基準〕:
〇:ノーズフィット部分の変形量が5mm以下であり、被験者はマスクを装着し続けてもノーズフィット部分の変形に起因する違和感を持たなかった。
△:ノーズフィット部分の変形量が5mmを超えて15mm以下であり、かつ、被験者はマスクを装着し続けてもノーズフィット部分の変形に起因する違和感を持たなかった。
×:ノーズフィット部分の変形量が5mmを超えて15mm以下であり、かつ、被験者はノーズフィット部分の変形に起因した違和感を持った、または、ノーズフィット部分の変形量が15mmを超えた。
【0085】
<比較例1>
共重合体(A-1)100質量部に、二次抗酸化剤および耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートを0.2質量部配合し、実施例と同様の方法で、ペレット化した。得られたペレットを用いて、実施例と同様の方法でプレスシートの作成、密度測定および動的粘弾性測定、マスクの作成、マスクについての評価を行った。比較例1のプレスシート(3mm)の硬度は実施例で用いた熱可塑性樹脂組成物(X-1)の硬度よりも大幅に低かったため、押針接触開始直後についてはショアーD硬度とショアーA硬度とを測定したが、押針接触開始から15秒後では、プレスシートの硬度がショアーD硬度計での測定に適さない程度にまで低下したため、参考値としてショアーA硬度を測定した。なお、ショアーA硬度の測定はJIS K6253に準拠した方法で行った。得られた結果を表2に示す。なお、表2中のNAは、測定対象の硬度がショアーD硬度計での測定に適した範囲にないことを示す。括弧中に示した値は参考値として測定したショアーA硬度であり、数値の前のAはショアーA硬度であることを示す。
【0086】
<比較例2>
TPV100質量部に、二次抗酸化剤および耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートを0.2質量部配合し、実施例と同様の方法で、ペレット化した。得られたペレットを用いて、実施例と同様の方法で、プレスシートの作成、密度測定および動的粘弾性測定、マスクの作成、マスクについての評価を行った。比較例2のプレスシート(3mm)の硬度はショアーD硬度計での測定に適さない程度に低かったため、押針接触開始直後と押針接触開始から15秒後のいずれについても参考値としてショアーA硬度を測定した。比較例2においても、ショアーA硬度の測定はJIS K6253に準拠した方法で行った。得られた結果を表2に示す。
【0087】
<比較例3>
PE100質量部に、二次抗酸化剤および耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートを0.2質量部配合し、実施例と同様の方法で、ペレット化した。得られたペレットを用いて、実施例と同様の方法で、プレスシートの作成、各種物性の測定、マスクの作成、マスクについての評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0088】