IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ YSEC株式会社の特許一覧 ▶ 長岡パワーエレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-バッテリ充電システム 図1
  • 特開-バッテリ充電システム 図2
  • 特開-バッテリ充電システム 図3
  • 特開-バッテリ充電システム 図4
  • 特開-バッテリ充電システム 図5
  • 特開-バッテリ充電システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025980
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】バッテリ充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20230216BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230216BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20230216BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230216BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20230216BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
H02J7/34 B
B64C39/02
B64D27/24
H02J7/00 302C
H02J7/02 J
H02M3/155 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131494
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】511024399
【氏名又は名称】YSEC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514007047
【氏名又は名称】長岡パワーエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】大沼 喜也
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 慧
(72)【発明者】
【氏名】宅間 春介
(72)【発明者】
【氏名】山内 慶次郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 和幸
(72)【発明者】
【氏名】黒川 将太
【テーマコード(参考)】
5G503
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA11
5G503CC08
5G503DA04
5G503DA17
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5H730AA17
5H730AS01
5H730AS03
5H730AS13
5H730AS17
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB81
5H730BB88
5H730CC01
5H730DD04
5H730DD16
5H730FD01
5H730FD41
5H730FG05
5H730FG22
(57)【要約】
【課題】冗長性を向上可能なバッテリ充電システムを提供すること。
【解決手段】バッテリ充電システム1は、ジェットエンジン101と、ジェットエンジン101の起動によって発電を行うエンジン発電機104と、エンジン発電機104により充電可能な低圧バッテリ102を電源として推進力を発生させる複数のプロペラ装置103と、を有するUAV100に設けられ、低圧バッテリ102を充放電し、複数のプロペラ装置103に、それぞれ低圧バッテリ102が設けられ、複数の低圧バッテリ102を、それぞれの電圧に応じて、個々に充放電可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料エンジンと、当該燃料エンジンの起動によって発電を行う発電機と、当該発電機により充電可能なバッテリを電源として推進力を発生させる複数の電動機と、を有する無人航空機に設けられ、
前記バッテリを充放電するバッテリ充電システムであって、
複数の前記電動機に、それぞれ前記バッテリが設けられ、
複数の前記バッテリを、それぞれの電圧に応じて、個々に充放電可能なバッテリ充電システム。
【請求項2】
複数の前記電動機にそれぞれ接続され、2つのスイッチング素子を有し前記バッテリに接続されるハーフブリッジ回路が、カスケード接続され、
前記2つのスイッチング素子のスイッチング動作を制御するスイッチング制御部と、
前記ハーフブリッジ回路毎に、充放電の態様を示すデューティを割り当てるデューティ割当部と、を備え、
前記スイッチング制御部は、前記デューティ割当部によって割り当てられたデューティに基づいて各前記ハーフブリッジ回路の前記2つのスイッチング素子をスイッチング動作させ、
前記デューティ割当部は、
所定の周期毎に、前記バッテリの電圧に基づいて、各前記ハーフブリッジ回路に対して、デューティとして、それぞれ、前記バッテリを充電する第1状態と、前記バッテリを放電する第2状態と、PWM動作を行う第3状態と、のいずれかを割り当て、
複数の前記ハーフブリッジ回路のいずれか1つに、前記第3状態を割り当てることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ充電システム。
【請求項3】
前記デューティ割当部は、
N個の前記バッテリの電圧を昇順に並び替え、
i(0≦i≦N、i,Nは整数)番目の前記バッテリまでの電圧の総和が、前記モジュラーマルチレベルコンバータの入力電圧よりも低い場合に、i+1番目の前記バッテリに接続されている前記ハーフブリッジ回路に前記第3状態を割り当て、
i番目までの前記バッテリに接続されている前記ハーフブリッジ回路に前記第1状態を割り当て、
i+2番目以降の前記バッテリに接続されている前記ハーフブリッジ回路に前記第2状態を割り当てることを特徴とする請求項2記載のバッテリ充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機(UAV)に搭載されたバッテリの充電制御を行うバッテリ充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン技術を活用して、UAV(unmanned aerial vehicle)により、人が行けないような場所の作業、例えば建築物の点検や害鳥対策などを行うことが提案されている。UAVは、本体にバッテリを搭載しており、電池残量がなくなるまで飛行作業を行うことが可能であり、飛行作業後にバッテリを充電することにより、次の飛行作業が可能になる。
【0003】
UAVの飛行時間はバッテリ容量に依存するため、バッテリを増加させることによりUAVの飛行時間を増加させることが可能になる。しかしながら、バッテリを増加させると、UAV本体の重量も増加するため、UAVの航続時間を増加させることには限界がある。
【0004】
また、近年、エンジン発電機とバッテリを搭載したUAVが提案されている。バッテリに使用される蓄電池のエネルギー密度よりも、エンジン発電機に使用される燃料のエネルギー密度の方が大きいため、飛躍的に航続時間を延ばすことが可能である。従来、この種の技術として、特許文献1に記載された技術がある。この特許文献1には、複数のロータを回転させる駆動源としてエンジンと、バッテリから電力が供給されるモータと、を備えており、エンジンの駆動中にモータを従動させ、このモータが発生させた電力によりバッテリが充電される無人航空機について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6696658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の無人航空機は、一つのバッテリにより、複数のロータ(プロペラ)を回転させるため、この一つのバッテリに異常が発生した場合、全てのプロペラの回転が弱くなって停止してしまい、無人航空機が墜落するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような問題点に対して鑑みなされたものであり、冗長性を向上可能なバッテリ充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、次の構成を備えている。
【0009】
(1) 燃料エンジンと、当該燃料エンジンの起動によって発電を行う発電機と、当該発電機により充電可能なバッテリを電源として推進力を発生させる複数の電動機と、を有する無人航空機に設けられ、
前記バッテリを充放電するバッテリ充電システムであって、
複数の前記電動機に、それぞれ前記バッテリが設けられ、
複数の前記バッテリを、それぞれの電圧に応じて、個々に充放電可能なバッテリ充電システム。
【0010】
(1)の発明によれば、複数の電動機を有する無人航空機において、複数の電動機にそれぞれバッテリを設けた。これにより、複数の電動機を1つのバッテリで駆動させる場合に比べて、バッテリを小さくすることができる。
【0011】
また、仮に1つの電動機に設けられたバッテリに異常が生じても、他の電動機を動作可能であり、高い冗長性を持たせることが可能となる。
したがって、冗長性を向上可能なバッテリ充電システムを提供できる。
【0012】
更に、複数の電動機を有する無人航空機が航続する場合、複数の電動機にかかる負荷はそれぞれ異なるので、ある時点において、それぞれの電動機に設けられたバッテリの電池残量(電圧)も異なる。
(1)の発明によれば、複数のバッテリのそれぞれの電圧に応じて、個々に充放電可能としたのでの、複数のバッテリを効率的に充電することが可能となる。
【0013】
(2) (1)のバッテリ充電システムにおいて、
複数の前記電動機にそれぞれ接続され、2つのスイッチング素子を有し前記バッテリに接続されるハーフブリッジ回路が、カスケード接続され、
前記2つのスイッチング素子のスイッチング動作を制御するスイッチング制御部と、
前記ハーフブリッジ回路毎に、充放電の態様を示すデューティを割り当てるデューティ割当部と、を備え、
前記スイッチング制御部は、前記デューティ割当部によって割り当てられたデューティに基づいて各前記ハーフブリッジ回路の前記2つのスイッチング素子をスイッチング動作させ、
前記デューティ割当部は、
所定の周期毎に、前記バッテリの電圧に基づいて、各前記ハーフブリッジ回路に対して、デューティとして、それぞれ、前記バッテリを充電する第1状態と、前記バッテリを放電する第2状態と、PWM動作を行う第3状態と、のいずれかを割り当て、
複数の前記ハーフブリッジ回路のいずれか1つに、前記第3状態を割り当てることを特徴とする。
【0014】
ここで、燃料エンジンの起動によって発電を行う発電機は交流の電気を発電することから、バッテリの充電に利用するためには、エンジン発電機が生成した交流の電気を直流に変換するAC-DCコンバータと、バッテリに対して安定した充電電流を供給するためのDC-DCコンバータが必要になる。DC-DCコンバータは、出力を安定させるために、パルス列のオンとオフの一定周期を作り、スイッチング素子のオンの時間幅を変化させるPWM(Pulse Width Modulation)が適用される。
【0015】
このような、PWMを適用することで、インダクタの電流リプルを大きく低減できる。特に、直流インダクタが大きい場合には、電流リプルの影響を無視することが可能になる。しかし、UAVの軽量化のために直流インダクタのインダクタンス値を小さくすると、電流リプルの影響が無視できなくなり、電流リプルが大きくなると充電制御に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0016】
(2)の発明によれば、所定の周期毎に、各ハーフブリッジ回路に対して、バッテリを充電する第1状態のデューティ、PWM(Pulse Width Modulation)動作する第3状態のデューティ又はバッテリを放電する第2状態のデューティのいずれかを割り当てる。そして、複数のハーフブリッジ回路のいずれか1つに、第3状態を割り当てる。これにより、複数のハーフブリッジ回路がカスケード接続された回路全体におけるスイッチング動作を低減することが可能になり、それに伴い、インダクタの電流リプルを大きく低減することが可能になる。そして、インダクタの電流リプルを大きく低減することが可能であるため、大型のインダクタを搭載する必要がなくなり、その分、UAVの軽量化を図ることができる。
【0017】
(3) (2)のバッテリ充電システムにおいて、
前記デューティ割当部は、
N個の前記バッテリの電圧を昇順に並び替え、
i(0≦i≦N、i,Nは整数)番目の前記バッテリまでの電圧の総和が、前記モジュラーマルチレベルコンバータの入力電圧よりも低い場合に、i+1番目の前記バッテリに接続されている前記ハーフブリッジ回路に前記第3状態を割り当て、
i番目までの前記バッテリに接続されている前記ハーフブリッジ回路に前記第1状態を割り当て、
i+2番目以降の前記バッテリに接続されている前記ハーフブリッジ回路に前記第2状態を割り当てることを特徴とする。
【0018】
(3)の発明によれば、電圧が比較的低いバッテリのハーフブリッジ回路に対して、バッテリを充電する第1状態が割り当てられ、電圧が比較的高いバッテリのハーフブリッジ回路に対して、バッテリを放電する第2状態が割り当てられ、その中間のバッテリのハーフブリッジ回路に対して、PWM動作を行う第3状態が割り当てられる。これにより、各バッテリの電圧値が略等しくなるようにバランスを取りつつ、インダクタの電流リプルを抑制することが可能になる。そして、インダクタの電流リプルを大きく低減することが可能であるため、大型のインダクタを搭載する必要がなくなり、その分、UAVの軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、冗長性を向上可能なバッテリ充電システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態におけるバッテリ充電システム1を備えたUAV100の回路構成を示すブロック図である。
図2】バッテリ電圧を昇順に並べ直すのソートアルゴリズムを示す説明図である。
図3】デューティの割り当てに使用する式を示す図である。
図4】コンバータ制御部107の構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態のシミュレーションにおける各セルの状態例を示す図である。
図6】全セル電圧がほぼ等しくなる領域のスイッチング波形を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のバッテリ充電システムの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施形態におけるバッテリ充電システム1を備えたUAV100の回路構成を示すブロック図である。
【0023】
UAV100は、ジェットエンジン101と、低圧バッテリ102と、低圧バッテリ102を駆動源として回転する複数のプロペラ装置103と、を備えている。低圧バッテリ102は、1つのプロペラ装置103に対して1つ設けられている。
【0024】
また、UAV100は、ジェットエンジン101を始動する為の始動機とエンジン始動後に電気を発電する為の発電機が一体になったエンジン発電機104と、エンジン発電機104が発電した交流の電気を直流の電気に変換するAC-DCコンバータ105と、AC-DCコンバータ105からの直流電圧から低圧バッテリ102を充電する充電電圧を生成して低圧バッテリ102に供給するバッテリ充電システム1と、低圧バッテリ102から出力される直流の電気を交流の電気に変換してプロペラ装置103に供給するDC-ACコンバータ110と、を備えている。
【0025】
バッテリ充電システム1は、AC-DCコンバータ105に接続されたDC-DCコンバータ106と、DC-DCコンバータ106を制御するコンバータ制御部107と、を備えている。
【0026】
DC-DCコンバータ106は、AC-DCコンバータ105の出力となる正端子と負端子に接続されるキャパシタ10と、AC-DCコンバータ105の正端子に接続される直流インダクタ12と、直流インダクタ12とAC-DCコンバータ105の負端子に接続されるモジュラーマルチレベルコンバータ(以下、「MMC」ともいう。)13と、スイッチング制御部14と、を備える。
【0027】
MMC13は、2つのスイッチング素子20、21を含むハーフブリッジ回路が、複数含まれており、これらがカスケード接続された構成である。以下、ハーフブリッジ回路とこのハーフブリッジ回路に接続された低圧バッテリ102とを併せてセルと称する。
【0028】
ハーフブリッジ回路からの出力は、コンバータ制御部107によってハーフブリッジ回路毎に割り当てられたデューティに基づいて、スイッチング制御部14がスイッチング素子20、21をスイッチング制御することによって、低圧バッテリ102に送られる。なお、本実施形態においては、N個(Nは1以上の整数)のセルを備えており、それぞれをセル(1)、セル(2)、・・・、セル(N)と称する場合がある。
このように、DC-DCコンバータ106は、バッテリ充電システム1からの直流電圧を、低圧バッテリ102に供給する。
【0029】
コンバータ制御部107は、DC-DCコンバータ106に対して、直流電圧Vdsの値が所定の範囲内である場合、電力制御を実行し、直流電圧Vdcの値が所定の範囲を逸脱している場合、電圧制御を実行する。これにより、コンバータ制御部107は、負荷変動時に直流電圧を安定化しつつ低圧バッテリ102の充電制御を行うようになる。
【0030】
本実施形態においては、プロペラ装置103毎に低圧バッテリ102を接続しているため、1つの低圧バッテリ102の異常時でも、他の低圧バッテリ102によって他のプロペラ装置を動作させる可能であるため、高い冗長性が得られる。
ここで、各セルにおいてスイッチング素子20、21として用いる半導体素子の耐圧は、低圧バッテリ102の電圧に応じて決定される。本実施形態においては、スイッチング素子20、21として、低耐圧(>100V)のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)が適用可能である。また、各セル間を接続する配線が冗長であっても、直流インダクタ12のインダクタンスが支配的であり、配線インダクタンスの影響については無視することができる。このため、レイアウトの自由度が増加する。しかし、各セルの電力はUAV100の動作に依存しており、電力消費の激しい低圧バッテリ102もあれば、それ程でもない低圧バッテリ102が存在するため、ばらつきが発生する。
【0031】
そこで、本実施形態のコンバータ制御部107は、複数のセルにおいて、1つをアクティブセルとし、他のセルはスイッチング周期中全てオンもしくはオフに設定している。これにより、従来のPSPWM方式と異なり、本実施形態では、アクティブセルは1つであり、キャリアは一つとなる。なお、アクティブセルとは、スイッチング周期中にスイッチング動作を行うセルのことを指す。また、キャリアとはパルス幅変調(PWM)されたパルス波を生成するために用いる三角波のことを指す。
【0032】
具体的に、コンバータ制御部107は、各セルに「1,PWM,0」の三種類のデューティを割り当てる。この割り当てに、各セルのバッテリ電圧の大小関係を用いる。デューティ1が割り当てられたセルおいては、上側のスイッチング素子20がオンに、下側のスイッチング素子21がオフになる。すなわち、ハーフブリッジ回路から低圧バッテリ102が電圧印加されて充電が行われる。デューティ0が割り当てられたセルおいては、上側のスイッチング素子20がオフに、下側のスイッチング素子21がオンになる。すなわち、ハーフブリッジ回路から低圧バッテリ102が電圧印加されないため、充電は行われない。PWMが割り当てられたセルおいては、上側のスイッチング素子20及びスイッチング素子21がスイッチング動作を行う。すなわち、ハーフブリッジ回路から低圧バッテリ102が電圧印加されて充電が行われる。
【0033】
バッテリ電圧が高いセルのデューティを0とすることで、低圧バッテリ102はプロペラの負荷に応じて放電されるためバッテリ電圧が低下する。一方で、バッテリ電圧が低いセルのデューティを1とすることで、低圧バッテリ102は充電されてバッテリ電圧が上昇する。中間のバッテリ電圧を持つ1つのセルをアクティブセルとする。
【0034】
次に、バッテリ充電システム1による低圧バッテリ102の充電制御について説明する。
図2は、バッテリ電圧を昇順に並べ直すのソートアルゴリズムを示す説明図である。
図2に示す例において、セル(1)の電圧値をVb1、セル(2)の電圧値をVb2、セル(3)の電圧値をVb3、セル(4)の電圧値をVb4とする。
【0035】
図2(a)は、Vb1<Vb2<Vb4<Vb3の関係にある場合を示しており、セル(1)、セル(2)のデューティに1が割り当てられ、セル(4)にPWMが割り当てられ(アクティブセル)、セル(3)のデューティに0が割り当てられている。この場合、セル(1)、セル(2)及びセル(4)の低圧バッテリ102は充電され、セル(3)の低圧バッテリ102は放電される。
【0036】
その後、図2(b)に示すように、セル(1)及びセル(2)の電圧値Vb1,Vb2が高くなり、セル(3)の電圧値Vb3が低下する。
そして、セル(3)の電圧値Vb3よりもセル(4)の電圧値Vb4が高くなった場合に、各セルの電圧の順番が変わり、図2(c)に示すように、セル(3)にPWMが割り当てられてアクティブセルとなり、セル(4)のデューティとして0が割り当てられる。
【0037】
このように、各セルのバッテリ電圧のバランスをとるために、各セルのバッテリ電圧の大小関係に基づいてデューティの割り当てのローテーションが行われる。
【0038】
次に、図3を参照して、デューティの割り当てについて詳細に説明する。
ここで、MMC13のセル(低圧バッテリ102)の数はN個であるとする。
【0039】
バッテリ電圧が最小(V1)の低圧バッテリ102から、昇順でバッテリ電圧がi番目の低圧バッテリ102までの電圧の総和と、MMC13の入力電圧Vcellの関係が図3に示す式(1)の場合、1~iのセルのデューティd1~diは1となる。
【0040】
i=Nの場合、全てのセルのデューティが1となる。i<Nの場合、i+1番目のセルがアクティブセルとなり、i+1番目のセルのデューティは図3に示す式(2)で表すことができる。
【0041】
i+1<Nの場合、1~iのセルまでのデューティd1~diは1となり、i+1番目のセルがアクティブセルとなり、i+2~Nのセルのデューティが0となる。
【0042】
ソートの周期は、スイッチング素子20、21のスイッチング周期の1/10程度とする。ただし、スイッチング周期でソートを含めた演算処理が終了しない場合は、必要に応じてソート周期を長くする。ソート周期が長い場合、アクティブセルは、スイッチング損失による発熱によって、ほかのセルに対して温度上昇が顕著となる。アクティブセルのおける上下アームすなわちスイッチング素子20、21のスイッチング損失のバランスは、デューティによって変化する。そこで、上下アームの損失のバランスをとるようなデューティになるように、直流電圧指令値Vdcを調整する。ここで、定常状態でありVcell=Vdcかつ各バッテリ電圧が等しい場合、図3に示す式(2)を変形すると式(3)が得られる。この式(3)に基づいて、直流電圧指令値Vdcを調整する。
【0043】
図4は、コンバータ制御部107の構成を示すブロック図である。
コンバータ制御部107は、比例積分制御部30と、比例積分制御部31と、直流電圧ソート制御部32と、デューティ割当部33と、を備える。
【0044】
比例積分制御部30は、直流電圧値Vdcと、スイッチング制御部14の直流電圧指令値Vdc*との差分に基づき、比例積分(PI)演算により直流電流値Icを出力する。この直流電流値Icと、電力値Pと直流電圧値Vdcとに基づいて演算で求めた直流電流(P/Vdc)の電流値との偏差に基づいてインダクタ電流指令値IL*が求められる。
【0045】
比例積分制御部31は、インダクタ電流指令値IL*とインダクタ電流値ILとの差分に基づき、比例積分(PI)演算により直流電圧指令値VLを出力する。直流電圧指令値VLと各バッテリ電圧値(Vb1,・・・,Vbx,・・・,VbN)の総和との差分によりMMC13の入力電圧Vcellが得られる。
【0046】
直流電圧ソート制御部32は、各バッテリ電圧値(Vb1,・・・,Vbx,・・・,VbN)の大小関係をもとにクイックソートを用いてソートを行う。このときV1が最小となり、VNが最大となるようにソートする。
【0047】
デューティ割当部33は、ソートして得られた各バッテリ電圧の大小関係とMMCのセル入力電圧Vcellとにより、図3の式(1)、式(2)を用いてアクティブセルを決定するとともに、各セルのデューティ(d1,・・・,dN)を計算する。
【0048】
そして、スイッチング制御部14は、最後にデューティ割当部33によって割り当てられた各セルのデューティに基づいて、1つのキャリアとの比較でスイッチングパルスを生成して、スイッチング素子20、21を動作させる。
【0049】
次に、本実施形態を用いたシミュレーション結果について説明する。
シミュレーション条件は次の通りである。
定格電力:30kW
直流電圧:325V
スイッチング周波数:160kHz
バッテリ定格電圧:50V
セル数(N):8
インダクタ:33uH
直流キャパシタ:0.5mF
なお、三相PWMコンバータおよび各プロペラ負荷は電流源でシミュレーションしている。
【0050】
各セルは、各低圧バッテリ102に対して、電圧は、50Vを1p.u.として1.1~1.025(セル(1)~(4))までと、0.975~0.925p.u.(セル(5)~(8))までに、2.5%ずつ異なる初期電圧を与えている。つまり、初期状態において、Vb1>Vb2>Vb3>Vb4>Vb5>Vb6>Vb7>Vb8の関係にある。
【0051】
セル(1)は、バッテリ電圧が最大のため、デューティは0となり、Vb1は減少する。セル(2)は、二番目に大きいバッテリ電圧であり、図3に示す式(1)を満たしていないためPWM動作を行うアクティブセルになる。その他のセルは、すべてデューティ1となる。Vb1≠Vb2となると、セル(3)がアクティブセルになってPWM動作を行う。以下、アクティブとなるセルがセル(4)、セル(5)、・・・、セル(8)とシフトする。
【0052】
図5は、本実施形態のシミュレーションにおける各セルの状態例を示す図であり、パターン1に示すように、セル(7)がアクティブ(PWM)である場合、セル(1)~(6)がデューティ1で駆動し、セル(8)がデューティ0で駆動する。パターン2に示すように、セル(6)がアクティブ(PWM)である場合、セル(1)~(5)がデューティ1で駆動し、セル(7)、(8)がデューティ0で駆動する。パターン3に示すように、セル(5)がアクティブ(PWM)である場合、セル(1)~(4)がデューティ1で駆動し、セル(6)~(8)がデューティ0で駆動する。その結果、全セルの電圧値は、所定領域内でバランスが取れた状態となり、略等しい値となる。
【0053】
図6は、全セル電圧がほぼ等しくなる領域のスイッチング波形を示す拡大図である。図6により、8つのセルにおいて、アクティブセルが1つ、入力電圧と各セルの総和電圧の比よりデューティが1となるセルが6つ、デューティが0となるセルが1つと理論に基づいた動作が確認できる。
【0054】
また、上記のシミュレーションにおいて、ソートの更新周期は20kHzである。本実施形態によれば、1つのアクティブセルでのみスイッチングをしているため、バッテリ電圧がバランスするまでインダクタ電流リプルに変化はなく、常に160kHzのスイッチングリプルとなっている。具体的に、シミュレーションの結果、リプル率1.6%という結果を得た。これは、PWM動作するセルが1つであることによるものである。
【0055】
また、従来のPSPWMを適用した場合についてシミュレーションしたところ、リプル率は15.1%という結果を得た。これは、各セルの電圧の合計Vcellが等価な波形でないため、重ね合わせた時に各セルのキャリア周波数成分である20kHzが支配的になったためである。リプル成分は直流中間コンデンサに流入するため、許容リプル電流の増加、もしくは電圧リプル抑制のため、直流中間コンデンサの容量を大型にする必要がある。それに対して、本実施形態においては、従来のPSPWMを適用した場合よりもリプル率を1/10程度に低減することが確認できた。
【0056】
以上説明したように構成された本実施形態においては、プロペラ装置103毎に低圧バッテリ102を接続しているため、1つのバッテリの異常時でも他のプロペラ装置が動作可能であるため、高い冗長性が得られる。また、各セル間を接続する配線が冗長であっても、直流インダクタ12のインダクタンスが支配的であり配線インダクタンスの影響を無視できる。このためレイアウトの自由度を大きくすることが可能になる。
【0057】
また、各低圧バッテリの電力値は、UAV100の動作に依存するためばらつきが発生する。本実施形態においては、各低圧バッテリのバッテリ電圧を昇順にソートし、図3に示す式(1)及び式(2)に基づいて、各セルの状態を、デューティ1、PWM、もしくはデューティ0にすることにより、各低圧バッテリ102の電力値が略等しくなるようにバッテリ制御を行うことが可能になる。しかも、各セルにおいてPWM動作を行うアクティブセルが1つであるため、MMC13全体におけるスイッチング動作を低減することが可能になり、それに伴い、インダクタの電流リプルを大きく低減することが可能になる。このように、本実施形態においては、UAV100の動作に依存するプロペラ負荷のアンバランスを考慮し、各低圧バッテリの電圧値が略等しくなるようにバランスを取りつつ、インダクタの電流リプルを抑制することが可能になる。しかも、インダクタの電流リプルを大きく低減することが可能であるため、大型のインダクタを搭載する必要がなくなり、その分、UAVの軽量化を図ることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限るものではない。
【符号の説明】
【0059】
1 バッテリ充電システム
10 キャパシタ
12 直流インダクタ
13 モジュラーマルチレベルコンバータ(MMC)
14 スイッチング制御部
20、21 スイッチング素子
30、31 比例積分制御部
32 直流電圧ソート制御部
33 デューティ割当部
100 UAV
101 ジェットエンジン
102 低圧バッテリ
103 プロペラ装置
104 エンジン発電機
105 AC-DCコンバータ
106 DC-DCコンバータ
107 コンバータ制御部
110 DC-ACコンバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6