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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025989
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】プローブカードの検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20230216BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
G01R31/28 K
H01L21/66 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131520
(22)【出願日】2021-08-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】521356415
【氏名又は名称】有限会社ケニックシステム
(71)【出願人】
【識別番号】521356426
【氏名又は名称】有限会社T・I・M
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 研一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 茂之
【テーマコード(参考)】
2G132
4M106
【Fターム(参考)】
2G132AC03
2G132AD15
2G132AF02
2G132AJ05
2G132AK03
2G132AL04
2G132AL09
2G132AL12
4M106DD10
4M106DD18
(57)【要約】
【課題】プリント基板を検査するプローブカードを検査する検査装置において、プローブピンの本数の増大、微細化及び高密度化に対応して、プローブピンの損傷を抑えながら、検査精度の向上及び検査時間の短縮を実現することにある。
【解決手段】検査装置は、配設された複数のプローブピン51を有するプローブカード50を検査する。検査装置は、複数のプローブピン51に接触される均一な抵抗率を有する抵抗箔11と、抵抗箔に所定方向に沿って電位勾配を発生させる電源回路14と、複数のプローブピン各々との電位に基づいて複数のプローブピン各々の位置を計算する座標計算部39とを具備する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電検査対象上の複数箇所に接触するようにプローブプレートに配設される複数のプローブピンが、複数の導線を介してコネクタの複数のコンタクトにそれぞれ接続されてなるプローブカードを検査するための検査装置において、
前記複数のプローブピンに接触される矩形形状の均一な抵抗率を有する抵抗箔がベース板に貼着され、前記抵抗箔の対辺に短冊形の一対の電極がそれぞれ接続されてなるセンサ板と、
前記抵抗箔に前記対辺に垂直な方向に沿って電位勾配を発生させるために前記一対の電極間に電圧を印加する電源部と、
前記コンタクトを介して前記複数のプローブピンのうち一つの基準ピンに繋がるコンタクトと他のプローブピン各々に繋がるコンタクトとの電位差を検出する検出部と、
前記センサ板を前記プローブプレートに対して中心線が前記プローブプレートのX軸に平行になるように配置した状態で前記検出部により検出した電位差に基づいて前記基準ピンに対する前記他のプローブピン各々の前記X軸と平行な方向に関する距離を計算し、前記センサ板を前記プローブプレートに対して前記中心線が前記プローブプレートのY軸に平行になるように配置した状態で前記検出部により検出した電位差に基づいて前記基準ピンに対する前記他のプローブピン各々の前記Y軸と平行な方向に関する距離を計算するとともに、前記基準ピンの既知のXY座標を前記X軸と平行な方向に関する距離と前記Y軸と平行な方向に関する距離とに従って前記X軸と前記Y軸とに関してシフトすることにより前記他のプローブピン各々のXY座標を計算する座標計算部と、
前記プローブピン各々に関する前記XY座標に基づいて、前記プローブピンに対応するピンマークの分布を作成する分布作成部と、
前記作成された分布を、前記複数のプローブピンに関する設計上の分布に重ねて外部のディスプレイに表示させる表示制御部とを具備する、検査装置。
【請求項2】
前記センサ板を板面に垂直な垂直軸周りに回転する回転機構をさらに備える、請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記センサ板を前記垂直軸に沿って移動する直動機構をさらに備える、請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
前記抵抗箔は、温度による抵抗値変化率がゼロ又はそれに近似する値を示す、請求項1記載の検査装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記基準ピンに対応する前記コンタクトに対する接続を固定し、前記他のプローブピンに対応する前記コンタクトに対する接続を順番に切り替えるためのスキャナボードと、前記基準ピンに対応する前記コンタクトと前記切り替えられた前記他のプローブピンに対応する前記コンタクトとの間の電位差をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器とを有する、請求項1記載の検査装置。
【請求項6】
前記分布作成部は、前記ピンマークに前記コンタクトの配列番号を付記する、請求項1記載の検査装置。
【請求項7】
前記分布作成部は、前記ピンマークを前記コンタクトの配列番号の順番に従って連結線により連結する、請求項1記載の検査装置。
【請求項8】
配設された複数のプローブピンを有するプローブカードを検査するための検査装置において、
前記複数のプローブピンに接触される均一な抵抗率を有する抵抗箔と、
前記抵抗箔に所定方向に沿って電位勾配を発生させる電源と、
前記複数のプローブピン各々との電位に基づいて前記複数のプローブピン各々の位置を計算する計算部とを具備する、検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プリント基板や半導体ウェハー等の通電検査対象の通電検査用のプローブカードを検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板や半導体ウェハー等の通電検査対象は実装前に必ず全ての製品に対して通電検査を実施する。なおここでは、通電検査対象としてプリント基板を例に説明する。プリント基板にはミクロン単位で数百~数千カ所の配線、ランド、パッドなど多くの要素が形成されており、これら配線、ランド、パッドなどに対して予め指定された検査ポイントにおいて設計通りに通電するか確認する。数百~数千カ所の検査ポイントを1カ所ずつ検査していると、1つのプリント基板の通電検査完了までに長い時間が必要となるため、一度に全ての検査ポイントを検査するための専用の検査治具(プローブカード)が用いられている。プローブカードは、複数の検査ポイントに接触するように、それらのレイアウトに応じてプローブプレートに複数の導電ピン(プローブピン)が配設されてなる。
【0003】
検査ポイントは数千箇所に及ぶことも多く、それに応じて数千本のプローブピンがプローブプレートに装備される。数千本にも及ぶプローブピンに対して、コネクタのコンタクトは予め対応付けられており、プローブピンをそれぞれ対応するコンタクトに導線で個々に接続する作業は手作業にならざるを得ず、配線ミスが誘発されやすい。
【0004】
このような配線ミスの他にも、プローブカードの不具合として、プローブピンの位置が予定位置からずれている、導線とプローブピンとの接続の不適切や断線によりプローブピンがコネクタのコンタクトに接続されていないなど様々な事態が起こり得る。
【0005】
プローブカードはプリント基板の不良を検出する非常に重要な部材であるため、不具合は許されない。そのため、プローブカードに不具合がないかロボットアームで通電検査をしている。
【0006】
しかし最近プリント基板の微細化が進み、1mmに10本以上の高い密度でプローブピンをレイアウトすることが要求される状況になってきた。それによりロボットでの検査も限界にきている。今後はこれまで以上にプリント基板が微細化することは間違いない状況である。
【0007】
プローブカードに不具合が発生するとプリント基板の通電検査も全て再検査となってしまうため、生産効率の悪化やコスト圧迫に直結してしまう。特にスマートフォンなど一般消費者向けの製品に実装するプリント基板は大量生産されており、一つの不具合で生産体制に影響が大きいことから専用のプローブカードを確実かつ短時間で検査できる装置へのニーズが高まっている。
【0008】
ロボットでプローブカードのプローブピンの先端と、コネクタのコンタクトとの双方に探触子を当てて、通電を検査していた。しかしプローブピン同士の間隔が70μmを切ったあたりから、この方法だと隣のプローブピンに触ってしまう事態や、プローブピンを折るなど損傷させてしまう問題が多発している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
目的は、プリント基板を検査するプローブカードを検査する検査装置において、プローブピンの本数の増大、微細化及び高密度化に対応して、プローブピンの損傷を抑えながら、検査精度の向上及び検査時間の短縮を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態に係る検査装置は、プリント基板や半導体ウェハー等の通電検査対象上の複数箇所に接触するようにプローブプレートに配設される複数のプローブピンが、複数の導線を介してコネクタの複数のコンタクトにそれぞれ接続されてなるプローブカードのプローブピンを検査する。通電検査対象としてここではプリント基板を例に説明する。検査装置は、複数のプローブピンに接触される矩形形状の均一な抵抗率を有する抵抗箔がベース板に貼着され、抵抗箔の対辺に短冊形の一対の電極がそれぞれ接続されてなるセンサ板を有する。電源部は、抵抗箔に対辺に垂直な方向に沿って電位勾配を発生させるために一対の電極間に電圧を印加する。検出部は、コンタクトを介して複数のプローブピンのうち一つの基準ピンに繋がるコンタクトと他のプローブピン各々に繋がるコンタクトとの電位差を検出する。座標計算部は、センサ板をプローブプレートに対して中心線がプローブプレートのX軸に平行になるように配置した状態で検出部により検出した電位差に基づいて基準ピンに対する他のプローブピン各々のX軸と平行な方向に関する距離を計算し、センサ板をプローブプレートに対して中心線がプローブプレートのY軸に平行になるように配置した状態で検出部により検出した電位差に基づいて基準ピンに対する他のプローブピン各々のY軸と平行な方向に関する距離を計算するとともに、基準ピンの既知のXY座標をX軸と平行な方向に関する距離と前記Y軸と平行な方向に関する距離とに従ってX軸とY軸とに関してシフトすることにより他のプローブピン各々のXY座標を計算する。分布作成部はプローブピン各々に関するXY座標に基づいて、プローブピンに対応するピンマークの分布を作成する。表示制御部は、作成された分布を、複数のプローブピンに関する設計上の分布に重ねてディスプレイに表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本実施形態に係る検査装置の構成を示す図である。
図2図2図1の検査装置による検査手順を示す流れ図である。
図3図3図2の工程S04,S12で記憶された電位差データを示す図である。
図4図4図2の工程S16による基準ピンに対する他のプローブピンのX軸方向の距離計算に関する補足図である。
図5図5図2の工程S17による基準ピンに対する他のプローブピンのY軸方向の距離計算に関する補足図である。
図6図6図2の工程S18で生成されたプローブピンの分布図を設計上の分布図に重ねて表示する表示例を示す図である。
図7図7図1の検査装置の変形例を示す図である。
図8図8図1の検査装置の他の変形例を示す図である。
図9図9はプローブカードをプリント基板とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る検査装置を説明する。本実施形態に係る検査装置が検査する対象は、プリント基板の通電を検査する専用の検査治具としてのプローブカードである。ここで本実施形態に係る検査装置の説明に先立って、プローブカードについて説明する。図9(a)に示すように、プリント基板60にはミクロン単位で数百~数千もの配線、ランド、パッドなどが形成されている。プリント基板60の配線等上の数千箇所に通電検査のための検査ポイント61が指定されている。図9(b)に示すように、プローブカード50は、プリント基板60の複数の検査ポイント61に個々に接触させるための複数の導電ピン(プローブピン)51を有しており、これらプローブピン51はプリント基板60上での検査ポイント61のレイアウトと同じレイアウトでプローブプレート52に配設される。プローブピン51は導線53を介して、予め対応付けられているコネクタ54のソケット又はプラグのコンタクト55に個々に接続される。なお、プローブカード50には横方向にX軸が設定され、縦方向にY軸が設定されるものとする。
【0013】
図1には本実施形態に係る検査装置の構成を示している。センサ板10は、複数のプローブピン51に接触される矩形形状の抵抗箔11がベース板(図示せず)に貼着され、抵抗箔11の対辺に、その辺長と同じ長さを長辺とする短冊形の一対の電極12,13がそれぞれ接続されてなる。なお、抵抗箔11の中心Cを通り抵抗箔11の対辺に垂直な線を中心線CLとする。抵抗箔11は、均一な抵抗率を有し、温度係数(温度による抵抗値変化率)がゼロ又は近似値を示す精密電気計器類の標準抵抗線として用いられる金属の箔である。
【0014】
電源回路(PSC)14により電極12,13間に電圧が印加されると、中心線CLに沿って一定の電位勾配が発生する。それにより抵抗箔11は、電極12,13の間の位置に応じた電位を有する。この電位により抵抗箔11に接触するプローブピン51に関する抵抗箔11の枠内における中心線CL方向の位置を特定することができる。本実施形態では、位置計算精度の向上のために、特定のプローブピン(基準ピン)51を予め基準ピンとして設定し、当該基準ピン51と他のプローブピン51との間の電位差を検出し、検出した電位差に基づいて、基準ピン51に対する他のプローブピン51の「抵抗箔11の中心線CL方向に関する距離」を計算する。基準ピン51のプローブカード50内における既定の座標から、計算された距離だけ中心線CL方向に平行移動(シフト)した座標が、他のプローブピン51の座標として特定される。検査に際しては、抵抗箔11の中心線CLをプローブカード50のX軸と平行になるようにセンサ板10をプローブカード50に対して配置することにより、他のプローブピン51に関するX軸上の座標を特定することができ、抵抗箔11の中心線CLをプローブカード50のY軸と平行になるようにセンサ板10をプローブカード50に対して配置することにより、他のプローブピン51に関するY軸上の座標を特定することができる。
【0015】
センサ板10は、回転機構15により板面に垂直であって中心Cを通る垂直軸周りに回転自在に支持され、且つ直動機構16によりセンサ板10に垂直な方向に沿って往復動自在に支持される。検査過程において、抵抗箔11の中心線CLがプローブカード50のX軸と平行になるようにセンサ板10がプローブカード50に対して配置され、また抵抗箔11の中心線CLがプローブカード50のY軸と平行になるようにセンサ板10がプローブカード50に対して配置される。直動機構16はセンサ板10をプローブカード50に接近させ、抵抗箔11をプローブピン51に接触させ、またセンサ板10をプローブカード50から離れる方向に移動させて、抵抗箔11をプローブピン51から離脱させることができる。
【0016】
コネクタ20は複数のコンタクト19を有する。コネクタ20をコネクタ54に結合したとき、複数のコンタクト19は、コネクタ54の複数のコンタクト55にそれぞれ接続される。典型的には、コンタクト19は同じ配列番号のコンタクト55に接続される。
【0017】
スキャナボード22は、コネクタ54のコンタクト55を介して入力した信号(電圧)から、後述の制御部31の制御信号により指示された2つを選択して出力する。検査に際しては、制御部31は、基準ピン51に繋がるコンタクト19を固定した状態で、他のプローブピン51に繋がるコンタクト19を一定周期で切り替える。スキャナボード22としては電子的に接続を切り替えるマルチプレクサ、機械的に接続を切り替えるリレーのいずれであってもよい。
【0018】
スキャナボード22にはインタフェース回路(IF)23を介してアナログデジタル変換器(ADC)24が接続される。アナログデジタル変換器24は、スキャナボード22から出力された2つの信号をその電位差に応じたデジタル信号に一定周期で変換する。なお、アナログデジタル変換器24はスキャナボード22とともに、コンタクト19を介して複数のプローブピン51のうち一つの基準ピン51に繋がるコンタクト19と他のプローブピン51各々に繋がるコンタクト19との電位差を検出する検出部を構成する。
【0019】
パーソナルコンピュータ等により実現される情報処理装置30は、機能構成上、システム全体を制御する制御部31に対して、データ・制御バス32を介して記憶部38、座標計算部39、プローブピン51の空間分布を作成する分布図作成部40、ディスプレイ42に表示すべき画面を構成する表示制御部41、各部14,15,16,24に対するインタフェース(IF)33-37とが接続されてなる。記憶部38には、検査対象のプローブカード50に装備される複数のプローブピン51各々に関する設計上のXY座標に関するデータと、プローブピン51とコネクタ20のコンタクト55との設計上の対応関係に関するデータとが記憶される。また記憶部38には、検査過程で発生する基準ピン51と他のプローブピン51各々との間の電位差に関するデータが記憶される。
【0020】
座標計算部39は、センサ板10をプローブカード50に対して、抵抗箔11の中心線CLがX軸に平行になるように配置した状態でアナログデジタル変換器24により検出された基準ピン51と他のプローブピン51各々との電位差、実際には基準ピン51に接続されたコンタクト19と他のプローブピン51に接続されたコンタクト19各々との電位差に基づいて、基準ピン51に対する他のプローブピン51各々のX軸と平行な方向に関する距離(X軸距離)を計算する。またセンサ板10を90°回動させ、プローブカード50に対して、抵抗箔11の中心線CLがY軸に平行になるように配置した状態でアナログデジタル変換器24により検出された基準ピン51と他のプローブピン51各々との電位差に基づいて基準ピン51に対する他のプローブピン51各々のY軸と平行な方向に関する距離(Y軸距離)を計算する。座標計算部39は、基準ピン51の既定のXY座標とX軸距離とY軸距離とに基づいて他のプローブピン51のXY座標を計算する。具体的には基準ピン51の既定のXY座標を、X軸距離に従ってX軸方向に平行移動(シフト)し、Y軸距離に従ってY軸方向にシフトすることにより、他のプローブピン51のXY座標を計算する。
【0021】
分布図作成部40は、基準ピン51のXY座標と他のプローブピン51のXY座標とに基づいて、プローブピン51の分布図を作成する。表示制御部41は、作成された分布図を、複数のプローブピン51各々に関する設計上のXY座標に関するデータに基づいて作成した設計上の分布図に重ねて、ディスプレイ42に表示する。
【0022】
図2には本実施形態に係る検査装置による検査手順を示している。事前に、検査対象のプローブカード50に装備される複数のプローブピン51のうち、基準とすべき特定のプローブピン(基準ピン)51が選択される。
【0023】
制御部31の制御に従って回転機構15は抵抗箔11の中心線CLがプローブカード50のX軸と平行になるようにセンサ板10を回転する。そして直動機構16はセンサ板10をプローブカード50に接近させる。それにより抵抗箔11はプローブピン51に接触する(工程S01)。制御部31の制御に従って電源回路14により電極12,13の間に所定の電圧が印加される(工程S02)。それによりX軸に沿って一定の電位勾配が抵抗箔11に発生する。制御部31の制御に従ってスキャナボード22により、基準ピン51に繋がるコンタクト19が出力に対して固定され、他のプローブピン51に繋がるコンタクト19が一定周期で切り替えられる(工程S03)。コンタクト19の切り替えに同期して、アナログデジタル変換器24により、コンタクト19間の電位差が一定周期で繰り返し検出される(工程S04)。検出された電位差は、基準ピン51と他のプローブピン51との間のX軸方向に関する電位差(X)を示している。各電位差(X)に関するデータは、図3に示すようにコンタクト19の配列番号を付帯されて記憶部38に順次記憶される(工程S05)。電源回路14による電圧の印加が停止される(工程S06)。
【0024】
制御部31の制御により直動機構16はセンサ板10をプローブカード50から離れる方向に移動する。それにより抵抗箔11はプローブピン51から離脱する(工程S07)。制御部31の制御により回転機構15はセンサ板10を90°回転する(工程S08)。それにより抵抗箔11の中心線CLはプローブカード50のY軸と平行になる。制御部31の制御により直動機構16はセンサ板10をプローブカード50に接近する方向に移動する。それにより抵抗箔11はプローブピン51に接触する(工程S09)。
【0025】
制御部31の制御に従って電源回路14により電極12,13の間に所定の電圧が印加される(工程S10)。それによりY軸に沿って一定の電位勾配が抵抗箔11に発生する。工程S03と同様にスキャナボード22により、基準ピン51に繋がるコンタクト19が出力に対して固定され、他のプローブピン51に繋がるコンタクト19が一定周期で切り替えられる(工程S11)。そしてコンタクト19の切り替えに同期して、アナログデジタル変換器24によりコンタクト19間の電位差が一定周期で繰り返し検出される(工程S12)。検出された電位差は、基準ピン51と他のプローブピン51との間のY軸方向に関する電位差(Y)を示している。各電位差(Y)に関するデータは、図3に示すようにコンタクト19の配列番号を付帯されて記憶部38に順次記憶される(工程S13)。電圧の印加が停止される(工程S14)。
【0026】
図4に示すように、座標計算部39により、電極12,13の間に印加された電圧に対する電位差(X)各々の割合を、電極12,13の間の距離を乗算することにより、基準ピン51に対する他のプローブピン51各々のX軸と平行な方向に関する距離(X軸距離)dXが計算される(工程S15)。例えば配列番号(1)のコンタクト19に基準ピン51が接続されているとして、配列番号(1)のコンタクト19と配列番号(n1)のコンタクト19との間に0.60Vの電位差が検出されたとき、基準ピン51に対して配列番号(n1)のコンタクト19に接続されているプローブピン51はX軸方向に沿って距離dX(n1)だけ離れている。また配列番号(1)のコンタクト19と配列番号(n2)のコンタクト19との間に0.65Vの電位差が検出されたとき、基準ピン51に対して配列番号(n2)のコンタクト19に接続されているプローブピン51はX軸方向に沿って距離dX(n2)だけ離れている。
【0027】
同様に、図5に示すように、座標計算部39により電位差(Y)各々に基づいて、基準ピン51に対する他のプローブピン51各々のY軸と平行な方向に関する距離(Y軸距離)dYが計算される(工程S16)。配列番号(1)のコンタクト19と配列番号(n1)のコンタクト19との間に0.25Vの電位差が検出されたとき、基準ピン51に対して配列番号(n1)のコンタクト19に接続されているプローブピン51はY軸方向に沿って距離dY(n1)だけ離れている。また配列番号(1)のコンタクト19と配列番号(n2)のコンタクト19との間に0.60Vの電位差が検出されたとき、基準ピン51に対して配列番号(n2)のコンタクト19に接続されているプローブピン51はY軸方向に沿って距離dY(n2)だけ離れている。
【0028】
座標計算部39により、基準ピン51の既定のXY座標を、X軸距離dXに従ってX軸方向に沿って平行移動(シフト)し、Y軸距離dYに従ってY軸方向にシフトすることにより、他のプローブピン51各々のXY座標が計算される(工程S17)。
【0029】
図6(a)に示すように、分布図作成部40は、計算されたXY座標に従ってピンマーク71をXY座標面にプロットすることにより、検査により特定されたプローブピン51の分布図が作成される(工程S18)。各ピンマーク71には、それぞれ対応するコンタクト19の配列番号が付記される。また分布図作成部40は、記憶部38に記憶されたプローブピン51各々に関する設計上のXY座標に関するデータに基づいて設計上のピンマーク72をXY座標面にプロットして、設計上のプローブピン51の分布図が作成される。設計上の各ピンマーク72にも、記憶部38に記憶されたプローブピン51とコネクタ20のコンタクト55との設計上の対応関係に関するデータに基づいて配列番号が付記される。
【0030】
表示制御部41により、検査により作成されたプローブピン51の分布図は、設計上の分布図に重ねられ、ディスプレイ42に表示される。検査により作成されたプローブピン51の分布図を設計上の分布図と比較することにより、設計上のピンマーク72に対するピンマーク71の位置ずれによりプローブピン51が設計位置からずれている不具合、ピンマーク71の欠落によりプローブピン51からコンタクト55に至る導線53が断線している不具合、さらにプローブピン51に対してコンタクト55が設計とは異なる配線がなされた誤配線の不具合などを視認し、容易に発見することができる。
【0031】
図6(b)に示すように、検査で作成された分布図において、コンタクト配列番号順にピンマーク71を連結線81により連結し、同様に設計上の分布図においても、設計上のコンタクト配列番号順にピンマーク72を連結線82により連結するようにしてもよく、この場合、上記様々な不具合をさらに容易に発見することができる。
【0032】
上述したように従来のようにプローブピン51に個別に接続させる必要が無く、抵抗箔11にプローブピン51を一括して接触させるので、プローブピン51の本数の増大、微細化及び高密度化に対応して、プローブピン51の損傷を抑えながら、検査を実行することができる。また抵抗箔11にプローブピン51を一括して接触させた上で、プローブピン51の電位をコンタクト19を電気的に切り替えながら順次検出するので、検査時間の大幅な短縮を図ることができる。
【0033】
また抵抗箔11に一方向に電位勾配を発生させ、コンタクト19を介して基準ピン51と他のプローブピン51との電位差を検出し、電位差に基づいてプローブピン51の位置(座標)を計算することができるので、プローブピン51の位置ずれ、断線、誤配線などの様々な不具合を発見することが可能になる。特に基準ピン51と他のプローブピン51との電位差に基づいて基準ピン51に対する他のプローブピン51の距離を計算し、この距離に従って基準ピン51の既知の位置から平行移動させて他のプローブピン51の位置を計算するので、プローブピン51の電位からその位置を特定するよりも位置計算の精度を向上させることができる。
【0034】
さらに、抵抗箔11に2方向(中心線CLの方向とそれに垂直な方向)に電位勾配を発生させてX軸とY軸の2方向の電位差を一時に検出するのでは無く、抵抗箔11に一方向のみに電位勾配を発生させ、機械的にセンサ板10を90°回転させてX軸とY軸の2方向の電位差を2回に分けて検出するので、電位勾配の線形性を高め、ゆらぎを抑えて、高精度に位置を特定することができる。
【0035】
なお、図7に示すように、抵抗箔11の中心線CLに直交する垂直線OLに沿う対辺に一対の電極17,18をそれぞれ接続し、抵抗箔11に中心線CLの方向と垂直線OLの方向との2方向それぞれに電位勾配を発生させて、X軸とY軸の2方向の電位差を一時に検出することを否定するものではない。
【0036】
また図8に示すように、センサ板10に対して電位勾配の方向が直交する他のセンサ板110を設け、センサ板10と他のセンサ板110とをプローブカード50に対して差し替えながら検査ポイント61のX軸上の座標とY軸上の座標とを取得するようにしてもよい。他のセンサ板110は、センサ板10と同様の構成を有しており、複数のプローブピン51に接触される矩形形状の抵抗箔111がベース板(図示せず)に貼着され、抵抗箔111の中心線CL2に沿って対峙する対辺に、短冊形の一対の電極112,113がそれぞれ接続されてなる。電源回路(PSC)114により電極112,113間に電圧が印加されると、中心線CL2に沿って一定の電位勾配が発生する。
【0037】
センサ板10と他のセンサ板110とをプローブカード50に対して差し替えるために、平行移動機構116は、センサ板10,110を互いに逆向きにプローブカード50の直上位置とプローブカード50から離れた待機位置との間で往復移動自在に支持する。センサ板10は検査ポイント61のX軸上の座標を取得するために、センサ板10の中心線CL1がプローブカード50のX軸に平行に配置される。他のセンサ板110は検査ポイント61のY軸上の座標を取得するために、センサ板110の中心線CL2がプローブカード50のY軸に平行に配置される。
【0038】
制御部31は、インタフェース137を介して平行移動機構116に制御信号を送信して、検査ポイント61のX軸上の座標を取得する際には、センサ板10をプローブカード50の直上位置に配置させ、センサ板110を待機位置に配置させるとともに、インタフェース35を介して電源回路14に制御信号を送信して、電極12,13間に電圧を印加させる。また検査ポイント61のY軸上の座標を取得する際には、センサ板110をプローブカード50の直上位置に配置させ、センサ板10を待機位置に配置させるとともに、インタフェース135を介して電源回路114に制御信号を送信して、電極112,113間に電圧を印加させる。
【0039】
このように2系統のセンサ板10、110を交互に適用して検査ポイント61のX軸上の座標及びY軸上の座標を高精度に取得することができる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
10…センサ板、11…抵抗箔、12,13…電極、14…電源回路(PSC)、15…回転機構、16…直動機構、19…コンタクト19、20…コネクタ、21…導線、22…スキャナボード、24…アナログデジタル変換器(ADC)、30…情報処理装置、31…制御部、32…データ・制御バス、38…記憶部、39…座標計算部、40…分布図作成部、41…表示制御部、42…ディスプレイ、33-37…インタフェース(IF)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電検査対象上の複数箇所に接触するようにプローブプレートに配設される複数のプローブピンが、複数の導線を介してコネクタの複数のコンタクトにそれぞれ接続されてなるプローブカードを検査するための検査装置において、
前記複数のプローブピンに接触される矩形形状の均一な抵抗率を有する抵抗箔がベース板に貼着され、前記抵抗箔の対辺に短冊形の一対の電極がそれぞれ接続されてなるセンサ板と、
前記抵抗箔に前記対辺に垂直な方向に沿って電位勾配を発生させるために前記一対の電極間に電圧を印加する電源部と、
前記コンタクトを介して前記複数のプローブピンのうち一つの基準ピンに繋がるコンタクトと他のプローブピン各々に繋がるコンタクトとの電位差を検出する検出部と、
前記センサ板を前記プローブプレートに対して前記抵抗箔の中心を通る線であって前記一対の電極が接続される対辺に垂直な中心線が前記プローブプレートのX軸に平行になるように配置した状態で前記検出部により検出した電位差に基づいて前記基準ピンに対する前記他のプローブピン各々の前記X軸と平行な方向に関する距離を計算し、前記センサ板を前記プローブプレートに対して前記中心線が前記プローブプレートのY軸に平行になるように配置した状態で前記検出部により検出した電位差に基づいて前記基準ピンに対する前記他のプローブピン各々の前記Y軸と平行な方向に関する距離を計算するとともに、前記基準ピンの既知のXY座標を前記X軸と平行な方向に関する距離と前記Y軸と平行な方向に関する距離とに従って前記X軸と前記Y軸とに関してシフトすることにより前記他のプローブピン各々のXY座標を計算する座標計算部と、
前記プローブピン各々に関する前記XY座標に基づいて、前記プローブピンに対応するピンマークの分布を作成する分布作成部と、
前記作成された分布を、前記複数のプローブピンに関する設計上の分布に重ねて外部のディスプレイに表示させる表示制御部とを具備する、検査装置。
【請求項2】
前記センサ板を板面に垂直な垂直軸周りに回転する回転機構をさらに備える、請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記センサ板を前記垂直軸に沿って移動する直動機構をさらに備える、請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記基準ピンに対応する前記コンタクトに対する接続を固定し、前記他のプローブピンに対応する前記コンタクトに対する接続を順番に切り替えるためのスキャナボードと、前記基準ピンに対応する前記コンタクトと前記切り替えられた前記他のプローブピンに対応する前記コンタクトとの間の電位差をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器とを有する、請求項1記載の検査装置。
【請求項5】
前記分布作成部は、前記ピンマークに前記コンタクトの配列番号を付記する、請求項1記載の検査装置。
【請求項6】
前記分布作成部は、前記ピンマークを前記コンタクトの配列番号の順番に従って連結線により連結する、請求項1記載の検査装置。